(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-25
(45)【発行日】2023-09-04
(54)【発明の名称】3Dプリント法で製造中の部品のコーディング
(51)【国際特許分類】
B29C 64/188 20170101AFI20230828BHJP
B29C 64/10 20170101ALI20230828BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20230828BHJP
B33Y 50/00 20150101ALI20230828BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20230828BHJP
【FI】
B29C64/188
B29C64/10
B33Y10/00
B33Y50/00
B33Y50/02
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019213290
(22)【出願日】2019-11-26
【審査請求日】2022-07-15
(31)【優先権主張番号】10 2018 220 789.5
(32)【優先日】2018-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390009232
【氏名又は名称】ハイデルベルガー ドルツクマシーネン アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Heidelberger Druckmaschinen AG
【住所又は居所原語表記】Kurfuersten-Anlage 52-60, D-69115 Heidelberg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マーティン シュミット-レーヴェン
(72)【発明者】
【氏名】ギード ヒアル
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ミュラー
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-021548(JP,A)
【文献】特開2017-226214(JP,A)
【文献】特開2016-199802(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0203365(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/10,64/153,64/188
B33Y 10/00,50/00,50/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
付加製造法において事前に作製された工作物(1)の後続の加工を制御する方法であって、
前記工作物の付加製造中に、前記工作物にマーキング(2、3、4)を付け、
前記マーキング(2,3,4)を前記工作物(1)の後続の加工時に材料塗布または材料削剥を制御するために使用
し、
前記マーキング(2,3,4)の検出を接触によって行うことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記工作物(1)の前記マーキングは、凹部(2)であることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記工作物(1)の前記マーキングは、凸部(3)であることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記マーキング(4)は、凸部と凹部との両方を含むことを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記マーキングは、凹部(2)であって、前記工作物(1)の表面の研削を制御することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記マーキング(2,3,4)を後続の加工中に、前記工作物(1)の後続の加工時に材料塗布または材料削剥を行う機械のカメラによって検出することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記マーキングは、凸部(3)であって、前記マーキングをニス加工ユニット、印刷ユニットまたはニス加工機において塗料または印刷像の塗布を制御するために用いられることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記マーキングは、それぞれ異なる高さの凸部(3)であって、それぞれ異なる高さの全ての凸部(3)に対して、対応する厚さのニス層または対応する厚さの印刷インキを、ニス加工機、印刷機またはニス加工ユニットによって塗布することを特徴とする、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記マーキングは、少なくとも1つの凸部(5)を有し、前記少なくとも1つの凸部(5)は、前記工作物(1)に対して対照的に着色されていることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記工作物(1)の後続の加工時における材料塗布または材料削剥の制御において前記マーキング(2,3,4)は
、前記工作物を加工するための付加的なコーディングされた情報を含み、該情報を、後続の加工プロセス中に、読取り機器によって、特に光学的な検出を用いて読み取ることを特徴とする、請求項1から
9までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付加製造法で事前に作製された工作物の後続の加工を制御する方法であって、工作物の付加製造中に工作物にマーキングを付ける方法に関する。
【0002】
3Dプリント法と称されることも多い付加製造法で製造される、マーキングを有する工作物は、独国実用新案第202015005115号明細書において明らかである。この実用新案は、3Dプリント中に様々な人工的な特徴を設けることができる、3Dプリントで製造される工作物を開示している。人工的な特徴には、1次元コード、多次元コード、磁気コード、機械コード、光学コードおよび電子コードが含まれる。この場合、機械コードとして、特に、凹部または開口として工作物に付けられるバーコードが開示されている。これと同様に、工作物の表面に凸部として現れる凸状のバーコードも開示されている。これらのマーキングによって、3Dプリントで製造される工作物の明確な識別が可能である。その際、工作物にもらされる複数のコードが1つのファイルに統合され、ファイルは、工作物を製造するための印刷プロセス時に用いられる。このようにして、3Dプリント時にプリントデータが相応に変更されるので、凹状のまたは凸状のコードが工作物に付けられる。
【0003】
従来技術から出発して、課題は、付加製造法で作製された工作物の後続処理を自動化するとともに容易化することである。
【0004】
この課題は、本発明によれば、請求項1に記載の方法により解決される。本発明の好適な形態は、従属請求項、明細書および図面から明らかである。
【0005】
本発明によれば、材料塗布または材料削剥を制御するためにマーキングを工作物の後続の加工時に用いることが想定されている。したがって、付加製造法中に作製された、工作物のマーキングは、従来技術のように工作物を識別するために用いられるだけでなく、マーキングは、工作物を後続加工するときに、特にニス加工プロセスまたは研削プロセスによる材料塗布または材料削剥のプロセスを制御するために使用される。
【0006】
本発明の第1の形態では、工作物のマーキングが凹部であることが想定されている。凹部は、付加製造法で作製された工作物の材料削剥を制御するために使用される。したがって、工作物の表面が、凹部がもはや見えなくなるまで、たとえば研削または切削などの削剥プロセスにさらされることによって、凹部の深さにより削剥プロセスを制御することができる。この場合、凹部の視認性は、材料を削剥するための機械の操作工によって視覚的に、または自動で凹部を測定する光学センサによって、または凹部を感知する触覚センサによっても評価することができる。特に、マーキングのそれぞれ異なる複数の凹部が存在すると、すべての凹部が消失する場合には削剥プロセスが実行されないので、いくつかの凹部が加工後に持続的な特徴として視認可能および触知可能なまま維持されることも可能である。
【0007】
本発明の別の一形態では、加工物のマーキングが凸部であることが想定されている。凸部によって、たとえばニス加工または印刷などの、材料塗布プロセスを制御することができる。凸部の高さは、どれくらいの量のニスまたは印刷インキが工作物に塗布されるのかを決定する。したがって、凸部がもはや知覚されなくなる、見えなくなるまたは感知されなくなるまで、工作物にニスまたは印刷インキが塗布されることが想定されてよい。これは、ニス加工および印刷のための機械の操作工によって視覚的に、または光学センサもしくは触覚センサによって評価することもできる。
【0008】
本発明の特に好適な一形態では、マーキングが凸部と凹部との両方を含むことが想定されている。この場合、凸部と凹部との両方を含むマーキングによって、塗布プロセスと削剥プロセスとの両方を制御することができる。
【0009】
本発明のさらなる一形態では、マーキングが、それぞれ異なる高さの凸部であり、それぞれ異なる高さの全ての凸部に対して、対応する厚さのニス層または対応する厚さの印刷インキを、ニス加工機、印刷機またはニス加工ユニットによって塗布することが想定されている。工作物に、たとえばそれぞれ異なる高さの5つの凸部が付けられているとき、第1の凸部が消失するまで、第1のニス層が塗布される。第2の凸部が消失するまで、第2のニス層が塗布される。最後の凸部が消失し、したがって最後のニス層も塗布されるまで全体が繰り返される。とりわけ最後の層も印刷法で、たとえばインクジェットで塗布することもできるので、表面が平滑化されるだけでなく、同時に印刷像が塗布される。複数の中間層の1つを印刷層として構成して、次いでこれにクリアラッカ層による重ね刷りを行うこともできる。ゆえに、印刷像は、保護されているにもかかわらず、外側で視認可能である。したがって、それぞれ異なる高さの凸部は、凸部の寸法設定によって、相応の下塗りを含む複数のニス層の塗布を問題なく制御することができる。そのために、凸部を、特にカメラまたは触覚センサによって、光学的、視覚的または触覚的に検出することもできる。ゆえに、ニス加工機をカメラによって全自動で制御して、それぞれ異なる高さの凸部によって、自動で複数のニス層または下塗りを塗布することができる。特に、マーキングのそれぞれ異なる高さの複数の凸部が存在すると、すべての凸部が消失しない場合には削剥プロセスが実行されないので、いくつかの凸部が加工後に持続的な特徴として視認可能および触知可能なまま維持されることも可能である。
【0010】
本発明のさらなる一形態では、工作物の後続の加工時に材料塗布または材料削剥を制御するためのマーキングが、たとえばニス層厚さおよびニスの種類などの、工作物を加工するための、コーディングされた付加的な情報を含み、情報を、後続の加工プロセス中に、読取り機器によって、特に光学的な検出を用いて読み取ることが想定されている。この場合、マーキングは、材料塗布または材料削剥を制御するだけでなく、マーキングは、工作物の後続処理に必要となる、たとえばバーコードまたは視覚的に認識可能な他のコードの形態の付加的な情報、たとえばニスの種類などを含む。この場合、付けられたマーキングは、ニス加工機においてセンサ、たとえばカメラにより読み取られることによって、自動でニス加工機の制御装置に、どのニスが材料に塗布されるべきであるのかという情報を伝送することができる。さらに、従来技術と同様に、工作物を識別するための情報もマーキングに組み込むことができるので、材料に塗布するまたは材料を削剥する機械は、工作物を正確に識別することができる。したがって、マーキングを、材料塗布または材料削剥の制御と、後続処理プロセス中の別の目的との両方に用いることができる。
【0011】
以下、本発明を、複数の図面に基づいて詳しく記載および説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1a】それぞれ異なる7つの凹部を有する、3Dプリントで製造された工作物を示す。
【
図1b】それぞれ異なる4つの凹部を有する、3Dプリントで製造された工作物を示す。
【
図2】それぞれ異なる7つの凸部を有する、3Dプリントで製造された工作物を示す。
【
図3】凹部と凸部とから成る組み合わされたマーキングを有する、3Dプリントで製造された工作物を示す。
【0013】
図1aおよび
図1bの工作物1は、材料を削剥するプロセスを制御するために使用される、それぞれ異なる数の複数の凹部2を有する。凹部2は、3Dプリントで製造された工作物1を規定通りに平滑化するのに用いられる。というのも、工作物1は、3Dプリント法で製造された後では当初は極めて粗い表面を有するからである。そこで、それぞれ異なる凹部を介して、それぞれ異なる平滑化プロセスを制御することができる。したがって、先ずはそれぞれ異なる2つの粒度を有する研削材料を用いて2つの平滑化プロセスを実行することができる。第1の研削プロセスは、第1の凹部が見えなくなるまで実行される。次いで、第2の研削プロセスへと切り換えられ、この第2の研削プロセスは、別の粒度を有し、工作物1は、より深い第2のマーキングが見えなくなるまで研削される。これに続いて、それぞれ異なる粒度でさらなる研削プロセスを、
図1aのように7つの凹部がすべて見えなくなるまで、または
図1bのように4つの凹部がすべて見えなくなるまで、続けることができる。
図1aおよび
図1bは、それぞれ異なる数の凹部2によって、削剥プロセスまたは研削プロセスを複数のステップで極めて精密に制御可能であることを示している。その際、凹部2は、研削機の使用者によって視覚的に観察される、または凹部2は、凹部2の消失を検出し、次いで研削プロセスを相応して再調整するカメラまたは触覚センサによりスキャンされる。いずれにせよ研削プロセスが完了するときには、凹部2は完全に消失しているので、工作物1にもはやマーキングは認められない。
【0014】
図2の工作物1は、すべてが異なる大きさの面状の7つの凸部3を有する。好適には、凸部3は、系統的な順序で配置されているので、凸部は、最も低い凸部から最も高い凸部まで整列されている。ここでも工作物1の粗い1つの表面から出発し、その際、その表面は、ここでは下塗りおよびニスの塗布によって変化させられる。塗料の塗布は、たいてい保護または装飾上の理由から行われる。ゆえに、たとえば材料を覆う下塗りおよびこれに続く付加的なクリアラッカを塗布することができる。そのためには2つの凸部3で十分であろう。
図2において設けられた7つの凸部3によって、6つまでのニス層と付加的な1つの下塗りを塗布することができる。ここでもニス層の塗布は、ニス加工機の使用者によって視覚的に評価することができる、またはニス層における凸部3の消失を検出し、そうして次のニス層への移行を制御する、カメラなどのセンサが設けられている。複数のニス層のうちの1つ、好適には最上位の層を、印刷層によって、たとえばインクジェット印刷を介して塗布することも可能である。したがって、工作物1に任意に印刷を行うことができる。この場合、印刷層の厚さも、同様に凸部3によって制御される。中間のニス層を印刷層に置き換えることも可能である。この場合、印刷層を、その上に位置するクリアラッカ層によって保護することができる。
【0015】
図2において、複数の凸部のうちの1つが、付加的に暗色に着色されていて、したがって工作物1に対して対照的に着色された色付きの凸部5を形成する。この色付きの凸部5は、たとえば、色付きの凸部5がクリアラッカによって完全に包囲されているのみならず重ね刷りされているときでも、クリアラッカ層において依然として視認可能である。したがって、加工ステップの後ではもはや触知可能ではないが、それにもかかわらず視認可能のままであり、そうして工作物1を持続的に特徴付ける、対照的なマーキングを作製することができる。
【0016】
図3には、組み合わされたマーキング4を有する工作物1が描画されている。この組み合わされたマーキング4によって、削剥プロセスと材料塗布プロセスとの両方を制御することができる。
【符号の説明】
【0017】
1 工作物
2 凹部
3 凸部
4 組み合わされたマーキング
5 色付きの凸部