(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-25
(45)【発行日】2023-09-04
(54)【発明の名称】創傷被覆材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61L 15/32 20060101AFI20230828BHJP
A61L 15/28 20060101ALI20230828BHJP
A61L 15/38 20060101ALI20230828BHJP
【FI】
A61L15/32 100
A61L15/28 100
A61L15/38 100
(21)【出願番号】P 2020533581
(86)(22)【出願日】2018-11-20
(86)【国際出願番号】 IL2018000009
(87)【国際公開番号】W WO2019123444
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-09-27
(32)【優先日】2017-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IL
(32)【優先日】2017-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511203455
【氏名又は名称】オムリックス・バイオファーマシューティカルズ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Omrix Biopharmaceuticals Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】イラン・エレツ
(72)【発明者】
【氏名】ファインゴールド・オムリ
【審査官】辰己 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0037051(US,A1)
【文献】Pharma Medica,2005年,Vol.23, No.10,pp.149-152
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L15/00-33/18
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体における創傷組織を治療するためのキットであって、
酸化セルロース(OC)裏材を含む、第1の容器と、
10~120mg/mlの範囲の濃度で存在する、フィブリノーゲン及び/又はフィブリンを含
む、第2の容器と、
400~1200IU/mlの範囲の濃度で存在する、トロンビンを含む、第3の容器と、
を含み、
前記キットは、さらに、前記
フィブリノーゲン及び/又はフィブリンと前記トロンビンとを含む製剤を前記OC裏材と生体外で組み合わせて創傷被覆材を形成し、かつ、前記創傷被覆材を、前記組み合わせ時から生じる架橋の開始から
2秒以上20秒未満
の間に前記創傷組織に適用する、ための取扱説明書を含む、キット。
【請求項2】
前記製剤が、液体又は凍結形態である、請求項
1に記載のキット。
【請求項3】
前記OC裏材が、酸化再生セルロース(ORC)を含む、請求項
1又は2に記載のキット。
【請求項4】
前記OC裏材が、編布、織布又は不織布の形態である、請求項
1~3のいずれか一項に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、とりわけ、創傷を治療するための治療用装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本開示の主題の背景として関連性があると見なされる参考文献を以下に列記する。
【0003】
本明細書において上記参考文献を承認することは、これらが本開示の主題の特許性と何らかの形で関連すると解釈することを示唆するものではない。
【0004】
出血の制御は、失血を最小限に抑え、術後合併症を低減させ、かつ手術室での手術の時間を短くするために、外科的処置において必須かつ重要である。局所吸収性止血(TAH)は、外科用途において広く使用されている出血を管理及び制御するための1つの選択肢である。
【0005】
関連する先行技術の参考文献は、Ishii,KeiichiらのJournal of Endourology,25(11),1775-1779(2011);Ishii,KeiichiらのInternational Journal of Urology 18(6),478-482(2011),Lewis,K.M.らのEuropean Surgery 45(4),213-220(2013);Spangler,DanielらのSurgical Infections 4(3),255-262(2003);及びDeAnglis,Ashley PらのBlood Coagulation & Fibrinolysis 28,134-138(2017)である。
【0006】
米国特許出願公開第2012/0209319号は、物質の未硬化及び硬化性組成物の層を含む強化多成分接着剤と、少なくとも1種の硬化剤及び薄膜、例えば、酸化再生セルロースを含む生体適合性不活性補強剤と、を記載している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、その第1の態様に従って、フィブリノーゲン及び/又はフィブリンを含む液体製剤(液体製剤は、互換的に「フィブリノーゲン及び/又はフィブリン含有液体製剤」とも称される)を含み、生体外で組み合わされることによって創傷被覆材が得られる酸化セルロース(OC)裏材を伴う、組織に適用される創傷被覆材を製造するための方法を提供する。
【0008】
本発明の一態様によれば、組織上に適用される創傷被覆材を製造するための方法が提供され、本方法は、フィブリノーゲン及び/又はフィブリンを含む液体製剤を酸化セルロース(OC)裏材と組み合わせ、それによって創傷被覆材を得ることを含む。
【0009】
本方法のいくつかの実施形態では、OC裏材は創傷に面する側を有し、液体製剤は、少なくとも創傷に面する側と組み合わされる。
【0010】
本方法のいくつかの実施形態では、創傷被覆材は、組み合わせから20秒未満以内に組織に適用される。
【0011】
本方法のいくつかの実施形態では、OC裏材は酸化再生セルロース(ORC)を含む。
【0012】
本方法のいくつかの実施形態では、OC裏材は、編布、織布又は不織布の形態である。
【0013】
本方法のいくつかの実施形態では、液体製剤はトロンビンを含む。
【0014】
本方法のいくつかの実施形態では、組み合わせることは、液体製剤の噴霧、塗布、ブラッシング、キャスティング、印刷、注入及び浸漬のいずれか1つを含む。
【0015】
本方法のいくつかの実施形態では、トロンビンは、400~1200IU/mlの範囲の濃度で存在する。
【0016】
本方法のいくつかの実施形態では、フィブリノーゲン及び/又はフィブリンは、10~120mg/mlの範囲の濃度で存在する。
【0017】
本発明の更なる態様によれば、フィブリノーゲン及び/又はフィブリンを含む液体製剤(即ち、フィブリノーゲン及び/又はフィブリン含有液体製剤)と酸化セルロース(OC)裏材との生体外で形成された組み合わせを含む、創傷被覆材が提供される。
【0018】
創傷被覆材のいくつかの実施形態では、液体製剤は、創傷被覆材の創傷に面する側と少なくとも部分的に組み合わされる。
【0019】
創傷被覆材のいくつかの実施形態では、OC裏材は酸化再生セルロース(ORC)を含む。
【0020】
創傷被覆材のいくつかの実施形態では、OC裏材は、編布、織布又は不織布の形態である。
【0021】
創傷被覆材のいくつかの実施形態では、液体製剤はトロンビンを更に含む。
【0022】
創傷被覆材のいくつかの実施形態では、トロンビンは、400~1200IU/mlの範囲の濃度で存在する。
【0023】
創傷被覆材のいくつかの実施形態では、フィブリノーゲン及び/又はフィブリンは、10~120mg/mlの範囲の濃度で存在する。
【0024】
創傷被覆材のいくつかの実施形態では、液体製剤は、裏材内に噴霧、塗布、ブラッシング、キャスティング、印刷又は浸漬されている。
【0025】
本開示の関連する文脈において、「組み合わされた(combined)」、又はそれらの任意の文法的な語形変化を指す場合、液体製剤とOC裏材との間の任意の結合/接触の形態として理解されるべきである。これには、以下に更に記載されるように、これらに限定されるものではないが、噴霧、塗布、液浸、浸漬、ブラッシング、キャスティング、印刷、注入、コーティングの任意の1つ又は組み合わせが含まれ得る。
【0026】
更に別の態様によれば、本開示によって、対象における創傷組織を治療する方法(「治療方法」とも称される)もまた提供され、本方法は、
(a)フィブリノーゲン及び/又はフィブリンを含む液体製剤と、酸化セルロース(OC)裏材と、を生体外で組み合わせ、創傷被覆材を形成することと、
(b)創傷上に創傷被覆材を適用することであって、適用することが、組み合わせることから20秒未満以内に実施される、ことと、を含む。
【0027】
治療方法のいくつかの実施形態では、OC裏材は創傷に面する側を有し、液体製剤は、少なくとも創傷に面する側と組み合わされ、創傷に面する側が創傷組織上に適用される。
【0028】
治療方法のいくつかの実施形態では、創傷組織は出血組織である。
【0029】
治療方法のいくつかの実施形態では、裏材は酸化再生セルロース(ORC)を含む。
【0030】
治療方法のいくつかの実施形態では、OC裏材は、編布、織布又は不織布の形態である。
【0031】
治療方法のいくつかの実施形態では、製剤はトロンビンを更に含む。
【0032】
治療方法のいくつかの実施形態では、トロンビンは、400~1200IU/mlの範囲の濃度で存在する。
【0033】
治療方法のいくつかの実施形態では、フィブリノーゲン及び/又はフィブリンは、10~120mg/mlの範囲の濃度で存在する。
【0034】
治療方法のいくつかの実施形態では、組み合わせることは、液体製剤の噴霧、塗布、ブラッシング、キャスティング、印刷、注入及び浸漬のいずれか1つを含む。
【0035】
治療方法のいくつかの実施形態では、方法は、創傷被覆材を創傷組織に押圧することを更に含む。
【0036】
治療方法のいくつかの実施形態では、創傷被覆材の創傷組織の少なくとも一部への接着を可能にするのに十分な時間、押圧が行われる。
【0037】
治療方法のいくつかの実施形態では、被験体はヒト被験体である。
【0038】
治療方法のいくつかの実施形態では、方法は、外科的処置中に創傷を治療するためのものである。
【0039】
治療方法のいくつかの実施形態では、外科的処置は、腹部手術、心臓血管手術、胸部手術、頭部及び頸部手術、骨盤手術、皮膚及び皮下組織処置を含む。
【0040】
治療方法のいくつかの実施形態では、創傷組織は出血動脈を含む。
【0041】
治療方法のいくつかの実施形態では、治療は出血を低減させることを含む。
【0042】
更なる態様によれば、本開示によって、酸化セルロース(OC)裏材を含む第1の容器と、フィブリノーゲン及び/又はフィブリンを含む製剤を含む第2の容器と、を含む、被験体における創傷組織を治療するためのキットが提供される。
【0043】
キットのいくつかの実施形態では、製剤は液体又は凍結形態である。
【0044】
キットのいくつかの実施形態では、キットは、製剤と組み合わせ、OC裏材を生体外で使用するための取扱説明書を含む。
【0045】
キットのいくつかの実施形態では、OC裏材は酸化再生セルロース(ORC)を含む。
【0046】
キットのいくつかの実施形態では、OC裏材は、編布、織布又は不織布の形態である。
【0047】
キットのいくつかの実施形態では、キットは、第2の容器内にトロンビンを含む。
【0048】
キットのいくつかの実施形態では、トロンビンは、400~1200IU/mlの範囲の濃度で存在する。
【0049】
キットのいくつかの実施形態では、フィブリノーゲン及び/又はフィブリンは、10~120mg/mlの範囲の濃度で存在する。
【0050】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び/又は科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されている意味と同一の意味を有する。本明細書に記載されているものと同様又は同等の方法及び材料を、本発明の実施形態の実行又は試験に使用することが可能であるが、代表的な方法及び/又は材料を以下に記載する。矛盾のある場合、定義を含め本特許明細書が適用される。なお、材料、方法及び実施例は、単に例示的なものであり、必ずしも限定を意図したものではない。
【図面の簡単な説明】
【0051】
本明細書にて開示された主題をよりよく理解し、実際にその主題をどのように実施することができるのかを例示するために、ここで添付の図面を参照しながら、単なる非限定的な例によって実施形態について説明する。
【
図1】約0(即時)及び20秒後の架橋(硬化)時間を伴う生体外で調製された創傷被覆材の接着強度を示す、棒グラフである。各架橋時間について、右手のバー(垂直ストライプ)は、本発明によるパッド調製物上のEvicel(登録商標)ドリップを表し、一方で、左手のバー(水平ストライプ)は、実施例1に記載されるように、Evicel(登録商標)ドリップをその場で直接組織上に調製することを表す。右端のバー(斜めのストライプ、Surgicelのみ)はORCのみを表す。エラーバーは標準偏差を表す。
【発明を実施するための形態】
【0052】
外科的処置中、外科医はホメオスタシスに対処することができなければならない。
【0053】
局所吸収性止血(TAH)は、酸化セルロース(OC)、酸化再生セルロース(ORC)、ゼラチン、コラーゲン、キチン、キトサン等に基づく生成物を包含する。止血性能を向上させるために、上記の物質に基づくスキャフォールドは、トロンビン及びフィブリノーゲンなどであるがこれらに限定されない、生物学的に誘導された凝固因子と組み合わせることができる。
【0054】
本開示は、多くの場合、特に創傷内の出血が重度である場合に、生物学的接着剤、例えば、液体フィブリン/フィブリノーゲン系封止剤を直接出血組織上に適用する場合、接着剤は、血液の流れによって洗い流される、又は希釈され、したがって、出血を低減させる効果が弱い可能性があるという理解に基づく。
【0055】
本開示の目的は、酸化セルロースの酸性度を考慮して、酸化セルロース並びにトロンビン及び/又はフィブリノーゲンの同時投与の欠点を克服することである。このような酸性度は、血漿タンパク質(例えば、トロンビン、フィブリノーゲン、組織因子等)を直ちに変性させる。したがって、酸化セルロース及びトロンビン、フィブリノーゲン等の同時投与は、これらの血漿タンパク質を無効にし得る。
【0056】
驚くべきことに、液体封止剤物質とORCなどの特定の種類のTAHとが生体外で組み合わされた場合、特に、その組み合わせから特定の期間内で創傷上に配置される場合、出血率は有益に低減されることが、本開示に従って見出された。
【0057】
本明細書において、「生体内で組み合わされた(combined ex vivo)」(又は「生体内で組み合わされた(ex vivo combined」)とは、液体シーラント物質と、ORCなどの特定の種類のTAHと、を組み合わせる工程が、シーラント物質又は特定の種類のTAH(例えばORC)のいずれかと出血部位との物理的接触に用いられないことを意味する。
【0058】
したがって、本開示は、その一態様では、組織に適用される創傷被覆材を製造するための方法を提供し、本方法は、フィブリノーゲン及び/又はフィブリン含有液体製剤と、ORC裏材などであるがこれに限定されない酸化セルロース(OC)裏材とを生体外で組み合わせ、それによって創傷被覆材を得ることを含む。
【0059】
このような一実施形態では、裏材は創傷に面する側面を有し、液体製剤は、創傷に面する側面と少なくとも部分的に組み合わされている。全体的に、「創傷に面する側面と少なくとも部分的に組み合わされる」とは、創傷に面する側の表面の少なくとも一部分が液体製剤と組み合わされることを意味する。
【0060】
いくつかのこのような実施形態では、液体製剤は、表面上の層の形態である。
【0061】
パッチ(例えば、パッド)の厚さは、約1mm以上、例えば約45mmであってもよい、又はいくつかの実施形態では、約1~約45mmであってよい。
【0062】
したがって、いくつかの実施形態では、パッチ(例えば、パッド)の厚さは、1、2.5、5、10、15、20、25、30、35、40又は45mmであり、それらの間の任意の値及び範囲を含む。
【0063】
いくつかの実施形態では、用語「創傷に面する側の表面の少なくとも一部分」とは、少なくとも1%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は100%の、創傷に面する側の表面を意味する。
【0064】
一実施形態では、創傷被覆材は、生体外での組み合わせから20秒未満以内に組織に適用される、又は適用されるように構成されている。
【0065】
いくつかの実施形態では、創傷被覆材の適用は、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2又は1秒以内、あるいは組み合わせの際に直ちに実施されてもよい。いくつかの実施形態では、創傷上への適用は、組み合わせることから少なくとも2~5秒後、又はいくつかの実施形態では、組み合わせることから少なくとも2~10秒後に実施される。
【0066】
用語「直ちに」とは、約0秒、例えば0~2秒を意味する。
【0067】
いくつかの実施形態では、開示される創傷被覆材は、組み合わせることから2~20秒以内に組織上に適用されるように構成されている。いくつかのこのような実施形態では、以下の実施例の項に更に記載されるように、液体製剤とOC(例えば、ORC)裏材との生体外での組み合わせは、出血組織上にフィブリン封止剤ドリップが直接その場で調製され、次にOC(例えば、ORC)と組み合わされた際に提供される、対応する接着強度と比較して、少なくとも50%又は少なくとも60%、例えば少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%又は少なくとも90%の接着強度により特徴付けられる、創傷被覆材を提供する。
【0068】
いくつかの実施形態では、液体製剤とOC(例えば、ORC)裏材との生体外での組み合わせは、出血組織上にフィブリン封止剤ドリップが直接その場で調製され、次にOC(例えば、ORC)と組み合わされた際に提供される、対応する接着強度と比較して、50~90%の接着強度により特徴付けられる創傷被覆材を提供する。
【0069】
本明細書において、用語「接着強度」とは、創傷被覆材と組織との間の接触を破断するために必要とされる引張力強度を意味する。
【0070】
更なる実施形態では、裏材はORCを含む。
【0071】
更なる実施形態では、裏材は、12~21%の範囲の酸化レベルを有するORCを含む。更なる実施形態では、裏材は、18~21%の範囲の酸化レベルを有するORCを含む。
【0072】
更なる実施形態では、裏材は、12、13、14、15、16、17、18、19、20又は21%の酸化レベルを有するORCを含み、それらの間の任意の値及び範囲を含む。
【0073】
いくつかの実施形態では、酸化レベルはORCのカルボキシル含有量を意味する。
【0074】
酸化レベルを決定するための方法は、当該技術分野において周知である。代表的な実施形態では、酸化レベルは、米国薬局方(USP)23-NF18で決定される。
【0075】
更なる実施形態では、裏材は編布の形態である。
【0076】
いくつかの実施形態では、裏材は、織布又は不織布の形態である。
【0077】
更なる実施形態では、製剤はトロンビンを含む。
【0078】
更なる実施形態では、シーラント製剤は、液体トロンビン成分などであるがこれに限定されないトロンビン成分、及び液体フィブリノーゲン成分などであるがこれに限定されないフィブリノーゲン成分を含む、2成分製剤を含む。
【0079】
更なる実施形態では、シーラント製剤は、液体トロンビン成分などであるがこれに限定されないトロンビン成分、及び液体フィブリン成分などであるがこれに限定されないフィブリン成分を含む、2成分製剤を含む。
【0080】
更なる実施形態では、シーラント製剤は、液体フィブリン成分などであるがこれに限定されないフィブリン成分を含む。
【0081】
更なる実施形態では、シーラント製剤は、液体トロンビン成分などであるがこれに限定されないトロンビン成分、並びに液体フィブリン及び液体フィブリノーゲン成分などであるがこれらに限定されないフィブリン及びフィブリノーゲンを含む成分を含む、2成分製剤を含む。
【0082】
シーラント製剤の更なる実施形態では、トロンビンは、約2~1200IU/ml、2.5~1200IU/ml、8~1200IU/ml、80~1200IU/ml、400~1200IU/ml、400~600IU/ml又は800~1200IU/mlの濃度で存在する。
【0083】
シーラント製剤の更なる実施形態では、トロンビンは、約2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、10、50、80、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100又は1200IU/mlの濃度で存在し、それらの間の任意の値及び範囲を含む。
【0084】
製剤の更なる実施形態では、トロンビンは、約2~1200IU/ml、2.5~1200IU/ml、8~1200IU/ml、80~1200IU/ml、400~1200IU/ml、400~600IU/ml又は800~1200IU/mlの濃度でトロンビン成分に存在する。
【0085】
製剤の更なる実施形態では、トロンビンは、約2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、10、50、80、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100又は1200IU/mlの濃度でトロンビン成分に存在し、それらの間の任意の値及び範囲を含む。
【0086】
本発明で使用する場合、用語「IU」は「国際単位(International Units)」を示し、例えば、世界保健機関(WHO)のトロンビンに関する第2国際規格01/580に対して較正された、効力濃度測定のための内部参照標準に対して、凝固アッセイによって測定され得る。単位(U)は、国際単位(IU)と同等である。
【0087】
シーラント製剤の更なる実施形態では、フィブリノーゲンは、約10~120mg/ml、10~105mg/ml、25~90mg/ml、30~45mg/ml、60~90mg/ml、60~110mg/ml又は55~85mg/mlの濃度で存在する。
【0088】
シーラント製剤の更なる実施形態では、フィブリノーゲンは、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115又は120mg/mlの濃度で存在し、それらの間の任意の値及び範囲を含む。
【0089】
製剤の更なる実施形態では、フィブリノーゲンは、約10~120mg/ml、10~105mg/ml、25~90mg/ml、30~45mg/ml、60~90mg/ml、60~110mg/ml又は55~85mg/mlの濃度でフィブリノーゲン成分に存在する。
【0090】
製剤の更なる実施形態では、フィブリノーゲンは、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115又は120mg/mlの濃度でフィブリノーゲン成分に存在し、それらの間の任意の値及び範囲を含む。
【0091】
いくつかの実施形態では、製剤の2種の成分(即ち、トロンビン及びフィブリノーゲン)は、約1.5:1~約1:1.5の範囲の比(v/v)で組み合わされている。いくつかの実施形態では、製剤の2種の成分(即ち、トロンビン及びフィブリノーゲン)は、約1.2:1~約1:1.2の範囲の比(v/v)で組み合わされている。
【0092】
代表的な実施形態では、製剤の2種の成分(即ち、トロンビン及びフィブリノーゲン)は、約1:1の比(v/v)で組み合わされる。
【0093】
シーラント製剤の更なる実施形態では、フィブリンは、約10~120mg/ml、10~105mg/ml、25~90mg/ml、30~45mg/ml、60~90mg/ml、60~110mg/ml又は55~85mg/mlの濃度で存在する。
【0094】
シーラント製剤の更なる実施形態では、フィブリンは、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115又は120mg/mlの濃度で存在し、それらの間の任意の値及び範囲を含む。
【0095】
製剤の更なる実施形態では、フィブリノーゲンとフィブリンとの組み合わせは、約10~120mg/ml、10~105mg/ml、25~90mg/ml、30~45mg/ml、60~90mg/ml、60~110mg/ml又は55~85mg/mlの濃度で存在する。
【0096】
製剤の更なる実施形態では、フィブリノーゲンとフィブリンとの組み合わせは、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115又は120mg/mlの濃度で存在し、それらの間の任意の値及び範囲を含む。
【0097】
更なる実施形態では、本組み合わせは、フィブリノーゲン及び/又はフィブリン含有液体製剤の噴霧、塗布、ブラッシング、キャスティング、印刷、注入及び浸漬から選択される、1つ以上の工程を含む。
【0098】
また、本開示によって提供されるのは、
フィブリノーゲン及び/又はフィブリン含有液体製剤と、ORC裏材などであるがこれに限定されない酸化セルロース(OC)裏材との生体外で形成された組み合わせを含む、創傷被覆材である。
【0099】
このような一実施形態では、裏材は創傷に面する側を有し、液体製剤は、少なくとも部分的に創傷に面する側と組み合わされている。別の実施形態では、創傷被覆材は、組み合わせから20秒未満以内に組織に適用される。更なる実施形態では、裏材は、編布、織布又は不織布の形態である。
【0100】
更なる実施形態では、製剤はトロンビンを含む。
【0101】
本発明の別の態様によれば、被験体における創傷組織を治療する方法が提供され、本方法は、(a)フィブリノーゲン及び/又はフィブリン含有液体製剤と、局所吸収性止血剤(TAH)裏材又はORCなどであるがこれに限定されないOCを含むスキャフォールドと、を生体外で組み合わせ、創傷被覆材を形成することと、(b)創傷上に創傷被覆材を適用することであって、組み合わせることから20秒未満以内に実施される、ことと、を含む。
【0102】
治療方法のこのような一実施形態では、裏材又はスキャフォールドは創傷に面する側を有し、液体製剤は、少なくとも部分的に創傷に面する側と組み合わされている。
【0103】
一実施形態では、創傷組織は出血組織である。
【0104】
更なる実施形態では、裏材はORCを含む。
【0105】
更なる実施形態では、裏材は、編布、織布又は不織布の形態である。
【0106】
更なる実施形態では、フィブリノーゲン及び/又はフィブリン含有製剤は、トロンビンを更に含む。
【0107】
一実施形態では、製剤は、液体トロンビン成分などであるがこれに限定されないトロンビン成分、及び液体フィブリノーゲン成分などであるがこれに限定されないフィブリノーゲン成分を含む、2成分製剤を含む。
【0108】
一実施形態では、本組み合わせは、フィブリノーゲン及び/又はフィブリン含有液体製剤の噴霧、塗布、ブラッシング、キャスティング、印刷、注入及び浸漬から選択される、1つ以上の工程を含む。
【0109】
一実施形態では、組み合わせることに続いて、方法は、創傷被覆材を創傷組織に押圧する工程を含む。
【0110】
更なる実施形態では、創傷被覆材の創傷組織の少なくとも一部への接着を可能にするのに十分な時間、押圧が行われる。
【0111】
更なる実施形態では、方法は、外科的処置中に創傷を治療するためのものである。
【0112】
更なる実施形態では、外科的処置は、腹部手術、心臓血管手術、胸部手術、頭部及び頸部手術、骨盤手術、並びに皮膚及び皮下組織処置から選択される処置を含む。
【0113】
一実施形態では、創傷組織は出血動脈を含む。
【0114】
一実施形態では、治療は、被験体、例えばヒト被験体における出血を低減させることを含む。
【0115】
本発明の別の態様によると、被験体における創傷組織を治療する方法が提供され、本方法は、フィブリノーゲン及び/又はフィブリンを含む液体製剤と、ORC裏材などではあるがこれに限定されない酸化セルロース裏材とを混合して、創傷被覆材を形成すること、並びに創傷被覆材を創傷上に適用することであって、組み合わせから20秒未満以内に適用を実施すること、を含む。
【0116】
いくつかの実施形態では、適用は、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2又は1秒以内、あるいは組み合わせの際に直ちに実施されてもよい。いくつかの実施形態では、創傷上への適用は、組み合わせることから少なくとも2~5秒後、又はいくつかの実施形態では、組み合わせることから少なくとも2~10秒後に実施される。
【0117】
このような一実施形態では、裏材は創傷に面する側を有し、液体製剤は、少なくとも創傷に面する側又はその一部分と組み合わされている。
【0118】
本発明は、被覆材を創傷に適用することによって、必要がある被験体における創傷を処置するための創傷被覆材の使用を提供し、被覆材は、ORC裏材などではあるがこれに限定されない酸化セルロース裏材と生体外で組み合わされた、フィブリノーゲン及び/又はフィブリン含有液体製剤を含む。この適用は、液体と裏材との組み合わせから20秒未満以内に実施される。
【0119】
このような一実施形態では、裏材又はスキャフォールドは創傷に面する側を有し、液体製剤は、少なくとも部分的に創傷に面する側と組み合わされている。
【0120】
このような一実施形態では、創傷組織は出血組織である。
【0121】
このような一実施形態では、裏材はORCを含む。
【0122】
このような一実施形態では、裏材は、編布、織布又は不織布の形態である。
【0123】
このような一実施形態において、フィブリノーゲン及び/又はフィブリン含有製剤は、トロンビンを更に含む。
【0124】
このような一実施形態では、製剤は、液体トロンビン成分などであるがこれに限定されないトロンビン成分、及び液体フィブリノーゲン成分などであるがこれに限定されないフィブリノーゲン成分を含む、2成分製剤を含む。
【0125】
このような一実施形態では、製剤は、液体トロンビン成分などであるがこれに限定されないトロンビン成分、及び液体フィブリン成分などであるがこれに限定されないフィブリン成分を含む、2成分製剤を含む。
【0126】
一実施形態では、本組み合わせは、フィブリノーゲン及び/又はフィブリン含有液体製剤の噴霧、塗布、ブラッシング、キャスティング、印刷、注入及び浸漬から選択される、1つ以上の工程を含む。
【0127】
このような一実施形態では、組み合わせることに続いて、方法は、創傷被覆材を創傷組織に押圧することを含む。
【0128】
このような一実施形態では、押圧は、創傷被覆材の創傷組織の少なくとも一部への接着を可能にするのに十分な時間である。
【0129】
このような一実施形態では、使用は、外科的処置中又は外科的処置に続いて、創傷を治療するためのものである。
【0130】
このような一実施形態では、外科的処置は、腹部手術、心臓血管手術、胸部手術、頭部及び頸部手術、骨盤手術、並びに皮膚及び皮下組織処置から選択される処置を含む。
【0131】
このような一実施形態では、創傷組織は出血動脈を含む。
【0132】
このような一実施形態では、使用は、被験体、例えばヒト被験体における出血を低減させることを含む。
【0133】
別の態様では、被験体における創傷組織を処置するためのキットが提供され、本キットは、ORC裏材などであるがこれに限定されない酸化セルロース(OC)裏材を含む第1の容器、並びにフィブリノーゲン及び/又はフィブリン含有製剤を含む第2の容器、並びに所望により、本明細書にて開示された方法に従って使用するための使用説明書を含む。
【0134】
キットの一実施形態では、製剤は液体又は凍結形態である。
【0135】
キットの更なる実施形態では、裏材は、編布、織布又は不織布の形態である。
【0136】
一実施形態では、キットは、第3の容器内にトロンビンを含む。
【0137】
キットの一実施形態では、製剤は、液体トロンビン成分などであるがこれに限定されないトロンビン成分、及び液体フィブリノーゲン成分などであるがこれに限定されないフィブリノーゲン成分を含む、2成分製剤を含む。
【0138】
キットの一実施形態では、製剤は、液体トロンビン成分などであるがこれに限定されないトロンビン成分、及び液体フィブリン成分などであるがこれに限定されないフィブリン成分を含む、2成分製剤を含む。
【0139】
以下の説明は、創傷被覆材の調製方法に関して本発明を説明するが、治療方法、創傷被覆材自体及びキット製品を含む、開示される本発明のその他の態様の特徴を説明するものとして読まれるべきである。
【0140】
本明細書にて開示された創傷被覆材の製造の目的で、2種の主要構成要素である、フィブリノーゲン及び/又はフィブリン含有液体製剤及びOC裏材が使用される。
【0141】
フィブリノーゲン及び/又はフィブリン含有液体製剤と酸化セルロース裏材との生体外での組み合わせは、出血創傷への接着を可能にし、したがって、創傷組織の状態、例えば出血の重症度に依存することなく止血に対処することが見出された。
【0142】
生体外に関する場合、本開示の文脈において、創傷組織と物理的に接触していない任意の位置として解釈されるべきである。
【0143】
用語「フィブリノーゲン及び/又はフィブリン含有液体製剤」又は「(フィブリノーゲン系シーラント製剤」)は、シーラントとして機能し得るフィブリノーゲン及び/又はフィブリンを含む液体製剤として理解されるべきである。本液体製剤はまた、フィブリン糊剤、フィブリンシーラント、フィブリン接着剤、フィブリン膜、フィブリン網状組織、フィブリン格子、フィブリンメッシュ、フィブリングリース及びフィブリンゲルの製剤などの、生物学的組織接着剤製剤に関連する。したがって、これらの製剤は、組織又は血液と接触した際に、続いて出血を低減させる若しくは出血を停止させる、及び/又は脳脊髄液(CSF)、リンパ液、胆汁、胃腸(GI)含有物、肺からの漏気等の、生理学的漏出を封止するように反応する成分を有する。
【0144】
本開示の文脈では、保管中に、製剤成分は互いに相互作用することがなく、それらが、凝固カスケードの部材と接触するまで本質的に不活性である、と更に理解すべきである。一度、部材がシーラント成分により活性化されると、凝固が始まり、フィブリン塊をベースとする組織接着が形成される。
【0145】
製剤中のフィブリノーゲン成分は、それ自体で精製及び単離されたフィブリノーゲンであってもよいが、血漿由来タンパク質の溶液を含むヒト血漿のフィブリノーゲン濃縮ウイルス不活性化クリオプレシピテートを含む血漿の生物学的活性成分(BAC)であってもよい。
【0146】
いくつかの実施形態では、フィブリノーゲンは、BACの一部として提供される。いくつかの種類のBACが存在する。いくつかの実施形態では、BACは、抗線溶薬としてトラネキサム酸を含む、生物学的活性成分である。
【0147】
いくつかのその他の実施形態では、BACは、トラネキサム酸を含有していない、生物学的活性成分である。これは、第2世代BACと考えられ、「BAC2」と当該技術分野では呼ばれている。BAC2の調製中に、プラスミノーゲン(フィブリノーゲン及びフィブリンを分解するプラスミンの酵素前駆体)及び/又はプラスミンが除去される。
【0148】
一実施形態では、BACはBAC2、即ち、トラネキサム酸を欠如している生物学的活性成分である。
【0149】
BACは、欧州特許第534178号の開示中の構成成分Aとして調製されてよい。例えば、その中の構成成分Aは、濃縮されたクリオプレシピテートから調製され、溶媒界面活性剤処理及び低温殺菌によって、ウイルスの不活性化を受ける。
【0150】
一部の実施形態では、BAC2は、主にフィブリノーゲンを含む、濃縮されたウイルス不活性化クリオプレシピテートであり、プラスミノーゲンが減損されている(欧州特許第1390485号に記載されているように、プラスミノーゲンの除去を行うことができる)である。クリオプレシピテートからプラスミン/プラスミノーゲンを除去することを考慮すると、トラネキサム酸、アプロチニン等ではあるがこれらに限定されない抗線溶薬を添加する必要はない。
【0151】
いくつかの実施形態では、フィブリノーゲンは、国際公開第2013001524(A1)号に開示されているように、水酸化アルミニウム沈殿物[第VIII因子(FVIII)の製造プロセスからの副生成物]から精製される。
【0152】
BAC溶液は、アルギニン、リシンなどではあるがこれらに限定されない安定化剤、又は当該技術分野において周知のようなその他のシーラント添加剤を更に含んでよい。
【0153】
いくつかの実施形態では、BAC、所望によりBAC2は、クリオプレシピテート(具体的には濃縮クリオプレシピテート)に由来し得る。
【0154】
本明細書において、特に明記しない限り、BACに関しては、好ましくはあるが専属的ではなく、BAC2を意味するものと考えられている。
【0155】
フィブリノーゲン源の例としては、組み換えフィブリノーゲン、精製フィブリノーゲン及びフィブリノーゲン成分が挙げられるが、これらに限定されない。
【0156】
いくつかの実施形態では、フィブリノーゲン及び/又はフィブリン含有液体製剤は、使用前に一緒にブレンドされる2成分製剤の一部として提供されている。いくつかのこのような2種の成分は、第1のフィブリノーゲン含有成分及び第2のトロンビン含有成分を含む。
【0157】
いくつかの実施形態では、本明細書にて開示された創傷被覆材の製造の目的のために、3つの主要な構成成分、(i)フィブリノーゲン含有成分、(ii)トロンビン含有成分及び(iii)ORC裏材などではあるがこれに限定されないOC裏材、が利用されている。
【0158】
いくつかの実施形態では、本明細書にて開示された創傷被覆材を製造する目的で、2成分フィブリンシーラント製剤は、ORC裏材などであるがこれに限定されないOC裏材と共に使用されている。いくつかの実施形態では、フィブリンシーラント製剤は、フィブリノーゲン含有成分及びトロンビン含有成分を含む。
【0159】
種々の市販のフィブリノーゲン系シーラント製剤が存在する。例えば、シーラント製剤は、EVICEL(登録商標)の商標で市販されているFDA認可シーラントなどであるがこれに限定されない、フィブリノーゲン及びトロンビンを含むものであり、BAC2(55~85mg/ml BAC2)及びトロンビン(800~1200IU/mlのヒトトロンビン)の凍結溶液のそれぞれの、1つのバイアル瓶を含有するパッケージである。
【0160】
更なる市販のシーラントは、商標名TISSEEL(登録商標)で市販されているFDA認可製品である。TISSEELは、凍結乾燥したシーラータンパク質濃縮物(フィブリノーゲン及びアプロチニン)と、フィブリン溶解阻害剤溶液及び塩化カルシウム溶液中でそれぞれ再構成されたトロンビンと、を含む、2成分フィブリンシーラントとして提供される、フィブリンシーラントである。
【0161】
いくつかのその他の実施形態では、製剤は、国際出願第PCT/IL2017/000006号に記載されているような、フィブリノーゲン、カルシウムイオン及び因子XIaを含む1/単一成分シーラント(糊剤)製剤である。
【0162】
いくつかのその他の実施形態では、フィブリノーゲン及び/又はフィブリン含有製剤は、水性製剤である。「水性製剤」に関する場合、水分子を含有する液体又は凍結形態の成分のブレンドを包含する、と考えられている。いくつかの実施形態では、水性製剤は液体形態である。液体形態である場合、液体キャリアが本質的に中性のpH、例えば、pH7.0±0.5を有する緩衝剤であるいくつかの実施形態と一致する。
【0163】
いくつかの実施形態では、製剤は冷凍されている。使用前に、製剤を解凍し、それによって室温で液体形態にしてよい。
【0164】
更にいくつかのその他の実施形態では、製剤は、粉末の形態であり、例えば、凍結乾燥され、使用前に粉末は水溶液で給湿される。
【0165】
本開示の文脈において、本明細書全体に記載されているように、酸化セルロース(OC)裏材はまた、酸化再生セルロース(ORC)裏材を包含する。
【0166】
いくつかの実施形態では、OC裏材は、ゼラチン、コラーゲン、キチン及びキトサンのうちの任意の1つ又はそれらの組み合わせなどの、TAHとして典型的に使用されるその他の物質と組み合わされてよい。
【0167】
一実施形態では、OCは創傷に面する側に存在し、一方で、ゼラチン、コラーゲン、キチン及びキトサンのうち任意の1つ又はそれらの組み合わせなどではあるがこれらに限定されない、TAHとして典型的に使用されるその他の物質は、創傷に面していない側に存在する。
【0168】
いくつかの実施形態では、OC裏材は、ゼラチン、コラーゲン、キチン及びキトサンのうちの任意の1つ又はそれらの組み合わせなどの、TAHとして典型的に使用されるその他の物質とは組み合わされない。
【0169】
「裏材」に関する場合、物理的構造、例えば、少なくともOCで作製されたスキャフォールド又はパッチを意味するものと考えられている。いくつかの実施形態では、裏材は布地の形態である。布地は、編布、織布又は不織布形態であってよい。
【0170】
本発明で使用する場合、用語「パッチ」は、身体の一部を保護するために使用される材料片に関し、あるものに形状を与える又はあるものを清浄にし、パッド、布、メッシュ、包帯剤、ガーゼ等を含むことが意図される。
【0171】
本発明で使用する場合、用語「パッド」は、表面又は創傷の上に縫い付けられる、又は別の方法で取り付けられ得る材料の小片に関する。
【0172】
本発明で使用する場合、用語「布」は、繊維から作製された織布又はフェルト化された布地に関する。
【0173】
本発明で使用する場合、用語「メッシュ」は、ワイヤ又は糸などの可撓性材料の接続されたストランドの網状組織から作製された材料に関する。
【0174】
本発明で使用する場合、用語「包帯剤」は、創傷の被覆に関する。
【0175】
本発明で使用する場合、用語「布地」は、製織、編み、かぎ針編み、結節、フェルト化又はボンディングによって製造される繊維の網状組織を含む可撓性材料に関する。
【0176】
本発明で使用する場合、用語「ガーゼ」は、包帯剤及び塗布に使用される薄い、緩く織られた布又は開放されたメッシュ様の織布で作製された任意の材料に関する。
【0177】
OC裏材は、創傷被覆材の形成のためのスキャフォールドを提供し得る。
【0178】
いくつかの実施形態では、「裏材」は、粉末、例えばOC粉末の形態である。
【0179】
最も一般的に使用されるOC裏地材料(局所用止血剤)のいくつかは、商標名SURGICEL(登録商標)で市販されている剤の群に属する。これらは酸化再生セルロース(ORC)から作製される。吸収性止血剤のSURGICEL(登録商標)の群は、全ての止血用創傷包帯がEthicon,Inc.(Somerville,N.J.)、Johnson & Johnson Companyから市販されている、4つの主要な製品グループを含む。
【0180】
SURGICEL(登録商標)オリジナル止血材は、薄黄色の色調を備える白色の布地であり、かすかにキャラメルのような香りを有する。本材料は強固であり、ほつれることなく縫合又は切断することができる。なお、ORC布材は緩い編地であり、外科用器具に粘着せず、そのサイズを容易に調節できる故に、その隣接する周囲に素早く適合し、かつ処理しやすい。これによって、外科医は、全ての出血が止まるまで、セルロースを適所にしっかりと保持することができる。出血の制御は、失血を最小限に抑え、術後合併症を低減させ、手術室での手術の時間を短くするために、外科的処置において必須かつ重要である。その生分解性及びその殺菌性及び止血特性故に、酸化セルロース、並びに酸化再生セルロースは、種々の外科的処置において局所用止血創傷被覆材として長く使用されてきた。
【0181】
群の一部材は、SURGICEL(登録商標)NU-KNIT(登録商標)吸収性止血剤であり、SURGICEL(登録商標)オリジナルと類似しているが、高密度な編地を有し、これにより引張り強度が高く、本材料は、出血を制御するために適所に包まれたり縫合されたりすることができるため、外傷及び移植手術での使用に特に推奨されており、
【0182】
SURGICEL(登録商標)FIBRILLAR(商標)吸収性止血剤の製品形態は、外科医が出血部位で止血を達成するために必要な任意の量の材料を鉗子で剥離及び把持することを可能にする層状構造を有し、したがって、到達しにくい、又は不規則な形状の出血部位に対しては、編布形態よりも便利であり得る。当該止血材は、整形外科/脊椎及び神経外科的手術における使用において特に推奨される。
【0183】
SURGICEL(登録商標)SNoW(商標)吸収性止血剤の製品形態は、構造化不織布であり、かつ高度に適応できるために、内視鏡用のその他の形態よりも便利であり得る構造化不織布であり、切開及び低侵襲的処置の両方において推奨されている。
【0184】
典型的には、SURGICELは、白色から薄黄色の色調を備える非研磨性非平坦性レーヨン布地である。これは、18~21%のカルボキシル含有量を有する。ニット構造体は、製品に応じて変化する。
SURGICEL Originalは編布材料であり、
NUKNITは、更なる種類の編布材料であり、
SURGICEL(登録商標)FIBRILLAR(商標)は不織布であり、
SNoWは光不織布である。
【0185】
いくつかの実施形態では、OC裏材は、非研磨性の非平坦性レーヨン布地であり、白色から薄黄色の色調を伴う。これは、12~18%のカルボキシル含有量を有する。INTERCEED(商標)は、編布材料である。
【0186】
典型的には、「不織布」は、織物製造業界で使用されており、織られたり編まれたりしていないフェルトなどであるが、これに限定されない織物を示す。
【0187】
典型的には、用語「不織布」は、紡績、織込み又は編込み以外のプロセスによって製造された、接着布、形成布又は改変布を含むが、これらに限定されない。不織布の構造は、典型的におおよそランダムに配列される、例えばステープルファイバの配列に基づく。それにもかかわらず、不織布を製造するために使用される原材料は、(欧州特許第1802358(A2)号に開示されるような)紡績、織込み又は編込みを含むプロセスによって作製された糸、スクリム、網目又はフィラメントであってよい。
【0188】
いくつかの実施形態では、OC裏材は、フィブリノーゲン及び/又はフィブリンが組み合わされた面を有する。この面は、裏材の「創傷に面する側」と称される。
【0189】
本開示によれば、創傷被覆材は、被覆材で処置される組織から離れた位置において、フィブリノーゲン及び/又はフィブリン含有液体製剤を酸化セルロース(OC)裏材と組み合わせることによって製造され、この組み合わせは、少なくともフィブリノーゲン及び/又はフィブリン含有製剤を裏材の創傷に面する側に適用又は提供することを含む。
【0190】
OC裏材とフィブリノーゲン及び/又はフィブリン含有製剤とを組み合わせることは、当該技術分野において周知の任意の手段によるものでもよい。これらには、噴霧、塗布、ブラッシング、キャスティング、印刷、注入、浸漬、コーティング及びこれらの任意の組み合わせによって、少なくとも裏材の創傷に面する側として指定された側面に適用することが挙げられるが、これらに限定されない。
【0191】
理論に束縛されるものではないが、シーラント成分が創傷に架橋及び接着し、TAH裏材によって支持される薄弱な液密バリアを形成すると思われる。シーラント成分はまた、多孔質OC繊維/TAH内で架橋し、OCを形成された液密バリアに機械的に固定する。
【0192】
シーラント(生物学的糊剤)の形成は、液体製剤とOC裏材との組み合わせに続いて比較的短い時間で生じる。構成要素と創傷上への適用との組み合わせに好適な狭い期間が存在するが、これは、その他の期間と比較して、結果として得られる被覆剤に対して優れた接着性を提供することが見出された。
【0193】
なお、本発明による組み合わせは、以下に更に記載されるように、シーラントの創傷側への直接適用が洗い流され/希釈され得る重度の出血の場合に、有利であることが見出された。
【0194】
以下の非限定的実施例に示されるように、創傷上への創傷被覆材の適用は、組み合わせ時から20秒未満、即ち、20秒未満の最小架橋時間であるべきであることが見出された。
【0195】
液体製剤とOC裏材との生体外での本組み合わせは、創傷上に適用される創傷被覆材を提供する。
【0196】
いくつかの実施形態では、創傷被覆材は、重度の出血創傷上に適用された場合に、即ち、創傷からの血液及び/又はその他の体液の流れが強力である場合に、特に有利である。
【0197】
いくつかの実施形態では、生体外で形成された創傷被覆材の配置は、フィブリノーゲン及び/又はフィブリン含有液体製剤をOC裏材と組み合わせることによるその作製の瞬時からの任意の時点内であり、また組み合わせの瞬間から19秒まで、時々18秒まで、時々17秒まで、時々16秒まで、時々15秒まで、時々14秒まで、時々13秒まで、時々12秒まで、時々11秒まで、時々10秒まで、時々9秒まで、時々8秒まで、時々7秒まで、時々6秒まで、時々5秒まで、時々4秒まで、時々3秒まで、である。いくつかの実施形態では、創傷上への適用は、調製から少なくとも2~5秒後、時々、調製から少なくとも2~10秒後である。
【0198】
一度、創傷被覆材が作製されると、創傷上に適用される。いくつかの実施形態では、これは、標的/創傷組織に対してそれを押圧することを含む。
【0199】
いくつかの特定の実施形態では、創傷組織は出血動脈を含む。
【0200】
創傷被覆材は、創傷被覆材の創傷組織の少なくとも一部への接着を可能にするのに十分な時間押圧される。このようにして、形成されたフィブリン糊剤と被験体の凝固血液との併用効果は、創傷組織の出血の制御を補助することができる。
【0201】
いくつかの実施形態では、創傷被覆材は、出血が本質的に停止するまで創傷に対して押圧される。
【0202】
本明細書にて開示された方法及び製造された創傷被覆材は、種々の動物組織を治療するために使用されてよい。この文脈では、動物は、ヒト及び非ヒト動物であってよい。
【0203】
いくつかの実施形態では、動物は哺乳類である。
【0204】
いくつかの実施形態では、動物はヒト被験体である。
【0205】
本明細書にて開示された創傷被覆材を用いた処置は、任意の標準的な処置中、例えば、パーソナルケア(即ち、自宅における)、診療所において、外科的処置中に与えられ得る。
【0206】
これらに限定されるものではないが、腹部手術、心臓血管手術、胸部手術、頭部及び頸部手術、骨盤手術、皮膚及び皮下組織処置などに使用することができる本開示の創傷被覆材における多くの外科的処置が存在する。
【0207】
創傷被覆材の製造を容易にするために、その構成成分、即ち、フィブリノーゲン含有製剤(これは、上記の2成分製剤又は単一成分製剤である)、及びOC裏材は、市販のキット内の別個の構成成分として提供され得る。この目的のために、例えば、創傷治療に使用するためのラベルを含むキットは、フィブリノーゲン製剤を含む第1の容器/パッケージと、OC裏材を収容する第2の容器/パッケージとを含む。
【0208】
フィブリノーゲン含有製剤は、例えば、凍結形態である場合に長期間保存され、かつ使用直前に解凍され得るように、液体又は凍結形態で保存されてもよい。
【0209】
いくつかの実施形態では、キットには、創傷被覆材の生体外での製造及び創傷上へのその適用のために、フィブリノーゲン及び/又はフィブリン含有製剤と組み合わせてOC裏材を使用するための取扱説明書が提供される。
【0210】
いくつかの実施形態では、取扱説明書は、このようにして形成された創傷被覆材を、(本明細書で上記に定義されるように)組み合わせの瞬間から20秒未満の時間間隔で適用することを含む。
【0211】
本発明で使用する場合、用語「約」とは、±10%を意味する。
【0212】
用語「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(having)」及びそれらの複合体は、「含むが、これらに限定されない(including but not limited to)」を意味する。用語「~からなる(consisting of)」は、「包含し、限定される(including and limited to)」ことを意味する。用語「~から本質的になる(consisting essentially of)」とは、組成物、方法又は構成が、追加の成分、工程及び/又は部分を含み得ることを意味するが、追加の成分、工程及び/又は部分が、特許請求される組成物、方法又は構成の基本的かつ新規の特性を実質的に変えない場合に限る。
【0213】
単語「代表的な」とは、本明細書では、「実例、事例又は例証としての役割を果たす」を意味する。「代表的な」として記載される任意の実施形態は、その他の実施形態よりも好ましい又は有利であると必ずしも解釈される必要はない、及び/又はその他の実施形態からの特徴の組み込みを必ずしも排除する必要はない。
【0214】
本明細書では、単語「所望により(optionally)」は、いくつかの実施形態では提供され、その他の実施形態では提供されないことを意味する。本発明の任意の特定の実施形態は、このような特徴が矛盾しない限り、複数の「任意の」特徴を含んでもよい。
【0215】
本発明で使用する場合、その内容に別段の明確な指示がない限り、単数形「a」、「an」及び「the」は複数の指示物を含むものとする。例えば、用語「化合物(compound)」又は「少なくとも1つの化合物(at least one compound)」は、これらの混合物を含む複数の化合物を含んでよい。
【0216】
本出願全体をとおして、本発明の種々の実施形態が範囲形式にて提示されてもよい。範囲形式の説明は単に便宜上及び簡潔さのためのものであり、本発明の範囲上の確固とした制限として解釈されるべきではない、と理解すべきである。したがって、範囲の説明は、全ての可能な部分範囲、並びにその範囲内の個々の数値を具体的に開示していると見なされるべきである。例えば、1~6などの範囲の説明は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの具体的に開示される部分範囲、並びにその範囲内の個々の数、例えば、1、2、3、4、5及び6を有すると見なされるべきである。これは、範囲の広さにかかわらず適用される。
【0217】
数値範囲が本明細書に示される場合はいつでも、示された範囲内の任意の引用された数字(分数又は整数)を含むことを意味する。用語、第1の表示番号と第2の表示番号との「間の範囲(ranging)/範囲(ranges)」、及び第1の表示番号「から」第2の表示番号「までの範囲(ranging)/範囲(ranges)」が本明細書で互換的に使用されるが、これは、第1及び第2の表示番号並びにこれらの間の全ての分数及び整数を含むことを意味する。
【0218】
本発明で使用する場合、用語「方法」とは、所与のタスクを達成するための方法、手段、技術及び手順を意味し、化学的、薬理学的、生物学的、生化学的及び医学的分野の施術者による周知の方法、手段、技術及び手順として知られる、又は容易に開発される、かのいずれかの方法、手段、技術及び手順のようなものを含むが、これらに限定されない。
【0219】
本発明で使用する場合、用語「治療する(treating)」は、病状の進行を抑制すること、実質的に阻害すること、緩徐化すること、若しくは逆行させること、状態の臨床症状若しくは審美的症状を実質的に改善すること、又は状態の臨床症状若しくは審美的症状の外観を実質的に予防することを含む。
【0220】
「A、B及びCなどのうちの少なくとも1つ」に類する表記が用いられる場合、一般に、このような構文は、当業者がその表記を理解するであろう意味で意図されている(例えば、「A、B及びCのうちの少なくとも1つを有するシステム」は、限定するものではないが、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AとBの両方、AとCの両方、BとCの両方及び/又はAとBとCの全てなどを有するシステムを含む)。更に、実質上、2つ若しくはそれ以上の選択的な用語を表すあらゆる選言的な語及び/又は句は、明細書内であろうと、請求の範囲内であろうと、あるいは図面内であろうと、それら用語のうちの1つ、それらの用語のうちのいずれか、又はそれらの用語の両方を含む可能性を意図すると理解されるべきであることが、当業者には理解されよう。例えば、語句「A又はB」は、「A」若しくは「B」又は「A及びB」の可能性を含むものと理解されよう。
【0221】
本発明の特定の特徴は、明確性のために別個の実施形態の文脈において記載されているが、これはまた、単一の実施形態において組み合わせて提示されてもよいことが理解されている。逆に、本発明の種々の特徴は、簡潔さのために、単一の実施形態の文脈において記載されているが、これはまた、別個に、若しくは任意の好適な部分的組み合わせで、又は本発明の任意のその他の記載される実施形態において好適にもたらされてもよい。種々の実施形態の文脈において記載される特定の特徴は、その実施形態がそれらの要素なしには動作不可能である場合を除き、それらの実施形態の必須特徴であるとして考慮されるべきではない。
【0222】
本明細書の上記で詳述され、以下の特許請求の範囲において特許請求されるような、本発明の種々の実施形態及び態様は、以下の実施例における実験的な支持を見出す。
【実施例】
【0223】
以下の実施例を参照すると、上記の説明と併せて、非限定的な方法で本発明のいくつかの実施形態が例示されている。
【0224】
以下の非限定的な実施例では、本明細書にて開示された創傷被覆材の架橋時間及び接着強度を生体外モデルで検査した。
【0225】
実施例1:生体外モデルにおける接着強度
材料:
露出した真皮を有するブタの皮膚組織をラハフ受託研究機関(Lahav contract research organization,C.R.O.)から受容し、冷却した容器(4℃)で送達した。
【0226】
フィブリンシーラントの適用のために、EVICEL(登録商標)エアレススプレイアクセサリ先端を5mlのEVICEL(登録商標)装置の上部に組み立てた。
【0227】
EVICEL(登録商標)は、BAC2(55~85mg/mlのBAC2)及びトロンビン(800~1200IU/mlのヒトトロンビン)の、それぞれの1つのバイアル瓶を含有するパッケージである。
【0228】
代表的な手順(実施例2を含む)では、BAC2成分及びトロンビン成分は、1:1(v/v)の比で組み合わされる(したがって、それに応じて希釈される)。
【0229】
EVICEL(登録商標)を直接組織上又はSURGICEL(登録商標)上のどちらかに適用した際に、1mlのフィブリンシーラントを使用した。
【0230】
SURGICEL(登録商標)を適用した際に、対照として、又はEVICEL(登録商標)の組み合わせで、のどちらかで使用するために、SURGICEL NU-KNIT(登録商標)を5.08cm×5.08cmのパッチサイズに切断した。
【0231】
接着強度-生体外モデル:
ブタの皮膚組織を使用して、フィブリンシーラント及びORCパッチから調製された創傷被覆材の接着強度を評価し、参照方法(以下に記載される)に関して本開示の方法に従って組織に適用した。
【0232】
本開示の方法:フィブリンシーラントEVICEL(登録商標)をORCパッチSURGICEL NU-KNIT(登録商標)上に適用し、組み合わせた製品をブタの皮膚組織上に一緒に適用した。
【0233】
参照方法:フィブリンシーラントEVICEL(登録商標)をブタの皮膚組織上に適用し、続いてORCパッチSURGICEL NU-KNIT(登録商標)をEVICEL(登録商標)の上部に適用した。
【0234】
また、この試験では、接着強度に対するEVICEL(登録商標)の架橋時間(「硬化時間」)の効果を検査した。この目的のために、フィブリンシーラントが、一度、SURGICEL(登録商標)又は組織上のどちらかに直接適用されると、異なる「硬化時間」での接着強度を決定した。
【0235】
方法:
ブタの皮膚組織を、真皮側を上向きに置き、生理食塩水(0.9%)の浸漬ガーゼを使用して水和させて、必要に応じて組織を湿らせた。1mlのフィブリンシーラントEVICEL(登録商標)を、真皮上のSURGICEL NU-KNIT(登録商標)の5.08cm×5.08cmのパッチと組み合わせて適用した。EVICEL(登録商標)が組織上に直接適用され、続いてSURGICEL(登録商標)が適用される、又はSURGICEL(登録商標)上にEVICEL(登録商標)を適用し、続いてそれらの接合された適用を組織に適用した。
【0236】
接着強度に対するEVICEL(登録商標)の架橋時間(「硬化時間」)の効果を検査するために、フィブリンシーラントを、SURGICEL(登録商標)上又は組織上のどちらかに適用し、2つの「硬化時間」(EVICEL(登録商標)の組織への適用から直ちに、即ち、約0秒及び20秒で、又はSURGICEL(登録商標)パッドへの適用から約0秒及び20秒で)の測定を行う。
【0237】
特定の時間において、ORCパッチ(フィブリンシーラントを有する又は有さない)を皮膚上に適用した。その場で2分後、鉗子を用いて被覆剤(フィブリンシーラントを伴うパッチ)を組織から引き離し、接着強度を0~5のスケールで手動にて評価し、これにより、接着性には0のスコアが与えられ、示強接着性には5のスコアが与えられた。対照として、EVICEL(登録商標)を伴わないSURGICEL(登録商標)の接着力も測定した。
【0238】
結果:
フィブリンシーラント(フィブリン糊剤)を組織上に直接適用し、続いてORCパッチを適用した(参照方法)、又はフィブリンシーラント(フィブリン糊剤)をORCパッチ上に適用し、続いてコーティングされたパッチを組織上に適用した(本明細書に開示される方法)。
【0239】
組織に対するパッチの接着強度を0~5のスケールで評価した、異なる架橋/硬化時間を測定した。対照として、EVICEL(登録商標)を伴わないSURGICEL(登録商標)の接着力も測定した。
【0240】
結果を
図1に示す。具体的には、
図1は、パッチ、即ち創傷被覆材を組織から取り除くために必要とされる強度を、棒グラフの形態で提示する。
【0241】
「直ちに」として特定された最も左側のバーは、組み合わされたパッチ/フィブリンシーラントがいずれかの方法によって組織に適用された場合に、組織からパッチを取り除く/剥離するためにほぼ同じ量の力が必要とされることを示す。しかし、同様に示されるように、組み合わせが生体外で行われた場合、組み合わされたパッチの適用は20秒未満である必要があり、さもなければ接着強度が低下する。
【0242】
換言すれば、
図1の結果は、適用技術が直接適用された場合に、適用技術間に統計的有意性がないことを示す。これは、新規技術が、接着強度に関しては、少なくとも同等の方法であるかを実証する。しかし、組み合わされたパッチ/フィブリンシーラントの適用を含むパッチが、フィブリンシーラント適用後20秒で実施された場合に、統計的有意性が見出され得る。これは、適用方法におけるタイミングの重要性を示す。
【0243】
したがって、フィブリン製剤と裏材とを生体外で組み合わせるという利点があるが(例えば、重度出血の場合に、出血創傷による製剤の洗い流しがない)、これは、被覆剤の強度/粘着性を保持するために20秒未満で行われる必要がある。
【0244】
実施例2:生体外モデルにおける接着強度
ORCパッチSURGICEL NU-KNIT(登録商標)上に適用されたフィブリンシーラントの生体外での有効性を、次に検査した。
【0245】
フィブリンシーラント1mlをORCパッチ(5.08cm×5.08cm)に適用することによって、試験物品を調製した。次に、種々の架橋時間により(架橋時間は、フィブリンシーラントをORCに適用してから試験物品を欠損部位に適用するまでの時間として定義される)、フィブリンシーラントが適用され、続いて試験物品が欠損部位に適用されることが可能となった。検査した架橋時間は、約0秒(即時)、10秒後及び20秒後の架橋時間であった。
【0246】
使用される動物処置は、以下の変更を伴って、MacDonaldらにより以前に報告されている、2017,Medical Devices:Evidence and Research 10:273~279の手順に基づく。
-2mmに設定された停止部を伴う8mmの使い捨て生検パンチを使用した。
-試験物品適用後にタンポナーデを30秒間適用し、自由流動血液の存在を2分間監視した。
【0247】
簡潔に述べると、ブタにおいて腹側正中腹部切開を実施し、正中切開の頭蓋部分を延長して肝臓の曝露を改善した。試験表面の利用能を最大化するために、必要に応じて肝臓を位置付けた。処置全体を通じて、生理食塩水及び生理食塩水に浸した腹腔切開スポンジで腹部臓器を湿らせた。深さ止めが2mmに設定された使い捨ての8mm生検パンチを使用して、左、右及び方形葉のアクセス可能領域の横隔膜表面上に、肝実質欠損を生じさせた。生検のコア部分を掴んで、下にある表面に軽度から中程度の出血を生じさせることなく、鋭く切開した。
【0248】
得られた出血の特性評価を可能にするために、製品適用に先立って欠損部位を数秒間出血させた。試験部位をガーゼで拭き取り、次に試験物品の1つを適用した。本研究の目的のために、有効な止血は、易流動性出血の停止として定義された。出現していたが成長しなかった少量出血又は点状出血は、易流動性出血であるとは考えられなかった。試験物品を調製し、次に欠損(出血部位)に手作業で適用した。ガーゼ上のデジタル圧力を使用してタンポナーデを30秒間適用した。最初の30秒のタンポナーデに続いて、被覆剤を除去した。止血が120秒後に達成されなかった場合、試験物品は、有効な止血を達成することができないと判定された。ORCパッチ(SURGICEL(登録商標)パッド)上に適用され、続いて異なる架橋時間を伴って欠損部位に適用された、フィブリンシーラント(EVICEL(登録商標))の有効性の結果を、表1に示す。
【0249】
【0250】
結果は、効果的な止血が、ORCへのフィブリンシーラントの適用、続いてそれらの組み合わせられた欠損部位への適用によって達成され得るが、本ブタモデルでは、許容された架橋時間が20秒未満である場合にのみ達成され得ることを実証する。
【0251】
本発明は、その特定の実施形態と共に記載されてきたが、多くの代替、変更及び変形形態が当業者には明白となることは明らかである。したがって、これは、添付の特許請求の趣旨及び広義の範囲内にある、このような代替、変更及び変形形態の全てを包含することを目的としている。
【0252】
本明細書で言及される全ての刊行物、特許及び特許出願は、それぞれの個々の刊行物、特許又は特許出願が、参考として本明細書に組み込まれていることが具体的かつ個別に示されているかのように、それら全体が、本明細書に参考として組み込まれる。なお、本出願におけるいずれの参照文献の引用又は特定も、このような文献が本発明の先行技術として利用可能であることを認めるものと解釈されるべきではない。セクションの見出しが使用される限り、それらは必ずしも限定的であると解釈されるべきではない。
【0253】
〔実施の態様〕
(1) 組織上に適用される創傷被覆材を製造するための方法であって、前記方法は、フィブリノーゲン及び/又はフィブリンを含む液体製剤を酸化セルロース(OC)裏材と、生体外で組み合わせ、それによって前記創傷被覆材を得ることを含む、方法。
(2) 前記OC裏材が、創傷に面する側を有し、前記液体製剤が、少なくとも前記創傷に面する側と組み合わされている、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記創傷被覆材が、前記組み合わせから20秒未満以内に組織に適用されることになる、実施態様1又は2に記載の方法。
(4) 前記OC裏材が、酸化再生セルロース(ORC)を含む、実施態様1~3のいずれかに記載の方法。
(5) 前記OC裏材が、編布、織布又は不織布の形態である、実施態様1~4のいずれかに記載の方法。
【0254】
(6) 前記液体製剤が、トロンビンを含む、実施態様1~5のいずれかに記載の方法。
(7) 前記組み合わせることが、前記液体製剤の噴霧、塗布、ブラッシング、キャスティング、印刷、注入及び浸漬のいずれか1つを含む、実施態様1~6のいずれかに記載の方法。
(8) 前記トロンビンが、400~1200IU/mlの範囲の濃度で存在する、実施態様6又は7に記載の方法。
(9) 前記フィブリノーゲン及び/又はフィブリンが、10~120mg/mlの範囲の濃度で存在する、実施態様1~8のいずれかに記載の方法。
(10) フィブリノーゲン及び/又はフィブリンを含む液体製剤と、酸化セルロース(OC)裏材との生体外で形成された組み合わせを含む、創傷被覆材。
【0255】
(11) 前記液体製剤が、前記創傷被覆材の創傷に面する側と少なくとも部分的に組み合わされている、実施態様10に記載の創傷被覆材。
(12) 前記OC裏材が、酸化再生セルロース(ORC)を含む、実施態様10又は11に記載の創傷被覆材。
(13) 前記OC裏材が、編布、織布又は不織布の形態である、実施態様10~12のいずれかに記載の創傷被覆材。
(14) 前記液体製剤が、トロンビンを更に含む、実施態様10~13のいずれかに記載の創傷被覆材。
(15) 前記トロンビンが、400~1200IU/mlの範囲の濃度で存在する、実施態様14に記載の創傷被覆材。
【0256】
(16) 前記フィブリノーゲン及び/又はフィブリンが、10~120mg/mlの範囲の濃度で存在する、実施態様10~15のいずれかに記載の創傷被覆材。
(17) 前記液体製剤が、前記裏材内に噴霧、塗布、ブラッシング、キャスティング、印刷又は浸漬されている、実施態様10~16のいずれかに記載の創傷被覆材。
(18) 被験体において創傷組織を治療する方法であって、前記方法が、
(a)フィブリノーゲン及び/又はフィブリンを含む製剤と、酸化セルロース(OC)裏材と、を生体外で組み合わせ、創傷被覆材を形成することと、
(b)創傷上に前記創傷被覆材を適用することであって、前記適用することが、前記組み合わせることから20秒未満以内に実施される、ことと、を含む、方法。
(19) 前記OC裏材が、創傷に面する側を有し、前記液体製剤が少なくとも前記創傷に面する側と組み合わされており、前記創傷に面する側は、前記創傷組織上に適用されている、実施態様18に記載の方法。
(20) 前記創傷組織が、出血組織である、実施態様18又は19に記載の方法。
【0257】
(21) 前記裏材が、酸化再生セルロース(ORC)を含む、実施態様18~20のいずれかに記載の方法。
(22) 前記OC裏材が、編布、織布又は不織布の形態である、実施態様18~21のいずれかに記載の方法。
(23) 前記製剤が、トロンビンを更に含む、実施態様18~22のいずれかに記載の方法。
(24) 前記トロンビンが、400~1200IU/mlの範囲の濃度で存在する、実施態様23に記載の方法。
(25) 前記フィブリノーゲン及び/又はフィブリンが、10~120mg/mlの範囲の濃度で存在する、実施態様18~24のいずれかに記載の方法。
【0258】
(26) 前記組み合わせることが、前記液体製剤の噴霧、塗布、ブラッシング、キャスティング、印刷、注入及び浸漬のいずれか1つを含む、実施態様18~25のいずれかに記載の方法。
(27) 前記創傷組織に対して前記創傷被覆材を押圧することを更に含む、実施態様18~26のいずれかに記載の方法。
(28) 前記押圧することは、前記創傷被覆材が、前記創傷組織の少なくとも一部へと接着することを可能にするのに十分な時間にわたって実施される、実施態様27に記載の方法。
(29) 前記被験体が、ヒト被験体である、実施態様18~28のいずれかに記載の方法。
(30) 外科的処置中に、創傷を治療するための、実施態様18~29のいずれかに記載の方法。
【0259】
(31) 前記外科的処置が、腹部手術、心臓血管手術、胸部手術、頭部及び頸部手術、骨盤手術又は皮膚及び皮下組織処置を含む、実施態様30に記載の方法。
(32) 前記創傷組織が、出血動脈を含む、実施態様18~31のいずれかに記載の方法。
(33) 前記治療が、出血を低減させることを含む、実施態様18~32のいずれかに記載の方法。
(34) 被験体における創傷組織を治療するためのキットであって、
酸化セルロース(OC)裏材を含む、第1の容器と、
フィブリノーゲン及び/又はフィブリンを含む製剤を含む、第2の容器と、を含む、キット。
(35) 前記製剤が、液体又は凍結形態である、実施態様34に記載のキット。
【0260】
(36) 前記OC裏材を前記製剤と組み合わせ、生体外で使用するための取扱説明書を含む、実施態様34又は35に記載のキット。
(37) 前記OC裏材が、酸化再生セルロース(ORC)を含む、実施態様34~36のいずれかに記載のキット。
(38) 前記OC裏材が、編布、織布又は不織布の形態である、実施態様34~37のいずれかに記載のキット。
(39) 前記第2の容器内にトロンビンを更に含む、実施態様34~38のいずれかに記載のキット。