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特許7337807水中での金属腐食を低減するためのプロセスおよび方法
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  • 特許-水中での金属腐食を低減するためのプロセスおよび方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-25
(45)【発行日】2023-09-04
(54)【発明の名称】水中での金属腐食を低減するためのプロセスおよび方法
(51)【国際特許分類】
   C23F 11/14 20060101AFI20230828BHJP
【FI】
C23F11/14
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020537233
(86)(22)【出願日】2018-12-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-04-01
(86)【国際出願番号】 US2018067861
(87)【国際公開番号】W WO2019135989
(87)【国際公開日】2019-07-11
【審査請求日】2021-12-13
(31)【優先権主張番号】62/613,255
(32)【優先日】2018-01-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510250467
【氏名又は名称】エコラボ ユーエスエー インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 肇
(74)【代理人】
【識別番号】100191444
【弁理士】
【氏名又は名称】明石 尚久
(72)【発明者】
【氏名】シエ イェンチアオ
(72)【発明者】
【氏名】ジョティバス シータラマン
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ ジョセフ ミッチェルズ
(72)【発明者】
【氏名】フレデリック シフィエンチンスキー
(72)【発明者】
【氏名】ドナルド エー.ジョンソン
(72)【発明者】
【氏名】プラディープ チェルク
【審査官】▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/191672(WO,A1)
【文献】特表2018-517844(JP,A)
【文献】特開昭63-194799(JP,A)
【文献】特表2002-541333(JP,A)
【文献】特開2003-096580(JP,A)
【文献】特開平05-169094(JP,A)
【文献】特表2018-508598(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23F 11/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属表面を含む水性系にベンゾイミダゾールを添加することと、
臭素、ヨウ素、臭素前駆体、ヨウ素前駆体、およびこれらの任意の組み合わせから選択される酸化性ハロゲンを前記水性系に添加することと、を含む、水性系における金属表面の腐食を低減する方法であって、
前記酸化性ハロゲンの投入量は、0.01ppm~500ppmの範囲であり、
前記ベンゾイミダゾールが、式(I)の化合物またはその塩であり、
【化1】
式中、
は、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基、水素、重水素、ヒドロキシル、カルボニル、置換もしくは非置換C~C16アルキル、置換もしくは非置換Cアリール、置換もしくは非置換C~C16アルケニル、置換もしくは非置換C~C16アルキニル、置換もしくは非置換C~Cヘテロアリール、または置換もしくは非置換C~Cシクロアルキルであり、
Xは、Cであり、
Yは、ヒドロキシルであり、
およびRは、それぞれ独立して、水素、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基、ヒドロキシル、置換または非置換Cアリール、置換または非置換C~Cヘテロアリール、カルボニル、置換または非置換C~C16アルケニル、置換または非置換C~C16アルキニル、置換または非置換C~Cシクロアルキル、および置換または非置換C~C16アルキルからなる群から選択され、
、R、R、およびRは、それぞれ独立して、水素、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基、アミノ、シアノ、置換または非置換C~C16アルコキシ、ヒドロキシル、チオール、カルボニル、ニトロ、ホスホリル、ホスホニル、スルホニル、置換または非置換C~C16アルキル、置換または非置換Cアリール、置換または非置換C~C16アルケニル、置換または非置換C~C16アルキニル、置換または非置換C~Cヘテロアリール、および置換または非置換C~Cシクロアルキルからなる群から選択され、
ただし、R、R、RおよびRのうちの少なくとも1つが水素である、方法。
【請求項2】
前記ハロゲンが、臭素前駆体、ヨウ素前駆体、またはこれらの任意の組み合わせである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
イソシアネート、ヒダントイン、スルファミン酸、アンモニア、尿素、アミン、またはこれらの任意の組み合わせであるハロゲン安定剤を添加することをさらに含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記水性系における金属表面の腐食速度を測定することをさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記金属表面が銅または銅合金である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記式(I)の化合物またはその塩の投入量を調整して、所定の腐食速度を達成することをさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ハロゲンの投入量を調整して、所定の腐食速度を達成することをさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ベンゾイミダゾールの投入量が0.01ppm~100ppmの範囲である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ハロゲンの投入量が0.01ppm~100ppmの範囲である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記水性系が殺生物剤を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記水性系が、塩素化された水性系、臭素化された水性系、ヨウ素化された水性系、またはこれらの任意の組み合わせである、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
、R、R、またはRのうちの少なくとも1つが、その場でブロモ、またはヨードによって置換される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
式(I)の化合物またはその塩が、下式からなる群から選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法:
【化2】
【請求項14】
前記式(I)の化合物またはその塩が、その場で臭素化され、下式からなる群から選択される少なくとも一つの化合物を生成する、請求項11に記載の方法:
【化3】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
本開示は、概して、水性系における金属表面の腐食を低減することに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、銅および銅合金の成分は、銅の高熱伝導性および抗菌特性により、産業システムで使用される。銅および銅合金(例えば、青銅および黄銅)は、銅の表面を自然に被覆する保護膜層の結果として、腐食に対して比較的耐性があり、内側亜酸化銅膜層および外側酸化第二銅膜層を含む。嫌気性条件下では、これらの保護層は、一般に金属表面のさらなる腐食の速度を低下させる。しかしながら、特定の条件下では、銅および銅合金は、例えば、酸素の存在下で腐食しやすく、酸性条件下では、銅の酸化および水中への銅(II)イオンの溶解が起こる場合がある。
【0003】
通常、銅腐食抑制剤を工業用水システムに添加して、システム表面から銅の溶解を防止および低減する。例えば、トリトリアゾールは、銅および銅合金の腐食を抑制することができる。一般に、窒素の孤立電子対が金属に配位し、その結果、水性系に存在する元素から銅の表面を保護する、薄い有機膜層が形成されると考えられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、酸化性ハロゲンは、工業システムの殺生物剤として使用され、水中のスライムおよび微生物の増殖を制御する。多くのアゾールによって提供される保護膜は、塩素、次亜塩素酸塩、および次亜臭素酸塩などの酸化性ハロゲンの存在下で侵食され、腐食抑制剤の効果を低下させる。さらに、溶液中の腐食抑制剤のハロゲン攻撃により、酸化性ハロゲンの存在下で銅(II)の沈殿の減少が、しばしば発生する。したがって、酸化性ハロゲンの存在下では、有機保護膜を維持するために、腐食抑制剤の過剰または連続注入が、しばしば必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
いくつかの実施形態では、水性系における金属表面の腐食を低減する方法が開示される。本方法は、金属表面を含む水性系にベンゾイミダゾールを添加することと、臭素、ヨウ素、およびこれらの任意の組み合わせから選択されるハロゲンを水性系に添加することと、を含むことができる。
【0006】
いくつかの実施形態では、ベンゾイミダゾールは、式(I)の化合物またはその塩であってもよく、
【化1】
式中、Rは、ハロ、水素、重水素、ヒドロキシル、カルボニル、置換もしくは非置換C~C16アルキル、置換もしくは非置換C~Cアリール、置換もしくは非置換C~C16アルケニル、置換もしくは非置換C~C16アルキニル、置換もしくは非置換C~Cヘテロアリール、または置換もしくは非置換C~Cシクロアルキルであってもよく、
【0007】
Xは、存在しないか、CRYであるか、またはNRYであってもよく、
【0008】
Yは、ヒドロキシル、ハロ、オキソ、置換もしくは非置換C~C16アルコキシ、チオール、アルキルチオ、アミノ、水素、またはアミノアルキルであってもよく、
【0009】
およびRは、それぞれ独立して、水素、ハロ、ヒドロキシル、置換または非置換C~Cアリール、置換または非置換C~Cヘテロアリール、カルボニル、置換または非置換C~C16アルケニル、置換または非置換C~C16アルキニル、置換または非置換C~Cシクロアルキル、および置換または非置換C~C16アルキルからなる群から選択されてもよく、
【0010】
、R、R、およびRは、それぞれ独立して、水素、ハロ、アミノ、シアノ、置換または非置換C~C16アルコキシ、ヒドロキシル、チオール、カルボニル、ニトロ、ホスホリル、ホスホニル、スルホニル、置換または非置換C~C16アルキル、置換または非置換C~Cアリール、置換または非置換C~C16アルケニル、置換または非置換C~C16アルキニル、置換または非置換C~Cヘテロアリール、および置換または非置換C~Cシクロアルキルからなる群から選択されてもよいが、ただし、R、R、RおよびRのうちの少なくとも1つが、水素であることを条件とする。
【0011】
いくつかの実施形態では、ベンゾイミダゾールは、式(II)の化合物またはその塩であってもよく、
【化2】
式中、Rは、水素、置換もしくは非置換C~C16アルキル基、または置換もしくは非置換C~Cアリール基であってもよく、
【0012】
は、結合またはCHRであってもよく、
【0013】
は、水素、ハロ、NR1011、またはOR10であってもよく、
【0014】
10およびR11は、それぞれ独立して、水素、置換または非置換C~C12アルキル基、および置換または非置換C~Cアリール基からなる群から選択されてもよく、
【0015】
Zは、独立して窒素、CR、またはN10であってもよい。
【0016】
いくつかの実施形態では、Zは、CRであってもよく、Rは、水素であってもよい。
【0017】
いくつかの実施形態では、ハロゲンは、臭素前駆体、ヨウ素前駆体、またはこれらの任意の組み合わせであってもよい。
【0018】
いくつかの実施形態では、本方法は、イソシアネート、ヒダントイン、スルファミン酸、アンモニア、尿素、アミン、またはこれらの任意の組み合わせであるハロゲン安定剤を添加することを含むことができる。
【0019】
いくつかの実施形態では、本方法は、水性系における金属表面の腐食速度を測定することを含むことができる。
【0020】
いくつかの実施形態では、本方法は、式(I)の化合物またはその塩の投入量を調整して、所定の腐食速度を達成することを含むことができる。
【0021】
いくつかの実施形態では、本方法は、ハロゲンの投入量を調整して、所定の腐食速度を達成することを含むことができる。
【0022】
いくつかの実施形態では、ベンゾイミダゾールの投入量は、約0.01ppm~約100ppmの範囲である。
【0023】
いくつかの実施形態では、ハロゲンの投入量は、約0.01ppm~約100ppmの範囲である。
【0024】
いくつかの実施形態では、金属表面は、銅または銅合金であってもよい。
【0025】
いくつかの実施形態では、水性系は、殺生物剤を含むことができる。
【0026】
いくつかの実施形態では、水性系は、塩素化、臭素化、ヨウ素化、またはこれらの任意の組み合わせでああってもよい。
【0027】
他の実施形態では、式(I)の化合物またはその塩を金属表面を含む水性系に添加することを含むことができる、水性系における金属表面の腐食を低減する方法が開示され、
【化3】
式中、Rは、ハロ、水素、重水素、ヒドロキシル、カルボニル、置換もしくは非置換C~C16アルキル、置換もしくは非置換C~Cアリール、置換もしくは非置換C~C16アルケニル、置換もしくは非置換C~C16アルキニル、置換もしくは非置換C~Cヘテロアリール、または置換もしくは非置換C~Cシクロアルキルであってもよく、
【0028】
Xは、存在しないか、CRYであるか、またはNRYであってもよく、
【0029】
Yは、ヒドロキシル、ハロ、オキソ、置換もしくは非置換C~C16アルコキシ、チオール、アルキルチオ、アミノ、水素、またはアミノアルキルであってもよく、
【0030】
およびRは、それぞれ独立して、水素、ハロ、ヒドロキシル、置換または非置換C~Cアリール、置換または非置換C~Cヘテロアリール、カルボニル、置換または非置換C~C16アルケニル、置換または非置換C~C16アルキニル、置換または非置換C~Cシクロアルキル、および置換または非置換C~C16アルキルからなる群から選択されてもよく、
【0031】
、R、R、およびRは、それぞれ独立して、水素、ハロ、および置換または非置換C~C16アルキルからなる群から選択されてもよいが、ただし、R、R、R、またはRのうちの少なくとも1つが、フルオロ、ブロモ、またはヨードであることを条件とする。
【0032】
いくつかの実施形態では、組成物が開示される。組成物は、臭素、ヨウ素、およびこれらの任意の組み合わせと、式(I)の化合物またはその塩から選択されるハロゲンと、を含むことができ、
【化4】
式中、Rは、ハロ、水素、重水素、ヒドロキシル、カルボニル、置換もしくは非置換C~C16アルキル、置換もしくは非置換C~Cアリール、置換もしくは非置換C~C16アルケニル、置換もしくは非置換C~C16アルキニル、置換もしくは非置換C~Cヘテロアリール、または置換もしくは非置換C~Cシクロアルキルであってもよく、
【0033】
Xは、存在しないか、CRYであるか、またはNRYであってもよく、
【0034】
Yは、ヒドロキシル、ハロ、オキソ、置換もしくは非置換C~C16アルコキシ、チオール、アルキルチオ、アミノ、水素、またはアミノアルキルであってもよく、
【0035】
およびRは、それぞれ独立して、水素、ハロ、ヒドロキシル、置換または非置換C~Cアリール、置換または非置換C~Cヘテロアリール、カルボニル、置換または非置換C~C16アルケニル、置換または非置換C~C16アルキニル、置換または非置換C~Cシクロアルキル、および置換または非置換C~C16アルキルからなる群から選択されてもよく、
【0036】
、R、R、およびRは、それぞれ独立して、水素、ハロ、アミノ、アミノアルキル、シアノ、置換または非置換C~C16アルコキシ、ヒドロキシル、チオール、カルボニル、ニトロ、ホスホリル、ホスホニル、スルホニル、置換または非置換C~C16アルキル、置換または非置換C~Cアリール、置換または非置換C~C16アルケニル、置換または非置換C~C16アルキニル、置換または非置換C~Cヘテロアリール、および置換または非置換C~Cシクロアルキルからなる群から選択されてもよいが、ただし、R、R、RおよびRのうちの少なくとも1つが、水素であることを条件とする。
【0037】
いくつかの実施形態では、Xは、CRYであってもよく、Yは、ヒドロキシルであってもよく、Rは、置換または非置換C~Cアリールであってもよい。
【0038】
特定の実施形態では、水性系における金属表面の腐食を低減するための組成物の使用が開示される。
【0039】
前述は、後に続く発明を実施するための形態をより良く理解できるように、本開示の特徴および技術的利点を概括的に概説した。本願の特許請求の範囲の主題を形成する、本開示のさらなる特徴および利点は、以下に説明される。開示される概念および具体的な実施形態は、本開示と同じ目的を実行するための他の実施形態を修正または設計するための基礎として容易に利用され得ることが、当業者によって理解されるべきである。そのような等価の実施形態はまた、添付の特許請求の範囲に明記される本開示の趣旨および範囲から逸脱しないことが、当業者によって認識されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0040】
発明の詳細な説明を、以下の図面に対する具体的な参照とともに本明細書以下に説明する。
【0041】
図1】黄銅および銅に残留塩素の存在下で、様々な抑制剤の腐食速度の比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
様々な実施形態が以下に説明される。実施形態の様々な要素の関係性および機能は、以下の詳細な説明を参照することよってより良好に理解され得る。しかしながら、実施形態は、以下に例解されるものに限定されない。特定の例では、本明細書に開示される実施形態の理解のために必要ではない詳細は、省略されている場合がある。
【0043】
「アルコキシ」は、式RO-の部分を指し、Rは、アルキル、アルケニル、またはアルキニルである。
【0044】
「アルキル」は、直鎖または分岐鎖アルキル置換基を指す。そのような置換基の例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソアミル、ヘキシルなどが含まれる。
【0045】
「アルキルチオ」は、式RS-の部分を指し、Rは、アルキル、アリール、アルケニル、またはアルキニルである。
【0046】
「アリール」は、当該技術分野で一般に理解されているように、非置換または置換芳香族炭素環式置換基を指し、「C~C10アリール」という用語には、フェニルおよびナフチルが含まれる。アリールという用語は、フッケルの法則に従って、平面状であり、4n+2n電子を含む環状置換基に適用されると理解される。
【0047】
「カルボニル」は、酸素に二重結合した炭素を含む置換基を指す。そのような置換基の例としては、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、エステル、アミド、およびカルバマートが挙げられる。
【0048】
「シクロアルキル」は、例えば、約3~約8個の炭素原子、好ましくは約4~約7個の炭素原子、より好ましくは約4~約6個の炭素原子を含有する環状アルキル置換基を指す。そのような置換基の例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルなどが含まれる。環状アルキル基は、非置換であり得るか、またはメチル基、エチル基などのアルキル基でさらに置換され得る。
【0049】
「ハロ」は、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、またはヨード基を指す。
【0050】
「ハロゲン前駆体」は、処理されたシステムに導入されると、殺生物的に有効なハロゲン種に変換される種である。
【0051】
「ヘテロアリール」は、単環式または二環式の5または6員環系を指し、ヘテロアリール基は、不飽和であり、ハッケルの法則を満たす。ヘテロアリール基の非限定的な例には、フラニル、チオフェニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、1,2,3-トリアゾリル、1,2,4-トリアゾリル、イソキサゾリル、オキサゾリル、イソチアゾリル、チアゾリル、1,3,4-オキサジアゾール-2-イル、1,2,4-オキサジアゾール-2-イル、5-メチル-1,3,4-オキサジアゾール、3-メチル-1,2,4-オキサジアゾール、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、インドリル、キノリニル、イソキノリニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾオキサゾリニル、ベンゾチアゾリニル、キナゾリニルなどが含まれる。
【0052】
「酸化性ハロゲン」は、水性系で酸化反応を行うことができるハロゲンの形態を指す。
【0053】
「オキソ」は、炭素原子に二重結合した酸素原子を指す。
【0054】
全残留酸化剤(TRO)は、溶液中の酸化ハロゲンの濃度を指す。慣例的に、それは、mg/lのClとして示される。他の酸化ハロゲンを含有するシステムでは、分子量の差により、他のハロゲンの実際のmg/lが異なる場合でも、濃度は、mg/lのClとして提示される。TROは、ハロゲンの質量濃度に関係なく、残留ハロゲンの酸化能力を表す。
【0055】
本開示の化合物は、好適な置換基で置換され得る。本明細書で使用される場合、「好適な置換基」という用語は、化学的に許容される官能基、好ましくは化合物の活動を打ち消さない部分を意味することが意図される。そのような好適な置換基としては、ハロ基、ペルフルオロアルキル基、ペルフルオロアルコキシ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヒドロキシ基、オキソ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アルコキシ基、アリールまたはヘテロアリール基、アリールオキシまたはヘテロアリールオキシ基、アラルキルまたはヘテロアラルキル基、アラルコキシまたはヘテロアラルコキシ基、HO-(C=O)-基、複素環基、シクロアルキル基、アミノ基、アルキル基およびジアルキルアミノ基、カルバモイル基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、ジアルキルアミノカルボニル基、アリールカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、ならびにアリールスルホニル基が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、好適な置換基には、ハロゲン、非置換C~C12アルキル基、非置換C~Cアリール基、または非置換C~C10のアルコキシ基が含まれ得る。当業者は、多くの置換基が追加の置換基によって置換され得ることを理解するであろう。
【0056】
本発明者らは、ベンゾイミダゾール腐食抑制剤と臭素系またはヨウ素系の殺生物剤との組み合わせに起因する、予想外に有利な防食効果を発見した。この効果は、「その場で」の組み合わせおよびこれらの成分の形成から実現できることがさらに発見された。さらに、この効果は、ベンゾイミダゾール腐食抑制剤と、臭素系もしくはヨウ素系の殺生物剤または塩素化水中の殺生物剤前駆体との組み合わせによって「その場で」実現することができることが見いだされた。本開示の化合物は、臭素系またはヨウ素系の殺生物剤、例えばBrClまたはBrとともに水に直接添加することができ、ハロゲン種とベンゾイミダゾールとのいかなる追加の予備反応の必要性も排除する。ベンゾイミダゾールを臭素またはヨウ素と反応させて、ベンゾイミダゾール環にハロゲン置換を生成することができ、これらの化合物は、臭素系またはヨウ素系の殺生物剤を添加せずに水に添加することができる。
【0057】
いくつかの実施形態では、水性系における金属表面の腐食を低減する方法が開示される。本方法は、ベンゾイミダゾールを金属表面を含む水性系に添加することと、臭素、ヨウ素、およびこれらの任意の組み合わせから選択されるハロゲンを水性系に添加することと、を含み得る。
【0058】
本開示の組成物および方法は、式(I)の化合物もしくはその塩、または式(II)の化合物もしくはその塩であるベンゾイミダゾールを含み得、
【化5】
式中、Rは、ハロ、水素、重水素、ヒドロキシル、カルボニル、置換もしくは非置換C~C16アルキル、置換もしくは非置換C~Cアリール、置換もしくは非置換C~C16アルケニル、置換もしくは非置換C~C16アルキニル、置換もしくは非置換C~Cヘテロアリール、または置換もしくは非置換C~Cシクロアルキルである。
【0059】
いくつかの実施形態では、Rは、水素、置換もしくは非置換C~C16アルキル基、または置換もしくは非置換C~Cアリール基である。
【0060】
いくつかの実施形態では、Rは、水素である。
【0061】
いくつかの実施形態では、RおよびRは、それぞれ独立して、水素、ハロ、ヒドロキシル、置換もしくは非置換C~Cアリール、置換または非置換C~Cヘテロアリール、カルボニル、置換または非置換C~C16アルケニル、置換または非置換C~C16アルキニル、置換または非置換C~Cシクロアルキル、および置換または非置換C~C16アルキルからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、RおよびRは、それぞれ独立して、水素、ハロ、ヒドロキシル、置換または非置換C~Cアリール、置換または非置換C~Cヘテロアリール、カルボニル、および置換または非置換C~C16アルキルからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、RおよびRは、それぞれ独立して、水素および置換または非置換C~Cアリールからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、Rは、置換または非置換C~Cアリール、およびRは、水素である。
【0062】
いくつかの実施形態では、R4、R、R6、およびRは、それぞれ独立して、水素、ハロ、アミノ、アミノアルキル、シアノ、置換または非置換C~C16アルコキシ、ヒドロキシル、チオール、カルボニル、ニトロ、ホスホリル、ホスホニル、スルホニル、置換または非置換C~C16アルキル、置換または非置換C~Cアリール、置換または非置換C~C16アルケニル、置換または非置換C~C16アルキニル、置換または非置換C~Cヘテロアリール、および置換または非置換C~Cシクロアルキルからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、R、R、R、およびRのうちの少なくとも1つは、水素である。いくつかの実施形態では、R、R、およびRは、それぞれ水素である。いくつかの実施形態では、Rは、水素である。いくつかの実施形態では、Rは、水素である。いくつかの実施形態では、Rは、水素である。いくつかの実施形態では、Rは、水素である。
【0063】
いくつかの実施形態では、Rは、置換または非置換C~C16アルキルであり、R、R、およびRは、それぞれ水素である。いくつかの実施形態では、Rは、メチルであり、R、R、およびRは、それぞれ水素である。いくつかの実施形態では、Rは、ハロであり、R、R、およびRは、それぞれ水素である。いくつかの実施形態では、Rは、クロロであり、R、R、およびRは、それぞれ水素である。いくつかの実施形態では、Rは、置換または非置換C~C16アルキルであり、Rは、ハロであり、RおよびRは、それぞれ水素である。いくつかの実施形態では、Rは、メチルであり、Rは、ブロモであり、RおよびRは、それぞれ水素である。いくつかの実施形態では、R、R、R、およびRは、それぞれ水素である。好ましくは、R、R、R、およびRが、それぞれ水素であるか、またはR、R、R、およびRのうちの少なくとも一つが、置換または非置換C~C16アルキルであり、残りの置換基が、水素である。
【0064】
いくつかの実施形態では、Rは、結合またはCHRである。いくつかの実施形態では、Rは、結合である。いくつかの実施形態では、Rは、CHRである。Rは、水素、ハロ、NR1011、またはOR10であることができる。いくつかの実施形態では、R10およびR11は、それぞれ独立して、水素、置換または非置換C~C12アルキル基、および置換または非置換C~Cアリール基からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、Rは、CHRであり、Rは、OR10であり、R10は、水素である。
【0065】
いくつかの実施形態では、Xは、存在しないか、CRYであるか、またはNRYである。いくつかの実施形態では、Xは、存在しない。いくつかの実施形態では、Xは、CRYである。いくつかの実施形態では、Xは、NRYである。
【0066】
いくつかの実施形態では、Xは存在せず、R、R、R、およびRは、それぞれ水素である。いくつかの実施形態では、Xは、CRYであり、Yは、ヒドロキシルであり、Rは、置換または非置換C~Cアリールである。
【0067】
いくつかの実施形態では、Yは、ヒドロキシル、ハロ、オキソ、置換もしくは非置換C~C16アルコキシ、チオール、アルキルチオ、アミノ、水素、またはアミノアルキルである。いくつかの実施形態では、Yは、ヒドロキシルである。
【0068】
いくつかの実施形態では、Zは、独立して窒素、CR、またはN10である。いくつかの実施形態では、Zは、CRである。いくつかの実施形態では、1つのZが、窒素であり、残りは、CRである。いくつかの実施形態では、少なくとも2個のZ原子が、窒素であり、残りは、CRである。いくつかの実施形態では、Zは、CRであり、Rは、水素である。いくつかの実施形態では、Rは、結合であり、少なくとも1つのZが、窒素である。
【0069】
いくつかの実施形態では、式(I)または式(II)の化合物もしくはその塩は、
【化6】
である。
【0070】
いくつかの実施形態では、式(I)または式(II)の化合物もしくはその塩は、
【化7】
である。
【0071】
いくつかの実施形態では、式(I)または式(II)の化合物もしくはその塩は、
【化8】
である。
【0072】
いくつかの実施形態では、式(I)または式(II)の化合物もしくはその塩は、
【化9】
である。
【0073】
いくつかの実施形態では、式(I)または式(II)の化合物もしくはその塩は、
【化10】
である。
【0074】
いくつかの実施形態では、式(I)または式(II)の化合物もしくはその塩は、
【化11】
である。
【0075】
いくつかの実施形態では、式(I)または式(II)の化合物もしくはその塩は、
【化12】
である。
【0076】
いくつかの実施形態では、式(I)または式(II)の化合物もしくはその塩は、
【化13】
である。
【0077】
いくつかの実施形態では、式(I)または式(II)の化合物もしくはその塩は、
【化14】
である。
【0078】
いくつかの実施形態では、式(I)または式(II)の化合物もしくはその塩は、
【化15】
である。
【0079】
いくつかの実施形態では、式(I)または式(II)の化合物もしくはその塩は、
【化16】
である。
【0080】
いくつかの実施形態では、式(I)または式(II)の化合物もしくはその塩は、
【化17】
である。
【0081】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物またはその塩は、以下である。
【化18】
【0082】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物またはその塩は、以下である。
【化19】
【0083】
特定の実施形態では、式(I)の化合物の塩は、任意の塩、例えば、塩化物塩、臭化物塩、ヨウ化物塩、硫酸塩、フッ化物塩、過塩素酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、リン酸塩、硝酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、ギ酸塩、塩素酸塩、臭素酸塩、亜塩素酸塩、チオ硫酸塩、シュウ酸塩、シアン化物塩、シアン酸塩、テトラフルオロホウ酸塩などであり得る。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物の塩は、塩酸塩または硫酸塩であり得る。化合物の塩形態は、任意の好適な対イオンを有するN-プロトン化ベンゾイミダゾールを含むことができる。
【0084】
本開示の組成物は、臭素、ヨウ素、およびこれらの任意の組み合わせから選択されるハロゲンを含むことができる。加えて、本開示の組成物は、ハロゲン安定剤を含むことができる。
【0085】
いくつかの実施形態では、ハロゲンは、臭素、ヨウ素、またはそれらの任意の組み合わせである。いくつかの実施形態では、ハロゲンは、臭素である。いくつかの実施形態では、ハロゲンは、任意の臭素含有またはヨウ素含有殺生物剤を含むことができる。臭素は、臭化ナトリウムなどの臭化物塩の形態であってもよい。臭素の他の形態としては、次亜臭素酸ナトリウムなどの次亜臭素酸塩が挙げられるが、これに限定されない。
【0086】
ハロゲンは、いくつかの酸化状態で存在することができるが、それらのうちのいくつかだけが、生物防除剤として有効である。元素(ゼロ価)形態では、それらは、Xが任意のハロゲンを表す、X分子として自然界に見いだされる。水に溶解すると、ハロゲンは、不均化反応を起こし、
【化20】
これにより、ハロゲンの半分が、-1の酸化状態、残りの半分は+1の酸化状態になる。HOXまたはその共役塩基OXは、ハロゲンの殺生物的に有効な形態であり、X形態におけるハロゲン化物イオンは、微生物制御に寄与しないことが、当該技術分野において十分に確立されている。
【0087】
それらの元素形態では、ハロゲンは、その物理的形態(有毒な腐食性ガスまたは液体)のため、保管および取り扱いが危険である。大規模な用途では、塩素ガスが、直接使用されることもあり、いくつかの特殊な用途では、塩化臭素ガスまたは固体ヨウ素が、適用される場合がある。通常、Br液体は、殺生物管理には使用されない。
【0088】
次亜塩素酸ナトリウム(通常、漂白剤として知られている)などの前処理された塩として塩素を使用することは、塩素系殺生物剤の供給形態としてますます通常となっている。次亜臭素酸ナトリウムまたは次亜ヨウ素酸ナトリウムは、一般に、供給に適した形態である、濃縮形態では十分に安定していない。
【0089】
臭素系殺生物剤は、ある程度周知の殺生物効果を有する。安定性の欠如のために、臭素系殺生物剤は、一般に前駆体として供給され、その場で酸化臭素などの殺生物的に有効な形態に変換される。
【0090】
殺生物性臭素を生成する通常の方法は、次の反応で説明されているように、臭化物塩と系内の残留塩素との反応である。
【化21】
【0091】
反応2は、希薄(ppm)濃度で迅速かつ完全に発生する。
【0092】
酸化臭素を供給する別の手段は、官能基R-N-Brを含有する臭素含有前駆体を使用することであり、
R-N官能基は、アンモニア、スルファミン酸、イソシアヌル酸、尿素、またはヒダントインであってもよい。これらの分子では、臭素は、+2の酸化状態で存在し、平衡反応が起こり得る。
【化22】
【0093】
これらの窒素含有化合物はまた、非ハロゲン化形態で処理システムに添加され、反応性を低下させ、システム内のハロゲンの有効寿命を延ばす。この役割では、それらは、「安定剤」として定義される。
【0094】
いくつかの実施形態では、ハロゲン安定剤を系に添加することができる。安定剤を添加して、適用環境で酸化性殺生物剤に安定性を提供することができる。例えば、ハロゲン安定剤としては、アンモニア、尿素、スルファミン酸、ヒダントイン化合物およびイソシアヌル酸化合物が挙げられる。
【0095】
いくつかの実施形態では、ハロゲンは、水性系に添加する前は、酸化形態であってもよい。いくつかの実施形態では、ハロゲンは、水性系への添加前は、前駆体の形態であってもよく、塩素との反応を通じてその場で形成することができる。例えば、臭素前駆体は、臭化物イオン(Br)であってもよく、ヨウ素前駆体は、ヨウ化物イオン(I-)であってもよい。
【0096】
いくつかの実施形態では、水性系における金属表面の腐食を低減する方法が開示される。本方法は、式(I)、式(II)の化合物、またはそれらの塩およびハロゲンを水性系に添加することを含む。
【0097】
式(I)または(II)の化合物は、任意の投入割合で水性系に添加され得るが、式(I)および(II)の化合物は、一般に、約0.01ppm~約500ppmの投入割合で水性系に添加される。特定の実施形態では、式(I)または(II)の化合物は、約0.01ppm~約100ppmの投入割合で水性系に添加される。特定の実施形態では、式(I)、(Ia)、または(II)の化合物は、約0.01ppm~約100ppm、約0.01ppm~約75ppm、約0.01ppm~約50ppm、約0.01ppm~約25ppm、約0.01ppm~約10ppm、約0.01ppm~約5ppm、約0.1ppm~約100ppm、約0.1ppm~約75ppm、約0.1ppm~約50ppm、約0.1ppm~約25ppm、約0.1ppm~約10ppm、約0.1ppm~約5ppm、約1ppm~約100ppm、約1ppm~約75ppm、約1ppm~約50ppm、約1ppm~約25ppm、約1ppm~約10ppm、約5ppm~約100ppm、約10ppm~約100ppm、約25ppm~約100ppm、約50ppm~約100ppm、または約80ppm~約100ppmの投与速度で水性系に添加される。
【0098】
ハロゲンは、任意の投入割合で水性系に添加され得るが、ハロゲンは、一般に、約0.01ppm~約500ppmの投入割合で水性系に添加される。特定の実施形態では、ハロゲンは、約0.01ppm~約100ppmの投入割合で水性系に添加される。特定の実施形態では、ハロゲンは、約0.01ppm~約100ppm、約0.01ppm~約75ppm、約0.01ppm~約50ppm、約0.01ppm~約25ppm、約0.01ppm~約10ppm、約0.01ppm~約5ppm、約0.1ppm~約100ppm、約0.1ppm~約75ppm、約0.1ppm~約50ppm、約0.1ppm~約25ppm、約0.1ppm~約10ppm、約0.1ppm~約5ppm、約1ppm~約100ppm、約1ppm~約75ppm、約1ppm~約50ppm、約1ppm~約25ppm、約1ppm~約10ppm、約5ppm~約100ppm、約10ppm~約100ppm、約25ppm~約100ppm、約50ppm~約100ppm、または約80ppm~約100ppmの投入割合で水性系に添加される。
【0099】
当業者は、ベンゾイミダゾールの投入量またはハロゲンの投入量が、水性系の条件および所望の腐食速度に応じて、開示された範囲外であり得ることを理解するであろう。
【0100】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示される方法は、水性系における金属表面の腐食速度を測定することを含むことができる。金属表面の腐食速度を測定する方法は、当該技術分野において既知であり、当業者は、適切な方法を選択することができるであろう。
【0101】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、式(I)、式(II)の化合物、またはそれらの塩の投入量を調整して、所定の腐食速度を達成することを含むことができる。
【0102】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、ハロゲンの投入量を調整して、所定の腐食速度を達成することを含むことができる。
【0103】
所定の腐食速度は、約0.2mpy以下であり得る。特定の実施形態では、所定の腐食速度は、約0.1mpy以下、約0.05mpy以下、約0.04mpy以下、約0.03mpy以下、約0.02mpy以下、約0.01mpy以下、約0.005mpy以下、または約0.002mpy以下である。
【0104】
いくつかの実施形態では、水性系は、工業用水システムである。「工業用水システム」とは、水をその主成分として循環させるあらゆるシステムを意味する。「工業用水システム」の非限定的な例には、冷却システム、ボイラシステム、加熱システム、膜システム、製紙システム、または水を循環させる他のシステムが含まれる。
【0105】
特定の実施形態では、水性系は、冷却水システムである。冷却水システムは、閉ループ冷却水システムまたは開ループ冷却水システムであり得る。
【0106】
いくつかの実施形態では、水性系は、殺生物剤を含むことができる。いくつかの実施形態では、水性系は、塩素化、臭素化、またはヨウ素化することができる。いくつかの実施形態では、水性系は、塩素化することができる。開示された組成物および方法の利点は、式(I)および(II)の化合物が、一般に、酸化性ハロゲンの存在下で金属表面の腐食保護を提供することである。特定の実施形態では、式(I)または(II)の化合物は、金属表面と接触する水性系に添加され、任意の酸化性ハロゲン化合物の存在下で金属表面の腐食保護を提供する。特定の実施形態では、式(I)または(II)の化合物は、次亜塩素酸塩漂白剤、塩素、臭素、次亜塩素酸塩、次亜臭素酸塩、二酸化塩素、ヨウ素/次亜ヨウ素酸、次亜臭素酸、ハロゲン化ヒダントイン、次亜塩素酸または次亜臭素酸の安定化バージョン、またはこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない、酸化性ハロゲン化合物の存在下で金属腐食を抑制する。いかなる特定の理論に拘束されることを望むものではないが、式(I)および(II)の化合物の比較的多数のヘテロ原子は、金属表面および金属イオンに結合するためのより多くの部位を提供し、多くの既存の腐食抑制剤と比較して、強化された腐食抑制を提供することができると仮定される。加えて、式(I)および(II)の化合物は、金属と1,2-キレート化錯体を形成することができるため、安定な膜を形成すると仮定される。
【0107】
本開示の化合物は、水性系で臭素化合物と組み合わせる場合、腐食速度の予期しない低下が観察されている。酸化性ハロゲンが、銅および銅合金の腐食を増加させることが、十分に確立されている。したがって、酸化性ハロゲンまたは酸化性ハロゲン前駆体が、本開示のベンゾイミダゾールとともに添加された場合、腐食速度の低下を見いだしたことは、驚くべきことであった。いかなる特定の理論にも縛られることなく、溶液中の酸化性ハロゲンが、ベンゾイミダゾール環と反応して、驚くべき耐腐食性を提示するハロゲン化ベンゾイミダゾールを生成すると考えられている。
【0108】
特定の実施形態では、式(I)または(II)の化合物は、過酸化物(例えば、過酸化水素)、オゾン、過硫酸塩、過マンガン酸塩、および過酢酸を含むが、これらに限定されない、非ハロゲン含有酸化殺生物剤を含む水性系に添加されると、金属腐食を抑制する。
【0109】
本開示の方法および組成物は、銅、鉄、銀、鋼(例えば、亜鉛めっき鋼)、亜鉛合金、およびアルミニウムを含むが、これらに限定されない、任意の金属または金属合金に腐食保護を提供することができる。特定の実施形態では、本明細書に開示される組成物は、銅を含む金属表面と接触する水性系に添加され、金属腐食を抑制することができる。特定の実施形態では、本明細書に開示される組成物は、銅合金を含む金属表面と接触する水性系に添加され、金属腐食を抑制することができる。特定の実施形態では、銅は、式(I)または(II)の化合物中の1個以上のヘテロ原子と錯体を形成する。特定の実施形態では、銅は、式(I)または(II)の化合物中の1個以上のヘテロ原子と錯体を形成する。銅は、配管および産業機械における銅配管および銅管としての使用を含む、幅広い用途を有する。銅および銅合金は、冷却水およびボイラ水システムでのそれらの使用でよく知られている。いくつかの実施形態では、金属表面は、銅を含むことができる。
【0110】
本明細書に開示される組成物および方法は、青銅および黄銅を含む、あらゆる銅合金を保護するために使用することができる。青銅は通常、銅とスズを含むが、アルミニウム、マンガン、シリコン、ヒ素、およびリンを含む他の元素を含み得る。黄銅は、銅および亜鉛を含み、水ボイラシステムの配管で一般的に使用される。特定の実施形態では、本明細書に開示される組成物のいずれかが、青銅を含む金属表面と接触する水性系に添加され、金属腐食を抑制する。特定の実施形態では、本明細書に開示される組成物のいずれかが、例えばアドミラルティ黄銅など、黄銅を含む金属表面と接触する水性系に添加され、金属腐食を抑制する。特定の実施形態では、本明細書に開示される組成物のいずれかが、銅-ニッケル合金を含む金属表面と接触する水性系に添加され、金属腐食を抑制する。
【0111】
特定の実施形態では、本明細書に開示される方法および組成物は、軟鋼の腐食を抑制する。特定の実施形態では、本明細書に開示される方法および組成物は、亜鉛めっき鋼、ステンレス鋼、鋳鉄、ニッケル、およびこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない、金属合金の腐食を抑制する。いかなる特定の理論に拘束されることを望むものではないが、式(I)および(II)の化合物は、溶液中のCu(II)を不活性化し、鋼表面にガルバニ電池の発生を防止すると仮定される。いかなる特定の理論に拘束されることを望むものではないが、式(I)または(II)の化合物が、溶液中で臭素またはヨウ素と反応して、予期しない腐食抑制特性を提示するハロ置換ベンゾイミダゾール環を生成することも仮定される。
【0112】
他の実施形態では、組成物中にハロゲンを含めること、または水性系にハロゲンを添加することは、任意選択的であってもよい。ハロゲンが任意選択的である実施形態では、式(I)の化合物またはその塩は、R、R、R、およびRの位置のうちの少なくとも1つにブロモ基またはヨード基を有することができる。
【0113】
特定の実施形態では、水性系における金属表面の腐食を低減する方法が開示される。本方法は、式(I)の化合物またはその塩を、金属表面を含む水性系に添加することを含み得る。
【化23】
式中、Rは、ハロ、水素、重水素、ヒドロキシル、カルボニル、置換もしくは非置換C~C16アルキル、置換もしくは非置換C~Cアリール、置換もしくは非置換C~C16アルケニル、置換もしくは非置換C~C16アルキニル、置換もしくは非置換C~Cヘテロアリール、または置換もしくは非置換C~Cシクロアルキルであり、
【0114】
Xは、存在しないか、CRYであるか、またはNRYであり、
【0115】
Yは、ヒドロキシル、ハロ、オキソ、置換もしくは非置換C~C16アルコキシ、チオール、アルキルチオ、アミノ、水素、またはアミノアルキルであり、
【0116】
およびRは、それぞれ独立して、水素、ハロ、ヒドロキシル、置換または非置換C~Cアリール、置換または非置換C~Cヘテロアリール、カルボニル、置換または非置換C~C16アルケニル、置換または非置換C~C16アルキニル、置換または非置換C~Cシクロアルキル、および置換または非置換C~C16アルキルからなる群から選択され、
【0117】
、R、R、およびRは、それぞれ独立して、水素、ハロ、および置換または非置換C~C16アルキルからなる群から選択されるが、ただし、R、R、R、またはRのうちの少なくとも1つが、フルオロ、ブロモ、またはヨードであることを条件とする。
【0118】
いくつかの実施形態では、本方法は、式(II)もしくは式(III)の化合物またはそれらの塩を添加することを含むことができる。
【化24】
【0119】
式(I)~(III)の場合、Rは、ブロモであり得る。いくつかの実施形態では、RおよびRは、ブロモまたはヨードであり得る。いくつかの実施形態では、RおよびRは、ブロモであり得る。いくつかの実施形態では、R、R、およびRは、ブロモまたはヨードであり得る。いくつかの実施形態では、R、R、およびRは、ブロモまたはヨードであり得る。いくつかの実施形態では、R、R、R、およびRは、ブロモまたはヨードであり得る。
【0120】
いくつかの実施形態では、式(I)~(III)の化合物またはその塩は、以下からなる群から選択される:
【化25】
【0121】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物またはその塩は、
【化26】
である。
【0122】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物またはその塩は、
【化27】
である。
【0123】
いくつかの実施形態では、組成物中の式(I)または式(II)の化合物またはそれらの塩の濃度は、約1重量%~約50重量%、約5重量%~約50重量%、約10重量%~約50重量%、約15重量%~約50重量%、約20重量%~約50重量%、約20重量%~約45重量%、約25重量%~約45重量%、または約25重量%~約40重量%の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、組成物は、水を含み得る。
【0124】
いくつかの実施形態では、式(I)および(II)の化合物は、任意の好適な方法によって金属表面と接触する。特定の実施形態では、式(I)または(II)の化合物を含む溶液は、浸漬、噴霧、または他のコーティング技術によって金属表面と接触する。特定の実施形態では、ハロゲンおよび式(I)または(II)の化合物を含む溶液は、浸漬、噴霧、または他のコーティング技術によって金属表面と接触する。特定の実施形態では、式(I)または(II)の化合物を含む溶液は、任意の従来の方法によって水性系の水に導入され、定期ベースまたは連続ベースのどちらかで水性系に供給される。
【0125】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物は、蛍光有機化合物を含み得る。特定の実施形態では、蛍光有機化合物は、ローダミンまたはその誘導体、アクリジン色素、フルオレセインまたはその誘導体、およびそれらの組み合わせから選択され得る。特定の実施形態では、本明細書に開示される組成物は、蛍光タグ付きポリマーを含み得る。
【0126】
当業者は、式(I)または(II)の化合物を、単独または他の腐食抑制剤もしくは処理化学物質と組み合わせて、水性系に添加することができることを理解するであろう。複数の腐食抑制剤は、組み合わせた腐食抑制剤配合物として投入することができるか、または各腐食抑制剤は、個別に添加することができ、式(I)または式(II)の2つ以上の化合物を含む。さらに、式(I)または(II)の化合物は、トリアゾール、ベンゾトリアゾール(例えば、ベンゾトリアゾールまたはトリルトリアゾール)、ベンゾイミダゾール、オルトリン酸塩、ポリリン酸塩、ホスホン酸塩、モリブデン酸塩、ケイ酸塩、オキシム、および亜硝酸塩を含むがこれらに限定されない様々な追加の腐食防止剤と組み合わせて水性系に添加され得る。式(I)および(II)の化合物はまた、処理ポリマー、抗菌剤、抗スケーリング剤、着色剤、充填剤、緩衝液、界面活性剤、粘度調整剤、キレート剤、分散剤、消臭剤、マスキング剤、脱酸素剤、およびインジケーター染料などの様々な追加の添加剤と組み合わせて水性系に添加され得る。
【0127】
本明細書に開示される方法および組成物は、任意のpHを有する水性系における金属の腐食を抑制するために使用することができる。特定の好ましい実施形態では、式(I)または(II)の化合物は、約6~約12のpHを有する水性系に添加される。したがって、特定の好ましい実施形態では、式(I)または(II)の化合物は、約6~約12、約6~約11、約6~約10、約6~約9、約6~約8、約7~約12、約8~約12、約9~約12、約7~約10、または約8~約10のpHを有する水性系に添加される。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【実施例
【0128】
実施例1
【0129】
実験室腐食試験を、様々な抑制剤の腐食抑制性能を比較するために、典型的なGreene Cell研究を使用して行った。Gamryシステム(リファレンス600)を使用して、電気化学信号を検出し、直線分極抵抗に基づいて銅および黄銅の試験片の腐食速度を測定した。基準電極(RE)は、Ag/AgClであり、対極(CE)は、グラファイト電極であった。作用電極(WE)は、5cmの銅および黄銅の円柱型試験片だった。冷却システムで金属表面上の流れを模擬するPINEローテーターで円柱型試験片を回転させた。回転電極速度は、600rpmだった。遊離塩素の投入量は、酸化還元電位(ORP)プローブで制御して、遊離塩素を+/-0.15ppm以内に維持した。pH制御により、二酸化炭素の注入により、目標内で+/-0.2を達成した。水温をLaudaヒーターで制御した。各テストを48時間続けた。試験の最後に、24~48時間の平均腐食速度を計算した。
【0130】
試験水は、CaCOとして約500ppm、約100ppmのClおよびSO、ならびに約6ppmのPOを含有した。温度は、約120°Fであり、pHは、約7.9であった。様々な濃度の腐食抑制剤およびハロゲンを試験した。化合物BMDZは、(1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)(フェニル)メタノールである、表1の化合物2を指す。
【0131】
遊離残留酸化剤(FRO)を重量/体積単位として表現する。FROの単位は、その量の塩素の酸化当量を表す。臭素またはヨウ素の場合、所与のFROを生成する物質の実際の重量は、そのFROを与える塩素の重量よりも大きくなる。臭素を水に添加する場合、任意の臭化物イオンは、塩素と完全に反応して、HOBr/OBrを形成する。
【0132】
Pickering(US5,411,677)は、ベンゾトリアゾールとハロゲン化物イオンとを組み合わせることにより、酸性媒体で銅の腐食を防止するための組成物および方法を記載する。この環境における腐食プロセスは、本出願において、溶液が中性からわずかにアルカリ性のpHであり、酸化ハロゲンの残留物を含有するという点で、本出願のプロセスとは大きく異なる。表2は、BMDZおよびハロゲン化物イオンで処理された水中の銅と黄銅との腐食速度を示す。この例では、前述の手順を使用しても、BMDZとハロゲン化物イオンとの組み合わせに関連する条件下では、ほとんど利点がない。酸化塩素は、アゾール銅腐食抑制剤の性能を低下させる。表2のデータは、本出願のベンゾイミダゾールの性能が、他の腐食抑制剤よりもこの効果に対して耐性がある一方で、ベンゾイミダゾールが、酸化塩素残留物の存在によって依然として悪影響を受けることを例示している。
【表2】
【0133】
図1は、黄銅および銅に残留塩素が存在する場合の様々な抑制剤の腐食速度の比較を示す。BZTは、ベンゾトリアゾールであり、TTは、トリルトリアゾールであり、新規の抑制剤は、BMDZである。約0.5ppmの遊離塩素の存在下で、約7.9のpH。約2ppmの抑制剤。
【0134】
表3は、酸化剤およびハロゲン化物イオンの存在下での水中の銅および黄銅の腐食速度を示す。酸化性塩素が、水中に存在する場合、腐食速度の大幅な増加。
【表3】
【0135】
実施例2
【0136】
HooverおよびBush(US4,818,413)は、工業プロセス水中の臭化物イオンと酸化塩素との組み合わせにより、銅の腐食が低減されるプロセスを記載する。工業プロセス水中で、臭化物イオンおよび酸化塩素をベンゾイミダゾール腐食抑制剤無しで組み合わせると、腐食保護はほとんどまたはまったく提供されない。表4は、有機複素環抑制剤がない場合、利点がほとんど得られないことを示す。抑制剤の存在しない、塩素および臭化物イオンで処理した水で腐食速度を測定した。
【表4】
【0137】
実施例3
【0138】
本実施例は、開示された方法および化合物の予想外の利点を例示する。表5は、本発明のすべての要素が存在する場合の、黄銅の腐食速度の劇的な減少を示す。臭素系殺生物剤中に腐食抑制剤であるBMDZを含むと、腐食率(CR)は、99%以上減少したが、BMDZは、臭化物イオンの存在しない塩素化水中で91%の腐食率の減少を達成した。臭素系殺生物剤の存在下でBMDZを用いた腐食速度は、遊離塩素の存在下での腐食速度よりも1桁小さかった。これは、臭素の存在下で、BMDZが予想外に効果的であったことを示す。
【表5】
【0139】
表6は、銅の腐食速度の劇的な減少を示す。銅についても、同じ劇的な腐食速度の低下が観察された。
【表6】
【0140】
実施例4
【0141】
本実施例は、抑制剤が、酸化ハロゲンの供給源として安定化臭素とともに使用される場合の、有益な効果を示す。本実施例で使用した安定剤は、スルファミン酸であった。
【表7】
【0142】
実施例5
【0143】
所与の腐食実験中に現場で形成された反応生成物を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で測定した。特定の類似体のHPLCピークを、紫外フォトダイオードアレイ分光法および高分解能質量分析検出(HPLC-UV-MS)を備えたHPLC、既知の標準の保持時間整合を備えたHPLC、および核磁気共鳴分光法(NMR)の組み合わせにより同定した。
【0144】
HPLC-UVプロファイルを、その場で塩素および臭素の実験で得て、親化合物(BMDZ)の喪失時に新しいピークの形成を観察した。UVおよびMS検出により、新しいピークは、塩素の存在下でのケトン誘導体および臭素の存在下での臭素化誘導体であると決定した。高解像度のMSスペクトルにより、BMDZが、溶液中で臭素に曝されたときに、モノ、ジ、トリ、およびテトラ置換されたことを見いだした。ケトおよびモノハロゲン化反応生成物の標準を合成し、それらのHPLC保持時間をその場生成物のピークと比較した。
【0145】
NMRとHPLCとを組み合わせた研究を使用して、ハロゲン化類似体のIDをHPLCプロファイルに割り当てた。Me-BMDZおよびBMDZのハロゲン化実験を、NMRサンプル管で、生成物の識別に適した濃度で行った。プロトンNMR分析から、ハロゲン化の位置を特定し、主要なハロゲン化生成物の相対濃度比を決定した。NMR濃度比を同じ反応サンプルのHPLCピークからUVおよびMS比と比較して、化学構造を主要なHPLCピークに割り当てた。ハロゲン化をベンゾイミダゾール芳香環でのみ観察した。いかなる特定の理論にも縛られることなく、イミダゾールプロトンの高速交換により、ハロゲン化は、ベンゾイミダゾール環でのみ発生し、ベンゾイミダゾールの位置の4位および7位ならびに5位および6位は、分光学的に同等である。NMRデータでは、ハロゲン化が、4位および7位よりも5位および6位で優先されることを指し示す。優先されるモノハロゲン化生成物は、5位で置換され、好ましいジハロゲン化生成物は、5位および6位で置換される。
【化28】
【0146】
Me-BMDZおよびBMDZのハロゲン化条件への曝露に応じて、複数のモノ、ジ、トリ、およびテトラ置換ハロゲン化生成物を観察することができる。HPLCによる実験室およびパイロット腐食実験の分析により、臭素生成物のピークを、NMR研究から割り当てられたHPLCピーク、および合成モノブロモ標準の保持時間に合わせた。下の表8のHPLC結果は、BMDZ、最も豊富な5-Brおよび標識された5,6-diBr BMDZを用いた例示的な腐食実験の臭素化生成物の分布を示す。
ハロゲン化条件下でのBMDZの反応生成物には、5位で置換されたBMDZ:(5-ブロモ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)(フェニル)メタノール(Br-BMDZ)が含まれていた。他の反応生成物には、ジ、トリ、テトラ置換BMDZ化合物が含まれていた。
【表8】
【0147】
BMDZは、酸化性塩素に曝されると、他の酸化副産物とともに、いくらかの塩素化BMDZを形成する。表9は、酸化性BMDZから形成された副産物の量を示す。
【表9】
【0148】
実施例6
【0149】
現場腐食試験中に特定された生成物を、現場外で合成した。ハロ置換BMDZを取得するための代表的な合成手順:丸底フラスコに、DL-マンデル酸(0.05モル)と4-ブロモ-1,2-ジアミノベンゼン(0.05モル)と約30gの5N硫酸とを充填した。反応混合物を約100℃で8時間還流させた。完了後、最終の熱い反応混合物を氷冷した10%のNHOH溶液に注意深く添加した。得られた不均一な混合物を室温でさらに30分間撹拌した。形成された沈殿物を濾過し、得られた固体を水で洗浄して、Br-BMDZを褐色固体として、約80%の収率で得た。Cl-BMDZは、表1の化合物3を指す。
【0150】
化合物の構造および化学名は、ChemDraw Professionalバージョン15.1を使用して調製し、決定した。
【0151】
本明細書に開示される任意の組成物は、本明細書に開示される化合物/成分のうちのいずれかを含むか、それからなるか、または本質的にそれからなり得る。本開示によれば、「から本質的になる(consist essentially of)」、「から本質的になる(consists essentially of)」、「から本質的になること(consisting essentially of)」などの語句は、特許請求の範囲を、特定の材料またはステップ、および特許請求された発明の基本的かつ新規な特徴(複数可)に実質的に影響を及ぼさない材料またはステップに限定する。
【0152】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、それらのそれぞれの試験測定値において見られる標準偏差から生じる誤差内にある引用された値を指し、それらの誤差が判定され得ない場合、「約」は、引用された値の10%以内を指す。
【0153】
本明細書で開示および特許請求される組成物および方法のすべては、本開示を考慮して、過度の実験を伴わずに作製および実行され得る。本発明は、多くの異なる形態で具現化され得、本発明の特定の好ましい実施形態が、本明細書で詳細に説明される。本開示は、本発明の原理の例示であり、本発明を、例解された特定の実施形態に限定することを意図するものではない。加えて、明示的に反対の記載がない限り、「a(ある1つの)」という用語の使用は、「少なくとも1つの」または「1つ以上の」を含むことを意図する。例えば、「ある1つの化合物」は、「少なくとも1つの化合物」または「1つ以上の化合物」を含むことを意図する。
【0154】
絶対項または近似項のいずれかで与えられる任意の範囲は、両方を包含することを意図するものであり、本明細書で使用されるいかなる定義も、明確にすることを意図するものであり、限定を意図するものではない。本発明の広範な範囲を明記する数値範囲およびパラメータは、近似値ではあるものの、特定の実施例で明記される数値は、可能な限り正確に報告される。しかしながら、いかなる数値も、それらのそれぞれの試験測定値において見られる標準偏差に必然的に起因する特定の誤差を本質的に含有する。さらに、本明細書に開示されるすべての範囲は、その中に包含されるあらゆる部分範囲(すべての小数値および全体値を含む)を包含するものとして理解されるべきである。
【0155】
さらに、本発明は、本明細書に記載される様々な実施形態の一部または全部の、あらゆる可能な組み合わせを包含する。また、本明細書に記載される本発明の好ましい実施形態に対する様々な変更および修正が、当業者にとって明らかであろうことも理解されるべきである。そのような変更および修正は、本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく、かつその意図される利点を縮小することなく行われ得る。したがって、そのような変更および修正は、添付の特許請求の範囲によって網羅されることが意図される。以下の項目[1]~[21]に、本開示の実施形態の例を列記する。
[1]
金属表面を含む水性系にベンゾイミダゾールを添加することと、
臭素、ヨウ素、およびこれらの任意の組み合わせから選択されるハロゲンを前記水性系に添加することと、を含む、水性系における金属表面の腐食を低減する方法。
[2]
前記ベンゾイミダゾールが、式(I)の化合物またはその塩であり、
【化1】
式中、
は、ハロ、水素、重水素、ヒドロキシル、カルボニル、置換もしくは非置換C ~C 16 アルキル、置換もしくは非置換C ~C アリール、置換もしくは非置換C ~C 16 アルケニル、置換もしくは非置換C ~C 16 アルキニル、置換もしくは非置換C ~C ヘテロアリール、または置換もしくは非置換C ~C シクロアルキルであり、
Xは、存在しないか、CR YまたはNR Yであり、
Yは、ヒドロキシル、ハロ、オキソ、置換もしくは非置換C ~C 16 アルコキシ、チオール、アルキルチオ、アミノ、水素、またはアミノアルキルであり、
およびR は、それぞれ独立して、水素、ハロ、ヒドロキシル、置換または非置換C ~C アリール、置換または非置換C ~C ヘテロアリール、カルボニル、置換または非置換C ~C 16 アルケニル、置換または非置換C ~C 16 アルキニル、置換または非置換C ~C シクロアルキル、および置換または非置換C ~C 16 アルキルからなる群から選択され、
、R 、R 、およびR は、それぞれ独立して、水素、ハロ、アミノ、シアノ、置換または非置換C ~C 16 アルコキシ、ヒドロキシル、チオール、カルボニル、ニトロ、ホスホリル、ホスホニル、スルホニル、置換または非置換C ~C 16 アルキル、置換または非置換C ~C アリール、置換または非置換C ~C 16 アルケニル、置換または非置換C ~C 16 アルキニル、置換または非置換C ~C ヘテロアリール、および置換または非置換C ~C シクロアルキルからなる群から選択され、
ただし、R 、R 、R およびR のうちの少なくとも1つが水素である、項目1に記載の方法。
[3]
前記ベンゾイミダゾールが、式(II)の化合物またはその塩であり、
【化2】
式中、
は、水素、置換もしくは非置換C ~C 16 アルキル基、または置換もしくは非置換C ~C アリール基であり、
は、化学結合またはCHR であり、
は、水素、ハロ、NR 10 11 、またはOR 10 であり、
10 およびR 11 は、それぞれ独立して、水素、置換または非置換C ~C 12 アルキル基、および置換または非置換C ~C アリール基からなる群から選択され、
Zは、独立して窒素、CR 、またはN 10 である、項目1に記載の方法。
[4]
前記ハロゲンが、臭素前駆体、ヨウ素前駆体、またはこれらの任意の組み合わせである、項目1~3のいずれか一項に記載の方法。
[5]
ZがCR であり、R が水素である、項目3又は4に記載の方法。
[6]
イソシアネート、ヒダントイン、スルファミン酸、アンモニア、尿素、アミン、またはこれらの任意の組み合わせであるハロゲン安定剤を添加することをさらに含む、項目1~4のいずれか一項に記載の方法。
[7]
前記水性系における金属表面の腐食速度を測定することをさらに含む、項目1~6のいずれか一項に記載の方法。
[8]
前記金属表面が銅または銅合金である、項目7に記載の方法。
[9]
前記式(I)の化合物またはその塩の投入量を調整して、所定の腐食速度を達成することをさらに含む、項目1~8のいずれか一項に記載の方法。
[10]
前記ハロゲンの投入量を調整して、所定の腐食速度を達成することをさらに含む、項目1~9のいずれか一項に記載の方法。
[11]
前記ベンゾイミダゾールの投入量が約0.01ppm~約100ppmの範囲である、項目1~10のいずれか一項に記載の方法。
[12]
前記ハロゲンの投入量が約0.01ppm~約100ppmの範囲である、項目1~11のいずれか一項に記載の方法。
[13]
前記水性系が殺生物剤を含む、項目1~12のいずれか一項に記載の方法。
[14]
前記水性系が、塩素化、臭素化、ヨウ素化、またはこれらの任意の組み合わせである、項目1~13のいずれか一項に記載の方法。
[15]
水性系における金属表面の腐食を低減する方法であって、前記方法は、金属表面を含む水性系に式(I)の化合物またはその塩を添加することを含み、
【化3】
式中、
は、ハロ、水素、重水素、ヒドロキシル、カルボニル、置換もしくは非置換C ~C 16 アルキル、置換もしくは非置換C ~C アリール、置換もしくは非置換C ~C 16 アルケニル、置換もしくは非置換C ~C 16 アルキニル、置換もしくは非置換C ~C ヘテロアリール、または置換もしくは非置換C ~C シクロアルキルであり、
Xは、存在しないか、CR YまたはNR Yであり、
Yは、ヒドロキシル、ハロ、オキソ、置換もしくは非置換C ~C 16 アルコキシ、チオール、アルキルチオ、アミノ、水素、またはアミノアルキルであり、
およびR は、それぞれ独立して、水素、ハロ、ヒドロキシル、置換または非置換C ~C アリール、置換または非置換C ~C ヘテロアリール、カルボニル、置換または非置換C ~C 16 アルケニル、置換または非置換C ~C 16 アルキニル、置換または非置換C ~C シクロアルキル、および置換または非置換C ~C 16 アルキルからなる群から選択され、
、R 、R 、およびR は、それぞれ独立して、水素、ハロ、および置換または非置換C ~C 16 アルキルからなる群から選択され、
ただし、R 、R 、R 、またはR のうちの少なくとも1つが、フルオロ、ブロモ、またはヨードである、方法。
[16]
臭素、ヨウ素、およびこれらの任意の組み合わせから選択されるハロゲンと、
式(I)の化合物またはその塩と、を含む、組成物であって、
【化4】
式中、
は、ハロ、水素、重水素、ヒドロキシル、カルボニル、置換もしくは非置換C ~C 16 アルキル、置換もしくは非置換C ~C アリール、置換もしくは非置換C ~C 16 アルケニル、置換もしくは非置換C ~C 16 アルキニル、置換もしくは非置換C ~C ヘテロアリール、または置換もしくは非置換C ~C シクロアルキルであり、
Xは、存在しないか、CR YまたはNR Yであり、
Yは、ヒドロキシル、ハロ、オキソ、置換もしくは非置換C ~C 16 アルコキシ、チオール、アルキルチオ、アミノ、水素、またはアミノアルキルであり、
およびR は、それぞれ独立して、水素、ハロ、ヒドロキシル、置換または非置換C ~C アリール、置換または非置換C ~C ヘテロアリール、カルボニル、置換または非置換C ~C 16 アルケニル、置換または非置換C ~C 16 アルキニル、置換または非置換C ~C シクロアルキル、および置換または非置換C ~C 16 アルキルからなる群から選択され、
、R 、R 、およびR は、それぞれ独立して、水素、ハロ、アミノ、アミノアルキル、シアノ、置換または非置換C ~C 16 アルコキシ、ヒドロキシル、チオール、カルボニル、ニトロ、ホスホリル、ホスホニル、スルホニル、置換または非置換C ~C 16 アルキル、置換または非置換C ~C アリール、置換または非置換C ~C 16 アルケニル、置換または非置換C ~C 16 アルキニル、置換または非置換C ~C ヘテロアリール、および置換または非置換C ~C シクロアルキルからなる群から選択され、
ただし、R 、R 、R およびR のうちの少なくとも1つが水素である、組成物。
[17]
XがCR Yであり、Yがヒドロキシルであり、R が置換または非置換C ~C アリールである、項目16に記載の組成物。
[18]
項目16又は17に記載の組成物を添加することを含む、水性系における金属表面の腐食を低減する方法。
[19]
水性系における金属表面の腐食を低減するための、項目16又は17に記載の組成物の使用。
[20]
式(I)の化合物またはその塩が、下式からなる群から選択される、項目1~14のいずれか一項に記載の方法:
【化5】
[21]
前記式(I)の化合物またはその塩が、下式からなる群から選択される、項目15に記載の方法、または項目16又は17のいずれか一項に記載の組成物:
【化6】
図1