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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-25
(45)【発行日】2023-09-04
(54)【発明の名称】屋根構造
(51)【国際特許分類】
   E04D 3/35 20060101AFI20230828BHJP
   E04D 5/00 20060101ALI20230828BHJP
   E04B 7/02 20060101ALI20230828BHJP
   E04D 3/40 20060101ALI20230828BHJP
【FI】
E04D3/35 P
E04D3/35 J
E04D5/00 A
E04B7/02 501H
E04D3/40 J
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019222556
(22)【出願日】2019-12-10
(65)【公開番号】P2021092055
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】307042385
【氏名又は名称】ミサワホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(72)【発明者】
【氏名】寺内 知網
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-155621(JP,A)
【文献】特開2012-092525(JP,A)
【文献】実開平04-043630(JP,U)
【文献】実開平02-107641(JP,U)
【文献】特開2018-145796(JP,A)
【文献】特開2013-199779(JP,A)
【文献】特開平02-204550(JP,A)
【文献】特開平11-229498(JP,A)
【文献】特開2007-308983(JP,A)
【文献】特開2013-113075(JP,A)
【文献】特開2014-227687(JP,A)
【文献】特開2000-355979(JP,A)
【文献】特開2010-001710(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 3/35
E04D 5/00
E04B 7/02
E04D 3/40
E04D 13/15
E04B 1/348
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平又は相対的に緩やかに傾斜した第一屋根面と、前記第一屋根面に設けられた第一防水シートと、を有する陸屋根部と、
前記第一屋根面に隣接するとともに前記第一屋根面よりも傾斜した第二屋根面と、前記第二屋根面に前記第一防水シートと連続して設けられた第二防水シートと、を有する傾斜屋根部と、
前記第二防水シートの下端部の下方に設けられた水切りと、を備えており、
前記傾斜屋根部は、
前記陸屋根部を構成する複数の梁の端部と、建物における前記傾斜屋根部の下方に位置する第一外壁部を構成する複数の柱の上端部と、の間に斜め方向に延びるように架設された複数の斜め材と、
前記複数の斜め材の下端部間に架設された支持梁と、
下端部が前記支持梁によって支持されて前記傾斜屋根部を構成する屋根材と、
前記斜め材を前記柱と接合する第一接合部材と、を備えており、
前記第一接合部材は、屈曲形状とされていて、下端部が前記柱の上端部に接合され、上端部が前記斜め材の下端部に接合され、
前記斜め材と前記第一接合部材とは予め一体化されており、
前記支持梁のうち前記屋根材の下端部を受ける面が、前記斜め材の上側傾斜面よりも突出した位置にあり、かつ、前記斜め材の上側傾斜面と平行に配置されていることを特徴とする屋根構造。
【請求項2】
請求項に記載の屋根構造において、
前記陸屋根部は、前記第一屋根面の周縁部における前記第二屋根面と隣接していない部分に沿って設けられた第一パラペットを有し、
前記傾斜屋根部は、前記陸屋根部の第一パラペットと連続するように設けられた第二パラペットを有することを特徴とする屋根構造。
【請求項3】
請求項に記載の屋根構造において、
前記傾斜屋根部は、
パラペットを備えておらず、
前記第二屋根面と、当該第二屋根面の側方に位置する第二外壁部との目地部に、前記第二屋根面に接する第一部位と前記第二外壁部に接する第二部位とを有する笠木を備えることを特徴とする屋根構造。
【請求項4】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の屋根構造において、
前記水切りの下方に、樋を備えていないことを特徴とする屋根構造。
【請求項5】
請求項に記載の屋根構造において、
前記傾斜屋根部は、前記斜め材を前記梁と接合する第二接合部材を備えており、
前記斜め材と、前記第二接合部材と、は、予め一体化されていることを特徴とする屋根構造。
【請求項6】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の屋根構造において、
前記傾斜屋根部を構成する屋根材の下端部と、建物における前記傾斜屋根部の下方に位置する第一外壁部を構成する外壁材の上端部と、の間に充填された断熱材を更に備えることを特徴とする屋根構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根構造に関する。
【背景技術】
【0002】
陸屋根及び傾斜屋根を有する建物において、陸屋根の屋根面と傾斜屋根の屋根面とを、パラペットで仕切ることなく連続させ、陸屋根に溜まった雨水を傾斜屋根の方に流せるようにしたものが従来知られている。
また、こうした建物においては、傾斜屋根の屋根面にも、陸屋根の屋根面と同様の防水シートを貼り付けることが行われている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-001710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の陸屋根の屋根面と傾斜屋根の屋根面とを連続させた建物においては、傾斜屋根を流れ落ちた雨水が、傾斜屋根の下方にある外壁にかかったり、傾斜屋根と外壁との目地に入り込んだりしてしまうことがあった。
こうした雨水は、外壁材や内部の躯体を劣化させてしまう原因となる。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、陸屋根の屋根面と傾斜屋根の屋根面とを連続させた建物において、傾斜屋根を流れ落ちた雨水が、傾斜屋根の下方にある外壁にかかったり、傾斜屋根と外壁との目地に入り込んだりすることを防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項に記載の発明は、例えば図1,5,6に示すように
水平又は相対的に緩やかに傾斜した第一屋根面111と、前記第一屋根面111に設けられた第一防水シート23と、を有する陸屋根部110と、
前記第一屋根面111に隣接するとともに前記第一屋根面111よりも傾斜した第二屋根面121と、前記第二屋根面121に前記第一防水シート23と連続して設けられた第二防水シート24と、を有する傾斜屋根部120と、
前記第二防水シート24の下端部の下方に設けられた水切り5と、を備えており、
前記傾斜屋根部120は、
前記陸屋根部110を構成する複数の梁16,17の端部と、建物100における前記傾斜屋根部120の下方に位置する第一外壁部130を構成する複数の柱11の上端部と、の間に斜め方向に延びるように架設された複数の斜め材14と、
前記複数の斜め材14の下端部間に架設された支持梁13(第一の梁13)と、
下端部が前記支持梁13によって支持されて前記傾斜屋根部120を構成する屋根材2と、
前記斜め材14を前記柱11と接合する第一接合部材12と、を備えており、
前記第一接合部材12は、屈曲形状とされていて、下端部が前記柱11の上端部に接合され、上端部が前記斜め材14の下端部に接合され、
前記斜め材14と前記第一接合部材12とは予め一体化されており、
前記支持梁13のうち前記屋根材2の下端部を受ける面が、前記斜め材14の上側傾斜面よりも突出した位置にあり、かつ、前記斜め材14の上側傾斜面と平行に配置されていることを特徴とする屋根構造100aである。
請求項に記載の発明によれば、第二防水シート24の下方の水切り5が、第二防水シート24の上を流れ落ちてきた雨水を第一外壁部130の外側表面から遠のける。このため、雨水が、傾斜屋根部120の下方にある第一外壁部130にかかったり、傾斜屋根部120と第一外壁部130との目地に入り込んだりすることを防ぐことができる。
また、屋根材2が、支持梁を介して斜め材14によって支持されるため、傾斜屋根部120の強度が、屋根材2を柱11の上端部及び梁16,17の端部だけで支持する場合に比べて高くなる。
また、斜め材14と第一接合部材12とを施工現場で接合する手間を低減することができる。
【0008】
請求項に記載の発明は、例えば図4(a),9に示すように、
請求項に記載の屋根構造100aにおいて、
前記陸屋根部110は、前記第一屋根面111の周縁部における前記第二屋根面121と隣接していない部分に沿って設けられた第一パラペット31aを有し、
前記傾斜屋根部は、前記陸屋根部110の第一パラペット31aと連続するように設けられた第二パラペット31bを有することを特徴とする。
【0009】
請求項に記載の発明によれば、陸屋根部110及び傾斜屋根部120に振った雨水が、水切り5の無い方向へ流れて行ってしまうことを防ぐことができる。
【0010】
請求項に記載の発明は、例えば図3,4(b)に示すように、
請求項に記載の屋根構造100aにおいて、
前記傾斜屋根部120は、
パラペットを備えておらず、
前記第二屋根面121と、当該第二屋根面121の側方に位置する第二外壁部140との目地部に、前記第二屋根面121に接する第一部位34aと前記第二外壁部140に接する第二部位34bとを有する笠木34を備えることを特徴とする。
【0011】
パラペットの上に笠木を設ける場合、パラペットの外側面、上面、内側面を覆う断面コ字状のものが必要となるが、請求項に記載の発明によれば、パラペットが無いため、目地部に設けられる笠木を、第一部位と第二部位とを有するだけの(長手方向と直交する面で切断したときの断面がL字状)の簡素なものとすることができる。
【0014】
請求項に記載の発明は、例えば図7に示すように、
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の屋根構造100aにおいて、
前記水切り5の下方に、軒樋9を備えていないことを特徴とする。
【0015】
傾斜屋根部120を有する建物は、一般的な住宅に比べて高層であることが多い。また、その場合、軒樋は高い場所に設けられることになり維持管理に手間がかかってしまう。しかし、請求項に記載の発明によれば、こうした手間がかかってしまうことを防ぐことができる。
【0016】
請求項に記載の発明は、
請求項に記載の屋根構造100aにおいて、
前記傾斜屋根部120は、前記斜め材14を前記梁16,17と接合する第二接合部材15を備えており、
前記斜め材14と、前記第二接合部材15と、は、予め一体化されていることを特徴とする。
【0017】
請求項に記載の発明によれば、斜め材14と第二接合部材15とを施工現場で接合する手間を低減することができる。
【0018】
請求項に記載の発明は、例えば図5~7に示すように、
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の屋根構造100aにおいて、
前記傾斜屋根部120を構成する屋根材2の下端部と、建物100における前記傾斜屋根部120の下方に位置する第一外壁部130を構成する外壁材3の上端部と、の間に充填された断熱材7を更に備えることを特徴とする。
【0019】
請求項に記載の発明によれば、屋根材2の下端部と外壁材3の上端部との間が空隙となっている場合に比べ、建物100の断熱性能が高くなる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、傾斜屋根を流れ落ちた雨水が、傾斜屋根の下方にある外壁にかかったり、傾斜屋根と外壁との目地に入り込んだりすることを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係る屋根構造を有する建物の一部を示す分解斜視図である。
図2図1の建物が有する躯体の一部を示す側面図である。
図3】同実施形態に係る屋根構造を有する建物の外観を示す斜視図である。
図4】同実施形態の変形例に係る屋根構造を有する建物を示す斜視図である。
図5図3のV-V断面図である。
図6】同実施形態の変形例に係る屋根構造を有する建物の断面図である。
図7】同実施形態の変形例に係る屋根構造を有する建物の断面図である。
図8】同実施形態に係る屋根構造の施工途中の状態を示す側面図である。
図9】同実施形態に係る屋根構造が有する躯体の一部の施工途中の状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の技術的範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0023】
〔1.建物の概略構成〕
まず、本実施形態に係る屋根構造100aを有する建物100の概略構成について説明する。
図1は本実施形態に係る建物100の一部(躯体)を示す斜視図、図2図1の建物が有する躯体の一部を示す側面図である。
【0024】
建物100は、図1に示すように、躯体1と、複数の屋根材2と、複数の外壁材3と、を備えている。
【0025】
(1-1.躯体)
躯体1は、複数の短柱11と、複数の第一接合部材12と、第一の梁13と、複数の斜め材14と、複数の第二接合部材15と、第二,第三の梁16,17と、複数の躯体側固定部18と、図示しない複数の長柱と、第二接合部材と、を備えている。
また、本実施形態に係る躯体は、間柱14Aと、を備えている
【0026】
複数の短柱11は、図示しない基礎の上に、鉛直方向に延びるように立設されている。
本実施形態に係る短柱11は、二本であり、所定方向に沿って所定間隔を空けて並ぶように立設されている。
本実施形態に係る短柱11は、複数の鋼材(例えば角型鋼管)を溶接したものとなっている。
【0027】
複数の第一接合部材12は、各短柱11の上端部に設けられている。
上述したように、本実施形態に係る短柱11は二本なので、本実施形態に係る第一接合部材12は、二つであり、左右対称の形状をしたものが互いに向かい合うように取り付けられている。
【0028】
第一の梁13は、少なくとも隣り合う第一接合部材12と第一接合部材12との間に架設されている。
なお、第一の梁13は、隣り合う短柱11の中間部と短柱11の中間部との間や、斜め材14と斜め材との間(図5参照)、第三接合部材と第三接合部材との間、隣り合う長柱の中間部と長柱の中間部との間に架設されていてもよい。
【0029】
複数の斜め材14は、下端部が第一接合部材12に接合されるとともに、上方に向かうに従って短柱11の軸Aから離れるように傾斜している。
上述したように、本実施形態に係る第一接合部材12は二つなので、本実施形態に係る斜め材14は、二本であり、互いに平行に延びるように取り付けられている。
なお、斜め材14は、斜め柱であってもよいし、斜め梁であってもよい。
斜め柱の場合には、第一接合部材12に溶接されるとともに、短柱11と同様に複数の鋼材(角型鋼管)を溶接したものとなっていることが好ましい。
斜め梁の場合には、第一接合部材に溶接されてもよいし、固定具(プレート、ボルト、ナット)を用いて固定されていてもよい。
【0030】
第二接合部材15は、斜め材14の上端部に接合されている。
上述したように、本実施形態に係る斜め材14は二本なので、本実施形態に係る第二接合部材15は、二つであり、左右対称の形状をしたものが互いに向かい合うように取り付けられている。
【0031】
なお、斜め材14と、当該斜め材14を短柱11又は第二,第三の梁16,17と接合する第一,第二接合部材12,15と、は、予め一体化(溶接)されていてもよい。
このようにすれば、斜め材14と接合部材12,15とを施工現場で接合する手間を低減することができる。
【0032】
第二の梁16は、隣り合う第二接合部材15と第二接合部材15との間に架設されている。
本実施形態に係る第二の梁16は、図2に示すように、上側のフランジ16aが下側のフランジ16bよりも、短柱11の軸Aから遠のく方向にずれるとともに、ウェブ16cが斜め材14の軸Bの延長方向に傾斜したH型鋼からなる異形梁となっている。
このため、上側のフランジ16aが斜め材14の上面(傾斜面)から延長された平面から過度に突出せず、屋根材2を取り付ける際に干渉しないようになっている。
【0033】
図示しない複数の長柱は、短柱11と同様に、図示しない基礎の上に、鉛直方向に延びるように立設されている。
本実施形態に係る長柱は、二本であり、各短柱11から上記所定方向と直交する方向に所定間隔を空けて並ぶように立設されている。
なお、長柱と短柱11との間隔は、短柱11同士(長柱同士)の間隔と同じでもよいし異なっていてもよい。
本実施形態に係る長柱は、短柱11と同様に、複数の鋼材(角型鋼管)を接合(溶接)したものとなっている。
【0034】
図示しない複数の第三接合部材は、各長柱の上端部に設けられている。
上述したように、本実施形態に係る長柱は二本なので、本実施形態に係る第二接合部材は、二つであり、左右対称の形状をしたものが互いに向かい合うように取り付けられている。
【0035】
第三の梁17は、隣り合う第二接合部材15と第三接合部材との間にそれぞれ架設されている。
また、斜め材14は、図1に示したように、第二の梁16の端部又は第三の梁17の端部と、短柱11の上端部と、の間に、接合部材12,15を介して斜め方向に延びるように架設されることになる。
なお、第三の梁17と平行に延び、且つ第三の梁よりも長い第四の梁が、短柱11の中間部と長柱の中間部との間に架設されていてもよい。
【0036】
間柱14Aは、第一接合部材12と第一接合部材12との間に架設された第一の梁13と第二の梁16との間に、斜め材14と平行に延びるように架設されている。
なお、第一の梁13及び第二の梁16が短い場合には、間柱14Aは無くてもよい。
【0037】
躯体側固定部18(図5参照)は、躯体1の各柱及び各梁における、屋根材2又は外壁材3と対向する面に設けられている。
なお、躯体側固定部18は、各接合部に設けられていてもよい。
各躯体側固定部18は、例えば、板材やアングル材等で構成されている。
【0038】
(1-2.屋根材)
屋根材2は、本体21と、屋根側固定部22と、を備えている。
【0039】
本体21は、パネル状に形成されている。
本実施形態に係る本体21は、軽量気泡コンクリート(ALC)等の材料で形成されているが、他の材料で形成されていてもよい。
【0040】
屋根側固定部22は、本体21の内側表面に設けられ、躯体側固定部18を挟んでボルト止めすることが可能に構成されている。
【0041】
このように構成された屋根材2は、屋根側固定部22が、所定位置に設けられた躯体側固定部18に係合されるとともに、当該躯体側固定部18に固定されることにより、第二、第三の梁16,17の上面及び斜め材14の上面に配置される。
このように、屋根材2が斜め材14によって支持されるため、傾斜屋根部120の強度が、屋根材2を柱11の上端部及び梁16,17の端部だけで支持する場合に比べて高くなっている。
【0042】
(1-3.外壁材)
外壁材3は、本体31と、壁側固定部32と、を備えている。
【0043】
本体31は、パネル状に形成されている。
本実施形態に係る本体31は、軽量気泡コンクリート(ALC)等の材料で形成されているが、他の材料で形成されていてもよい。
なお、本体31は、外側表面(以下外壁面3a)にタイル等の装飾部材を有していてもよい。
【0044】
壁側固定部32は、本体31の内側表面に設けられ、躯体側固定部18を挟んでボルト止めすることが可能に構成されている。
【0045】
このように構成された外壁材3は、壁側固定部32が、所定位置に設けられた躯体側固定部18に係合されるとともに、当該躯体側固定部18に固定されることにより、短柱11及び第一の梁13の側面、短柱11、斜め材14、第三の梁17、及び長柱の側面に配置される。
【0046】
以下、建物100における、第二,第三の梁16,17、屋根材2等で構成される箇所を陸屋根部110、斜め材14、間柱14A、屋根材2等で構成される箇所を傾斜屋根部120、短柱11、第一の梁13、外壁材3等で構成される箇所を第一外壁部130と、短柱11、長柱、斜め材14、第三の梁17、外壁材3等で構成される箇所を第二外壁部140と称する。
【0047】
〔2.建物の各部構成〕
次に、上記建物100を、場所ごと(陸屋根部110と、傾斜屋根部120と、第一外壁部130と、第二外壁部140と、に)分けて説明する。
図3は本実施形態に係る建物100の外観を示す斜視図、図4は本実施形態の変形例に係る建物100を示す斜視図である。
【0048】
(2-1.陸屋根部)
陸屋根部110は、図3に示すように、第一屋根面111と、第一防水シート23と、を有している。
また、本実施形態に係る陸屋根部110は、第一パラペット31aと、第一笠木33と、を更に有している。
【0049】
第一屋根面111は、第二の梁16及び第三の梁17の上面に取り付けられた屋根材2の外側表面である。
本実施形態に係る第一屋根面111の平面視の形状は矩形となっている。
また、第一屋根面111は、水平又は相対的に緩やかに傾斜している。
【0050】
第一防水シート23は、第一屋根面111に設けられている。
本実施形態に係る第一防水シート23は、第一屋根面111全体を被覆している。
【0051】
本実施形態に係る第一パラペット31aは、第一屋根面111の周縁部における第二屋根面121と隣接していない部分に沿って設けられている。
本実施形態に係る第一パラペット31aは、矩形の第一屋根面の3辺に沿って、平面視コ字状となるように設けられている。
また、本実施形態に係る第一パラペット31aは、外壁材3が第一屋根面111の上方まで延びたものとなっているが、外壁材とは異なる部材で第一屋根面111の上面端部に設けられたものであってもよい。
【0052】
第一笠木33は、第一パラペット31aの上面全体に設けられている。すなわち、第一笠木33の平面視形状は、第一パラペット31aと同様のコ字状となっている。
【0053】
(2-2.傾斜屋根部)
傾斜屋根部120は、第二屋根面121と、第二防水シート24と、を有している。
また、本実施形態に係る傾斜屋根部120は、第二笠木34を更に有している。
【0054】
第二屋根面121は、斜め材14及び第二の梁16の上面(傾斜面)に取り付けられた屋根材2の外側表面である。
本実施形態に係る第二屋根面121の平面視の形状は矩形となっている。
また、第二屋根面121は、第一屋根面111に隣接するとともに第一屋根面111よりも傾斜している。
【0055】
第二防水シート24は、第二屋根面121に第一防水シート23と連続して設けられている。
この「連続して設けられている」には、第一防水シート23と一体になっている場合と、第一防水シート23との間から水が漏れないように塞がれている場合と、が含まれる。
本実施形態に係る第二防水シート24は、第二屋根面121全体を被覆するとともに、下端部が第二屋根面121の下端よりも下まで延びている
【0056】
本実施形態に係る第二笠木34は、傾斜屋根部120の水平方向両端部、より具体的には、第二屋根面121と、当該第二屋根面121の側方に位置する第二外壁部140と、の目地部に設けられている。
また、本実施形態に係る第二笠木34は、第一部位34aと、第二部位34bと、を有している。
第一部位34aは、第二屋根面121に接する部位である。
第二部位34bは、第一部位34aの端部から下方に延び、第二外壁部140に接する部位である。
パラペットの上に笠木を設ける場合、パラペットの外側面、上面、内側面を覆う断面コ字状のものが必要となるが、本実施形態に係る第二笠木34は、パラペットの上に設けられていないため、第二笠木34を、第一部位34aと第二外壁部140に接する第二部位とを有するだけの(長手方向と直交する面で切断したときの断面がL字状)の簡素なものとすることができる。
なお、本実施形態に係る第二笠木34の下端部は、第一外壁部130の外壁面まで延びていてもよい。
【0057】
(2-3.外壁部)
第一外壁部130は、建物100における傾斜屋根部120の下方に位置している。
第二外壁部140は、第二屋根面121の両側方に位置している。
本実施形態に係る第二外壁部140における第二屋根面121の側方に位置する外壁材の上部は、第二屋根面121と略面一となるように切りかかれている。
【0058】
(2-4.その他)
なお、建物100は、図4(a)に示すように、傾斜屋根部120が第二パラペット31bを備えていてもよい。
この場合、第二パラペット31bは、陸屋根部110の第一パラペット31aと連続するように設けられていることが好ましい。
また、この場合、第二笠木34は、この第二パラペット31bの上に設けられることになる。
このようにすれば、陸屋根部110及び傾斜屋根部120に振った雨水が、水切り5の無い方向へ流れて行ってしまうことを防ぐことができる。
なお、第二パラペット31bは、外壁部が第二屋根面121の上方まで延びたものとなっていてもよいし、外壁材とは異なる部材として第二屋根面121の上面端部に設けられたものであってもよい。
【0059】
また、建物100は、図4(b)に示すような袖壁31cを備えたものであってもよい。
袖壁31cは、一対の第二外壁部140の少なくとも一方の外壁材3が水平方向に突出したものであってもよいし、外壁材3とは異なる部材で第一外壁部130の外壁面3aの端部に設けられたものであってもよい。
なお、建物100は、袖壁31cと第二パラペットを両方とも備えていてもよい。その場合、袖壁31cは、第二パラペット31bと連続していてもよい。
【0060】
〔3.屋根構造〕
次に、上記建物100が有する屋根構造100aの詳細について説明する。
図5は、図1のV-V断面図である。
【0061】
建物100が備える屋根構造100aは、陸屋根部110と、傾斜屋根部120と、第一外壁部130と、の他に、図5に示すように、遮蔽部材4と、水切り5と、防水板6と、断熱材7と、を備えている。
また、本実施形態に係る屋根構造100aは、水返し8と、軒樋9と、を備えている。
【0062】
遮蔽部材4は、屋根材2の下面に沿って水平方向に延びるように設けられた部材である。
また、本実施形態に係る遮蔽部材4は、部材側固定部41と、遮蔽部42と、を有している。
部材側固定部41は、躯体側固定部18に固定されるとともに、傾斜屋根部120の屋根材2の下端面に沿って第二屋根面121の方向へ延びる部位となっている。
遮蔽部42は、部材側固定部41の第二屋根面121側の端部から第二屋根面121の延長面に沿って下方に延びる部位となっている。
遮蔽部材4は、このように構成されることで、傾斜屋根部120の屋根材2の下端と第一外壁部130の外壁材3の上端との間にできる空隙を閉塞するようになっている。
【0063】
水切り5は、外壁材3の上端部に、その外壁面3aに沿って水平方向に延びるように設けられた部材であり、第二防水シート24の下端部の下方に設けられている。
本実施形態に係る水切り5は、固定部51と、遮蔽部52と、傾斜部53と、を有している。
固定部51は、遮蔽部材4の遮蔽部42の上面に当接し、第一外壁部130の外壁面の延長面Sまで延びる部位となっている。
遮蔽部52は、固定部51の下端から鉛直下方に延び、遮蔽部材4と外壁材3との間の隙間を遮蔽する部位となっている。
傾斜部53は、遮蔽部52の下端から下方に向かうに従って外壁面から離れるように傾斜する部位となっている。
【0064】
防水板6は、水切り5の表面に沿って水平方向に延びる部材である。
本実施形態に係る防水板6は、水切り5の固定部51の外側表面及び遮蔽部52の外側表面に跨って貼り付けられている。
また、防水板6は、上述した第二防水シート24が張り付きやすい材質となっている。そして、第二防水シート24の下端部は、この防水板6の外側表面に張り付けられている。
防水板6は、このように構成されることで、第二防水シート24下端部をはがれにくくするとともに、雨水が水切り5と第二防水シート24との間に入り込むのを防ぐようになっている。
また、防水板6は、屋根材2の下端部と外壁材3の上端部との間の剛性を補強している。
【0065】
断熱材7は、傾斜屋根部120を構成する屋根材2の下端部と第一外壁部130を構成する外壁材3の上端部との間に充填されている。
断熱材7は、耐火性能を有するものであることが好ましい。このため、本実施形態に係る断熱材7は、ロックウールとなっている。
この断熱材7により、屋根材2の下端部と外壁材3の上端部との間が空隙となっている場合に比べ、建物100の断熱性能が高くなっている。
【0066】
なお、断熱材7は、フェノールフォームで形成されたものであってもよい。
この場合の断熱材7は、図6に示すように、屋根材2の下端部と第一外壁部130の外壁材3の上端部との間にできる空隙を充填することが可能な形状とする。
なお、この場合の断熱材7は、表面に無機材料や金属箔で被覆されたものであってもよい。このようにすれば、断熱材7の耐火性能をより高いものとすることができる。
【0067】
また、この場合の断熱材7の施工に際しては、屋根材2の下端部と第一外壁部130の外壁材3の上端部との間にできる空隙を充填する形状に加工されたもの(図6に示すような断面形状のもの)を、工場等で予め用意しておくのが好ましい。このようにすれば、断熱材7の加工を施工現場で行うよりも高い精度で行うことができるため、空隙をより隙間なく充填することができるし、施工現場における施工の手間が低減され、工期を短縮することもできる。
【0068】
水返し8は、固定部81と、水平部82と、当接部83と、を有している。
固定部81は、外壁面3aの上端部に当接し、当該外壁面3aに固定される部位となっている。
水平部82は、固定部81の上端から水平方向に、外壁面3aから離れるように延び、水切り5の傾斜部53に当接する部位となっている。
当接部83は、水平部82の先端から傾斜部53に沿って下方に延びる部位となっている。
【0069】
また、本実施形態に係る水返し8は、鼻隠し部84を更に有している。
なお、水返し8は鼻隠し部84を有していなくてもよい。その場合、独立した鼻隠しを備えるようにしてもよい。
【0070】
軒樋9は、水切り5の下方であって、外壁材3の外壁面3aの上端部に、水平方向に延びるように設けられている。
本実施形態に係る軒樋9は、軒樋金具91と、本体92と、を備えている。
軒樋金具91は、外壁材3の外壁面3aに、水切り5の下方に位置するように取り付けられている。
本体92は、軒樋金具91に係合している。
なお、建物100は、図7に示すように、水切り5の下方に、軒樋9を備えていなくてもよい。また、その場合、水返し8を備えていなくてもよい。
傾斜屋根部120を有する建物は、一般的な住宅に比べて高層であることが多い。また、その場合、軒樋9は高い場所に設けられることになり維持管理に手間がかかってしまう。しかし、このようにすれば、こうした手間がかかってしまうことを防ぐことができる。
【0071】
〔4.建物の施工方法〕
次に、上記屋根構造100aを有する建物100の施工方法について説明する。
図8は躯体1の施工途中の状態を示す側面図、図9は屋根構造100aの施工途中の状態を示す斜視図である。
【0072】
(4-1.柱の溶接)
本実施形態に係る建物100の斜め柱14は、複数の鋼材(角型鋼管)を完全溶込み溶接(突合せ溶接)することで施工する。
この斜め柱14を施工するには、まず、図8(a)に示すように、斜め柱14の相対的に下部となる下部鋼材14aの上端部の裏側側面(角型鋼管の場合には内側表面)に裏当て部材14bを取り付ける。
裏当て部材14bは、溶接してもよいし、固定具で固定してもよい。
裏当て部材14bは、下部鋼材14aの上端から所定の突出長さα突出するように取り付ける。
【0073】
また、裏当て部材14bの取り付けに前後して、又は並行して、斜め柱14の相対的に上部となる上部鋼材14cの下端部の内側表面に下がり止め部材14dを取り付ける。
下がり止め部材14dは、溶接してもよいし、固定具で固定してもよい。
下がり止め部材14dは、上部鋼材14cの下端から所定の突出長さαよりも短い距離β奥まった位置に取り付ける。
【0074】
次に、下部鋼材14aを立設する。
そして、図8(b)に示すように、上部鋼材14cを下部鋼材14aの上に配置する。
このとき、裏当て部材14bが下がり止め部材14dに当接するとともに、上部鋼管の裏側側面(角型鋼管の場合には内側表面)に当接する。
また、上述したように、上部鋼材14cの下端から下がり止め部材14dまでの距離βが、裏当て部材14bの突出長さαよりも短いため、上部鋼材14cと下部鋼材14aとの間には、幅α-βの隙間ができる。
【0075】
次に、この隙間を用いて上部鋼材14cと下部鋼材14aとを完全溶け込み溶接によって接合する。
こうすることで、図8(c)に示すように、隣り合う二つの鋼材とその溶接部とに跨って当接する裏当て部材14bと、上部鋼材14cと裏当て部材14bとに当接する下がり止め部材14dと、有する斜め柱14が施工される。
なお、この柱の施工方法は、短柱11,長柱の継ぎ足しにも用いることができる。
【0076】
(4-2.屋根構造の施工)
本実施形態に係る屋根構造100aを施工するには、まず、図9(a)に示すように、傾斜屋根部120の第二屋根面121の下端部と、第一外壁部130の外壁面3aの上端部とに跨るように、捨て貼りシート25を貼り付ける。
なお、傾斜屋根部120が第二パラペット31bを有する場合には、捨て貼りシート25の長手方向の端部を折って、第二パラペット31bの側面に貼り付ける。
【0077】
捨て貼りシートを貼り付けた後は、必要に応じて、図9(b)に示すように、捨て貼りシート25の端部を第二の捨て貼りシート25Aで補強する。
【0078】
捨て貼りシート25を貼り付けた又は補強した後は、図9(c)に示すように、第一外壁部130の外壁面3aであって、捨て貼りシート25の下方に水返し8を取り付ける。
なお、ここでは、鼻隠し部を有していない水返し8を例示したが、図5に示した鼻隠し部84を有する水返し8を取り付けてもよい。
【0079】
水返し8を取り付けた後は、図9(d)に示すように、捨て貼りシート25の上に水切り5を取り付けるとともに、外壁面3aに軒樋金具91を取り付ける。
なお、屋根構造100aに軒樋9を備えない場合、軒樋金具91は不要である。
【0080】
水切り5及び軒樋金具91を取り付けた後は、図9(e)に示すように、軒樋金具91に軒樋9の本体92を係合させるとともに、水切り5の表面に防水板6を貼り付ける。
【0081】
軒樋の本体92及び防水板6を取り付けた後は、図9(f)に示すように、第二屋根面121に第二防水シート24を貼りつける。
【0082】
第二防水シート24を貼り付けた後は、図9(g)に示すように、第二パラペット31bの表面に防水テープ35を貼りつける。
【0083】
防水テープ35を張りつけた後は、図9(h)に示すように、第二パラペット31b下端部の外壁面3aと平行になった面に、小口笠木受け36を取り付ける。
この小口笠木受け36は、第二笠木34を支持するための部材である。
【0084】
小口笠木受け36を取り付けた後は、図9(i)に示すように、第二笠木34を取り付ける。
こうして、本実施形態に係る屋根構造100aが施工される。
【0085】
〔5.効果〕
本実施形態に係る屋根構造100aによれば、第二防水シート24の下方の水切り5が、第二防水シート24の上を流れ落ちてきた雨水を第一外壁部130の外壁面3aから遠のける。このため、雨水が、傾斜屋根部120の下方にある第一外壁部130にかかったり、傾斜屋根部120と第一外壁部130との目地に入り込んだりすることを防ぐことができる。
【符号の説明】
【0086】
100 建物
100a 屋根構造
110 陸屋根部
111 第一屋根面
120 傾斜屋根部
121 第二屋根面
130 第一外壁部
140 第二外壁部
1 躯体
11 短柱
12 第一接合部材
13 第一の梁
14 斜め材(斜め梁、斜め柱)
14A 間柱
14a 下部鋼材
14b 裏当て部材
14c 上部鋼材
14d 下がり止め部材
15 第二接合部材
16 第二の梁
16a フランジ
16b フランジ
16c ウェブ
17 第三の梁
18 躯体側固定部
2 屋根材
21 本体
22 屋根側固定部
23 第一防水シート
24 第二防水シート
25 捨て貼りシート
25A 第二の捨て貼りシート
3 外壁材
3a 外壁面
31 本体
31a 第一パラペット
31b 第二パラペット
31c 袖壁
32 壁側固定部
33 第一笠木
34 第二笠木
34a 第一部位
34b 第二部位
35 防水テープ
4 遮蔽部材
41 部材側固定部
42 遮蔽部
5 水切り
51 固定部
52 遮蔽部
53 傾斜部
6 防水板
7 断熱材
8 水返し
81 固定部
82 水平部
83 当接部
84 鼻隠し部
9 軒樋
91 軒樋金具
92 本体
A 短柱の軸
B 斜め材の軸
S 外壁面の延長面
α 裏当て部材の突出長さ
β 上部鋼材の下端から下がり止め部材までの距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9