(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-25
(45)【発行日】2023-09-04
(54)【発明の名称】金属の電解回収装置
(51)【国際特許分類】
C25C 7/02 20060101AFI20230828BHJP
【FI】
C25C7/02 302G
(21)【出願番号】P 2019220187
(22)【出願日】2019-12-05
【審査請求日】2022-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】323001683
【氏名又は名称】アサヒプリテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119725
【氏名又は名称】辻本 希世士
(74)【代理人】
【識別番号】100168790
【氏名又は名称】丸山 英之
(72)【発明者】
【氏名】平山 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】岩佐 卓哉
【審査官】瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開昭47-038724(JP,A)
【文献】特表昭61-501271(JP,A)
【文献】特開昭62-218593(JP,A)
【文献】特開2007-100144(JP,A)
【文献】特開2005-177681(JP,A)
【文献】登録実用新案第3191315(JP,U)
【文献】国際公開第2008/153001(WO,A1)
【文献】特開昭60-177193(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25C 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属が溶解している液から前記金属を電解回収する電解回収装置であって、
前記液を収容する処理槽(1)と、
前記処理槽(1)の内部に位置する陰電極(2)と、
前記処理槽(1)の内面に固設された係止部(3)と、
前記係止部(3)と着脱可能に係止する支持部(4)と、
前記支持部(4)に固設された陽電極(5)と、
を備えることを特徴とする電解回収装置。
【請求項2】
前記係止部(3)において、前記支持部(4)を係止する窪み(31)が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電解回収装置。
【請求項3】
前記係止部(3)が絶縁体により形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電解回収装置。
【請求項4】
前記支持部(4)が導電体により形成されており、前記処理槽(1)の内周側面に亘り環状に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の電解回収装置。
【請求項5】
前記窪み(31)が溝状であることを特徴とする請求項2に記載の電解回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属イオンを含有する廃液から、電解によって金属を回収する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
貴金属やレアメタルなどの金属は世界的に生産量が少なく需要が逼迫しているところ、国内での生産が極めて乏しいため外国からの輸入に頼る必要があるが、外国の経済政策等により輸入量が制限されることもあり国内企業が入手するに際して政治リスクもあった。このため、工場等から排出される排水や廃液に含有されている金、銀、銅、ニッケル、白金族元素等の金属は、排水や廃液から回収されて再利用されている。
【0003】
排水や廃液から金属を回収する装置は従前より知られているが、例えば特許文献1には、処理槽本体内に、モータによって軸を中心にして回転する円筒状の陰電極と、陰電極と対向するように配置された複数の板状陽電極とを備えている電解回収装置が開示されている。
【0004】
そして、特許文献2には、軸を中心として回転する柱状または筒状の回転陰電極と、回転陰電極と対向するように配置された陽電極と、網状または多孔質状の導電体等を備えている電解回収装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】登録実用新案登録第3191315号公報
【文献】再表2008/153001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2の電解回収装置では、複数の陽電極が電解のための処理槽の内壁にそれぞれ螺子などにより固設されているため、陽電極が経時劣化等によって取り替える必要があるときに、それぞれの陽電極を一枚ずつ取り外す必要があり、手間が掛かるという課題があった。また、陽電極を固設している螺子などの固設手段を取り外したときに誤って廃液中に落としてしまうこともあり、その螺子などの固設手段を回収することも非常に手間が掛かるという課題もあった。
【0007】
そのため、陽電極が経時劣化等によって取り替える必要があるときに、廃液等の金属を含有する液を収容する処理槽から簡便に取り外し、また、新しい陽電極を簡便に取り付けることができる金属の電解回収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
〔1〕すなわち、金属が溶解している液から前記金属を電解回収する電解回収装置であって、前記液を収容する処理槽(1)と、前記処理槽(1)の内部に位置する陰電極(2)と、前記処理槽(1)の内面に固設された係止部(3)と、前記係止部(3)と着脱可能に係止する支持部(4)と、前記支持部(4)に固設された陽電極(5)と、を備えることを特徴とする電解回収装置である。
【0009】
〔2〕そして、前記係止部(3)において、前記支持部(4)を係止する窪み(31)が形成されていることを特徴とする前記〔1〕に記載の電解回収装置である。
【0010】
〔3〕そして、前記係止部(3)が絶縁体により形成されていることを特徴とする前記〔1〕又は前記〔2〕に記載の電解回収装置である。
【0011】
〔4〕そして、前記支持部(4)が導電体により形成されており、前記処理槽(1)の内周側面に亘り環状に形成されていることを特徴とする前記〔1〕から前記〔3〕のいずれかに記載の電解回収装置である。
【0012】
〔5〕そして、前記窪み(31)が溝状であることを特徴とする前記〔2〕に記載の電解回収装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電解回収装置によれば、陽電極が経時劣化等によって取り替える必要があるときに、廃液を収容する処理槽から簡便に取り外し、また、新しい陽電極を簡便に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本件発明の実施形態における電解回収装置の全体斜視図である。
【
図2】本件発明の実施形態における電解回収装置の開蓋状態における部分破断左側面図である。
【
図3】本件発明の実施形態における電解回収装置のA-A線断面図である。
【
図4】本件発明の実施形態における電解回収装置の部分破断斜視図である。
【
図5】本件発明の実施形態における電解回収装置の陽電極関連部材を取り外した状態における部分破断斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る電解回収装置に関する実施の形態について、添付の図面に基づいて詳しく説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施するに好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本発明は、以下の説明において特に発明を限定する旨が明記されていない限り、この形態に限定されるものではない。説明中の上下方向は、
図1における上下方向を意味している。
【0016】
図1から
図5に示すように、電解回収装置は、処理槽1、陰電極2、係止部3、支持部4、陽電極5、導電部材6、電動モータ7、蓋部8などから構成され、処理槽1内の位置する電動モータ7により回転軸21を中心に回転する円筒形の陰電極2と、陰電極2の外側には複数の陽電極5が配設されている。
【0017】
処理槽1は、金属が溶解している廃液を収容する部材である。本実施形態において、処理槽1は廃液を収容するとともに、廃液の下方に位置している電動モータ7、操作パネルと接続された制御部なども収容する筐体としても機能しているが、他の実施形態において、必ずしも筐体を兼ねている必要はなく、筐体とは独立して設けられていても良い。
【0018】
処理槽1の少なくとも上部は、本実施形態のような角筒状又は丸筒状などの筒状に上方に向かって開口して形成されていることが好ましい。処理槽1の上部がこのような形状に形成されていると、陽電極5が固設された支持部4を取り出すときに、処理槽1に引っかかることなくスムーズに取り外し又は取り付けることができる。
【0019】
陰電極2は、処理槽1の内部に位置している電極である。陰電極2は、円筒形状を有しており、その内部の軸中心に沿って配設された回転軸21及び回転軸21を回転させる電動モータ7によって所定の速度で回転可能である。陰電極2は、図示しない給電部から回転軸21内を通じて通電されることにより、その表面に廃液に含有されている所望の金属を析出させることができる。このようにして、陰電極2に金属が析出されると、装置を停止してから陰電極2を処理槽1から取り外して、陰電極2に付着した析出された金属をそぎ落とすなどして回収する。
【0020】
そして、陰電極2は、実際の使用時には回転されることから、単純な円筒形でなく、廃液の流れを制御するために、中心軸方向に沿って円筒形の外周面又は内周面に複数の板部材等が突設されていてもよい。さらに、陰電極2は、本実施形態において、板状部材を円筒形に形成した形状を有しているが、他の実施形態において、網状の部材を同様に円筒形状とすることもできる。
【0021】
また、陰電極2は、導電体であるが、廃液に浸漬されるために、廃液に対して耐腐食性を有するステンレス鋼、チタンなどから形成されることが好ましい。
【0022】
係止部3は、処理槽1の内面に固設された部材であり、支持部4を係止する。係止部3は、支持部4と係止する窪み31が形成されており、本実施形態において窪み31は、上方に開口している溝状である。窪み31が、上方に開口している溝状であることによって、処理槽1の上部が角筒状であることから処理槽1に載置している蓋部8を取り外し、窪み31に挿嵌している支持部4を係止部3から上方に持ち上げて、
図5に示すように、支持部4に固設された陽電極5を装置から簡便に取り外すことができる。さらに、装置外で陽電極5を取り替えることができるので、処理槽1内に陽電極5を固設する螺子等の固定手段を廃液中に落下させるおそれもなく、円滑に交換作業を実施することができる。そして、陽電極5を取り替えた支持部4を、再び窪み31に挿嵌させて係止することで、処理槽1に簡便に取り付けることができる。本実施形態において、係止部3の窪み31は上方に開口している溝状であるが、他の実施形態において、係止部3の窪みが、支持部4を取り外し及び取り付け容易に変形自在な弾性部材等からなり、側方に開口していたり、廃液中に落下しない限りにおいて下方に開口していたりしてもよい。
【0023】
そして、本実施形態において、係止部3の窪み31は溝状であるが、他の実施形態において、係止部3の窪み31は丸穴、角穴、長孔など、支持部4にそれらと挿嵌する突起と対応するように設けて、係止部3と支持部4を係止するようにすることができる。さらに、係止部3は、本実施形態における溝状や上記変形例の丸穴、角穴、長孔などの雌部材ではなく、突起や突設部材などの雄部材として、支持部4にそれらと挿嵌する凹部、丸穴、角穴、長孔などの雌部材を設けて、係止部3と支持部4を係止するようにすることができる。
【0024】
係止部3は、支持部4が通電する導電体であるときに通電し不必要な電流が流れることを防ぐために、絶縁体であることが好ましい。具体的に、係止部3は、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、天然ゴム、ポリエステル、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン、ガラス繊維などの有機材料又は無機材料から成ることが好ましい。また、係止部3は、本実施形態において、処理槽1の各々の内面に2個ずつ合計8個設けられているが、他の実施形態において、処理槽1の各々の内面に1個ずつまたは3個ずつ以上としたり、実施形態の係止部3よりも長くして1個ずつとしたりすることもできる。
【0025】
また、係止部3には、窪み31を形成する側面が傾斜している傾斜面32を有している。傾斜面32は、窪み31の開口側に向かって広くなるように上下方向より所定の角度だけ傾斜されている。これにより、陽電極5を取り替えた支持部4を取り付けるときに、支持部4を窪み31の開口の上方のおおよその位置に配設することで、支持部4が傾斜面32に案内され窪み31に挿嵌する。
【0026】
支持部4は、係止部3と着脱可能に係止し、陽電極5が固設される部材である。支持部4は、係止部3と着脱可能に係止することにより、陽電極5を処理槽1からの取り外し及び取り付けを簡便なものとし、陽電極5の取替え作業を容易にしている。支持部4は、本実施形態において、板状であるが、他の実施形態において、係止部3と着脱可能であり陽電極5を固設できる限りにおいて、角柱状、丸棒状、先端が曲がったフック状などの形状としてもよく、さらに、係止部3の形状に応じて突起や突設部材などの雄部材又は凹部、丸穴、角穴、長孔などの雌部材を設けることができる。また、支持部4は、本実施形態において、処理槽1の内周側面に亘り環状に形成されているが、他の実施形態において、処理槽1の内面ごとに独立していてもよい。
【0027】
支持部4は、一の部材又は複数の部材からなる導電体により形成されており、処理槽1の内周側面に亘り環状に形成されていることが好ましい。このように形成することにより、
図2から
図5に示すように、導電部材6を介して支持部4の一部に図示しない給電部から通電することにより、複数の陽電極5に通電することが可能となり、配線の取り回しが単純化できるので、故障しにくい耐久性の高い装置を製作することができる。
【0028】
陽電極5は、支持部4に固設された電極であり、陰電極2の対電極である。陽電極5は、図示しない給電部より導線を通じて支持部4を解して間接的に又は直接的に通電され、陰電極2との間で廃液中に電流を流す。本実施形態において、陽電極5は板状であるが、他の実施形態において、角柱状、丸棒状などの形状としてもよい。また、陽電極5は、本実施形態において、処理槽1の各々の内面に1枚ずつ合計4枚設けられているが、他の実施形態において、処理槽1の各々の内面に1枚ずつまたは3枚ずつ以上としたりすることもできる。
【0029】
導電部材6は、図示しない給電部から陽電極5に通電する導電性の部材である。本実施形態において、導電部材6は、その先端部において陽電極5とともに支持部4を挟持し螺子にて固定されている。また、導電部材6の基端部で装置に取り付けられているところ、装置の陽極側カバーCを外して導電部材6の基端部を装置から外すと、
図5に示すように、陽電極5及び支持部4を分解せずに取り外すことができる。
【0030】
嵌合部9は、処理槽1の液底板Bに固設された部材であり、陽電極5を嵌合する。嵌合部9は、陽電極5の下端と嵌合する窪み91が形成されており、本実施形態において窪み91は、上方に開口している溝状である。窪み91が、上方に開口している溝状であることによって、陽電極5の下端を嵌合し、陽電極5が簡便に固定することができる。また、嵌合部9には、窪み91を形成する側面が傾斜している傾斜面92を有している。傾斜面92は、窪み91の開口側に向かって広くなるように上下方向より所定の角度だけ傾斜されている。これにより、陽電極5を取り替えた支持部4を取り付けるときに、陽電極5を窪み91の開口の上方のおおよその位置に配設することで、陽電極5が傾斜面92に案内され窪み91に嵌合する。
【0031】
嵌合部9は、絶縁体であることが好ましく、具体的に、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、天然ゴム、ポリエステル、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン、ガラス繊維などの有機材料又は無機材料から成ることが好ましい。また、嵌合部9は、本実施形態において、1枚の陽電極5に対応するように処理槽1の液底板Bに1個ずつ合計4個設けられているが、他の実施形態において、2個ずつ以上とすることもできる。
【符号の説明】
【0032】
1・・・処理槽
2・・・陰電極
21・・・回転軸
3・・・係止部
31・・・窪み
32・・・傾斜面
4・・・支持部
5・・・陽電極
6・・・導電部材
7・・・電動モータ
8・・・蓋部
9・・・嵌合部
91・・・窪み
92・・・傾斜面
B・・・液底板
C・・・陽極側カバー