(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-25
(45)【発行日】2023-09-04
(54)【発明の名称】位相的解析を使用して付加製造部品設計を修正する
(51)【国際特許分類】
B29C 64/386 20170101AFI20230828BHJP
B29C 64/00 20170101ALI20230828BHJP
B33Y 50/00 20150101ALI20230828BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20230828BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20230828BHJP
【FI】
B29C64/386
B29C64/00
B33Y50/00
B33Y10/00
B33Y30/00
(21)【出願番号】P 2019221895
(22)【出願日】2019-12-09
【審査請求日】2022-12-09
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504407000
【氏名又は名称】パロ アルト リサーチ センター インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】ムラッド・ベハンディッシュ
(72)【発明者】
【氏名】サイゴパル・ネラトゥリ
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-535712(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0264751(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0269282(US,A1)
【文献】特表2013-507679(JP,A)
【文献】特開平11-203505(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00 - 64/40
B33Y 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メモリに結合されたプロセッサを備えるシステムであって、前記プロセッサが、
設計時形状と製造時形状との間の差集合であって、前記製造時形状の内部であり前記設計時形状の外部であ
る過剰堆積(OD)特徴、前記OD特徴を前記製造時形状の境界に接続するODの切り取り境界、前記設計時形状の内部であり前記製造時形状の外部である過少堆積(UD)特徴、及び前記UD特徴を前記製造時形状の前記境界に接続するUDの切り取り境界を含むものである差集合、を計算することと、
前記OD特徴、前記ODの切り取り境界、前記UD特徴、前記UDの切り取り境界:のオイラー標数(EC)の組み合わせであって、前記設計時形状と前記製造時形状との間の位相的不一致を示す前記オイラー標数(EC)の組み合わせを決定することと、
前記位相的不一致に基づいて、前記製造時形状と前記設計時形状との間の位相的差を低減するように製造機器への入力を変更することと、を実行する、システム。
【請求項2】
前記プロセッサが、
前記UD特徴、前記OD特徴、前記UDの切り取り境界、前記ODの切り取り境界のそれぞれの局所位相的性質を計算することと、
前記局所位相的性質を組み合わせて、前記
設計時形状
及び前記製造時形状の大域位相的性質への寄与を得ることと、
前記局所位相的性質に基づいて、前記不一致を定量化し、前記製造機器への前記入力の変更が前記大域位相的性質に見られない前記局所位相的性質への不一致をもたらすようにすること、を更に実行する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記局所位相的性質が、ベッチ数を含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記製造機器への前記入力を変更することが、前記製造機器によって使用される大域ポリシーとは異なるODポリシー又はUDポリシーのうちの1つを局所領域に適用することを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記製造機器が、付加製造機器を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
メモリに結合されたプロセッサを備えるシステムであって、前記プロセッサが、
設計時形状と製造時形状との間の差を計算することと、
製造機器のプロセスパラメータにおける変更に応じて、前記設計時形状との前記差の位相的持続性を計算することと、
前記プロセスパラメータの連続的変化に応答して前記製造時形状における新しい位相的特徴の出現及び消滅を示すパーシステンス図において前記位相的持続性を表現することと、
前記パーシステンス図に基づいて、前記製造時形状が前記設計時形状から前記製造時形状の位相をさらに逸脱させる位相的性質における変化を経験するところの前記プロセスパラメータの値を特定することと、
前記プロセスパラメータの範囲にわたる前記位相的性質の前記変化の表現に沿った、前記位相のさらなるずれを容認できる限界をもたらす前記プロセスパラメータの組み合わせを示すパレートフロントを決定することと、
前記プロセスパラメータの前記組み合わせを使用するために、前記製造時形状と前記設計時形状との間の位相的差を低減するように前記製造機器への入力を変更することと、を実行する、システム。
【請求項7】
前記位相的持続性を計算することが、パーシステントホモロジー計算を適用することを含む、請求項
6に記載のシステム。
【請求項8】
前記位相的持続性が、他のパラメータを固定したまま、過少堆積許容度又は過剰堆積許容度の観点から、単一変量フィルトレーションを利用する、請求項
6に記載のシステム。
【請求項9】
前記位相的持続性が、2つ以上の製造パラメータの組み合わせとして多変量フィルトレーションを使用する、請求項
6に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、位相的解析を使用して、付加製造部品の構造的完全性を決定することを目的とする。一実施形態において、設計時モデルと製造時モデルとの間の差集合が計算される。設計時モデルと製造時モデルとの間の不一致は、差集合の過少堆積(under-deposition、UD)特徴及び過剰堆積(over-deposition、OD)特徴に基づいて決定される。この不一致に基づいて、製造機器への入力が、製造時モデルと設計時モデルとの間の位相的差を低減するように変更される。
【0002】
別の実施形態では、製造機器の運動が計算される。製造時モデルは、設計時モデルの幾何学的形状にわたって最小製造可能近傍(minimum manufacturable neighborhood、MMN)を掃引することによって、この運動から計算される。MMNと設計時モデルとの重なりを決定するために、製造機器の構成空間(C-空間)にわたってフィールドが計算される。製造機器の運動は、重なり測度(overlap measure)フィールドを閾値処理することによってパラメータ化される。パラメータ化運動は、設計時モデルの修正されたレプリカを作り出すための製造機器への入力として使用される。
【0003】
別の実施形態において、UD特徴及びOD特徴は、設計時モデルと製造時モデルとの差集合に基づいて計算される。UD特徴及びOD特徴の位相的持続性が、製造機器のプロセスパラメータにおける変更に応じて計算される。位相的持続性に基づき、製造時モデルと設計時モデルとの間の幾何的ずれ及び位相的ずれが決定される。製造機器への入力は、このずれに基づき、製造時モデルと設計時モデルとの間の位相的差を低減するように変更される。
【0004】
様々な実施形態のこれら及び他の特徴及び態様が、以下の詳細な考察及び添付の図面に照らして理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】一実施形態例による、加法過程における様々なレベルの重なりを示す図である。
【
図2】一実施形態例による、設計時形状と最小限製造近傍との相互相関フィールドの図である。
【
図3】実施形態例による、形状に対する過少堆積及び/又は過剰堆積の影響を示す図である。
【
図4】一実施形態例による、設計時形状と製造時形状との比較を示す図である。
【
図5】実施形態例による、過少堆積領域及び過剰堆積領域を示す図である。
【
図6】実施形態例による、過少堆積領域及び過剰堆積領域を示す図である。
【
図7】一実施形態例による、パーシステントホモロジー解析に使用する成長する胞複体を示す図である。
【
図8】
図7に示される特徴の持続性を示すパーシステントバーコードグラフである。
【
図9】一実施形態例による、位相的事象を示すパーシステンス図である。
【
図10】一実施形態例による、解析方法を説明するために使用される部品の図である。
【
図11】一実施形態例による、様々な付加製造解像度の場合の相互相関フィールド及び結果として生じた過少堆積製造時形状を示す図である。
【
図12】一実施形態例による、製造時形状の指示関数の総和として得られるフィールドの図である。
【
図13】一実施形態例による、位相に対する2つの独立したパラメータの影響を視覚化したプロットである。
【
図14】
図13に示された予測不可能性の領域を示すフィールド総和の図である。
【
図15】一実施形態例によるシステムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本開示は、付加製造(additive manufacturing、AM)に関する。付加製造は、従来の製作に伴う制限の多くを取り除いた。付加製造部品は、重量当たりの高剛性、熱伝導のための体積当たりの高表面積などの性能向上を達成するために、複雑な幾何学的構造及び位相構造並びに多材料微細構造を含んでもよい。それにもかかわらず、製造時構造は、特徴付け、定量化、及び補正が困難な様式で設計時構造とは異なるようになる。これらのずれは、機械パラメータ及びプロセスパラメータに左右される。以下、「プリンティング」又は「3Dプリンティング」という用語は、特定の付加製造例を説明するために使用され得ることに留意されたい。但し、この用語は、実施形態をプリントタイプの加工のみに限定することを意図するものではない。
【0007】
これまで、3Dプリント部品における製造不可能な特徴を特定し、視覚化し、補正する方法が開発されてきた。これらの方法は、意図した設計からのずれに関する視覚的情報及び計測的情報を提供するが、位相的側面についての洞察を与えない。多くのAM構造(例えば、格子及び発泡材)では、その構造の位相的完全性は、部品にとって、その機能を果たすには重要であり得る。ずれが計量の観点から「小さい」場合であっても、それにより機能が損なわれることがある。例えば、格子内の横材が層状製造の段発生作用に起因してわずかに変形される場合、それは、その接続性ほど問題にはならないであろう。同様に、トンネル及び空洞の付加又は取り除きは、性能(例えば、負荷下の応力集中)又は後処理(例えば、DMLSにおける粉末取り除き)に影響を及ぼす可能性がある。
【0008】
本開示は、AM部品の構造的完全性を特徴付け、位相的性質の観点から、設計時からの製造時のずれを定量化するように構成された方法及びシステムに関する。オイラー標数及びベッチ数などの量化子を使用して、このようなずれを測定し、証明することができる。製造時変異の族(単一モデルではなく)が、製造解像度及び過剰堆積許容度などのカスタムAMパラメータの範囲にわたって得られる。位相的データ解析を使用して、比較的広範囲のパラメータにわたって持続する位相的ずれを特定することができる。これらの方法及びシステムを使用して、ユーザに対してプロセスパラメータ間のトレードオフを明らかにするための視覚的で計算的な設計ツールとともに、設計最適化用の診断ツールも提供することができる。
【0009】
AM解像度及び壁厚に対する実際の制限により、設計時目標と製造時モデルとの間に幾何学的不一致及び位相的不一致がもたらされる。例えば、直接金属レーザ焼結法(direct metal laser sintering、DMLS)における層厚は、250×250×325ミリメートル立方体の典型的な作業空間内に0.90~1.15ミリメートルの最小孔径を有する、最高解像度における、層(XY平面)に沿った0.3~0.5ミリメートル、ビルド方向(Z軸)に沿った20~30ミクロンの範囲である。特徴を小さくした設計を製作しようとすると、切れ切れの横材、塞がった孔/トンネル、又は予想が難しい組み合わせをもたらし得る。ここに示されるような3Dプリンタの製造時の解像度及び壁厚は、最終的には、設計時部品とはかなり異なって見え、かなり異なって作用することがある。
【0010】
設計時形状並びに製造解像度及び壁厚などのAMパラメータの知識から製造時構造をモデル化する方法を使用することができる。これらの方法は、付加組み合わせプロセス及びサブトラクティブ(例えば、機械加工)プロセスを伴うハイブリッド製造プロセスにおいて、AM基本要素(primitives)/動作要素(actions)を生成するために使用されてもよい。製造時形状の基本モデルは、その機械の自由度(degree of freedom、DOF)まで許される任意の運動に沿って最小製造可能近傍(MMN)を掃引することによって得られるものである。多くのAM機器(3Dプリンタなど)は、MMNによってモデル化される材料小塊(例えば、楕円体又は類円柱体)を堆積させる際の加工対象物上での可動部(例えば、プリンタヘッド)の3D並進によって動作し、MMNの半径/高さは、XYZ方向に沿ったプリンタ解像度によって決定される。設計時形状が、許容運動に沿ってMMNによって完全には掃引可能ではない限り、製造時形状は、異なるようになる。運動は、必ずしも並進である必要はない(回転、一般的な剛体運動などの回転と並進との組み合わせ、複数の剛体運動の合成などであってもよい)。この並進のケースは、単に、説明上、提供した例にすぎない。
【0011】
1つの課題は、MMNのその掃引が設計時目標に可能な限り近い形状をもたらす、ヘッドの「最良の」運動を見出すことである。この答えは、近似の概念に左右されるため、唯一ではない。近似は、不一致が測定又は定量化される際に基づく基準によって定義され得る。
【0012】
本開示は、製造時形状を規定し、計算する手法について説明する。プリンタヘッドの並進運動を表す、プリンタ作業空間内部の3D空間における点ごとに、静止した設計時形状と、その点に並進したMMNインスタンスとの間の重なり測度を、それらの間の交差領域の体積として得る。
図1におけるブロック図は、一実施形態例による設計幾何学的形状102に重なるMMN100を示す。
図1の左側では、MMN100は、幾何学的形状102に完全に重なり、右側では、MMN100は、幾何学的形状に部分的に重なる。一般的に、設計時部品間の重なり測度は、ゼロからMMN100の総体積まで変わり得る。
【0013】
重なりの測度は、加工対象物と製造機器との相対運動(例えば、並進、回転、又はそれらの組み合わせ)の構成空間(C-空間)にわたって画定される実数値フィールドと考えることができる。例えば、ほとんどの市販の3Dプリンタは、平坦な層を重なり合わせてプリントすることによって、並進DOFで動作し、この場合、重なりフィールドは、3Dにおけるプリンタ作業空間にわたるフィールドとして見ることができる。このような場合、印刷適性解析が、少なくとも2つの異なるやり方で行われ得る。層ごとの解析では、設計時モデルは、ビルド向きに沿って、一定の距離(例えば、プリンタの分かっている層厚に等しい)離れる多くの層にスライスされる。2D設計時スライスごとに、MMNの2Dモデル(例えば、ノズル又はレーザビーム断面)を使用することによって、重なり測度の2Dフィールドが構築される。この測度は、2D形状間の交差部の表面積である。印刷適性解析には、完全3D解析を使用してもよい。この種の解析では、重なり測度の3Dフィールドは、3D設計時モデルとMMNの3Dモデルとの間に得られる(例えば、堆積単位に相当する材料小塊)。この場合、層厚及びビルド向きは、MMNの形状に符号化される。この測度は、3D形状間の交差部の体積である。
【0014】
層ごと解析は、層厚がMMN断面(例えば、薄い円盤)の特徴的なサイズよりもはるかに小さい場合に完全3D解析に近似し、それにより、面積の重なり×厚さで体積測定の重なりを概算することができるようにする。これは、多くのプロセスに当てはまる。例えば、DMLSにおけるXY-解像度とZ-解像度とに1桁分の差がある。重なり測度フィールドが、3Dにおける設計時形状とMMN、又は2Dにおけるそれらのスライス/断面との指示(例えば、特性)関数の相互相関によって、全ての並進運動に対して累積的に計算され得ることが示されている。
【0015】
形状の指示関数は、その空間内のあらゆる点をバイナリ値に写像するその基礎空間内のフィールドであり、すなわち、点が形状の外側である場合は0、点が形状の内側にある場合は1である。これは、その形状についての点メンバーシップクエリを特徴付ける形状の暗黙的モデルとして見ることができる。相互相関は、第2のフィールドの鏡映、すなわちMMNの指示関数との第1のフィールド、すなわち設計時形状の指示関数の畳み込みとして計算される可積フィールド上の標準演算である。今度は、畳み込みは、高速フーリエ変換(fast Fourier transform、FFT)を使用して素早く計算することができ、高速フーリエ変換(FFT)では、CPUアーキテクチャ及びGPUアーキテクチャの両方に、高効率の並行実施が存在する。
【0016】
一般に、AM機器は、任意のDOF(例えば、並進及び回転の両方)に従って移動することができ、この場合、重なり測度は、より高い次元のC-空間にわたって定義される。例えば、平坦な層を備えた3Dプリンティングに加えて、例えば、適応的に向きが変えられるプラットフォーム上の支持なし3Dプリンティングを可能にするために、より高いDOFを有するロボット3Dプリンタの試作品が作られている。また、ハイブリッド(付加とサブトラクティブとの組み合わせ)製造のための「マルチタスキング」マシンがますます普及してきている。これらの機械は、元々は、高軸機械加工用に開発された、コンピュータ数値制御(computer nunerically controlled、CNC)運動システムを使用しており、AMに対しても、回転運動、又は回転運動と並進運動との組み合わせを使用して、非平坦表面(例えば、円筒形軸の周り)への材料の堆積を可能にする。
【0017】
本明細書に記載の方法は、並進運動に限定されるものではない。例えば、剛性運動群(例えば、並進と回転との組み合わせ)の任意の下位群に対して、重なり測度の畳み込み式は、畳み込みの群理論概念に一般化される。FFTベースの実施は、一致させるのがより複雑である。しかし、剛性運動群の特有な性質を使用することによって、例えば、まばらに標本抽出した向きに対して異なる重なり測度フィールドを計算することによって、部分的なスピードアップがもたらされ得る。
【0018】
相互相関(重なり測度)フィールドの様々な上位集合は、C-空間(相対的な並進及び/又は回転)内の構成の全順序集合族(集合包含によって順序付けられた)を示す。この族の項は、ただ1つのパラメータ、すなわち、MMゼロ~MMNの全測度で変わる重なり測度、又は、ほとんどのAMプロセスで一定と仮定され得る最大値によってそれを正規化した後の0~1の重なり測度比率によって、区別され得る。パラメータの選択のたびに(例えば、35%の比率を選んだ場合)、少なくともその重なり測度比率をもたらすMMNの全ての構成は、製造時形状、例えば、設計時部品が重なるその体積の少なくとも35%になるMMNの全ての変位に含まれる。並進運動の場合、0%と100%との重なり測度比率に対応する最小と最大との上位集合は、形態的な拡大と侵食とであり、ミンコフスキー和とミンコフスキー差とを使用して計算され得る。回転の場合のより高いDOF運動では、これらの概念は、C-空間障害物及びその補空間(自由空間)に一般化され、ミンコフスキー積及びミンコフスキー商、並びにユークリッド3D空間と構成空間との間の膨張写像及び射影を使用して計算され得る。
【0019】
図2では、一実施形態例による、設計時形状200とMMN202についての2D相互相関フィールド208を示す。相互相関フィールドは、重なり測度を示し、この場合、MMN202の5つの構成について示される交差領域210~214の面積を示す。相互相関フィールドの様々な上位集合は、構成集合族(例えば、運動)に対応し、この場合、2D並進は、点集合204~206にまとめられる。MMN202をこれらの運動のそれぞれに沿って掃引することにより、目標設計時形状200に形態的に近いプリント可能な(例えば、MMN-掃引可能な)形状の1-パラメータ付けられた(one-parametric)族をもたらす。
【0020】
これらの構成集合204~206のそれぞれ1つに対して、別の拡大として特徴付けられ、また運動DOFに応じてミンコフスキー和/積として計算され得る、集合に沿ってMMNを掃引することによって、製造時形状が得られる。1-パラメータ付けられた製造時代替物族は、2つの極値によって有界である3D空間における全順序集合を形成する(集合包含の観点から)。
【0021】
第1の極値において、わずかに100%を下回る重なりによる構成に沿ったMMNの掃引は、厳格な過少堆積/過少充填ポリシーをもたらす。この場合、製造時形状は、設計時部品内部に完全に含められる、3Dプリンタの規定のDOF及びMMNを有する最大堆積可能領域(maximal depositable region、MDR)である。これは、製造時のずれにもかかわらず、その下で部品が元々設計された全ての包含制約(例えば、組み立て中に移動する間にある包みの中に留まっている)が満たされたままであることを保証する。実際、この制約は、AM制限に起因する可能な限り最小の形状の損ないで満たされる。
【0022】
第2の極値において、わずかに0%を超える重なりによる構成に沿ったMMNの掃引は、厳格な過剰堆積/過剰充填ポリシーをもたらす。この場合、製造時形状は、余分なオフセットにより設計時形状を完全に含める。これは、設計時形状を完全に含めるニアネットシェイプを生成するための大域許容度として有用であり、また後に、これを設計時形状にもっと近くなるように機械加工することができる。
【0023】
0~1の重なり測度比率の値を選択することによって、許容度が緩和されるときの製造時形状には、可能性スペクトルが存在する。重なり測度比率が下がるたびに、設計時形状及びMMNの両方の局所幾何学的形状に応じた不均一なオフセットだけ製造時形状が大きくなる。並進運動の場合、過少充填形状は、形態的開口(侵食の拡大)である一方、過剰充填形状は、二重オフセット(拡大の拡大)である。重なり測度比率によってパラメータ化される、中間の連続する製造時形状族は、MMNの半径が小さくなるにつれて、設計時部品からの幾何学的ずれが小さくなる。しかし、それらは、劇的に異なる位相的性質を有することがある。
【0024】
機械DOF、MMNサイズ/形状、及び重なり測度上の基準における変更により、幾何学的ずれがどの程度小さいかにかかわらず、設計時形状から製造時形状に位相的不一致を導入することができる。方法及びシステムは、任意の設計時形状と製造時形状との基本的な位相的性質における差を特徴付けるように構成され得、製造時形状は、上に説明された方法を使用して計算された製造時モデルを含むが、必ずしもそれに限定されない。
【0025】
これらのシステム及び方法において生かされる1つの概念は、形状のオイラー標数(Euler characteristic、EC)の概念であり、これは任意の形状の主要な位相的性質の一部を簡潔に特徴付ける。例えば、形状が細胞状複体で離散化される場合、ECは、EC=V-E+Fとして得られ、ここで、V、E、Fは、それぞれ、この複体内の頂点総数、辺総数、面総数である。これらの目的に有用な別の関係は、EC=B0-B1+B2であり、ここで、B0、B1、及びB2は、形状のベッチ数(Betti number、BN)である。3Dでは、BNは、それぞれ、繋がった構成要素個数、トンネル(すなわち、貫通孔)個数、及び空隙/空洞個数に対応する。
【0026】
図3では、一実施形態例による、設計時形状と製造時形状との間のBNの差を示す。
図3では、過少堆積ポリシーと過剰堆積ポリシーとによる設計時形状対製造時形状のいくつかの単純な2D例について、BN(2DにおけるB0及びB1のみ)が示される。EC及びBNは、大域位相的性質である。したがって、設計時形状と製造時形状との間のそれらの比較は、局所位相的不一致、及びどの特徴がそれらの原因であるかについての情報をそれほど提供しない。例えば、MMN直径よりも薄い横材は、過少堆積ポリシーを使用するときには壊れる可能性がある。しかし、この構造体は、設計時形状300及び製造時形状302によって示されるように、他のリンク全体にわたって大域的に繋がったままであり得る。この例では、過少堆積は、横材の破損をもたらすことがあるが、2Dの場合の孔に対応する繋がった構成要素の総数(B0)又はトンネルの総数(B1)の総数に影響を及ぼすことも、及ぼさないこともある。この場合、2つの孔が外部の空きスペースと合わさる(B1は、2個少なくなる)。ECは、結果として2個増える。
【0027】
トンネル又は空洞が、過剰堆積ポリシーを使用しているときにMMN直径よりも小さい場合、それらは塞がれている可能性があるが、それらは、位相的にそのままであるより大きな孔又はトンネルの一部であり得る。設計時形状304及び製造時形状306によって分かるように、過剰堆積は孔が塞がることをもたらすことがあるが、繋がった構成要素の総数(B0)又は孔の総数(B1)に影響を及ぼすことも、及ぼさないこともある。この場合、2つの離ればなれの構成要素が接合し、新しい孔が現れ、B0の減少及びB1の増加をもたらす。結果として、BCは、変わらない。
【0028】
より複雑なシナリオでは、新たな孔が現れる一方で、複数の孔が予想外に合わさることがあり、それにより孔の総数が同じに保たれる。設計時形状308及び製造時形状310によって分かるように、過少堆積又は過剰堆積の両方(又は組み合わせポリシー)で、BNの変化が見られず、したがってECの変化も見られないことがあり得る。この場合、孔は2つに分割され、同時に、別の孔が塞がれる。
【0029】
通常、大域EC及び/又はBNは、同じままであり得、それらの大域変化を勘定に入れても、局所位相的不一致を検出するには不十分である。それらが変わる場合であっても、それらの値は、どの特徴がそれらの変化を引き起こしたのか、また設計又は製造プロセスパラメータ(例えば、MMNサイズ/形状)のいずれかを変更することによって、どのようにそれらを固定するのかへの洞察を何も与えない。本明細書に記載の方法は、設計時形状と製造時形状との間の位相的不一致のより詳細かつ局所的な説明を提供することができる。この方法は、どの特徴、又は部品の残りとのそれらの特徴の境界が、どの欠陥(複数可)を引き起こしたのか、並びにその特徴に特化された異なるポリシー、例えば、薄い横材には過剰堆積、及び塞がった孔には過少堆積を使用することによって、それらがどのように修復され得るかについての正確な報告を提供することができる。
【0030】
ECの有用な性質の1つは、その付加性である。形状をいくつかの他の(場合によっては交差する)形状の和集合に分解した場合、そのECは、全ての構成要素のECの和から、対ごとの交差部のECを引き、三つ組ごとの交差部のECを足す、などとして表された交代和によって計算され得る。2つの形状、すなわち、設計時形状(D)と製造時形状(M)とを比較してみると、それらのEC間の差は、過少堆積(UD)領域及び過剰堆積(OD)領域、並びにD及びMとのそれらの境界の観点から定量化される。これらの領域の局所位相的性質の関数としての大域位相的ずれは、下の式(1)に示すように表され得る。
EC[M]-EC[D]=(EC[OD領域]-EC[ODの切り取り境界])-
(EC[UD領域]-EC[UDの切り取り境界])(1)
【0031】
ODは、MからのDの正則化差集合として得られる空間内の領域として定義され、これはおおよそ、Mの内側であるがD(過剰堆積材料)の外側にある3D点の集合である。この集合は、元の設計から突き出し、Dの境界の片に沿ってMの残りの部分に接続される。これらの片は、集合的にODの「切り取り境界」と呼ばれ、それの例が、
図3における形状306上の破線として示される。
【0032】
UDは、DからのMの正則化差集合として得られる空間内の領域として定義され、これはおおよそ、Dの内側であるがM(過少堆積材料)の外側にある3D点の集合である。この集合は、元の設計内に留まり、Dの境界の片に沿ってDの残りの部分に接続される。これらの片は、集合的にUDの「切り取り境界」と呼ばれ、それの例が、
図3における形状302上の破線として示される。
【0033】
図4に見られるように、一実施形態例による、設計時形状400から製造時形状402への任意の変更の例が示される。これは、重なり測度(例えば、相互相関フィールドの値)を閾値処理するだけでなく、任意の選択方法を使用してモデル化され得る。
図5及び
図6に見られるように、形状の大域位相における任意の変更では、局所OD特徴及び局所UD特徴の寄与の観点から、ずれが特定される。上の式(1)は、OD及びUDのそれぞれの様々な繋がった構成要素のECの観点から更に展開され得る。任意の形状の様々な繋がった構成要素が、その和集合が元の形状である互いに素な繋がった形状(定義により)であることがないならば(この場合、UD全体又はOD全体を考慮に入れる)、形状のECは、ECの付加性に起因する繋がった構成要素のECの和として表され得る。
【0034】
これらの繋がった構成要素のそれぞれが球、すなわちトンネルも空洞もないボリュームと位相同形である、より単純な場合を考えてみる。その場合、EC=B0-B1+B2は、EC=1となる(B1=0及びB2=0であるため)。したがって、その特徴の体積測定の部分のECは、OD及びUDの繋がった構成要素ごとに1(unity)に等しい。しかし、切り取り境界の場合にはそれは1であるか又は1でない場合があり、それにより、その特徴が設計時部品と製造時部品との繋がった構成要素の総数間の全体的な差に非ゼロを与えるかどうかが決定されることになる。切り取り境界が所与の体積測定の構成要素500用の単一の単純に繋がったパッチである場合にのみ、特徴(切り取り境界と対の体積測定の構成要素から構成される)の寄与は、EC全体に対してゼロになる。切り取り境界が、例えば、複数の単純に繋がったパッチ600、又は中空の閉表面(位相的球体)602、又は多重接続の複雑な表面である場合、寄与は、非ゼロになる。言い換えれば、分解は、総合的な大域変更に対する各局所変更の寄与を定量化することを可能にする。前述の局所要素間の非自明交換の種類により、大域BNのいずれかがそのままである場合であっても(例えば、
図3における形状308及び310に見られるように)、局所変更そのものが明らかにされ、定量化される。局所変更が、DとM(OD片とUD片)との対称差の様々な繋がった構成要素、並びにそれらの切り取り境界を解析することによって定量化される。簡単に言うと、式(1)中の2つの項は、下の式(2)及び(3)に示されるように展開され、ここで、CBは、切り取り境界を表す。
(EC[OD領域]-EC[ODのCB])=(EC[OD片])の和-
全てのOD片に対するEC[CBのOD片の共有](2)
(EC[UD領域]-EC[UDのCB])=(EC[UD片])の和-
全てのUD片に対するEC[CBのUD片の共有](3)
【0035】
上の恒等式を前の式に代入することにより、以下の結論が導かれる。製造不完全に起因する形状のECにおける総合的な変更は、OD片の総合的な寄与の和からUD片の総合的な寄与の和を引いたものとして得られ得る。各片の寄与は、他から独立して計算され得、これにより、完全並列処理による計算が可能となる。
【0036】
それぞれの繋がった構成要素が単純に繋がっておらず、収縮性である一般的な場合(例えば、B1及びB2は、同様に非ゼロであり、したがって、ECは、B0と同じではない)、それぞれのより小さな片が、体積測定の内部に対してEC=1を有し、切り取り境界の負の寄与が片ごとに計算されるまで、それぞれの繋がった構成要素は、より小さな片に分解され得る。しかし、より小さな片は、互いに素な(より大きい)繋がった構成要素の場合とは違って、互いに境界を共有することから、互いに素にはならなくなる。この場合、交代和の形式で、共有境界のECの加法/減法を行うのに、上の2つの公式により多くの項が必要となる。これを解決するために、OD及びUDのそれぞれの繋がった構成要素は、様々な標準技法を使用して、単純に繋がった片に効果的に分解される。これらの片間の境界(対ごと、三つ組ごと、など)は、その形状のReebグラフから得ることができ、それからの追加の項が上の公式に体系的に含まれる。その代替の手法は、任意の標準的な方法を使用して、元のOD片及びUD片、並びにそれらの切り取り境界当たりの全てのBNを計算することである。
【0037】
全体的なECへの様々な片の寄与が決定されると、方法は、局所位相的不一致に起因する製造不良の様々な様相について論証する。更に、方法は、この問題を多少とも解消するために、堆積ポリシーを局所的に、又は設計時構造そのものを局所的に変更することに対してフィードバックを提供する。DとMとの間の差領域のタイプ(OD対UD)、並びにBNに対するそれらの寄与の表れ及び値(例えば、1つ以上の繋がった構成要素、トンネル、又は空洞を加える/取り除く)に基づいて、様々なクラスの位相的欠陥及び考えられる改善策が特定される。
【0038】
例えば、UD特徴が、繋がった構成要素の総数(B0)に正の総計を与え、且つ/又はトンネルの総数(B1)に負の総計を与える場合、それは、破損横材を示唆する(例えば、
図3における形状302)。1つの改善策は、例えば先に説明した相互相関法を使用して、その特定の特徴の付近にODポリシーを適用することであるが、但し、この時、設計全体ではなく、UD特徴に局所的にODポリシーを適用する。
【0039】
OD特徴が、繋がった構成要素の総数(B0)に負の総計を与え、且つ/又はトンネルの総数(B1)に正の総計を与える場合、これは塞がったトンネルを示唆する(
図3の形状306参照)。1つの改善策は、例えば、先に説明した相互相関法を使用して、その特定の特徴の付近にUDポリシーを適用することであるが、但し、この時、設計全体ではなく、OD特徴に局所的にUDポリシーを適用する。
【0040】
BNのいずれも変わらない(この場合、結果としてECも変わらない)場合であっても、この方法は、依然として、合計ゼロ変更に対する様々な特徴の非ゼロ寄与を検出することができる。例えば、それは、孔が塞がれる一方で2つの他の孔が合わせられる場合を明らかにし、B1におけるゼロの正味変更をもたらす(
図3における形状310参照)。これは、複数のOD及び/又はUDの繋がった構成要素が、DとMとの間の差集合及びBNの変更におけるそれらの明確な役割に現れるからである。この例に対して特に、正味和においてそれを相殺する、ある特徴に起因するB1の増加と、別の特徴に起因するB1の減少によるB1の増加とが、正味和がゼロであるかどうかにかかわらず検出される。説明上、2D例が上に図示され、説明されたが、この理論は、3Dに一般化され、この方法は、2Dスライス及び3D形状全体の両方の製造可能性解析で同様に機能する。任意に複雑なD形状及びM形状で機能することから、機械DOFがこの方法の適用性に影響を与えないことに留意されたい。
【0041】
上の解析は、UD特徴及びOD特徴からの局所寄与の観点から、設計時形状と製造時形状との間の位相的不一致を検出し、それらの空間的分布を特定する。また、この解析は、これらの寄与を排除するために、設計又はMMNに対して局所変更を行うのに有用な情報も提供する。しかし、この解析は、これらの寄与のそれぞれが互いに対してどのくらい重要であるかを検出することはできない。それは、製造時結果を一回しか考慮しないので、AMプロセス仕様又は堆積ポリシーを変更することによって、例えば、MMNの形状/サイズ、重なり測度比率における閾値などを変更することによって、得ることができる全ての考えられる製造時代替物のスペクトルにわたって、それらがどのくらい持続するかについての洞察をほとんど提供しない。時間のような軸に沿った連続進展として、製造時形状の1-パラメータ付けられた族における変更を考える場合、前のセクションに示した空間解析に加えて時間解析を使用して、局所変更が製造時形状に与え得る影響レベルへの洞察を提供することができる。
【0042】
パーシステントホモロジーは、成長する胞複体の1-パラメータ付けられたフィルトレーションを通した連続する位相的単純化に向けて最初に導入される、位相的データ解析のための強力な計算ツールである。本方法は、パーシステントホモロジーを使用して、パーシステントホモロジー特徴がMMNサイズ又は重なり測度比率などの様々なパラメータにわたって変えられるのに従って、製造時形状の持続性位相的特徴を捉えることができる。任意次元の距離空間内のいくつかのデータ点を仮定すると、選択した距離に対する点の周りの影響領域を特徴付ける、(同じ半径の)各点を中心とするいくつかの成長する球を考えることができる。
【0043】
成長する特徴サイズがどのように位相に影響するかの例が、
図7に見られる。半径rが大きくなるにつれて、球は、成長し、互いにますます交差し始める。これらの交差を特徴付ける、ヴィートリス・リップス(又は単にリップス)複体と呼ばれる、抽象的な単体的複体を考えることができる。例えば、2つの球が交差する場合、それらの中心に割り当てられた頂点を結ぶ1-マス(辺)が描かれる。したがって、3つの球が対ごとに交差するが、三つ組ごとには交差しない場合、それら間に空の三角形が見える。それらがまた、三つ組ごとに交差する場合、それら間に2-マス(黒三角)が描かれ得る。このプロセスは、位相的「フィルトレーション」と呼ばれ、成長する半径は、近接/フィルトレーションパラメータと呼ばれることがある。
【0044】
球の和集合及びその代表的なリップス複体の形状が進展するにつれて、その位相的性質が変わっていく。位相的「事象」は、2つの繋がった構成要素を1つにまとめること、孔/トンネル又は空洞の充填などの位相的特徴の出現/消滅として描写される。フィルトレーションが経時の進展と考えられる場合、BNが、経時で、また、特徴の出現と消滅との間の時間間隔を示すバー((出現、消滅)事象対ごとに1本のバー)上にプロットされ得る。このように得られた「パーシステンスバーコード」は、多くの場合、BNに対応するホモロジー群ごとに1つの片に分割される。パーシステンスバーコードの例が
図8に示され、このパーコードは、半径が大きくなるにつれて、
図7における構成要素(B0)及び孔(B1)の出現/消滅をプロットする。
【0045】
パーシステンスバーコードは、距離空間内のその分布に関するデータの位相的署名である。「パーシステンス図」を使用して、出現時間と消滅時間とが2Dプロットに互いに対してプロットされる結果を視覚化することもでき、その例が
図9に示される。(出現、消滅)点が切片線900から遠いほど、それらの事象が時間的に遠くなり、より持続するほど(したがって基本的)、その特徴があることが知覚される。このように、
図9における点902は、最も長い持続性を有する特徴と関連付けられる。データの基本的な位相的特徴は、より長いフィルトレーション期間にわたって持続するものである。一方、持続性ではない特徴(例えば、点904)は、計算におけるノイズ/エラーに起因するものであり得、有意である可能性が低い。パーシステンスバーコードにおけるバーの長さは、同様に、基本的な特徴の表示を提供することができる。
【0046】
パーシステントホモロジーは、今まで様々な異なるタイプの胞複体及びフィルトレーション方法に適用されてきた。例えば、関数の上位集合は、その集合のボクセル化に相当する立方胞複体が、その進展する位相的性質/事象について調べられるということに基づけば、フィルトレーションとして見ることができる。
【0047】
AMに当てはまるように、この技法は、2つの異なるフィルトレーションを使用して適用されてもよい。第1に、固定堆積ポリシー(例えば、独自の相互相関法における一定の重なり測度比率)の場合、MMNのサイズを変更することによってフィルトレーションが提供される。これは、固定形状MMNに均一なスケーリングを適用することによって行われ得るが、1つ以上の3Dプリンタに対して、現実的な成長するMMN族に対応する他の任意の形状パラメータ化を使用することができる。第2に、固定MMN形状/サイズ(例えば、固定仕様を有する固定3Dプリンタ)の場合、堆積ポリシーを変更することによってフィルトレーションが提供される。これは、フィルトレーションパラメータとして重なり測度比率(0~1)を使用することによって行われ得るが、総合的な順序付けをもたらす任意の他のフィルタ処理が使用され得る。
【0048】
MMN形状/サイズ及び堆積ポリシーの両方における同時変更を解析するのに適用され得る多変量フィルトレーションのパーシステントホモロジーのために開発された、より最近の方法がある。以下の考察は、MMNサイズから始まる、他を固定したまま1つのパラメータを変更する、単一のパラメータ付けられたフィルトレーションに焦点を当てることにする。この方法は、薄い円盤MMNの2D断面を使用して得られた2D相互相関フィールドの上位集合として得られた、2D設計時スライス及び製造時スライスにおいて示される。しかし、完全3D解析には、全く同じ手法が適用され得る。
【0049】
図10には、実施形態例によるパーシステントホモロジー法を明示するのに使用される形状1000例が示される。この形状は、比較的複雑な幾何学的形状であるが、説明上、単純な位相を有する(円盤と位相同形、EC=B0-B1=1)。この方法は、任意の位相に適用されるが、この形状1000例は、図示を簡単にするために選ばれたもので、限定するものではない。形状1000は、尖った角及び薄い側面などのいくつかの興味深い幾何学的特徴を有する。孔があるように見えるが、それらは、薄いチャネルを通して外部空間に接続されているため、位相的孔ではない。これにより、BN B0=1及びB1=0の単純に繋がった形状がもたらされる。
【0050】
様々な半径を有する単純な円盤形状MMNとともに厳格な堆積ポリシーを使用して、製造時スライス族が、各円盤による設計時スライスの形態的開口として計算される。これは、MMN半径よりも尖っている設計時スライスの角を「面取り」し、MMN直径よりも薄い特徴を排除することをもたらす。
図10からの形状1000に適用される例が
図11に示される。重なり測度(相互相関)フィールド1100が、様々な円盤形状のMMN1100について示される。最小/最大等位集合がまた、曲線、例えば曲線1006、1008としてそれぞれ示される。最大上位集合1008は、設計時スライス(厳格な過少堆積)内部に完全に含められるMMNの並進構成の最大集合に相当する。この集合に沿ってMMNを掃引すると、形状1104の白い領域が得られるが、ハッチング領域は製造不可能である。
【0051】
最小MMN(事実上、点)の場合、製造不可能な領域は、空であり(図示せず)、製造時形状は、設計時形状と同一である。この理想的なケースから半径が大きくなるにつれて、製造時形状は、MMN直径が設計時形状(左)における最も厚い特徴よりも大きくなったときに完全に消失するまで縮む(右から左へ)。この進展に沿って、位相的特徴が出現するか又は消滅して、この方法によって捉えられる。
【0052】
選ばれているMMN半径が大きいほど、製造時スライスは、それが設計時スライス内部に完全に含められるように選択ポリシーによって制約されることから、より小さくなる。また、1-パラメータ付けられたフィレット処理スライス族は、フィレット半径が大きくなるたびに、より小さいフィレット半径を有する以前のスライス内部に完全に含められるスライスをもたらすということを意味する集合包含によって完全に順序付けされる。これは、MMNの任意の形状に当てはまることであり(集合論的論証によって証明可能)、MMNが、以前のMMNを含めるようなサイズに大きくなる場合、結果として生じる形態的開口は、以前のMMNで得られたものの内部に含められる。
【0053】
製造時形状が小さくなるにつれて、MMNがもはやその中に収まらない薄い特徴に沿って起こる強制接続解除に起因して、設計時形状から外れ始める。MMNサイズのある「臨界」値(この例では円盤半径/直径)では、1つからの2つ以上の繋がった構成要素の出現、1つにまとまることによる2つ以上の孔の消滅、といった位相的事象が起こる。本明細書に記載の方法は、パーシステントホモロジーを行うことによって、これらの事象の詳細な説明を提供する。
【0054】
このような完全に順序付けられた族が与えられるときはいつでも、それらの指示関数の算数上の総和によって、それらをフィールドに組み込むことができる。このフィールドのそれぞれの上位集合は、1つの製造時形状に対応し、したがって、持続性位相的特徴は、上位集合フィルトレーションを使用して、このフィールドにパーシステントホモロジーを適用することによって特定され得る。このフィールドは、画素(2D画像)又はボクセル(3D画像)の一様格子上に離散的に表され得、立方胞複体に対して書き込まれた標準パーシステントホモロジーコードを呼び出すことができる。これは、相互相関及びモルフォロジカル演算が、上に説明したFFTベースの畳み込みを使用した画像表現上で極めて速いため、最も単純で、ほぼ間違いなく最も効率的/一般的な実装形態である。任意の特定の使用事例で、フィールドの異なる離散化が好ましい場合、同様の様式における対応する胞複体に対して解析が行われ得る。
【0055】
ここで、第2のフィルトレーションを考えてみる(重なり測度比率に基づいて)。固定MMNの場合、相互相関は、単一のFFTベースの畳み込みを使用して計算されたフィールドを難なく提供する。このフィールドの上位集合が、様々な重なり測度に対して抽出される。集合ごとに、MMNによる掃引(拡大)として、製造時スライスが得られる。結果として得られる形状族の指示関数が再びまとめられると、
図12に見られるような上位集合フィルトレーションを使用して、同じパーシステントホモロジー解析が適用され得るフィールドが得られる。前の手順から変わる唯一のものは、入力フィールドである。
図12における各フィールドは、MMNの一定の半径(例えば、画像画素で測定された固定AMプロセス解像度)を使用するが、但し重なり測度比率の範囲である(この例では70%~100%)、
図10における設計時スライス1000に対する完全に順序付けされた製造時スライス族を表す。より暗い点は、より高い重なり測度比率に一致する。最も暗い黒色領域は、厳格な過少堆積を示し、最も明るい灰色は、過剰堆積に対する30%許容度を示す。
【0056】
もう一方(例えば、MMNサイズ)を固定したまま、1つのパラメータ(例えば、重なり測度比率)に基づいてフィルトレーションに対して解析が行われ、後者の様々な値ごとにアルゴリズムが繰り返される場合、様々な解像度及び許容度仕様を有する様々なAMプロセスの範囲に対して予想される位相的挙動の詳細な説明を提供するいくつかのパーシステンスバーコード/図が得られる。
【0057】
膨大な量の情報の視覚化を簡単にするために、最初に、製造時形状の大域位相的性質と、また2つの独立したパラメータの異なる組み合わせで、それがどのように進展するのかを考えてみる。2Dプロットの2つの軸上に置かれた2つのパラメータの関数として、BNのうちの1つ(例えば、繋がった構成要素の個数B0)がプロットされ得る。この例が
図13に示される。
【0058】
図13では、プロットは、
図10における設計時スライス1000の例に対して、異なる許容度(横座標)及びMMN半径(縦座標)を使用してプロットされた製造時スライス用の繋がった構成要素の個数(B0)を示す(左)(B0=1)。右側の2つのプロットでは、それぞれの水平線1300及び垂直線1302は、幾何学的損失と位相的損失との間のトレードオフを表す。固定解像度の場合、このプロットにおける大きな領域1304の境界との固定MMN半径に対応する水平線1300の交点が、その設計時接続性性質(B0)を維持するために、プリントされたスライスに対して最低限必要な許容度を示す。
【0059】
固定許容度の場合、プロットにおける領域1304の境界との固定重なり測度比率に対応する水平線1304の交点が、その設計時接続性性質(B0)を維持するために、プリントされたスライスに対して最小限必要な解像度を示す。これらの線と他の領域との交点はそれぞれ、その値において、ある設計時位相的性質(この場合、接続性)が損なわれようとしているプリンティングパラメータの「臨界」値を示す。
【0060】
このプロットは、AMを使用して、所与の設計時形状をほぼビルドするときには避けられないトレードオフの有用な視覚化をもたらす。例えば、低解像度の3Dプリンタを使用すると(より大きなMMN)、必然的に、設計時形状からの幾何学的ずれが生じる。過剰堆積に対する許容度を上げると(より小さい重なり測度比率閾値)、例えば、機械加工を使用して、後で取り除くことができることもできないこともある幾何学的ずれを更に取り込む可能性がある。しかし、プロットは、さらなる幾何学的不正確が容認できる場合、許容度を加えることによって、接続性が回復され得ることを示す。言い換えれば、位相的完全性がより重要である場合、例えば、構造強度又は熱対流用の多孔質のために、繋がったままである必要があるインフィル格子によくあることであるが、本方法は、位相的性質を維持するために、幾何学的正確さにどの程度の犠牲が必要とされるかを解析するツールを提供する。これは、
図13における水平線1300によって示される。
【0061】
例えば、組み立て時の包含制約又は近くの正味形状を機械加工する際の限られた接近性に起因して、幾何学的正確さに厳しい制限がある場合、許容度は、小さいままである必要がある。プロットは、接続性がそのままでなければならない場合に、最小AMプロセス解像度に関して、欠かせないものを示す。言い換えれば、プロットは、位相的完全性が保たれ得る所与の最大許容度に対する最小MMNサイズを明らかにする。これは、
図13における水平線1300によって示される。
【0062】
図13における様々な陰影領域間の境界のそれぞれが、パレートフロンティアとして見ることができることに留意されたい。それらは、位相的性質(例えば、あるBN)のずれにおける容認できる限度/限界に対する解像度(MMNサイズ)と許容度(重なり測度比率)との間のトレードオフを明らかにする。例えば、第1の曲線1306は、設計時形状と製造時形状との間の繋がった構成要素のBNの差に対するゼロ容認の場合のパレートフロントである。第2の曲線1308は、最も容認できることが、どのBNがプロットされているかに応じて、1つの繋がった構成要素、トンネル、又は空洞を加える/取り除くことになる、BNを1だけ変更することである場合のパレートフロントである。固定フロントごとに、プロットは、AMプロセスの解像度及び許容度に関して、選択肢が何であるかについての設計者の視覚的フィードバックを与えるので、設計者は、製造所の床、許容誤差仕様などに対して何が使用可能かに応じて何を行うべきかを選ぶことができる。
【0063】
プロットによって明らかにされる別の重要な情報は、避けられるべき(解像度、許容度)組み合わせを表す特異点(例えば、領域1310)である。これらの組み合わせは、製造時形状の位相的性質をモデル化する際の不安定な計算結果をもたらす。計算がAMの現実に対して理に適った近似値である場合、それは、他の全てが道理に適うための前提であるが、これは、AMプロセスの実際の出力がこのような場合では予測不可能であり得ることを意味する。
【0064】
例えば、
図14に示されるフィールド例に示されるように、MMN直径が非円形特徴の厚さに非常に近いとき、特にラスタ化エラーに起因して、重なり測度を確実に計算することができない。AM機器(例えば、3Dプリンタ)がまた、これらの計算アルゴリズムに従って、各スライスに沿ったその運動、例えば、相互相関の上位集合として特定された運動集合を決定する場合、物理的な結果も同様に予測不可能になる。
【0065】
同様の2Dプロットが、他のBN又はECに関して生成されて、AMパラメータと、幾何学的正確さと位相的完全性との間の固有のトレードオフとに関する大域位相的性質のバラツキについて、設計者にフィードバックを提供することができる。前の節で述べられたような大域バラツキに対する局所特徴の寄与に対して、同じ解析が行われ得る。後者は、潜在的な位相的欠陥の正確な空間位置に注意を集中させるので好都合であるだけではなく、局所特徴がより小さい立方複体によって表され得、パーシステントホモロジーアルゴリズムがずっと短い時間で終了することから、計算上、より実際的でもある。したがって、この方法は、設計者がパラメータを変え、問題となる可能性のある特徴ごとに、BNプロットへのその影響を見るのに従って、設計者にリアルタイムのフィードバックを提供することができる。設計者は、それに応じて、局所的又は大域的に補正を行い、再び試みることができる。
【0066】
要約すると、本開示は、デジタルコンピュータの助けによって、付加製造部品の構造的完全性を定量化し、それを適格にするために使用される方法及びシステムを説明する。これらの方法を活用するシステム例が
図15に示される。システム1500は、1つ以上のプロセッサ1501、メモリ1502(例えば、ランダムアクセスメモリ)、及び持続性記憶域1504(例えば、ディスクドライブ、フラッシュメモリ)を含む。これらの構成要素1501、1502、1504は、データ転送ライン(例えば、メモリバス、入力/出力バス)によって結合され、機能モジュール1506によって示される機能を果たすように構成されている。プロセッサ1501は、中央処理装置とグラフィック処理装置との任意の組み合わせを含む可能性がある。
【0067】
モジュール1504は、任意の複雑さの設計時形状1506を描写する入力データ(例えば、CAD幾何学的形状)を受信する。モジュール1504はまた、MMN及び堆積ポリシー(例えば、過剰堆積に対する許容度)の観点から、AMプロセスの任意の表現及び仕様を説明し得るパラメータ1508を活用する。このデータ、1506、1508に基づいて、モジュール1504は、3D空間内の全点に二進数を割り当てる3Dフィールドである、設計時目標1506及びMMNの入力表現の指示関数を得る(それぞれ、形状の内側/外側にある点に対して1/0)。好都合な3Dフィールド表現が、ボクセル化によって与えられ、それは二値画素を有するが、3Dにおける画像と類似するが、任意の他のフィールド表現が使用されてもよい。又は3Dボリュームが2Dに分解され、上記のように処理され得る。
【0068】
以下の解析は、特定のビルド向き及びスライシングパラメータ(例えば、層厚)について、完全3Dモデル上又はその2Dスライス上のいずれかで行われ得る。後者がユーザによって選択されるか、又はアルゴリズムによって適切と見なされる場合、設計時形状のスライス及びMMNスライスの指示関数が、それらの3Dモデルの指示関数から得られる。2つの指示関数の相互相関が計算され、これは、第2の指示関数(MMN又はその断面)の鏡映との第1の指示関数(設計時形状又はそのスライスのうちの1つ)の畳み込みである。これは、MMNが、設計時形状/スライスを含める3D/2D空間内の様々な位置に動かされる場合、設計時形状とのMMNの重なり測度(3D/2Dにおけるそれらの交差部の総体積/面積)として解釈され得る3D空間における実数値フィールドを生み出す。
【0069】
次に、望ましい堆積ポリシーに対応する、得られた重なり測度(相互相関)フィールドの望ましい上位集合1510が得られる。これは、製造時形状/スライスが、設計時形状/スライス内部に完全に含められる必要がある、厳格な過少堆積からの範囲であり、設計時形状/スライスが至る所で厚くされる過剰堆積を控えめにすることができる。それらは、相互相関フィールドの最大/最小上位集合に対応する。部分的な重なり測度比率によってパラメータ化された上位集合として得られるこれら2つの極値間に、過少堆積可能性と過剰堆積可能性との混合の族が存在する。各集合は、設計時形状/スライスに近いが、AM制限に起因するそれらからの幾何学的ずれ及び(場合により)位相的ずれの両方を有する、製造時形状/スライスの潜在的な候補に相当する。
【0070】
ソフトウェアのこの部分からの出力1510は、下記の次のステップへの入力として使用され得る。しかし、アルゴリズムの残りは、任意の製造時形状/スライスで機能する。したがって、ユーザが、外部モジュールに、基準ごとに異なるアルゴリズムを使用して、それらがそうすることができる製造時形状/スライス(又はそれらの族)を生成するよう求めることを選んだ場合、方法の残りが、何も変更なく機能するようになる。
【0071】
設計時形状/スライス、及びどのようにも計算される1つの可能な製造時形状/スライスを仮定すると、大域及び局所の位相的不一致が、形状/スライス及びずれに対する様々な特徴の寄与と、失われた位相的性質を回復するための可能な修復との間で定量化され得る。例えば、OD領域及びUD領域(設計時形状/スライスと製造時形状/スライスとの間の差領域)、設計時と製造時との間の交差領域、及び交差領域が、設計時形状/スライス及び製造時形状/スライスと共有する境界を計算することができる。再び、それらのEC及びBNを素早く計算する能力に、ボクセル表現が使用され得る。
【0072】
OD領域及びUD領域は、「切り取り境界」が特定されるようなそれらの繋がった構成要素に分解され得る。切り取り境界は、過剰堆積領域及び過少堆積領域が、それぞれ、設計時形状/スライス及び製造時形状/スライスと共有する境界として定義され得る。設計時形状/スライスと製造時形状/スライスとの間の総合的な位相的ずれに対する、それぞれの繋がった構成要素及びその切り取り境界の寄与が、付加位相的性質(例えば、EC)とともに、場合によっては、その付加位相的性質を得るのに加える他の性質の観点から、計算され得る。これは、繋がった構成要素ごとに並行して行われ得る。
【0073】
繋がった構成要素は、より単純な位相(例えば、トンネル/空洞なし)と、交代和の観点から特徴付けられる元の構成要素へのそれらの寄与とを有するより小さな構成要素に構成され得る。これは、任意の標準的な方法(例えば、Reebグラフ)を使用して行われ得る。非ゼロ値を大域位相的性質に与える構成要素が特定される。OD領域及びUD領域に対する非ゼロ寄与の表れ及び値の様々な組み合わせから引き起こされる位相的欠陥が分類され得る。問題の種類ごとに、局所修復が規定され得、例えば、局所特徴に対して、問題を解消するか、又は設計者にフィードバック(及び設計変更提案)を与えるように、ポリシーを局所的に変更する。
【0074】
実施形態によっては、位相的性質の持続性は、プリンタ解像度及び過剰堆積に対する許容度などのAMパラメータの範囲にわたって定量化され得る。例えば、パーシステントホモロジーを使用して、AMパラメータの連続変更に沿って位相的特徴の出現/消滅など、発生する位相的事象のパーシステンスバーコード/図を計算することができる。このプロセス(「フィルトレーション」と呼ばれる)は、その値において、製造時形状/スライスが、(場合によっては)製造時形状/スライスを設計時形状/スライスから更に逸脱させる、その位相的性質における変化に見舞われる、パラメータ値を特定する。フィルトレーションパラメータとしては、MMNのサイズ及び過剰堆積に対する許容度(例えば、重なり測度比率)が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0075】
上記の大域手順は、全体的な位相的変化に個別に寄与するOD構成要素及びUD構成要素などの局所領域上で行われ得る。幾何学的正確さと位相的完全性との間のトレードオフは、様々なフィルトレーションパラメータの関数として、大域及び/又は局所の位相的性質をプロットすることによって、視覚化され得る。システム1500は、ユーザ入力(例えば、理論上、AM機器などの製造機器1514に入力されると考えられる様々なパラメータ1516)を受信することと、製造時部品への位相的変更に対するユーザ入力の影響の視覚化を提示することの両方を行うために使用され得るユーザインターフェース1512も含む。
【0076】
この方法の1つの実施態様例は、大域製造時形状/スライス族又は局所OD及びUD特徴について、MMNサイズ、及び過剰堆積に対する許容度(例えば、重なり測度比率)の関数としてBNをプロットすることである(例えば、
図13参照)。このプロットは、解像度と許容度との間の、又は別の視点から見ると、過剰堆積と位相的崩壊とによって容認される幾何学的不正確間のトレードオフを示す。例えば、幾何学的正確さを犠牲にすることによって、設計時位相的特性(例えば、局所領域における接続性又は多孔性)を回復することが可能である場合、このプロットは、最低限必要な犠牲を示すことになる。同様に、最大許容度に制約があるときには、プロットは、位相を維持するのに必要とされる最低限の解像度を示し、逆もまた同様である。これにより、位相的ずれを制限/抑制するために、様々なレベルの保証を与える最小/最大AMパラメータ値を定義することが可能となる。
【0077】
例えば、プロットを使用して、繋がった構成要素(同様に、トンネル又は空洞の場合も)の個数における変更をある程度少なく又は等しく保つために(ゼロを含む、すなわち変更が許されない)、最低限の解像度(固定許容度の場合)又は最低限の許容度(固定解像度の場合)が何かを設計者に知らせてもよい。より一般的には、プロットは、位相的ずれに対して必要とされる抑制ごとのこれらのパラメータ間のトレードオフのパレートフロンティアを提供する(局所的に又は大域的に)。ノイズ近似及び/又は表現近似に起因する計算上信頼できない結果を生み出す可能性が高く(例えば、ラスタ化エラー)、それにより、これらの表現をAM機器に送信した後に予測不可能な出力を生み出す可能性がある、パラメータの集合も特定されてもよい。設計者には、これらのパラメータの組み合わせを避けるためのフィードバックが提供され得る。
【0078】
図16では、一実施形態例による方法のフロー図を示す。この方法は、設計時モデルと製造時モデルとの間の差集合を計算すること1600を含む。例えば、UD特徴とOD特徴との間の差集合を互いに素な片に分解することによって、1つ以上のUD特徴OD特徴が計算される1601。設計時モデルと製造時モデルとの間の不一致は、例えば、互いに素な片の性質を調べることによって、差集合に基づいて決定される。例えば、UD特徴及びOD特徴の局所位相的性質(例えば、EC、BN)を計算し、組み合わせて、大域性質に対する寄与を得ることができる。この不一致は、局所位相的性質に基づいて定量化され得る1602。この不一致に基づいて、製造機器への入力が、製造時モデルと設計時モデルとの間の位相的差を低減するように変更される1603。
【0079】
図17では、別の実施形態例による方法のフロー図を示す。この方法は、製造機器(例えば、AM機器)の運動を計算すること1700を含む。製造時モデルは、設計時モデルの幾何学的形状にわたってMMNを掃引することによって、この運動から計算される1701。MMNと設計時モデルとの重なりを決定するために、製造機器の構成空間にわたってフィールドが計算される1702(例えば、MMN及び設計時形状の関数を定義することの相互相関又は畳み込みを介して)。製造機器の運動は、重なり測度フィールドを閾値処理することによってパラメータ化される1703。パラメータ化運動を製造機器への入力として使用し、設計時モデルの修正されたレプリカを作り出す1704。
【0080】
図18では、別の実施形態例による方法のフロー図を示す。この方法は、設計時モデルと製造時モデルとの間の差集合に基づき、UD特徴及びOD特徴を計算すること1800を含む。UD特徴及びOD特徴の位相的持続性は、製造機器(例えば、AM機器)のプロセスパラメータにおける変更に応じて計算される1801。位相的持続性に基づき、設計時モデルと製造時モデルとの間の幾何学的ずれ及び位相的ずれが決定される1802。製造機器への入力が、製造時モデルと設計時モデルとの間の位相的差を低減するように、このずれに基づいて変更される1803。
【0081】
上記の様々な実施形態は、特定の結果をもたらすように情報をやり取りする回路網、ファームウェア、及び/又はソフトウェアのモジュールを使用して実装され得る。当業者は、当技術分野において一般的に知られている知識を使用して、モジュラレベルか全体としてのいずれかで、このような記載の機能性を容易に実装することができる。例えば、本明細書に図示されるフロー図及び制御図を使用して、プロセッサによる実行のためのコンピュータ可読命令/コードを作り出してもよい。このような命令は、非一時的コンピュータ可読媒体に格納され、当技術分野において知られているような実行に向けてプロセッサに転送されてもよい。上に示された構造及び手順は、本明細書の上記の機能を提供するために使用され得る実施形態の代表的な例にすぎない。
【0082】
別途記載のない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用される特徴のサイズ、量、及び物理的性質を表す全ての数は、全ての場合において、「約」という用語によって修飾されるものとして理解されるべきである。したがって、そうではないことが示されない限り、前述の明細書及び添付の特許請求の範囲に明示される数値パラメータは、本明細書に開示された教示を生かして当業者が得ようとする望ましい性質に応じて、変わり得る近似値である。端点による数値範囲の使用は、その範囲内の全ての数(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80.4、及び5を含む)、及びその範囲内の任意の範囲を含む。