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特許7337664工作機械における位置計測センサの補正値計測方法及び補正値計測システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-25
(45)【発行日】2023-09-04
(54)【発明の名称】工作機械における位置計測センサの補正値計測方法及び補正値計測システム
(51)【国際特許分類】
   B23Q 17/00 20060101AFI20230828BHJP
   G05B 19/401 20060101ALI20230828BHJP
   G01B 5/00 20060101ALI20230828BHJP
【FI】
B23Q17/00 A
G05B19/401
G01B5/00 P
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019201709
(22)【出願日】2019-11-06
(65)【公開番号】P2021074806
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000149066
【氏名又は名称】オークマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】神戸 礼士
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-152574(JP,A)
【文献】特開2019-132612(JP,A)
【文献】特開2018-116458(JP,A)
【文献】特開2017-194451(JP,A)
【文献】特開2017-193043(JP,A)
【文献】特開2016-218746(JP,A)
【文献】特開2016-154039(JP,A)
【文献】特開2016-083729(JP,A)
【文献】特開2012-035399(JP,A)
【文献】特開2010-260119(JP,A)
【文献】特開平11-090787(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 17/00-23/00
G05B 19/18-19/416
G01B 5/00-5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3軸以上の並進軸と、工具を装着して回転可能な主軸と、テーブルと、を有する工作機械を用いて、前記主軸に装着可能な位置計測センサの長方向補正値と径方向補正値とを計測する方法であって、
工具センサと、前記工具センサ側に設けられた基準球とを用い、
前記工具の長さ基準となる基準工具を前記主軸に装着し、前記工具センサを用いて、前記基準工具の先端の検知位置を取得する工具センサ位置取得段階と、
前記主軸に装着した前記基準工具を用いて任意の工具計測位置を取得する基準工具計測位置取得段階と、
前記主軸に装着した前記位置計測センサを用いて任意のセンサ計測位置を取得する位置計測センサ計測位置取得段階と、
前記工具計測位置と前記センサ計測位置との差を求め、当該差と前記基準工具の長さとに基づいて前記位置計測センサの長さを求める位置計測センサ長さ算出段階と、
前記主軸に装着した前記位置計測センサを用いて前記基準球の位置を計測する基準球位置取得段階と、
前記工具センサ位置取得段階で取得した前記検知位置と、前記基準球位置取得段階で取得した前記基準球の位置と、前記位置計測センサ長さ算出段階で算出した前記位置計測センサの長さと、前記基準工具の長さとから、前記検知位置に対する前記基準球の相対位置を算出する相対位置算出段階と、
前記基準工具を前記主軸に装着し、前記工具センサを用いて前記基準工具の先端位置である基準工具位置を取得する基準工具位置取得段階と、
前記基準工具位置取得段階で取得した前記基準工具位置と、前記基準球位置取得段階で取得した前記基準球の位置と、前記相対位置算出段階で算出した前記相対位置と、前記基準工具の長さとから、前記位置計測センサの長方向補正値を算出する長補正値算出段階と、
前記位置計測センサを前記主軸に装着し、前記位置計測センサを用いて、前記基準球への前記位置計測センサの接触点が同一となるように前記主軸を割り出して前記基準球の位置を計測し、計測した前記基準球の位置と、予め記憶された前記基準球の径寸法とを用いて前記位置計測センサの径方向補正値を算出する径補正値算出段階と、
を実行することを特徴とする工作機械における位置計測センサの補正値計測方法。
【請求項2】
前記工具センサ位置取得段階から前記相対位置算出段階までを1回実行し、
前記基準工具位置取得段階から前記径補正値算出段階までを複数回実行することを特徴とする請求項1に記載の工作機械における位置計測センサの補正値計測方法。
【請求項3】
前記基準球位置取得段階と、前記径補正値算出段階とにおいて、前記位置計測センサで計測される位置は、前記位置計測センサが前記基準球に接触したことを検知した際の前記並進軸の位置であることを特徴とする請求項1又は2に記載の工作機械における位置計測センサの補正値計測方法。
【請求項4】
3軸以上の並進軸と、工具を装着して回転可能な主軸と、テーブルと、前記主軸に装着可能である位置計測センサと、前記並進軸と前記主軸とを制御する制御装置と、を有する工作機械において、前記位置計測センサの長方向補正値と径方向補正値とを計測するシステムであって、
前記工具の長さ基準となる基準工具と、
前記主軸に装着した前記基準工具の先端位置を検出する工具センサと、
前記工具センサ側に設置された基準球と、
前記主軸に装着した前記基準工具と、前記工具センサとを用いて、前記基準工具の先端の検知位置を取得して記憶する工具センサ位置取得手段と、
前記主軸に装着した前記基準工具を用いて任意の工具計測位置を取得して記憶する基準工具計測位置取得手段と、
前記主軸に装着した前記位置計測センサを用いて任意のセンサ計測位置を取得して記憶する位置計測センサ計測位置取得手段と、
前記工具計測位置と前記センサ計測位置との差を求め、当該差と前記基準工具の長さとに基づいて前記位置計測センサの長さを算出して記憶する位置計測センサ長さ算出手段と、
前記主軸に装着した前記位置計測センサを用いて前記基準球の位置を計測して記憶する基準球位置取得手段と、
前記工具センサ位置取得手段で取得した前記検知位置と、前記基準球位置取得手段で取得した前記基準球の位置と、前記位置計測センサ長さ算出手段で算出した前記位置計測センサの長さと、前記基準工具の長さとから、前記検知位置に対する前記基準球の相対位置を算出して記憶する相対位置算出手段と、
前記主軸に装着した前記基準工具と、前記工具センサとを用いて、前記基準工具の先端位置である基準工具位置を取得して記憶する基準工具位置取得手段と、
前記基準工具位置取得手段で取得した前記基準工具位置と、前記基準球位置取得手段で取得した前記基準球の位置と、前記相対位置算出手段で算出した前記相対位置と、前記基準工具の長さとから、前記位置計測センサの長方向補正値を算出して記憶する長補正値算出手段と、
前記主軸に装着した前記位置計測センサを用いて、前記基準球への前記位置計測センサの接触点が同一となるように前記主軸を割り出して前記基準球の位置を計測し、計測した前記基準球の位置と、予め記憶された前記基準球の径寸法とを用いて前記位置計測センサの径方向補正値を算出して記憶する径補正値算出手段と、
を有することを特徴とする工作機械における位置計測センサの補正値計測システム。
【請求項5】
前記位置計測センサは、前記位置計測センサが対象物を検知した際の前記並進軸の位置もしくは信号遅れを考慮した位置を計測することを特徴とする請求項4に記載の工作機械における位置計測センサの補正値計測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械の機内において工作物の位置を計測するために用いられる位置計測センサの補正値を計測する方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
テーブルに取り付けた工作物を、主軸に装着して回転する工具により加工を行う工作機械において、高精度な加工を行うために、工具長さや工作物の位置を自動的に計測して補正する方法が用いられる。
工作物の位置の自動計測方法としては、例えば、図2に示すようなタッチプローブ30で、プローブの接触子と工作物31とが接触した時点あるいは遅れを考慮した時点での座標を取得する方法が用いられる。この場合、Z軸方向の工作物31の座標を取得するには、接触した際のタッチプローブ30の長さが必要になる。
接触時のタッチプローブ30の長さの測定方法としては、主軸2aに基準工具を取り付けて、テーブル3などの基準面に対して、ブロックゲージを介して、基準工具が接触するようにZ軸を手動で操作しながら、ブロックゲージと基準工具との隙間がほぼ0となる位置を見つけて、このときのZ軸座標を記録する。そして、タッチプローブ30を基準面に接触させたときのZ軸位置の座標を計測し、タッチプローブ30で計測した座標から、基準工具で記録した座標とブロックゲージの厚みとを引いた値を接触時のタッチプローブ30の長さとする方法が一般的である。しかし、手作業が必要であり、自動で接触時のタッチプローブ30の長さを計測することができないという課題があった。
このため、自動でタッチプローブの長さを計測する方法として、本件出願人は、特許文献1において、タッチセンサやレーザセンサ等の工具センサに基準ブロックを取付け、事前に基準工具が基準ブロックに接触するZ軸位置の座標を記録するとともに、基準工具が工具センサに接触するZ軸位置の座標を取得して、両者の座標から、工具センサでの接触位置と基準ブロックとの相対位置を既知にして、基準工具で工具センサの接触位置を取得し、位置計測センサで基準ブロックの位置を計測することで、位置計測センサの長さを補正して計測する方法を開示している。また、本件出願人は、特許文献2において、ターゲット球(基準球)の中心初期値の計測値を用いて、タッチプローブの先端部の径方向のキャリブレーションを行うようにした幾何誤差同定方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-193043号公報
【文献】特開2016-83729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の方法では、タッチプローブの径補正を行う場合、特許文献2のように別途基準球を用いて、プローブ長さを求める工程とは別の工程を実施する必要があり、時間と手間とがかかっていた。
【0005】
そこで、本発明は、時間及び手間をかけることなく位置計測センサの長さ及び径の補正値を求めることができる補正値計測方法び補正値計測システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、3軸以上の並進軸と、工具を装着して回転可能な主軸と、テーブルと、を有する工作機械を用いて、前記主軸に装着可能な位置計測センサの長方向補正値と径方向補正値とを計測する方法であって、
工具センサと、前記工具センサ側に設けられた基準球とを用い、
前記工具の長さ基準となる基準工具を前記主軸に装着し、前記工具センサを用いて、前記基準工具の先端の検知位置を取得する工具センサ位置取得段階と、
前記主軸に装着した前記基準工具を用いて任意の工具計測位置を取得する基準工具計測位置取得段階と、
前記主軸に装着した前記位置計測センサを用いて任意のセンサ計測位置を取得する位置計測センサ計測位置取得段階と、
前記工具計測位置と前記センサ計測位置との差を求め、当該差と前記基準工具の長さとに基づいて前記位置計測センサの長さを求める位置計測センサ長さ算出段階と、
前記主軸に装着した前記位置計測センサを用いて前記基準球の位置を計測する基準球位置取得段階と、
前記工具センサ位置取得段階で取得した前記検知位置と、前記基準球位置取得段階で取得した前記基準球の位置と、前記位置計測センサ長さ算出段階で算出した前記位置計測センサの長さと、前記基準工具の長さとから、前記検知位置に対する前記基準球の相対位置を算出する相対位置算出段階と、
前記基準工具を前記主軸に装着し、前記工具センサを用いて前記基準工具の先端位置である基準工具位置を取得する基準工具位置取得段階と、
前記基準工具位置取得段階で取得した前記基準工具位置と、前記基準球位置取得段階で取得した前記基準球の位置と、前記相対位置算出段階で算出した前記相対位置と、前記基準工具の長さとから、前記位置計測センサの長方向補正値を算出する長補正値算出段階と、
前記位置計測センサを前記主軸に装着し、前記位置計測センサを用いて、前記基準球への前記位置計測センサの接触点が同一となるように前記主軸を割り出して前記基準球の位置を計測し、計測した前記基準球の位置と、予め記憶された前記基準球の径寸法とを用いて前記位置計測センサの径方向補正値を算出する径補正値算出段階と、を実行することを特徴とする。
ここで、「工具センサ側」とは、工具センサに基準球を直接設けた場合は勿論、工具センサの近傍に別体の基準球を設けた場合も含む。
請求項2に記載の発明は、上記構成において、前記工具センサ位置取得段階から前記相対位置算出段階までを1回実行し、
前記基準工具位置取得段階から前記径補正値算出段階までを複数回実行することを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、上記構成において、前記基準球位置取得段階と、前記径補正値算出段階とにおいて、前記位置計測センサで計測される位置は、前記位置計測センサが前記基準球に接触したことを検知した際の前記並進軸の位置であることを特徴とする。
上記目的を達成するために、請求項4に記載の発明は、3軸以上の並進軸と、工具を装着して回転可能な主軸と、テーブルと、前記主軸に装着可能である位置計測センサと、前記並進軸と前記主軸とを制御する制御装置と、を有する工作機械において、前記位置計測センサの長方向補正値と径方向補正値とを計測するシステムであって、
前記工具の長さ基準となる基準工具と、
前記主軸に装着した前記基準工具の先端位置を検出する工具センサと、
前記工具センサ側に設置された基準球と、
前記主軸に装着した前記基準工具と、前記工具センサとを用いて、前記基準工具の先端の検知位置を取得して記憶する工具センサ位置取得手段と、
前記主軸に装着した前記基準工具を用いて任意の工具計測位置を取得して記憶する基準工具計測位置取得手段と、
前記主軸に装着した前記位置計測センサを用いて任意のセンサ計測位置を取得して記憶する位置計測センサ計測位置取得手段と、
前記工具計測位置と前記センサ計測位置との差を求め、当該差と前記基準工具の長さとに基づいて前記位置計測センサの長さを算出して記憶する位置計測センサ長さ算出手段と、
前記主軸に装着した前記位置計測センサを用いて前記基準球の位置を計測して記憶する基準球位置取得手段と、
前記工具センサ位置取得手段で取得した前記検知位置と、前記基準球位置取得手段で取得した前記基準球の位置と、前記位置計測センサ長さ算出手段で算出した前記位置計測センサの長さと、前記基準工具の長さとから、前記検知位置に対する前記基準球の相対位置を算出して記憶する相対位置算出手段と、
前記主軸に装着した前記基準工具と、前記工具センサとを用いて、前記基準工具の先端位置である基準工具位置を取得して記憶する基準工具位置取得手段と、
前記基準工具位置取得手段で取得した前記基準工具位置と、前記基準球位置取得手段で取得した前記基準球の位置と、前記相対位置算出手段で算出した前記相対位置と、前記基準工具の長さとから、前記位置計測センサの長方向補正値を算出して記憶する長補正値算出手段と、
前記主軸に装着した前記位置計測センサを用いて、前記基準球への前記位置計測センサの接触点が同一となるように前記主軸を割り出して前記基準球の位置を計測し、計測した前記基準球の位置と、予め記憶された前記基準球の径寸法とを用いて前記位置計測センサの径方向補正値を算出して記憶する径補正値算出手段と、を有することを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、上記構成において、前記位置計測センサは、前記位置計測センサが対象物を検知した際の前記並進軸の位置もしくは信号遅れを考慮した位置を計測することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、事前に、工具センサでの基準工具位置と、基準工具を元に算出した位置計測センサの長さと、位置計測センサで計測した基準球の位置とから、工具センサでの検知位置と基準球との位置関係を既知にしておくことで、その後は、工具センサで基準工具を自動計測し、位置計測センサで基準球を自動計測することで、位置計測センサの長方向補正値を自動計測可能となる。また、位置計測センサで基準球を自動計測する際に基準球の径寸法を用いて位置計測センサの径方向補正値も同時に自動計測可能となる。
これにより、熱変位等で位置計測センサの長さや姿勢が変化しても、時間及び手間をかけることなく位置計測センサの長さ及び径の補正値を求めることができ、位置計測センサによる対象物の位置計測を高精度に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】マシニングセンタの模式図である。
図2】タッチプローブの模式図である。
図3】本発明の工具センサの一例であるレーザセンサの模式図である。
図4】本発明の工具センサの一例であるレーザセンサの模式図である。
図5】本発明の工具センサの一例であるタッチセンサの模式図である。
図6】本発明の工具センサの一例であるタッチセンサの模式図である。
図7】本発明の計測準備作業のフローチャートである。
図8】本発明のタッチプローブ補正値の計測方法のフローチャートである。
図9】本発明の計測準備作業のステップSR1(S1)の説明図である。
図10】本発明の計測準備作業のステップSR2の説明図である。
図11】本発明の計測方法のステップSR3の説明図である。
図12】本発明の計測方法のステップSR5の説明図である。
図13】本発明の計測方法のステップSR5(S2)の説明図である。
図14】本発明の計測方法のステップS4の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、工作機械の一形態であり、3つの互いに直交する並進軸を有するマシニングセンタの模式図である。
主軸頭2は、コラム4及びサドル5を介して、並進軸であり互いに直交するX軸、Z軸によってベッド1に対して並進2自由度の運動が可能である。テーブル3は、並進軸でありX軸およびZ軸に直交するY軸によりベッド1に対して並進1自由度の運動が可能である。したがって、主軸頭2は、テーブル3に対して並進3自由度の運動が可能である。各送り軸は、図示しない数値制御装置により制御されるサーボモータにより駆動され、工作物をテーブル3に固定し、主軸頭2の主軸2aに工具を装着して回転させ、工作物と工具の相対位置および相対姿勢を制御することで、工作物の加工を行うことができる。
【0010】
数値制御装置は、本発明の制御装置として、予め記憶部に記憶されたプログラムに従い、工具センサ位置取得手段、基準工具計測位置取得手段、位置計測センサ計測位置取得手段、位置計測センサ長さ算出手段、基準球位置取得手段、相対位置算出手段、基準工具位置取得手段、長補正値算出手段、径補正値算出手段として機能する。補正値の計測に伴う主軸2aへの基準工具とタッチプローブとの着脱は、作業者が手動で行うか、数値制御装置が工具交換装置を介して自動的に行う。
なお、本発明に関わる機械としては、マシニングセンタに限らず旋盤や複合加工機、研削盤などの工作機械でもよい。また、軸数は3軸に限らず、並進軸のみ3軸、4軸、6軸でもよい。さらにまた、回転軸によりテーブル3や主軸頭2が回転1自由度以上を持つ機構でもよい。
【0011】
図3は、本発明の工具センサの一例であるレーザセンサ40の模式図である。レーザセンサ40は、レーザ14を発光するレーザ発光部11、レーザ14を受光するレーザ受光部12、ベース部13、基準球42から構成される。レーザ発光部11、レーザ受光部12、基準球42はベース部13に固定されている。また、レーザセンサ40は、図1のマシニングセンタのテーブル3の上面に取り付けられる。なお、図4に示すように、基準球42をベース部13の近傍に別置した構成でもよい。
【0012】
図5は、本発明の工具センサの一例であるタッチセンサ50の模式図である。タッチセンサ50は、タッチセンサ部51、基準球52、ベース部53から構成される。タッチセンサ部51、基準球52はベース部53に固定されている。また、タッチセンサ50は、レーザセンサ40と同様に図1のマシニングセンタのテーブル3の上面に取り付けられる。なお、図6に示すように、基準球52をベース部53の近傍に別置した構成でもよい。
【0013】
以後、工具センサとして、タッチセンサ50を用いた場合を説明する。タッチセンサ50とレーザセンサ40とは検知方法が異なるだけで本質的には同じである。
計測準備作業の手順について、図7のフローチャートにもとづいて説明する。計測準備作業は、後述のタッチプローブの長方向及び径方向の補正値の計測を行う前に事前に行っておく作業である。
ステップSR1において、主軸2aに基準工具8を装着し、タッチセンサ50にて計測を行う(工具センサ位置取得段階)。ここでは図9に示すように、基準工具8がタッチセンサ部51に接触するようZ軸を移動させ、基準工具8の先端がタッチセンサ部51を押した時点もしくは信号遅れを考慮した時点でのZ軸方向の接触位置Z1を取得する。取得した接触位置Z1を数値制御装置内の記憶部に記憶させる。また、基準工具8の長さTdも記憶部にあらかじめ記憶させておく。
【0014】
ステップSR2において、タッチプローブの長さを計測する前準備として、基準工具8でのテーブル3の上面などの任意の計測位置の取得を行う(基準工具計測位置取得段階)。ここでは図10に示すように、主軸2aに基準工具8を装着した状態で、ブロックゲージ44を介して、テーブル3上面などの任意の位置に接触させ、その時のZ軸方向の接触位置Zcを取得する。そして、ブロックゲージ44の厚みHbを差し引いた値Zc’(=Zc-Hb)を記憶部に記憶させる。なお、ブロックゲージ44としては、厚み寸法が既知のブロックなどでもよい。
ステップSR3において、主軸2aにタッチプローブ30を装着し、ステップSR2と同じテーブル3上面などの任意の計測位置を計測する(位置計測センサ計測位置取得段階)。ここでは図11に示すように、タッチプローブ30がステップSR2と同じテーブル3上面などの任意の計測位置に接近するようZ軸を移動させ、タッチプローブ30のスタイラス30aが接触してトリガー信号を発信した時点もしくは信号遅れを考慮した時点でのZ軸方向の接触位置Zpを取得する。取得した接触位置Zpを記憶部に記憶させる。
【0015】
ステップSR4において、タッチプローブ30の長方向補正値である接触時のタッチプローブ30の長さを算出する(位置計測センサ長さ算出段階)。ステップSR2にて記憶させたZc’と、ステップSR3にて記憶させたZpと、基準工具長Tdとから長方向補正値Tp(=Zp-Zc’+Td)を求めて、記憶部に記憶させる。
ステップSR5において、主軸2aにタッチプローブ30を装着し、基準球52のZ軸方向の接触位置Z2を計測する(基準球位置取得段階)。ここでは図12に示すように、基準球52の水平方向(タッチプローブ30のスタイラス30aの径方向)の同一平面において、X軸プラス・マイナス方向の座標Xp,Xm、Y軸プラス・マイナス方向の座標Yp・Ymをタッチプローブ30にて計測する。この際、タッチプローブ30の接触点が同一になるように主軸2aを割り出す。得られたX軸位置の平均値X0とY軸位置の平均値Y0とがそれぞれ球中心のX,Y座標値(中心位置)となる。この中心位置X0,Y0で、図13に示すように、タッチプローブ30が基準球52に接近するようZ軸を移動させ、タッチプローブ30のスタイラス30aが接触してトリガー信号を発信した時点もしくは信号遅れを考慮した時点での接触位置Z2を取得する。
【0016】
ステップSR6において、タッチセンサ50の検知位置とタッチプローブ30による基準球52の検知位置との間のZ軸方向の距離(相対位置)dZbを算出する(相対位置算出段階)。ステップSR1で求めた基準工具8とタッチセンサ50との接触位置Z1と、ステップSR5で求めたタッチプローブ30と基準球52との接触位置Z2と、タッチプローブ30の長方向補正値Tpと、基準工具長Tdとから、タッチセンサ50との接触位置Z1と基準球52との接触位置Z2との間のZ軸方向の距離dZb(=Z2+Tp-(Z1+Td))を求めて、記憶部に記憶させる。
【0017】
次に、本発明における、タッチプローブ30による計測の流れについて、図8のフローチャートに基づいて説明する。
ステップS1において、ステップSR1と同様に、主軸2aに基準工具8を装着し、タッチセンサ50にて計測を行い、接触位置Z1’(図9)を記憶部に記憶させる(基準工具位置取得段階)。
ステップS2において、ステップSR5と同様に、主軸2aにタッチプローブ30を装着し、基準球52をタッチプローブ30にて計測を行い、接触位置Z2’(図13)を記憶部に記憶させる。
ステップS3において、タッチプローブ30の長方向補正値である接触時のタッチプローブ30の長さを算出する(長補正値算出段階)。ステップS1にて記憶させた接触位置Z1’と、ステップS2にて記憶させた接触位置Z2’と、記憶部に記憶されているタッチセンサ50の接触位置と基準球52の接触位置との間の距離dZbと、基準工具長Tdとから長方向補正値Tp’(=Z1’-Z2’+dZb+Td)を求めて、記憶部に記憶させる。
【0018】
ステップS4において、基準球52の水平方向(スタイラス30aの径方向)の頂点の計測を行う。予め記憶させた基準球径Ddとスタイラス30aの球径Dt、ステップS2にて記憶させた接触位置Z2’と、ステップS3にて記憶させた長方向補正値Tp’とにより、基準球52の水平方向の頂点の接触位置Z3(=Z2’-Tp’-Dd/2-Dt/2)を求めて、記憶部に記憶させる。そして、タッチプローブ30をこの接触位置Z3で、図14に示すように、タッチプローブ30が基準球52に接近するようX軸あるいはY軸を移動させ、タッチプローブ30のスタイラス30aが接触してトリガー信号を発信した時点もしくは信号遅れを考慮した時点でのX軸プラス・マイナス方向の座標X3p,X3m、Y軸プラス・マイナス方向の座標Y3p,Y3mを取得する。
ステップS5において、タッチプローブ30の径方向補正値であるスタイラス30aの径補正値を算出する(S4,S5:径補正値算出段階)。ステップS4にて記憶させたX3p,X3m,Y3p,Y3mと、予め記憶させた基準球径Ddとにより、スタイラス30aの径方向補正値Rxp(=X3p-(X3p+X3m)/2-Dd/2)、Rxm(=X3m-(X3p+X3m)/2-Dd/2)、Ryp(=Y3p-(Y3p+Y3m)/2-Dd/2)、Rym(=Y3m-(Y3p+Y3m)/2-Dd/2)を求めて、記憶部に記憶させる。
【0019】
このように、上記形態のタッチプローブ30(位置計測センサ)の補正値計測方法び補正値計測システムでは、タッチセンサ50(工具センサ)を用いて、基準工具8の先端の検知位置(Z1)を取得するステップSR1と、基準工具8を用いて任意の工具計測位置(Zc)を取得するステップSR2とを実行する。また、タッチプローブ30(位置計測センサ)を用いて任意のセンサ計測位置(Zp)を取得するステップSR3と、工具計測位置(Zc)とセンサ計測位置(Zp)との差を求め、当該差と基準工具8の長さ(Td)とに基づいてタッチプローブ30の長さ(Tp)を求めるステップSR4とを実行する。また、タッチプローブ30を用いて基準球52の位置(Z2)を計測するステップSR5と、検知位置(Z1)と、基準球52の位置(Z2)と、タッチプローブ30の長さ(Tp)と、基準工具8の長さ(Td)とから、検知位置(Z1)に対する基準球52の位置(Z2)の相対位置(dZb)を算出するステップSRとを実行する。
【0020】
そして、タッチセンサ50を用いて基準工具8の基準工具位置(Z1’)を取得するステップS1と、基準工具位置(Z1’)と、タッチプローブ30を用いて計測した基準球52の位置(Z2’)と、相対位置(dZb)と、基準工具8の長さ(Td)とから、タッチプローブ30の長方向補正値(Tp’)を算出するステップS2,S3を実行する。また、タッチプローブ30を用いて基準球52の位置(X3p,X3m、Y3p,Y3m)を計測し、計測した基準球52の位置(X3p,X3m、Y3p,Y3m)と、予め記憶された基準球52の径寸法(Dd)とを用いてタッチプローブ30の径方向補正値(Rxp、Rxm、Ryp、Rym)を算出するステップS4,S5を実行する。
【0021】
よって、事前に、タッチセンサ50での基準工具8の位置(Z1)と、基準工具8を元に算出したタッチプローブ30の長さ(Tp)と、タッチプローブ30で計測した基準球52の位置(Z2)とから、タッチセンサ50での検知位置と基準球52との位置関係(dZb)を既知にしておくことで、その後は、タッチセンサ50で基準工具8を自動計測し、タッチプローブ30で基準球52を自動計測することで、タッチプローブ30の長方向補正値を自動計測可能となる。また、タッチプローブ30で基準球52を自動計測する際に基準球52の径寸法を用いてタッチプローブ30のスタイラス30aの径方向補正値も同時に自動計測可能となる。
これにより、熱変位等でタッチプローブ30の長さや姿勢が変化しても、時間及び手間をかけることなくタッチプローブ30の長さ及び径の補正値を求めることができ、タッチプローブ30による対象物の位置計測を高精度に行うことができる。
【0022】
なお、上記形態において、計測準備作業であるステップSR1~SR6は、1回実行すれば足りるが、ステップS1~S5は、複数回実行してもよい。
また、上記形態では、S3でタッチプローブの長補正値を算出する際に、S2でタッチプローブと基準球との接触位置を計測しているが、これを省略して、ステップSR5で取得した接触位置を用いてもよい。長補正値の算出と径補正値の算出との順番は、上記形態と逆であってもよい。
また、位置計測センサとしてはタッチプローブに限らず、レーザ変位センサなどの非接触センサも採用できる。この場合、接触時の長さではなく、計測時の計測対象物と非接触センサの見かけ上の距離が対象となる。
【符号の説明】
【0023】
1・・ベッド、2・・主軸頭、2a・・主軸、3・・テーブル、8・・基準工具、11・・レーザ発光部、12・・レーザ受光部、30・・タッチプローブ、30a・・スタイラス、31・・工作物、40・・レーザセンサ、42,52・・基準球、44・・ブロックゲージ、50・・タッチセンサ、51・・タッチセンサ部。
図1
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