(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-25
(45)【発行日】2023-09-04
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/861 20060101AFI20230828BHJP
H01L 29/868 20060101ALI20230828BHJP
H01L 29/872 20060101ALI20230828BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20230828BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20230828BHJP
H01L 29/739 20060101ALI20230828BHJP
H01L 21/8234 20060101ALI20230828BHJP
H01L 27/06 20060101ALI20230828BHJP
H01L 27/088 20060101ALI20230828BHJP
H01L 29/43 20060101ALI20230828BHJP
H01L 29/41 20060101ALI20230828BHJP
【FI】
H01L29/91 D
H01L29/86 301F
H01L29/91 K
H01L29/78 657D
H01L29/78 653A
H01L29/78 652P
H01L29/06 301F
H01L29/06 301V
H01L29/78 655B
H01L29/78 655F
H01L27/06 102A
H01L27/088 E
H01L29/46
H01L29/44 L
(21)【出願番号】P 2020048761
(22)【出願日】2020-03-19
【審査請求日】2021-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】末代 知子
(72)【発明者】
【氏名】糸数 裕子
(72)【発明者】
【氏名】河村 圭子
(72)【発明者】
【氏名】岩鍜治 陽子
(72)【発明者】
【氏名】布施 香織
【審査官】石塚 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-055079(JP,A)
【文献】国際公開第2011/105434(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0025283(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0228723(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0065814(US,A1)
【文献】特開平11-112005(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0081147(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/861
H01L 29/872
H01L 29/78
H01L 29/06
H01L 29/739
H01L 21/8234
H01L 29/43
H01L 29/41
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電形の第1半導体層と、第2導電形の第2半導体層と、前記第2導電形の第3半導体層と、を含む半導体部と、
前記半導体部の裏面上に設けられた第1電極と、
前記半導体部の表面上に設けられた第2電極と、
前記半導体部と前記第2電極との間において、前記半導体部中に設けられ、前記半導体部から第1絶縁膜により電気的に絶縁され、前記半導体部の表面に沿った方向に延在する第3電極と、
を備え、
前記第1半導体層は、前記第1電極と前記第2電極との間に延在し、
前記第2半導体層は、前記第1半導体層と前記第2電極との間に設けられ、
前記第3半導体層は、前記第2半導体層と前記第2電極との間に設けられ、前記第2半導体層の第2導電形不純物の濃度よりも高濃度の第2導電形不純物を含み、
前記第2電極は、前記半導体部の前記表面から前記第2半導体層中に延在する
複数の埋め込みコンタクト部と、前記半導体部の前記表面に接する表面コンタクト部と、を含み、
前記
複数の埋め込みコンタクト部は、
前記第3電極の延在方向に並び、前記第2半導体層に接し、前記表面コンタクト部は、前記第3半導体層に接した半導体装置。
【請求項2】
前記第3半導体層は、前記複数の埋め込みコンタクト部のうちの隣り合う2つの埋め込みコンタクト部の間に設けられる請求項
1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記埋め込みコンタクト部は、前記第1電極から前記第2電極に向かう第1方向の第1位置において、前記半導体部の前記表面に沿った第2方向の第1幅を有し、前記第1位置と前記第1方向に並んだ第2位置において、前記第2方向の第2幅を有し、
前記第1位置は、前記第2位置と前記第1電極との間に位置し、前記第1幅は、前記第2幅よりも広い請求項1
または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記埋め込みコンタクト部は、前記第1電極から前記第2電極に向かう第1方向の第1位置において、前記半導体部の前記表面に沿った第2方向の第1幅を有し、前記第1位置と前記第1方向に並んだ第2位置において、前記第2方向の第2幅を有し、
前記第1位置は、前記第2位置と前記第1電極との間に位置し、前記第1幅は、前記第2幅よりも狭い請求項1
または2に記載の半導体装置。
【請求項5】
第1導電形の第1半導体層と、第2導電形の第2半導体層と、を含む半導体部と、
前記半導体部の裏面上に設けられた第1電極と、
前記半導体部の表面上に設けられた第2電極と、
前記半導体部と前記第2電極との間において、前記半導体部中に設けられ、前記半導体部から第1絶縁膜により電気的に絶縁され、前記半導体部の表面に沿った方向に延在する第3電極と、
を備え、
前記第1半導体層は、前記第1電極と前記第2電極との間に延在し、
前記第2半導体層は、前記第1半導体層と前記第2電極との間に設けられ、
前記第2電極は、前記半導体部の前記表面から前記第2半導体層中に延在し、前記第2半導体層に接した
複数の第1金属部と、前記半導体部の前記表面において前記第2半導体層に接し、前記第1金属部とは異なる種類の金属を含む第2金属部
と、を含み、
前記複数の第1金属部は、前記第3電極の延在方向に並ぶ、半導体装置。
【請求項6】
前記第1金属部は、前記第1電極から前記第2電極に向かう第1方向の第1位置において、前記半導体部の前記表面に沿った第2方向の第1幅を有し、前記第1位置と前記第1
方向に並んだ第2位置において、前記第2方向の第2幅を有し、
前記第1位置は、前記第2位置と前記第1電極との間に位置し、前記第1幅は、前記第2幅よりも広い請求項
5記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1金属部は、前記第1電極から前記第2電極に向かう第1方向の第1位置において、前記半導体部の前記表面に沿った第2方向の第1幅を有し、前記第1位置と前記第1方向に並んだ第2位置において、前記第2方向の第2幅を有し、
前記第1位置は、前記第2位置と前記第1電極との間に位置し、前記第1幅は、前記第2幅よりも狭い請求項
5記載の半導体装置。
【請求項8】
第1導電形の第1半導体層と、第2導電形の第2半導体層と、を含む半導体部と、
前記半導体部の裏面上に設けられた第1電極と、
前記半導体部の表面上に設けられ、前記半導体部の前記表面から前記第2半導体層中に延在し、前記第2半導体層に接した
複数の埋め込みコンタクト部を含む第2電極と、
前記半導体部と前記第2電極との間において、前記半導体部中に設けられ、前記半導体部から第1絶縁膜により電気的に絶縁され、前記半導体部の表面に沿った方向に延在する第3電極と、
前記第2電極の前記複数の埋め込みコンタクト部と前記第2半導体層との間に選択的に設けられ、前記
複数の埋め込みコンタクト部
のそれぞれの一部に接した合金層と、
を備え、
前記第1半導体層は、前記第1電極と前記第2電極との間に延在し、
前記第2半導体層は、前記第1半導体層と前記第2電極との間に設けられ、
前記第2電極の前記複数の埋め込みコンタクト部は、前記前記第3電極の延在方向に並び、
前記合金層は、前記
複数の埋め込みコンタクト部
のそれぞれと前記第1電極との間に位置する半導体装置。
【請求項9】
前記半導体部は、シリコンを含み、
前記合金層は、シリサイドを含む請求項
8記載の半導体装置。
【請求項10】
前記埋め込みコンタクト部は、前記第1電極から前記第2電極に向かう第1方向の第1位置において、前記半導体部の前記表面に沿った第2方向の第1幅を有し、前記第1位置と前記第1方向に並んだ第2位置において、前記第2方向の第2幅を有し、
前記第1位置は、前記第2位置と前記第1電極との間に位置し、前記第1幅は、前記第2幅よりも広い請求項
8または
9に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記埋め込みコンタクト部は、前記第1電極から前記第2電極に向かう第1方向の第1位置において、前記半導体部の前記表面に沿った第2方向の第1幅を有し、前記第1位置と前記第1方向に並んだ第2位置において、前記第2方向の第2幅を有し、
前記第1位置は、前記第2位置と前記第1電極との間に位置し、前記第1幅は、前記第2幅よりも狭い請求項
8または
9に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記半導体部は、前記第1半導体層と前記第1電極との間に設けられ、前記第1半導体層の第1導電形不純物よりも高濃度の第1導電形不純物を含む第1導電形の第4半導体層をさらに含む請求項1~
11のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項13】
前記第3電極は、前記第2電極と前記第3電極との間に制御電圧を印可できるように構成される、請求項1~12のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項14】
前記制御電圧は、前記第1半導体層と前記第1絶縁膜との界面に、第2導電形の反転層を誘起するように印可される請求項13記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力用半導体装置には、オン抵抗を増加させることなく、スイッチング損失を低減することが求められる。例えば、還流ダイオードでは、オン状態からオフ状態に移行する際のリカバリ損失を低減することが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実施形態は、リカバリ損失を効果的に低減できる半導体装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る半導体装置は、半導体部と、前記半導体部の裏面上に設けられた第1電極と、前記半導体部の表面上に設けられた第2電極と、前記半導体部と前記第2電極との間において、前記半導体部中に設けられ、前記半導体部から第1絶縁膜により電気的に絶縁され、前記半導体部の表面に沿った方向に延在する第3電極と、を備える。前記半導体部は、第1導電形の第1半導体層と、第2導電形の第2半導体層と、前記第2導電形の第3半導体層と、を含む。前記第1半導体層は、前記第1電極と前記第2電極との間に延在し、前記第2半導体層は、前記第1半導体層と前記第2電極との間に設けられる。前記第3半導体層は、前記第2半導体層と前記第2電極との間に設けられ、前記第2半導体層の第2導電形不純物の濃度よりも高濃度の第2導電形不純物を含む。前記第2電極は、前記半導体部の前記表面から前記第2半導体層中に延在する複数の埋め込みコンタクト部と、前記半導体部の前記表面に接する表面コンタクト部と、を含む。前記複数の埋め込みコンタクト部は、前記第3電極の延在方向に並び、前記第2半導体層に接し、前記表面コンタクト部は、前記第3半導体層に接する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態に係る半導体装置を示す模式断面図である。
【
図2】第1実施形態の変形例に係る半導体装置を示す模式断面図である。
【
図3】第2実施形態に係る半導体装置を示す模式断面図である。
【
図4】第2実施形態の変形例に係る半導体装置を示す模式断面図である。
【
図5】第2実施形態の別の変形例に係る半導体装置を示す模式断面図である。
【
図6】第2実施形態の他の変形例に係る半導体装置を示す模式断面図である。
【
図7】第3実施形態に係る半導体装置を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。図面中の同一部分には、同一番号を付してその詳しい説明は適宜省略し、異なる部分について説明する。なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
【0008】
さらに、各図中に示すX軸、Y軸およびZ軸を用いて各部分の配置および構成を説明する。X軸、Y軸、Z軸は、相互に直交し、それぞれX方向、Y方向、Z方向を表す。また、Z方向を上方、その反対方向を下方として説明する場合がある。
【0009】
(第1実施形態)
図1(a)および(b)は、第1実施形態に係る半導体装置1を示す模式断面図である。半導体装置1は、例えば、PINダイオードである。
図1(a)は、
図1(b)中に示すA-A線に沿った断面図である。
図1(b)は、
図1(a)中に示すB-B線に沿った断面図である。
【0010】
半導体装置1は、半導体部10と、第1電極20と、第2電極30と、第3電極40と、を備える。半導体部10は、第1電極20と第2電極30との間に設けられる。第3電極40は、半導体部10の表面側に設けられたトレンチFTの内部に配置される。第2電極30は、第3電極40の上方に位置する。
【0011】
半導体部10は、第1導電形の第1半導体層11と、第2導電形の第2半導体層13と、第2導電形の第3半導体層15と、第1導電形の第4半導体層17と、を含む。半導体部10は、例えば、シリコンである。以下、第1導電形を「n形」、第2導電形を「p形」として説明する。
【0012】
第1半導体層11は、第1電極20と第2電極30との間に延在する。第1半導体層11は、例えば、1×1012~1×1015cm-2の濃度の第1導電形不純物を含む。第1半導体層11の不純物濃度は、例えば、所望の耐圧が得られるように設定される。第1半導体層11は、例えば、第1電極20から第2電極30に向かう方向(Z方向)において、1~1000μmの厚さを有する。第1半導体層11の厚さは、例えば、所望の耐圧が得られる厚さに設定される。
【0013】
第2半導体層13は、第1半導体層と第2電極30との間に設けられる。第2半導体層13は、例えば、p形アノード層である。第2半導体層13は、例えば、面密度1×1012~1×1014cm-2のp形不純物を含む。第2半導体層13は、例えば、Z方向において、0.1~数μmの厚さを有する。
【0014】
第3半導体層15は、第2半導体層13と第2電極30との間に設けられる。第3半導体層15は、第2半導体層13の第2導電形不純物よりも高濃度の第2導電形不純物を含む。第3半導体層15は、例えば、p+形コンタクト層である。第3半導体層15は、例えば、面密度1×1013~1×1015cm-2の第1導電形不純物を含む。第3半導体層15は、例えば、Z方向において、0.1~10μmの厚さを有する。
【0015】
第4半導体層17は、第1半導体層11と第1電極20との間に設けられる。第4半導体層17は、第1半導体層11の第1導電形不純物の濃度よりも高濃度の第1導電形不純物を含む。第4半導体層17は、例えば、n形カソード層である。第4半導体層17は、例えば、面密度1×1013~1×1015cm-2の第1導電形不純物を含む。また、第4半導体層17は、例えば、Z方向において、0.1~10μmの厚さを有する。
【0016】
第1電極20は、例えば、カソード電極であり、半導体部10の裏面上に設けられる。第1電極20は、第4半導体層17に接し、例えば、オーミック接続される。第1電極20は、例えば、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、金(Au)、ポリシリコン等の群から選ばれる少なくとも1つの元素を含む金属層である。
【0017】
第2電極30は、例えば、アノード電極であり、半導体部10の表面上に設けられる。第2電極30は、例えば、アルミニウム(Al)、金(Au)、ポリシリコン等の群から選ばれる少なくとも1つの元素を含む。
【0018】
第3電極40は、例えば、導電性のポリシリコンであり、半導体部10の表面から第1半導体層11中に延在する。第3電極40は、絶縁膜43により半導体部10から電気的に絶縁される。また、第3電極40は、例えば、層間絶縁膜45により第2電極30から電気的に絶縁される。絶縁膜43および層間絶縁膜45は、例えば、シリコン酸化膜である。
【0019】
第2半導体層13は、例えば、絶縁膜43を介して、第3電極40に向き合うように設けられる。また、第3半導体層13も、絶縁膜43を介して、第3電極40に向き合うように設けられる。
【0020】
図1(a)に示すように、第2金属層30は、例えば、埋め込みコンタクト部35pと、表面コンタクト部35qと、を含む。埋め込みコンタクト部35pは、例えば、半導体部10の表面から第2半導体層13中に至る深さのコンタクトトレンチの内部に埋め込まれる。表面コンタクト部35qは、例えば、半導体部10の表面に露出された第3半導体層15に接する。なお、半導体部10の「表面」とは、コンタクトトレンチの内面を除いた表面である。
【0021】
例えば、第2半導体層13と第3半導体層15との間の第2導電形不純物の濃度の違いにより、埋め込みコンタクト部35pは、第2半導体層13にショットキ接続され、表面コンタクト部35qは、第3半導体層15にオーミック接続される。言い換えれば、埋め込みコンタクト部35pから第2半導体層13に注入される正孔に対するポテンシャル障壁は、表面コンタクト部35qから第3半導体層15に注入される正孔に対するポテンシャル障壁よりも高い。
【0022】
図1(b)に示すように、第3電極40は、例えば、半導体部10の表面に沿ったY方向に延在する。埋め込みコンタクト部35pは、複数設けられ、Y方向に並べて配置される。
【0023】
第3半導体層15は、埋め込みコンタクト部35pと絶縁膜43との間に設けられると共に、複数の埋め込みコンタクト部35pのうちの隣り合う2つの間にも設けられる。表面コンタクト部35qは、Y方向に延在し、
図1(b)中に示す破線間のコンタクト領域CRにおいて、第3半導体層15に接する。
【0024】
図2(a)および(b)は、第1実施形態の変形例に係る半導体装置2および3を示す模式断面図である。
図2(a)および(b)は、
図1(b)の断面に対応する断面を示す模式図である。
【0025】
図2(a)に示すように、第3半導体層15は、複数の埋め込みコンタクト部35pのうちの隣り合う部分に設けられる。第2半導体層13は、埋め込みコンタクト部35pと絶縁膜43との間に位置する部分を含む。
【0026】
表面コンタクト部35qは、コンタクト領域CRにおいて、第2半導体層13および第3半導体層15の両方に接する。表面コンタクト部35qは、第3半導体層15にオーミック接続される部分を含むと共に、第2半導体層13にショットキ接続される部分も含む。
【0027】
例えば、第2電極30は、第3半導体層15に接する第1面積と、第2半導体層13に接する第2面積と、を有し、第1面積の第2面積に対する比率を、半導体装置1に比べて小さくすることができる。すなわち、第2電極30から第3半導体層5を介して第2半導体層13に注入される正孔を減らすことができる。
【0028】
図2(a)に示すように、埋め込みコンタクト部35pは、第3電極40に沿って、Y方向に連続的に延在するように設けられても良い。表面コンタクト部35qは、埋め込みコンタクト部35pと絶縁膜43との間に設けられた第3半導体層15に、コンタクト領域CRにおいて接する。
【0029】
このように、埋め込みコンタクト部35pは、第2電極30の第3半導体層15に接する面積を好適に設定するように配置される。これにより、第2電極30から第3半導体層15を介して第2半導体層13に注入される正孔の量を制御することができる。
【0030】
例えば、半導体装置1~3のオン状態では、第2電極30を第1電極20の電位よりも高い電位にバイアスし、第1半導体層11と第2半導体層13との間のpn接合を順バイアスする。これにより、第2半導体層13から第1半導体層11に正孔が注入され、第4半導体層17から第1半導体層11に電子が注入されるバイポーラ動作状態となる。このとき、埋め込みコンタクト部35pから第2半導体層13への正孔注入が抑制されるため、第1半導体層11に注入される正孔の量は、埋め込みコンタクト部35pを設けない場合に比べて減少する。これに伴い、第4半導体層17から第1半導体層11へ注入される電子の量も減少する。この結果、オン状態における第1半導体層11中のキャリア密度(電子および正孔の密度)を低減することができる。言い換えれば、オン状態において、第1半導体層11にキャリアが過剰に注入されることを回避できる。
【0031】
続いて、半導体装置1~3をオン状態からオフ状態へ移行させる場合、第2電極30を第1電極20の電位よりも低い電位にバイアスし、第1半導体層11と第2半導体層13との間のpn接合を逆バイアスする。これにより、第1半導体層11中の正孔は、第2半導体層13および第3半導体層15を介して第2電極30に排出される。また、第1半導体層11中の電子は、第4半導体層17を介して第1電極20に排出される。
【0032】
半導体装置1~3では、オン状態における第1半導体層11中のキャリアの密度が低減されているため、正孔および電子を排出し、第1半導体層11を空乏化するための時間を短縮することができる。すなわち、半導体装置1~3では、オン状態からオフ状態へのリカバリ時間を短縮し、リカバリ損失を低減することができる。
【0033】
さらに、第2電極30と第3電極40との間にマイナスの制御電圧を印加することにより、第1半導体層11と絶縁膜43との間に第2導電形の反転層を誘起することができる。これにより、第1半導体層11から第2半導体層13への第2導電形の反転層を介した正孔の排出経路が形成される。これにより、正孔の排出が促進され、リカバリ時間をさらに短縮し、リカバリ損失を低減することができる。また、第1半導体層11の空乏化の過程において、アバランシェ現象により生じる正孔を効率良く排出し、素子破壊に対する耐量を向上させることができる。
【0034】
(第2実施形態)
図3は、第2実施形態に係る半導体装置4を示す模式断面図である。半導体装置4は、半導体部10と、第1電極20と、第2電極30と、第3電極40と、を含む。
【0035】
半導体装置4の半導体部10は、第1半導体層11と、第2半導体層13と、第4半導体層17と、を含む。この例では、半導体部10は、第3半導体層15を含まない。
【0036】
第2電極30は、例えば、第1金属部30aと、第2金属部30bと、を含む。第1金属部30aは、半導体部10の表面から第2半導体層13中に延在するように設けられる。第2金属部30bは、半導体部10の表面側を覆うように設けられ、第1金属部30aに接続される。第2金属部30bは、半導体部10の表面において、第2半導体層13に接する部分を含む。第1金属部30aは、例えば、半導体装置1~3の埋め込みコンタクト部35pと同様に配置される。
【0037】
第3電極40は、半導体部10と第2金属部30bとの間に設けられる。第3電極40は、絶縁膜43により半導体部10から電気的に絶縁され、層間絶縁膜45により第2金属部30bから電気的に絶縁される。
【0038】
第1金属部30aは、第2半導体層13との間に、例えば、ショットキ障壁を形成する材料を含む。第2金属部30bは、第2半導体層13と、例えば、オーミック接続を形成する材料を含む。すなわち、第1金属部30aから第2半導体層13に注入される正孔に対するポテンシャル障壁は、第2金属部30bから第2半導体層13に注入される正孔に対するポテンシャル障壁よりも高い。
【0039】
第1金属部30aは、第2半導体層13に接する部分に、例えば、窒化チタニウム(TiN)を含む。第2金属部30bは、第2半導体層13に接する部分に、例えば、アルミニウム・シリコン合金を含む。
【0040】
この例でも、第1金属部30aから第2半導体層13への正孔注入が抑制され、リカバリ時間を短縮し、リカバリ損失を低減することができる。また、第3半導体層15を設けないことにより、例えば、第1金属部30aと第3電極40との間隔の制約が緩和され、半導体部10と第2電極30との間の接続構造の微細化が容易になる。
【0041】
図4(a)および(b)は、第2実施形態の変形例に係る半導体装置5および6を示す模式断面図である。半導体装置5および6の第1金属部30aは、Z方向にテーパ状の断面を有するように設けられる。
【0042】
図4(a)に示す半導体装置5では、第1金属部30aは、半導体部10の表面から第1電極20に向かう方向に、横方向(X方向)の幅が広がるように設けられる。すなわち、第1金属部30aは、第1位置P1において、X方向の第1幅を有し、第2位置P2において、X方向の第2幅を有する。第1位置P1および第2位置P2は、Z方向に並び、第1位置P1は、第2位置P2と第1電極20との間に位置する。第1幅は、第2幅よりも広い。
【0043】
図4(b)に示す半導体装置6では、第1金属部30aは、半導体部10の表面から第1電極20に向かう方向に、横方向(X方向)の幅が狭くなるように設けられる。この例では、第1幅は、第2幅よりも狭い。
【0044】
このように、第1金属部30aをテーパ形状の断面を有するように設けることにより、第2半導体層13と接触する面積を増し、第2電極30から第2半導体層13への正孔注入をさらに抑制することができる。
また、第1金属部30aの断面形状は、この例に限定されず、例えば、
図1および
図7に記載の埋め込みコンタクト部35pに適用しても良い。
【0045】
図5は、第2実施形態の別の変形例に係る半導体装置7を示す模式断面図である。この例では、第3電極40は、第2電極30に電気的に接続される。
【0046】
図5に示すように、第2電極30は、第1金属部30aと第2金属部30bとを含み、第3電極40は、第2金属部30bに電気的に接続される。第3電極40は、絶縁膜43により半導体部10から電気的に絶縁される。
【0047】
この例では、層間絶縁膜45は設けられず、第3電極40は、第2金属部30bに直接接続される。実施形態は、この例に限定されず、例えば、第2電極30と第3電極40との間に層間絶縁膜45を配置した上で、層間絶縁膜45のコンタクトホールを介して第2電極30と第3電極40とを電気的に接続する構成であっても良い。また、本明細書の他の実施例においても、第2電極30と第3電極40とを電気的に接続する構成を用いることができる。
【0048】
図6は、第2実施形態の他の変形例に係る半導体装置8を示す模式断面図である。半導体装置2は、
図3に示す半導体装置4とIGBTを一体化した構造を有する。
【0049】
図6に示すように、半導体装置8は、ダイオード領域と、IGBT領域と、を含む。半導体装置8は、ダイオード領域に設けられた第3電極40に加えて、IGBT領域に設けられた第4電極50と、第5電極60と、を備える。
【0050】
第4電極50は、半導体部10と第2電極30との間に位置し、半導体部10に設けられたゲートトレンチGTの内部に配置される。第4電極50は、絶縁膜53により半導体部10から電気的に絶縁され、層間絶縁膜55により第2電極30から電気的に絶縁される。
【0051】
第5電極60は、IGBT領域の端に設けられる。第5電極60は、半導体部10と第2電極30との間に位置し、半導体部10に設けられたトレンチFTの内部に配置される。第5電極60は、絶縁膜63により半導体部10から電気的に絶縁される。第5電極60は、例えば、図示しない部分において、第2電極30に電気的に接続される。
【0052】
半導体部10は、ダイオード領域において、第1半導体層11と、第2半導体層13と、第4半導体層17と、を含む。第1半導体層11は、ダイオード領域およびIGBT領域の両方に延在する。第2半導体層13および第4半導体層17は、
図3に示す半導体装置4と同じように配置される。
【0053】
半導体部10は、IGBT領域において、第2導電形の第5半導体層21と、第1導電形の第6半導体層23と、第2導電形の第7半導体層25と、第1導電形の第8半導体層27と、第2導電形の第9半導体層29と、をさらに含む。
【0054】
第5半導体層21は、第1半導体層11と第2電極30との間に設けられる。第5半導体層21は、例えば、p形コレクタ層であり、第1電極20に電気的に接続される。また、第6半導体層23は、第1半導体層11と第5半導体層21との間に設けられる。第6半導体層23は、例えば、n形バッファ層であり、第1半導体層11の第1導電形不純物の濃度よりも高濃度の第1導電形不純物を含む。
【0055】
第7半導体層25は、第1半導体層11と第2電極30との間に設けられる。第7半導体層25は、例えば、p形ベース層であり、絶縁膜53を介して第4電極50に向き合うように設けられる。第7半導体層25は、例えば、第2半導体層13の第2導電形不純物の濃度と略同一の第2導電形不純物を含む。
【0056】
第8半導体層27は、第7半導体層25と第2電極30との間に選択的に設けられる。第8半導体層27は、絶縁膜53に接する位置に設けられる。第8半導体層27は、第1半導体層11の第1導電形不純物の濃度よりも高濃度の第1導電形不純物を含む。
【0057】
第9半導体層29は、第7半導体層25と第2電極30との間に選択的に設けられる。第9半導体層29は、第2半導体層13および第7半導体層25のp形不純物の濃度よりも高濃度のp形不純物を含む。
【0058】
第2電極30は、例えば、第8半導体層27および第9半導体層29に接し、且つ、電気的に接続される。
【0059】
半導体部10は、第1導電形の第10半導体層67をさらに備える。第10半導体層67は、ダイオード領域とIGBT領域との間の中間領域に設けられる。第10半導体層67は、第1半導体層11と第2電極30との間に設けられる。第10半導体層67は、ダイオード領域の端に位置する第3電極40と、IGBT領域の端に位置する第5電極60との間に位置する。第10半導体層67は、例えば、第2半導体層13および第7半導体層27の第2導電形不純物の濃度と略同一の濃度の第2導電形不純物を含む。
【0060】
半導体装置8は、第2電極30が第1電極20の電位よりも低い電位にバイアスされた状態で、IGBTとして動作する。一方、第2電極30が第1電極20の電位よりも高い電位にバイアスされた状態では、所謂、還流ダイオードとして動作する。
【0061】
半導体装置8では、第2電極30が第1金属部30aおよび第2金属部30bを有することにより、ダイオードモードからIGBTモードへのリカバリ過程におけるスイッチング損失(すなわち、リカバリ損失)を低減することができる。また、第3電極40を適宜制御することにより、リカバリ損失をさらに低減すると共に、リカバリ過程における破壊耐量を向上させることができる。
【0062】
実施形態は、第4半導体装置とIGBTとの組合せに限定される訳ではなく、例えば、第1~第3実施形態に示す各半導体装置とIGBTとを組合せても良い。
【0063】
(第3実施形態)
図7は、第3実施形態に係る半導体装置9を示す模式断面図である。半導体装置9は、半導体部10と、第1電極20と、第2電極30と、第3電極40と、を含む。
【0064】
半導体装置9の半導体部10は、第1半導体層11と、第2半導体層13と、第4半導体層17と、を含む。この例でも、半導体部10は、第3半導体層15を含まない。
【0065】
第2電極30は、例えば、第1金属層33と第2金属層35とを含む積層構造を有する。第2金属層35は、半導体部10と第1金属層33との間に設けられる。第2金属層35は、第1金属層33とは異なる金属元素を含む。
【0066】
第2金属層35は、例えば、埋め込みコンタクト部35pと、表面コンタクト部35qと、を含む。埋め込みコンタクト部35pは、半導体部10の表面から第2半導体層13中に延在する。表面コンタクト部35qは、例えば、半導体部10の表面において、第2半導体層13に接する。埋め込みコンタクト部35pは、例えば、半導体装置1~3の埋め込みコンタクト部35pと同様に配置される。
【0067】
埋め込みコンタクト部35pおよび表面コンタクト部35qは、第2半導体層13に対して、例えば、ショットキ接続される。すなわち、埋め込みコンタクト部35pおよび表面コンタクト部35qは、第2金属層35から第2半導体層13へ注入される正孔に対するポテンシャル障壁を有するように接続される。
【0068】
半導体装置9は、第2半導体層13と埋め込みコンタクト部35pとの間に選択的に設けられた合金層37をさらに備える。合金層37は、埋め込みコンタクト部35pと第1電極20との間に位置する。合金層37は、例えば、半導体部10の表面側に設けられたコンタクトトレンチCTの底面上に位置する。合金層37は、例えば、チタニウム(Ti)、ニッケル(Ni)もしくはコバルト(Co)を含むシリサイド層である。
【0069】
合金層37は、例えば、コンタクトトレンチCTの内壁をシリコン酸化膜などの保護膜で覆い、その底面を露出させた後、その内面を覆うように、チタニウム、ニッケルもしくはコバルトを含む金属層を形成し、その後、熱処理により第2半導体層13と金属層を反応させることにより形成される。埋め込みコンタクト部35pは、金属層を除去した後、コンタクトトレンチCTの内部に埋め込まれる。
【0070】
埋め込みコンタクト部35pは、合金層37を介して第2半導体層13に、例えば、オーミック接続される。すなわち、埋め込みコンタクト部35pの第2半導体層13に接する部分の正孔に対するポテンシャル障壁は、埋め込みコンタクト部35pから合金層37を介して第2半導体層13に注入される正孔に対するポテンシャル障壁よりも高い。
【0071】
このように、半導体装置9では、埋め込みコンタクト部35pおよび表面コンタクト部35qが第2半導体層13に接する部分において、第2電極30から第2半導体層13への正孔注入を抑制することができる。これにより、リカバリ時間を短縮し、リカバリ損失を低減することができる。この例でも、第3半導体層15を設けないことにより、半導体部10と第2電極30との間の接続構造を微細化することが容易になる。
【0072】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0073】
1~9…半導体装置、 10…半導体部、 11…第1半導体層、 13…第2半導体層、 15…第3半導体層、 17…第4半導体層、 20…第1電極、 21…第5半導体層、 23…第6半導体層、25…第7半導体層、 27…第8半導体層、 29…第9半導体層、 30…第2電極、 30a…第1金属部、 30b…第2金属部、 33…第1金属層、 35…第2金属層、 35p…埋め込みコンタクト部、 35q…表面コンタクト部、 37…合金層、 40…第3電極、 43、53、63…絶縁膜、 45、55…層間絶縁膜、 50…第4電極、 60…第5電極、 67…第10半導体層、 CR…コンタクト領域、 CT…コンタクトトレンチ、 FT…トレンチ、 GT…ゲートトレンチ