(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-25
(45)【発行日】2023-09-04
(54)【発明の名称】エアバッグドア
(51)【国際特許分類】
B60R 21/2165 20110101AFI20230828BHJP
B60R 21/205 20110101ALI20230828BHJP
【FI】
B60R21/2165
B60R21/205
(21)【出願番号】P 2019216766
(22)【出願日】2019-11-29
【審査請求日】2022-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】390026538
【氏名又は名称】ダイキョーニシカワ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡村 俊宏
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-182496(JP,A)
【文献】特開2001-180417(JP,A)
【文献】特開2010-105525(JP,A)
【文献】特開2014-166812(JP,A)
【文献】特開2012-131357(JP,A)
【文献】特開2007-216873(JP,A)
【文献】特開2008-024303(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16-21/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材(3)と、該基材(3)の表面に接合されたクッション層(7)と、該クッション層(7)の表面に接合された表皮(9)とを有する内装パネル(1)に形成されているとともに、少なくとも1つのドア部(51a,51b)を備え、上記ドア部(51a,51b)が、上記基材(3)における基材破断予定線(35)に囲まれた基材開作動予定領域(41a,41b)と、上記表皮(9)における表皮破断予定線(45)に囲まれた表皮開作動予定領域(47a,47b)とを有し、エアバッグ(17)の膨出圧により上記基材破断予定線(35)及び上記表皮破断予定線(45)が破断して開くエアバッグドアであって、
上記基材破断予定線(35)は、所定の第1方向に略直線状に延びる基材中央ティアライン(35a)と、上記基材中央ティアライン(35a)の両端から、互いに対向するように延出する1対の基材サイドティアライン(35b,35c)とを有し、上記基材サイドティアライン(35b,35c)の先端部には、先端側に向かって上記第1方向外側に傾斜する傾斜ライン(35d)が形成され、
上記表皮破断予定線(45)は、上記第1方向に略直線状に延びる表皮中央ティアライン(45a)と、上記表皮中央ティアライン(45a)の両端から、上記第1方向に対して直角な第2方向一方に向かって上記第1方向外側に傾斜するように延出する1対の表皮サイドティアライン(45b,45c)とを有し、
上記基材中央ティアライン(35a)と上記表皮中央ティアライン(45a)とは、上記クッション層(7)を挟んで互いに重なり、
上記表皮サイドティアライン(45b,45c)の基端及び先端を除く部分は、上記基材サイドティアライン(35b,35c)の外側に位置し、
上記基材サイドティアライン(35b,35c)の基端と上記表皮サイドティアライン(45b,45c)の基端との間隔は、表裏方向から見て前記クッション層(7)の厚さ(T)以下に設定され、
上記基材サイドティアライン(35b,35c)の傾斜ライン(35d)は、先端側に向かって上記表皮サイドティアライン(45b,45c)に接近し、上記基材サイドティアライン(35b,35c)の先端と上記表皮サイドティアライン(45b,45c)の先端との間隔は、表裏方向から見て前記クッション層(7)の厚さ(T)以下に設定され
、
上記クッション層(7)と上記表皮(9)との接合力が、上記基材(3)と上記クッション層(7)との接合力よりも高く設定されていることを特徴とするエアバッグドア。
【請求項2】
請求項
1に記載のエアバッグドアであって、
上記基材中央ティアライン(35a)及び上記表皮中央ティアライン(45a)を共有する2つの上記ドア部(51a,51b)で観音開き可能に構成されていることを特徴とするエアバッグドア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材と、該基材の表面に接合されたクッション層と、上記クッション層の表面に接合された表皮とを有する内装パネルに形成されたエアバッグドアに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、基材と、該基材の表面に接合されたクッション層と、該クッション層の表面に接合された表皮とを有する内装パネルに形成されているとともに、2つのドア部で観音開き可能に構成され、上記ドア部が、上記基材における基材破断予定線に囲まれた基材開作動予定領域と、上記表皮における表皮破断予定線に囲まれた表皮開作動予定領域とを有し、エアバッグの膨出圧により上記基材破断予定線及び上記表皮破断予定線が破断して開くエアバッグドアが開示されている。このエアバッグドアでは、各ドア部の基材破断予定線を、所定の第1方向に略直線状に延びる基材中央ティアラインと、上記基材中央ティアラインの両端から、互いに対向するように延出する1対の基材サイドティアラインとで構成している。また、各ドア部の表皮破断予定線を、上記第1方向に略直線状に延びる表皮中央ティアラインと、上記表皮中央ティアラインの両端から、上記第1方向に対して直角な第2方向一方に向かって上記第1方向外側に傾斜するように延出する1対の表皮サイドティアラインとで構成している。これにより、表皮サイドティアラインを表皮中央ティアラインに対して直角に設けた場合に比べ、表皮中央ティアラインに作用した破断力が表皮サイドティアラインにスムーズに伝わるようにしている。さらに、表皮開作動予定領域における反表皮センタティアライン側の端縁(ヒンジ側の端縁)と、表皮サイドティアラインとを、基材開作動予定領域の外側に配置することにより、表皮破断予定線で区画される4つの領域の面積を大きくし、エアバッグドアをスムーズに開作動させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1では、エアバッグドアの開作動時に、表皮の表皮開作動予定領域における反表皮中央ティアライン側(ヒンジ側)の両隅部が、基材と重ならない状態で、基材の基材開作動予定領域に引っ張られる。したがって、エアバッグドアの表皮の物性が経日変化等によって劣化していると、表皮の表皮開作動予定領域における反表皮中央ティアライン側の両隅部が破断して飛散する虞がある。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、表皮の表皮開作動予定領域における反表皮中央ティアライン側の隅部が破断して飛散するのを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明は、基材の基材サイドティアラインの先端を、表皮の表皮サイドティアラインの先端に表裏方向から見て接近するか又は重なるように配置したことを特徴とする。
【0007】
具体的には、第1の発明は、基材と、該基材の表面に接合されたクッション層と、該クッション層の表面に接合された表皮とを有する内装パネルに形成されているとともに、少なくとも1つのドア部を備え、上記ドア部が、上記基材における基材破断予定線に囲まれた基材開作動予定領域と、上記表皮における表皮破断予定線に囲まれた表皮開作動予定領域とを有し、エアバッグの膨出圧により上記基材破断予定線及び上記表皮破断予定線が破断して開くエアバッグドアを対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0008】
すなわち、第1の発明は、上記基材破断予定線は、所定の第1方向に略直線状に延びる基材中央ティアラインと、上記基材中央ティアラインの両端から、互いに対向するように延出する1対の基材サイドティアラインとを有し、上記基材サイドティアラインの先端部には、先端側に向かって上記第1方向外側に傾斜する傾斜ラインが形成され、上記表皮破断予定線は、上記第1方向に略直線状に延びる表皮中央ティアラインと、上記表皮中央ティアラインの両端から、上記第1方向に対して直角な第2方向一方に向かって上記第1方向外側に傾斜するように延出する1対の表皮サイドティアラインとを有し、上記基材中央ティアラインと上記表皮中央ティアラインとは、上記クッション層を挟んで互いに重なり、上記表皮サイドティアラインの基端及び先端を除く部分は、上記基材サイドティアラインの外側に位置し、上記基材サイドティアラインの基端と上記表皮サイドティアラインの基端との間隔は、表裏方向から見て前記クッション層の厚さ以下に設定され、上記基材サイドティアラインの傾斜ラインは、先端側に向かって上記表皮サイドティアラインに接近し、上記基材サイドティアラインの先端と上記表皮サイドティアラインの先端との間隔は、表裏方向から見て前記クッション層の厚さ以下に設定され、上記クッション層と上記表皮との接合力が、上記基材と上記クッション層との接合力よりも高く設定されていることを特徴とする。
【0009】
第2の発明は、第1の発明に係るエアバッグドアであって、上記基材中央ティアライン及び上記表皮中央ティアラインを共有する2つの上記ドア部で観音開き可能に構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
第1の発明によれば、エアバッグドアの開作動時に、表皮の表皮開作動予定領域における反表皮中央ティアライン側の両隅部に、基材サイドティアラインの先端近傍の基材が裏側から重なって表皮を補強するので、エアバッグドアの表皮の物性が経日変化等によって劣化している場合でも、表皮の表皮開作動予定領域における反表皮中央ティアライン側の隅部が破断して飛散するのを防止できる。
【0011】
また、表皮サイドティアラインを、表皮中央ティアラインに対して表皮開作動予定領域側で鈍角をなすように設けたので、表皮中央ティアラインに対して直角に設けた場合に比べ、エアバッグドアの開作動時に破断した表皮中央ティアラインの破断力が、両表皮サイドティアラインにスムーズに伝わりやすい。したがって、エアバッグドアの表皮の物性が経日変化等によって劣化している場合でも、表皮中央ティアライン及び表皮サイドティアラインだけを確実に破断させ、表皮サイドティアラインの基端部周辺の表皮が破断して飛散するのを防止できる。
【0012】
また、表皮の表皮開作動予定領域における基材の基材開作動予定領域と重ならない部分が、クッション層と重なって当該クッション層に補強された状態で開きやすい。したがって、エアバッグドアの開作動時に、表皮の表皮開作動予定領域における基材の基材開作動予定領域と重ならない部分が破断して飛散するのを防止できる。
【0013】
第2の発明によれば、エアバッグの膨出圧を2つのドア部に分散して作用させるので、1つのドア部に集中して作用させる場合に比べ、表皮に発生する応力を低減できる。したがって、表皮破断予定線以外の部分で表皮が破断するのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係るエアバッグドアが形成されたインストルメントパネルの斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るエアバッグドアが形成されたインストルメントパネルのアッパパネル部の左側端部の平面図である。
【
図3】
図2のIII-III線における断面図である。
【
図5】エアバッグドアの開作動後における
図2相当図である。
【
図6】エアバッグドアの開作動時における
図4相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
【0016】
図1及び
図2は、自動車の車室の前部に配置された内装パネルとしてのインストルメントパネル1を示す。このインストルメントパネル1は、車幅方向に略水平に延びるアッパパネル部1aと、該アッパパネル部1aの後端全幅から下方に延びるロアパネル部1bとを有し、これらで断面略L字状に形成されている。アッパパネル部1aの右寄り(運転席側)には、メータフード部1cが上側に膨出するように形成されている。
【0017】
インストルメントパネル1は、
図3及び
図4に示すように、樹脂製基材3と、当該基材3の表面に部分的に形成された樹脂製パッド5とを有している。このパッド5は、インストルメントパネル1のアッパパネル部1aの前端部分を除く領域、及びロアパネル部1bの上端部分に設けられている。したがって、インストルメントパネル1のアッパパネル部1aの前端部分及びロアパネル部1bの下端部分では、基材3が露出している。上記パッド5は、基材3の表面に接合されたクッション層7と、該クッション層7の表面に接合された表皮9とで構成されている。
【0018】
上記基材3は、その主体をなす基材本体11を有している。この基材本体11は、例えば繊維入りポリプロピレン(PP)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、ノリル樹脂等の樹脂材で射出成形されたものである。基材本体11は、アッパパネル部1a対応箇所を構成する上面部11a(
図3参照)と、ロアパネル部1b対応箇所を構成する後面部11b(
図1参照)とで断面略L字状に形成されている。基材本体11の上面部11aにおける車幅方向中央よりも左寄りの後端近傍には、矩形嵌合口13が形成されている。基材本体11の嵌合口13周縁部には、全周に亘ってその外周側よりも下方に凹む凹所11cが形成されている。嵌合口13には、サーモプラスチックオレフィン(TPO)等のエラストマー樹脂材で射出成形されたエアバッグシュート部材15が基材本体11表側から嵌め込まれて装着されて基材3の一部を構成している。
【0019】
このエアバッグシュート部材15は、車体前後方向からの衝撃から助手席の乗員を保護するためのエアバッグ17及びインフレータ(図示せず)等からなるエアバッグ装置19が内部に収納された筒状の枠体部21を備え、該枠体部21は、車幅方向に延びる前側枠壁21aと、この前側枠壁21aの後側に対向配置されて車幅方向に延びる後側枠壁21bと、これら前側枠壁21a及び後側枠壁21bの左縁同士を連結するように略車体前後方向に延びる左側枠壁(図示せず)と、右縁同士を連結するように略車体前後方向に延びる右側枠壁21cとからなる。左側枠壁及び右側枠壁21cの車体前後中央部は、車体前後方向に延びる一方、左側枠壁及び右側枠壁21cの車体前後両端部は、車体前後両端側に向かって車幅方向外側に傾斜している。前側枠壁21a及び後側枠壁21bの上端部寄りには、係合突起22が突設されている。
【0020】
上記前側枠壁21a及び後側枠壁21bには、複数個(
図3ではそれぞれ1個ずつ現れる)の掛止孔23が車幅方向に間隔をあけて形成され、上記エアバッグ装置19に取り付けられた複数個(
図3ではそれぞれ1個ずつ現れる)のフック25が上記掛止孔23に挿入されている。エアバッグ装置19の作動時には、上記フック25が掛止孔23周縁に引っ掛かって後述するエアバッグドア51のみがエアバッグ17で上方に押圧されるようになっている。
図3中、27は、車体のサイドパネルに橋絡されたインパネレインフォースメント(図示せず)に上記エアバッグ装置19を固定するためのブラケットである。
【0021】
上記枠体部21上端部の外側には、フランジ部28が全周に亘って一体に外側方に向かって張出し形成されている。枠体部21の車幅方向両側のフランジ部28の裏面の外周端寄りには、
図4に示すように、車体前後方向に延びる突条部29が突設されている。また、フランジ部28の裏面には、板面を車体前後方向に向けた板状の補強リブ30が、上記突条部29と左側枠壁(図示せず)及び右側枠壁21cとを連結するように突設されている。
【0022】
上記エアバッグシュート部材15が上記嵌合口13に基材3表側から嵌め込まれた状態で、上記フランジ部28を基材本体11の凹所11cに表側から重合させるとともに、上記係合突起22を上記嵌合口13周縁部に下方から係合させることにより、上記エアバッグシュート部材15が基材本体11に支持されている。また、前側枠壁21a、後側枠壁21b、及び両突条部29が嵌合口13の内周端面に内側から微小な間隔を空けて対峙している。この状態で、上記基材本体11の嵌合口13周縁部とエアバッグシュート部材15のフランジ部28とは、図示しないシールテープにより互いに接着されている。
【0023】
上記枠体部21上端部の内側には、板面を略上下方向に向けた板状のフラップ部31が枠体部21内部の上端側を閉塞するように一体に形成されている。このフラップ部31の裏面には、当該フラップ部31の車体前後中央で車幅方向に略直線状に延びる断面V字状の中央溝33aと、中央溝33aの両端から互いに対向するように略前方に延出する断面V字状の1対の前側サイド溝33bと、中央溝33aの両端から互いに対向するように略後方に延出する断面V字状の1対の後側サイド溝33cとが表面に達しないように形成されている。前側サイド溝33b及び後側サイド溝33cの基端部は、中央溝33aの両端から当該中央溝33aに対して直角に略直線状に延びている一方、前側サイド溝33b及び後側サイド溝33cの先端部は、先端側に向かって車幅方向外側に傾斜する略直線状の傾斜溝33dを構成している。前側サイド溝33b及び後側サイド溝33cは、フラップ部31の裏面における外周部に位置している。
【0024】
そして、フラップ部31の中央溝33aに対応する薄肉部分により、車幅方向に略直線状に延びる基材中央ティアライン35aが構成されている。また、フラップ部31の前側サイド溝33bに対応する薄肉部分により、基材中央ティアライン35aの両端から、互いに対向するように略前方に延出する基材前側サイドティアライン35bが構成され、フラップ部31の後側サイド溝33cに対応する薄肉部分により、基材中央ティアライン35aの両端から、互いに対向するように略後方に延出する基材後側サイドティアライン35cが構成されている。これら基材中央ティアライン35a、基材前側サイドティアライン35b、及び基材後側サイドティアライン35cが、基材破断予定線35を構成している。また、基材前側サイドティアライン35b及び基材後側サイドティアライン35cの先端部には、上記傾斜溝33dに対応する薄肉部分により、傾斜ライン35dが形成されている。
【0025】
また、フラップ部31の裏面における前側枠壁21a側の端部には、車幅方向に延びる前側凹部37aが形成され、フラップ部31における当該前側凹部37aに対応する薄肉部分が、車幅方向に略直線状に延びる基材前側ヒンジ部39aを構成している。基材前側ヒンジ部39aの両端は、両基材前側サイドティアライン35bの先端と一致している。また、フラップ部31の裏面における後側枠壁21b側の端部には、車幅方向に延びる後側凹部37bが形成され、フラップ部31における当該後側凹部37bに対応する薄肉部分が、車幅方向に略直線状に延びる基材後側ヒンジ部39bを構成している。基材後側ヒンジ部39bの両端は、両基材後側サイドティアライン35cの先端と一致している。
【0026】
そして、基材3における基材破断予定線35のうち、基材中央ティアライン35a、及び両基材前側サイドティアライン35bに囲まれた領域が、基材前側開作動予定領域41aを構成し、基材3における基材破断予定線35のうち、基材中央ティアライン35a、及び両基材後側サイドティアライン35cに囲まれた領域が、基材後側開作動予定領域41bを構成している。
【0027】
上記クッション層7はウレタン発泡体等であり、例えば独立発泡と連通発泡とが約半分ずつ分布する半硬質構造である。当該クッション層7の厚さTは、約5.5mmに設定されている。
【0028】
上記表皮9は、サーモプラスチックウレタン(TPU)等のエラストマー樹脂材やポリ塩化ビニル(PVC)等、基材3よりも濡れ性の良い樹脂材でスラッシュ成形や真空成形により成形されたものである。クッション層7と表皮9との接合力は、基材3とクッション層7との接合力よりも高く設定されている。上記表皮9の裏面には、上記フラップ部31と重なる領域の車体前後中央で車幅方向に略直線状に延びる断面V字状の中央切欠部43aと、当該中央切欠部43aの両端から、前方に向かって車幅方向外側に傾斜するように略直線状に延出する1対の断面V字状の前側サイド切欠部43bと、中央切欠部43aの両端から、後方に向かって車幅方向外側に傾斜するように略直線状に延出する1対の断面V字状の後側サイド切欠部43cとが表面に達しないように形成されている。
【0029】
上記表皮9の中央切欠部43aに対応する薄肉部分により、車幅方向に略直線状に延びる表皮中央ティアライン45aが構成されている。また、表皮9の前側サイド切欠部43bに対応する薄肉部分により、表皮中央ティアライン45aの両端から、前方に向かって車幅方向外側に傾斜するように略直線状に延出する1対の表皮前側サイドティアライン45bが構成され、表皮の後側サイド切欠部43cに対応する薄肉部分により、表皮中央ティアライン45aの両端から、後方に向かって車幅方向外側に傾斜するように略直線状に延出する1対の表皮後側サイドティアライン45cが構成されている。これら表皮中央ティアライン45a、表皮前側サイドティアライン45b及び表皮後側サイドティアライン45cが、表皮破断予定線45を構成している。
【0030】
そして、基材中央ティアライン35aと表皮中央ティアライン45aとは、クッション層7を挟んで互いに重なっている。また、両表皮前側サイドティアライン45bの基端及び先端を除く部分は、両基材前側サイドティアライン35bの外側に位置するとともに、両表皮後側サイドティアライン45cの基端及び先端を除く部分は、両基材後側サイドティアライン35cの外側に位置している。また、両基材前側サイドティアライン35bの基端と両表皮前側サイドティアライン45bの基端とは、クッション層7を挟んで互いに重なり、両基材後側サイドティアライン35cの基端と両表皮後側サイドティアライン45cの基端とは、クッション層7を挟んで互いに重なっている。両基材前側サイドティアライン35bの傾斜ライン35dは、先端側に向かって両表皮前側サイドティアライン45bに接近し、両基材前側サイドティアライン35bの先端と両表皮前側サイドティアライン45bの先端とは、クッション層7を挟んで互いに重なっている。両基材後側サイドティアライン35cの傾斜ライン35dは、先端側に向かって両表皮後側サイドティアライン45cに接近し、両基材後側サイドティアライン35cの先端と両表皮後側サイドティアライン45cの先端とは、クッション層7を挟んで互いに重なっている。
【0031】
また、表皮9における表皮破断予定線45のうち、表皮中央ティアライン45a、及び両表皮前側サイドティアライン45bで囲まれた領域が、表皮前側開作動予定領域47aを構成し、表皮9における表皮破断予定線45のうち、表皮中央ティアライン45a、及び両表皮後側サイドティアライン45cで囲まれた領域が、表皮後側開作動予定領域47bを構成している。また、表皮9における表皮前側開作動予定領域47aと、クッション層7における表皮前側開作動予定領域47aに重なる領域とで、パッド前側開作動予定領域49aが構成され、表皮9における表皮後側開作動予定領域47bと、クッション層7における表皮後側開作動予定領域47bに重なる領域とで、パッド後側開作動予定領域49bが構成されている。
【0032】
そして、上記基材3における基材前側開作動予定領域41aと、上記パッド5におけるパッド前側開作動予定領域49aとで、前側ドア部51aが構成されている。また、上記基材3における基材後側開作動予定領域41bと、パッド5におけるパッド後側開作動予定領域49bとで、後側ドア部51bが構成されている。これら前側ドア部51a及び後側ドア部51bは、基材中央ティアライン35a及び表皮中央ティアライン45aを共有している。これら前側ドア部51a及び後側ドア部51bにより、基材破断予定線35及び表皮破断予定線45を表側から視認できない、いわゆるシームレスタイプのエアバッグドア51が観音開き可能に構成されている。
【0033】
上記の如く構成されたインストルメントパネル1は、表皮9を図示しない第1型にセットするとともに、基材3を図示しない第2型にセットした後、第1型及び第2型を型閉めし、この状態で表皮9と基材3との間に、ウレタンフォーム等の発泡樹脂材料を注入して発泡硬化させてクッション層7を成形することにより得られる。表皮9が基材3に比べて濡れ性の良い材料で構成されているので、クッション層7と表皮9との接合力が、基材3とクッション層7との接合力よりも高くなる。
【0034】
上記の如く構成されたインストルメントパネル1では、エアバッグ装置19のエアバッグ17がインフレータの起動によって膨出すると、その膨出圧でエアバッグドア51が上方に押圧されて基材3の基材破断予定線35が破断し、
図5及び
図6に示すように、基材3の基材前側開作動予定領域41aが基材前側ヒンジ部39aを支点として前方上向きに回動するとともに、基材3の基材後側開作動予定領域41bが基材後側ヒンジ部39bを支点として後方上向きに回動する。また、表皮9の表皮破断予定線45も基材3の基材前側開作動予定領域41a及び基材後側開作動予定領域41bに引っ張られて破断し、パッド5のパッド前側開作動予定領域49aが基材3の基材前側開作動予定領域41aと一体となって前方上向きに回動するとともに、パッド5のパッド後側開作動予定領域49bも基材3の基材後側開作動予定領域41bと一体となって後方上向きに回動する。つまり、前側ドア部51aが前方上向きに開くとともに、後側ドア部51bが後方上向きに開く。このとき、表皮9の表皮前側開作動予定領域47aにおける反表皮中央ティアライン45a側の両隅部に、基材前側サイドティアライン35bの先端近傍の基材3が裏側から重なって表皮9を補強するので、エアバッグドア51の表皮9の物性が経日変化等によって劣化している場合でも、表皮9の表皮前側開作動予定領域47aにおける反表皮中央ティアライン45a側の隅部が破断して飛散しにくい。同様に、表皮9の表皮後側開作動予定領域47bにおける反表皮中央ティアライン45a側の両隅部に、基材後側サイドティアライン35cの先端近傍の基材3が裏側から重なって表皮9を補強するので、エアバッグドア51の表皮9の物性が経日変化等によって劣化している場合でも、表皮9の表皮後側開作動予定領域47bにおける反表皮中央ティアライン45a側の隅部が破断して飛散しにくい。
【0035】
また、表皮前側サイドティアライン45b及び表皮後側サイドティアライン45cを、表皮中央ティアライン45aに対して表皮前側開作動予定領域47a側及び表皮後側開作動予定領域47b側で鈍角をなすように設けたので、表皮中央ティアライン45aに対して直角に設けた場合に比べ、表皮中央ティアライン45aの破断力が、両表皮前側サイドティアライン45b及び両表皮後側サイドティアライン45cにスムーズに伝わりやすい。したがって、エアバッグドア51の表皮の物性が経日変化等によって劣化している場合でも、表皮破断予定線45だけを確実に破断させ、表皮前側サイドティアライン45b及び表皮後側サイドティアライン45cの基端部周辺の表皮9が破断するのを防止できる。
【0036】
また、クッション層7と表皮9との接合力が、基材3とクッション層7との接合力よりも高く設定されているので、表皮9の表皮前側開作動予定領域47aにおける基材3の基材前側開作動予定領域41aと重ならない部分と、表皮後側開作動予定領域47bにおける基材3の基材後側開作動予定領域41bと重ならない部分とが、クッション層7と重なって当該クッション層7に補強された状態で開きやすい。したがって、エアバッグドア51の開作動時に、表皮9の表皮前側開作動予定領域47aにおける基材3の基材前側開作動予定領域41aと重ならない部分と、表皮後側開作動予定領域47bにおける基材3の基材後側開作動予定領域41bと重ならない部分とが破断して飛散するのを防止できる。
【0037】
また、エアバッグ17の膨出圧を前側ドア部51a及び後側ドア部51bに分散して作用させるので、1つのドア部に集中して作用させる場合に比べ、表皮9に発生する応力を低減できる。したがって、表皮破断予定線45以外の部分で表皮9が破断するのを抑制できる。
【0038】
また、基材前側サイドティアライン35b及び基材後側サイドティアライン35cの基端部を車体前後方向に延びるように設けたので、傾斜ライン35dの延長線上に設けた場合に比べ、基材前側サイドティアライン35b及び基材後側サイドティアライン35cの基端部を車幅方向外側に配置できる。したがって、基材前側開作動予定領域41a及び基材後側開作動予定領域41bを広くできる。
【0039】
また、表皮9の表皮前側開作動予定領域47aにおける基材3の基材前側開作動予定領域41aに重ならない部分が、基材3の基材中央ティアライン35aの端末と基材前側サイドティアライン35bの先端とを繋ぐ直線の外側にはみ出ないので、飛散し難い。同様に、表皮9の表皮後側開作動予定領域47bにおける基材3の基材後側開作動予定領域41bに重ならない部分が、基材3の基材中央ティアライン35aの端末と基材後側サイドティアライン35cの先端とを繋ぐ直線の外側にはみ出ないので、飛散し難い。
【0040】
なお、上記実施形態では、両基材前側サイドティアライン35bの基端と両表皮前側サイドティアライン45bの基端との間隔を表裏方向から見て0mmとしたが、表裏方向から見てクッション層7の厚さT以下であって0mmを超える値としてもよい。同様に、両基材後側サイドティアライン35cの基端と両表皮後側サイドティアライン45cの基端との間隔を、表裏方向から見てクッション層7の厚さT以下であって0mmを超える値としてもよい。
【0041】
また、上記実施形態では、両基材前側サイドティアライン35bの先端と両表皮前側サイドティアライン45bの先端との間隔を表裏方向から見て0mmとしたが、表裏方向から見てクッション層7の厚さT以下であって0mmを超える値としてもよい。同様に、基材後側サイドティアライン35cの先端と両表皮後側サイドティアライン45cの先端との間隔も、表裏方向から見てクッション層7の厚さT以下であって0mmを超える値としてもよい。
【0042】
また、上記実施形態では、基材中央ティアライン35a及び表皮中央ティアライン45aを、車幅方向に延びるように設け、表皮前側サイドティアライン45b及び表皮後側サイドティアライン45cを、車体前後方向一方に向かって車幅方向外側に傾斜させた。しかし、表皮前側サイドティアライン45b及び表皮後側サイドティアライン45cを、基材中央ティアライン35a及び表皮中央ティアライン45aの延びる第1方向に対して直角な第2方向に向かって第1方向外側に傾斜させるのであれば、基材中央ティアライン35a、表皮中央ティアライン45a、表皮前側サイドティアライン45b及び表皮後側サイドティアライン45cの延びる方向を他の方向に設定してもよい。
【0043】
また、上記実施形態では、表皮9の表皮破断予定線45に断面V字状の中央切欠部43a、前側サイド切欠部43b、及び後側サイド切欠部43cを形成したが、切込部をコールドカッターにより形成してもよい。
【0044】
また、表皮9のクッション層7との接着面にプライマーを塗布することにより、表皮9とクッション層7との接着力を高めてもよい。これにより、クッション層7と表皮9との接合力を、基材3とクッション層7との接合力よりもより確実に高くできる。
【0045】
また、枠体部21の左側枠壁及び右側枠壁21cを、基材前側サイドティアライン35bの先端と基材後側サイドティアライン35cの先端とを繋ぐ直線上に設けるとともに、フラップ部31の裏面における左側枠壁側の端部と右側枠壁21c側の端部とに、車体前後方向に延びるサイド凹部を設け、当該サイド凹部に対応する薄肉部分がサイドヒンジ部を構成するようにしてもよい。これにより、左側の基材前側サイドティアライン35b及び左側の基材後側サイドティアライン35cの左外側の基材3と、左側の表皮前側サイドティアライン45b及び左側の表皮後側サイドティアライン45cの左外側の表皮9とで、エアバッグ17の膨出圧により左側のサイドヒンジ部を中心として右側上向きに回動して開く左側ドア部が構成される。また、右側の基材前側サイドティアライン35b及び右側の基材後側サイドティアライン35cの右外側の基材3と、右側の表皮前側サイドティアライン45b及び右側の表皮後側サイドティアライン45cの右外側の表皮9とで、エアバッグ17の膨出圧により右側のサイドヒンジ部を中心として左側上向きに回動して開く右側ドア部が構成される。そして、上記前側ドア部51a、後側ドア部51b、左側ドア部、及び右側ドア部の4枚のドア部によりエアバッグドア51が構成される。
【0046】
また、上記実施形態では、基材3を、基材本体11及びエアバッグシュート部材15の2部材で構成したが、1部材で構成してもよい。
【0047】
また、上記実施形態では、本発明をインストルメントパネル1に適用したが、本発明は、インストルメントパネル1以外の内装パネルにも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、基材と、該基材の表面に接合されたクッション層と、上記クッション層の表面に接合された表皮とを有する内装パネルに形成されたエアバッグドアとして有用である。
【符号の説明】
【0049】
1 インストルメントパネル(内装パネル)
3 基材
7 クッション層
9 表皮
17 エアバッグ
35 基材破断予定線
35a 基材中央ティアライン
35b 基材前側サイドティアライン
35c 基材後側サイドティアライン
35d 傾斜ライン
41a 基材前側開作動予定領域
41b 基材後側開作動予定領域
45 表皮破断予定線
45a 表皮中央ティアライン
45b 表皮前側サイドティアライン
45c 表皮後側サイドティアライン
47a 表皮前側開作動予定領域
47b 表皮後側開作動予定領域
51 エアバッグドア
51a 前側ドア部
51b 後側ドア部
T 厚さ