(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-25
(45)【発行日】2023-09-04
(54)【発明の名称】特定の界面活性剤および高濃度のグリセリンを含む組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/44 20060101AFI20230828BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20230828BHJP
A61K 8/42 20060101ALI20230828BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20230828BHJP
A61Q 5/02 20060101ALI20230828BHJP
A61Q 1/14 20060101ALI20230828BHJP
【FI】
A61K8/44
A61K8/34
A61K8/42
A61Q19/10
A61Q5/02
A61Q1/14
(21)【出願番号】P 2019515494
(86)(22)【出願日】2017-09-13
(86)【国際出願番号】 EP2017073038
(87)【国際公開番号】W WO2018054743
(87)【国際公開日】2018-03-29
【審査請求日】2020-07-13
(32)【優先日】2016-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521042714
【氏名又は名称】ユニリーバー・アイピー・ホールディングス・ベスローテン・ヴェンノーツハップ
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100182132
【氏名又は名称】河野 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,リン
(72)【発明者】
【氏名】チャンダル,プリム
(72)【発明者】
【氏名】フ,ジン
【審査官】阪▲崎▼ 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-055925(JP,A)
【文献】特開2002-037726(JP,A)
【文献】特開平10-219289(JP,A)
【文献】特開昭61-275395(JP,A)
【文献】特開2015-189674(JP,A)
【文献】特開2004-307568(JP,A)
【文献】特表2002-537239(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)
50~90重量%のグリセリンと、
2)a)組成物全体に対して3~25重量%の
グルタメートもしくはタウレートまたはそれらの混合物であって、
ジカルボキシルアミノ酸のN-アシル誘導体の塩、N-アシルモノカルボン酸の塩およびそれらの混合物からなる群より選択される界面活性剤の量が組成物全体に対して3~25重量%であり、前記ジカルボキシルアミノ酸がアスパラギン酸およびグルタミン酸から選択され、前記モノカルボン酸がグリシンおよびアラニンから選択される混合物、ならびに
b)組成物全体に対して1~
10重量%の補助界面活性剤であって、該補助界面活性剤がベタインを含み、前記ベタインは界面活性剤系のうちの50%未満を構成
し、非イオン界面活性剤、両性および/または双性イオン界面活性剤、カチオン界面活性剤ならびにそれらの混合物からなる群より選択される補助界面活性剤の量が、組成物全体に対して1~10重量%である、補助界面活性剤、
を含む界面活性剤系と、
3)5~55重量%の水と、
を含む組成物。
【請求項2】
2)a)の界面活性剤が、前記界面活性剤系の50~90%を構成する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物は60~80%のグリセリンを含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
ベタインが、前記界面活性剤系の40%未満である、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
ベタインがアルキルアミドベタインである、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
アルキルアミドベタインが30%未満の量で存在する、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
毛髪または皮膚に、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物を適用する段階を含む、グリセリンの沈着を増強する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄用界面活性剤、好ましくは穏やかな洗浄用界面活性剤、および高濃度(例えば、40~80重量%または50~80重量%)のグリセリンを含むパーソナルケアクレンジング組成物に関する。さらに詳細には、高濃度グリセリン組成物は、特定の種類の穏やかな界面活性剤と組み合わせると、さらに著しい穏やかさ(例えば、経皮水分喪失すなわち「TEWL」試験により、またはSkicon試験により測定される)、およびそのようなパーソナルケア(例えば、水性のパーソナル洗浄クレンジング)組成物に通常使用される界面活性剤と比較して、より優れたグリセリンの沈着をもたらすことが見出された。
【背景技術】
【0002】
パーソナルケア組成物(一般に、哺乳動物のケラチン組織に適用するのに適切な、洗い流すまたは洗い流さない組成物をいう)は、皮膚および/または毛髪を洗浄および保湿する、有効成分を送達する、欠点を隠す、ならびに皮脂に関連する油性感/テカリを減らすために用いられてきた。
【0003】
消費者は、通常、皮膚に穏やかであり、かつ/または保湿感もしくはその他の消費者利益をもたらす組成物を好む。そして、穏やかさは、例えば、低水準の皮膚刺激、および低水準の水分損失(例えば、上述のようなSkicon試験および/またはTEWL試験により測定される)に関連し得る。
【0004】
これらの需要を満たす一つの方法は、グリセリンの沈着を増強することによる(グリセリンの沈着はより大きな保湿感を与える)。
【0005】
極めて意外なことに、出願人らは、今般、高濃度グリセリン含有組成物と組み合わせて、モノ-および/またはジカルボン酸のN-アシル誘導体である特定の界面活性剤を使用することにより、界面活性剤の穏やかな特性を生かせることを見出しただけでなく、さらに、これらの界面活性剤が、同じ高濃度グリセリン系における他の種類の界面活性剤の使用と比較して増強されたグリセリンの沈着を提供することを見出した。好ましくは、穏やかな界面活性剤は、界面活性剤系の50%以上を占める。好ましくは、特定の両性界面活性剤、特にベタインの濃度は、最小限に抑え(界面活性剤系において40%未満、好ましくは30%未満)、好ましくは、両方の穏やかな界面活性剤は界面活性剤系の50%以上であり、両性界面活性剤、特にベタインの濃度は40%未満である。
【0006】
出願人らは、以前に、例えば欧州特許出願第16166487号明細書のような、パーソナルケア組成物におけるN-アシル誘導体の使用に関する出願を行った。欧州特許出願第16166487号明細書は、小液滴サイズのナノエマルジョンからのトリグリセリドおよびペトロラタムなどの有益剤の提供に関するものであり、高濃度グリセリン組成物またはグリセリンの沈着を増強する手段に関するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
高濃度グリセリン組成物も知られている。しかしながら、出願人らは、アミノ酸のN-アシル誘導体と高濃度のグリセリンとの特定の組合せを開示する、または他の界面活性剤と比較して、そのような界面活性剤が増強された保湿および/もしくは増強されたグリセリンの沈着を提供することを認識している文献がないことを知っている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
1)40~90%、好ましくは50~90%、より好ましくは55~90%または60~80%のグリセリン、
2)3~25%の、ジカルボキシルアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)のN-アシル誘導体の塩、モノカルボン酸(グリシン、アラニン)のN-アシル誘導体の塩、ならびにモノ-およびジカルボン酸のそのような誘導体の混合物からなる群から選択される界面活性剤、ならびに、
3)5~55%の水
を含むパーソナルケアクレンジング組成物、好ましくは、パーソナル洗浄クレンジング組成物(好ましくは、洗い流す組成物)を提供する。
【0010】
好ましい界面活性剤として、グルタミン酸塩が挙げられる。
【0011】
その他の界面活性剤も存在してもよいが、上記の界面活性剤は、好ましくは、界面活性剤系の大部分、例えば界面活性剤系の50~100%、または界面活性剤系の60~90%もしくは70~90%を占めるべきである。
【0012】
記載のとおり、上記の組成物は、さらに、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤および/または双性イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される補助界面活性剤を、0~15重量%、好ましくは1~10重量%含み得る。好ましくは、モノ-およびジカルボン酸の誘導体は、界面活性剤系の50~100%、場合により60~90%の濃度で存在する。好ましくは、誘導体は、上記組成物の少なくとも50.1、好ましくは少なくとも50.5%(例えば、50.5~90%)である。
【0013】
出願人らは、ある種の特定のベタイン界面活性剤(例えば、ココアミドプロピルベタイン)が、高濃度で使用した場合に沈着に対して悪い効果を持つようであることを見出した。アンホアセテートなどのその他の補助界面活性剤は、高濃度でもそのような負の効果を持たないので、このことは容易に理解することはできない。したがって、アルキルアミドベタインは、使用される場合、好ましくは界面活性剤系の50%未満、より好ましくは40%未満、さらにより好ましくは30%未満、より好ましくは25%未満、さらにより好ましくは20%未満の濃度で使用されるべきである。
【0014】
出願人らは、また、定義されたグリセリンの高い濃度範囲(例えば、40~90%)において、請求項に記載のアミノ酸含有界面活性剤系(例えば、グルタミン酸塩)は、その他の界面活性剤系(例えば、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、またはグルコサミドなどの非アミノ酸界面活性剤を含む界面活性剤系)からの送達と比較して、より多くのグリセリンの送達を推進することを見出した。
【0015】
別の形において、組成物は、
1)40~90%、好ましくは50~90%、より好ましくは55~90%または60~80%のグリセリン、
2)3~25%の、タウリンのN-アシル誘導体の塩(カルボキシル基に代えて硫酸基)である界面活性剤、および
3)15~55%の水を含み得る。
【0016】
タウリンの誘導体の塩は、また、モノ-およびジカルボン酸のN-アシル誘導体の塩との組合せで使用され得る。いずれかのそのような混合物の界面活性剤の割合も、組成物全体の3~25重量%である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
実施例を除き、または明確に別途の指示がない限り、材料の量または反応の条件、材料の物性および/または使用を示す本明細書におけるすべての数値は、「約」という単語で修飾されていると理解される。別途明記がない限り、すべての量は最終組成物に対する重量による。
【0018】
濃度または量のいかなる範囲を特定する際にも、いかなる特定の上限の濃度も、いかなる特定の下限の濃度または量に関連づけられ得ることに注意されたい。
【0019】
疑義を避けるために、用語「含む(comprising)」は、「含む(including)」を意味することを意図しており、「成る(consisting of)」または「構成される(composed of)」ということを必ずしも意味するものではない。言い換えれば、列挙された工程または選択肢は、網羅的である必要はない。
【0020】
本明細書に見られる本発明の開示は、請求項が多項従属または冗長性を有しないことがあるという事実に関係なく、互いに多項従属するものとして請求項に見られるすべての実施形態を包含すると見なされる。
【0021】
本発明は、高濃度のグリセリンおよび特定の界面活性剤である有効成分を含む、パーソナルケア組成物、好ましくは洗い流すパーソナルケア組成物を提供する。予想外にも、出願人らは、特定の界面活性剤系(好ましくは、界面活性剤系の少なくとも50~100%または60~90%の量で存在するアミノ酸のN-アシル誘導体を含む)が、その他の界面活性剤系からのグリセリンの送達と比較した時よりも多量のグリセリン沈着を推進することを見出した。
【0022】
具体的に言うと、本発明の組成物は、
(1)組成物全体に対して、40~90重量%、または50~90重量%、または55~90重量%、または60~80重量%のグリセリン、
(2)界面活性剤系であって、
(a)組成物全体に対して3~25重量%の、ジカルボキシルアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)のN-アシル誘導体の塩、モノカルボン酸(グリシン、アラニン)のN-アシル誘導体の塩、ならびにモノ-およびジカルボン酸のそのような誘導体の混合物からなる群から選択される界面活性剤、ならびに
(b)組成物全体に対して0~15重量%、好ましくは1~10重量%の、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤および/または双性イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される補助界面活性剤。好ましくは、モノ-およびジカルボン酸の誘導体は、界面活性剤系の50~100%、特には50~90%の濃度で存在する。好ましくは、誘導体は、上記組成物の少なくとも50.1、好ましくは少なくとも50.5%である、
を含む界面活性剤系、
(3)5~55重量%の水
を含む。
【0023】
上述のように、別の形はタウリンのN-アシル誘導体の塩(例えば、「タウレート」)を含み得る。さらに、組成物は、カルボン酸の塩とタウリン誘導体の塩との混合物を3~25%含み得る。
【0024】
本発明は、さらに、上述の組成物を毛髪または身体(例えば、皮膚)に適用することにより、グリセリンの沈着を増強する方法に関する。
【0025】
本発明の組成物は、上述のように、40~90%のグリセリンを含む。グリセリンは、好ましい多価アルコールであるが、その他の多価アルコールも使用し得る。その他の多価アルコールとしては、ソルビトール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびそれらの混合物が挙げられる(好ましくは、これらのうち1つとグリセリンとの混合物を含む)。
【0026】
多価アルコール(例えば、グリセリン)は、全く予想外に、その他の界面活性剤または界面活性剤系(例えば、アルキルサルフェートなどの通常のアニオン性のもの)からの多価アルコールの沈着と比較して、本発明の特定の界面活性剤系からより良く沈着することが見出された。
【0027】
使用される多価アルコールの下方の濃度は、40または45または50%(およびこれらの間のすべての数字)であり、好ましくは51~65およびそれらの間のすべての数字を含む51%以上であり得る。上方の範囲は、65~90およびそれらの間のすべての数字であり得る。もちろん、41と89との間のいかなる数字も理論的に上限または下限であり得る。例えば、89%は下限であり得、90%は上限であり得る。好ましい範囲は、50~90%または55~90%または60~80%である。
【0028】
本発明の組成物は、さらに、ジカルボキシルアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)のN-アシル誘導体の塩、モノカルボン酸(例えば、グリシン、アラニン、サルコシン)のN-アシル誘導体の塩、ならびにモノ-およびジカルボン酸のそのような誘導体の混合物からなる群から選択される界面活性剤、ならびに5~55%の水を含む。
【0029】
好ましいジカルボキシルアミノ酸乳化剤は、アシルグルタメートおよびアシルアスパルテート界面活性剤である。好ましいモノカルボキシルアミノ酸乳化剤は、アシルグリシネート、アシルアラネート、およびアシルサルコシネートである。好ましくは、上記乳化剤は、アミノ酸のN-アシル誘導体のカリウムおよび/またはナトリウム塩である。
【0030】
市販されているアミノ酸界面活性剤には通常2つの形態がある。1つは粉末またはフレーク形態であり、これは通常、より高価であり純度が高い。固体のジカルボキシルアミノ酸界面活性剤の例としては、ベタイン以下が挙げられる。
【0031】
N-ココイル-L-グルタミン酸ナトリウム(例えば、味の素のAmisoft(登録商標)CS-11)
N-ラウロイル-L-グルタミン酸ナトリウム(例えば、味の素のAmisoft(登録商標)LS-11)
N-ミリストイル-L-グルタミン酸ナトリウム(味の素のAmisoft(登録商標)MS-11)
N-ココイル-L-グルタミン酸カリウム(例えば、味の素のAmisoft(登録商標)CK-11)
N-ミリストイル-L-グルタミン酸カリウム(味の素のAmisoft(登録商標)MK-11)
N-ラウロイル-L-グルタミン酸カリウム(味の素のAmisoft(登録商標)LK-11)
ラウロイルアスパラギン酸ナトリウム(旭化成ケミカルズのAminoFoamer(商標)FLMS-P1)
ラウロイルグルタミン酸ナトリウム(旭化成ケミカルズのAminosurfact(商標)ALMS-P1/S1)
ミリストイルグルタミン酸ナトリウム(旭化成ケミカルズのAminosurfact(商標)AMMS-P1/S1)
固体のモノカルボキシルアミノ酸界面活性剤の例として、以下が挙げられる。
【0032】
ココイルグリシン酸ナトリウム(例えば、味の素のAmilite(登録商標)GCS-11)
ココイルグリシン酸カリウム(例えば、味の素のAmilite(登録商標)GCK-11
通常、アミノ酸界面活性剤は、組成物全体の3~25重量%を占める。下限は、3または4または5または6または7~15%であり得る。上限は、15~25%およびそれらの間のすべての数字であり得る。もちろん、4~24のいかなる数字も、上限または下限であり得る。好ましい濃度は、5~15重量%または7~12重量%である。
【0033】
本発明の組成物は、5~55%の水を含む。
【0034】
さらに、本発明の組成物は、0~10%の有益剤を含み得る。1つの種類の成分は、例えば、皮膚を保湿したり、強化したりするために使用される栄養素である。栄養素としては、以下が挙げられる。
【0035】
a)ビタミンAおよびEなどのビタミン、ならびにビタミンCアルキルエステルなどのビタミンアルキルエステル、
b)コレステロール、コレステロールエステル、ラノリン、クリーム状(creaminess)、スクロースエステル、および擬似セラミドなどの脂質、
c)リン脂質、および2本の長い炭化水素鎖を有する適切な両染性分子などのリポソーム形成材料料、
d)必須脂肪酸、多価不飽和脂肪酸、およびこれらの材料の原料、
e)ヒマワリ油、月見草油、アボカド油、アーモンド油などの不飽和脂肪酸のトリグリセリド、
f)シアバターなどの、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸との混合物から形成された植物性バター、
g)亜鉛、マグネシウムおよび鉄の源などのミネラル。
【0036】
上述のように、界面活性剤系の大部分は、記載したアミノ酸由来の界面活性剤である。さらに、50%までの、好ましくは0~40%の補助界面活性剤が存在し得る。その他のアニオン性界面活性剤も使用し得(好ましくは、界面活性剤系の0~40%の濃度で)、これらの例としてはアシルイセチオネートおよびアルキルホスフェートが挙げられ得る。補助界面活性剤は、非イオン性、両性、双性イオン性、またはカチオン性であることが好ましく、エトキシル化アルキルサルフェート、アルキルポリグルコシド、アルキルアミンオキシド、ベタイン、アンホアセテートスルタイン、スルホサクシネート、ラクチレートおよびそれらの混合物が挙げられる。出願人らは、ベタイン(例えば、ココアミドプロピルベタイン)が、系からのグリセリンの沈着を減少させるようであることに気付いた。したがって、好ましくは、ベタインが使用される場合、ベタインは界面活性剤系の50%未満、好ましくは40%未満、より好ましくは30%未満を占めるべきである。
【0037】
一般に、理論に縛られることを望まないが、出願人らは、水相からより速やかに、またはより容易に沈殿する界面活性剤(例えば、グルタミン酸塩)は、多価アルコール(例えば、グリセリン)を沈着させるのに効果的である傾向があると考えている。特許請求されているアミノ酸系、およびタウレート系界面活性剤は、例えば、ラウリルエーテル硫酸ナトリウムよりも、さらに上記のようである。その理由は、おそらく、高濃度のグリセリン(高濃度のグリセリンと相互作用することができる界面活性剤がより多い)は、グリセリンの沈着において、本発明の界面活性剤との併用で、より効果的である傾向があることである。
【0038】
2つ目の種類の皮膚への有益剤は、皮膚に保湿感を与えるために使用されるスキンコンディショナーである。適切なスキンコンディショナーとしては、以下が挙げられる。
【0039】
a)直鎖および環状のポリジメチルシロキサン、アミノ、アルキル、およびアルキルアリールシリコーンオイルなどのシリコーンオイル、
b)流動パラフィン、ペトロラタム、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス、セレシン、スクアレン、プリスタン、パラフィンワックスおよび鉱油などの炭化水素、
c)ミルクタンパク質、シルクタンパク質およびグルテンなどのコンディショニングタンパク質、
d)Quatrisoft LM-200、Polyquaternium-24、Merquat Plus 3330-Polyquaternium 30およびJaguar(登録商標)タイプのコンディショナーなどの、使用され得るコンディショナーとしてのカチオン性ポリマー、
e)イソプロピルパルミテートおよびセチルラクテートなどの長鎖脂肪酸のエステルなどの皮膚軟化剤。
【0040】
3つ目の種類の有益剤は、ディープクレンジング剤である。本明細書において、ディープクレンジング剤は、洗浄後にすぐに爽快感を増すことができるか、または不十分な洗浄に関連する皮膚の問題に持続的な効果を与えることができる成分として定義される。ディープクレンジング剤としては、以下が挙げられる。
【0041】
a)2-ヒドロキシ-4,2’,4’-トリクロロジフェニルエーテル(DP300)、2,6-ジメチル-4-ヒドロキシクロロベンゼン(PCMX)、3,4,4’-トリクロロカルバニリド(TCC)、3-トリフルオロメチル-4,4’-トリクロロメチル-4,4’-ジクロロカルバニリド(TFC)、過酸化ベンゾイル、亜鉛塩、ティーツリー油などの抗菌剤、
b)サリチル酸、乳酸、グリコール酸、およびクエン酸、ならびに過酸化ベンゾイル(抗菌剤でもある)などの抗ニキビ剤、
c)皮脂抑制剤、シリカ、二酸化チタンなどの改質剤、マイクロスポンジなどの油吸収剤を含む油制御剤、
d)タンニン、亜鉛およびアルミニウム塩、緑茶およびマンサク(Hammailes)抽出物などの植物抽出物を含む収斂剤、
e)ポリエチレン球、凝集シリカ、砂糖、クルミ、桃、アボカドおよびオート麦などの核、種子、および殻を挽いたもの、塩などのスクラブおよびピーリング用の粒子、
f)メタノールおよびその各種の誘導体ならびに低級アルコールなどの冷却剤、
g)果実およびハーブの抽出物、
h)アロエベラなどの皮膚鎮静剤、
i)ハッカ、ジャスミン、樟脳、ホワイトシダー、ビターオレンジの皮、ライムギ、テレピン油、シナモン、ベルガモット、温州ミカン、トウ、マツ、ラベンダー、ゲッケイジュ、クローブ、アスナロ、ユーカリ、レモン、スターフラワー、タイム、ペパーミント、バラ、セージ、メントール、シネオール、オイゲノール、シトラール、シトロネラ、ボルネオール、リナロール、ゲラニオール、月見草、樟脳、チモール、スピラントール、ピネン、リモネンおよびテルペノイド油などのエッセンシャルオイル。
【0042】
使用することができるその他の有益剤としては、老化防止化合物、日焼け止め剤、および美白剤が挙げられる。
【0043】
いくつかの実施形態では、有益剤は、極性有益剤である。好ましい極性有益剤としては、エチルレゾルシノール(ER)および水溶性ビタミンが挙げられる。好ましい非極性有益剤、例えば、ヘキシルレゾルシノールも使用され得る。
【0044】
本発明の新規な組成物に加えて、記載のとおり、本発明は、本発明の組成物を用いてグリセリンの沈着を増強する方法、例えば、本発明の組成物を毛髪または皮膚に適用することをさらに含む。
【0045】
実施例およびプロトコール
洗浄剤からのグリセリンの送達を測定する実験手順
皮膚からのグリセリンの抽出
a.-80℃~室温までの任意の場所に保管されていたブタの皮膚を、実験の日に貯蔵庫から取り出し、皮膚が解凍されるまで放置する。ブタの皮膚を、貯蔵庫から切断ボードの上に取り出し、4×4cm片に切断する。製品を適用する前に、4×4cmのブタの皮膚を、次いで、生理食塩水に浸漬したガーゼで緩く巻く。
【0046】
b.4×4cmの皮膚片を、37℃の水道水で15秒間予備洗浄する。水の流量は、50mL/分である。
【0047】
c.2.5cmのリングを皮膚の上に置く。250μLの製品をリングの中に適用し、皮膚をメスフラスコ用の栓(volumetric stopper)で90秒間円を描くように擦る。
【0048】
d.上記のリングを3.0cmのリングに置き換える。5mLの水をリングの中に入れ、皮膚をストッパーで15秒間円を描くように擦って洗浄する。Q-tipを用いて、皮膚上のリングの浅いくぼみの加圧された縁を穏やかに拭き、グリセリン残渣を取り除く。洗浄溶液をホールピペットで廃棄する。洗浄は1回繰り返す。
【0049】
e.リングを皮膚から除去する。皮膚を2×2cm片(皮膚を擦り/すすぐのに使用したリングの中心部)に切断し、2×2cm片の皮膚を20mLのガラスバイアルに移す。
【0050】
f.10.0mLの脱イオン水(DI)を20mLのガラスバイアルに加え、バイアルを30分間振盪し抽出を行い、続いて、10分間の超音波処理を行う。
【0051】
g.抽出溶液は、0.45μmのPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)メンブレンフィルターでろ過する。ろ過した溶液を誘導体反応のために回収する。
【0052】
h.2×2cmの皮膚を切断し、37℃の水道水で15秒間穏やかに皮膚を洗浄することによってブランク皮膚を調製する。皮膚を10.0mLの水中に抽出のために移し、沈着試料を調製する。
【0053】
i.すべての試料およびブランク皮膚について、3つの調製物が必須である。
【0054】
誘導体試薬の調製
a.試薬A、約3mMのNaIO4水溶液:6.5mgのNaIO4をバイアルに秤量し、9mLの脱イオン水と1mLの酢酸とを加え、溶解しよく混合し、次いで、0.77gの酢酸アンモニウムを加えてよく混合する。
【0055】
b.試薬B、約100mMのC5H8O2イソプロピルアルコール溶液:25mL容量のメスフラスコに0.25mLのC5H8O2を移し、フラスコを標線までイソプロピルアルコールで満たす。この試薬を冷暗所に保管する。
【0056】
グリセリン標準の調製
a.100mL容量のメスフラスコに、50mg±5mgのグリセリンを秤量し、脱イオン水を加えて溶解しよく混合する。脱イオン水を標線まで入れる。これは、グリセリン標準原液である。
【0057】
b.上記のグリセリン標準原液を用いて、脱イオン水を加えた、10~200μg/mLの範囲のグリセリン濃度を有するグリセリン標準較正溶液を4~5つの濃度で調製する。
【0058】
グリセリン誘導体反応
a.脱イオン水、10~200μg/mLの範囲の濃度のグリセリン標準、ブランク皮膚抽出物および試料抽出物を、反応のために調製する。
【0059】
b.400μLの試薬Aをそれぞれのバイアルに移し、150μLの水または標準またはブランク試料または沈着試料をピペットで加え、よく混合し、30分間室温で放置して反応させる。
【0060】
c.30分後、反応物に1.0mLの試薬Bをバイアルに移し、よく混合し、さらに30分間室温で放置して反応させる。
【0061】
d.HPLC試料トレーにバイアルを15~20分間入れ、注入前に試料溶液を4℃まで冷却する。
【0062】
e.HPLCデータを処理し、μg/cm2単位でグリセリン誘導体の送達を計算する。
【0063】
計算
グリセリンの標準直線:Y=M*X+b
Y:グリセリン誘導体のピーク面積
X:標準溶液におけるグリセリン濃度
M:標準直線の傾き
グリセリン濃度(μg・cm-2)=(PAspl-B)*DF*V/M/4
μg・cm-2:沈着試料に保持されたグリセリン量
PAspl:試料のピーク面積
B:Y軸の切片
DF:希釈係数
V:mLで示す抽出試料の体積
M:標準直線の傾き
4:2×2cmサイズの皮膚の面積
臨床試験における洗浄剤からのグリセリン送達を測定するための実験手順
被験者は、18~65歳の男性または女性で、前腕の皮膚がわずかに乾燥している(0~6の乾燥等級尺度において、視覚的等級が0.5~2)。本試験を完了するためには最低30名の被験者が必要である。被験者は、両腕に均等な乾燥スコアを持つべきである(等級0.5以内)。前腕の6つの部位(片腕に3か所)を試験する。本臨床試験は、ランダム化された、評価者盲検/被験者盲検対照の通常の洗浄試験で、最低30名の被験者が統計的に有意であると考えられる。
【0064】
制御された洗浄を各部位で1日2回、4週間(27日間)行い、1日の2回の洗浄の間隔を4~5時間とした。タロウ酸ナトリウム、ココ酸ナトリウム、コカミドプロピルベタインを含む市販の棒状石けんを用いて1日に2回洗浄する5日間の調整期間を実施した(-5日に開始)。1日目、7日目、14日目、21日目および28日目に、洗浄前に朝に訪問し、機器による評価の前に少なくとも30分間、66.6°F~71.9°Fで相対湿度24%~55%に維持された環境を制御された部屋において被験者を順応させた。DermaLab(Cortex Technology)またはRG-1(cyber DERM,Inc.)蒸発計のいずれかを用いて、各部位から1つTEWL測定値を得た。各部位から3つのSkicon(MT8Cプローブ付き200 EX;I.B.S.,Co.,Ltd.)測定値を得た。提示されるデータは、ベースラインからの変化の平均である。
【0065】
試験期間において、被験者は、試験部位(前腕)にあらゆるスキンケア製品を使用しないように依頼された。被験者は、ラウロイルイセチオン酸ナトリウム、ステアリン酸、タロウ酸ナトリウムまたはパルミチン酸ナトリウム、ラウリン酸を含む市販の棒状石けん(例えば、UnileverからのDove(登録商標)棒状石けん)を用いて、毎日夕方にシャワーを浴びるように、しかし、腕に洗浄用製品を適用することは避けるように依頼された(シャワーを浴びるときに被験部位(例えば、前腕)に残余の溶液が流れ落ちても許容される)。
【0066】
[実施例]
一般に、40~90%のグリセリンを含む界面活性剤系が、増強された皮膚特性を提供することを実証するために、出願人らは、以下の特性を測定した。
【0067】
(a)グリセリンを含まない界面活性剤系(例えば、SLESおよびCAPB、グルタミン酸塩およびCAPB)、ならびに
(b)70%グリセリン系における同一の界面活性剤系
具体的には、以下の
比較例1および2ならびに比較例AおよびB(グリセリンを含まず12%の界面活性剤の水溶液系中にラウロイルエーテル硫酸ナトリウムおよびココアミドプロピルベタインを含む市販のシャワージェル、すなわち、UnileverからのAxe(登録商標)を対照として用いた)は、Skicon試験を使用し、伝導度測定に基づいて皮膚の水分量を測定した(増強された水分量は伝導度の増加と相関がある)。
【表1】
【0068】
Skicon試験に基づいた伝導度の値を以下の表2に示す。
【表2】
【0069】
表1の比較例および表2の関連する伝導度値から明らかにわかるように、同じ界面活性剤系(例えば、SLES/CAPBまたはグルタミン酸塩/CAPB)が使用され、唯一の相違点が溶媒としての高濃度グリセリン(70/21のグリセリン/水対100%の水)の使用である場合、高濃度グリセリンの系(比較例1対比較例A、比較例2対比較例B)の伝導度値(増強された水分量に関係する)は、はるかに高い。Skicon評価は、また、グルタミン酸塩/CAPB系とSLES/CAPB系(高濃度グリセリン系における)との間では、グルタミン酸塩系が優れた水分量を提供することを実証する(例えば、比較例2対比較例1)。水系(グリセリンを含まない)にラウレス硫酸ナトリウム(SLS)およびココアミドプロピルベタイン(CAPB)を含む(合計で約12%の界面活性剤)、市販されているシャワージェル(Axe(登録商標))においては、伝導度ははるかに低い。理論に縛られることを望むわけではないが、比較例Aに比較して低いAxe(登録商標)の値(水分量がより少ない)は、界面活性剤の量が多い(水の量が少ない)ためであると考えられる。しかし、上述のように、直接の比較は、比較例Aと比較例1との対比である。
【0070】
同様に、TEWL試験を、臨床試験間の皮膚保護機能を示すために実施し(Skicon試験で使用したのと同じ例を用いて)、結果を以下の表3に示す。
【表3】
【0071】
TEWL:ベースラインからの変化の平均。g/(m2h)で流束密度を測定。
【0072】
経皮水分喪失(TEWL)では、より低い値はより優れた皮膚保護機能と関連がある。したがって、ここでも、高濃度グリセリン/水系(比較例1および2)は、溶媒として水のみを用いる同じ界面活性剤系と比較して、より優れた水分量を有することがわかる(比較例A対比較例1、および比較例B対比較例2)。さらに、ここでも、比較例2のグルタミン酸塩に基づく界面活性剤系が、比較例1のSLESに基づく界面活性剤系よりも優れていることがわかる。また、水系のSLESおよびCAPB系は、ここでも、いかなるグリセリン系よりも、特に、アミノ酸に基づく界面活性剤が大部分を占める系との比較において、劣った結果を有する。Axe(登録商標)に対する比較例Aのより高い値は、ここでも、Axe(登録商標)がより多くの界面活性剤を含むという事実に関係していると考えられる。
【0073】
実施例3
SLES系に対するグルタミン酸塩系の優位性をさらに実証するために、出願人らは、上記の比較例1および比較例2に記載の組成物を再び作製した。
【0074】
グリセリンの沈着を測定する上述のプロトコールを用いて、出願人らはグリセリンの送達/沈着を測定し、以下の結果を得た。
【表4】
【0075】
明確に認められるように、グリセリンの送達は、アミノ酸に基づく(例えば、グルタミン酸塩に基づく)系からの方が、はるかに多かった。
【表5】
【0076】
以下のことは、比較例3~5および比較例C~Fから認められる。比較例CおよびEは、ラウレス硫酸ナトリウムおよびCAPB系(比較例C)、ならびにドデシル硫酸ナトリウム系(比較例E)を含む界面活性剤系の例である。これらは、2つの一般的なアニオン性の系であり、グリセリンの沈着は、それぞれ63.38および45.09μg/cm2であることがわかる。これらの数値と比較して、比較例3、4および5(すなわち、グルタミン酸塩/ベタイン、サルコシン酸塩、グリシン酸塩)のアミノ酸界面活性剤が大部分を占める系は、すべて優れた沈着を有することがわかる。
【0077】
比較例Dは、アミノ酸に基づかない系(グルカミド)が、より少ない沈着を有することを示す。
【0078】
比較例Eは、アミノ酸に基づく界面活性剤が系の50%未満である系も、より少ない沈着を有することを示す。50%以上で使用すると沈着を減少させることを出願人らが見出したCAPBが、界面活性剤系の75%を占めることにも注意されたい。
【0079】
比較例6~9:好ましい補助界面活性剤-CAPB対アンホアセテート
どの特定の補助界面活性剤をジカルボン酸界面活性剤との組合せで使用するとより良いのかを実証するために、出願人らは、下記の表6、7、8および9(
比較例6A~6D、7A~7C、8A~8Cおよび9A~9E)を調製した。
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【0080】
表からわかるように、CAPBを特異的に本発明のアミノ酸界面活性剤と組み合わせると、グリセリンの送達は、異なる補助界面活性剤との組合せで同じアミノ酸界面活性剤を使用する場合と比較して、いっそう強く影響を受けた。
【0081】
第一に、それぞれの表におけるデータは同じブタの皮膚から行われたが、表間ではブタの皮膚が異なることに注意されたい。このことは重要である。なぜなら、上記のデータは表間では必ずしも比較できないが、それぞれの表中では傾向が見て取れるからである。
【0082】
これに関連して、表6および7から、CAPBの濃度が増加するにつれて沈着が減少するように見える。しかし、このことはすべての補助界面活性剤に当てはまるわけではない。なぜなら、表9に示すように、アンホアセテートを使用してもこの傾向は見られなかったからである。
【0083】
この理由から、本発明のいかなる界面活性剤系においても、CAPBの濃度は、界面活性剤系の50%未満、好ましくは40%未満、より好ましくは30%未満であるべきである。
【0084】
比較例10および実施例11;タウリンのN-アシル誘導体
タウリンのN-アシル誘導体の効果を実証するために、出願人らは以下の試験を実施した。
【表10】
【0085】
最初に、比較例10は、異なるブタの皮膚において実施されたことを除き、表5の比較例3と同一であることに注意されたい。皮膚間のばらつきを説明するために、グリセリンの沈着を62.1μg/cm2(上表)から99.24μg/cm2に増加させ、実施例11が60%のグリセリンしか含まないことを考慮すると、表5の比較例と比較するとタウレート(実施例11)からの正規化したグリセリンの沈着は、86.67μg/cm2となる。より具体的には、数学的な正規化は以下のとおりであることが、当業者により十分に理解されている。同じ試料で、述べられたすべての手順が同じであり、ブタAが99.24μg/cm2、ブタBが62.1μg/cm2を示す場合(ブタの間でのこの種のばらつきは、非常に一般的である)、ブタBの数値を増加させるために1.60という係数が存在する。
【0086】
さらに、出願人らは、沈着するグリセリンの量は、70%のグリセリンまで製剤中のグリセリンの濃度に直線的に比例することを示す以前のデータを持っていた。表10の実施例11が70%ではなく60%のグリセリンを有するので、増加のために別の1.17という係数がある。これらの2つの係数を一緒に用いて、記載のタウレートについて86.67という数値を得る(46.3×1.6×1.17)。出願人らが70%グリセリンのタウレート製剤を持っていなかった理由は、製剤のいくつかの成分が水を取り込み、70%グリセリンのための十分な「スペース」が必ずしもあるとは限らないからである。
【0087】
したがって、表5に見られるサルフェートおよびCAPB系(比較例CおよびE)と比較して、タウレート系は優れている。異なる皮膚および製剤中のグリセリンの濃度の違いによる1.17の係数を補償すると、表5の比較例C(63.38μg/cm2)は33.85μg/cm2となり、表5の比較例E(45.09)は24.09μg/cm2となることに注意されたい。2つの数値は、表10の実施例11の46.3よりも小さい。したがって、これらの数値も矛盾がない。