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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-25
(45)【発行日】2023-09-04
(54)【発明の名称】電流供給回路および抵抗測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/28 20060101AFI20230828BHJP
   G01R 27/14 20060101ALI20230828BHJP
【FI】
G01R31/28 P
G01R27/14
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020019293
(22)【出願日】2020-02-07
(65)【公開番号】P2021124436
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000227180
【氏名又は名称】日置電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104787
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 伸司
(72)【発明者】
【氏名】塩入 章弘
(72)【発明者】
【氏名】若松 英彰
【審査官】永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/059766(WO,A1)
【文献】特開2006-329887(JP,A)
【文献】特開平3-214306(JP,A)
【文献】特開平11-281688(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/28
G01R 31/26
G01R 27/00
G05F 1/10
H03M 1/10
H03M 1/12
H03M 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力抵抗を介して入力部に入力される回路グランドを基準とする入力電圧を増幅すると共に出力部と当該回路グランドとの間に接続された負荷に対して印加電圧を印加するための出力電圧を当該出力部から出力する増幅部を有して、前記負荷に出力電流を供給する電流供給回路であって、
前記負荷における前記出力部側の第1端子と前記回路グランドとの間に接続されて、前記印加電圧を予め規定された分圧比で分圧して第1分圧電圧を出力する第1抵抗分圧部と、
前記第1分圧電圧を入力して設定電圧と比較すると共に、当該第1分圧電圧の絶対値が当該設定電圧の絶対値を上回ったときに前記入力電圧の絶対値を減少させる電圧制限部とを備えている電流供給回路。
【請求項2】
前記負荷における前記回路グランド側の第2端子と前記回路グランドとの間に接続されて前記出力電流を検出電圧に変換して出力する検出抵抗部を備え、
前記増幅部は、前記入力部としての非反転入力端子に前記入力電圧が入力され、反転入力端子に前記検出電圧が入力され、かつ出力端子が前記出力部に接続された演算増幅器を備えている請求項1記載の電流供給回路。
【請求項3】
前記出力部と前記負荷の前記第1端子との間に接続されて前記出力電流を検出電圧に変換して出力する検出抵抗部と、
前記出力部と前記回路グランドとの間に接続されて、前記増幅部が前記入力電圧を増幅して前記出力部から出力する出力電圧を予め規定された分圧比で分圧して第2分圧電圧を出力する第2抵抗分圧部と、
前記第1分圧電圧および前記第2分圧電圧を入力すると共に当該2つの分圧電圧の差電圧を増幅して検出電圧として出力する差動増幅部とを備え、
前記増幅部は、前記入力部としての非反転入力端子に前記入力電圧が入力され、反転入力端子に前記検出電圧が入力され、かつ出力端子が前記出力部に接続された演算増幅器を備えている請求項1記載の電流供給回路。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の電流供給回路と、前記印加電圧の電圧値および前記出力電流の電流値を測定すると共に測定した当該電圧値および当該電流値に基づいて前記負荷の抵抗値を測定する測定部とを備えている抵抗測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負荷に出力電流を供給するための出力電圧を出力する増幅部を備えると共にこの出力電圧の最高出力電圧(最大絶対値)を予め規定された所定電圧に制限する機能を備えた電流供給回路、およびこの電流供給回路を備えた抵抗測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の電流供給回路として、本願出願人は下記の特許文献1に開示された定電流源を既に提案している。この提案された定電流源(電流供給回路)は、測定対象抵抗体に定電流を流すために測定対象抵抗体の抵抗値(未知)に応じて測定対象抵抗体に供給する電圧の電圧値を変化させる誤差増幅回路(増幅部)を備えると共に、誤差増幅回路の出力端子に接続されてこの出力端子から出力される出力電圧の正側の最大電圧(最大絶対値)を正側の所定電圧に制限する第1電圧制限回路(例えば、演算増幅器とダイオードとで構成された理想ダイオード回路および正側の所定電圧を出力する基準電圧生成回路を備えた回路)、および誤差増幅回路の出力端子に接続されてこの出力端子から出力される出力電圧の負側の最大電圧(最大絶対値)を負側の所定電圧に制限する第2電圧制限回路(例えば、演算増幅器とダイオードとで構成された理想ダイオード回路および負側の所定電圧を出力する基準電圧生成回路を備えた回路)を備えている。
【0003】
この構成により、この定電流源では、各電圧制限回路(電圧制限部)によって誤差増幅回路の出力端子の電圧(出力電圧)を正側の所定電圧と負側の所定電圧との範囲内に制限する(出力電圧の最大絶対値を所定の範囲内に制限する)ことが可能となるため、例えば、測定対象抵抗体に過大な電圧が印加されるのを回避することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-281688号公報(第4-5頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記の定電流発生回路(定電流源)には、次のような改善すべき課題が存在している。具体的には、この定電流発生回路では、測定対象抵抗体の抵抗値(未知)に応じて測定対象抵抗体に供給する電圧の電圧値を変化させる誤差増幅回路の出力端子に各電圧制限回路(電圧制限部)の演算増幅器が直接接続されて、各電圧制限回路は誤差増幅回路の出力端子から出力される出力電圧を直接的に制限する。また、この定電流発生回路では、想定される測定対象抵抗体の抵抗値が大きいときには、誤差増幅回路から測定対象抵抗体への出力電圧も高電圧となることから、正側の所定電圧および負側の所定電圧はこの高電圧よりも高い電圧に規定される。したがって、各電圧制限回路を構成する演算増幅器として、正側の耐圧が正側の所定電圧を超え、かつ負側の耐圧が負側の所定電圧を超える高耐圧(高電圧)仕様の演算増幅器(動作電圧および入力電圧が±数十V(例えば±30V)を超える仕様の演算増幅器)を使用する必要がある。このような高耐圧仕様(高電圧仕様)の演算増幅器などの半導体部品は、低耐圧仕様(動作電圧および入力電圧が例えば±15V以下の低電圧仕様の演算増幅器)の半導体部品と比較して、選択の幅が狭くなると共に一般的に高価なため、設計の自由度が低くなると共に低コスト化が難しいという改善すべき課題が存在している。
【0006】
本発明は、かかる改善すべき課題に鑑みてなされたものであり、電圧制限部において高電圧仕様の半導体部品(高電圧仕様の演算増幅器やコンパレータなど)の使用を回避し得る電流供給回路および抵抗測定装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく請求項1記載の電流供給回路は、入力抵抗を介して入力部に入力される回路グランドを基準とする入力電圧を増幅すると共に出力部と当該回路グランドとの間に接続された負荷に対して印加電圧を印加するための出力電圧を当該出力部から出力する増幅部を有して、前記負荷に出力電流を供給する電流供給回路であって、前記負荷における前記出力部側の第1端子と前記回路グランドとの間に接続されて、前記印加電圧を予め規定された分圧比で分圧して第1分圧電圧を出力する第1抵抗分圧部と、前記第1分圧電圧を入力して設定電圧と比較すると共に、当該第1分圧電圧の絶対値が当該設定電圧の絶対値を上回ったときに前記入力電圧の絶対値を減少させる電圧制限部とを備えている。
【0008】
また、請求項2記載の電流供給回路は、請求項1記載の電流供給回路において、前記負荷における前記回路グランド側の第2端子と前記回路グランドとの間に接続されて前記出力電流を検出電圧に変換して出力する検出抵抗部を備え、前記増幅部は、前記入力部としての非反転入力端子に前記入力電圧が入力され、反転入力端子に前記検出電圧が入力され、かつ出力端子が前記出力部に接続された演算増幅器を備えている。
【0009】
また、請求項3記載の電流供給回路は、請求項1記載の電流供給回路において、前記出力部と前記負荷の前記第1端子との間に接続されて前記出力電流を検出電圧に変換して出力する検出抵抗部と、前記出力部と前記回路グランドとの間に接続されて、前記増幅部が前記入力電圧を増幅して前記出力部から出力する出力電圧を予め規定された分圧比で分圧して第2分圧電圧を出力する第2抵抗分圧部と、前記第1分圧電圧および前記第2分圧電圧を入力すると共に当該2つの分圧電圧の差電圧を増幅して検出電圧として出力する差動増幅部とを備え、前記増幅部は、前記入力部としての非反転入力端子に前記入力電圧が入力され、反転入力端子に前記検出電圧が入力され、かつ出力端子が前記出力部に接続された演算増幅器を備えている。
【0010】
また、請求項4記載の抵抗測定装置は、請求項1から3のいずれかに記載の電流供給回路と、前記印加電圧の電圧値および前記出力電流の電流値を測定すると共に測定した当該電圧値および当該電流値に基づいて前記負荷の抵抗値を測定する測定部とを備えている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の電流供給回路および請求項4記載の抵抗測定装置によれば、増幅部の出力部と回路グランドとの間に接続された負荷に対して印加電圧を印加することで負荷に出力電流を供給可能としつつ、出力電圧を低電圧である第1分圧電圧に分圧して電圧制限部に出力する第1抵抗分圧部を備えたことにより、電圧制限部を低電圧仕様の半導体部品(低電圧仕様のコンパレータなど)で構成し得るようにでき、これによって高電圧仕様の半導体部品(高電圧仕様のコンパレータなど)の使用を回避することができる。
【0012】
また、請求項2記載の電流供給回路および請求項4記載の抵抗測定装置によれば、負荷における回路グランド側の第2端子と回路グランドとの間に接続されて出力電流を検出電圧に変換して出力する検出抵抗部を備え、増幅部は、入力部としての非反転入力端子に入力電圧が入力され、反転入力端子に検出電圧が入力され、かつ出力端子が出力部に接続された演算増幅器を備えたことにより、電圧制限部での高電圧仕様の半導体部品の使用を回避しつつ、負荷に対して出力電流を正確な定電流として供給することができ、これにより、負荷の抵抗値を十分な精度で測定することができる。
【0013】
また、請求項3記載の電流供給回路および請求項4記載の抵抗測定装置によれば、第1抵抗分圧部および第2抵抗分圧部を備えたことにより、電圧制限部での高電圧仕様の半導体部品の使用および差動増幅部での高電圧仕様の半導体部品の使用を共に回避しつつ、負荷に対して出力電流を定電流に近い状態で供給することができ、これにより、負荷の抵抗値を必要な精度で測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】電流供給回路1Aおよび抵抗測定装置50Aの構成図である。
図2】電流供給回路1Aの動作を説明するための出力電圧Voの波形図である。
図3】電流供給回路1Bおよび抵抗測定装置50Bの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、電流供給回路および抵抗測定装置の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0016】
まず、電流供給回路としての電流供給回路1A、および抵抗測定装置としての抵抗測定装置50Aの構成について、図1を参照して説明する。
【0017】
最初に電流供給回路1Aについて説明する。電流供給回路1Aは、電圧入力端子2、入力抵抗3、増幅部4、検出抵抗部5、第1抵抗分圧部6、電圧制限部7および負荷接続端子8a,8bを備えて、電圧入力端子2に入力される基準電圧Vrを増幅部4で増幅して負荷接続端子8a,8b間に接続された負荷DUTに対して印加電圧Vap(負荷DUTの両端間電圧)として印加することにより、負荷DUTに対して出力電流Ioを供給可能に構成されている。また、この電流供給回路1Aは、第1抵抗分圧部6および電圧制限部7を備えることで、印加電圧Vapの最高電圧(最大絶対電圧値)を予め規定された所定電圧Vsに制限可能に構成されている。
【0018】
具体的には、電流供給回路1Aでは、電圧入力端子2と回路グランドG(電流供給回路1Aにおける基準電位の部位)との間に基準電圧源9が接続されている。基準電圧源9は、基準電圧Vrを生成すると共に、回路グランドGの電位を基準とする電圧として電圧入力端子2に出力する。本例では一例として、基準電圧源9は、交流定電圧源として構成されて、予め規定された一定の振幅で、かつ予め規定された一定の周波数の交流定電圧(正弦波定電圧)を基準電圧Vrとして生成して電圧入力端子2に出力する構成であるが、この構成に限定されるものではなく、直流定電圧源として構成されて、予め規定された一定の電圧値の直流電圧(直流定電圧)を基準電圧Vrとして生成して電圧入力端子2に出力する構成を採用することもできる。また、基準電圧源9は、電流供給回路1Aとは別体であってもよいし、電流供給回路1Aに内蔵される構成であってもよい。
【0019】
入力抵抗3は、一端が電圧入力端子2に接続され、他端が増幅部4における後述の入力部4aに接続されている。この構成により、基準電圧源9から電圧入力端子2に出力された基準電圧Vrは、入力抵抗3を介して増幅部4の入力部4aに入力される。
【0020】
増幅部4は、本例では一例として、高電圧仕様(動作電圧が±数十V(例えば±30V)を超える高電圧であって、この動作電圧に近い高電圧の出力電圧を出力し得る仕様)の1つの演算増幅器を用いて構成されている(以下では、演算増幅器4ともいう)。これにより、本例では、演算増幅器4の非反転入力端子が増幅部4の入力部4aとして機能して、この非反転入力端子に入力抵抗3の他端が接続されている。また、演算増幅器4の反転入力端子が増幅部4の他の入力部4bとして機能する。また、演算増幅器4の出力端子が、増幅部4の出力部4cとして機能して、負荷接続端子8a,8bのうちの一方の負荷接続端子8aに接続されている。また、負荷接続端子8a,8bのうちの他方の負荷接続端子8bと回路グランドGとの間に検出抵抗部5が接続されている。検出抵抗部5は、一定の抵抗値(既知)の抵抗で構成されて、負荷DUTに流れる出力電流Ioを検出電圧Vdに変換して、入力部4bとしての演算増幅器4の反転入力端子に出力する。
【0021】
この構成により、演算増幅器4は、負荷接続端子8a,8b間に負荷DUTが接続されている状態(つまり、負荷DUTが演算増幅器4の出力端子と反転入力端子との間に接続されて、演算増幅器4の負帰還路を構成している状態)において、反転入力端子に入力されている検出電圧Vdが非反転入力端子に入力されている入力電圧Vi(常態では、基準電圧Vrと同一)と一致するように、出力端子(出力部4c)から出力される出力電圧Voを制御する負帰還動作を実行する。つまり、基準電圧Vrが交流定電圧であることから、演算増幅器4は、検出電圧Vdが基準電圧Vrと同一の交流定電圧となるように(言い換えれば、出力電流Ioが交流定電流として負荷DUTに供給されるように)、負荷DUTの抵抗値が小さいときにはそれに応じて交流電圧である出力電圧Voを低下させ、一方、負荷DUTの抵抗値が大きいときにはそれに応じて出力電圧Voを上昇させる定電流制御動作を実行する。
【0022】
また、本例のように、負荷DUTに対して回路グランドG側に検出抵抗部5が接続される構成では、負荷DUTに印加される印加電圧Vapと検出電圧Vd(=入力電圧Vi)との加算電圧が出力電圧Voとなることから、負荷DUTには、出力電圧Voから入力電圧Vi(=Vd)が減算された電圧(Vo-Vi)が印加電圧Vapとして印加される。この場合、通常状態(第1抵抗分圧部6および電圧制限部7による入力電圧Viに対する電圧制限が行われていない状態)では、入力電圧Viは一定(基準電圧Vrと同一)であることから、印加電圧Vapは出力電圧Voに比例して上昇・低下する。
【0023】
なお、増幅部4は、本例のように1つの演算増幅器で構成される回路構成に限定されるものではなく、入力段に演算増幅器が配置された回路構成である限り、種々の回路構成を採用することができる。例えば、図示はしないが、増幅部4は、入力段の演算増幅器と、この演算増幅器の出力端子に接続された出力段のバッファ回路とを備えた回路構成でもよく、この回路構成では、バッファ回路の出力端子が増幅部4の出力部4cとして機能する。
【0024】
また、本例の電流供給回路1Aでは、負荷接続端子8a,8b間に接続された負荷DUTに対して、この負荷DUTの最大印加電圧を超える電圧が印加されないようにするため、上記したように、第1抵抗分圧部6および電圧制限部7を備えて、演算増幅器4から出力される出力電圧Voを予め規定された所定電圧Vsに制限することで、負荷DUTへの印加電圧Vapを負荷DUTの最大印加電圧よりも低く制限し得る構成を採用している。
【0025】
具体的には、本例では、制限すべき出力電圧Voは、正側電圧領域および負側電圧領域のそれぞれにピーク電圧が現れる交流電圧(印加電圧Vapも同様)であることから、電流供給回路1Aは、第1抵抗分圧部6および電圧制限部7の組として、出力電圧Voの正側のピーク電圧となる正側ピークを含む電圧波形(正側ピークの近傍の電圧波形)を正側の所定電圧Vsaに制限する正側の第1抵抗分圧部6aおよび電圧制限部7aの組と、出力電圧Voの負側のピーク電圧となる負側ピークを含む電圧波形(負側ピークの近傍の電圧波形)を負側の所定電圧Vsb(絶対値が正側の所定電圧Vsaの絶対値と同じ電圧)に制限する負側の第1抵抗分圧部6bおよび電圧制限部7bの組とを備えている。
【0026】
この場合、第1抵抗分圧部6a,6bは、負荷DUTの一対の端子TM1,TM2のうちの増幅部4の出力部4c(本例では、演算増幅器4の出力端子)側の端子(第1端子)TM1と回路グランドGとの間(つまり、負荷DUTの端子TM1が接続される負荷接続端子8aと回路グランドGとの間)に接続されて、出力電圧Voを予め規定されたそれぞれの分圧比で分圧することにより、第1抵抗分圧部6aは第1分圧電圧V1aを出力し、第1抵抗分圧部6bは第1分圧電圧V1bを出力する。
【0027】
第1抵抗分圧部6aは、一例として直列接続された2つの抵抗11a,12aで構成されて、第1抵抗分圧部6aでは、負荷接続端子8aに接続される抵抗11aの抵抗値をR1とし、回路グランドGに接続される抵抗12aの抵抗値をR2としたときに、R2/(R1+R2)で表される分圧比が例えば十数分の一になるように各抵抗値R1,R2(例えば、R1>R2となる数十kΩから数百kΩ程度の抵抗値)が規定されている。この構成により、第1抵抗分圧部6aは、出力電圧Voが高電圧のときであっても、第1分圧電圧V1aを低電圧仕様(例えば、動作電圧が±15Vや±5Vなどの低電圧で、かつ入力電圧も対応する動作電圧の範囲内に含まれるような低電圧に制限される仕様)の演算増幅器やコンパレータ(電圧制限部7aで使用されるような一般的な演算増幅器やコンパレータ)の入力仕様に合致した低い電圧として出力することが可能となっている。
【0028】
また、第1抵抗分圧部6bも第1抵抗分圧部6aと同様にして、直列接続された2つの抵抗11b,12bで構成されて、第1抵抗分圧部6bでは、負荷接続端子8aに接続される抵抗11bの抵抗値をR3とし、回路グランドGに接続される抵抗12bの抵抗値をR4としたときに、R4/(R3+R4)で表される分圧比が例えば十数分の一になるように各抵抗値R3,R4(例えば、R3>R4となる数十kΩから数百kΩ程度の抵抗値)が規定されている。この構成により、第1抵抗分圧部6bも第1抵抗分圧部6aと同様にして、出力電圧Voが高電圧のときであっても、第1分圧電圧V1bを低電圧仕様の演算増幅器やコンパレータ(電圧制限部7bで使用されるような一般的な演算増幅器やコンパレータ)の入力仕様に合致した低い電圧として出力することが可能となっている。
【0029】
なお、本例の電流供給回路1Aでは、第1抵抗分圧部6として、第1抵抗分圧部6aおよび第1抵抗分圧部6bの2つを使用する構成を採用しているが、例えば、第1抵抗分圧部6aおよび第1抵抗分圧部6bの各分圧比が等しいときには、第1抵抗分圧部6aおよび第1抵抗分圧部6bのうちのいずれか1つを電圧制限部7a,7bに共通の第1抵抗分圧部6として使用する構成とすることもできる。また、本例の電流供給回路1Aでは、出力電圧Voが交流電圧であることから、上記したように、正側電圧領域において出力電圧Voの電圧を制限するための第1抵抗分圧部6aおよび電圧制限部7aの組と、負側電圧領域において出力電圧Voの電圧を制限するための第1抵抗分圧部6bおよび電圧制限部7bの組とを備える構成を採用しているが、この構成に限定されるものではない。例えば、基準電圧Vrとして正の直流定電圧が入力されて、出力電圧Voが正の直流電圧のときには、第1抵抗分圧部6aおよび電圧制限部7aの組のみを備え、一方、基準電圧Vrとして負の直流定電圧が入力されて、出力電圧Voが負の直流電圧のときには、第1抵抗分圧部6bおよび電圧制限部7bの組のみを備える構成を採用することもできる。
【0030】
電圧制限部7aは、一例として、コンパレータ21a、設定電圧源22aおよび一方向性素子23aを備えて構成されている。コンパレータ21aは、低電圧仕様の一般的なコンパレータで構成されている。コンパレータ21aの反転入力端子には、第1抵抗分圧部6aから第1分圧電圧V1aが入力されている。なお、コンパレータ21aは、低電圧仕様の一般的な演算増幅器をコンパレータとして使用して(オープンループで使用して)構成することもできる。
【0031】
設定電圧源22aは、正電圧を出力する可変型の正電圧源で構成されて、予め設定された電圧値の正側設定電圧V2a(回路グランドGの電位を基準とする電圧)を生成する。また、設定電圧源22aは、生成した正側設定電圧V2aをコンパレータ21aの非反転入力端子に出力する。また、設定電圧源22aは、電流供給回路1Aの使用者により、正側設定電圧V2aの電圧値を任意に設定可能に構成されている。例えば、出力電圧Voを所定電圧Vsaに制限するときには、設定電圧V2aは、V2a=Vsa×R2/(R1+R2)となるように設定される。
【0032】
一方向性素子23aは、増幅部4の入力部4a(演算増幅器4の非反転入力端子)とコンパレータ21aの出力端子との間に接続されて、入力部4a側からコンパレータ21aの出力端子側へ向かう方向での電流の通過を許容し、かつこの方向とは逆方向での電流の通過を阻止する。本例では一例として、一方向性素子23aは、ディスクリート部品としてのダイオードで構成されいる(以下では、ダイオード23aともいう)。よって、ダイオード23aは、そのアノード端子が入力部4aに接続され、そのカソード端子がコンパレータ21aの出力端子に接続されている。
【0033】
電圧制限部7bは、一例として、コンパレータ21b、設定電圧源22bおよび一方向性素子23bを備えて構成されている。コンパレータ21bは、コンパレータ21aと同じ低電圧仕様の一般的なコンパレータで構成されている。コンパレータ21bの反転入力端子には、第1抵抗分圧部6bから第1分圧電圧V1bが入力されている。なお、コンパレータ21bは、低電圧仕様の一般的な演算増幅器をコンパレータとして使用して(オープンループで使用して)構成することもできる。
【0034】
設定電圧源22bは、負電圧を出力する可変型の負電圧源で構成されて、予め設定された電圧値の負側設定電圧V2b(回路グランドGの電位を基準とする電圧)を生成する。また、設定電圧源22bは、生成した負側設定電圧V2bをコンパレータ21bの非反転入力端子に出力する。また、設定電圧源22bは、電流供給回路1Aの使用者により、負側設定電圧V2bの電圧値を任意に設定可能に構成されている。例えば、出力電圧Voを所定電圧Vsb(負電圧)に制限するときには、設定電圧V2bは、V2b=Vsb×R4/(R3+R4)となるように設定される。
【0035】
一方向性素子23bは、入力部4aとコンパレータ21bの出力端子との間に接続されて、コンパレータ21aの出力端子側から入力部4a側へ向かう方向での電流の通過を許容し、かつこの方向とは逆方向での電流の通過を阻止する。本例では一例として、一方向性素子23bは、一方向性素子23aと同じく、ディスクリート部品としてのダイオードで構成されいる(以下では、ダイオード23bともいう)。よって、ダイオード23bは、そのアノード端子がコンパレータ21aの出力端子に接続され、そのカソード端子が入力部4aに接続されている。
【0036】
なお、一方向性素子23a,23bは、ディスクリート部品としてのダイオードに代えて、図示はしないが、バイポーラ型トランジスタや電界効果型トランジスタを用いて構成することもできる。
【0037】
次に、抵抗測定装置50Aについて説明する。抵抗測定装置50Aは、上記の電流供給回路1A、測定部51および出力部52を備えて構成されている。測定部51は、例えば、A/D変換器およびコンピュータ(いずれも図示せず)を備えて、検出抵抗部5から出力される検出電圧Vdに基づいて出力電流Ioの電流値を測定すると共に、印加電圧Vapの電圧値を測定して、測定した印加電圧Vapの電圧値を測定した出力電流Ioの電流値で除算することにより、負荷DUTの抵抗値Rxを測定(算出)する。また、測定部51は、測定した抵抗値Rxを出力部52に出力する。なお、電流供給回路1Aでは、出力電流Ioの電流値は既知であるため、測定部51は、抵抗値Rxの測定に際して、この既知の電流値をしてもよいのは勿論である。
【0038】
出力部52は、一例として、表示装置で構成されて、測定部51から出力される抵抗値Rxを画面上に表示する(出力する)。なお、出力部52は、表示装置に代えて種々のインターフェース回路で構成することもでき、外部インターフェース回路で構成されたときには、外部インターフェース回路を介して伝送路で接続された外部装置に抵抗値Rxを出力し、また媒体用インターフェース回路で構成されたときには、この媒体用インターフェース回路に接続された記憶媒体に抵抗値Rxを記憶させる。
【0039】
次いで、電流供給回路1Aおよび抵抗測定装置50Aの動作について説明する。なお、前提として、演算増幅器4は、一例として、±50Vを超える動作電圧で動作して、±50Vの電圧範囲内で出力電圧Voを変化させ得るものとする。また、検出抵抗部5は、一例として100Ωの固定抵抗で構成されているものとする。また、基準電圧源9から出力される基準電圧Vrの振幅は、一例として0.1Vであるものとする。これにより、出力電流Ioはその振幅が1mA(=0.1/100)となっていることから、電流供給回路1Aでは、負荷接続端子8a,8b間に接続し得る負荷DUTの最大抵抗値は、約50kΩ(49.9kΩ=(50-0.1)/0.001)となっている。また、第1抵抗分圧部6a,6bの各分圧比は1/10で同一であるものとする。また、各一方向性素子23a,23bでの電圧降下は、理解の容易のためゼロボルトとする。また、測定対象の負荷DUTは、正常なときの抵抗値Rxが例えば10kΩ以上25kΩ以下の正常範囲内に含まれており、最大印加電圧(耐圧)は28Vに規定されているものとする。また、測定対象の負荷DUTでは、異常なときには、その抵抗値Rxが上記の正常範囲を大きく上回る場合があるものとする。
【0040】
まず、この負荷DUTの抵抗測定に先立ち、使用者は、負荷DUTについての印加電圧Vapの最大印加電圧(耐圧)が28Vであることを考慮して、電流供給回路1Aから負荷DUTに印加される印加電圧Vapがこの28Vを超えないようにするため、一例として、出力電圧Voの正側の制限電圧である所定電圧Vsaが+28Vとなり、かつ出力電圧Voの負側の制限電圧である所定電圧Vsbが-28Vとなるように、設定電圧源22aの正側設定電圧V2aおよび設定電圧源22bの負側設定電圧V2bを設定する。上記したように、印加電圧Vapは、出力電圧Voから入力電圧Vi(通常状態では、基準電圧Vrと同一)を減算した電圧であることから、印加電圧Vapの絶対値は、出力電圧Voの絶対値よりも入力電圧Viの絶対値分だけ常に低い値である。このため、出力電圧Voの正側の制限電圧値を印加電圧Vapの正側の最大印加電圧と同じになるようにし、かつ出力電圧Voの負側の制限電圧値を印加電圧Vapの負側の最大印加電圧と同じになるようにすることで、負荷DUTへの印加電圧Vapを最大印加電圧未満に抑えることが可能である。
【0041】
具体的には、第1抵抗分圧部6a,6bの各分圧比は1/10であるため、出力電圧Voの絶対値が28Vのときに第1抵抗分圧部6a,6bから出力される各第1分圧電圧V1a,V1bは、その絶対値が2.8Vになる。よって、使用者は、設定電圧源22a,22bを操作して、正側設定電圧V2aの電圧値を+2.8V(=Vsa×R2/(R1+R2))に設定し、負側設定電圧V2bの電圧値を-2.8V(=Vsb×R4/(R3+R4))に設定する。なお、余裕を持たせて、出力電圧Voの正側の制限電圧値の絶対値を印加電圧Vapの正側の最大印加電圧の絶対値よりも小さくなるようにし、かつ出力電圧Voの負側の制限電圧値の絶対値を印加電圧Vapの負側の最大印加電圧の絶対値よりも小さくなるようにしてもよい(上記の具体例では、制限電圧値の絶対値を例えば、27Vや26Vのようにし、それに合わせて、各設定電圧V2a,V2bの電圧値を+2.7V,-2.7Vや、+2.6V,-2.6Vのようにしてもよい)。
【0042】
次いで、使用者は、測定対象となる複数の負荷DUTのうちの1つを負荷接続端子8a,8b間に接続して、この負荷DUTの抵抗値Rxを測定する。
【0043】
この場合、接続された負荷DUTが正常なものであるとき(抵抗値Rxが上記の正常範囲内のとき)には、電流供給回路1Aでは、演算増幅器4は、検出抵抗部5から出力される検出電圧Vdが入力抵抗3を介して非反転入力端子に入力される入力電圧Vi(常態では、基準電圧Vr)と一致するように、出力端子から出力される出力電圧Voを制御する負帰還動作を実行することで、負荷DUTに流れる出力電流Ioの振幅(電流値)を1mAに制御する。負荷DUTの抵抗値Rxは正常時では10kΩ以上25kΩ以下のため、負荷DUTに1mAの出力電流Ioを供給しているときの出力電圧Voの絶対値は、最大でも25.1V(=25kΩ×1mA+0.1V)となって、各電圧制限部7a,7bでの制限電圧値の絶対値である28Vに達しない。したがって、電流供給回路1Aでは、演算増幅器4は、出力する出力電圧Voについて、電圧制限部7a,7bによる電圧制限を受けることなく、負荷DUTの抵抗値Rxに応じて、図2において符号W1,W2に示すように電圧値を変化させて、負荷DUTに対して規定の電流値(1mA)で出力電流Ioを供給する。
【0044】
これにより、抵抗測定装置50Aでは、測定部51が、検出抵抗部5から出力される検出電圧Vdに基づいて出力電流Ioを測定し、かつ印加電圧Vapを測定して、測定した印加電圧Vapを測定した出力電流Ioで除算することにより、負荷DUTの抵抗値Rxを測定して出力部52に出力する。なお、電流供給回路1Aがこのようにして負荷DUTに対して規定の電流値である1mAの出力電流Ioを供給している状態、つまり、電流供給回路1Aが定電流供給回路として動作しているときには、出力電流Ioの電流値は既知であり、測定部51での測定を省く構成を採用することができる。この場合は、測定部51は、既知である出力電流Ioの電流値と、測定した印加電圧Vapの電圧値とから、負荷DUTの抵抗値Rxを測定する。
【0045】
出力部52は、測定部51から出力される抵抗値Rxを画面上に表示する(出力する)。これにより、負荷接続端子8a,8b間に接続した負荷DUTについての抵抗値Rxの測定が完了する。
【0046】
一方、負荷接続端子8a,8b間に接続された負荷DUTが正常なものではなく、その抵抗値Rxが正常範囲を超える値(例えば、30kΩのような極めて大きな値)のときには、電流供給回路1Aでは、演算増幅器4は、この負荷DUTに対しても規定の電流値の出力電流Ioを供給すべく、検出抵抗部5から出力される検出電圧Vdが入力抵抗3を介して非反転入力端子に入力される入力電圧Vi(常態では、基準電圧Vrと同一電圧)と一致するように、出力端子から出力される出力電圧Voを増加させる制御を実行する。
【0047】
しかしながら、30kΩの負荷DUTに1mAの出力電流Ioを供給し得たときの出力電圧Voの絶対値は、30.1V(=30kΩ×1mA+0.1V)となって、各電圧制限部7a,7bでの制限電圧値の絶対値である28Vを超えることになる。したがって、電流供給回路1Aでは、演算増幅器4が、正側の電圧領域において上昇する入力電圧Vi(基準電圧Vrと同一電圧)に応じて、その出力電圧Voを正側の電圧領域において上昇させている状態において、入力電圧Vi(基準電圧Vr)が正側ピークに達する手前で、出力電圧Voの電圧値が28Vに達する。また、第1抵抗分圧部6aから出力される第1分圧電圧V1aは、+2.8V、つまり設定電圧源22aに設定された正側設定電圧V2aに達する。
【0048】
このようにして、入力電圧Vi(基準電圧Vr)が正側ピークに達する手前で、上昇する出力電圧Voの電圧値が28Vに達した時点(例えば図2中の時刻t1)から、入力電圧Vi(基準電圧Vr)が、電圧制限部7aによる電圧制限を受けないとしたときに、図2において破線で示すように正側ピークを過ぎて低下して、これに伴って低下する出力電圧Voの電圧値が28Vにまで低下する時点(例えば図2中の時刻t2)までの期間(第1分圧電圧V1aの絶対値が正側設定電圧V2aの絶対値を上回る期間)では、演算増幅器4および電圧制限部7aが以下のように動作することで、図2に示すように、出力電圧Voを所定電圧Vsa(本例では、+28V)に制限する。
【0049】
演算増幅器4からの出力電圧Voが上昇して+28Vに達し、その直後に+28Vを若干超えた時点で、電圧制限部7aでは、第1抵抗分圧部6aからコンパレータ21aの反転入力端子に出力されている第1分圧電圧V1aが、設定電圧源22aからコンパレータ21aの非反転入力端子に出力されている正側設定電圧V2a(+2.8V)を超える。このため、コンパレータ21aは、その出力端子(ダイオード23aのカソード端子が接続されている端子)の電圧(出力電圧)を、その正側の動作電圧とほぼ同等の正電圧からその負側の動作電圧とほぼ同等の負電圧に向けて低下させる。
【0050】
この場合、ダイオード23aのアノード端子の電圧は、正の電圧となっている入力電圧Vi(基準電圧Vr)であることから、コンパレータ21aの出力端子の電圧が負側の電圧になった時点で、ダイオード23aが非導通状態から導通状態に移行する。これにより、入力電圧Viは、コンパレータ21aにより、導通状態のダイオード23aを介して強制的に低下させられる。このとき、演算増幅器4は、低下する入力電圧Viに、反転入力端子に入力されている検出電圧Vdを一致させるべく、その出力電圧Voを低下させる。
【0051】
その後、出力電圧Voが+28Vを若干下回る状態まで低下させられた時点で、電圧制限部7aでは、第1抵抗分圧部6aからコンパレータ21aの反転入力端子に出力されている第1分圧電圧V1aが、設定電圧源22aからコンパレータ21aの非反転入力端子に出力されている正側設定電圧V2a(+2.8V)を下回る。このため、コンパレータ21aは、その出力端子(ダイオード23aのカソード端子が接続されている端子)の電圧(出力電圧)を、再度、その正側の動作電圧とほぼ同等の正電圧に向けて上昇させる。
【0052】
この場合、ダイオード23aのアノード端子の電圧は、正の電圧となっている入力電圧Vi(基準電圧Vr)であるが、その値(絶対値が1V未満)はコンパレータ21aの正側の動作電圧(+15V)よりも低いことから、ダイオード23aのカソード端子の電圧は短時間にアノード端子の電圧を超えて、ダイオード23aは導通状態から非導通状態に移行する。これにより、入力電圧Viは基準電圧Vrと同じ電圧になるように上昇する。このとき、演算増幅器4は、上昇する入力電圧Viに、反転入力端子に入力されている検出電圧Vdを一致させるべく、その出力電圧Voを上昇させる。これにより、上昇する出力電圧Voは再度+28Vに達する。
【0053】
以後、入力電圧Vi(基準電圧Vr)が正側ピークを過ぎて低下して、この入力電圧Viに基づいて演算増幅器4が出力する正電圧の出力電圧Voも正側の所定電圧Vsaを下回る状態になるまで、演算増幅器4および電圧制限部7aがこの動作を繰り返すことで、出力電圧Voが所定電圧Vsa(本例では、+28V)に連続して制限される。
【0054】
また、電流供給回路1Aは、入力電圧Viに基づいて演算増幅器4が出力する正電圧の出力電圧Voが正側の所定電圧Vsaを下回る状態になった以降であって、後述するように負側の電圧領域において出力電圧Voの電圧値が-28Vに達するまでの間では、上記した負荷DUTが正常なものであるときと同様に、電圧制限部7a,7bによる電圧制限を受けることなく、負荷DUTの抵抗値Rxに応じて出力電圧Voの電圧値を変化させて、負荷DUTに対して規定の電流値(1mA)で出力電流Ioを供給する。
【0055】
また、電流供給回路1Aでは、演算増幅器4が、負側の電圧領域において、低下する入力電圧Vi(基準電圧Vrと同一電圧)に応じて、その出力電圧Voを負側の電圧領域において低下させている状態において、入力電圧Vi(基準電圧Vr)が負側ピークに達する手前で、出力電圧Voの電圧値が-28Vに達する。また、第1抵抗分圧部6bから出力される第1分圧電圧V1bは、-2.8V、つまり設定電圧源22bに設定された負側設定電圧V2bに達する。
【0056】
このようにして、入力電圧Vi(基準電圧Vr)が負側ピークに達する手前で、低下する出力電圧Voの電圧値が-28Vに達した時点(例えば図2中の時刻t3)から、入力電圧Vi(基準電圧Vr)が、電圧制限部7bによる電圧制限を受けないとしたときに、図2において破線で示すように負側ピークを過ぎて上昇して、これに伴って上昇する出力電圧Voの電圧値が-28Vにまで上昇する時点(例えば図2中の時刻t4)までの期間(第1分圧電圧V1bの絶対値が負側設定電圧V2bの絶対値を上回る期間)では、演算増幅器4および電圧制限部7bが以下のように動作することで、図2に示すように、出力電圧Voを所定電圧Vsb(本例では、-28V)に制限する。
【0057】
演算増幅器4からの出力電圧Voが低下して-28Vに達し、その直後に-28Vを若干下回った時点で、電圧制限部7bでは、第1抵抗分圧部6bからコンパレータ21bの反転入力端子に出力されている第1分圧電圧V1bが、設定電圧源22bからコンパレータ21bの非反転入力端子に出力されている負側設定電圧V2b(-2.8V)を下回る。このため、コンパレータ21bは、その出力端子(ダイオード23bのアノード端子が接続されている端子)の電圧(出力電圧)を、その負側の動作電圧とほぼ同等の負電圧からその正側の動作電圧とほぼ同等の正電圧に向けて上昇させる。
【0058】
この場合、ダイオード23bのアノード端子の電圧は、負の電圧となっている入力電圧Vi(基準電圧Vr)であることから、コンパレータ21bの出力端子の電圧が正側の電圧になった時点で、ダイオード23bが非導通状態から導通状態に移行する。これにより、入力電圧Viは、コンパレータ21bにより、導通状態のダイオード23bを介して強制的に上昇させられる。このとき、演算増幅器4は、上昇する入力電圧Viに、反転入力端子に入力されている検出電圧Vdを一致させるべく、その出力電圧Voを上昇させる。
【0059】
その後、出力電圧Voが-28Vを若干上回る状態まで上昇させられた時点で、電圧制限部7bでは、第1抵抗分圧部6bからコンパレータ21bの反転入力端子に出力されている第1分圧電圧V1bが、設定電圧源22bからコンパレータ21bの非反転入力端子に出力されている負側設定電圧V2b(-2.8V)を上回る。このため、コンパレータ21bは、その出力端子(ダイオード23bのアノード端子が接続されている端子)の電圧(出力電圧)を、再度、その負側の動作電圧とほぼ同等の負電圧に向けて低下させる。
【0060】
この場合、ダイオード23bのカソード端子の電圧は、負の電圧となっている入力電圧Vi(基準電圧Vr)であるが、その値(絶対値が1V未満)はコンパレータ21bの負側の動作電圧(-15V)よりも低いことから、ダイオード23bのアノード端子の電圧は短時間にカソード端子の電圧を下回って、ダイオード23bは導通状態から非導通状態に移行する。これにより、入力電圧Viは基準電圧Vrと同じ電圧になるように低下する。このとき、演算増幅器4は、低下する入力電圧Viに、反転入力端子に入力されている検出電圧Vdを一致させるべく、その出力電圧Voを低下させる。これにより、低下する出力電圧Voは再度-28Vに達する。
【0061】
以後、入力電圧Vi(基準電圧Vr)が負側ピークを過ぎて上昇して、この入力電圧Viに基づいて演算増幅器4が出力する負電圧の出力電圧Voも負側の所定電圧Vsbを上回る状態になるまで、演算増幅器4および電圧制限部7bがこの動作を繰り返すことで、出力電圧Voが所定電圧Vsb(本例では、-28V)に連続して制限される。
【0062】
また、電流供給回路1Aは、入力電圧Viに基づいて演算増幅器4が出力する負電圧の出力電圧Voが負側の所定電圧Vsaを上回る状態になった以降であって、上記したように正側の電圧領域において出力電圧Voの電圧値が+28Vに達するまでの間では、上記した負荷DUTが正常なものであるときと同様に、電圧制限部7a,7bによる電圧制限を受けることなく、負荷DUTの抵抗値Rxに応じて出力電圧Voの電圧値を変化させて、負荷DUTに対して規定の電流値(1mA)で出力電流Ioを供給する。
【0063】
このように、この電流供給回路1A、およびこの電流供給回路1Aを備えた抵抗測定装置50Aによれば、電流供給回路1Aを構成する増幅部4の出力部4c(演算増幅器4の出力端子)と回路グランドGとの間に接続された負荷DUTに対して印加電圧Vapを印加することで負荷DUTに出力電流Ioを供給可能としつつ、出力電圧Voを低電圧である第1分圧電圧V1a,V1bに分圧して電圧制限部7(7a,7b)に出力する第1抵抗分圧部6(6a,6b)を備えたことにより、電圧制限部7(7a,7b)を低電圧仕様の半導体部品としての低電圧仕様のコンパレータ21a,21bで構成し得るようにでき、これによって高電圧仕様の半導体部品(高電圧仕様の演算増幅器やコンパレータなど)の使用を回避することができる。
【0064】
また、この電流供給回路1A、およびこの電流供給回路1Aを備えた抵抗測定装置50Aによれば、負荷DUTにおける回路グランドG側の第2端子TM2(負荷接続端子8b)と回路グランドGとの間に接続されて出力電流Ioを検出電圧Vdに変換して出力する検出抵抗部5を備え、増幅部4は、入力部4aとしての非反転入力端子に入力電圧Viが入力され、反転入力端子に検出電圧Vdが入力され、かつ出力端子が出力部4cに接続された(出力端子が出力部4cとして機能する)演算増幅器4を備えたことにより、電圧制限部7(7a,7b)での高電圧仕様の半導体部品(高電圧仕様の演算増幅器やコンパレータなど)の使用を回避しつつ、負荷DUTに対して出力電流Ioを正確な定電流として供給することができる。また、これにより、この抵抗測定装置50によれば、負荷DUTの抵抗値Rxを十分な精度で測定することができる。
【0065】
なお、上記の電流供給回路1Aでは、負荷DUTにおける回路グランドG側の第2端子TM2(負荷接続端子8b)と回路グランドGとの間に検出抵抗部5を接続する構成を採用しているが、この構成に限定されない。例えば、図3に示す電流供給回路1Bのように、増幅部4の出力部4cと負荷DUTの第1端子TM1(負荷接続端子8a)との間に検出抵抗部5を接続し、かつ負荷DUTの第2端子TM2(負荷接続端子8b)を回路グランドGに接続する構成を採用することもできる。以下、この電流供給回路1B、およびこの電流供給回路1Bを備えた抵抗測定装置50Bについて説明する。なお、電流供給回路1Aおよび抵抗測定装置50Aと同一の構成については同一の符号を付して重複する説明を省略する。また、抵抗測定装置50Aと同様の動作についても重複する説明を省略する。
【0066】
まず、電流供給回路1Bの構成について図3を参照して説明する。
【0067】
電流供給回路1Bは、電圧入力端子2、入力抵抗3、増幅部4、検出抵抗部5、第1抵抗分圧部6(6a,6b,6c)、電圧制限部7(7a,7b)、負荷接続端子8a,8b、第2抵抗分圧部31、および差動増幅部32を備えて、電圧入力端子2に入力される基準電圧Vrを増幅部4で増幅して負荷接続端子8a,8b間に接続された負荷DUTに対して印加電圧Vap(負荷DUTの両端間電圧)として印加することにより、負荷DUTに対して定電流である出力電流Ioを供給可能に構成されている。
【0068】
この電流供給回路1Bでは、上記したように、検出抵抗部5は、増幅部4の出力部4cと負荷DUTの第1端子TM1(負荷接続端子8aでもある)との間に接続されている。また、第1抵抗分圧部6として、電流供給回路1Aでの第1抵抗分圧部6a,6bに加えて、第1抵抗分圧部6cを備えている。
【0069】
第1抵抗分圧部6cは、第1抵抗分圧部6a,6bと同様にして、直列接続された2つの抵抗11c,12cで構成されて、第1分圧電圧V1cを出力する。この電流供給回路1Bでは、負荷DUTの第2端子TM2が接続される負荷接続端子8bは回路グランドGに接続されていることから、第1抵抗分圧部6としての各第1抵抗分圧部6a,6b,6cは、印加電圧Vapをそれぞれの分圧比で分圧して、第1分圧電圧V1a,V1b,V1cを出力する。
【0070】
また、第1抵抗分圧部6cでは、負荷接続端子8aに接続される抵抗11cの抵抗値をR5とし、回路グランドGに接続される抵抗12cの抵抗値をR6としたときに、R6/(R5+R6)で表される分圧比が例えば十数分の一になるように各抵抗値R5,R6(例えば、R5>R6となる数十kΩから数百kΩ程度の抵抗値)が規定されている。この構成により、第1抵抗分圧部6cは、第1抵抗分圧部6a,6bと同様にして、出力電圧Voおよび印加電圧Vapが高電圧のときであっても、第1分圧電圧V1cを低電圧仕様の演算増幅器やコンパレータ(差動増幅部32で使用されるような一般的な演算増幅器)の入力仕様に合致した低い電圧として出力することが可能となっている。なお、第1抵抗分圧部6cについては、その分圧比を第1抵抗分圧部6a,6bのうちの一方の第1抵抗分圧部6の分圧比に揃えることで、この一方の第1抵抗分圧部6で兼用してもよい。さらに、各第1抵抗分圧部6a,6b,6cの分圧比を揃えることで、第1抵抗分圧部6a,6b,6cを1つの第1抵抗分圧部6としてもよい。
【0071】
第2抵抗分圧部31は、直列接続された2つの抵抗13,14で構成されると共に、第増幅部4の出力部4c(本例では、演算増幅器4の出力端子)と回路グランドGとの間に接続されて、出力電圧Voを予め規定された分圧比(第1抵抗分圧部6cと同じ分圧比)で分圧することにより、第2分圧電圧V3を出力する。また、第2抵抗分圧部31では、出力部4cに接続される抵抗13の抵抗値をR7とし、回路グランドGに接続される抵抗14の抵抗値をR8としたときに、R8/(R7+R8)で表される分圧比が第1抵抗分圧部6cと同じ分圧比になるように各抵抗値R7,R8(例えば、R7>R8となる数十kΩから数百kΩ程度の抵抗値)が規定されている。この構成により、第2抵抗分圧部31は、第1抵抗分圧部6a,6b,6cと同様にして、出力電圧Voが高電圧のときであっても、第2分圧電圧V3を低電圧仕様の演算増幅器(差動増幅部32で使用されるような一般的な演算増幅器)の入力仕様に合致した低い電圧として出力することが可能となっている。また、このようにして、第1抵抗分圧部6cおよび第2抵抗分圧部31の分圧比が同一であることから、第2分圧電圧V3と第1分圧電圧V1cとの差電圧は、出力電流Ioが流れることによって検出抵抗部5の両端間に発生する電圧に比例した電圧となっている。
【0072】
差動増幅部32は、例えば、入力段に低電圧仕様の演算増幅器32aが配置されて構成されて、この演算増幅器32aの非反転入力端子に入力される第2分圧電圧V3と、反転入力端子に入力される第1分圧電圧V1cとの差電圧を予め規定された増幅率で増幅して、検出電圧Vdとして入力部4bに出力する。つまり、電流供給回路1Bでは、第1抵抗分圧部6c、第2抵抗分圧部31および差動増幅部32が検出抵抗部5と相俟って、負荷DUTに流れる出力電流Ioを検出電圧Vdに変換して、入力部4bとしての演算増幅器4の反転入力端子に出力する。
【0073】
この抵抗測定装置50Bでも、測定部51が、抵抗測定装置50Aのときと同様に動作して、検出電圧Vdに基づいて出力電流Ioを測定し、かつ印加電圧Vapを測定して、測定した印加電圧Vapを測定した出力電流Ioで除算することにより、負荷DUTの抵抗値Rxを測定して出力部52に出力する。また、出力部52が、測定部51から出力される抵抗値Rxを画面上に表示する(出力する)。これにより、負荷接続端子8a,8b間に接続した負荷DUTについての抵抗値Rxの測定が実行される。なお、抵抗測定装置50Bでは、負荷接続端子8aと回路グランドGとの間に第1抵抗分圧部6a,6b,6cが接続される構成であることから、第1抵抗分圧部6a,6b,6cが負荷DUTと並列に接続された状態となる。このため、検出電圧Vdに基づいて測定される出力電流Ioには、負荷DUTに流れる電流だけでなく、第1抵抗分圧部6a,6b,6cに流れる電流も含まれるが、負荷DUTの抵抗値Rxに対して第1抵抗分圧部6a,6b,6cを構成する各抵抗の直列抵抗値を十分に大きくすることで、負荷DUTに対してほぼ定電流に状態で出力電流Ioを供給することができることから、必要な精度での抵抗値Rxの測定が可能となる。
【0074】
このように、この電流供給回路1Bおよびこの抵抗測定装置50Aにおいても、電流供給回路1Bを構成する増幅部4の出力部4c(演算増幅器4の出力端子)と回路グランドGとの間に接続された負荷DUTに対して印加電圧Vapを印加することで負荷DUTに出力電流Ioを定電流に近い状態で供給可能としつつ、出力電圧Voおよび印加電圧Vapを低電圧である第2分圧電圧V3および第1分圧電圧V1a,V1b,V1cに分圧して差動増幅部32および電圧制限部7(7a,7b)に出力する第2抵抗分圧部31および第1抵抗分圧部6(6a,6b,6c)を備えたことにより、差動増幅部32および電圧制限部7(7a,7b)を低電圧仕様の半導体部品としての低電圧仕様の演算増幅器32aおよびコンパレータ21a,21bで構成し得るようにでき、これによって高電圧仕様の半導体部品(高電圧仕様の演算増幅器やコンパレータなど)の使用を回避することができる。
【符号の説明】
【0075】
1A,1B 電流供給回路
3 入力抵抗
4 増幅部
4a 入力部
4c 出力部
5 抵抗検出部
6a,6b,6c 第1抵抗分圧部
7a,7b 電圧制限部
31 第2抵抗分圧部
32 差動増幅部
50A,50B 抵抗測定装置
51 測定部
DUT 負荷
G 回路グランド
Io 出力電流
TM1 第1端子
TM2 第2端子
V1a,V1b,V1c 第1分圧電圧
V2a,V2b 設定電圧
V3 第2分圧電圧
Vap 印加電圧
Vd 検出電圧
Vi 入力電圧
Vo 出力電圧
図1
図2
図3