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特許7337780糖尿病の処置および予防における遺伝子型層別化
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-25
(45)【発行日】2023-09-04
(54)【発明の名称】糖尿病の処置および予防における遺伝子型層別化
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/00 20060101AFI20230828BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20230828BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230828BHJP
【FI】
A61K39/00 H
A61K39/39
A61P3/10
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020513715
(86)(22)【出願日】2018-09-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-19
(86)【国際出願番号】 SE2018050904
(87)【国際公開番号】W WO2019050465
(87)【国際公開日】2019-03-14
【審査請求日】2021-08-31
(31)【優先権主張番号】1751094-2
(32)【優先日】2017-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516363950
【氏名又は名称】ダイアミド・メディカル・アクチボラゲット
【氏名又は名称原語表記】DIAMYD MEDICAL AB
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エッセン-メールレル,アンデシュ
【審査官】伊藤 基章
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-516870(JP,A)
【文献】NILSSON, C. et al.,Pediatr Diabetes,2011年,Vol. 12, Suppl. 15,p. 114
【文献】LUDVIGSSON, J. et al.,Diabetes Metab Res Rev,2014年,Vol. 30,pp. 405-414
【文献】POCIOT, F. et al.,Lancet,2016年,Vol. 387,pp. 2331-2339
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
HLA DR3-DQ2ハプロタイプを有する個体における1型真性糖尿病である自己免疫疾患の処置のための方法における使用のための医薬組成物であって、前記医薬組成物はGAD自己抗原およびアラムを含み、前記方法は、前記医薬組成物を前記HLA DR3-DQ2ハプロタイプを有する個体に前記医薬組成物を投与することを含む、医薬組成物。
【請求項2】
前記個体が、さらにGADAを最初に示す、請求項1に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項3】
インスリン自己抗原をさらに含む、請求項1~のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項4】
前記個体は、HLA DR3/3-DQ2/2遺伝子型を有する、請求項1~のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項5】
前記投与が、皮下、皮内またはリンパ内のうちの1つである、請求項1~のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項6】
前記GAD抗原が、GAD38、GAD65およびGAD67からなる群から選択される、請求項1~のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物療法の技術分野、特に、患者の遺伝子プロファイルに基づく前記患者の免疫療法処置のための方法、ならびにそのような方法における使用のための化合物および組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
1型真性糖尿病(T1DM:Type 1 diabetes mellitus)は、膵臓のインスリン分泌細胞であるベータ細胞の免疫媒介破壊により特徴付けられる自己免疫疾患である。T1DMは多くの場合、早くも小児における、早期開始を有する。
【0003】
ベータ細胞に対する自己抗体の産生は、ベータ細胞の分解を引き起こす。分解プロセスは、何年にもわたって起こり、最終的には代謝異常をもたらす。これらの異常は、最初は耐糖能障害として現れ、症候性高血糖に進行する。T1DMの発症と関連して特定されている抗体は、インスリンに対する抗体(IAA)、GAD65に対する抗体(切断型GADAまたはtGADAを含むGADA)、IA-2に対する抗体(IA-2A)およびZnT8に対する抗体(ZnT8A)である。
【0004】
アラム配合グルタミン酸デカルボキシラーゼの投与は、開始初期T1DMを有する患者においてベータ細胞機能を保存し得ることが示唆されている(Ludvigssonら、N Engl J Med.2012年2月2日;366巻(5号):433~42ページ)。
【0005】
また、インスリンは、T1DMのための免疫療法において抗原成分として使用されてきた(Aliら、Sci Transl Med.2017年8月9日;9巻(402号))。
【0006】
遺伝的リスクを有する小児における糖尿病関連自己抗体の6年での発生率は、Krischerらによって説明されている(Diabetologia.2015年5月;58巻(5号):980~7ページ)。
【0007】
糖尿病の処置および自己免疫糖尿病の予防のために意図される治療薬による免疫調節は、特にEP1755631およびEP3151853から、当該技術分野で公知である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
抗体の数および種類は、糖尿病への進行を予測する。
様々な遺伝子型を有する患者は、ベータ細胞の分解を引き起こす抗体の様々な組および発達を有する。これは次に、どの抗体が患者において誘発されるかに基づいて、疾患進行における差をもたらす。
【0009】
遺伝子型を特定し、同時にGAD65およびインスリンに対する抗体の量を測定および定量することにより、T1DMの予防または処置のためのワクチンを個別化することが可能である。
【0010】
したがって、一態様において、本発明は、個体における自己免疫疾患の処置または予防のための方法であって、個体のHLAハプロタイプを決定することと;個体を前記ハプロタイプに基づく処置レジメンに供することとを含む方法に関する。
【0011】
一実施形態において、本方法は、個体のHLAハプロタイプを決定することと;個体において自己免疫疾患に関連する初期発生自己抗体の特異性を決定することと;個体を前記ハプロタイプおよび前記初期発生自己抗体の特異性に基づく処置レジメンに供することとを含む。
【0012】
一実施形態において、疾患は、自己免疫糖尿病、例えば、1型真性糖尿病である。
一実施形態において、HLA DR3-DQ2ハプロタイプを有し、任意選択でGADAを最初に示す個体は、少なくともGAD自己抗原による処置に供される。
【0013】
一実施形態において、HLA DR3/4-DQ2/8遺伝子型を有する個体は、同じ製剤または別々の製剤中のGAD自己抗原およびインスリン自己抗原の両方による処置に供される。
【0014】
一実施形態において、DR4-DQ8ハプロタイプを有するが、DR3-DQ2ハプロタイプを有さず、任意選択でインスリン自己抗体を最初に示す個体は、少なくともインスリン自己抗原による処置に供される。
【0015】
一実施形態において、DR4-DQ8を有するが、DR3-DQ2ハプロタイプを有しない個体は、アラム単独による処置に供される。
【0016】
一実施形態において、HLA DR8/4-DQ4/8ハプロ遺伝子型を有し、任意選択でインスリン自己抗体を最初に示す個体は、少なくともインスリン自己抗原による処置に供される。
【0017】
一実施形態において、DQ2遺伝子型を有し、GAD抗体を最初に示す個体は、GAD抗原による処置に供される。
【0018】
一実施形態において、HLA-DR4/4-DQ8/8遺伝子型を有する個体は、インスリン抗原による処置に供される。
【0019】
一実施形態において、HLA-DR8/4-DQ4/8遺伝子型を有する個体は、インスリン抗原による処置に供される。
【0020】
一実施形態において、HLA-DR3/3-DQ2/2遺伝子型を有する個体は、GAD抗原による処置に供される。
【0021】
一実施形態において、HLA-DR3/4-DQ2/8遺伝子型を有する個体は、GAD抗原による処置に供される。
【0022】
一実施形態において、GAD抗原の投与は、皮下、皮内またはリンパ内のうちの1つである。
【0023】
一実施形態において、GAD抗原は、アラムと共に製剤化される。
一実施形態において、インスリン自己抗原の投与は、経口、舌下、筋内、皮内またはリンパ内である。
【0024】
一実施形態において、インスリン抗原は、アラムと共に、または生理食塩水中で製剤化される。
【0025】
一実施形態において、アラム単独の投与は、皮下、皮内またはリンパ内である。
一態様において、本発明は、上記に記載の方法における自己抗原としての使用のためのGADに関する。
【0026】
一態様において、本発明は、上記に記載の方法における自己抗原としての使用のためのインスリンに関する。
【0027】
一態様において、本発明は、上記に記載の方法における使用のための医薬組成物の製造でのGADの使用に関する。
【0028】
一態様において、本発明は、上記に記載の方法における使用のための医薬組成物の製造でのインスリンの使用に関する。
【0029】
定義
本明細書で使用される全ての用語は、本開示の文脈において当業者によりそれらに与えられる意味を有すると意図される。いくつかの用語は、曖昧さを避けるために以下に特に定義する。
【0030】
「アラム」という用語は、免疫療法における使用のための医薬組成物でアジュバントとして通常使用される水酸化アルミニウムを指す。「アラム単独」とは、アラムを含むが、抗原を含まない組成物を指す。
【0031】
「GAD」という用語は、タンパク質グルタミン酸デカルボキシラーゼを指し、GADのアイソフォーム、例えば、GAD38、GAD65およびGAD67ならびにそれらの断片を含む。
【0032】
「インスリン」という用語は、自己抗原としてのインスリンについて使用される場合、プレプロインスリン、プロインスリンおよびそれらの断片を含むと解釈されるべきである。
【0033】
T1Dという用語は、ベータ細胞自己抗原に対する自己抗体が存在する全てのタイプの糖尿病、例えば、1型真性糖尿病(T1DM)、1,5糖尿病、LADA、LADY、SPIDDM、PIDMおよびその他を含む。
【0034】
「a」および「an」という用語は、単数および複数の両方を含むと解釈されるべきである。
【0035】
本明細書で引用される全ての参考文献は、それらを全体として参照により明確に組み込まれる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
T1DMの病因論は、まだ解明されなければならない。しかしながら、病因は、インスリンに対する自己抗体(IAA)、GAD65に対する自己抗体(GADA)、IA-2に対する自己抗体(IA-2A)またはZnT8に対する自己抗体(ZnT8A)により示される。
【0037】
最近の調査により、膵島自己抗体を発症する小児の2つの主要な群が存在しており;1つの群は、最初の自己抗体としてIAAを示し、この群は多くの場合、DR4-DQ8ハプロタイプを含むHLA遺伝子型を有する低年齢の小児を含み、他の群は多くの場合、GADAまたはtGADAを最初に示す、多くの場合DR3-DQ2ハプロタイプ2のいくらか年長の小児であることが分かっており、このことから、本発明の発明者らは、これらのHLA群においてGAD-アラム対プラセボの有効性を試験した(実施例2を参照)。
【0038】
HLA(ヒト白血球抗原)遺伝子ファミリーは、HLA複合体として公知のタンパク質の一群である。HLA複合体は、免疫系が自己を非自己と区別することを補助する。HLA複合体には、3つの基礎的な群、MHC(主要組織適合複合体)クラスI、MHCクラスIIおよびMHCクラスIIIがある。MHCクラスII遺伝子は、HLA-D遺伝子を含む。
【0039】
最初の膵島自己抗体の誘発を説明する遺伝的環境的因子を特定することを目的として、TEDDY(The Environmental Determinants of Diabetes in the Young(若年層における糖尿病の環境決定因子))サブ研究が行われた。
【0040】
研究では、膵島自己免疫およびT1DMの発症が研究された。T1DMについて遺伝的感受性を有する新生児~最年長で15歳の小児が研究に登録された。
【0041】
参加者は、3カ月毎に来院することを課せられた。各来院時に、GADA、IAA、IA-2A、ZnT8A、DNA、mRNA、感染病原体、HbA1c、PBMC、赤血球、貯蔵血漿/血清について血液を分析した。尿試料、鼻腔拭い試料、水道水、足指の爪の切落しおよび唾液コルチゾールについても分析を行った。便試料は、最初の48カ月間毎月、その後は3カ月毎に回収した。
【0042】
上記に挙げる分析に加えて、母親の妊娠中の食事(選択された食品の食物摂取頻度調査票(FFQ))、喫煙;負の生活上の事象、両親の不安、うつ、感染の記録、薬物治療、予防接種、家族歴、第1度近親者(FDR:First Degree Relative)からのDNA、身体活動評価について面接を行った。また、失われた対象の再登録もあった。
【0043】
目的は、HLA依存性自己抗体出現のリスクに影響を及ぼし得る胎児期の因子を研究することであった。単体児の非糖尿病の母親(n=6,947)は、妊娠3~4.5カ月後にアンケートに答えた。より低い出生体重は、TEDDY児の出生体重のうちのより低い25%として定義した。
【0044】
喫煙、BMI、妊娠第3三半期中の飲酒(2回を超える飲酒/1カ月)および母親の感染(下気道感染、皮膚感染または発疹、性器感染)などの母親の因子。国、FDRにおけるT1DM、HLA遺伝子型および性別について調節した後、これらの母親の因子のいずれも最初の膵島自己抗体と関連付けられなかった。
【0045】
FDR小児の中で、最初の自己抗体がIAAのみであることは、低年齢ではGADAのみであることよりも一般的であったが、年齢が高くなるとそうではなかった。
【0046】
遺伝子型HLA-DR3/4を有する小児と比較して、遺伝子型HLA-DR3/3を有する小児は、最初の膵島自己抗体としてIAAのみを示す低いリスクを示した。
【0047】
遺伝子型HLA-DR4/4およびHLA-DR4/8を有する小児の中で、最初の膵島自己抗体がGADAのみについてのリスクは低かった。
【0048】
女児の中で、最初の膵島自己抗体がIAAのみのリスクは低かったが、最初の膵島自己抗体がGADAのみのリスクは低くなかった。
【0049】
より低い出生体重で出生した小児の中で、最初の膵島自己抗体がGADAのみのリスクは低かった。
【0050】
IAAのみの出現は、男児においてより一般的であり、HLA-DR4/4-DQ8/8およびHLA-DR8/4-DQ4/8と関連付けられた。
【0051】
GADAのみの出現は、性別と関連付けられなかったが、HLA-DR3/3-DQ2/2およびHLA-DR3/4-DQ2/8と関連付けられ、低体重児でより一般的でなかった。
【0052】
最初の膵島自己抗体がGADAのみであることは、主にHLA-DQ2ハプロタイプを有する個体において誘発されることを結論付けることができた。出生体重に影響を及ぼす母親の因子は、最初の自己抗体としてのGADAの出現に影響を及ぼし得る。
【0053】
遺伝子型HLA-DR4/4-DQ8/8およびHLA-DR8/4-DQ4/8を有する個体は概して、最初の膵島自己抗体としてIAAの存在を主に示す。
【0054】
遺伝子型HLA-DR3/3-DQ2/2およびHLA-DR3/4-DQ2/8を有する個体は概して、最初の膵島抗体としてGADAの存在を主に示す。
【0055】
驚くべきことに、本発明者らは、最初の自己抗体がGADAであることと関連付けられるHLAハプロタイプを有するT1DM患者へのGAD自己抗原の投与は、T1DMの処置/予防レジメンにおいて好ましく使用され得ることを示すことができた。したがって、使用される抗原は、患者の遺伝子型に基づいて決定することができる。
【0056】
加えて、アラム単独は、DR4-DQ8を有する患者において刺激されたCペプチドの低下を遅延し得るが、DR3-DQ2ハプロタイプを有する患者においてはそうではないことが示された。
【0057】
本発明により、自己抗原は、リンパ内注射、リンパ節への直接注射、皮内注射、皮下注射、筋内注射、腹腔内注射、静脈内注射、皮下注射、鼻内、経粘膜または舌下適用により;または錠剤、ペレット、顆粒、カプセル、トローチ剤、水溶液または油性溶液、懸濁液、エマルション、スプレイとして、または液体媒体で再構成された乾燥粉末形態としての投与を含む経口で投与することができる。
【0058】
本発明の一実施形態において、常在性APCが免疫系に抗原ペプチドを提示することを可能にするために、自己抗原の投与は、リンパ節に、またはリンパ系に直接行われる。自己抗原の投与が、リンパ節に、またはリンパ系に直接行われる場合、用量は、好ましくは自己抗原当たり1~15μg、より好ましくは自己抗原当たり2~10μg、または自己抗原当たり2~5μgである。アラム中の製剤は好ましい。
【0059】
ある特定の実施形態により、少なくとも1つの自己抗原は、鼠径内、リンパ節内またはリンパ内に投与される。一部の実施形態において、抗原の鼠径内注射の体積は、0.05~0.2ml、より好ましくは0.05~0.15mlである。
【0060】
ある特定の実施形態により、少なくとも1つの抗原が、リンパ節内またはリンパ内注射により投与される場合、好ましい投与量は、1回の注射および使用される自己抗原当たり1~15μg、より好ましくは2~10、最も好ましくは2~5μgであり、そのような投与は、少なくとも2回、より好ましくは少なくとも3回、最も好ましくは少なくとも4回、少なくとも14日間離れて、より好ましくは少なくとも30日間離れて行われる。
【0061】
ある特定の実施形態により、少なくとも1つの抗原および少なくとも1つのIL-10誘導化合物は、同時に投与される。ある特定の実施形態により、少なくとも1つの抗原および少なくとも1つのIL-10誘導化合物は、別々に投与される。
【0062】
本方法は、血清ビタミンDレベルを調節するための個体の事前処置をさらに含むことがあり、そのような事前処置は、EP3151853で説明されるように、好ましくは少なくとも1つのベータ細胞自己抗原を含む組成物の前記対象への投与前7~90日間の、ビタミンDおよび/またはビタミンDアナログの投与、および/またはUVB照射への曝露を含み得る。
【0063】
実施例
以下の実施例は、本発明をさらに例示することを目的とする。実施例は、附属の特許請求の範囲により定義される本発明の範囲を限定するとは考えられるべきではない。
【0064】
実施例1:TrialNetフェーズII
Wherrett DKら(Lancet、2011年7月23日;378巻(9788号):319~27ページ)は、100日以内にT1Dと診断された3~45歳の対象における3アーム(A:3sc×20μg GAD-アラム(n=48);B:2×20μg GAD-アラムおよび1つのアラム(n=49);およびC:3×アラム(n=48))ランダム化研究から、1年で、年齢、性別およびベースラインCペプチド値について調節したCペプチドの2時間AUCは、A GAD-アラム群で0.412nmol/L(0.349~0.478)、B GAD-アラム+アラム群で0.382nmol/L(0.322~0.446)、およびC アラム群で0.413nmol/L(0.351~0.477)であり、それぞれ、GAD-アラム×3、GAD-アラム×2およびアラム×3についてベースライン平均値の44%、42%および41%の、1年でのCペプチド平均値の低下に対応することを報告した。著者らは、ベースラインおよび1年でのCペプチドのレベルは、診断の3カ月以内に処置された対象における3つの他のTrialNet研究の対照群での発見を反映したこと、また、これは、アラム単独が12カ月でインスリン分泌の低下に対して効果を有しないことを示すことを指摘している。
【0065】
したがって、12カ月間にわたる調節された低下は、毎月3.7%、3.5%および3.42%である。最長24カ月間の非調節の値は、以下の表に示される。ここで、群A、BおよびCは、2年間にわたる58.3%、62.3%、55.1%の低下、または1カ月で2.42%、2.6%、2.3%の低下を示した。アラムは、わずかに最も優れている。
【0066】
【表1】
【0067】
しかしながら、免疫調節抗原としてのGADが、通常GAD抗体を最初に示すHLA群で効率的であり、抗原のインスリンファミリーが、多くの場合インスリン抗体を最初に示すハプロタイプにおいて効率的であると仮定して、本発明者らがこの研究からのデータを再考すると、驚くべきことに、通常GAD抗体を最初に示すDR3-DQ2ハプロタイプ群において、GAD-アラムはアラム単独のほぼ2倍有効であること(2.35%対4.45%変化/1カ月)が分かった。加えて、通常IAAを最初に示すDR4-DQ8を含む群(DR3/DR4-DQ2/DQ8の群は、GADAまたはIAAのいずれかを最初に示し得るが)におけるGAD-アラムの効率は、40%有益であるのみであった。多くの場合IAAを最初に示す対象を含むと報告されるDR4-DQ8ハプロタイプ群において、アジュバントアラム(プラセボ)単独は、活性薬よりも有効であることは特に興味深かった。
【0068】
【表2】
【0069】
実施例2:DiaPrevIt
多数の膵島自己抗体を有するが、まだインスリン要求糖尿病を有しない50人の健康な小児におけるランダム化二重盲検プラセボ対照研究(DiaPREV-IT、ClinicalTrials.gov識別子:NCT01122446)から、GAD-アラムでの予防処置は、臨床T1Dの開始への進行に影響を及ぼさないことが分かった。
【0070】
研究は、4~17.9歳(中央値5.2歳)のGADAおよび少なくとも1つの追加の膵島自己抗体を有する小児において行われた。2012年に登録が完了し、フォローアップ期間は5年であった。DiPiS(Diabetes Prediction in Skane(スコーネ(スウェーデン)における糖尿病予測))、TEDDY(The Environmental Determinants of Diabetes in the Young)研究からの適格な小児には、20μのGAD-アラム(n=25)またはプラセボ(n=25)の皮下注射を30日間空けて2回施した。HLA DQB106:02についての陽性は、除外基準に含まれた。
【0071】
膵島細胞自己抗体は、T1Dの臨床開始を予測し、2種以上の膵島自己抗体を有する小児は、10年以内にT1Dを発症する70%のリスクを有する。50人の小児をGAD-アラム(治験薬)またはアラム単独(プラセボ)のいずれかによる処置に1:1にランダム化した試料サイズは、2種以上の自己抗体を有する非処置小児の50%は、5年の期間内に臨床T1Dを示すという仮定に基づいた。しかしながら、驚くべきことに、小児のうちの半分がベースラインで糖代謝障害を有し、臨床疾患への進行の非常に高いリスクを示すが、5年フォローアップ期間中に臨床T1Dを示す個体は、50人中18人(36%)のみであり、予測される50%ではないことが分かった。報告された全体的に有意でない結果に照らして、どのサブ群が、示される明白なT1D症例の予測された発生率よりも低い発生率の理由であり得るかを、もしそれが存在するならば、評価するために調査を行った。
【0072】
5年のフォローアップ期間(治験薬の最初の注射後170~1830日)内にT1Dに進行した18/50人の小児のうちの12人が、女児であり、男児よりも高い進行率を有すること(p=0.012)が分かった。T1Dへの進行は、第1度近親者であることにより影響を受けず(p=0.925)、一方で、ベースラインで、OGTT120分後の7.8mmol/L以上11.1mmol/L未満の血漿グルコース、OGTT30、60および/または90分後の11.1mmol/L以上の血漿グルコース、およびまたはIvGTTにおける30未満のFPIRとして定義される糖代謝障害を有する小児は、正常耐糖能を有する小児よりも高い進行率を有した(p=0.013)。
【0073】
臨床診断までの時間は、全群において(p=0.573)、または2または3~6種の自己抗体を有する階層群内で(それぞれ、p=0.957および0.628)、処置により影響を受けなかった。さらに、糖尿病までの時間は、正常群および糖代謝障害群内で処置により(それぞれ、p=0.359およびp=0.376)、または性別により(それぞれ、p=0.079男児、p=0.400女児)有意に影響を受けなかった。
【0074】
最近の調査により、膵島自己抗体を発症する小児の2つの主要な群が存在しており;1つの群は、最初の自己抗体としてIAAを示し、この群は多くの場合、DR4-DQ8ハプロタイプを含むHLA遺伝子型を有する低年齢の小児を含み、他の群は多くの場合、GADAまたはtGADAを最初に示す、多くの場合DR3-DQ2ハプロタイプ2のいくらか年長の小児であることが報告されており、このことから、本発明の発明者らは、これらのHLA群においてGAD-アラム対プラセボの有効性を試験した。この研究において、臨床T1Dを示す高リスクを有する個体のみを含む、6つの異なるHLA遺伝子型が示された。これらのうち、3つの群HLA DQ2/2;DQ2/X;およびDQ X/Xは、任意の分析で考察するには少なすぎる対象(n=2、2、1)しか含まなかった。残りの3つのHLA群は、DQ2/8(n=25)(そのうちの10人の対象にGAD-アラムを投与し、15人にプラセボを投与した);DQ8/X(n=11)(6人の対象にGAD-アラム、5人にプラセボを投与した);およびDQ8/8(n=9)(5人の個体にGAD-アラム、4人にプラセボを投与した)を含んだ。
【0075】
驚くべきことに、DQ2/8群の25人の対象において、プラセボを投与した15人の個体のうちの8人(53%)と比較して、GAD-アラム群の10人の対象のうちの2人(20%)が5年期間内にT1Dを示すことが分かり(表3)、DQ2/8ハプロタイプを有する高リスク個体におけるT1Dの遅延で、GAD-アラムが有効であることを示した。同様の発見は、DQ8/Xでも、DQ8/8群でも見られず、これらの群では、プラセボがGAD-アラム処置対象よりも良好であることが分かった。
【0076】
【表3】
【0077】
実施例3:DiagNode-1
Taviraら(Journal of Diabetes Research、2018年号、記事番号9391845)により説明されるように、12人の開始初期T1D患者において、オープン研究が行われ、アラム中に製剤化された4μgのGADを、鼠径部リンパ節に3回、各回の注射間に30日の期間を伴って、直接注射した。本発明の主題と一致して、DR3-DQ2ハプロタイプを有する患者の処置は、DR3-DQ2ハプロタイプを有しない患者よりも良好なHbA1cデータおよび刺激されたCペプチド曲線下面積データをもたらすことが分かった。
【0078】
【表4】
【0079】
【表5】