(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-25
(45)【発行日】2023-09-04
(54)【発明の名称】オレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法、オレフィン類重合用固体触媒及びオレフィン類重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 4/654 20060101AFI20230828BHJP
C08F 4/658 20060101ALI20230828BHJP
C08F 10/00 20060101ALI20230828BHJP
【FI】
C08F4/654
C08F4/658
C08F10/00 510
(21)【出願番号】P 2020549247
(86)(22)【出願日】2019-09-25
(86)【国際出願番号】 JP2019037438
(87)【国際公開番号】W WO2020067081
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-06-17
(31)【優先権主張番号】P 2018181727
(32)【優先日】2018-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390007227
【氏名又は名称】東邦チタニウム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】保坂 元基
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-269808(JP,A)
【文献】特開2004-269809(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00- 10/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン類重合用触媒成分を得るオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法であって、
マグネシウム化合物に、四価のチタンハロゲン化合物及び
2,2-ジアルキル-1,3―ジメトキシプロパン、9,9-ビス(アルコキシメチル)フルオレン、エーテルカーボネート、フタル酸ジエステル、アルキル置換フタル酸ジエステル、ハロゲン置換フタル酸ジエステル、マロン酸ジエステル、アルキル置換マロン酸ジエステル、コハク酸ジエステル、アルキル置換コハク酸ジエステル、マレイン酸ジエステル、アルキル置換マレイン酸ジエステル、シクロアルカン-1,2-ジカルボン酸ジエステル、1-シクロアルケン-1,2-ジカルボン酸ジエステル及び4-シクロアルケン-1,2-ジカルボン酸ジエステルから選ばれる1種以上の内部電子供与性化合物を接触させて反応させることにより、あるいは、該反応後、更に、四価のチタンハロゲン化合物及び/又は内部電子供与性化合物を1回又は2回以上繰り返し接触させることにより、オレフィン類重合用触媒成分を得るオレフィン類重合用固体触媒成分の製造工程において、該製造工程中の洗浄工程のうち、少なくとも1回の洗浄工程で、
2,2-ジアルキル-1,3―ジメトキシプロパン、9,9-ビス(アルコキシメチル)フルオレン、エーテルカーボネート、フタル酸ジエステル、アルキル置換フタル酸ジエステル、ハロゲン置換フタル酸ジエステル、マロン酸ジエステル、アルキル置換マロン酸ジエステル、コハク酸ジエステル、アルキル置換コハク酸ジエステル、マレイン酸ジエステル、アルキル置換マレイン酸ジエステル、シクロアルカン-1,2-ジカルボン酸ジエステル、1-シクロアルケン-1,2-ジカルボン酸ジエステル及び4-シクロアルケン-1,2-ジカルボン酸ジエステルから選ばれる1種以上の内部電子供与性化合物を
1質量ppm以上含有する洗浄処理用不活性有機溶剤を用いて洗浄処理を行うこと、
を特徴とするオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法。
【請求項2】
マグネシウム化合物と、四価のチタンハロゲン化合物と、
2,2-ジアルキル-1,3―ジメトキシプロパン、9,9-ビス(アルコキシメチル)フルオレン、エーテルカーボネート、フタル酸ジエステル、アルキル置換フタル酸ジエステル、ハロゲン置換フタル酸ジエステル、マロン酸ジエステル、アルキル置換マロン酸ジエステル、コハク酸ジエステル、アルキル置換コハク酸ジエステル、マレイン酸ジエステル、アルキル置換マレイン酸ジエステル、シクロアルカン-1,2-ジカルボン酸ジエステル、1-シクロアルケン-1,2-ジカルボン酸ジエステル及び4-シクロアルケン-1,2-ジカルボン酸ジエステルから選ばれる1種以上の内部電子供与性化合物と、を第一接触処理用不活性有機溶剤の存在下で接触させて反応させることにより、又は該反応後、更に、洗浄処理用不活性有機溶剤で洗浄する洗浄工程を行うことにより、第一中間生成物を得る第一工程(A)と、
該第一中間生成物に対し、再接触処理用不活性有機溶剤の存在下、再接触対象物に、四価のチタンハロゲン化合物及び/又は
2,2-ジアルキル-1,3―ジメトキシプロパン、9,9-ビス(アルコキシメチル)フルオレン、エーテルカーボネート、フタル酸ジエステル、アルキル置換フタル酸ジエステル、ハロゲン置換フタル酸ジエステル、マロン酸ジエステル、アルキル置換マロン酸ジエステル、コハク酸ジエステル、アルキル置換コハク酸ジエステル、マレイン酸ジエステル、アルキル置換マレイン酸ジエステル、シクロアルカン-1,2-ジカルボン酸ジエステル、1-シクロアルケン-1,2-ジカルボン酸ジエステル及び4-シクロアルケン-1,2-ジカルボン酸ジエステルから選ばれる1種以上の内部電子供与性化合物を接触させる再接触処理を1回又は2回以上繰り返し行うことにより、再接触生成物を得る第二工程と、
該第二工程を行った後、該第二工程の最終の再接触処理を行い得られる再接触生成物を、洗浄処理用不活性有機溶剤で洗浄する洗浄処理を行い、懸濁状又は粉末状のオレフィン類重合用固体触媒成分を得る最終の洗浄工程と、
を有するオレフィン類重合用固体触媒成分の製造工程において、
該製造工程中の洗浄工程のうち、少なくとも1回の洗浄工程において、
前記内部電子供与性化合物を
1質量ppm以上含有する洗浄処理用不活性有機溶剤を用いて洗浄処理を行うこと、
を特徴とする請求項1記載のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法。
【請求項3】
マグネシウム化合物と、四価のチタンハロゲン化合物と、
2,2-ジアルキル-1,3―ジメトキシプロパン、9,9-ビス(アルコキシメチル)フルオレン、エーテルカーボネート、フタル酸ジエステル、アルキル置換フタル酸ジエステル、ハロゲン置換フタル酸ジエステル、マロン酸ジエステル、アルキル置換マロン酸ジエステル、コハク酸ジエステル、アルキル置換コハク酸ジエステル、マレイン酸ジエステル、アルキル置換マレイン酸ジエステル、シクロアルカン-1,2-ジカルボン酸ジエステル、1-シクロアルケン-1,2-ジカルボン酸ジエステル及び4-シクロアルケン-1,2-ジカルボン酸ジエステルから選ばれる1種以上の内部電子供与性化合物と、を第一接触処理用不活性有機溶剤の存在下で接触させて反応させることにより、又は該反応後、更に、洗浄処理用不活性有機溶剤で洗浄する洗浄工程を行うことにより、第一中間生成物を得る第一工程(A)と、
該第一中間生成物に対し、再接触処理用不活性有機溶剤の存在下、再接触対象物に、四価のチタンハロゲン化合物及び/又は
2,2-ジアルキル-1,3―ジメトキシプロパン、9,9-ビス(アルコキシメチル)フルオレン、エーテルカーボネート、フタル酸ジエステル、アルキル置換フタル酸ジエステル、ハロゲン置換フタル酸ジエステル、マロン酸ジエステル、アルキル置換マロン酸ジエステル、コハク酸ジエステル、アルキル置換コハク酸ジエステル、マレイン酸ジエステル、アルキル置換マレイン酸ジエステル、シクロアルカン-1,2-ジカルボン酸ジエステル、1-シクロアルケン-1,2-ジカルボン酸ジエステル及び4-シクロアルケン-1,2-ジカルボン酸ジエステルから選ばれる1種以上の内部電子供与性化合物を接触させる再接触処理を2回以上繰り返し行い、最初の再接触処理から最終の再接触処理の間に、洗浄処理用不活性有機溶剤で洗浄する洗浄工程を少なくとも1回行うことにより、再接触生成物を得る第二工程と、
該第二工程を行った後、該第二工程の最終の再接触処理を行い得られる再接触生成物を、洗浄処理用不活性有機溶剤で洗浄する洗浄処理を行い、懸濁状又は粉末状のオレフィン類重合用固体触媒成分を得る最終の洗浄工程と、
を有するオレフィン類重合用固体触媒成分の製造工程において、
該製造工程中の洗浄工程のうち、少なくとも1回の洗浄工程において、
前記内部電子供与性化合物を
1質量ppm以上含有する洗浄処理用不活性有機溶剤を用いて洗浄処理を行うこと、
を特徴とする請求項1記載のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法。
【請求項4】
マグネシウム化合物と、四価のチタンハロゲン化合物と、
2,2-ジアルキル-1,3―ジメトキシプロパン、9,9-ビス(アルコキシメチル)フルオレン、エーテルカーボネート、フタル酸ジエステル、アルキル置換フタル酸ジエステル、ハロゲン置換フタル酸ジエステル、マロン酸ジエステル、アルキル置換マロン酸ジエステル、コハク酸ジエステル、アルキル置換コハク酸ジエステル、マレイン酸ジエステル、アルキル置換マレイン酸ジエステル、シクロアルカン-1,2-ジカルボン酸ジエステル、1-シクロアルケン-1,2-ジカルボン酸ジエステル及び4-シクロアルケン-1,2-ジカルボン酸ジエステルから選ばれる1種以上の内部電子供与性化合物と、を第一接触処理用不活性有機溶剤の存在下で接触させて反応させることにより、反応生成物を得る第一工程(B)と、
該第一工程を行い得られる反応生成物を、洗浄処理用不活性有機溶剤で洗浄する洗浄処理を行い、懸濁状又は粉末状のオレフィン類重合用固体触媒成分を得る最終の洗浄工程と、
を有するオレフィン類重合用固体触媒成分の製造工程において、
該製造工程中の洗浄工程のうち、少なくとも1回の洗浄工程において、
前記内部電子供与性化合物を
1質量ppm以上含有する洗浄処理用不活性有機溶剤を用いて洗浄処理を行うこと、
を特徴とする請求項1記載のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法。
【請求項5】
前記第一工程(A)において、
前記内部電子供与性化合物を
1質量ppm以上含有する洗浄処理用不活性有機溶剤で洗浄する洗浄処理を行うことを特徴とする請求項2又は3いずれか1項記載のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法。
【請求項6】
前記第二工程において、再接触処理と再接触処理との間に行う前記洗浄工程の洗浄処理で用いる洗浄処理用不活性有機溶剤が、
前記内部電子供与性化合物を
1質量ppm以上含有する
洗浄処理用不活性有機溶剤であることを特徴とする請求項3記載のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法。
【請求項7】
前記最終の洗浄工程の洗浄処理で用いる洗浄処理用不活性有機溶剤が、
前記内部電子供与性化合物を
1質量ppm以上含有する
洗浄処理用不活性有機溶剤であることを特徴とする請求項2
、3、5及び6いずれか1項記載のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法。
【請求項8】
前記最終の洗浄工程の洗浄処理における前記1質量ppm以上の内部電子供与性化合物を含有する洗浄処理用不活性有機溶剤の使用量が、最終の反応生成物1g当たり1~500mlであること特徴とする請求項7記載のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法。
【請求項9】
前記最終の洗浄工程における洗浄処理の回数が、1~20回であること特徴とする請求項2
、3、5~8いずれか1項記載のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法。
【請求項10】
前記最終の洗浄工程において、デカンテーション又はフィルトレーションにより固液分離を行い、洗浄後の有機溶剤を除去することを特徴とする請求項2
、3、5~9いずれか1項記載のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法。
【請求項11】
前記第一工程(A
)に用いる前記内部電子供与性化合物が、カルボン酸モノエステル、カルボン酸ジエステル、モノエーテル、ジエーテル及びエーテルとエステルの複合化合物よりなる群から選択される1種以上であることを特徴とする請求項2、
3、5~10いずれか1項記載のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法。
【請求項12】
前記第二工程の再接触処理に用いる前記内部電子供与性化合物が、カルボン酸モノエステル、カルボン酸ジエステル、モノエーテル、ジエーテル及びエーテルとエステルの複合化合物よりなる群から選択される1種以上であることを特徴とする請求項2、3、5~11いずれか1項記載のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法。
【請求項13】
前記最終の洗浄工程の洗浄処理で用いる洗浄処理用不活性有機溶剤が、前記内部電子供与性化合物を1質量ppm以上含有する洗浄処理用不活性有機溶剤であることを特徴とする請求項4記載のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法。
【請求項14】
前記最終の洗浄工程の洗浄処理における前記1質量ppm以上の内部電子供与性化合物を含有する洗浄処理用不活性有機溶剤の使用量が、最終の反応生成物1g当たり1~500mlであること特徴とする請求項13記載のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法。
【請求項15】
前記最終の洗浄工程における洗浄処理の回数が、1~20回であること特徴とする請求項4、13及び14いずれか1項記載のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法。
【請求項16】
前記最終の洗浄工程において、デカンテーション又はフィルトレーションにより固液分離を行い、洗浄後の有機溶剤を除去することを特徴とする請求項4、13~15いずれか1項記載のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法。
【請求項17】
前記第一工程(B)に用いる前記内部電子供与性化合物が、カルボン酸モノエステル、カルボン酸ジエステル、モノエーテル、ジエーテル及びエーテルとエステルの複合化合物よりなる群から選択される1種以上であることを特徴とする請求項4、13~16いずれか1項記載のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法。
【請求項18】
少なくとも請求項1~
17いずれか1項記載の製造方法により
、オレフィン類重合用固体触媒成分を得、次いで、得られるオレフィン類重合用固体触媒成分、及び下記一般式(I)
R
1
pAlQ
3-p (I)
(式中、R
1は炭素数1~6のアルキル基であり、Qは水素原子またはハロゲン原子であり、pは0<p≦3の実数である。)
で表される有機アルミニウム化合物を接触させることにより
、オレフィン類重合用触媒を得ることを特徴とするオレフィン類重合用触媒
の製造方法。
【請求項19】
請求項1~
17いずれか1項記載の製造方法により
、オレフィン類重合用固体触媒成分を得、次いで、得られるオレフィン類重合用固体触媒成分、下記一般式(I)
R
1
pAlQ
3-p (I)
(式中、R
1は炭素数1~6のアルキル基であり、Qは水素原子またはハロゲン原子であり、pは0<p≦3の実数である。)
で表される有機アルミニウム化合物、及び外部電子供与性化合物を接触させることにより
、オレフィン類重合用触媒を得ることを特徴とする請求項13記載のオレフィン類重合用触媒
の製造方法。
【請求項20】
前記外部電子供与性化合物が、下記一般式(II)
R
2
qSi(OR
3)
4-q (II)
(式中、R
2は炭素数1~12のアルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基またはアラルキル基であり、同一または異なっていてもよい。R
3は炭素数1~4のアルキル基、炭素数3~6のシクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基またはアラルキル基であり、同一または異なっていてもよい。qは0≦q≦3の整数である。)および下記一般式(III)
(R
4R
5N)
sSiR
6
4-s (III)
(式中、R
4とR
5は水素原子、炭素数1~20の直鎖状または炭素数3~20の分岐状アルキル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、アリール基であり、同一でも異なってもよく、またR
4とR
5が互いに結合して環を形成してもよい。R
6は炭素数1~20の直鎖状または炭素数3~20の分岐状アルキル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基、炭素数1~20の直鎖状または分岐状アルコキシ基、ビニルオキシ基、アリロキシ基、炭素数3~20のシクロアルキル基、アリール基またはアリールオキシ基であり、R
6が複数ある場合、複数のR
6は同一でも異なってもよい。sは1から3の整数である。)から選ばれる一種以上の有機ケイ素化合物である請求項
19に記載のオレフィン類重合用触媒
の製造方法。
【請求項21】
請求項
18~
20いずれか1項記載の
オレフィン類重合用触媒の製造方法により、オレフィン類重合用触媒を得、次いで、得られるオレフィン類重合用触媒の存在下に、オレフィン類の重合を行うことを特徴とするオレフィン類重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法、オレフィン類重合用触媒およびオレフィン類重合体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、オレフィン類重合用触媒を用いてプロピレン等のオレフィン類を重合することが行われており、得られたオレフィン類重合体は、溶融された後、各種の成型機、延伸機等により成形されて、自動車部品、家電部品等の成型品の他、容器やフィルム等種々の用途に利用されている。
【0003】
上記オレフィン類重合用触媒の構成成分として、マグネシウム、チタン、電子供与性化合物およびハロゲン原子を必須成分として含有する固体触媒成分が知られており、上記固体触媒成分と、有機アルミニウム化合物および有機ケイ素化合物とから成るオレフィン類重合用触媒が数多く提案されている。
【0004】
ところで、オレフィン類重合体としては、各種の成型機や延伸機等により成形する際に、より流動性(メルトフローレート(MFR))の高いものが求められるようになっている。
【0005】
オレフィン類重合体のMFRは、オレフィン類重合体の分子量に大きく依存し、分子量の低いオレフィン類重合体は、MFRが高い傾向がある。このため、MFRの高いオレフィン類重合体を得るために、重合の際に多量の水素を添加し、得られるオレフィン類重合体を低分子化することが一般的に行われている。
【0006】
また、近年、大型家電部品や自動車部品、特にバンパーのような製品においては、オレフィン類重合体として、MFRや立体規則性が高いことに加え、薄肉で高い物理的強度、すなわち優れた剛性を有するものが求められるようになっている。
【0007】
そこで、上記の種々の特性を有するオレフィン類重合体を製造し得るオレフィン類重合用固体触媒成分を得ることを目的として、オレフィン類重合用固体触媒成分の製造工程において、不活性有機溶剤の存在下、マグネシウム化合物に、チタンハロゲン化合物及び/又は内部電子供与性化合物を、複数回接触させることが行われてきた。
【0008】
例えば、特許文献1には、固体触媒成分の調製時に内部ドナーを2種以上用いることの記載がある。
【0009】
また、特許文献2、特許文献3、特許文献4には、固体触媒成分の調製時、チタン化合物の不存在下に内部ドナー処理を施すことの記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】WO2013/027560
【文献】WO2014/132805
【文献】WO2014/013916
【文献】特開2014-037521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1や特許文献2の製造方法では、複数回行われるチタンハロゲン化合物及び/又は内部電子供与性化合物の接触処理後、不要な成分を除去するために、不活性有機溶剤による洗浄処理が必要となる。
【0012】
ところが、本発明者らが検討を行ったところ、不活性有機溶剤による洗浄処理において、微粒子が生成することが分かった。そして、固体触媒成分中に微粒子成分が多いと、固体触媒粒子の表面に微粉が付着してしまうか、付着しない場合は固体触媒と微粒子成分が混在してしまうことから、重合の際に、異常反応を起こしたり、生成したポリマー中に微粒子が存在し、プロセス配管内に付着してしまうといった問題がある。
【0013】
また、不活性有機溶剤による洗浄処理において、微粒子が生成すると、生成した微粒子が沈降し難いため、デカンテーションやフィルトレーションで固液分離を行う場合に、撹拌後、静置させて固体触媒成分を沈降させるときに固体触媒成分の微粒子分の沈降が遅くなったり、ろ過板や濾布の目詰まりが起き易くなったり、あるいは、分離される有機溶媒に伴われて固体触媒成分の微粒子分まで除去されるために、固体触媒成分の収率が低くなることが分かった。
【0014】
従って、本発明は、マグネシウム化合物と、チタンハロゲン化合物と、内部電子供与性化合物とを接触させることにより、オレフィン類重合用固体触媒成分を得るオレフィン類重合用固体触媒成分の製造工程において、洗浄処理で、微粒子が発生し難いオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
かかる実情において、本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、(1)洗浄処理における微粒子の発生は、洗浄の際に、洗浄溶剤に内部電子供与性化合物が抽出され、そのときに固体触媒成分の表面から一部が微粒子として剥がれて、微粒子が生じること、(2)洗浄溶剤に予め微量の内部電子供与性化合物を含有させておくと、固体触媒成分からの内部電子供与性化合物の抽出が抑制されるために、微粒子が生成し難くなること等を見出し、本発明を完成させた。
【0016】
すなわち、本発明(1)は、オレフィン類重合用触媒成分を得るオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法であって、
マグネシウム化合物に、四価のチタンハロゲン化合物及び1種以上の内部電子供与性化合物を接触させて反応させることにより、あるいは、該反応後、更に、四価のチタンハロゲン化合物及び/又は1種以上の内部電子供与性化合物を1回又は2回以上繰り返し接触させることにより、オレフィン類重合用触媒成分を得るオレフィン類重合用固体触媒成分の製造工程において、該製造工程中の洗浄工程のうち、少なくとも1回の洗浄工程で、1質量ppm以上の内部電子供与性化合物を含有する洗浄処理用不活性有機溶剤を用いて洗浄処理を行うこと、
を特徴とするオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法を提供するものである。
【0017】
また、本発明(2)は、マグネシウム化合物と、四価のチタンハロゲン化合物と、1種以上の内部電子供与性化合物と、を第一接触処理用不活性有機溶剤の存在下で接触させて反応させることにより、又は該反応後、更に、洗浄処理用不活性有機溶剤で洗浄する洗浄工程を行うことにより、第一中間生成物を得る第一工程(A)と、
該第一中間生成物に対し、再接触処理用不活性有機溶剤の存在下、再接触対象物に、四価のチタンハロゲン化合物及び/又は1種以上の内部電子供与性化合物を接触させる再接触処理を1回又は2回以上繰り返し行うことにより、再接触生成物を得る第二工程(A)と、
該第二工程(A)を行った後、該第二工程の最終の再接触処理を行い得られる再接触生成物を、洗浄処理用不活性有機溶剤で洗浄する洗浄処理を行い、懸濁状又は粉末状のオレフィン類重合用固体触媒成分を得る最終の洗浄工程と、
を有するオレフィン類重合用固体触媒成分の製造工程において、
該製造工程中の洗浄工程のうち、少なくとも1回の洗浄工程において、1質量ppm以上の内部電子供与性化合物を含有する洗浄処理用不活性有機溶剤を用いて洗浄処理を行うこと、
を特徴とする(1)のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法を提供するものである。
【0018】
また、本発明(3)は、マグネシウム化合物と、四価のチタンハロゲン化合物と、1種以上の内部電子供与性化合物と、を第一接触処理用不活性有機溶剤の存在下で接触させて反応させることにより、又は該反応後、更に、洗浄処理用不活性有機溶剤で洗浄する洗浄工程を行うことにより、第一中間生成物を得る第一工程(A)と、
該第一中間生成物に対し、再接触処理用不活性有機溶剤の存在下、再接触対象物に、四価のチタンハロゲン化合物及び/又は1種以上の内部電子供与性化合物を接触させる再接触処理を2回以上繰り返し行い、最初の再接触処理から最終の再接触処理の間に、洗浄処理用不活性有機溶剤で洗浄する洗浄工程を少なくとも1回行うことにより、再接触生成物を得る第二工程(B)と、
該第二工程(B)を行った後、該第二工程の最終の再接触処理を行い得られる再接触生成物を、洗浄処理用不活性有機溶剤で洗浄する洗浄処理を行い、懸濁状又は粉末状のオレフィン類重合用固体触媒成分を得る最終の洗浄工程と、
を有するオレフィン類重合用固体触媒成分の製造工程において、
該製造工程中の洗浄工程のうち、少なくとも1回の洗浄工程において、1質量ppm以上の内部電子供与性化合物を含有する洗浄処理用不活性有機溶剤を用いて洗浄処理を行うこと、
を特徴とする(1)のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法を提供するものである。
【0019】
また、本発明(4)は、マグネシウム化合物と、四価のチタンハロゲン化合物と、1種以上の内部電子供与性化合物と、を第一接触処理用不活性有機溶剤の存在下で接触させて反応させることにより、反応生成物を得る第一工程(B)と、
該第一工程を行い得られる反応生成物を、洗浄処理用不活性有機溶剤で洗浄する洗浄処理を行い、懸濁状又は粉末状のオレフィン類重合用固体触媒成分を得る最終の洗浄工程と、
を有するオレフィン類重合用固体触媒成分の製造工程において、
該製造工程中の洗浄工程のうち、少なくとも1回の洗浄工程において、1質量ppm以上の内部電子供与性化合物を含有する洗浄処理用不活性有機溶剤を用いて洗浄処理を行うこと、
を特徴とする(1)のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法を提供するものである。
【0020】
また、本発明(5)は、前記第一工程(A)において、1質量ppm以上の内部電子供与性化合物を含有する洗浄処理用不活性有機溶剤で洗浄する洗浄処理を行うことを特徴とする(2)又は(3)いずれかのオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法を提供するものである。
【0021】
また、本発明(6)は、前記第二工程(B)において、再接触処理と再接触処理との間に行う前記洗浄処理の洗浄処理で用いる洗浄処理用不活性有機溶剤が1質量ppm以上の内部電子供与性化合物を含有することを特徴とする(3)のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法を提供するものである。
【0022】
また、本発明(7)は、前記最終の洗浄工程の洗浄処理で用いる洗浄処理用不活性有機溶剤が1質量ppm以上の内部電子供与性化合物を含有することを特徴とする(2)~(6)いずれかのオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法を提供するものである。
【0023】
また、本発明(8)は、前記最終の洗浄工程の洗浄処理における前記洗浄処理用不活性有機溶剤の使用量が、最終の反応生成物1g当たり1~500mlであること特徴とする(7)のオレフィン類重合用触媒成分の製造方法を提供するものである。
【0024】
また、本発明(9)は、前記最終の洗浄工程における洗浄処理の回数が、1~20回であること特徴とする(2)~(8)いずれかのオレフィン類重合用触媒成分の製造方法を提供するものである。
【0025】
また、本発明(10)は、前記最終の洗浄工程において、デカンテーション又はフィルトレーションにより固液分離を行い、洗浄後の有機溶剤を除去することを特徴とする(1)~(9)いずれかのオレフィン類重合用触媒成分の製造方法を提供するものである。
【0026】
また、本発明(11)は、前記第一工程に用いる前記内部電子供与性化合物が、カルボン酸モノエステル、カルボン酸ジエステル、モノエーテル、ジエーテル及びエーテルとエステルの複合化合物よりなる群から選択される1種以上であることを特徴とする(2)~(10)いずれかのオレフィン類重合用触媒成分の製造方法を提供するものである。
【0027】
また、本発明(12)は、前記第二工程の再接触処理に用いる前記内部電子供与性化合物が、カルボン酸モノエステル、カルボン酸ジエステル、モノエーテル、ジエーテル及びエーテルとエステルの複合化合物よりなる群から選択される1種以上であることを特徴とする(2)、(3)、(5)~(11)いずれかのオレフィン類重合用触媒成分の製造方法を提供するものである。
【0028】
また、本発明(13)は、少なくとも(1)~(12)いずれかの製造方法により得られるオレフィン類重合用固体触媒成分、及び下記一般式(I)
R1
pAlQ3-p (I)
(式中、R1は炭素数1~6のアルキル基であり、Qは水素原子またはハロゲン原子であり、pは0<p≦3の実数である。)
で表される有機アルミニウム化合物を接触させることにより得られるものであることを特徴とするオレフィン類重合用触媒を提供するものである。
【0029】
また、本発明(14)は、(1)~(12)いずれかの製造方法により得られるオレフィン類重合用固体触媒成分、下記一般式(I)
R1
pAlQ3-p (I)
(式中、R1は炭素数1~6のアルキル基であり、Qは水素原子またはハロゲン原子であり、pは0<p≦3の実数である。)
で表される有機アルミニウム化合物、及び外部電子供与性化合物を接触させることにより得られるものであることを特徴とする(13)のオレフィン類重合用触媒を提供するものである。
【0030】
また、本発明(15)は、外部電子供与性化合物が、下記一般式(II)
R2
qSi(OR3)4-q (II)
(式中、R2は炭素数1~12のアルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基またはアラルキル基であり、同一または異なっていてもよい。R3は炭素数1~4のアルキル基、炭素数3~6のシクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基またはアラルキル基であり、同一または異なっていてもよい。qは0≦q≦3の整数である。)および下記一般式(III)
(R4R5N)sSiR6
4-s (III)
(式中、R4とR5は水素原子、炭素数1~20の直鎖状または炭素数3~20の分岐状アルキル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、アリール基であり、同一でも異なってもよく、またR4とR5が互いに結合して環を形成してもよい。R6は炭素数1~20の直鎖状または炭素数3~20の分岐状アルキル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基、炭素数1~20の直鎖状または分岐状アルコキシ基、ビニルオキシ基、アリロキシ基、炭素数3~20のシクロアルキル基、アリール基またはアリールオキシ基であり、R6が複数ある場合、複数のR6は同一でも異なってもよい。sは1から3の整数である。)から選ばれる一種以上の有機ケイ素化合物である(14)のオレフィン類重合用触媒を提供するものである。
【0031】
また、本発明(16)は、(13)~(15)いずれかのオレフィン類重合用触媒の存在下に、オレフィン類の重合を行うことを特徴とするオレフィン類重合体の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、マグネシウム化合物と、チタンハロゲン化合物と、内部電子供与性化合物とを接触させることにより、オレフィン類重合用固体触媒成分を得るオレフィン類重合用固体触媒成分の製造工程において、製造工程中の洗浄工程のうち、少なくとも1回の洗浄工程で、1質量ppm以上の内部電子供与性化合物を含有する洗浄処理用不活性有機溶剤を用いて洗浄処理を行うことにより、微粒子が発生し難いオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法を提供することができる。加えて、上記固体触媒成分を重合する事により得られるポリマーの嵩比重(BD)は高くなるため、重合プロセスや移送及び、貯蔵の際に単位体積当たりの多くの量が製造、貯蔵できるといった点においても優れている。
【発明を実施するための形態】
【0033】
<本発明のオレフィン類重合用触媒成分の製造方法>
先ず、本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法について説明する。
本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法は、オレフィン類重合用触媒成分を得るオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法であって、
マグネシウム化合物に、四価のチタンハロゲン化合物及び1種以上の内部電子供与性化合物を接触させて反応させることにより、あるいは、該反応後、更に、四価のチタンハロゲン化合物及び/又は1種以上の内部電子供与性化合物を1回又は2回以上繰り返し接触させることにより、オレフィン類重合用触媒成分を得るオレフィン類重合用固体触媒成分の製造工程において、該製造工程中の洗浄工程のうち、少なくとも1回の洗浄工程で、1質量ppm以上の内部電子供与性化合物を含有する洗浄処理用不活性有機溶剤を用いて洗浄処理を行うこと、
を特徴とするオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法である。
【0034】
なお、本発明において、洗浄対象に洗浄用不活性有機溶剤を接触させて洗浄する操作1回分を、洗浄処理と呼ぶ。また、本発明において、洗浄工程とは、操作として、1回又は2回以上の洗浄処理のみからなる一連の工程を指し、洗浄工程では、接触対象物に対し、四価のチタンハロゲン化合物および/又は1種以上の内部電子供与性化合物を接触させる処理を行わない。
【0035】
本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法では、マグネシウム化合物に、四価のチタンハロゲン化合物及び1種以上の内部電子供与性化合物を接触させて反応させる際に、(i)不活性有機溶剤の存在下、マグネシウム化合物に、四価のチタンハロゲン化合物及び1種以上の内部電子供与性化合物を接触させて反応させてもよいし、あるいは、(ii)不活性有機溶剤を存在させないで、マグネシウム化合物に、四価のチタンハロゲン化合物及び1種以上の内部電子供与性化合物を接触させて反応させてもよい。
【0036】
<(i)の形態>
本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法のうち、(i)の形態は、不活性有機溶剤の存在下、マグネシウム化合物に、四価のチタンハロゲン化合物及び1種以上の内部電子供与性化合物を接触させて反応させる形態である。以下、(i)の形態を、本発明(i)のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法と記載する。
【0037】
本発明(i)のオレフィン類重合用触媒成分の製造方法は、オレフィン類重合用触媒成分を得るオレフィン類重合用触媒成分の製造方法であって、
(I)マグネシウム化合物と、四価のチタンハロゲン化合物と、1種以上の内部電子供与性化合物と、を第一接触処理用不活性有機溶剤の存在下で接触させて反応させることにより、又は更に、該反応後、洗浄処理用不活性有機溶剤で洗浄する洗浄工程を行うことにより、第一中間生成物を得る第一工程(A)と、(1)該第一中間生成物に対し、再接触処理用不活性有機溶剤の存在下、再接触対象物に、四価のチタンハロゲン化合物及び/又は1種以上の内部電子供与性化合物を接触させる再接触処理を1回又は2回以上繰り返し行うことにより、又は(2)該第一中間生成物に対し、再接触処理用不活性有機溶剤の存在下、再接触対象物に、四価のチタンハロゲン化合物及び/又は1種以上の内部電子供与性化合物を接触させる再接触処理を2回以上繰り返し行い、最初の再接触処理から最終の再接触処理の間に、洗浄処理用不活性有機溶剤で洗浄する洗浄工程を少なくとも1回行うことにより、再接触生成物を得る第二工程と、を有し、
あるいは、(II)マグネシウム化合物と、四価のチタンハロゲン化合物と、1種以上の内部電子供与性化合物と、を第一接触処理用不活性有機溶剤の存在下で接触させて反応させることにより、反応生成物を得る第一工程(B)を有し、
更に、該(I)の場合は、該第二工程を行った後、該第二工程の最終の再接触処理を行い得られる再接触生成物を、該(II)の場合は、該第一工程を行った後、反応生成物を洗浄処理用不活性有機溶剤で洗浄する洗浄処理を行い、懸濁状又は粉末状のオレフィン類重合用触媒成分を得る最終の洗浄工程と、
を有するオレフィン類重合用触媒成分の製造工程において、
該製造工程中の洗浄工程のうち、少なくとも1回の洗浄工程において、1質量ppm以上の内部電子供与性化合物を含有する洗浄処理用不活性有機溶剤を用いて洗浄処理を行うこと、
を特徴とするオレフィン類重合用触媒成分の製造方法である。
【0038】
すなわち、本発明(i)の第一の形態のオレフィン類重合用触媒成分の製造方法は、オレフィン類重合用触媒成分を得るオレフィン類重合用触媒成分の製造方法であって、
(I)マグネシウム化合物と、四価のチタンハロゲン化合物と、1種以上の内部電子供与性化合物と、を第一接触処理用不活性有機溶剤の存在下で接触させて反応させることにより、又は更に、該反応後、洗浄処理用不活性有機溶剤で洗浄する洗浄工程を行うことにより、第一中間生成物を得る第一工程(A)と、
(1)該第一中間生成物に対し、再接触処理用不活性有機溶剤の存在下、再接触対象物に、四価のチタンハロゲン化合物及び/又は1種以上の内部電子供与性化合物を接触させる再接触処理を1回又は2回以上繰り返し行うことにより、又は(2)該第一中間生成物に対し、再接触処理用不活性有機溶剤の存在下、再接触対象物に、四価のチタンハロゲン化合物及び/又は1種以上の内部電子供与性化合物を接触させる再接触処理を2回以上繰り返し行い、最初の再接触処理から最終の再接触処理の間に、洗浄処理用不活性有機溶剤で洗浄する洗浄工程を少なくとも1回行うことにより、再接触生成物を得る第二工程と、
該再接触生成物を洗浄処理用不活性有機溶剤で洗浄する洗浄処理を行い、懸濁状又は粉末状のオレフィン類重合用触媒成分を得る最終の洗浄工程と、
を有するオレフィン類重合用触媒成分の製造工程において、
該製造工程中の洗浄工程のうち、少なくとも1回の洗浄工程において、1質量ppm以上の内部電子供与性化合物を含有する洗浄処理用不活性有機溶剤を用いて洗浄処理を行うこと、
を特徴とするオレフィン類重合用触媒成分の製造方法である。
本発明(i)の第一の形態のオレフィン類重合用触媒成分の製造方法では、第二工程において、再接触処理を2回以上繰り返す場合は、(1)再接触処理と再接触処理との間で、洗浄工程を行わなくてもよいし、あるいは、(2)再接触処理と再接触処理との間に、洗浄処理用不活性有機溶剤で洗浄する洗浄工程を行ってもよい。
【0039】
本発明(i)の第二の形態のオレフィン類重合用触媒成分の製造方法は、オレフィン類重合用触媒成分を得るオレフィン類重合用触媒成分の製造方法であって、
(II)マグネシウム化合物と、四価のチタンハロゲン化合物と、1種以上の内部電子供与性化合物と、を第一接触処理用不活性有機溶剤の存在下で接触させて反応させることにより、反応生成物を得る第一工程(B)と、
該反応生成物を洗浄処理用不活性有機溶剤で洗浄する洗浄処理を行い、懸濁状又は粉末状のオレフィン類重合用触媒成分を得る最終の洗浄工程と、
を有するオレフィン類重合用触媒成分の製造工程において、
該製造工程中の洗浄工程のうち、少なくとも1回の洗浄工程において、1質量ppm以上の内部電子供与性化合物を含有する洗浄処理用不活性有機溶剤を用いて洗浄処理を行うこと、
を特徴とするオレフィン類重合用触媒成分の製造方法である。
【0040】
<本発明(i)の第一の形態のオレフィン類重合用触媒成分の製造方法>
本発明(i)の第一の形態のオレフィン類重合用触媒成分の製造方法は、第一工程(A)と、第二工程と、最終の洗浄工程と、を有する。
【0041】
本発明(i)の第一の形態のオレフィン類重合用触媒成分の製造方法に係る第一工程(A)は、(a)マグネシウム化合物と、四価のチタンハロゲン化合物と、1種以上の内部電子供与性化合物と、を第一接触処理用不活性有機溶剤の存在下で接触させて反応させることにより、第一中間生成物を得る工程、又は(b)マグネシウム化合物と、四価のチタンハロゲン化合物と、1種以上の内部電子供与性化合物と、を第一接触処理用不活性有機溶剤の存在下、接触させて、反応させ、次いで、洗浄処理用不活性有機溶剤で洗浄する洗浄工程を行うことにより、第一中間生成物を得る工程である。
【0042】
第一工程(A)では、マグネシウム化合物、四価のチタンハロゲン化合物及び内部電子供与性化合物を、第一接触処理用不活性有機溶剤の存在下で混合することにより、接触させ、これらを反応させる。
【0043】
第一工程(A)における反応時の温度は、0~130℃が好ましく、40~130℃がより好ましく、30~120℃がさらに好ましく、80~120℃が一層好ましく、また、反応時の時間は、1分間以上が好ましく、10分間以上がより好ましく、30分間~6時間がさらに好ましく、30分間~5時間が一層好ましく、1~4時間がより一層好ましい。
【0044】
第一工程(A)において、マグネシウム化合物、四価のチタンハロゲン化合物及び内部電子供与性化合物を、上記反応温度で反応させる前に、低温で混合する低温熟成を行ってもよい。
【0045】
低温熟成は、上記反応時の温度よりも低温で、マグネシウム化合物、四価のチタンハロゲン化合物及び内部電子供与性化合物を接触させる予備反応である。低温熟成時の温度は、-20~70℃が好ましく、-10~60℃がより好ましく、-10~30℃がさらに好ましい。また、低温熟成時間は、1分間~6時間が好ましく、5分間~4時間がより好ましく、30分間~3時間がさらに好ましい。
【0046】
第一工程(A)において、マグネシウム化合物、四価のチタンハロゲン化合物及び内部電子供与性化合物類を接触させ、反応させる際、マグネシウム化合物1モルに対する四価のチタンハロゲン化合物の使用量は、0.5~100モルであることが好ましく、1~50モルであることがより好ましく、1~10モルであることがさらに好ましい。
【0047】
第一工程(A)において、マグネシウム化合物、四価のチタンハロゲン化合物及び内部電子供与性化合物を接触させ、反応させる際、マグネシウム化合物1モルに対する内部電子供与性化合物の使用量は、0.01~10モルであることが好ましく、0.01~1モルであることがより好ましく、0.02~0.6モルであることがさらに好ましい。
【0048】
第一工程(A)において、第一接触処理用不活性有機溶媒の使用量は、マグネシウム化合物1モルに対し、0.001~500モルであることが好ましく、0.5~100モルであることがより好ましく、1.0~20モルであることがさらに好ましい。
【0049】
第一工程(A)において、マグネシウム化合物、四価のチタンハロゲン化合物及び内部電子供与性化合物の接触は、不活性ガス雰囲気下、水分等を除去した状況下で、撹拌機を具備した容器中で、撹拌しながら行うことが好ましい。
【0050】
そして、第一工程(A)では、マグネシウム化合物、四価のチタンハロゲン化合物及び内部電子供与性化合物を接触させ、反応させることにより生成する第一中間生成物から、反応液を分離し、第一中間生成物を得る。第一中間生成物から反応液を分離する方法としては、反応液を静置した後、上澄み液を除去するデカンテーションによる固液分離が挙げられる。また、固液分離を行った後、第一中間生成物を、ウエットな状態(スラリー状)で次の工程又は処理を行ってもよいし、固液分離を行った後、更に熱風乾燥等により乾燥状態にしてから、次の工程又は処理を行ってもよい。
【0051】
本発明(i)の第一の形態のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法に係る第一工程(A)で、マグネシウム化合物、四価のチタンハロゲン化合物及び内部電子供与性化合物の反応を行った後、得られる生成物を、洗浄せずに第二工程に用いてもよいし、あるいは、第二工程を行う前に、得られる生成物を、洗浄処理用不活性有機溶剤で洗浄する洗浄工程(以下、第一工程洗浄工程)を行ってから、第二工程を行ってもよい。
【0052】
第一工程洗浄工程では、マグネシウム化合物、四価のチタンハロゲン化合物及び内部電子供与性化合物の反応を行い得られる生成物に対し、洗浄対象物と、洗浄処理用不活性有機溶剤と、を、混合及び撹拌して、接触させた後、固形分から洗浄液を分離する洗浄処理を、1回行うか又は2回以上繰り返し行うことにより、マグネシウム化合物、四価のチタンハロゲン化合物及び内部電子供与性化合物の反応を行い得られる生成物を洗浄し、生成物中に残留する未反応原料成分や反応副生成物(アルコキシチタンハライドや四塩化チタン-カルボン酸錯体等)の不純物を除去する。固形分から洗浄液を分離する方法としては、洗浄液を静置した後、上澄み液を除去するデカンテーションによる固液分離や、フィルトレーション(ろ過法)による固液分離が挙げられる。また、固液分離を行った後、固形分を、ウエットな状態(スラリー状)で次の工程又は処理を行ってもよいし、固液分離を行った後、更に熱風乾燥等により乾燥状態にしてから、次の工程又は処理を行ってもよい。
【0053】
第一工程洗浄工程における洗浄温度は、0~120℃が好ましく、0~110℃がより好ましく、30~110℃がさらに好ましく、50~110℃が一層好ましく、50~100℃がより一層好ましい。
【0054】
第一工程洗浄工程において、洗浄処理用不活性有機溶剤の使用量は、第一中間生成物1g当たり、1~500mLであることが好ましく、3~200mLであることがより好ましく、5~100mLであることがさらに好ましい。
【0055】
第一工程洗浄工程における単位洗浄処理の回数は、1~20回が好ましく、2~15回がより好ましく、2~10回がさらに好ましい。
【0056】
本発明(i)の第一の形態のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法に係る第二工程は、(1)第一工程(A)を行い得られる第一中間生成物に対し、再接触処理用不活性有機溶剤の存在下、再接触対象物に、四価のチタンハロゲン化合物及び/又は1種以上の内部電子供与性化合物を接触させる再接触処理を1回又は2回以上繰り返し行うことにより、再接触生成物を得る工程、又は(2)第一工程(A)を行い得られる第一中間生成物に対し、再接触処理用不活性有機溶剤の存在下、再接触対象物に、四価のチタンハロゲン化合物及び/又は1種以上の内部電子供与性化合物を接触させる再接触処理を2回以上繰り返し行い、最初の再接触処理から最終の再接触処理の間に、洗浄処理用不活性有機溶剤で洗浄する洗浄工程を少なくとも1回行うことにより、再接触生成物を得る工程である。つまり、第二工程は、第二工程の(1)又は第二工程の(2)のいずれかを行う工程である。
【0057】
第二工程の(1)において、再接触処理を1回行う場合は、第一工程(A)を行い得られる第一中間生成物に、四価のチタンハロゲン化合物、あるいは、1種以上の内部電子供与性化合物、あるいは、四価のチタンハロゲン化合物及び1種以上の内部電子供与性化合物を、再接触処理用不活性有機溶剤の存在下で接触させて、最終の再接触生成物を得る。なお、再接触処理を1回行う場合は、第二工程における再接触対象は、第一工程を行い得られる第一中間生成物、あるいは、必要に応じて洗浄処理された第一中間生成物である。
【0058】
また、第二工程の(1)において、再接触処理を2回行う場合は、第一工程(A)を行い得られる第一中間生成物に、四価のチタンハロゲン化合物、あるいは、1種以上の内部電子供与性化合物、あるいは、四価のチタンハロゲン化合物及び1種以上の内部電子供与性化合物を、再接触処理用不活性有機溶剤の存在下で接触させて、1回目の再接触生成物を得、次いで、1回目の再接触生成物に、四価のチタンハロゲン化合物、あるいは、1種以上の内部電子供与性化合物、あるいは、四価のチタンハロゲン化合物及び1種以上の内部電子供与性化合物を、再接触処理用不活性有機溶剤の存在下で接触させて、最終の再接触生成物を得る。なお、再接触処理を2回行う場合は、第二工程における再接触対象は、1回目の再接触処理では、第一工程を行い得られる第一中間生成物であり、2回目の再接触処理では、1回目の再接触処理物である。
【0059】
また、第二工程の(1)において、再接触操作を3回行う場合は、第一工程(A)を行い得られる第一中間生成物に、四価のチタンハロゲン化合物、あるいは、1種以上の内部電子供与性化合物、あるいは、四価のチタンハロゲン化合物及び1種以上の内部電子供与性化合物を、再接触処理用不活性有機溶剤の存在下で接触させて、1回目の再接触生成物を得、次いで、1回目の再接触生成物に、四価のチタンハロゲン化合物、あるいは、1種以上の内部電子供与性化合物、あるいは、四価のチタンハロゲン化合物及び1種以上の内部電子供与性化合物を、再接触処理用不活性有機溶剤の存在下で接触させて、2回目の再接触生成物を得、次いで、2回目の再接触生成物に、四価のチタンハロゲン化合物、あるいは、1種以上の内部電子供与性化合物、あるいは、四価のチタンハロゲン化合物及び1種以上の内部電子供与性化合物を、再接触処理用不活性有機溶剤の存在下で接触させて、最終の再接触生成物を得る。なお、再接触処理を3回行う場合は、第二工程における再接触対象は、1回目の再接触処理では、第一工程を行い得られる第一中間生成物であり、2回目の再接触処理では、1回目の再接触処理物であり、3回目の再接触処理では、2回目の再接触処理物である。
【0060】
このように、第二工程の(1)において、2回以上の再接触処理を行う場合は、1回目の再接触処理を行った後、先の再接触処理の再処理生成物を、次の再接触処理の再接触対象物として、四価のチタンハロゲン化合物、あるいは、1種以上の内部電子供与性化合物、あるいは、四価のチタンハロゲン化合物及び1種以上の内部電子供与性化合物を、再接触処理用不活性有機溶剤の存在下で接触させる再接触処理を繰り返す。つまり、第二工程の(1)において、2回以上の再接触処理を行う場合は、1回目の再接触処理を行った後、先の再接触処理の再処理生成物を、次の再接触処理の再接触対象物として、四価のチタンハロゲン化合物、あるいは、1種以上の内部電子供与性化合物、あるいは、四価のチタンハロゲン化合物及び1種以上の内部電子供与性化合物を、再接触処理用不活性有機溶剤の存在下で接触させる再接触処理を繰り返す。
【0061】
第二工程の(1)での再接触処理を具体的に説明すると以下の通りである。
・1回再接触処理を行う場合:第一中間生成物に最終の再接触処理を行う。
・2回再接触処理を行う場合:第一中間生成物に1回目の再接触処理を行う。→1回目の再接触生成物に、最終の再接触処理を行う。
・3回再接触処理を行う場合:第一中間生成物に1回目の再接触処理を行う。→1回目の再接触生成物に、2回目の再接触処理を行う。→2回目の再接触生成物に、最終の再接触処理を行う。
・n回再接触処理を行う場合:第一中間生成物に1回目の再接触処理を行う。→1回目の再接触生成物に、2回目の再接触処理を行う。→・・・→n-2回目の再接触生成物に、n-1回目の再接触処理を行う(再接触対象物はn-2回目の再接触処理を行い得られる再接触生成物)。→n-1回目の再接触生成物に、最終の再接触処理を行う(再接触対象物はn-1回目の再接触処理を行い得られる再接触生成物)。
【0062】
第二工程の(1)の再接触処理では、再接触対象物と、四価のチタンハロゲン化合物及び/又は内部電子供与性化合物と、を、再接触処理用不活性有機溶剤の存在下で混合することにより、接触させる。
【0063】
第二工程の(1)における再接触処理の温度は、0~130℃が好ましく、40~130℃がより好ましく、30~120℃がさらに好ましく、80~120℃が一層好ましく、また、再接触処理の時間は、1分間以上が好ましく、10分間以上がより好ましく、30分間~6時間がさらに好ましく、30分間~5時間が一層好ましく、1~4時間がより一層好ましい。
【0064】
第二工程の(1)の再接触処理において、四価のチタンハロゲン化合物を再接触させる場合、第一工程(A)で用いたマグネシウム化合物1モルに対する四価のチタンハロゲン化合物の使用量は、0.5~100モルであることが好ましく、1~50モルであることがより好ましく、1~10モルであることがさらに好ましい。
【0065】
第二工程の(1)の再接触処理において、内部電子供与性化合物を再接触させる場合、第一工程(A)で用いたマグネシウム化合物1モルに対する内部電子供与性化合物の使用量は、0.01~10モルであることが好ましく、0.01~1モルであることがより好ましく、0.02~0.6モルであることがさらに好ましい。
【0066】
第二工程の(1)の再接触処理において、内部電子供与性化合物を再接触させる場合、再接触処理液(内部電子供与性化合物を含有する再接触処理用不活性有機溶媒)中の内部電子供与性化合物の含有量は、特に制限されず、適宜選択されるが、再接触効果が高まる点で、好ましくは1000質量ppm以上、特に好ましくは2000質量ppm以上である。
【0067】
第二工程の(1)において、再接触処理用不活性有機溶媒の使用量は、第一工程(A)で用いたマグネシウム化合物1モルに対し、0.001~500モルであることが好ましく、0.5~100モルであることがより好ましく、1.0~20モルであることがさらに好ましい。
【0068】
第二工程の(1)の再接触処理において、再接触対象物と、四価のチタンハロゲン化合物及び/又は内部電子供与性化合物と、の接触は、不活性ガス雰囲気下、水分等を除去した状況下で、撹拌機を具備した容器中で、撹拌しながら行うことが好ましい。
【0069】
第二工程の(1)において、再接触対象物に接触させるものが、第一工程で用いた四価のチタンハロゲン化合物と同じ四価のチタンハロゲン化合物であっても異なる四価のチタンハロゲン化合物であってもよいし、また、第一工程で用いた内部電子供与性化合物と同じ内部電子供与性化合物であっても異なる内部電子供与性化合物であってもよい。また、第二工程の(1)において、再接触処理を2回以上繰り返す場合、再接触対象物に接触させるものが、全ての再接触処理で同じであってもよいし、他の再接触処理で接触させたものとは異なるものを接触させてもよい。他の再接触処理で接触されたものとは異なるものを接触させる形態例としては、例えば、再接触対象物に、1回目の再接触処理で、四価のチタンハロゲン化合物を接触させ、2回目の再接触処理で、内部電子供与性化合物、又は四価のチタンハロゲン化合物及び内部電子供与性化合物を接触させる形態例、再接触対象物に、1回目の再接触処理で、第一の内部電子供与性化合物を接触させ、2回目の再接触処理で、第一の内部電子供与性化合物とは異なる種類の第二の内部電子供与性化合物を接触させる形態例などが挙げられる。
【0070】
そして、第二工程の(1)の再接触処理では、再接触対象物に、四価のチタンハロゲン化合物及び/又は内部電子供与性化合物を接触させて得られる再接触生成物から、液体分を分離し、再接触生成物を得る。再接触生成物から液体分を分離する方法としては、液体分を静置した後、上澄み液を除去するデカンテーションによる固液分離が挙げられる。また、固液分離を行った後、再接触生成物を、ウエットな状態(スラリー状)で次の工程又は処理を行ってもよいし、固液分離を行った後、更に熱風乾燥等により乾燥状態にしてから、次の工程又は処理を行ってもよい。
【0071】
第二工程の(1)が、2回以上再接触処理を行う工程の場合、先の再接触処理を行った後、得られる再接触生成物を、洗浄せずにその次の再接触処理に用いる。
【0072】
そして、第二工程の(1)を行うことにより、最終の再処理生成物を得る。
【0073】
本発明(i)のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法に係る第二工程において、2回以上再接触処理を行う場合、先の再接触処理を行った後、次の再接触処理を行う前に、先の再接触処理で行い得られる再接触生成物を、洗浄処理用不活性有機溶剤で洗浄する洗浄工程(以下、第二工程中間洗浄工程)を行ってから、次の再接触処理を行ってもよい。
【0074】
つまり、第二工程の(2)は、第一工程(A)を行い得られる第一中間生成物に対し、再接触処理用不活性有機溶剤の存在下、再接触対象物に、四価のチタンハロゲン化合物及び/又は1種以上の内部電子供与性化合物を接触させる再接触処理を2回以上繰り返し行い、最初の再接触処理から最終の再接触処理の間に、洗浄処理用不活性有機溶剤で洗浄する第二工程中間洗浄工程を少なくとも1回行うことにより、再接触生成物を得る工程である。
【0075】
第二工程の(2)において、再接触処理を2回行う場合は、第一工程(A)を行い得られる第一中間生成物に、四価のチタンハロゲン化合物、あるいは、1種以上の内部電子供与性化合物、あるいは、四価のチタンハロゲン化合物及び1種以上の内部電子供与性化合物を、再接触処理用不活性有機溶剤の存在下で接触させて、1回目の再接触生成物を得、次いで、1回目の再接触処理で行い得られる再接触生成物を、洗浄処理用不活性有機溶剤で洗浄する第二工程中間洗浄工程を行い、次いで、1回目の第二工程中間洗浄工程処理物に、四価のチタンハロゲン化合物、あるいは、1種以上の内部電子供与性化合物、あるいは、四価のチタンハロゲン化合物及び1種以上の内部電子供与性化合物を、再接触処理用不活性有機溶剤の存在下で接触させて、最終の再接触生成物を得る。なお、再接触処理を2回行う場合は、第二工程の(2)における再接触対象は、1回目の再接触処理では、第一工程を行い得られる第一中間生成物であり、2回目の再接触処理では、1回目の第二工程中間洗浄工程処理物である。
【0076】
また、第二工程の(2)において、再接触操作を3回行う場合は、第一工程(A)を行い得られる第一中間生成物に、四価のチタンハロゲン化合物、あるいは、1種以上の内部電子供与性化合物、あるいは、四価のチタンハロゲン化合物及び1種以上の内部電子供与性化合物を、再接触処理用不活性有機溶剤の存在下で接触させて、再接触生成物を得るという再接触処理を3回繰り返し、かつ、1回目の再接触処理を行った後、2回目の再接触処理を行う前に、第二工程中間洗浄工程を行うか、あるいは、2回目の再接触処理を行った後、3回目の再接触処理を行う前に、第二工程中間洗浄工程を行うか、あるいは、1回目の再接触処理を行った後、2回目の再接触処理を行う前と、2回目の再接触処理を行った後、3回目の再接触処理を行う前の両方で、第二工程中間洗浄工程を行い、最終の再接触生成物を得る。なお、再接触処理を3回行う場合は、第二工程における再接触対象は、1回目の再接触処理では、第一工程を行い得られる第一中間生成物であり、2回目の再接触処理では、1回目の再接触処理の後、洗浄工程を行わなかった場合は、1回目の再接触処理物であり、1回目の再接触処理の後、洗浄工程を行った場合は、その第二工程中間洗浄工程を行い得られる洗浄工程処理物であり、3回目の再接触処理では、2回目の再接触処理の後、洗浄工程を行わなかった場合は、2回目の再接触処理物であり、2回目の再接触処理の後、洗浄工程を行った場合は、その第二工程中間洗浄工程を行い得られる洗浄工程処理物である。
【0077】
このように、第二工程の(2)では、1回目の再接触処理を行った後、先の再接触処理の再処理生成物を、必要に応じて第二工程中間洗浄工程を行った後、次の再接触処理の再接触対象物として、四価のチタンハロゲン化合物、あるいは、1種以上の内部電子供与性化合物、あるいは、四価のチタンハロゲン化合物及び1種以上の内部電子供与性化合物を、再接触処理用不活性有機溶剤の存在下で接触させる再接触処理を繰り返す。第二工程の(2)では、各々の再接触処理の後は、次の再接触処理を行う前に、第二工程中間洗浄工程を行ってもよいし、行わなくてもよいが、第二工程の(2)の全工程中で、少なくとも1回は、第二工程中間洗浄工程を行う。また、第二工程の(2)では、各々の再接触処理の後の全てにおいて、次の再接触処理を行う前に、第二工程中間洗浄工程を行ってもよい。
【0078】
第二工程の(2)での再接触処理を具体的に説明すると以下の通りである。
・2回再接触処理を行う場合:1回目の再接触処理→第二工程中間洗浄工程→2回目の再接触処理
・3回再接触処理を行う場合:1回目の再接触処理→(1)→2回目の再接触処理→(2)→3回目の再接触処理、かつ、再接触処理と再接触処理との間(1)及び(2)のうちの少なくとも1つで第二工程中間洗浄工程を行う。
・n回再接触処理を行う場合:1回目の再接触処理→(1)→2回目の再接触処理→(2)→・・・→n-2回目の再接触処理→(n-2)→n-1回目の再接触処理→(n-1)→n回目の再接触処理、かつ、最初の再接触処理から最終の再接触処理の間の(1)~(n-1)のうちの少なくとも1つで第二工程中間洗浄工程を行う。
【0079】
第二工程の(2)の再接触処理では、再接触対象物と、四価のチタンハロゲン化合物及び/又は内部電子供与性化合物と、を、再接触処理用不活性有機溶剤の存在下で混合することにより、接触させる。
【0080】
第二工程の(2)における再接触処理の温度は、0~130℃が好ましく、40~130℃がより好ましく、30~120℃がさらに好ましく、80~120℃が一層好ましく、また、再接触処理の時間は、1分間以上が好ましく、10分間以上がより好ましく、30分間~6時間がさらに好ましく、30分間~5時間が一層好ましく、1~4時間がより一層好ましい。
【0081】
第二工程の(2)の再接触処理において、四価のチタンハロゲン化合物を再接触させる場合、第一工程(A)で用いたマグネシウム化合物1モルに対する四価のチタンハロゲン化合物の使用量は、0.5~100モルであることが好ましく、1~50モルであることがより好ましく、1~10モルであることがさらに好ましい。
【0082】
第二工程の(2)の再接触処理において、内部電子供与性化合物を再接触させる場合、第一工程(A)で用いたマグネシウム化合物1モルに対する内部電子供与性化合物の使用量は、0.01~10モルであることが好ましく、0.01~1モルであることがより好ましく、0.02~0.6モルであることがさらに好ましい。
【0083】
第二工程の(2)の再接触処理において、内部電子供与性化合物を再接触させる場合、再接触処理液(内部電子供与性化合物を含有する再接触処理用不活性有機溶媒)中の内部電子供与性化合物の含有量は、特に制限されず、適宜選択されるが、再接触効果が高まる点で、好ましくは1000質量ppm以上、特に好ましくは2000質量ppm以上である。また、第二工程の(2)における第二工程中間洗浄工程において、洗浄処理用不活性有機溶剤として、内部電子供与性化合物を含有する洗浄処理用不活性有機溶剤を用いる場合、洗浄処理用不活性有機溶剤中の内部電子供与性化合物の含有量が、再接触処理液中の内部電子供与性化合物の含有量より低ければ、洗浄効果が得られるが、洗浄効果が高まる点で、下記式:
再接触処理液中の内部電子供与性化合物の含有量(質量ppm)-洗浄処理用不活性有機溶剤中の内部電子供与性化合物の含有量(質量ppm)=A
で求められるA値が、300質量ppm以上、好ましくは500質量ppm以上、より好ましくは999質量ppm以上、更に好ましくは1999質量ppm以上である。
【0084】
第二工程の(2)において、再接触処理用不活性有機溶媒の使用量は、第一工程(A)で用いたマグネシウム化合物1モルに対し、0.001~500モルであることが好ましく、0.5~100モルであることがより好ましく、1.0~20モルであることがさらに好ましい。
【0085】
第二工程の(2)の再接触処理において、再接触対象物と、四価のチタンハロゲン化合物及び/又は内部電子供与性化合物と、の接触は、不活性ガス雰囲気下、水分等を除去した状況下で、撹拌機を具備した容器中で、撹拌しながら行うことが好ましい。
【0086】
第二工程の(2)において、再接触対象物に接触させるものが、第一工程で用いた四価のチタンハロゲン化合物と同じ四価のチタンハロゲン化合物であっても異なる四価のチタンハロゲン化合物であってもよいし、また、第一工程で用いた内部電子供与性化合物と同じ内部電子供与性化合物であっても異なる内部電子供与性化合物であってもよい。また、第二工程の(2)において、再接触処理を2回以上繰り返す場合、再接触対象物に接触させるものが、全ての再接触処理で同じであってもよいし、他の再接触処理で接触させたものとは異なるものを接触させてもよい。他の再接触処理で接触されたものとは異なるものを接触させる形態例としては、例えば、再接触対象物に、1回目の再接触処理で、四価のチタンハロゲン化合物を接触させ、2回目の再接触処理で、内部電子供与性化合物、又は四価のチタンハロゲン化合物及び内部電子供与性化合物を接触させる形態例、再接触対象物に、1回目の再接触処理で、第一の内部電子供与性化合物を接触させ、2回目の再接触処理で、第一の内部電子供与性化合物とは異なる種類の第二の内部電子供与性化合物を接触させる形態例などが挙げられる。
【0087】
そして、第二工程の(2)の再接触処理では、再接触対象物に、四価のチタンハロゲン化合物及び/又は内部電子供与性化合物を接触させて得られる再接触生成物から、液体分を分離し、再接触生成物を得る。再接触生成物から液体分を分離する方法としては、液体分を静置した後、上澄み液を除去するデカンテーションによる固液分離が挙げられる。また、固液分離を行った後、再接触生成物を、ウエットな状態(スラリー状)で次の工程又は処理を行ってもよいし、固液分離を行った後、更に熱風乾燥等により乾燥状態にしてから、次の工程又は処理を行ってもよい。
【0088】
第二工程の(2)では、最初の再接触処理から最終の再接触処理の間に、少なくとも1回は第二工程中間洗浄工程を行う。
【0089】
第二工程中間洗浄工程では、再処理生成物に対し、洗浄対象物と、洗浄処理用不活性有機溶剤と、を、混合及び撹拌して、接触させた後、固形分から洗浄液を分離する洗浄処理を、1回行うか又は2回以上繰り返し行うことにより、洗浄対象物である再処理生成物を洗浄し、再処理生成物中に残留する未反応原料成分や反応副生成物(アルコキシチタンハライドや四塩化チタン-カルボン酸錯体等)の不純物を除去する。固形分から洗浄液を分離する方法としては、洗浄液を静置した後、上澄み液を除去するデカンテーションによる固液分離や、フィルトレーション(ろ過法)による固液分離が挙げられる。また、固液分離を行った後、固形分を、ウエットな状態(スラリー状)で次の工程又は処理を行ってもよいし、固液分離を行った後、更に熱風乾燥等により乾燥状態にしてから、次の工程又は処理を行ってもよい。
【0090】
第二工程中間洗浄工程における洗浄温度は、0~120℃が好ましく、0~110℃がより好ましく、30~110℃がさらに好ましく、50~110℃が一層好ましく、50~100℃がより一層好ましい。
【0091】
第二工程中間洗浄工程において、洗浄処理用不活性有機溶剤の使用量は、洗浄対象物1g当たり、1~500mLであることが好ましく、3~200mLであることがより好ましく、5~100mLであることがさらに好ましい。
【0092】
第二工程中間洗浄工程における洗浄処理の回数は、1~20回が好ましく、2~15回がより好ましく、2~10回がさらに好ましい。
【0093】
そして、第二工程の(2)を行うことにより、最終の再処理生成物を得る。
【0094】
本発明(i)の第一の形態のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法に係る最終の洗浄工程は、第二工程を行った後、第二工程の最終の再接触処理を行い得られる再接触生成物を、洗浄処理用不活性有機溶剤で洗浄する洗浄工程(以下、最終洗浄工程)を行い、懸濁状又は粉末状のオレフィン類重合用触媒成分を得る工程である。
【0095】
最終洗浄工程では、第二工程を行い得られる最終の再接触生成物に対し、洗浄対象物と、洗浄処理用不活性有機溶剤と、を、混合及び撹拌して、接触させた後、固形分から洗浄液を分離する洗浄処理を、1回行うか又は2回以上繰り返し行うことにより、最終の再接触生成物を洗浄し、最終の再接触生成物中に残留する未反応原料成分や反応副生成物(アルコキシチタンハライドや四塩化チタン-カルボン酸錯体等)の不純物を除去する。固形分から洗浄液を分離する方法としては、洗浄液を静置した後、上澄み液を除去するデカンテーションによる固液分離や、フィルトレーション(ろ過法)による固液分離が挙げられる。固液分離を行った後、固形分を熱風乾燥等により乾燥して、オレフィン類固体触媒成分を得る。
【0096】
最終洗浄工程における洗浄温度は、0~120℃が好ましく、0~110℃がより好ましく、30~110℃がさらに好ましく、50~110℃が一層好ましく、50~100℃がより一層好ましい。
【0097】
最終洗浄工程において、洗浄処理用不活性有機溶剤の使用量は、最終の再処理生成物1g当たり、1~500mLであることが好ましく、3~200mLであることがより好ましく、5~100mLであることがさらに好ましい。
【0098】
最終洗浄工程における洗浄処理の回数は、1~20回が好ましく、2~15回がより好ましく、2~10回がさらに好ましい。
【0099】
最終洗浄工程では、先に、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族系の不活性有機溶剤で、1回又は2回以上の洗浄処理を行った後、ヘキサン、ヘプタン、デカン、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂肪族系の不活性有機溶剤で、1回又は2回以上の洗浄処理を行うことが好ましい。
【0100】
そして、本発明(i)の第一の形態のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法では、製造工程中の洗浄工程のうち、少なくとも1回の洗浄工程において、1質量ppm以上、好ましくは1~700質量ppm、より好ましくは1~500質量ppmの内部電子供与性化合物を含有する洗浄処理用不活性有機溶剤を用いて洗浄処理を行う。つまり、本発明(i)の第一の形態のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法では、第一工程洗浄工程、第二工程中間洗浄工程及び最終洗浄工程のうち、いずれか1つで又は2つ以上で、1質量ppm以上、好ましくは1~700質量ppm、より好ましくは1~500質量ppmの内部電子供与性化合物を含有する洗浄処理用不活性有機溶剤を用いて洗浄処理を行う。洗浄処理において用いる洗浄処理用不活性有機溶剤中の内部電子供与性化合物の含有量が、上記範囲にあることにより、洗浄処理における固体触媒成分の微粒子の生成を抑制することができるので、固体触媒成分の沈降性が高まり、更に、デカンテーションで固液分離を行う場合は、固体触媒成分の収率が高くなる。第二工程の(2)の再接触処理において、内部電子供与性化合物を再接触させ、かつ、第二工程の(2)における第二工程中間洗浄処理において、洗浄処理用不活性有機溶剤として、内部電子供与性化合物を含有する洗浄処理用不活性有機溶剤を用いる場合、洗浄処理用不活性有機溶剤中の内部電子供与性化合物の含有量が、再接触処理液中の内部電子供与性化合物の含有量より低ければ、洗浄効果が得られるが、洗浄効果が高まる点で、下記式:
再接触処理液中の内部電子供与性化合物の含有量(質量ppm)-洗浄処理用不活性有機溶剤中の内部電子供与性化合物の含有量(質量ppm)=A
で求められるA値が、300質量ppm以上、好ましくは500質量ppm以上、より好ましくは999質量ppm以上、更に好ましくは1999質量ppm以上である。
【0101】
内部電子供与性化合物を含有する洗浄処理用不活性有機溶剤を用いて洗浄処理を行う洗浄工程が、1回の洗浄処理からなる場合は、その1回の洗浄処理において上記の内部電子供与性化合物を含有する洗浄処理用不活性有機溶剤を用いる。
【0102】
内部電子供与性化合物を含有する洗浄処理用不活性有機溶剤を用いて洗浄処理を行う洗浄工程が、複数回の洗浄処理からなる場合は、複数回の洗浄処理のうちの少なくとも1回において上記の内部電子供与性化合物を含有する洗浄処理用不活性有機溶剤を用いる。そして、内部電子供与性化合物を含有する洗浄処理用不活性有機溶剤を用いて洗浄処理を行う洗浄工程が、複数回の洗浄処理からなる場合は、複数回の洗浄処理のうち、少なくとも1回目の洗浄処理において、上記の内部電子供与性化合物を含有する洗浄処理用不活性有機溶剤を用いることが好ましい。また、内部電子供与性化合物を含有する洗浄処理用不活性有機溶剤を用いて洗浄処理を行う洗浄工程が、複数回の洗浄処理からなる場合は、複数回の洗浄処理のうち、複数回の洗浄処理のうちの半分以上において、上記の内部電子供与性化合物を含有する洗浄処理用不活性有機溶剤を用いることが好ましく、複数回の洗浄処理の全てにおいて、上記の内部電子供与性化合物を含有する洗浄処理用不活性有機溶剤を用いることが特に好ましい。
【0103】
本発明(i)の第一の形態のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法において、最終洗浄工程を行い、かつ、第一工程洗浄工程及び第二工程中間洗浄工程を行わない場合は、最終洗浄工程の洗浄処理の少なくとも1回で、1質量ppm以上、好ましくは1~200質量ppm、より好ましくは1~100質量ppmの内部電子供与性化合物を含有する洗浄処理用不活性有機溶剤を用いて洗浄処理を行う。
また、本発明(i)の第一の形態のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法において、第一工程洗浄工程及び最終洗浄工程を行い、かつ、第二工程中間洗浄工程を行わない場合は、第一工程洗浄工程及び最終洗浄工程のうちのいずれか一方又は両方の洗浄工程の洗浄処理の少なくとも1回で、1質量ppm以上、好ましくは1~700質量ppm、より好ましくは1~500質量ppmの内部電子供与性化合物を含有する洗浄処理用不活性有機溶剤を用いて洗浄処理を行う。
また、本発明(i)の第一の形態のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法において、第二工程中間洗浄工程及び最終洗浄工程を行い、かつ、第一工程洗浄工程を行わない場合は、第二工程中間洗浄工程及び最終洗浄工程のうちのいずれか一方又は両方の洗浄工程の洗浄処理の少なくとも1回で、1質量ppm以上、好ましくは1~700質量ppm、より好ましくは1~500質量ppmの内部電子供与性化合物を含有する洗浄処理用不活性有機溶剤を用いて洗浄処理を行う。
また、本発明(i)の第一の形態のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法において、第一工程洗浄工程、第二工程中間洗浄工程及び最終洗浄工程を行う場合は、第一工程洗浄工程、第二工程中間洗浄工程及び最終洗浄工程のうちのいずれか一つ又は二つ以上の洗浄工程の洗浄処理の少なくとも1回で、1質量ppm以上、好ましくは1~700質量ppm、より好ましくは1~500質量ppmの内部電子供与性化合物を含有する洗浄処理用不活性有機溶剤を用いて洗浄処理を行う。
特に、本発明(i)の第一の形態のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法では、最終の洗浄工程において、内部電子供与性化合物を含有する洗浄処理用不活性有機溶剤を用いて洗浄処理を行う場合、最終の洗浄工程では、1質量ppm以上、好ましくは1~200質量ppm、より好ましくは1~100質量ppmの内部電子供与性化合物を含有する洗浄処理用不活性有機溶剤を用いて洗浄処理を行うことが好ましい。
【0104】
<本発明(i)の第二の形態のオレフィン類重合用触媒成分の製造方法>
本発明(i)の第二の形態のオレフィン類重合用触媒成分の製造方法は、第一工程(B)及び最終の洗浄工程を有する。
【0105】
本発明(i)の第二の形態のオレフィン類重合用触媒成分の製造方法に係る第一工程(B)は、(a)マグネシウム化合物と、四価のチタンハロゲン化合物と、1種以上の内部電子供与性化合物と、を第一接触処理用不活性有機溶剤の存在下で接触させて反応させることにより、反応生成物を得る工程である。
【0106】
第一工程(B)では、マグネシウム化合物、四価のチタンハロゲン化合物及び内部電子供与性化合物を、第一接触処理用不活性有機溶剤の存在下で混合することにより、接触させ、これらを反応させる。
【0107】
第一工程(B)における反応時の温度は、0~130℃が好ましく、40~130℃がより好ましく、30~120℃がさらに好ましく、80~120℃が一層好ましく、また、反応時の時間は、1分間以上が好ましく、10分間以上がより好ましく、30分間~6時間がさらに好ましく、30分間~5時間が一層好ましく、1~4時間がより一層好ましい。
【0108】
第一工程(B)において、マグネシウム化合物、四価のチタンハロゲン化合物及び内部電子供与性化合物を、上記反応温度で反応させる前に、低温で混合する低温熟成を行ってもよい。
【0109】
低温熟成は、上記反応時の温度よりも低温で、マグネシウム化合物、四価のチタンハロゲン化合物及び内部電子供与性化合物を接触させる予備反応である。低温熟成時の温度は、-20~70℃が好ましく、-10~60℃がより好ましく、-10~30℃がさらに好ましい。また、低温熟成時間は、1分間~6時間が好ましく、5分間~4時間がより好ましく、30分間~3時間がさらに好ましい。
【0110】
第一工程(B)において、マグネシウム化合物、四価のチタンハロゲン化合物及び内部電子供与性化合物類を接触させ、反応させる際、マグネシウム化合物1モルに対する四価のチタンハロゲン化合物の使用量は、0.5~100モルであることが好ましく、1~50モルであることがより好ましく、1~10モルであることがさらに好ましい。
【0111】
第一工程(B)において、マグネシウム化合物、四価のチタンハロゲン化合物及び内部電子供与性化合物を接触させ、反応させる際、マグネシウム化合物1モルに対する内部電子供与性化合物の使用量は、0.01~10モルであることが好ましく、0.01~1モルであることがより好ましく、0.02~0.6モルであることがさらに好ましい。
【0112】
第一工程(B)において、マグネシウム化合物、四価のチタンハロゲン化合物及び内部電子供与性化合物の接触は、不活性ガス雰囲気下、水分等を除去した状況下で、撹拌機を具備した容器中で、撹拌しながら行うことが好ましい。
【0113】
そして、第一工程(B)では、マグネシウム化合物、四価のチタンハロゲン化合物及び内部電子供与性化合物を接触させ、反応させることにより生成する第一中間生成物から、反応液を分離し、反応生成物を得る。反応生成物から反応液を分離する方法としては、反応液を静置した後、上澄み液を除去するデカンテーションによる固液分離が挙げられる。また、固液分離を行った後、第一中間生成物を、ウエットな状態(スラリー状)で次の工程又は処理を行ってもよいし、固液分離を行った後、更に熱風乾燥等により乾燥状態にしてから、次の工程又は処理を行ってもよい。
【0114】
本発明(i)の第二の形態のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法に係る最終の洗浄工程は、第一工程(B)を行った後、第一工程(B)を行い得られる反応生成物を、洗浄処理用不活性有機溶剤で洗浄する洗浄工程(以下、最終洗浄工程)を行い、懸濁状又は粉末状のオレフィン類重合用触媒成分を得る工程である。
【0115】
最終洗浄工程では、第一工程を行い得られる反応生成物に対し、洗浄対象物と、洗浄処理用不活性有機溶剤と、を、混合及び撹拌して、接触させた後、固形分から洗浄液を分離する洗浄処理を、1回行うか又は2回以上繰り返し行うことにより、最終の再接触生成物を洗浄し、最終の再接触生成物中に残留する未反応原料成分や反応副生成物(アルコキシチタンハライドや四塩化チタン-カルボン酸錯体等)の不純物を除去する。固形分から洗浄液を分離する方法としては、洗浄液を静置した後、上澄み液を除去するデカンテーションによる固液分離や、フィルトレーション(ろ過法)による固液分離が挙げられる。固液分離を行った後、固形分を熱風乾燥等により乾燥して、オレフィン類固体触媒成分を得る。
【0116】
最終洗浄工程における洗浄温度は、0~120℃が好ましく、0~110℃がより好ましく、30~110℃がさらに好ましく、50~110℃が一層好ましく、50~100℃がより一層好ましい。
【0117】
最終洗浄工程において、洗浄処理用不活性有機溶剤の使用量は、最終の再処理生成物1g当たり、1~500mLであることが好ましく、3~200mLであることがより好ましく、5~100mLであることがさらに好ましい。
【0118】
最終洗浄工程における洗浄処理の回数は、1~20回が好ましく、2~15回がより好ましく、2~10回がさらに好ましい。
【0119】
最終洗浄工程では、先に、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族系の不活性有機溶剤で、1回又は2回以上の洗浄処理を行った後、ヘキサン、ヘプタン、デカン、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂肪族系の不活性有機溶剤で、1回又は2回以上の洗浄処理を行うことが好ましい。
【0120】
そして、本発明(i)の第二の形態のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法では、製造工程中の洗浄工程のうち、少なくとも1回の洗浄工程において、1質量ppm以上、好ましくは1~700質量ppm、より好ましくは1~500質量ppmの内部電子供与性化合物を含有する洗浄処理用不活性有機溶剤を用いて洗浄処理を行う。洗浄処理において用いる洗浄処理用不活性有機溶剤中の内部電子供与性化合物の含有量が、上記範囲にあることにより、洗浄処理における固体触媒成分の微粒子の生成を抑制することができるので、固体触媒成分の沈降性が高まり、更に、デカンテーションで固液分離を行う場合は、固体触媒成分の収率が高くなる。
【0121】
本発明(i)の第二の形態のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法において行う洗浄工程は、最終洗浄工程であり、最終洗浄工程の洗浄処理の少なくとも1回で、1質量ppm以上、好ましくは1~200質量ppm、より好ましくは1~100質量ppmの内部電子供与性化合物を含有する洗浄処理用不活性有機溶剤を用いて洗浄処理を行う。
【0122】
内部電子供与性化合物を含有する洗浄処理用不活性有機溶剤を用いて洗浄処理を行う洗浄工程が、1回の洗浄処理からなる場合は、その1回の洗浄処理において上記の内部電子供与性化合物を含有する洗浄処理用不活性有機溶剤を用いる。
【0123】
内部電子供与性化合物を含有する洗浄処理用不活性有機溶剤を用いて洗浄処理を行う洗浄工程が、複数回の洗浄処理からなる場合は、複数回の洗浄処理のうちの少なくとも1回において上記の内部電子供与性化合物を含有する洗浄処理用不活性有機溶剤を用いる。そして、内部電子供与性化合物を含有する洗浄処理用不活性有機溶剤を用いて洗浄処理を行う洗浄工程が、複数回の洗浄処理からなる場合は、複数回の洗浄処理のうち、少なくとも1回目の洗浄処理において、上記の内部電子供与性化合物を含有する洗浄処理用不活性有機溶剤を用いることが好ましい。また、内部電子供与性化合物を含有する洗浄処理用不活性有機溶剤を用いて洗浄処理を行う洗浄工程が、複数回の洗浄処理からなる場合は、複数回の洗浄処理のうち、複数回の洗浄処理のうちの半分以上において、上記の内部電子供与性化合物を含有する洗浄処理用不活性有機溶剤を用いることが好ましく、複数回の洗浄処理の全てにおいて、上記の内部電子供与性化合物を含有する洗浄処理用不活性有機溶剤を用いることが特に好ましい。
【0124】
<(ii)の形態>
本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法のうち、(ii)の形態は、不活性有機溶剤を用いずに、マグネシウム化合物に、四価のチタンハロゲン化合物及び1種以上の内部電子供与性化合物を接触させて反応させる形態である。以下、(ii)の形態を、本発明(ii)のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法と記載する。
【0125】
すなわち、本発明(ii)のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法は、不活性有機溶剤を用いずに、マグネシウム化合物に、四価のチタンハロゲン化合物及び1種以上の内部電子供与性化合物を接触させて反応させることにより、あるいは、該反応後、更に、四価のチタンハロゲン化合物及び/又は1種以上の内部電子供与性化合物を1回又は2回以上繰り返し接触させることにより、オレフィン類重合用触媒成分を得るオレフィン類重合用固体触媒成分の製造工程において、該製造工程中の洗浄工程のうち、少なくとも1回の洗浄工程で、1質量ppm以上の内部電子供与性化合物を含有する洗浄処理用不活性有機溶剤を用いて洗浄処理を行うこと、
を特徴とするオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法である。
【0126】
本発明(ii)のオレフィン類重合用触媒成分の製造方法は、オレフィン類重合用触媒成分を得るオレフィン類重合用触媒成分の製造方法であって、
(I)マグネシウム化合物と、四価のチタンハロゲン化合物と、1種以上の内部電子供与性化合物と、を、不活性有機溶剤の不存在下、接触させて、反応させることにより、又は更に、該反応後、洗浄処理用不活性有機溶剤で洗浄する洗浄工程を行うことにより、第一中間生成物を得る第一工程(A)と、(1)該第一中間生成物に対し、不活性有機溶剤の存在下、再接触対象物に、四価のチタンハロゲン化合物及び/又は1種以上の内部電子供与性化合物を接触させる再接触処理を1回又は2回以上繰り返し行うことにより、又は(2)該第一中間生成物に対し、不活性有機溶剤の存在下、再接触対象物に、四価のチタンハロゲン化合物及び/又は1種以上の内部電子供与性化合物を接触させる再接触処理を2回以上繰り返し行い、最初の再接触処理から最終の再接触処理の間に、洗浄処理用不活性有機溶剤で洗浄する洗浄工程を少なくとも1回行うことにより、再接触生成物を得る第二工程と、を有し、
あるいは、(II)マグネシウム化合物と、四価のチタンハロゲン化合物と、1種以上の内部電子供与性化合物と、を、不活性有機溶剤の不存在下、接触させて、反応させることにより、反応生成物を得る第一工程(B)を有し、
更に、該(I)の場合は、該第二工程を行った後、該第二工程の最終の再接触処理を行い得られる再接触生成物を、該(II)の場合は、該第一工程を行った後、反応生成物を洗浄処理用不活性有機溶剤で洗浄する洗浄処理を行い、懸濁状又は粉末状のオレフィン類重合用触媒成分を得る最終の洗浄工程と、
を有するオレフィン類重合用触媒成分の製造工程において、
該製造工程中の洗浄工程のうち、少なくとも1回の洗浄工程において、1質量ppm以上の内部電子供与性化合物を含有する洗浄処理用不活性有機溶剤を用いて洗浄処理を行うこと、
を特徴とするオレフィン類重合用触媒成分の製造方法である。
【0127】
すなわち、本発明(ii)の第一の形態のオレフィン類重合用触媒成分の製造方法は、オレフィン類重合用触媒成分を得るオレフィン類重合用触媒成分の製造方法であって、
(I)マグネシウム化合物と、四価のチタンハロゲン化合物と、1種以上の内部電子供与性化合物と、を、不活性有機溶剤の不存在下、接触させて、反応させることにより、又は更に、該反応後、洗浄処理用不活性有機溶剤で洗浄する洗浄工程を行うことにより、第一中間生成物を得る第一工程(A)と、
(1)該第一中間生成物に対し、不活性有機溶剤の存在下、再接触対象物に、四価のチタンハロゲン化合物及び/又は1種以上の内部電子供与性化合物を接触させる再接触処理を1回又は2回以上繰り返し行うことにより、又は(2)該第一中間生成物に対し、不活性有機溶剤の存在下、再接触対象物に、四価のチタンハロゲン化合物及び/又は1種以上の内部電子供与性化合物を接触させる再接触処理を2回以上繰り返し行い、最初の再接触処理から最終の再接触処理の間に、洗浄処理用不活性有機溶剤で洗浄する洗浄工程を少なくとも1回行うことにより、再接触生成物を得る第二工程と、
該再接触生成物を洗浄処理用不活性有機溶剤で洗浄する洗浄工程を行い、懸濁状又は粉末状のオレフィン類重合用触媒成分を得る最終の洗浄工程と、
を有するオレフィン類重合用触媒成分の製造工程において、
該製造工程中の洗浄工程のうち、少なくとも1回の洗浄工程において、1質量ppm以上の内部電子供与性化合物を含有する洗浄処理用不活性有機溶剤を用いて洗浄処理を行うこと、
を特徴とするオレフィン類重合用触媒成分の製造方法である。
本発明(ii)の第一の形態のオレフィン類重合用触媒成分の製造方法では、第二工程において、再接触処理を2回以上繰り返す場合は、(1)再接触処理と再接触処理との間で、洗浄処理を行わなくてもよいし、あるいは、(2)再接触処理と再接触処理の間に、洗浄処理用不活性有機溶剤で洗浄する洗浄工程を行ってもよい。
【0128】
本発明(ii)の第二の形態のオレフィン類重合用触媒成分の製造方法は、オレフィン類重合用触媒成分を得るオレフィン類重合用触媒成分の製造方法であって、
(II)マグネシウム化合物と、四価のチタンハロゲン化合物と、1種以上の内部電子供与性化合物と、を、不活性有機溶剤の不存在下、接触させて、反応させることにより、反応生成物を得る第一工程(B)と、
該反応生成物を洗浄処理用不活性有機溶剤で洗浄する洗浄工程を行い、懸濁状又は粉末状のオレフィン類重合用触媒成分を得る最終の洗浄工程と、
を有するオレフィン類重合用触媒成分の製造工程において、
該製造工程中の洗浄工程のうち、少なくとも1回の洗浄工程において、1質量ppm以上の内部電子供与性化合物を含有する洗浄処理用不活性有機溶剤を用いて洗浄処理を行うこと、
を特徴とするオレフィン類重合用触媒成分の製造方法である。
【0129】
上述した通り、本発明(ii)の第一の形態及び第二の形態のオレフィン類重合用触媒成分の製造方法は、第一工程(A)又は第一工程(B)において、マグネシウム化合物と、四価のチタンハロゲン化合物と、1種以上の内部電子供与性化合物と、を、不活性有機溶剤の不存在下、接触させて、反応させることにより、反応生成物を得ること以外は本発明(i)の第一の形態及び第二の形態のオレフィン類重合用触媒成分の製造方法と同様の製造方法である。
従って、ここでは、第一工程(A)及び第一工程(B)について詳細に説明し、上記本発明(i)において説明した第二工程及び最終の洗浄工程に関する説明を適宜省略する。
【0130】
マグネシウム化合物、四価のチタンハロゲン化合物及び内部電子供与性化合物を、不活性有機溶剤の非存在下で接触させる方法としては、例えば、各触媒原料成分を機械的粉砕手段により接触させる方法(共粉砕)が挙げられる。機械的粉砕手段としては、特に限定されないが例えば、回転ボールミル、振動ボールミル、衝撃ミル等が挙げられる。各触媒原料成分を機械的粉砕手段により接触させる際には、液相又は気相中で行うことができる。具体的には、例えば特公昭52-50037号公報や特開昭57-63310号公報等に記載の方法を適用することができる。
【0131】
<各触媒原料成分>
以下、本発明(i)及び本発明(ii)のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法において用いられる各触媒成分原料について説明する。なお、各触媒成分原料は、本発明(i)及び本発明(ii)の何れかの製造方法において用いられる触媒成分原料である。
本発明(i)及び本発明(ii)のオレフィン類重合用触媒成分の製造方法に係るマグネシウム化合物としては、ジアルコキシマグネシウム、ジハロゲン化マグネシウム、アルコキシマグネシウムハライド等が挙げられる。マグネシウム化合物は、1種であっても、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0132】
なお、マグネシウム化合物として、ジハロゲン化マグネシウム、アルコキシマグネシウムハライド等のハロゲン化マグネシウムを含む化合物を用いる場合には、各触媒原料成分を不活性有機溶剤の存在下で接触させる際に、例えば溶解析出法にて行うことが好ましい。具体的には、例えば特公平3-56245号公報等に記載の方法を挙げることができる。また、各触媒原料成分を不活性有機溶剤の非存在下で接触させる際に、例えば共粉砕を行うことが好ましい。具体的には、例えば特公昭52-50037号公報や特開昭57-63310号公報等に記載の方法を挙げることができる。
【0133】
マグネシウム化合物としては、ジアルコキシマグネシウム、マグネシウムジハライドが好ましく、具体的には、ジメトキシマグネシウム、ジエトキシマグネシウム、ジプロポキシマグネシウム、ジブトキシマグネシウム、エトキシメトキシマグネシウム、エトキシプロポキシマグネシウム、ブトキシエトキシマグネシウム、マグネシウムジクロライド、マグネシウムジブロマイド、マグネシウムジイオダイドが好ましく、ジエトキシマグネシウム、マグネシウムジクロライドが特に好ましい。
【0134】
マグネシウム化合物のうち、ジアルコキシマグネシウムは、金属マグネシウムを、ハロゲンあるいはハロゲン含有金属化合物等の存在下にアルコールと反応させて得られたものでもよい。
【0135】
ジアルコキシマグネシウムは、顆粒状又は粉末状であるものが好ましい。ジアルコキシマグネシウムの形状としては、不定形、球状が挙げられる。
【0136】
ジアルコキシマグネシウムとして球状のものを使用する場合、より良好な粒子形状を有し(より球状で)狭い粒度分布を有する重合体粉末が得られ、重合処理時に生成した重合体粉末の取扱い処理性が向上し、生成した重合体粉末に含まれる微粉に起因する閉塞等の発生を抑制することができる。
【0137】
上記の球状のジアルコキシマグネシウムは、必ずしも真球状である必要はなく、楕円形状あるいは馬鈴薯形状のものを用いることもできる。具体的には、その粒子の円形度が、3以下であるものが好ましく、1~2であることがより好ましく、1~1.5であることがさらに好ましい。
なお、本発明(i)及び本発明(ii)において、ジアルコキシマグネシウム粒子の円形度とは、ジアルコキシマグネシウム粒子を500個以上走査型電子顕微鏡により撮影し、撮影した粒子を画像解析処理ソフトにより処理することで各粒子の面積Sと周囲長Lを求め、各ジアルコキシマグネシウム粒子の円形度を下記式
各ジアルコキシマグネシウム粒子の円形度=L2/(4π×S)
により算出したときの算術平均値を意味する。粒子の形状が真円に近づくほど、円形度は1に近い値を示す。
【0138】
また、上記ジアルコキシマグネシウムの平均粒径は、レーザー光散乱回折法粒度測定機を用いて測定したときの、平均粒子径D50(体積積算粒度分布における積算粒度で50%の粒径)で1~200μmであることが好ましく、5~150μmであることがより好ましい。
ジアルコキシマグネシウムが球状である場合、上記平均粒径は1~100μmであることが好ましく、5~60μmであることがより好ましく、10~50μmであることがさらに好ましい。
【0139】
また、ジアルコキシマグネシウムの粒度については、微粉及び粗粉の少ない、粒度分布の狭いものであることが好ましい。
具体的には、ジアルコキシマグネシウムは、レーザー光散乱回折法粒度測定機を用いて測定したときに、5μm以下の粒子が20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。一方、レーザー光散乱回折法粒度測定機を用いて測定したときに、100μm以上の粒子が10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましい。
更にその粒度分布をln(D90/D10)(ここで、D90は体積積算粒度分布における積算粒度で90%の粒径、D10は体積積算粒度分布における積算粒度で10%の粒径である。)で表すと3以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましい。
【0140】
上記球状のジアルコキシマグネシウムの製造方法は、例えば特開昭58-41832号公報、特開昭62-51633号公報、特開平3-74341号公報、特開平4-368391号公報、特開平8-73388号公報等に例示されている。
【0141】
本発明(i)及び本発明(ii)のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法において、マグネシウム化合物は、反応時に溶液状または懸濁液状であることが好ましく、溶液状または懸濁液状であることにより、反応を好適に進行させることができる。
【0142】
上記マグネシウム化合物が固体である場合には、マグネシウム化合物の可溶化能を有する溶媒に溶解することにより溶液状のマグネシウム化合物とすることができ、またはマグネシウム化合物の可溶化能を有さない溶媒に懸濁することによりマグネシウム化合物懸濁液とすることができる。
なお、マグネシウム化合物が液体状である場合には、そのまま溶液状のマグネシウム化合物として用いてもよいし、マグネシウム化合物の可溶化能を有する溶媒にさらに溶解して溶液状のマグネシウム化合物として用いてもよい。
【0143】
固体のマグネシウム化合物を可溶化しうる化合物としては、アルコール、エーテルおよびエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられる。
具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、2-エチルヘキサノール、オクタノール、ドデカノール、オクタデシルアルコール、オレイルアルコール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、クミルアルコール、イソプロピルアルコール、イソプロピルベンジルアルコール、エチレングリコールなどの炭素原子数が1~18のアルコール、トリクロロメタノール、トリクロロエタノール、トリクロロヘキサノールなどの炭素原子数が1~18のハロゲン含有アルコール、メチルエーテル、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、アミルエーテル、テトラヒドロフラン、エチルベンジルエーテル、ジブチルエーテル、アニソール、ジフェニルエーテルなどの炭素原子数が2~20のエーテル、テトラエトキシチタン、テトラ-n-プロポキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラヘキソキシチタン、テトラブトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウムなどの金属酸エステルなどが挙げられ、中でも、エタノール、プロパノール、ブタノール、2-エチルヘキサノールなどのアルコールが好ましく、2-エチルヘキサノールが特に好ましい。
【0144】
一方、固体のマグネシウム化合物に対して可溶化能を有さない媒体としては、マグネシウム化合物を溶解することがない、飽和炭化水素溶媒または不飽和炭化水素溶媒から選ばれる一種以上が挙げられる。
飽和炭化水素溶媒または不飽和炭化水素溶媒は、安全性や工業的汎用性が高いことから、具体的にはヘキサン、ヘプタン、デカン、メチルヘプタンなどの沸点50~200℃の直鎖状または分岐鎖状脂肪族炭化水素化合物、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレンなどの沸点50~200℃の脂環式炭化水素化合物、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの沸点50~200℃の芳香族炭化水素化合物が挙げられ、中でも、ヘキサン、ヘプタン、デカンなどの沸点50~200℃の直鎖状脂肪族炭化水素化合物や、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの沸点50~200℃の芳香族炭化水素化合物が、好適である。
【0145】
本発明(i)及び本発明(ii)のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法に係る四価のチタンハロゲン化合物、すなわち、第一工程で用いる四価のチタンハロゲン化合物又は第二工程で用いる四価のチタンハロゲン化合物としては、特に制限されないが、下記一般式(IV)
Ti(OR7)rX4-r (IV)
(式中、R7は炭素数1~4のアルキル基を示し、Xは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子を示し、rは0または1~3の整数である。)で表されるチタンハライドもしくはアルコキシチタンハライド群から選択される化合物の一種以上であることが好適である。
【0146】
チタンハライドとしては、チタンテトラクロライド、チタンテトラブロマイド、チタンテトラアイオダイド等のチタンテトラハライドが挙げられる。
また、アルコキシチタンハライドとしては、メトキシチタントリクロライド、エトキシチタントリクロライド、プロポキシチタントリクロライド、n-ブトキシチタントリクロライド、ジメトキシチタンジクロライド、ジエトキシチタンジクロライド、ジプロポキシチタンジクロライド、ジ-n-ブトキシチタンジクロライド、トリメトキシチタンクロライド、トリエトキシチタンクロライド、トリプロポキシチタンクロライド、トリ-n-ブトキシチタンクロライド等が挙げられる。
四価のチタンハロゲン化合物としては、チタンテトラハライドが好ましく、チタンテトラクロライドがより好ましい。
これらのチタン化合物は単独あるいは2種以上併用することもできる。
【0147】
本発明(i)及び本発明(ii)のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法に係る内部電子供与性化合物、すなわち、第一工程で用いる内部電子供与性化合物又は第二工程で用いる内部電子供与性化合物としては、オレフィン類重合用固体触媒成分の調製時に電子供与体として作用するものであれば限定されず、公知の物から選ばれる一種以上が挙げられ、酸素原子あるいは窒素原子を含有する有機化合物であることが好ましく、例えば、アルコール類、フェノール類、エーテル類、エステル類、ケトン類、酸ハライド類、アルデヒト類、アミン類、アミド類、ニトリル類、イソシアネート類、Si-O-C結合またはSi-N-C結合を含む有機ケイ素化合物等から選ばれる一種以上が挙げられる。
【0148】
内部電子供与性化合物としては、モノエーテル、ジエーテル、エーテルカーボネート等のエーテル化合物や、ギ酸エステル、酢酸エステル、プロピオン酸エステル、酪酸エステル、安息香酸エステル、p-トルイル酸エステル、アニス酸エステル等のモノカルボン酸エステル、マロン酸ジエステル、アルキル置換マロン酸ジエステル、モノアルキルモノハロゲン置換マロン酸ジエステル、ハロゲン置換マロン酸ジエステル、ビニリデン置換マロン酸ジエステル、ベンジリデン置換マロン酸ジエステル、マレイン酸ジエステル、アルキル置換マレイン酸ジエステル、アジピン酸ジエステル等のポリカルボン酸エステルがより好ましく、2,2-ジアルキル-1,3―ジメトキシプロパン、9,9-ビス(アルコキシメチル)フルオレン等のジエーテル、(2-アルコキシアルキル)アルキルカーボネート、(2-アルコキシアルキル)フェニルカーボネート等のエーテルカーボネート、フタル酸ジエステル、アルキル置換フタル酸ジエステル、ハロゲン置換フタル酸ジエステル等の芳香族ジカルボン酸ジエステル、マロン酸ジエステル、アルキル置換マロン酸ジエステル、コハク酸ジエステル、アルキル置換コハク酸ジエステル、マレイン酸ジエステル、アルキル置換マレイン酸ジエステル等の脂肪族ジカルボン酸エステルおよびシクロアルカン-1,2-ジカルボン酸ジエステル、1-シクロアルケン-1,2-ジカルボン酸ジエステル、4-シクロアルケン-1,2-ジカルボン酸ジエステル等の脂環族ジカルボン酸エステルから選ばれる一種以上がさらに好ましい。
【0149】
本発明(i)及び本発明(ii)のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法に係る不活性有機溶剤、すなわち、第一工程で用いる第一接触処理用不活性有機溶剤、第二工程で用いる再接触処理用不活性有機溶剤、第一洗浄処理で用いる洗浄処理用不活性有機溶剤、第二工程中間洗浄処理で用いる洗浄処理用不活性有機溶剤、最終洗浄処理で用いる洗浄処理用不活性有機溶剤としては、常温(20℃)下で液体でかつ沸点50~150℃であるものが好ましく、常温下で液体でかつ沸点50~150℃である芳香族炭化水素化合物又は飽和炭化水素化合物がより好ましい。
上記不活性有機溶媒として、具体的には、ヘキサン、ヘプタン、デカン等の直鎖脂肪族炭化水素化合物、メチルヘプタン等の分岐状脂肪族炭化水素化合物、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素化合物、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素化合物等から選ばれる一種以上が挙げられる。
上記不活性有機溶媒のうち、常温下で液体かつ、沸点が50~150℃である芳香族炭化水素化合物が、得られる固体触媒成分の活性を向上させ、得られる重合体の立体規則性を向上させることができるため、好適である。
【0150】
本発明(i)及び本発明(ii)のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法においては、第一工程における各成分の接触及び反応を、ポリシロキサンの存在下に行ってもよい。
【0151】
ポリシロキサンとは、主鎖にシロキサン結合(-Si-O-結合)を有する重合体であるが、シリコーンオイルとも総称され、25℃における粘度が0.02~100cm2/s(2~10000センチストークス)、より好ましくは0.03~5cm2/s(3~500センチストークス)を有する、常温で液状あるいは粘稠状の鎖状、部分水素化、環状あるいは変性ポリシロキサンである。
【0152】
鎖状ポリシロキサンとしては、ジシロキサンとしてヘキサメチルジシロキサン、ヘキサエチルジシロキサン、ヘキサプロピルジシロキサン、ヘキサフェニルジシロキサン1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン、1、3-ジクロロテトラメチルジシロキサン、1、3-ジブロモテトラメチルジシロキサン、クロロメチルペンタメチルジシロキサン、1,3-ビス(クロロメチル)テトラメチルジシロキサン、またジシロキサン以外のポリシロキサンとしてジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンが、部分水素化ポリシロキサンとしては、水素化率10~80%のメチルハイドロジェンポリシロキサンが、環状ポリシロキサンとしては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、2,4,6-トリメチルシクロトリシロキサン、2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサンが、また変性ポリシロキサンとしては、高級脂肪酸基置換ジメチルシロキサン、エポキシ基置換ジメチルシロキサン、ポリオキシアルキレン基置換ジメチルシロキサンが例示される。これらの中で、デカメチルシクロペンタシロキサン、及びジメチルポリシロキサンが好ましく、デカメチルシクロペンタシロキサンが特に好ましい。
【0153】
本発明(i)及び本発明(ii)の製造方法で得られるオレフィン重合用固体触媒成分において、マグネシウム原子の含有量は、10~70質量%が好ましく、10~50質量%がより好ましく、15~40質量%がさらに好ましく、15~25質量%が特に好ましい。
本発明(i)及び本発明(ii)のオレフィン重合用固体触媒成分の製造方法で得られるオレフィン重合用固体触媒成分において、チタン原子の含有量は、0.5~8.0質量%が好ましく、0.5~5.0質量%が好ましく、0.5~3.0質量%がさらに好ましい。
本発明(i)及び本発明(ii)のオレフィン重合用固体触媒成分の製造方法で得られるオレフィン重合用固体触媒成分において、ハロゲン原子の含有量は、20~88質量%が好ましく、30~ 85質量%がより好ましく、40~80質量%がさらに好ましく、45~75質量%が一層好ましい。
本発明(i)及び本発明(ii)のオレフィン重合用固体触媒成分の製造方法で得られるオレフィン重合用固体触媒成分において、内部電子供与性化合物の含有量は、0.1~30質量%が好ましく、0.3~25質量% がより好ましく、0.5~20質量%がさらに好ましい。
【0154】
本発明(i)及び本発明(ii)のオレフィン重合用固体触媒成分の製造方法で得られるオレフィン重合用固体触媒成分は、例えば、マグネシウム原子の含有量が15~25質量%、チタン原子の含有量が0.5~3.0質量%、ハロゲン原子の含有量が45~75質量%、内部電子供与性化合物の含有量が2~20質量%である場合に、固体触媒成分としての性能をバランスよく発揮することができる。
【0155】
本発明(i)及び本発明(ii)において、固体触媒成分中のマグネシウム原子の含有量は、固体触媒成分を塩酸溶液で溶解し、EDTA溶液で滴定するEDTA滴定方法により測定した値を意味するものとする。
本発明(i)及び本発明(ii)において、固体触媒成分中のチタン原子の含有量は、JIS 8311-1997「チタン鉱石中のチタン定量方法」に記載の方法(酸化還元滴定)に準じて測定した値を意味するものとする。
本発明(i)及び本発明(ii)において、固体触媒成分中のハロゲン原子の含有量は、固体触媒成分を硫酸と純水の混合溶液で処理して水溶液とした後、所定量を分取し、硝酸銀標準溶液でハロゲン原子を滴定する硝酸銀滴定法により測定した値を意味するものとする。
【0156】
<オレフィン類重合用触媒及びオレフィン類重合用触媒の製造方法>
本発明に係るオレフィン類重合用触媒は、少なくとも、本発明のオレフィン類重合用触媒成分の製造方法により得られるオレフィン類重合用固体触媒成分、及び下記一般式(I)
R1
pAlQ3-p (I)
(式中、R1は炭素数1~6のアルキル基であり、Qは水素原子またはハロゲン原子であり、pは0<p≦3の実数である。)
で表される有機アルミニウム化合物を接触させて得られたものであることを特徴とするオレフィン類重合用触媒である。また、本発明に係るオレフィン類重合用触媒は、本発明のオレフィン類重合用触媒成分の製造方法により得られるオレフィン類重合用固体触媒成分、下記一般式(I)
R1
pAlQ3-p (I)
(式中、R1は炭素数1~6のアルキル基であり、Qは水素原子またはハロゲン原子であり、pは0<p≦3の実数である。)
で表される有機アルミニウム化合物、及び外部電子供与性化合物を接触させて得られたものであってもよい。また、本発明に係るオレフィン類重合用触媒の製造方法は、少なくとも、本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分及び有機アルミニウム化合物を相互に接触させることを特徴とするオレフィン類重合用触媒の製造方法である。また、本発明に係るオレフィン類重合用触媒の製造方法は、本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分、有機アルミニウム化合物及び外部電子供与性化合物を相互に接触させることを特徴とするオレフィン類重合用触媒の製造方法であってもよい。
【0157】
本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法の詳細は、上述したとおりである。
【0158】
一般式(I)で表わされる有機アルミニウム化合物において、R1は炭素数1~6のアルキル基であり、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基等を挙げることができる。
【0159】
上記一般式(I)で表わされる有機アルミニウム化合物において、Qは水素原子あるいはハロゲン原子を示し、Qがハロゲン原子である場合、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を挙げることができる。
【0160】
一般式(I)で表わされる有機アルミニウム化合物として、具体的には、トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムブロマイド、ジエチルアルミニウムハイドライドから選ばれる一種以上を挙げることができ、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムが好適である。
【0161】
本発明のオレフィン類重合用触媒において、外部電子供与性化合物としては、オレフィン類重合体の重合時に電子供与体として作用し、オレフィン類重合用触媒に用いられるものであれば、特に制限されず、公知の物から選ばれる一種以上が挙げられ、酸素原子あるいは窒素原子を含有する有機化合物が挙げられ、具体的には、例えばアルコール類、フェノール類、エーテル類、エステル類、ケトン類、酸ハライド類、アルデヒド類、アミン類、アミド類、ニトリル類、イソシアネート類、有機ケイ素化合物、中でもSi-O-C結合を有する有機ケイ素化合物またはSi-N-C結合を有するアミノシラン化合物等が挙げられる。
【0162】
上記外部電子供与性化合物のなかでも、安息香酸エチル、p-メトキシ安息香酸エチル、p-エトキシ安息香酸エチル、p-トルイル酸メチル、p-トルイル酸エチル、アニス酸メチル、アニス酸エチル等のエステル類、1,3-ジエーテル類、Si-O-C結合を含む有機ケイ素化合物、Si-N-C結合を含むアミノシラン化合物が好ましく、Si-O-C結合を有する有機ケイ素化合物、Si-N-C結合を有するアミノシラン化合物類が特に好ましい。
【0163】
上記外部電子供与性化合物のうち、Si-O-C結合を有する有機ケイ素化合物としては、下記一般式(II)
R2Si(OR3)4-q (II)
(式中、R2は炭素数1~12のアルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基またはアラルキル基であり、同一または異なっていてもよい。R3は炭素数1~4のアルキル基、炭素数3~6のシクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基またはアラルキル基であり、同一または異なっていてもよい。qは0≦q≦3の整数である。)で表される有機ケイ素化合物が挙げられる。
【0164】
また、上記外部電子供与性化合物のうち、Si-N-C結合を有するアミノシラン化合物としては、前記一般式(III)
(R4R5N)sSiR6
4-s (III)
(式中、R4とR5は水素原子、炭素数1~20の直鎖または炭素数3~20の分岐状アルキル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、アリール基であり、同一でも異なってもよく、またR4とR5が互いに結合して環を形成してもよい。R6は炭素数1~20の直鎖状または炭素数3~20の分岐状アルキル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基、炭素数1~20の直鎖状または分岐状アルコキシ基、ビニルオキシ基、アリロキシ基、炭素数3~20のシクロアルキル基、アリール基またはアリールオキシ基であり、R6が複数ある場合、複数のR6は同一でも異なってもよい。sは1から3の整数である。)で表わされる有機ケイ素化合物が挙げられる。
【0165】
上記一般式(II)または一般式(III)で表わされる有機ケイ素化合物としては、フェニルアルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン、フェニルアルキルアルコキシシラン、シクロアルキルアルコキシシラン、アルキル(シクロアルキル)アルコキシシラン、(アルキルアミノ)アルコキシシラン、アルキル(アルキルアミノ)アルコキシシラン、シクロアルキル(アルキルアミノ)アルコキシシラン、テトラアルコキシシラン、テトラキス(アルキルアミノ)シラン、アルキルトリス(アルキルアミノ)シラン、ジアルキルビス(アルキルアミノ)シラン、トリアルキル(アルキルアミノ)シラン等を挙げることができる。具体的には、n-プロピルトリエトキシシラン、シクロペンチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、t-ブチルトリメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、イソプロピルイソブチルジメトキシシラン、ジイソペンチルジメトキシシラン、ビス(2-エチルヘキシル)ジメトキシシラン、t-ブチルメチルジメトキシシラン、t-ブチルエチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、ビス(エチルアミノ)メチルエチルシラン、ビス(エチルアミノ)t-ブチルメチルシラン、ビス(エチルアミノ)ジシクロヘキシルシラン、ジシクロペンチルビス(エチルアミノ)シラン、ビス(メチルアミノ)(メチルシクロペンチルアミノ)メチルシラン、ジエチルアミノトリエトキシシラン、ビス(シクロヘキシルアミノ)ジメトキシシラン、ビス(パーヒドロイソキノリノ)ジメトキシシラン、ビス(パーヒドロキノリノ)ジメトキシシラン、エチル(イソキノリノ)ジメトキシシラン等が挙げられ、中でも、n-プロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、t-ブチルメチルジメトキシシラン、t-ブチルエチルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、イソプロピルイソブチルジメトキシシラン、ジイソペンチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、t-ブチルメチルビス(エチルアミノ)シラン、ビス(エチルアミノ)ジシクロヘキシルシラン、ジシクロペンチルビス(エチルアミノ)シラン、ビス(パーヒドロイソキノリノ)ジメトキシシラン、ジエチルアミノトリエトキシシラン等から選ばれる一種以上が挙げられる。
【0166】
本発明のオレフィン類重合用触媒において、本発明の製造方法で得られるオレフィン類重合用固体触媒成分、有機アルミニウム化合物および外部電子供与性化合物の含有割合は、本発明の効果が得られる範囲において任意に選定することができ、特に限定されるものではないが、本発明の製造方法で得られるオレフィン類重合用固体触媒成分中のチタン原子1モルあたり、有機アルミニウム化合物が、1~2000モルであることが好ましく、50~1000モルであることがより好ましい。また、有機アルミニウム化合物1モルあたり、外部電子供与性化合物が、0.002~10モルであることが好ましく、0.01~2モルであることがより好ましく、0.01~0.5モルであることがさらに好ましい。
【0167】
本発明のオレフィン類重合用触媒は、(α)本発明の製造方法で得られたオレフィン類重合用固体触媒成分、(β)有機アルミニウム化合物および(γ)外部電子供与性化合物を、公知の方法で接触させることにより作製することができる。
上記各成分を接触させる順序は任意であるが、例えば、以下の接触順序を例示することができる。
(i)(α)本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法で得られたオレフィン類重合用固体触媒成分→(γ)外部電子供与性化合物→(β)有機アルミニウム化合物
(ii)(β)有機アルミニウム化合物→(γ)外部電子供与性化合物→(α)本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法で得られたオレフィン類重合用固体触媒成分
(iii)(γ)外部電子供与性化合物→(α)本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法で得られたオレフィン類重合用固体触媒成分→(β)有機アルミニウム化合物(iv)(γ)外部電子供与性化合物→(β)有機アルミニウム化合物→(α)本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法で得られたオレフィン類重合用固体触媒成分
上記接触例(i)~(iv)において、接触例(ii)が好適である。
なお、上記接触例(i)~(iv)において、「→」は接触順序を意味し、例えば、「(α)本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法で得られたオレフィン類重合用固体触媒成分→(β)有機アルミニウム化合物→(γ)外部電子供与性化合物」は、(α)本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法で得られたオレフィン類重合用固体触媒成分に(β)有機アルミニウム化合物を添加して接触させた後、(γ)外部電子供与性化合物を添加して接触させることを意味する。
【0168】
本発明のオレフィン類重合用触媒は、本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分、有機アルミニウム化合物および外部電子供与性化合物を、オレフィン類不存在下で接触させてなるものであってもよいし、オレフィン類の存在下で(重合系内で)接触させてなるものであってもよい。
【0169】
本発明のオレフィン類重合用固体触媒によれば、重合の際に異常反応を起こしにくいことから微粒子ポリマーの生成が少なく、また配管内の付着が起こりにくいので輸送時の流動性に優れるオレフィン類重合用触媒を提供することができる。
【0170】
次に、本発明のオレフィン類重合体の製造方法について説明する。
本発明のオレフィン類重合体の製造方法は、本発明のオレフィン類重合用触媒の存在下に、オレフィン類の重合を行うことを特徴とするものである。
【0171】
本発明のオレフィン類重合体の製造方法において、オレフィン類としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、ビニルシクロヘキサン等から選ばれる一種以上を挙げることができ、エチレン、プロピレンまたは1-ブテンが好適であり、プロピレンがより好適である。
【0172】
プロピレンを重合する場合、他のオレフィン類との共重合を行ってもよく、プロピレンと他のα―オレフィンとのブロック共重合であることが好ましい。ブロック共重合により得られるブロック共重合体とは、2種以上のモノマー組成が連続して変化するセグメントを含む重合体であり、モノマー種、コモノマー種、コモノマー組成、コモノマー含量、コモノマー配列、立体規則性などポリマーの一次構造の異なるポリマー鎖(セグメント)が1分子鎖中に2種類以上繋がっている形態のものをいう。
共重合されるオレフィン類としては、炭素数2~20のα-オレフィン(炭素数3のプロピレンを除く)であることが好ましく、具体的には、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、ビニルシクロヘキサン等を挙げることができ、これ等のオレフィン類は一種以上併用することができる。とりわけ、エチレンおよび1-ブテンが好適に用いられる。
【0173】
本発明のオレフィン類重合体の製造方法において、オレフィン類の重合は、有機溶媒の存在下でも不存在下でも行うことができる。
また、重合対象となるオレフィン類は、気体および液体のいずれの状態でも用いることができる。
【0174】
オレフィン類の重合は、例えば、オートクレーブ等の反応炉内において、本発明のオレフィン類重合用触媒の存在下、オレフィン類導入し、加熱、加圧状態下に行う。
【0175】
本発明のオレフィン類重合体の製造方法において、重合温度は、通常200℃以下であるが、100℃以下が好ましく、活性や立体規則性の向上の観点からは、60~100℃がより好ましく、70~90℃がさらに好ましい。本発明のオレフィン類重合体の製造方法において、重合圧力は、10MPa以下が好ましく、5MPa以下がより好ましい。
また、連続重合法、バッチ式重合法のいずれでも可能である。更に重合反応は一段で行ってもよいし、二段以上で行ってもよい。
【0176】
本発明のオレフィン類重合体の製造方法において、プロピレンと他のオレフィン類とのブロック共重合反応は、通常、本発明のオレフィン類重合用触媒の存在下、前段でプロピレン単独あるいは、プロピレンと少量のα-オレフィン(エチレン等)とを接触させ、次いで後段でプロピレンとα-オレフィン(エチレン等)とを接触させることにより実施することができる。なお、上記前段の重合反応を複数回繰り返し実施してもよいし、上記後段の重合反応を複数回繰り返し多段反応により実施してもよい。
【0177】
プロピレンと他のオレフィン類とのブロック共重合反応は、具体的には、前段で(最終的に得られる共重合体に占める)ポリプロピレン部の割合が20~90重量%になるように重合温度および時間を調整して重合を行ない、次いで後段において、プロピレンおよびエチレンあるいは他のα-オレフィンを導入し、(最終的に得られる共重合体に占める)エチレン-プロピレンゴム(EPR)などのゴム部割合が10~80重量%になるように重合する。
前段及び後段における重合温度は共に、200℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましく、重合圧力は10MPa以下が好ましく、5MPa以下がより好ましい。
上記共重合反応においても、連続重合法、バッチ式重合法のいずれの重合法も採用することができ、重合反応は1段で行なってもよいし、2段以上で行なってもよい。
また、重合時間(反応炉内の滞留時間)は、前段または後段の各重合段階のそれぞれの重合段階で、あるいは連続重合の際においても、1分~5時間であることが好ましい。
重合方法としては、シクロヘキサン、ヘプタン等の不活性炭化水素化合物の溶媒を使用するスラリー重合法、液化プロピレン等の溶媒を使用するバルク重合法、実質的に溶媒を使用しない気相重合法が挙げられ、バルク重合法または気相重合法が好適であり、後段の反応は一般的にはEPRのPP粒子からの溶出を抑える目的から気相重合反応であることが好ましい。
【0178】
本発明のオレフィン類重合体の製造方法において、オレフィン類を重合(以下、適宜、本重合と称する。)するにあたり、重合対象となるオレフィン類に対して本発明のオレフィン類重合用触媒の構成成分の一部または全部を接触させることにより、予備的な重合(以下、適宜、予備重合と称する。)を行ってもよい。
【0179】
予備重合を行うに際して、本発明のオレフィン類重合用触媒の構成成分およびオレフィン類の接触順序は任意であるが、不活性ガス雰囲気あるいはオレフィンガス雰囲気に設定した予備重合系内に先ず有機アルミニウム化合物を装入し、次いで本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分を接触させた後、プロピレン等のオレフィン類を一種以上接触させることが好ましい。または、不活性ガス雰囲気あるいはオレフィンガス雰囲気に設定した予備重合系内に先ず有機アルミニウム化合物を装入し、次いで外部電子供与性化合物を接触させ、更に本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分を接触させた後、プロピレン等のオレフィン類を一種以上接触させることが好ましい。
予備重合の際には、本重合と同様のオレフィン類、あるいはスチレン等のモノマーを用いることができ、予備重合条件も、上記重合条件と同様である。
【0180】
上記予備重合を行うことにより、触媒活性を向上させ、得られる重合体の立体規則性および粒子性状等を一層改善し易くなる。
【0181】
本発明のオレフィン類重合体の製造方法によれば、微粒子ポリマー含有量が少なく、さらには配管内の付着が起こりにくく、輸送時の流動性に優れるオレフィン類重合体を提供することができる。
【0182】
次に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これらは例示であって、本発明を制限するものではない。
なお、以下に示す実施例および比較例において、ジアルコキシマグネシウム粒子の円形度、固体触媒成分中のマグネシウム原子、チタン原子、ハロゲン原子および内部電子供与性化合物の含有量は、以下の方法により測定したものである。
【実施例】
【0183】
(ジアルコキシマグネシウム粒子の円形度)
ジアルコキシマグネシウム粒子の円形度は、ジアルコキシマグネシウム粒子を走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、JSM-7500F)により、500~1000個の粒子が一画面に表示される程度の倍率で撮影し、撮影した粒子の中から無作為に500個以上を抽出し、画像解析処理ソフト(株式会社MOUNTECH製、MacView バージョン4.0)により各粒子の面積Sと周囲長Lを測定した後、各ジアルコキシマグネシウム粒子の円形度を下記式により算出したときの算術平均値として求めた。
各ジアルコキシマグネシウム粒子の円形度=L2/(4π×S)
【0184】
(固体触媒成分中のマグネシウム原子の含有量)
固体触媒成分中のマグネシウム原子の含有量は、予め加熱減圧乾燥により溶媒成分を完全に除去した固体触媒成分を秤量後、塩酸溶液で溶解し、指示薬のメチルオレンジと飽和塩化アンモニウム溶液を加え、アンモニア水で中和後に加熱し、冷却後に一定容としたものをろ別して沈殿物(Tiの水酸化物)を除去し、得られたろ液を一定量分取し、加熱後に緩衝液とEBT混合指示薬を加え、EDTA溶液で滴定するEDTA滴定方法により測定した。
【0185】
(固体触媒成分中のチタン原子含有量)
固体触媒成分中のチタン原子含有量は、JIS 8311-1997「チタン鉱石中のチタン定量方法」に記載の方法(酸化還元滴定)に準じて測定した。
【0186】
(固体触媒成分中のハロゲン原子含有量)
固体触媒成分中のハロゲン原子含有量は、予め加熱減圧乾燥により溶媒成分を完全に除去した固体触媒成分を秤量し、硫酸と純水の混合溶液で処理して水溶液とした後に一定容としたものを所定量分取し、自動滴定装置(平沼産業株式会社製、COM-1500)を用い、硝酸銀標準溶液でハロゲン原子を滴定する硝酸銀滴定法により測定した。
【0187】
(固体触媒成分中の内部電子供与性化合物の含有量)
固体触媒成分中に含まれる第一の内部電子供与性化合物~第三の内部電子供与性化合物の含有量は、ガスクロマトグラフィー((株)島津製作所製、GC-14B)を用いて下記の条件にて測定することで求めた。また、各成分(各内部電子供与性化合物)のモル数については、ガスクロマトグラフィーの測定結果より、予め既知濃度において測定した検量線を用いて求めた。
<測定条件>
カラム:パックドカラム(φ2.6×2.1m, Silicone SE-30 10%,Chromosorb WAW DMCS 80/100、ジーエルサイエンス(株)社製)
検出器:FID(Flame Ionization Detector,水素炎イオン化型検出器)
キャリアガス:ヘリウム、流量40ml/分
測定温度:気化室280℃、カラム225℃、検出器280℃、または気化室265℃、カラム180℃、検出器265℃
【0188】
(実施例1)
(固体触媒成分(A1)の合成)
窒素ガスで十分に置換され、攪拌機を具備した容量500mlの丸底フラスコに四塩化チタン20mlおよびトルエン40mlを装入して、混合溶液を形成した。次いで、球状ジエトキシマグネシウム(球形度l/w:1.10)10gとトルエン47mlから形成された懸濁液を前記混合溶液中に添加後、4℃で1時間攪拌し、フタル酸ジ-n-ブチル2.7mlを加え、105℃に昇温し、2時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、得られた固体生成物をトルエン100mlで4回洗浄し、トルエンを含んだウエットな固体成分Xを得た(I工程)。次いで、固体成分Xに対し、新たに四塩化チタン20mlおよびトルエン80mlを加え、100℃に昇温し、2時間攪拌しながら反応させた(II工程)。反応終了後、トルエンの上澄みを除去し、トルエンを含んだウエットな固体生成物を、フタル酸ジ-n-ブチルを1質量ppm含有するn-ヘプタン100mlで7回洗浄して、固体触媒成分(A1)を得た。
なお、得られた固体触媒成分中のチタン含有量は2.92質量%、内部電子供与性化合物の合計含有量は12.7質量%であった。
【0189】
(実施例2)
前記II工程の反応終了後、フタル酸ジ-n-ブチルを1質量ppm含有するn-ヘプタン100mlで7回洗浄する代わりに、フタル酸ジ-n-ブチルを7質量ppm含有するn-ヘプタン100mlで7回洗浄する以外は、実施例1と同様にして固体触媒成分(A2)を得た。
なお、得られた固体触媒成分中のチタン含有量は2.81質量%、内部電子供与性化合物の合計含有量は13.1質量%であった。
【0190】
(実施例3)
前記II工程の反応終了後、フタル酸ジ-n-ブチルを1質量ppm含有するn-ヘプタン100mlで7回洗浄する代わりに、フタル酸ジ-n-ブチルを30質量ppm含有するn-ヘプタン100mlで5回洗浄する以外は、実施例1と同様にして固体触媒成分(A3)を得た。
なお、得られた固体触媒成分中のチタン含有量は2.73質量%、内部電子供与性化合物の合計含有量は14.3質量%であった。
【0191】
(実施例4)
前記II工程の反応終了後、フタル酸ジ-n-ブチルを1質量ppm含有するn-ヘプタン100mlで7回洗浄する代わりに、フタル酸ジ-n-ブチルを1質量ppm含有するn-ヘキサン100mlで7回洗浄する以外は、実施例1と同様にして固体触媒成分(A4)を得た。
なお、得られた固体触媒成分中のチタン含有量は2.81質量%、内部電子供与性化合物の合計含有量は13.0質量%であった。
【0192】
(実施例5)
前記II工程の反応終了後、フタル酸ジ-n-ブチルを1質量ppm含有するn-ヘプタン100mlで7回洗浄する代わりに、フタル酸ジ-n-ブチルを1質量ppm含有するn-オクタン100mlで7回洗浄する以外は、実施例1と同様にして固体触媒成分(A5)を得た。
なお、得られた固体触媒成分中のチタン含有量は2.84質量%、内部電子供与性化合物の合計含有量は13.1質量%であった。
【0193】
(実施例6)
前記(固体触媒成分(A1)の合成)のI工程においてフタル酸ジ-n-ブチルの代わりに、同モルのジイソブチルマロン酸ジメチルを用い、さらに前記II工程の反応終了後、トルエンを含んだウエットな固体生成物を、フタル酸ジ-n-ブチルを1質量ppm含有するn-ヘプタン100mlで7回洗浄する代わりに、ジイソブチルマロン酸ジメチルを1質量ppm含有するn-ヘプタン100mlで7回洗浄する以外は、実施例1と同様にして固体触媒成分(A6)を得た。
なお、得られた固体触媒成分中のチタン含有量は2.83質量%、内部電子供与性化合物の合計含有量は12.9質量%であった。
【0194】
(実施例7)
前記(固体触媒成分(A1)の合成)のI工程においてフタル酸ジ-n-ブチルの代わりに、同モルの2,2-ジイソブチル-1,3-ジメトキシプロパンを用い、さらに前記II工程の反応終了後、トルエンを含んだウエットな固体生成物を、フタル酸ジ-n-ブチルを1質量ppm含有するn-ヘプタン100mlで7回洗浄する代わりに、2,2-ジイソブチル-1,3-ジメトキシプロパンを1質量ppm含有するn-ヘプタン100mlで7回洗浄する以外は、実施例1と同様にして固体触媒成分(A7)を得た。
なお、得られた固体触媒成分中のチタン含有量は2.80質量%、内部電子供与性化合物の合計含有量は13.0質量%であった。
【0195】
(比較例1)
前記II工程の反応終了後、トルエンを含んだウエットな固体生成物を、フタル酸ジ-n-ブチルを1質量ppm含有するn-ヘプタン100mlで7回洗浄する代わりに、フタル酸ジ-n-ブチルを含有しないn-ヘプタン100mlで7回洗浄する以外は、実施例1と同様にして固体触媒成分(a1)を得た。
なお、得られた固体触媒成分中のチタン含有量は3.01質量%、内部電子供与性化合物の合計含有量は12.6質量%であった。
【0196】
(比較例2)
前記II工程の反応終了後、トルエンを含んだウエットな固体生成物を、フタル酸ジ-n-ブチルを1質量ppm含有するn-ヘプタン100mlで7回洗浄する代わりに、フタル酸ジ-n-ブチルを含有しないn-ヘキサン100mlで7回洗浄する以外は、実施例1と同様にして固体触媒成分(a2)を得た。
なお、得られた固体触媒成分中のチタン含有量は2.98質量%、内部電子供与性化合物の合計含有量は12.5質量%であった。
【0197】
(比較例3)
前記II工程の反応終了後、トルエンを含んだウエットな固体生成物を、フタル酸ジ-n-ブチルを1質量ppm含有するn-ヘプタン100mlで7回洗浄する代わりに、フタル酸ジ-n-ブチルを含有しないn-オクタン100mlで7回洗浄する以外は、実施例1と同様にして固体触媒成分(a3)を得た。
なお、得られた固体触媒成分中のチタン含有量は3.04質量%、内部電子供与性化合物の合計含有量は12.8質量%であった。
【0198】
(実施例8)
窒素ガスで十分に置換され、攪拌機を具備した容量500mlの丸底フラスコに四塩化チタン20mlおよびトルエン40mlを装入して、混合溶液を形成した。次いで、球状ジエトキシマグネシウム(球形度l/w:1.10)10gとトルエン47mlから形成された懸濁液を前記混合溶液中に添加後、4℃で1時間攪拌し、フタル酸ジ-n-ブチル2.7mlを加え、105℃に昇温し、2時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、得られた固体生成物を、フタル酸ジ-n-ブチルを300質量ppm含有するトルエン100mlで4回洗浄し、トルエンを含んだウエットな固体成分Xを得た(I工程)。次いで、固体成分Xに対し、新たに四塩化チタン20mlおよびトルエン80mlを加え、100℃に昇温し、2時間攪拌しながら反応させた(II工程)。反応終了後、トルエンの上澄みを除去し、トルエンを含んだウエットな固体生成物をn-ヘプタン100mlで7回洗浄して、固体触媒成分(A8)を得た。
なお、得られた固体触媒成分中のチタン含有量は2.93質量%、内部電子供与性化合物の合計含有量は18.6質量%であった。
【0199】
(実施例9)
前記(固体触媒成分(A1)の合成)のI工程において反応終了後、得られた固体生成物を、フタル酸ジ-n-ブチルを300質量ppm含有するトルエン100mlで4回洗浄する代わりに、フタル酸ジ-n-ブチルを600質量ppm含有するトルエン100mlで4回洗浄する以外は、実施例8と同様にして固体触媒成分(A9)を得た。
なお、得られた固体触媒成分中のチタン含有量は2.89質量%、内部電子供与性化合物の合計含有量は21.7質量%であった。
【0200】
(実施例10)
前記(固体触媒成分(A1)の合成)のI工程において反応終了後、得られた固体生成物を、フタル酸ジ-n-ブチルを300質量ppm含有するトルエン100mlで4回洗浄する代わりに、ジイソブチルマロン酸ジエチルを300質量ppm含有するトルエン100mlで4回洗浄する以外は、実施例8と同様にして固体触媒成分(A10)を得た。
なお、得られた固体触媒成分中のチタン含有量は2.99質量%、内部電子供与性化合物の合計含有量は18.4質量%であった。
【0201】
(実施例11)
前記(固体触媒成分(A1)の合成)のI工程において反応終了後、得られた固体生成物を、フタル酸ジ-n-ブチルを300質量ppm含有するトルエン100mlで4回洗浄する代わりに、ジイソブチルマロン酸ジエチルを600質量ppm含有するトルエン100mlで4回洗浄する以外は、実施例8と同様にして固体触媒成分(A11)を得た。
なお、得られた固体触媒成分中のチタン含有量は3.17質量%、内部電子供与性化合物の合計含有量は21.5質量%であった。
【0202】
(実施例12)
前記(固体触媒成分(A1)の合成)のI工程において反応終了後、得られた固体生成物を、フタル酸ジ-n-ブチルを300質量ppm含有するトルエン100mlで4回洗浄する代わりに、フタル酸ジ-n-ブチルを100質量ppm含有するトルエン100mlで4回洗浄する以外は、実施例8と同様にして固体触媒成分(A12)を得た。
なお、得られた固体触媒成分中のチタン含有量は2.98質量%、内部電子供与性化合物の合計含有量は14.6質量%であった。
【0203】
(実施例13)
前記(固体触媒成分(A1)の合成)のI工程において反応終了後、得られた固体生成物を、フタル酸ジ-n-ブチルを300質量ppm含有するトルエン100mlで4回洗浄する代わりに、フタル酸ジ-n-ブチルを100質量ppm及びジイソブチルマロン酸ジエチルを30質量ppm含有するトルエン100mlで4回洗浄する以外は、実施例8と同様にして固体触媒成分(A13)を得た。
なお、得られた固体触媒成分中のチタン含有量は2.81質量%、内部電子供与性化合物の合計含有量は15.1質量%であった。
【0204】
(実施例14)
前記(固体触媒成分(A1)の合成)のI工程において反応終了後、得られた固体生成物を、フタル酸ジ-n-ブチルを300質量ppm含有するトルエン100mlで4回洗浄する代わりに、フタル酸ジ-n-ブチルを150質量ppm及びジイソブチルマロン酸ジエチルを7質量ppm含有するトルエン100mlで4回洗浄する以外は、実施例8と同様にして固体触媒成分(A14)を得た。
なお、得られた固体触媒成分中のチタン含有量は2.80質量%、内部電子供与性化合物の合計含有量は16.2質量%であった。
【0205】