(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-25
(45)【発行日】2023-09-04
(54)【発明の名称】光電変換素子の製造方法及びめっき用治具、めっき装置
(51)【国際特許分類】
H01L 31/0224 20060101AFI20230828BHJP
H01L 31/0747 20120101ALI20230828BHJP
【FI】
H01L31/04 260
H01L31/06 455
(21)【出願番号】P 2019562825
(86)(22)【出願日】2018-11-12
(86)【国際出願番号】 JP2018041838
(87)【国際公開番号】W WO2019130859
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-11-01
(31)【優先権主張番号】P 2017252670
(32)【優先日】2017-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【氏名又は名称】新山 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】宇津 恒
(72)【発明者】
【氏名】足立 大輔
【審査官】吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-082603(JP,A)
【文献】国際公開第2015/152020(WO,A1)
【文献】特開平08-144095(JP,A)
【文献】特開平05-166815(JP,A)
【文献】特開2002-339079(JP,A)
【文献】特開平11-097391(JP,A)
【文献】特開2015-151553(JP,A)
【文献】特開2004-218011(JP,A)
【文献】特開昭62-133100(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0322860(US,A1)
【文献】特開2014-107403(JP,A)
【文献】特開2010-098232(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02-31/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面と第1主面の裏面である第2主面とを備える光電変換ユニットを含む光電変換素子の製造方法であって、
前記光電変換ユニットは第1主面側から第2主面側に向かって順に、少なくとも、p型半導体層及びn型半導体層を備え、
前記光電変換素子はさらに、前記光電変換ユニットの第1主面側に第一導電層を備え、前記光電変換ユニットの第2主面側に第二導電層を備え、
前記第一導電層上にめっき層を形成するめっき層形成工程を備え、
前記めっき層形成工程において、めっき給電用電極と前記第二導電層とを面状に接触させた状態で、かつ、めっき給電用電極および第二導電層をめっき液と接触させない状態で、めっきを行い、
前記めっき層形成工程において、前記第二導電層の面積以上の面積を有する面状の前記めっき給電用電極を、前記第二導電層全体を覆う様に接触させ、
前記めっき層形成工程において、前記第二導電層と前記第一導電層とは、前記n型半導体層及び前記p型半導体層とを含んで構成されるダイオードのみにより電気的に接続された状態にあ
り、
前記第一導電層及び前記第二導電層が細線電極である、光電変換素子の製造方法。
【請求項2】
前記第一導電層が第一透明電極層である、請求項1に記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項3】
前記光電変換素子は、さらに前記光電変換ユニットの第1主面側に第一透明電極層を備え、前記第一導電層が第一透明電極層の上に設けられている、請求項1に記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項4】
前記第一導電層がNi、Cu、Ag、Au、Pt、またはこれらの合金からなる下地電極層である、請求項1又は3に記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項5】
前記第一導電層は、少なくとも一部が絶縁層で覆われている、請求項1~
4のいずれか1項に記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項6】
前記第二導電層が第二透明電極層である、請求項1~
5のいずれか1項に記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項7】
前記光電変換素子は、さらに前記光電変換ユニットの第2主面側に第二透明電極層を備え、前記第二導電層が第二透明電極層の上に設けられている、請求項1~
5のいずれか1項に記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項8】
さらに、第一導電層を、第1主面側から平面視した場合に外観上孤立するN個(ただし、2≦N)以上の細線電極領域として形成する工程を備える、請求項1~
7のいずれか1項に記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項9】
さらに、第一導電層を、第1主面側から平面視した場合に外観上孤立するN個(ただし、2≦N)以上の細線電極領域として形成する工程を備え、
さらに、第1主面側から平面視した場合に外観上孤立するN個以上の細線電極領域付きの光電変換素子を、めっき層が形成されていない部位において分割し、N個の光電変換素子を形成する工程を備える、請求項1~
7のいずれか1項に記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれか1項に記載の光電変換素子の製造方法に用いられる、めっき用治具であって、
前記めっき層形成工程において、めっき給電用電極とめっき液とを接触させない状態で、かつ、めっき給電用電極と前記第二導電層とを面状に接触させた状態で、めっきを行うことが可能な、少なくとも、フレーム、パッキン、留め具、を備えるめっき用治具。
【請求項11】
請求項
10に記載のめっき用治具を備えるめっき装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換素子の製造方法及びめっき用治具、めっき装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、以下の工程を含む太陽電池の製造方法が開示されている。まず、光電変換ユニットを形成した後に、光電変換ユニットの表面及び側面に第一透明電極層を形成する。その後、光電変換ユニットの裏面及び側面に第二透明電極層を形成する。その後、第二透明電極層上に金属層を形成する。その後、第一透明電極層上に下地電極層を形成する。その後、下地電極層、金属層をめっき液に浸し、金属層側から給電することにより、光電変換層の側面において金属層に電気的に接続された下地電極層と金属層とを同時にめっきする。その後、光電変換層の側面に形成された第一透明電極層、第二透明電極層、金属層、下地電極層を除去する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の太陽電池の製造方法では、めっきにおける給電を、めっき層側である下地電極層に点で接するように行うため、下地電極層の電気抵抗がある程度高くなると、めっきの給電部からの距離に応じて電位差が大きくなり、めっき電極の形成のされ方が不均一となる。このため、めっき時に印加する電流を段階的に増加させるという方法を用いることが一般的である。この場合、初期の低電流段階において、下地電極層における電位差が小さい状態でめっきを施すことにより、下地電極層全体に比較的均一に薄くめっき電極を形成することができる。これにより、下地電極の電気抵抗が全体的に低くなるため、次の段階で高電流を流しても電位差が大きくならず、めっきを均一に施すことができる。しかしながら、このように段階的にめっき速度を高める方法では製造効率が低くなるという課題がある。更には、下地電極層が透明電極層のみからなるような極端に電気抵抗の高い場合においては、均一なめっきを形成することが困難である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記課題に鑑み鋭意検討した結果、所定のめっき方法を用いることにより、光電変換素子の製造効率が向上し、更に集電極が低コストで形成可能であることを見出し、本発明に至った。
【0006】
したがって、本発明は、光電変換素子の製造効率が向上し、更に集電極が低コストで形成可能である、光電変換素子の製造方法を提供することを課題とする。
【0007】
すなわち、本発明は、以下に関する。
【0008】
(1)本発明の第一は、第1主面と第1主面の裏面である第2主面とを備える光電変換ユニットを含む光電変換素子の製造方法であって、
前記光電変換ユニットは第1主面側から第2主面側に向かって順に、少なくとも、p型半導体層及びn型半導体層を備え、
前記光電変換素子はさらに、前記光電変換ユニットの第1主面側に第一導電層を備え、前記光電変換ユニットの第2主面側に第二導電層を備え、
前記第一導電層上にめっき層を形成するめっき層形成工程を備え、
前記めっき層形成工程において、めっき給電用電極と前記第二導電層とを面状に接触させた状態で、かつ、めっき給電用電極および第二導電層をめっき液と接触させない状態で、めっきを行う、光電変換素子の製造方法である。
【0009】
この構成によって、第一導電層上に、均一にめっき層を形成することが可能となり、更には、めっき速度を高めて作製することが可能となることにより製造効率を高くすることが可能となる。
【0010】
(2)本発明は、また、前記めっき層形成工程において、前記第二導電層の面積以上の面積を有するめっき給電用電極を前記第二導電層に面状に接触させた状態でめっきを行う、前記(1)に記載の光電変換素子の製造方法である。この構成によって、めっき層の均一性を高めることが可能となる。
【0011】
(3)本発明は、また、前記第一導電層が第一透明電極層である、前記(1)又は(2)に記載の光電変換素子の製造方法である。この構成によって、下地電極層を省くことができ製造コストを低減することが可能となる。
【0012】
(4)本発明は、また、前記光電変換素子は、さらに前記光電変換ユニットの第1主面側に第一透明電極層を備え、前記第一導電層が第一透明電極層の上に設けられている、前記(1)又は(2)に記載の光電変換素子の製造方法である。
【0013】
(5)本発明は、また、前記第一導電層がNi、Cu、Ag、Au、Pt、またはこれらの合金からなる下地電極層である、前記(1)、(2)又は(4)に記載の光電変換素子の製造方法である。この構成によって、めっき層のパターニングを容易に実施することが可能となる。
【0014】
(6)本発明は、また、前記第一導電層が細線電極である、、前記(1)~(5)のいずれか1項に記載の光電変換素子の製造方法である。この構成によって、めっき層のパターニングを容易に実施することが可能となる。
【0015】
(7)本発明は、また、前記第一導電層は、少なくとも一部が絶縁層で覆われている、前記(1)~(6)のいずれか1項に記載の光電変換素子の製造方法である。この構成によって、めっき層のパターニングを容易に実施することが可能となる。
【0016】
(8)本発明は、また、前記第二導電層が第二透明電極層である、前記(1)~(7)のいずれか1項に記載の光電変換素子の製造方法である。この構成によって、めっき給電における均一性が向上し、めっき層の均一性を高めることが可能となる。
【0017】
(9)本発明は、また、前記光電変換素子は、さらに前記光電変換ユニットの第2主面側に第二透明電極層を備え、前記第二導電層が第二透明電極層の上に設けられている、前記(1)~(7)のいずれか1項に記載の光電変換素子の製造方法である。
【0018】
(10)本発明は、また、前記第二導電層が細線電極である、前記(1)~(9)のいずれか1項に記載の光電変換素子の製造方法である。この構成によって、めっき給電における均一性が向上し、めっき層の均一性を高めることが可能となる。
【0019】
(11)さらに、第一導電層を、第1主面側から平面視した場合に外観上孤立するN個(ただし、2≦N)以上の細線電極領域として形成する工程を備える、前記(1)~(10)のいずれか1項に記載の光電変換素子の製造方法である。この構成によって、半導体基板上に複数の光電変換素子を有する場合においても効率的にめっき層を形成することが可能となる。
【0020】
(12)さらに、第一導電層を、第1主面側から平面視した場合に外観上孤立するN個(ただし、2≦N)以上の細線電極領域として形成する工程を備え、
さらに、第1主面側から平面視した場合に外観上孤立するN個以上の細線電極領域付きの光電変換素子を、めっき層が形成されていない部位において分割し、N個の光電変換素子を形成する工程を備える、前記(1)~(10)のいずれか1項に記載の光電変換素子の製造方法である。この構成によって、複数の光電変換素子を効率的に作製することが可能となる。
【0021】
(13)本発明は、また、前記(1)~(12)のいずれか1項に記載の光電変換素子の製造方法に用いられる、めっき用治具であって、
前記めっき層形成工程において、めっき給電用電極とめっき液とを接触させない状態で、かつ、めっき給電用電極と前記第二導電層とを面状に接触させた状態で、めっきを行うことが可能な、少なくとも、フレーム、パッキン、留め具、を備えるめっき用治具である。 この構成によって、効率的にめっきを実施することが可能となる。
【0022】
(14)本発明は、また、前記(13)に記載のめっき用治具を備えるめっき装置である。この構成によって、効率的にめっきを実施することが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、めっき層の均一性を向上させ、更には、めっき速度の高速化による製造効率向上を可能とする光電変換素子の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る光電変換素子の表面側を示す平面図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る光電変換素子の断面模式図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る未完成な光電変換素子の断面模式図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係る光電変換素子において、裏面構造が異なる場合の断面模式図である。
【
図5】本発明の第2の実施形態に係る光電変換素子の断面模式図である。
【
図6】本発明の第2の実施形態に係る未完成な光電変換素子の断面模式図である
【
図7】本発明の第3の実施形態に係る光電変換素子の表面側を示す平面図である。
【
図8】本発明の実施形態に係るめっき用治具を示す断面模式図である。
【
図9】本発明の実施形態に係るめっき装置を示す断面模式図である。
【
図10】本発明の実施形態に係るめっき装置を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(1)本発明の第一は、第1主面と第1主面の裏面である第2主面とを備える光電変換ユニットを含む光電変換素子の製造方法であって、
前記光電変換ユニットは第1主面側から第2主面側に向かって順に、少なくとも、p型半導体層及びn型半導体層を備え、
前記光電変換素子はさらに、前記光電変換ユニットの第1主面側に第一導電層を備え、前記光電変換ユニットの第2主面側に第二導電層を備え、
前記第一導電層上にめっき層を形成するめっき層形成工程を備え、
前記めっき層形成工程において、めっき給電用電極と前記第二導電層とを面状に接触させた状態で、かつ、めっき給電用電極および第二導電層をめっき液と接触させない状態で、めっきを行う、光電変換素子の製造方法である。
【0026】
(2)本発明は、また、前記めっき層形成工程において、前記第二導電層の面積以上の面積を有するめっき給電用電極を前記第二導電層に面状に接触させた状態でめっきを行う、前記(1)に記載の光電変換素子の製造方法である。
【0027】
(3)本発明は、また、前記第一導電層が第一透明電極層である、前記(1)又は(2)に記載の光電変換素子の製造方法である。
【0028】
(4)本発明は、また、前記光電変換素子は、さらに前記光電変換ユニットの第1主面側に第一透明電極層を備え、前記第一導電層が第一透明電極層の上に設けられている、前記(1)又は(2)に記載の光電変換素子の製造方法である。
【0029】
(5)本発明は、また、前記第一導電層がNi、Cu、Ag、Au、Pt、またはこれらの合金からなる下地電極層である、前記(1)、(2)又は(4)に記載の光電変換素子の製造方法である。
【0030】
(6)本発明は、また、前記第一導電層が細線電極である、前記(1)~(5)のいずれか1項に記載の光電変換素子の製造方法である。
【0031】
(7)本発明は、また、前記第一導電層は、少なくとも一部が絶縁層で覆われている、前記(1)~(6)のいずれか1項に記載の光電変換素子の製造方法である。
【0032】
(8)本発明は、また、前記第二導電層が第二透明電極層である、前記(1)~(7)のいずれか1項に記載の光電変換素子の製造方法である。
【0033】
(9)本発明は、また、前記光電変換素子は、さらに前記光電変換ユニットの第2主面側に第二透明電極層を備え、前記第二導電層が第二透明電極層の上に設けられている、前記(1)~(7)のいずれか1項に記載の光電変換素子の製造方法である。
【0034】
(10)本発明は、また、前記第二導電層が細線電極である、前記(1)~(9)のいずれか1項に記載の光電変換素子の製造方法である。
【0035】
(11)さらに、第一導電層を、第1主面側から平面視した場合に外観上孤立するN個(ただし、2≦N)以上の細線電極領域として形成する工程を備える、前記(1)~(10)のいずれか1項に記載の光電変換素子の製造方法である。
【0036】
(12)さらに、第一導電層を、第1主面側から平面視した場合に外観上孤立するN個(ただし、2≦N)以上の細線電極領域として形成する工程を備え、
さらに、第1主面側から平面視した場合に外観上孤立するN個以上の細線電極領域付きの光電変換素子を、めっき層が形成されていない部位において分割し、N個の光電変換素子を形成する工程を備える、前記(1)~(10)のいずれか1項に記載の光電変換素子の製造方法である。
【0037】
(13)本発明は、また、前記(1)~(12)のいずれか1項に記載の光電変換素子の製造方法に用いられる、めっき用治具であって、
前記めっき層形成工程において、めっき給電用電極とめっき液とを接触させない状態で、かつ、めっき給電用電極と前記第二導電層とを面状に接触させた状態で、めっきを行うことが可能な、少なくとも、フレーム、パッキン、留め具、を備えるめっき用治具である。
【0038】
(14)本発明は、また、前記(13)に記載のめっき用治具を備えるめっき装置である。
【0039】
(第1の実施形態)
本開示の第1の実施形態について、図面を用いて以下に説明する。
【0040】
[光電変換素子100]
図1は、本発明の製造方法により形成する光電変換素子100の表面側(受光面側)を示す平面図である。
図2は、
図1におけるIII-III線の断面を示す断面図である。
【0041】
図1に示すように、光電変換素子100は、複数のバスバー電極と、このバスバー電極と交差するように設けられた多数のフィンガー電極からなる集電極107を有している。
なお、バスバー電極およびフィンガー電極のデザインは前述のものに限定されず、どのようなものであってもよい。また、バスバー電極は有していなくてもよく、フィンガー電極のみ形成されていてもよい。本開示において、半導体基板、光電変換ユニット及び/又は光電変換素子100の表面を第1主面と定義し、裏面を第2主面と定義する。
【0042】
図2に示すように、本実施形態における光電変換素子100は半導体基板101を有する。半導体基板101は、その第1の主面側にp型半導体層(導電型シリコン系薄膜)103aを有する。半導体基板101は、その第2の主面側にn型半導体層(導電型シリコン系薄膜)103bを有する。
図2においては、第2の主面側を下側に表示し、第1の主面側を上側に表示している。
【0043】
この、p型半導体層103aとn型半導体層103bとの間において、PN接合が形成されている。
【0044】
なお、
図2に示す例においては、半導体基板101とp型半導体層103a、n型半導体層103bとの間に境界線を記載しているが、半導体基板101自体がn型半導体、若しくはp型半導体であり、半導体基板101とp型半導体層103aとの間、若しくは半導体基板101とn型半導体層103bとの間に境界がない構成であってもよい。
【0045】
p型半導体層103aにおける第1の主面側には、集電極107の形成領域に、第一導電層107-1が設けられている。本実施形態においては、第一導電層107-1として、
図1に示したバスバー電極とフィンガー電極からなる細線電極形状の下地電極層を用いている。更に、第一導電層107-1における第1の主面側には、めっき層107-2が設けられている。このめっき層107-2、及び第一導電層107-1が、
図1に示す表面側のバスバー電極とフィンガー電極からなる集電極を構成している。
【0046】
本実施形態においては、半導体基板101がn型半導体基板である構成としている。また、第一導電層107-1とp型半導体層103aとの間には、第一透明電極層106aを含む。n型半導体層103bの裏面側には、第二透明電極層106bと、第二導電層108として裏面金属電極とを更に含む構成としている。
【0047】
なお、半導体基板101とp型半導体層103aとの間に真性半導体層102aを介在させる構成としてもよく、半導体基板101とn型半導体層103bとの間に真性半導体層102bを介在させる構成としてもよい。半導体基板101とp型半導体層103aとの間、若しくは、半導体基板101とn型半導体層103bとの間に真性半導体102を介在させる場合、p型半導体層103aとn型半導体層103bとの間において、PIN接合が形成される構成となる。本開示においては、上述したPN接合の中にこのPIN接合も含まれることとする。また、本実施形態において、p型半導体層103a、真性半導体層102a、半導体基板101、真性半導体層102b及びn型半導体層103bが光電変換ユニット150を構成する。
【0048】
[光電変換素子100の製造方法]
以下、本実施形態に係る光電変換素子100の製造方法について、
図2を用いて説明する。
【0049】
[半導体基板101準備ステップ]
まず
図2に示した半導体基板101を準備する。半導体基板101としては、例えば、単結晶シリコン基板、多結晶シリコン基板などのシリコン基板を用いることができる。結晶基板内のキャリア寿命の長さから単結晶シリコン基板が好ましい。シリコン基板としては、n型シリコン基板とp型シリコン基板を用いることが出来る。とりわけ結晶基板内のキャリア寿命の長さから、n型単結晶シリコン基板を用いることが好ましい。また、p型単結晶シリコン基板で、光照射によってp型ドーパントであるB(ホウ素)が影響して再結合中心となるLID(Light Induced Degradation)が起こる場合があるが、n型ではより抑制される。本実施形態においては、半導体基板101としてn型単結晶シリコン基板を用いる。
【0050】
半導体基板101に用いる単結晶シリコン基板は、その膜厚が50~300μmが好ましく、60~200μmがより好ましく、70~180μmが更に好ましい。この範囲の膜厚の基板を用いることにより、より材料コストを低減することができる。
【0051】
半導体基板101は、光閉じ込めの観点から、光入射面側(受光面側、表面側)及び裏面側にテクスチャ構造と呼ばれる凹凸構造を有することが好ましい。
【0052】
また、半導体基板101の第1の主面および第2の主面側は、パッシベーション層を有するものが好ましい。パッシベーション層はキャリア再結合を抑制することができ、表面欠陥を終端できれば種類を問わないが、真性半導体層、とりわけ、真性非晶質シリコン層が好ましく用いられる。
【0053】
[p型半導体部103a形成ステップ]
次に、半導体基板101の第1の主面側、即ち表面側に、p型半導体層103aを形成する。p型半導体層103aを形成する上で用いる材料としては、非晶質シリコン薄膜、微結晶シリコン(非晶質シリコンと結晶質シリコンとを含む)薄膜等、非晶質成分を含む非晶質シリコン層を含むことが望ましい。また、ドーパント不純物としては、B(ホウ素)などを用いることができる。
【0054】
p型半導体層103aの製膜方法は特に限定されないが、例えばCVD法(Chemical Vapor Deposition)を使用することができる。CVD法を用いる場合、SiH4ガスを用い、ドーパント添加ガスとしては、水素希釈されたB2H6が好ましく用いられる。なお、ドーパント不純物の添加量は微量でよいため、予めSiH4やH2で希釈された混合ガスを用いることが好ましい。p型半導体層103aの製膜時に、CH4、CO2、NH3、GeH4等の異種元素を含むガスを添加して、シリコン系薄膜を合金化することにより、シリコン系薄膜のエネルギーギャップを変更することもできる。また、光の透過性を向上させるために酸素や炭素といった不純物を微量添加しても良い。その場合、CO2やCH4といったガスをCVD製膜の際に導入することにより形成することができる。
【0055】
なお、半導体基板101として、p型多結晶シリコン基板を用いた場合、既に半導体基板101の第1の主面側はp型半導体層103aとなっており、p型半導体層103aが半導体基板101内に含まれる構成となる。この場合、p型半導体層103a形成ステップは不要となる。
【0056】
[n型半導体層103b形成ステップ]
また、半導体基板101の第2の主面側、即ち裏面側に、n型半導体層103bを形成する。なお、このn型半導体層103b形成ステップは、上述したp型半導体層103a形成ステップの前に行ってもよく、p型半導体層103a形成ステップの後に行ってもよい。
【0057】
n型半導体層103bを形成する上で用いる材料としては、非晶質シリコン薄膜、微結晶シリコン薄膜等、非晶質成分を含む非晶質シリコン層を含むことが望ましい。また、ドーパント不純物としては、P(リン)などを用いることができる。
【0058】
n型半導体層103bの製膜方法は特に限定されないが、例えばCVD法(Chemical Vapor Deposition)を使用することができる。CVD法を用いる場合、SiH4ガスを用い、ドーパント添加ガスとしては、水素希釈されたPH3が好ましく用いられる。なお、ドーパント不純物の添加量は微量でよいため、予めSiH4やH2で希釈された混合ガスを用いることが好ましい。n型半導体層103bの製膜時に、CH4、CO2、NH3、GeH4等の異種元素を含むガスを添加して、シリコン系薄膜を合金化することにより、シリコン系薄膜のエネルギーギャップを変更することもできる。また、光の透過性を向上させるために酸素や炭素といった不純物を微量添加しても良い。その場合、CO2やCH4といったガスをCVD製膜の際に導入することにより形成することができる。
【0059】
なお、半導体基板101として、p型多結晶シリコン基板を用いた場合、半導体基板101の第2の主面側にn型ドーパントを拡散させてn型化させることにより、n型半導体層103bを形成してもよい。
【0060】
[第一透明電極層106a、第二透明電極層106b形成ステップ]
次に、スパッタ法や、MOCVD法等によって、p型半導体層103aの第1の主面側に第一透明電極層106aを形成し、n型半導体層103bの第2の主面側に第二透明電極層106bを形成する。第一透明電極層106a形成ステップは、p型半導体層103a形成ステップより後であればよく、n型半導体層103b形成ステップより前であってもよい。また、第二透明電極層106b形成ステップは、n型半導体層103b形成ステップより後であればよく、p型半導体層103a形成ステップより前であってもよい。
【0061】
第一透明電極層106a、第二透明電極層106bの構成材料としては、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化錫、酸化チタン、及びそれらの複合酸化物等の透明導電性金属酸化物を用いることができる。また、グラフェンのような非金属からなる透明導電性材料であってもよい。上述した構成材料の中でも、高い導電率と透明性の観点からは、酸化インジウムを主成分とするインジウム系複合酸化物を第一透明電極層106a、第二透明電極層106bとして用いることが好ましい。また、信頼性やより高い導電率を確保する為に、インジウム酸化物にドーパントを添加して用いることが更に好ましい。ドーパントとして用いる不純物としては、Sn,W,Ce,Zn,As,Al,Si,S,Ti等が挙げられる。
【0062】
[第二導電層形成ステップ]
更に、第二導電層108を第二透明電極層106b上に形成する。第二導電層108は
図2に示されているような裏面金属電極でもよく、第二導電層108の形成方法としては、例えば、スパッタ法や蒸着法、めっき法などが挙げられるが、中でも裏面側のほぼ全面に容易に形成出来る観点から、スパッタ法により形成することが好ましい。裏面金属電極をスパッタ法により製膜する場合、精度よく被覆することができるため好ましい。特にヘテロ接合太陽電池などの結晶シリコン系太陽電池において一般的に用いられる凹凸構造付き基板を用いた場合、該凹凸部分にも精度よく被覆できるため、より好ましい。このような裏面金属電極の材料としては、Ti、Cr、Ni、Sn、Ag、Cuなどが好ましい。
【0063】
また、第二導電層は、第二透明電極層106b(
図2の106b、
図4の206b)をそのまま第二導電層として使用してもよいし、
図4の208の様に細線電極からなる集電極であってもよい。
図2を参照して、第二導電層として第二透明電極層106bを用いる場合は、第二透明電極層106bが、光電変換素子100の第2主面における略全面においてめっき給電用電極と接するため、めっき時において印過電圧の面内均一性が高くなる。また
図4を参照して、第二導電層208として細線電極からなる集電極を用いた場合においても、半導体基板101や第一透明電極層206a(106a)および第二透明電極層206b(106b)により、細線電極のフィンガー電極間のキャリア移動距離程度であれば十分低抵抗を確保することができ、めっき時における印過電圧の面内均一性の高さを確保することができる。また、細線電極が第一導電層207-1と第二導電層208においてミラー対称を有しているか、第二導電層208のフィンガー電極の本数が第一導電層207-1のフィンガー電極よりも多い場合等においては、めっき時の電流は、主に集電極間を垂直に移動すると考えられるため、より面内均一性が高くなる。なお、
図4において、光電変換素子200、半導体基板201、真性シリコン系薄膜202a及び202b、導電型シリコン系薄膜203a及び203b、集電極207、めっき層207-2が図示されている。
【0064】
細線電極からなる第二導電層208を形成する細線電極の材料としては、例えばNi、Cu、Ag、Au、Pt、またはこれらの合金等が使用できるが、電解めっき法における下地層として機能し得る程度の導電率を有していれば、特に限定されない。細線電極からなる第二導電層208の形成方法としては、例えば、インクジェット法、スクリーン印刷法、導線接着法、スプレー法、真空蒸着法、スパッタ法、電解めっき法、無電解めっき法などを用いることができる。コスト、および、量産性の観点からは上述の第一導電層の材料を含むペーストをスクリーン印刷法で印刷することが好ましい。
【0065】
[第一導電層107-1形成ステップ]
図2を参照して、次に、第一透明電極層106aの第1の主面側における集電極の形成領域に第一導電層107-1を形成する。すなわち、第一透明電極層106aの上に第一導電層107-1を形成する。第一導電層107-1は、後述するめっき層107-2形成工程において、導電性の下地層として機能する層であり、めっき層107-2を析出させる電極となる層である。
【0066】
第一導電層107-1形成ステップは、p型半導体層103a形成ステップの後に行い、第一透明電極層106aを設ける場合は第一透明電極層106a形成ステップの後に行う。第一導電層107-1形成ステップは、n型半導体層102b形成ステップよりも前に行ってもよい。
【0067】
第一導電層107-1を形成する下地電極層の材料としては、例えばNi、Cu、Ag、Au、Pt、またはこれらの合金等が使用できるが、電解めっき法における下地層として機能し得る程度の導電率を有していれば、特に限定されない。なお、本実施形態においては、第一導電層107-1は、第一透明電極層106aよりも高い導電率を有していてもよいし、有していなくてもよい。
【0068】
第一導電層107-1の形成方法としては、例えば、インクジェット法、スクリーン印刷法、導線接着法、スプレー法、真空蒸着法、スパッタ法、電解めっき法、無電解めっき法などを用いることができる。コスト、および、量産性の観点からは上述の第一導電層の材料を含むペーストをスクリーン印刷法で印刷することが好ましい。
【0069】
ここで、第一導電層107-1が形成された未完成な光電変換素子は、その主面の垂線方向についてダイオードとなっており、第一導電層107-1から第二導電層108への方向がダイオードの順方向である。
【0070】
[絶縁層109形成ステップ]
次に、
図3に示されているように第一透明電極層106aの第1の主面側に絶縁層109を形成し未完成な光電変換素子100Aを形成する。絶縁層109形成ステップは、第一導電層107-1形成ステップの前後のどちらに行ってもよく、n型半導体層103b形成ステップの前に行ってもよい。
【0071】
絶縁層109はフォトレジスト材料など、所定の条件を満たすことで除去可能な層により形成しても構わない。絶縁層109をフォトレジスト材料で形成した場合、光の照射によって構造変化を起こし、特定の薬品によって溶けやすくなる。
【0072】
本実施形態においては、絶縁層109は、後述するめっき層107-2形成工程において使用するめっき液に対する化学的安定性を有する材料を用いて形成する。このような材料を用いることにより、めっき層107-2形成工程の際に、絶縁層109が溶解しにくく、半導体基板101、p型半導体層103a、n型半導体層103b等へのダメージが発生するのを抑制することができる。
【0073】
絶縁層109の形成に使用するフォトレジスト材料は、上述した性質を備えていれば特に限定されるものではないが、ポジ型ならノボラック樹脂、フェノール樹脂など、ネガ型ならアクリル樹脂などを使用することができる。
【0074】
また、絶縁層109を除去する除去液としては、例えば、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、アルキルベンゼンスルホン酸、エタノールアミン類、水酸化ナトリウムなどを含む溶液などを使用することができる。
【0075】
本実施形態では、フォトレジスト材料として、ポジ型のノボラック樹脂を使用し、除去液として、水酸化ナトリウム水溶液を使用する。
【0076】
絶縁層109は、SiO、SiN、SiONなどの無機絶縁膜により形成されていてもよい。無機絶縁膜を形成する方法は特に問わないが、精密な膜厚制御が可能なCVD法による製膜が好ましい。CVD法であれば、材料ガスや製膜条件のコントロールで膜質制御が可能である。このような無機絶縁膜を使用する場合は、絶縁膜における光透過性が良いため、完成品において絶縁層109を残したままとしてもよい。
【0077】
[めっき層107-2形成ステップ]
次に、第一導電層107-1の第1の主面側にめっき層107-2を形成する。めっき層107-2形成ステップは、第一導電層107-1形成ステップの後に行う。
【0078】
めっき層107-2の材料としては、例えばNi、Cu、Ag、Au、Pt、またはこれらの合金等が使用できる。とりわけ、コストの観点から、Cuが好適に用いられる。
【0079】
図8は、めっきを行う際の基板ホルダ114に未完成な光電変換素子100Aを装着した状態の一例を概略図として示している。ここで、未完成な光電変換素子100Aは、簡略化のため半導体基板101と第一導電層107-1、第二導電層108以外を省略して図示している。基板ホルダ114は背板114-1を有し、更に背板上に面状のめっき給電用電極117と、めっき給電用電極117に接続されるめっき給電用配線118を有している。めっき給電用電極117の上に未完成な光電変換素子100Aを配置し、パッキン114-2を、背板114-1と未完成な光電変換素子100Aの両方に密着させ、フレーム114-4と留め具114-3とで固定する。これにより、めっき給電用電極117と第二導電層108が、めっき液と接触せず、めっき給電用電極117と第二導電層108が、めっき液を介して第一導電層107-1と電気的に接続されることを防ぐことができる。このようにすることで、めっき時に電圧を印加した際に、めっき給電用電極117と第一導電層107-1との間にめっき液のような低抵抗な電気回路が形成されることを排除することができ、未完成な光電変換素子100AのPN接合からなるダイオードの順方向に電流を流すために十分な電圧が印加される。
【0080】
以上により基板ホルダ114を一例として説明したが、基板ホルダは、めっき給電用電極117と第二導電層108がめっき液と接触せず、かつ、第一導電層107-1がめっき液と接触するという条件を満たせば、どのような構造であっても構わない。例えば、
図10に示されているように、基板ホルダ214をめっき液216の液面に浮かせるような形で設置する場合は、基板ホルダ214の背面側はめっき液216の外にあり、めっき液216と接触しないため、背板を使用する必要はない。なお、
図10における基板ホルダは、簡単のためパッキンと留め具が省略されて図示してあり、未完成な光電変換素子200Aも半導体基板と第一導電層207-1以外は省略して図示している。また、
図10には、めっき装置211、めっき槽212、めっき電極213、フレーム214-4、電源215、めっき給電用電極217、めっき給電用配線218が図示されている。
【0081】
また、めっき給電用電極は面状の形状をしており、光電変換素子100における第二導電層の面積以上の面積を有することが好ましい。例えば、
図3に示した裏面金属電極を用いた第二導電層108や、前述の第二透明電極層を第二導電層として用いた場合は、光電変換素子の裏面側の略全面に第二導電層が形成されている。この場合、第二導電層の面積以上の面積を有する面状のめっき給電用電極を、第二導電層全体を覆う様に接触させることにより、めっき給電時に第二導電層の光電変換素子面内方向における電気抵抗により生じる電位差の影響を抑制でき、光電変換素子全体に概ね均一に電圧が印加される。また、第二導電層が
図4に示されているように細線電極から形成される場合は、第二導電層208における細線電極全体を覆う様にめっき給電用電極を接触させることが好ましい。
【0082】
面状のめっき給電用電極は、例えば板状であることが好ましいが、細線電極のみを覆うようなパターン形状を有していてもよく、また、メッシュ状であってもよい。また、めっき給電用電極としては、光電変換素子の面内方向においてめっき給電用電極内の電位差が大きくなり過ぎないように、十分な厚みを有しているバルクの金属を用いることが好ましく、めっき工程で用いる電流値の大きさに応じてその厚みを調整することが好ましい。
【0083】
図9は、このめっき層107-2形成ステップを示す概念図である。
図9に示すめっき装置111において、めっき槽112内のめっき液116に、絶縁層109(
図3)形成ステップ後の未完成な光電変換素子100Aを浸す。めっき液116としては、例えば金属塩を溶解したものを用いることができ、具体的には、硫酸銅が電離した硫酸銅水溶液などを用いることができる。即ち、本実施形態においては、めっき液116において、銅イオンと硫酸イオンが電離している。なお、
図9における基板ホルダ114は、簡単のためパッキンと留め具が省略されて図示してあり、未完成の光電変換素子100Aも半導体基板と第一導電層107-1以外は省略して図示している。
【0084】
めっき槽112内には、平板上の導電体であるめっき電極113が配置されている。めっき電極113は、p型下地導電層103aと対向するよう配置されている。めっき電極113は、電解めっきに用いられる金属単体又は金属合金で形成されたものである。本実施形態では、めっき液116として硫酸銅を使用しているため、めっき電極113として銅などを使用することができる。
【0085】
めっき電極113は電源115の正極に接続されており、陽極となっている。めっき電極113は、未完成な光電変換素子100Aの半導体基板の略全面を覆う程度の大きさを有している。
【0086】
電源115の負極には、めっき用給電配線118を介してめっき給電用電極117が接続され、このめっき給電用電極117を介して、第二導電層108が給電される。このとき、第二導電層108と第一導電層107-1とは、n型半導体層103bとp型半導体層103aとを含んで構成されるダイオードのみにより電気的に接続された状態である。
【0087】
すなわち、次の4つの条件が満たされた状態である。
【0088】
(1)第二導電層108と第一導電層107-1とが、未完成な光電変換素子100Aの構成に不要な導電性層等によって電気的に接続されていない。
【0089】
(2)第二導電層108に対する第一導電層107-1の電位差が順方向降下電圧以上になるよう電圧をかけた場合に、電流が、第二導電層108と第一導電層107-1を含んで構成されるダイオードを介して、第一導電層107-1にまで流れる。
【0090】
(3)めっき給電用電極117と等電位の給電部材が第一導電層107-1に接続されていない。
【0091】
(4)めっき給電用電極117と第二導電層108の両方が、めっき液116を介して第一導電層107-1と電気的に接続されていない。
【0092】
以上により、上述した第二導電層108と第一導電層107-1との間でダイオードの順方向に電流が流れるため、第一導電層107-1の露出する表面において、
図2に示しためっき層107-2が形成される。
【0093】
このような製造方法により、第二導電層108と第一導電層107-1とを、光電変換素子100の構成に不要な導電性層を形成することなく、めっき層107-2を形成することができる。
【0094】
なお、本実施形態においては、n型半導体層103bとp型半導体層103aとを含んで構成されるダイオードがPN接合の場合を例示したが、n型半導体層103bとp型半導体層103aとの間に真性半導体層が介在し、n型半導体層103b、真性半導体層、p型半導体層103aにより構成されるダイオードがPIN接合であってもよい。
【0095】
以上の様にめっきを行うことにより、第一導電層107-1の光電変換素子面内方向における電気抵抗による電位差を大幅に抑制することが可能であり、第一導電層107-1上に均一にめっき層108を形成することが可能となる。本発明によると、めっきにおける給電を下地電極層に行う従来の太陽電池の製造方法のように、めっき時に印加する電流を段階的に増加させる必要がなく、最初からめっき速度を高めて作製できるため製造効率が高くなる。更には、第一導電層107-1上に不均一にめっき電圧が印加される場合であれば、印過電圧が低い箇所がめっき形成されにくい。このようなめっき形成がされにくい箇所の電気抵抗ロスを低減させようとすると、めっき時間を長くする必要があり、めっきがされやすいところのめっき層の幅が太くなるため、遮光ロスが増加する。以上により、本発明による製造方法を使用することで、均一なめっき層を形成することができ、集電時の電気抵抗ロスや遮光ロスが低減される。
【0096】
(第2の実施形態)
本開示の第2の実施形態について、
図5および
図6を用いて以下に説明する。
【0097】
図5では、光電変換素子300が示されている。光電変換素子300は表面側の透明電極層306aに接するようにめっき層307-2が形成されている。このように、第一導電層として下地電極層を使用しない構造とすることで、第2の実施形態は製造コストの低減が期待できる。
図6に光電変換素子300を形成する上での未完成の光電変換素子300Aを示す。未完成の光電変換素子300Aでは、第一導電層307-1が第一透明電極層306aにより形成されており、前述のフォトレジスト材料などにより形成された絶縁層309で覆われている。絶縁層309は開口部を有し、開口部は細線電極などのパターンを有していることが好ましい。本実施形態における光電変換素子のその他の製造方法は、第1実施形態による製造方法と同様の方法で作製される。本実施形態のように、第一導電層307-1が第一透明電極層306aである場合は、光電変換素子の面内方向における電気抵抗の高さから、通常のめっき方法のように点による接触方法を用いた給電では、面内均一性高くめっき層を形成することは困難である。これは第一導電層307-1である透明電極層306aの面内方向における電気抵抗により、給電部から離れるにしたがって電位差が生じるためである。一方で、本発明によると、裏面側の第二導電層308に面状で接するめっき給電用電極により、未完成の光電変換素子300AのPN接合からなるダイオードを介することで、均一性高く第一導電層307-1に電流を流すことができ均一なめっき層が形成される。なお、
図5及び6において、未完成の光電変換素子300A、半導体基板301、真性シリコン系薄膜302a及び302b、導電型シリコン系薄膜303a及び303b、第二透明電極層306b、集電極307及び光電変換ユニット350が図示されている。
【0098】
(第3の実施形態)
本開示の第3の実施形態について、
図7を用いて以下に説明する。
【0099】
図7は、本発明の製造方法により形成する未完成の光電変換素子400Aの表面側を示す平面図である。未完成の光電変換素子400Aは、図に記載の点線で領域分けを示唆可能な、4つの細線電極領域が第一導電層407-1により形成されており、それぞれの細線電極領域には複数のバスバー電極と、このバスバー電極と交差するように設けられた多数のフィンガー電極を有している。なお、バスバー電極およびフィンガー電極のデザインは前述のものに限定されず、どのようなものであってもよい。また、バスバー電極は有していなくてもよく、フィンガー電極のみ形成されていてもよい。細線電極領域は金属ペーストなどからなる下地電極層であってもよいし、絶縁層が細線電極上の開口部を有する第一透明電極層であってもよい。それぞれの細線電極領域は、外観上孤立している。第一導電層407-1が下地電極層である場合は、下地電極層が外観上孤立しており、第一導電層407-1が第一透明電極層である場合は、絶縁層の開口部が外観上孤立している。第一導電層407-1が下地電極層である場合は、下地電極層が外観上孤立していればよく、下地電極層より半導体基板401側に形成された不図示の第一透明電極層により電気的に接続されていてもよい。また、第一導電層407-1が第一透明電極層である場合は、絶縁層の開口部が外観上孤立していればよく、第一透明電極層が絶縁層の半導体基板401側において、半導体基板401の略全面に渡って形成されていてもよい。本実施形態における未完成の光電変換素子400Aにおいて、めっき工程後に形成されためっき層は、第一導電層407-1に従って外観上孤立している。なお、
図7では、外観状孤立する4つの細線電極領域が形成されているが、本実施形態では、細線電極領域の数は複数である限り限定されず、N個(2≦N)であればよい。
【0100】
本実施形態の様に、外観上孤立した複数の第一導電層407-1を有する場合、通常のめっき方法であれば各第一導電層にめっき給電を実施する必要があるため、細線電極領域の数が多い場合は、めっきを実施することが困難となる。本発明によると、未完成の光電変換素子400Aにおける裏面側の第二導電層に面状で接するめっき給電用電極により、未完成の光電変換素子400AのPN接合からなるダイオードを介することで、均一性高く第一導電層407-1に電流を流すことができ、均一なめっき層が形成される。
【0101】
本実施形態による光電変換素子は、未完成の光電変換素子400Aにおけるめっき工程後に、外観上孤立した細線電極領域を、例えば図に記載の点線部分で分割し、複数の光電変換素子が形成されてもよい。未完成の光電変換素子400Aをめっき工程後に分割する方法としては、特に限定されないが、例えばレーザーダイシングまたはブレードダイシングが挙げられる。特に、複雑な形状または曲面を切り出すことができることから、レーザーダイシングが好ましい。このように複数の光電変換素子に分割する場合、めっき層が細線電極領域において外観上孤立していることで、レーザーダイシングやブレードダイシングの切断部分にめっき層が形成されない。(逆に言うと、めっき層が形成されていない部分をレーザーダイシングやブレードダイシングで切断する。)従来との相違点について、詳しく説明する。 例えば、従来の通常の方法では、めっき層側にめっき給電を行う際に、下地電極層を全て外観上つなげて形成されていることが一般的であり、切断部分にもめっき層が形成される場合がある。このような場合において、銅などを略全面にめっき層として使用する場合を考える。その場合、めっき層が形成されていない部分が少なく、また、切断部分にもめっき層が形成されているため、めっき層ごと(めっき層が付いたまま)レーザーダイシングを行うと、レーザーによって、めっき層の銅が溶解して切断面などにおいて半導体基板に付着することで、半導体基板内へ拡散してしまい、光電変換素子の特性低下が生じるおそれが有る。しかしながら本発明の様に、切断部分にめっき層を形成しないことにより、前記のような、めっき層由来の銅の拡散による光電変換素子の特性低下が抑制される。また、切断部分にめっき層を形成しないことにより、ブレードダイシングや(引き続く)折り割り時における物理的な相互作用により、めっき層の一部が光電変換素子から剥がれることも防ぐことができる。
【0102】
図7に点線で示したような複数の細線電極領域は、最終的に形成する光電変換素子の数よりも多くてもよく、外観上孤立した複数の細線電極領域からなるめっき層が、一つの光電変換素子上に形成されていてもよい。
【0103】
本実施形態による光電変換素子のその他の製造方法は、第1の実施形態と同様に実施される。