(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-25
(45)【発行日】2023-09-04
(54)【発明の名称】難燃性導電性ペースト及び該難燃性導電性ペーストの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20230828BHJP
C08K 3/08 20060101ALI20230828BHJP
C08K 5/521 20060101ALI20230828BHJP
H01B 1/22 20060101ALI20230828BHJP
H01B 13/00 20060101ALI20230828BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K3/08
C08K5/521
H01B1/22 A
H01B13/00 Z
(21)【出願番号】P 2019221056
(22)【出願日】2019-12-06
【審査請求日】2022-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000239426
【氏名又は名称】福田金属箔粉工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100173406
【氏名又は名称】前川 真貴子
(74)【代理人】
【識別番号】100067301
【氏名又は名称】安藤 順一
(72)【発明者】
【氏名】幸松 美知夫
(72)【発明者】
【氏名】古谷 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 智明
【審査官】岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-221005(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108117727(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108003771(CN,A)
【文献】特表2001-502375(JP,A)
【文献】特開2017-162776(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/16
H01B 1/22
H01B 13/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレーク状銀粒子と樹脂
(但し、分子内にリン原子を含有するポリエステル樹脂及び/又は変性ポリエステル樹脂とグリシジル基を含有するノンハロゲン系樹脂の両方を含有する樹脂を除く)と難燃剤と有機溶剤を含有する難燃性導電性ペーストであって、前記フレーク状銀粒子と前記樹脂と前記難燃剤からなる固形分が40~90重量%であり、前記固形分における前記フレーク状銀粒子の含有量が80~95重量%であり、前記樹脂対前記難燃剤の重量比が91:9~40:60であり、前記難燃剤がリン酸エステル化合物である難燃性導電性ペースト。
【請求項2】
前記リン酸エステル化合物が縮合リン酸エステル化合物である請求項1記載の難燃性導電性ペースト。
【請求項3】
前記難燃性導電性ペーストのチクソ値が1.5~2.5である請求項1又は2記載の難燃性導電性ペースト。
【請求項4】
前記難燃性導電性ペーストの比抵抗が2.5×10
-4Ω・cm以下である請求項1乃至3いずれか記載の難燃性導電性ペースト。
【請求項5】
銀粒子と樹脂と難燃剤と有機溶剤とを混錬して製造する請求項1乃至4いずれか記載の難燃性導電性ペーストの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は難燃性導電性ペーストに関する。詳しくは、該難燃性導電性ペーストは、難燃剤としてリン酸エステル化合物を含有するため、近辺で出火があったとしても、乾燥塗膜に引火しないか、仮令、引火したとしても直後に鎮火するという優れた難燃性を備えると共に、導電性に優れ、しかも、基材に対する密着性が高くて剥離し難いため、コンデンサの電極に好適に使用できる難燃性導電性ペーストに関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品の一種であるコンデンサには、アルミコンデンサ、セラミックコンデンサ、タンタルコンデンサ、フィルムコンデンサ等の種類がある。
【0003】
コンデンサの基本構造は、絶縁性物質で絶縁されている導体間で電気を蓄える構造である。
【0004】
しかし、導体を絶縁している絶縁性物質によって十分に絶縁できない状態になると、両極間が導通されて短絡が生じ、出火することがある。
【0005】
短絡による出火に対し、従来は、外装樹脂を難燃化することで、コンデンサの燃焼を防止してきたが、内部構成部材の材料についても難燃化の要求は高まっており、電極に対しても難燃化が要求されている。
【0006】
コンデンサの電極は導電材料を樹脂に分散させた導電性ペーストを誘電体に塗布した後、硬化させて形成することができる。
【0007】
電極に使用する導電性ペーストに難燃剤を含有させると、難燃性は付与できるが、添加した難燃剤によって比抵抗が高まるため導電性が低下する。
【0008】
特に、短絡出火によっても乾燥塗膜に引火しないよう難燃剤の添加量を増やせば、導電性が非常に低下し、コンデンサの電極としては使用できない虞がある。
【0009】
また、難燃剤の含有量が高くなると、ペーストが含有する樹脂の割合が減少することから、製膜性や、塗膜と基材との密着性を低下させるので、乾燥塗膜が誘電体から剥離する虞が生じる。
【0010】
したがって、従来の導電性ペーストは、耐熱性はあったとしても、短絡出火による乾燥塗膜への引火が防止できる程度の難燃性は望めなかった。
【0011】
そこで、短絡出火があっても乾燥塗膜への引火を防止できるか、仮令、引火しても直後に鎮火する優れた難燃性を有し、コンデンサの燃焼を抑制できると共に、高い導電性を備え、塗膜と基材との密着性が高くて剥離し難く、コンデンサの電極に好適に使用できる難燃性導電性ペーストの開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1には、導電性粉末と熱硬化性成分と硬化剤とを含有する熱硬化型導電性ペースト組成物にリン酸エステル基含有分散剤を配合した熱硬化型導電性ペースト組成物が記載されている。
【0014】
しかしながら、リン酸エステル基含有分散剤の含有量は導電性粉末及び熱硬化性成分の合計量を100質量部としたときに、0.01質量部以上0.5質量部未満であり、0.5質量部以上含有させると、耐熱性および耐湿性が低下する場合があると記載されていることから、特許文献1記載の熱硬化型導電性ペースト組成物に引火が防止できる程度の難燃性は望めない。
【0015】
本発明者らは、前記諸問題点を解決することを技術的課題とし、試行錯誤的な数多くの試作・実験を重ねた結果、フレーク状銀粒子と樹脂と難燃剤と有機溶剤を含有する難燃性導電性ペーストであって、前記フレーク状銀粒子と前記樹脂と前記難燃剤からなる固形分が40~90重量%であり、前記固形分における前記フレーク状銀粒子の含有量が80~95重量%であり、前記樹脂対前記難燃剤の重量比が91:9~40:60であり、前記難燃剤がリン酸エステル化合物である難燃性導電性ペーストであれば、近辺で出火があったとしても乾燥塗膜に引火しないか、仮令、引火したとしても直後に鎮火する優れた難燃性を備えると共に、導電性が高く、また、塗膜と基材との密着性が高くて剥離し難い難燃性導電性ペーストが得られるという刮目すべき知見を得て、前記技術的課題を達成したものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記技術的課題は次のとおり、本発明によって解決できる。
【0017】
本発明は、フレーク状銀粒子と樹脂と難燃剤と有機溶剤を含有する難燃性導電性ペーストであって、前記フレーク状銀粒子と前記樹脂と前記難燃剤からなる固形分が40~90重量%であり、前記固形分における前記フレーク状銀粒子の含有量が80~95重量%であり、前記樹脂対前記難燃剤の重量比が91:9~40:60であり、前記難燃剤がリン酸エステル化合物である難燃性導電性ペーストである。
【0018】
また、本発明は、前記リン酸エステル化合物が縮合リン酸エステル化合物である前記難燃性導電性ペーストである。
【0019】
また、本発明は、前記難燃性導電性ペーストのチクソ値が1.5~2.5である前記難燃性導電性ペーストである。
【0020】
また、本発明は、前記難燃性導電性ペーストの比抵抗が2.5×10-4Ω・cm以下である前記難燃性導電性ペーストである。
【0021】
また、本発明は、銀粒子と樹脂と難燃剤と有機溶剤を混錬して製造する前記難燃性導電性ペーストの製造方法である。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、リン酸エステル化合物を含有する導電性ペーストであるから、コンデンサ内部において短絡による出火が起こったとしても、乾燥塗膜には引火しないか、仮令、引火しても直後に鎮火させることができ、コンデンサの燃焼を防止することができる難燃性の高い導電性ペーストである。
【0023】
また、本発明は、樹脂:リン酸エステル化合物の重量比が91:9~40:60であるから、難燃性が高くて強度のある乾燥塗膜を形成できる。
【0024】
また、導電材料がフレーク状銀粒子であり、フレーク状銀粒子と樹脂と難燃剤からなる固形分(以下「固形分」と言う)中のフレーク状銀粒子の含有量は80~95重量%であるので、導電性が高い乾燥塗膜を形成できる。
【0025】
また、チクソ値が1.5~2.5であれば、均一な膜厚の塗膜を形成でき、また、作業効率に資する難燃性導電性ペーストになる。
【0026】
したがって、本発明における難燃性導電性ペーストはコンデンサの電極に好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】乾燥塗膜に着火した状態(着火あり)と着火しなかった、又は、着火直後に鎮火した状態(着火なし)を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、フレーク状銀粒子と樹脂と難燃剤と有機溶剤を含有する難燃性導電性ペーストである。
【0029】
本発明おけるフレーク状銀粒子は、平均粒径(d50)2~10μm、比表面積0.2~1.5m2/g、アスペクト比5~100のフレーク(薄片)状の銀粒子であることが好ましい。導電性の向上に資するからである。
【0030】
銀粒子の平均粒径(d50)は、レーザー回折式粒子径分布測定装置等で測定することができる。
【0031】
各銀粒子の比表面積は、流動式比表面積自動測定装置等を使用し、BET法によって測定することができる。
【0032】
各銀粒子のアスペクト比(長径(2r)/厚み(t))は、銀の比重を10.5とし、電界放射型走査電子顕微鏡等で観察してフレーク形状の長径(2r)を測定し、比表面積(S)を[式1]に算入して厚み(t)を求めることによって算出できる。
【0033】
[式1] 体積(πr2t)×10.5×比表面積(S)=表面積(2πr2+2πrt)
【0034】
フレーク状銀粒子は撹拌翼を備えたボールミルに平均粒径が0.5~10μmの粒状銀粉を入れ、撹拌翼を回転させてフレーク状にすることで作製することができる。
【0035】
撹拌ボールミルの容器の内容物に対して加えられる遠心力の大きさは特に限定されないが、容器の内容物に対して5~300Gの遠心力が加わるように撹拌翼を回転させればよい。
【0036】
また、撹拌ボールミルには、周知の金属性のボールを投入しても良い。
【0037】
原料の粒状銀粉は、特に限定されず、従来周知のアトマイズ法、電解法または化学還元法等の方法で得られた粒状銀粉を使用することができる。
【0038】
撹拌ボールミルには粒径等の調整のために撹拌時に各種溶媒や各種処理剤を入れることができる。
【0039】
投入する溶媒は限定されないが、例えば水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ジメチルケトン、ジエチルケトン、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、ジフェニルエーテル、トルエン及びキシレンが挙げられる。これらの溶媒は、単独でまたは2種類以上を適宜組み合わせて使用することもできる。
【0040】
投入する処理剤は特に限定されないが、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、及び、ソルビタン脂肪酸エステル等の非イオン性界面活性剤を挙げることができる。
これらの界面活性剤は、単独でまたは2種類以上を適宜組み合わせて使用することもできる。
【0041】
また、処理剤として、オレイン酸、ステアリン酸及びミリスチン酸等の脂肪酸を使用することもできる。これらの脂肪酸は単独でまたは2種類以上を適宜組み合わせて使用することもできる。
【0042】
本発明における樹脂は熱又は紫外線や可視光等の照射で硬化させることができるものであれば特に限定されるものではなく、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、ブチラール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂を例示することができる。
【0043】
本発明は、難燃剤としてリン酸エステル化合物を含有する。
【0044】
リン酸エステル化合物は、塗膜の高分子表面にリン酸エステル化合物がポリリン酸層を形成するため、酸素が遮断され、引火しないか、仮令、引火しても直後に鎮火する難燃性を付与できる。
【0045】
リン酸エステル化合物は特に限定されないが、縮合リン酸エステル化合物が好適である。
【0046】
縮合リン酸エステル化合物としては、芳香族縮合リン酸エステル化合物や含ハロゲン縮合リン酸エステル化合物が挙げられるが、芳香族縮合リン酸エステル化合物が好ましい。
【0047】
芳香族縮合リン酸エステル化合物としては、CR-733S、CR-741(いずれも大八化学工業株式会社製)を例示することができる。
【0048】
含ハロゲン縮合リン酸エステル化合物としては、CR-504L(大八化学工業株式会社製)を例示することができる。
【0049】
樹脂とリン酸エステル化合物の割合は重量比で91:9~40:60が好ましい。
【0050】
リン酸エステル化合物の割合が9未満であると、十分な難燃性が付与できず、引火の虞があり、引火すれば直後に鎮火しない虞があるからである。
【0051】
また、リン酸エステル化合物の割合が60よりも多いと、樹脂の濃度が低くなり過ぎて基材との密着性が低下するので乾燥塗膜が剥がれる虞があり、また、塗膜の強度が維持できない虞もある。加えて、リン酸エステル化合物によって比抵抗が上昇し、導電性が低下するからである。
【0052】
本発明おける導電性ペーストは、固形樹脂を溶解したり、粘度を調整したりするために有機溶剤を含有する。
【0053】
本発明が含有する有機溶剤は特に限定されるものではないが、酢酸イソペンチル、ブチルカルビトールアセテート(BCA)、ブチルカルビトール、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、テキサノールを例示することができる。
【0054】
本発明の難燃性導電性ペーストが含有する固形分は40~90重量%が好ましく、更に好ましくは80~90重量%である。
【0055】
固形分が40重量%未満であると、粘度が低くなりすぎて、また、90重量%を超えれば粘度が高くなりすぎて、均一な膜厚の塗膜を形成できない虞があるからである。
【0056】
固形分におけるフレーク状銀粒子の含有量は80~95重量%が好ましく、より好ましくは、88~93重量%である。
【0057】
フレーク状銀粒子の含有量が80重量%未満であると導電性が低下し、95重量%を超えて含有すれば、樹脂が少なくなり過ぎて乾燥塗膜の強度が低下するのでいずれも好ましくない。
【0058】
本発明おける難燃性導電性ペーストの粘度は20~300dPa・sが好ましい。20dPa・s未満、又は、300dPa・sを超えると均一な膜厚の塗膜が形成できない虞があるからである。
【0059】
また、粘度が300dPa・sを超えると、作業効率が悪くなる虞がある。
【0060】
粘度は、回転式粘度計を用いて測定することができる。
【0061】
本発明におけるチクソ値は1.5~2.5が好ましい。
1.5未満、又は、2.5を超えると均一な膜厚の塗膜が形成できない虞があるからである。
【0062】
本発明におけるチクソ値とは、25℃における1rpmと10rpmの各粘度(dPa・s)を測定し、[式2]に算入して得ることができる。
【0063】
[式2] 1rpm粘度(dPa・s)/10rpm粘度(dPa・s)
【0064】
本発明における難燃性導電性ペーストの乾燥塗膜の比抵抗は2.5×10-4Ω・cm以下であることが好ましい。コンデンサの電極に使用できるからである。
【0065】
乾燥塗膜の比抵抗は、硬化させた塗膜の抵抗値(Ω)を4端子法によって抵抗計で測定した後、下記[式3]にて算出する。
【0066】
[式3] 抵抗値(Ω)×断面積(cm2)/長さ(cm)
【0067】
本発明における難燃性導電性ペーストは、フレーク状銀粒子、樹脂、リン酸エステル化合物及び有機溶剤を擂潰機で30~60分混錬し、粘度を調整し作製することができる。
また、市販の導電性ペーストに所望の濃度になるようにリン酸エステル化合物を添加し、3~5分混錬して作製してもよい。
【0068】
本発明における難燃性導電性ペーストは、下処理されたタンタルやアルミ素子上に塗布し、100~150℃で15~30分加熱するか、樹脂の種類により、紫外線や可視光線の照射で硬化させることで電極を形成させることができる。
【実施例】
【0069】
本発明の実施例を以下に示すが、本発明はこれに限定されない。
【0070】
フレーク状銀粒子(平均粒径(d50)7μm、比表面積0.3m2/g、アスペクト比10)とフェノキシ樹脂及びブチルカルビトールアセテート(BCA)とを混ぜ合わせ、3本ロールミル(アイメックス株式会社製)で均一に混錬して導電性ペーストを得た。
【0071】
得られた導電性ペーストは、フレーク状銀粒子80重量%、フェノキシ樹脂5重量%、ブチルカルビトールアセテート15重量%である。
【0072】
作製した導電性ペーストと、芳香族縮合リン酸エステル化合物CR-733S(比重1.3、粘度600mPa・s)、又は、CR-741(40℃における比重1.3、粘度2300mPa・s)、又は、含ハロゲン縮合リン酸エステル化合物CR-504L(比重1.3、粘度1000mPa・s)を表1~3に示す通り混合し、混錬機ARE-310(株式会社シンキー製)にて1分間混錬して実施例及び比較例の各導電性ペーストを作製した。
【0073】
各導電性ペーストの難燃剤の含有量については樹脂100重量%に対する添加量(phr)で表すことがある。
【0074】
(着火試験)
フッ素コーティングした基材に実施例及び比較例の各導電性ペーストを約170μmの厚みで塗布し、オーブンにて150℃で30分乾燥させた。
【0075】
残存する有機溶剤のバラツキを解消するために、乾燥塗膜を基材から剥離し、剥離面を上にして、再度150℃で30分乾燥させた。
【0076】
その後、短冊状にカットした乾燥塗膜の端部にライターで点火し着火の有無及び鎮火の有無を観察した。
【0077】
着火しなかったものを◎、着火後1秒以内に鎮火したものを〇、着火後3秒以内に鎮火したものを△、鎮火せずに乾燥塗膜全体が燃焼したものを×として評価した。
なお、時間はライターを離した時点から測定開始した値である。
【0078】
(比抵抗)
乾燥塗膜の比抵抗は、ガラス基板上に4mm幅×40mm長さ×20μm厚さの塗膜を形成した後、4端子法で抵抗計ミリオームハイテスタ3540-02(日置電機株式会社製)にて測定し、抵抗値(Ω)から前記[式3]にて、体積固有抵抗(比抵抗/Ω・cm)を算出した。
【0079】
(粘度)
各導電性ペーストの25℃における粘度(dPa・s)をビスコテスターVT-04(リオン株式会社製)にて測定した。
【0080】
(チクソ値)
各導電性ペーストの25℃における1rpm及び10rpmの粘度(dPa・s)をコーンプレート型粘度計HBDV-IIIスピンドルCPE-42(ブルックフィールド社製)にて測定した後、前記[式2]にてチクソ値を算出した。
【0081】
(剥離試験)
比抵抗を測定した後のガラス基板上の乾燥塗膜の上にセロハンテープ(セキスイ株式会社製)を張り付けた後に剥がし、剥がしたセロハンテープに乾燥塗膜が付着せず、全く剥離が観察されなかったものを〇、乾燥塗膜の一部がセロハンテープに付着し、剥離が観察されたものを△、乾燥塗膜の全部がセロハンテープに付着して、完全に剥離したものを×として評価した。
【0082】
結果を表1~表3に示す。
なお、表1はCR-733S、表2はCR-504L、表3はCR-741の各難燃剤を使用した。
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
表1~表3に示した通り、本発明における導電性ペーストは、難燃性が高いので、ライターの火を近づけても着火しないか、又は、着火しても直後に鎮火し、また、乾燥塗膜の比抵抗は低く、加えて、剥離し難い難燃性導電性ペーストである。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、乾燥塗膜の導電性に優れ、また、基材との密着性が高くて剥離し難い導電性ペーストであるため、コンデンサの電極に好適に使用でき、また、近辺で出火があったとしても引火しないか、又は、引火しても直後に鎮火するという高い難燃性を備えるため、コンデンサの電極に使用した場合には、短絡出火によるコンデンサの燃焼を防止することができる難燃性導電性ペーストである。
したがって、本発明は産業上の利用可能性の高い発明である。