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特許7337854グラインダ、コーヒーマシン、およびコーヒー豆を挽くための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-25
(45)【発行日】2023-09-04
(54)【発明の名称】グラインダ、コーヒーマシン、およびコーヒー豆を挽くための方法
(51)【国際特許分類】
   A47J 42/18 20060101AFI20230828BHJP
   B26D 3/26 20060101ALI20230828BHJP
   A47J 42/16 20060101ALI20230828BHJP
   A47J 31/42 20060101ALI20230828BHJP
【FI】
A47J42/18
B26D3/26 602A
B26D3/26 602J
B26D3/26 602F
A47J42/16
A47J31/42
【請求項の数】 31
(21)【出願番号】P 2020570108
(86)(22)【出願日】2019-06-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-21
(86)【国際出願番号】 EP2019067132
(87)【国際公開番号】W WO2020002493
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2022-04-06
(31)【優先権主張番号】102018115735.5
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510098962
【氏名又は名称】メリッタ プロフェッショナル コーヒー ソリューションズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Melitta Professional Coffee Solutions GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Zechenstrasse 60, D-32429 Minden, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アルミン ヘンゼル
(72)【発明者】
【氏名】ベルント ブーフホルツ
(72)【発明者】
【氏名】ディルク マイアー
【審査官】河内 誠
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/143677(WO,A1)
【文献】中国実用新案第201676715(CN,U)
【文献】特開2018-94188(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 31/42、42/00~42/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーヒー豆(5)を挽くためのグラインダ(1)であって、前記グラインダ(1)は、第1の挽砕工具(2)および第2の挽砕工具(8)を有していて、両挽砕工具(2,8)は挽砕間隙(14)を形成しており、前記第2の挽砕工具(8)は、前記グラインダ(1)の作動中に前記第1の挽砕工具(2)に対して相対的に回転可能であり、もしくは前記第1の挽砕工具(2)に対して相対的に回転する、グラインダ(1)において、
前記グラインダ(1)は、前記グラインダの作動中にも調節可能で前記コーヒー豆に伝達される力Fを前記第1の挽砕工具(2)または前記第2の挽砕工具(8)に加えるために、少なくとも1つの力発生装置(15)を有しており、前記力Fは、前記力Fが、前記力Fが加えられるそれぞれの前記挽砕工具をそれぞれ他方の前記挽砕工具の方向に押圧するように方向付けられていることを特徴とする、グラインダ(1)。
【請求項2】
前記グラインダ(1)の作動中に、前記両挽砕工具のうちの一方の挽砕工具(2または8)が、停止しており、前記両挽砕工具のうちの第2の挽砕工具(2または8)が、駆動ユニットによって回転可能に作動させられている、請求項1記載のグラインダ(1)。
【請求項3】
前記駆動ユニットは、モータ(10)である、請求項2記載のグラインダ(1)。
【請求項4】
前記力発生装置(15)は、前記第1の挽砕工具および/または前記第2の挽砕工具(2)に作用する、請求項1から3までのいずれか1項記載のグラインダ(1)。
【請求項5】
それぞれ1つの力発生装置(15)が、前記第1の挽砕工具(2)と前記第2の挽砕工具(8)とに作用する、請求項1からまでのいずれか1項記載のグラインダ(1)。
【請求項6】
前記グラインダ(1)は、ディスクグラインダ、またはローラグラインダ、または円錐グラインダとして形成されている、請求項1からまでのいずれか1項記載のグラインダ(1)。
【請求項7】
前記力発生装置(15)は、ばねを有しており、前記挽砕間隙(14)は、一平面Eにわたって延在していて、前記ばねは、軸方向力を、前記平面Eに対して垂直に前記第1の挽砕工具(2)および/または前記第2の挽砕工具(8)に加える請求項1からまでのいずれか1項記載のグラインダ(1)。
【請求項8】
前記ばねは、圧縮ばね(16)である、請求項7記載のグラインダ(1)。
【請求項9】
前記力発生装置(15)は、少なくとも1つのばねと、前記ばねの予荷重を調節するための装置(17)とを有している、請求項1からまでのいずれか1項記載のグラインダ(1)。
【請求項10】
前記ばねの予荷重を調節するための前記装置(17)は、サーボモータの形態である、請求項9記載のグラインダ(1)。
【請求項11】
前記力発生装置(15)は、空気力式の作用原理に基づいている、請求項1から10までのいずれか1項記載のグラインダ(1)。
【請求項12】
前記力発生装置(15)は、流体式の作用原理に基づいている、請求項1から10までのいずれか1項記載のグラインダ(1)。
【請求項13】
前記力発生装置(15)は、電磁式の作用原理に基づいている、請求項1から10までのいずれか1項記載のグラインダ(1)。
【請求項14】
前記グラインダ(1)は、前記ばねの予荷重を調節するために制御および/または評価ユニット(18)によって、
a)コーヒー豆、
b)前記グラインダ(1)の温度、および/または
c)前記グラインダ(1)の摩耗程度
に関連して、作動させられる、請求項から10までのいずれか1項記載のグラインダ(1)。
【請求項15】
前記グラインダ(1)は、前記ばねの予荷重を調節するために制御および/または評価ユニット(18)によって、豆種および/または豆種の焙煎程度に関連して、作動させられる、請求項7から10までのいずれか1項記載のグラインダ(1)。
【請求項16】
前記グラインダ(1)は、前記グラインダ(1)の熱膨張を求めるため、および前記力発生装置(15)の制御および/または調整を行うために、温度センサを有している、請求項1から15までのいずれか1項記載のグラインダ(1)。
【請求項17】
前記グラインダ(1)は、最小の挽砕度を調節するために、ストッパを有している、請求項1から16までのいずれか1項記載のグラインダ(1)。
【請求項18】
前記ストッパは調節可能である、請求項17記載のグラインダ(1)。
【請求項19】
請求項1から18までのいずれか1項記載の少なくとも1つのグラインダ(1)を備えたコーヒーマシン。
【請求項20】
前記コーヒーマシンは、全自動コーヒーマシンである、請求項19記載のコーヒーマシン。
【請求項21】
求項1から18までのいずれか1項記載のグラインダを用いて、カフェイン含有の高温飲料を淹れる目的でコーヒー豆を挽くための方法であって、
下記のステップ、すなわち、
I. 2つの挽砕工具(2,8)の間の挽砕間隙(14)内にコーヒー豆を収容するステップ、
II. 前記両挽砕工具のうちの少なくとも一方の挽砕工具(2または8)に、調節可能なプロセス力を、それぞれ他方の挽砕工具の方向に力発生装置(15)によって加えるステップ、および
III. 確定された挽砕度を有するコーヒー粉を排出するステップ
を特徴とする方法。
【請求項22】
前記プロセス力は作動中にも調整可能である、請求項21記載の方法。
【請求項23】
請求項2記載のグラインダを用いて、カフェイン含有の高温飲料を淹れる目的でコーヒー豆を挽くための方法であって、
下記のステップ、すなわち、
I. 2つの挽砕工具(2,8)の間の挽砕間隙(14)内にコーヒー豆を収容するステップ、
II. 前記両挽砕工具のうちの少なくとも一方の挽砕工具(2または8)に、調節可能なプロセス力を、それぞれ他方の挽砕工具の方向に力発生装置(15)によって加えるステップ、および
III. 確定された挽砕度を有するコーヒー粉を排出するステップ
を有し、
プロセス力の値の調節を、コーヒー豆の種類、前記グラインダ(1)の前記駆動ユニットの出力、前記グラインダ(1)の温度、および/または前記グラインダ(1)の摩耗程度に関連して行う、
法。
【請求項24】
前記プロセス力の値の調節時に、補足的に被挽砕物の所望の挽砕度を考慮する、請求項21から23までのいずれか1項記載の方法。
【請求項25】
前記挽砕工具(2)の、豆内における夾雑物(木材、石)によって生ぜしめされたブロックを、力を加えることを中止することによって解決する、請求項21から24までのいずれか1項記載の方法。
【請求項26】
前記調節可能なプロセス力を加えることによって、全自動コーヒーマシンにおいて、製品固有の挽砕度を調節する、請求項21から25までのいずれか1項記載の方法。
【請求項27】
コーヒーマシンと、請求項1から18までのいずれか1項記載のグラインダ(1)とを用いて、コーヒーを淹れるための方法であって、前記グラインダを用いてコーヒー豆を挽き、湯通しユニットにおいて挽かれたコーヒー豆もしくはこのとき得られたコーヒー粉と水とから、確定された種類のコーヒーを淹れるための方法において、
コーヒーの種類に応じて、挽砕の前に、コーヒーの種類の交換時に、例えばエスプレッソからカフェオレへの交換時に、自動的に挽砕度調節もしくは挽砕度変更を行うことを特徴とする方法。
【請求項28】
前記コーヒーマシンは、全自動コーヒーマシンである、請求項27記載の方法。
【請求項29】
請求項14記載のグラインダを用いて、カフェイン含有の高温飲料を淹れる目的でコーヒー豆を挽くための方法であって、
下記のステップ、すなわち、
I. 2つの挽砕工具(2,8)の間の挽砕間隙(14)内にコーヒー豆を収容するステップ、
II. 前記両挽砕工具のうちの少なくとも一方の挽砕工具(2または8)に、調節可能なプロセス力を、それぞれ他方の挽砕工具の方向に力発生装置(15)によって加えるステップ、および
III. 確定された挽砕度を有するコーヒー粉を排出するステップ
を有し、
前記プロセス力の値の調節を、制御回路によって調整し、前記制御回路は、前記制御および/または評価ユニット(18)と、少なくとも1つの力センサ(21,22)を備えた少なくとも1つの力測定装置(20)とを有している、
法。
【請求項30】
前記グラインダ(1)は、少なくとも1つの力センサ(21,22)を備えた少なくとも1つの力測定装置(20)を有しており、前記少なくとも1つの力センサ(21,22)は、前記挽砕工具(2,8)に直接または間接的に接続されている、請求項1から18までのいずれか1項記載のグラインダ(1)。
【請求項31】
前記少なくとも1つの力センサ(21,22)は、前記制御および/または評価ユニット(18)に接続されていて、前記制御および/または評価ユニット(18)を有している制御回路の測定装置を形成している、請求項14を引用する請求項30記載のグラインダ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念部に記載された、コーヒー豆を挽くためのグラインダ、およびコーヒー豆を挽くための方法、ならびにコーヒーマシン、特に全自動コーヒーマシンに関する。
【0002】
コーヒー粉末の適切な粒度(Feinheit)は、コーヒーを効果的に淹れるための前提条件である。コーヒー粉末の適切な粒度は、どのような速度で水がコーヒー粉末を貫流することができ、かつどのような時間で芳香および嗜好剤をコーヒー粉末から溶かし出すことができるかを決定する。この時間は、抽出時間と呼ばれ、それぞれのコーヒー飲料の嗜好剤および芳香剤の適切な抽出のための品質臨界である。
【0003】
コーヒー飲料の抽出強度は、圧着圧、水温、水質、および豆特性と並んで、コーヒー粉の挽砕度によって大きな影響を受ける。挽砕度は、どのような粒度で豆が挽かれるかを表す。コーヒー豆の挽砕過程時に、粒度の分布が発生し、つまりすべてのコーヒー粒子は、同一のサイズではなく、コーヒーにとって典型的な粒サイズ分布の影響を受ける。粒度分布の中央値X50[μm]は、コーヒー粉の粒度を判断するために定評のある測定値である。中央値X50[μm]は、量分布の中央に位置している粒子サイズの値(レーザ回折原理を用いた測定器では例えば理想化された玉直径)を表す。すなわちすべての粒子の一方の半分は、中央値よりも小さく、他方の半分は、中央値よりも大きい。
【0004】
挽砕が細かければ細かいほど、粒子全表面はますます大きくなり、したがって水とコーヒー粉末との接触時間も長くなる。芳香剤の約18~22%がコーヒーから溶け出すと、芳香と強さとの間のバランスの取れた比が発生する。エスプレッソを淹れる時における最適な接触時間は、25~30秒の範囲にあり、フィルタコーヒーでは数分である。低抽出によって、酸味が強いコーヒー風味が生ぜしめられ、高抽出によって苦みが強いコーヒー風味が生ぜしめられる。エスプレッソ粉末の適切な挽砕度は、最大350μmの中央値であり、カフェオレの適切な挽砕度は、550μmほどであり、フィルタ挽砕では700μmほどである。
【0005】
コーヒー粉末の挽砕度は、グラインダを備えたコーヒーマシンにおいて、通常調節することができる。高価なマシンは、それどころかグラインダの無段階式の調節を行うことができ、グラインダコンポーネントの後調整によって不所望の限界条件(例えば熱膨張、挽砕ディスク摩耗等)を補償する。幾つかのシステムは、適切な挽砕度調節を検査するために、コーヒー飲料の抽出時間を間接的な特徴として使用する。
【0006】
品質的に高価なコーヒー飲料を淹れるためには、製品に関連した適切な挽砕度調節が最優先の役割を果たす。
【0007】
従来技術に基づいて、主として、コーヒーマシンにおいて使用されるコーヒーグラインダの2つの定評のある構造形式が公知である。一方はディスクグラインダで、他方は円錐グラインダである。両グラインダ形式は、両グラインダが2つの挽砕工具から成っており、両挽砕工具の一方の挽砕工具が固定されていて、他方の挽砕工具は駆動されるという共通点を有している。一方の挽砕工具の回転運動によって、豆は挽砕間隙内に引き込まれ、先細りになる挽砕間隙幅を介してどんどん細かく挽かれる。両挽砕工具の最小間隔が、コーヒー粉末の、生ぜしめられた挽砕度のための基準である。挽砕度を変えるために、固定された工具を回転する工具に対して相対的に移動させることができ、これによって間隔が変化する。これらのシステムは、挽砕度を変化させるためのジオメトリに基づく方法である。
【0008】
例えば欧州特許第2286699号明細書の技術的な教示によれば、コーヒーマシン用のグラインダが、駆動手段を介して回転軸線を中心にして駆動可能な第1の挽砕ディスクと、第2の挽砕ディスクとを有していることが提案されている。第2の挽砕ディスクは、ねじ込み部分において固定されており、このねじ込み部分は、ハウジング内にねじ込み可能であり、かつ調節手段によってハウジングに対して回転可能である。これによって両挽砕ディスクの間の挽砕間隙が調節可能である。調節手段は、ねじ込み部分に対して同軸に配置された駆動ホイールとして形成されており、この駆動ホイールは、調節手段を介して回転可能な調節ホイールと協働する。さらにグラインダは、挽くべきコーヒー豆を供給するための供給開口と、両挽砕ディスクの間で挽かれたコーヒーを排出するための排出開口とを有している。グラインダは、挽砕間隙を調節するための、無段階式に作動する中央の調節可能性を有している。
【0009】
これらのグラインダシステムにおいて存在する問題は、最小の粒度程度を確定することができる0ポイントの確定である。このことが成功した場合にしか、直接かつ正確に、この0ポイントに関連して、製品のために適切な挽砕度を調節することができない。そのための前提条件は、グラインダの全構造における特に高い製造精度(例えばディスクグラインダにおける高い心振れ精度(Planlaufgenauigkeit))である。
【0010】
さらに、汎用のコーヒーグラインダにおいては、グラインダコンポーネントの熱膨張、挽砕ディスク摩耗、豆交換等のような妨害影響は、(例えば抽出時間の評価を介して)間接的にしか補償することができない。特に熱影響は、挽砕度を変化させ、湯通しユニットにおけるコーヒー粉末の種々様々な膨潤特性を生ぜしめ、ひいては変動する作業時間の主要な原因となる。
【0011】
このような事実によって、コーヒーマシンのグラインダを所望の製品および嗜好状態に理想的に合わせるために、しばしば長い調節サイクルが必要になる。さらに挽砕度は、通常、確定された製品のためにしか調節することができず、かつ確定された製品に対してしか調整することができない。
【0012】
ゆえに本発明の課題は、冒頭に述べた形式のグラインダを、機能的に好適に改良することである。
【0013】
本発明はこの課題を、請求項1の特徴を備えたグラインダ、請求項14のコーヒーマシン、ならびに請求項15および請求項20の特徴を備えた方法によって解決する。
【0014】
請求項1によれば、コーヒー豆を挽くためのグラインダであって、グラインダは、第1の挽砕工具および第2の挽砕工具を有していて、両挽砕工具は挽砕間隙を形成しており、第2の挽砕工具は、グラインダの作動中(つまりコーヒー豆の挽砕中)に第1の挽砕工具に対して相対的に回転可能であり、もしくは第1の挽砕工具に対して相対的に回転させられ、グラインダは、好ましくは作動中にも調節可能でコーヒー豆に伝達される力Fを第1の挽砕工具または第2の挽砕工具に加えるために、少なくとも1つの力発生装置を有しており、力Fは、力Fが、力Fが加えられるそれぞれの挽砕工具をそれぞれ他方の挽砕工具の方向に押圧するように方向付けられている、グラインダが提供される。しかしながらまた力は、作動時において挽砕工具の停止時に、もしくは作動中でない場合に加えることができる。
【0015】
本発明に係るグラインダは、コーヒー豆を挽くために働く、もしくはコーヒー豆を挽くために設計されている。本発明に係るグラインダは、独立した機器として使用されても、しかしながらまたコーヒーマシン、例えば全自動コーヒーマシンに組み込まれて使用されてもよい。
【0016】
グラインダは、第1の挽砕工具および第2の挽砕工具を含んでいる。両挽砕工具は、挽砕間隙を形成している、もしくは互いに向かい合っている側によってこのような挽砕間隙を画定している。この挽砕間隙は、平らに形成されていても、または中心に向かって増大するように形成されていてもよい。挽砕間隙は、好ましくは一平面を、好ましくは対称平面を定義している。
【0017】
第2の挽砕工具は、第1の挽砕工具に対して相対的に回転可能に、特に例えばモータのような駆動ユニットによって回転可能に駆動される。
【0018】
グラインダはさらに、挽くべきコーヒー豆に伝達される力Fを第1の挽砕工具または第2の挽砕工具に加えるために、少なくとも1つの力発生装置を有している。これによって挽砕工具の自重に、グラインダの作動中に、力発生装置によって加えられる調節可能な別の力がさらに追加される。力Fは、力Fが加えられるそれぞれの挽砕工具を、特に軸方向においてそれぞれ他方の挽砕工具の方向に押圧するように方向付けられている。つまり力発生装置は、両挽砕工具を互いに押し合わせ、従来技術に基づいて公知のように、互いに離反方向に押圧するのではない。
【0019】
力を加えることは、いわば対応受けにおいて挽砕工具を支持することの代わりであり、調節可能な力によって、製品固有に最適で、かつプロセス条件の変化時にも十分に等しいままの挽砕度を得ることができる。
【0020】
好ましくは、調節可能なプロセス力を加えることによって、製品固有の挽砕度が調節されるということが提案されていてよい。したがって、コーヒーの種類もしくは製品種類(例えばエスプレッソからカフェオレへの)の交換時に、ミルが組み込まれている全自動コーヒーマシンにおいて製品が提供される場合に、自動的に製品固有の挽砕度調節もしくは挽砕度変更が行われることも提案されていてよい。この挽砕度調節は、例えばエスプレッソ用の挽砕度調節からカフェオレ用の挽砕度調節への交換のために、本発明によって極めて迅速に実施可能である。調節もしくは変更は、極めて迅速に行われるので、場合によっては全自動コーヒーマシンにおいても、第2のミルさえ省くことができる。
【0021】
相応に、請求項20記載の本発明は、コーヒーマシン、特に全自動コーヒーマシンと、上に記載された関連する請求項のいずれか1項記載のグラインダとを用いて、コーヒーを淹れるための好適な方法であって、グラインダを用いてコーヒー豆を挽き、湯通しユニットにおいてコーヒー豆と水とから、確定された種類のコーヒーを淹れる方法において、コーヒーの種類に応じて、挽砕の前に、コーヒーの種類の交換時に(水および挽かれたコーヒーの量に応じて、かつ場合によってはミルクのような添加物に関連して)、例えばエスプレッソからカフェオレへの交換時に、自動的に挽砕度調節もしくは挽砕度変更を行うことを特徴とする方法を提供する。
【0022】
グラインダの作動中に、両挽砕工具のうちの一方の挽砕工具が、停止しており、両挽砕工具のうちの第2の挽砕工具が、駆動ユニット、例えばモータによって回転可能に作動させられてよい。しかしながらまた両挽砕工具が、特に互いに逆方向に回転することも可能である。
【0023】
力発生装置は、第1の挽砕工具と第2の挽砕工具とに作用することができ、これによって比較的均一に力が分配される。しかしながら力発生装置が、単に一方の挽砕工具に、特に両挽砕工具のうちの停止している挽砕工具にだけ作用すると、構造がより単純になる。
【0024】
さらにそれぞれ1つの力発生装置が、第1の挽砕工具と第2の挽砕工具とに作用することも可能である。
【0025】
この構成において変化形態によれば、力発生装置が、少なくとも1つのばねと、特にサーボモータの形態の、ばねの予荷重を調節するための装置とを有していることが提案されていてよい。この変化形態は、構造的に特に容易に交換可能であり、かつ良好に制御可能および/または調整可能である。
【0026】
付言しておくと基本的には、挽砕工具(以下においては同義的に「切断工具」とも呼ぶ)のいずれの挽砕工具、駆動される挽砕工具または位置固定の挽砕工具が、プロセス力方向における自由度を有していて、この方向においていずれの挽砕工具に、アクティブに力が加えられるかは、さほど重要ではない。
【0027】
力調整は、自動的に(例えばモータによって)、または手動で(例えば調節ホイールによって)行うことができる。モータ式の調節時には、閉ループ制御(Regelschleife)が考えられ、挽砕度は、最後の抽出時間が目標終了時間(Sollauslaufzeit)から離れている場合に変えられる。
【0028】
力制御の構造上の変更は、種々様々な方法で実現することができる。1つの可能性は、機械式のばねを、公知の力・距離特性線を用いて確定された距離xだけ圧縮することである。
【0029】
しかしながら、切断工具のうちの一方の切断工具に確定された力を加えるための別の解決策も存在する。まずここでは空気力式のアプローチが考えられ、一方の挽砕ディスク保持体を、可変の空気圧で他方の挽砕ディスク保持体にアクティブに押圧することができる。パッシブな変化形態は、固定の力・距離特性線を備えたガス圧ばねであり、このときグラインダにおいては単に確定された挽砕度しか調節することができない。しかしながらまたばねは、可変のガス圧によっても得られる。
【0030】
しかしながらまた択一的に、力発生装置が流体の作用原理(Wirkprinzip)に基づくことも提案されていてよい。ディスクグラインダにおける挽砕工具もしくは切断工具の間隔は、挽砕時におけるプロセス力に関連して単に僅かに0.2mmまでしか変化させる必要がないので、力の制御のためには、比較的高い圧縮モジュールの液体を用いた液圧式の解決策も可能である。このような場合であっても、システム内には挽砕時における緩衝作用が存在している。例えばゴムダイヤフラムが、力を加えるために働くことができ、このゴムダイヤフラムには、調整可能な減圧器を介して水が充填される。いずれにせよ液圧式のウォータシステムが、コーヒーマシンに存在しており、挽砕度調整のために使用することができる。
【0031】
さらに力発生装置は、好ましくはまた、電磁式の作用原理に基づいていてよい。この解決策では可動の切断工具保持体は、可変の磁力に基づいて、位置固定の切断工具保持体に押圧される。磁力は、アンカとヨークとの間の間隔の増大と共に変化するので、電磁式のシステムにおいても、切断工具の間の挽砕プロセス時における力バランスを調節することができる。
【0032】
グラインダは、同様に種々様々な形式で、例えば好ましくはディスクグラインダまたは円錐グラインダとして形成されていてよい。
【0033】
力発生装置は、上に記載された構成に相応して、少なくとも1つの圧縮ばねを有していてよく、挽砕間隙は、一平面Eにわたって延在していて、圧縮ばねは、軸方向力を、平面Eに対して垂直に第1の挽砕工具および/または第2の挽砕工具に加える。
【0034】
また複数のばね、特に圧縮ばねが設けられていてもよい。これらのばねは、回転する挽砕工具によって形成される回転軸線を中心にして対称的に配置されていてよく、これによって力を最適に分配して加えることができる。
【0035】
このような構成のための圧縮ばねとしては、コイルばねが好適である。しかしながらまた他の形式のばねまたはばねアセンブリも使用可能である。
【0036】
力発生装置は、ばね、特に圧縮ばねの予荷重を調節するための装置、特にサーボモータの形態の装置を有していてよい。このサーボモータは、好ましくは、制御および/または評価ユニットによって制御されかつ/または調整されるアクチュエータである。
【0037】
サーボモータの調節は、
a)コーヒー豆、特に豆種および豆種の焙煎程度、
b)グラインダの温度、および/または
c)グラインダの摩耗程度
に関連して行うことができる。
【0038】
例えばコーヒー豆の種類は、手動調節によって設定することも、または一方のまたは両挽砕工具を駆動するためのモータの出力によって確定することもできる。求められる出力は、制御および/または評価ユニットに格納されたデータセットとの実際値/目標値比較の枠内において、確定された挽砕度を得るための加えるべき力に関連した出力に、または確定された挽砕度を得るための加えるべき力に関連した豆タイプに関連して調節される。
【0039】
別の変化形態によれば、ばねの使用時に相応の力・距離特性線がデータセットとして設定されていてもよく、このようになっていると、ばね力の所望の適合を、アクチュエータによって、求められた加えるべき力に関連して行うことができる。
【0040】
同様にグラインダの温度または摩耗程度(挽砕過程の回数)を確定し、目標値/実際値比較によって、加えるべき力を相応に適合させることも可能である。
【0041】
また重み付けの枠内における種々様々な値、例えば挽砕過程の回数と、豆種による重み付けとを互いに組み合わせることもでき、これによってより精確な摩耗特性をマッピングすることができる。
【0042】
グラインダは、グラインダの熱膨張を求めるため、および力発生装置を制御するために、追加的に温度センサを有していてよく、これによって挽砕度の適合を達成することができる。
【0043】
特に本発明に係るグラインダを用いて、カフェイン含有の高温飲料を淹れる目的でコーヒー豆を挽くための本発明に係る方法は、
少なくとも下記のステップ、すなわち、
I. 2つの挽砕工具の間の挽砕間隙内にコーヒー豆を収容するステップ、
II. 両挽砕工具のうちの少なくとも一方の挽砕工具に、調節可能なプロセス力を、それぞれ他方の挽砕工具の方向に力発生装置によって加えるステップ、および
III. 確定された挽砕度を有するコーヒー粉もしくは被挽砕物を排出するステップ
を含んでいる。
【0044】
好ましくは、プロセス力の値は、コーヒー豆の種類、グラインダのモータの出力、グラインダの温度、および/または先行する挽砕段階(Mahldurchgang)に関連して調節することができる。
【0045】
プロセス力の値の調節時に、追加的に被挽砕物の所望の粒度程度を考慮することができる。粒度程度もしくは挽砕度に関する相応のデータセットは、制御および/または評価ユニットにおいて格納されていてよい。
【0046】
挽砕過程時に、豆の切断によって、切断工具(挽砕ディスク)を互いに押し離す力が生ぜしめられる。プロセス力もしくは逆向きに作用する力発生装置によって加えられる力が強ければ強いほど、挽砕度はますます細かくなる。豆がもはや存在しない場合に、ディスク状の挽砕工具は圧着力によって互いに向かって押圧される。挽砕工具は通常、互いに引っ掛かることがないように構成されているので、結果としてグラインダが故障する可能性はない。
【0047】
しかしながら空の豆容器の故障時には、挽砕ノイズおよび挽砕ディスクの平らな表面における損傷が生じる可能性がある。さらに不所望の熱作用も生じることがあり、このような熱作用は、コーヒー挽砕の品質に不都合に作用することがあり得る。それどころか円錐グラインダでは、切断工具のブロックが発生する可能性がある。この問題を解決するために好ましくは、グラインダは、最小の挽砕度を調節するために、ストッパ、特に調節可能なストッパを有していることが提案されていてよい。
【0048】
この限りにおいては特に、軸方向可動の工具部分もしくは相応の挽砕工具が、ストッパに押圧されることが提案されていてよい。このリミットストッパは、グラインダの作動前に調節可能であり、同時に最小に生ぜしめるべき挽砕度を確定する。力を加える場合、理想的には、切断工具の間に単に最小の間隙だけが存在していなくてはならない。後で、挽砕過程時におけるプロセス力よりも大きな圧着力が設定されると、被挽砕物が、この挽砕ディスク間隙の細かさによって生ぜしめられる。
【0049】
実地においては、挽砕ディスクグラインダの接触点(聞こえる挽砕ノイズの開始)が、グラインダの0ポイントのためのインジケータである。しかしながらこのインジケータは、挽砕ディスクの心振れ(Planlauf)およびミルフィッタの個々の聴覚に強く関連している。
【0050】
0ポイントの適宜な客観的な調節は、例えば、下側のディスクおよび上側のディスクの確定された通電(elektrischer Durchgang)を認識するための追加的な装置を介して行うことができる(導電測定)。グラインダの汎用のバッチにおいて、豆の挽砕は、この基準点に関して常になお粒度分布における差異を惹起する。なぜならば間隙の精度は、ディスクの心振れ誤差に直接関係しているからである。しかしながら力制御された挽砕度調節時におけるこの0ポイント確定の使用には、大きな利点がある。なぜならば後の粒度調節は、単に力に関連しており、ストッパは単に、接触点が上回られることを阻止するためにだけ働くからである。さらにこのような構造は、極めて細かく調節されたグラインダおよび駆動装置の過負荷を回避する。極めて細かい挽砕度は、特にフィルタコーヒーを淹れる時に、不所望に長い抽出時間を生ぜしめる可能性がある。最後にこれによって、グラインダの構造における製造誤差をも補償することができる。
【0051】
構造的にリミットストッパは、挽砕ディスク保持体のうちの一方の挽砕ディスク保持体のねじ山収容部を介して実現することができる。このとき保持体は、切断工具の接触点に至るまで回転させられ、次いでこの位置において固定されることができる。
【0052】
これによって最小の粒度段階を構造的に調節可能に構成することができるので、切断工具は互いに摩耗し合うことができなくなる。
【0053】
本発明に係る方法は、同様に相応のオプションによってさらに最適化することができる。例えば、豆内における夾雑物(Verunreinigungen)(木材、石)によって生ぜしめされた、切断工具のブロック(Blockade)を、力を加えることを中止することによって解決できることが提案されていてよい。このことは、切断工具ブロックの問題の簡単かつ効果的な解決策である。
【0054】
グラインダは、好適な変化形態によれば、ディスクグラインダ、またはローラグラインダ、または円錐グラインダとして形成されていてよい。
【0055】
方法の実施形態においては、プロセス力の値の調節は、制御回路(Regelkreis)によって調整され、制御回路は、制御および/または評価ユニットと、少なくとも1つの力センサを備えた少なくとも1つの力測定装置とを有している。このようにすると、粒子粒度に関するグラインダの直接的な調整を可能にするという利点が生じる。
【0056】
そのためにグラインダは、別の実施形態では、少なくとも1つの力センサを備えた少なくとも1つの力測定装置を有しており、少なくとも1つの力センサは、挽砕工具に直接または間接的に接続されている。このような力センサは、市場において入手可能な高品質で安価な部材であってよい。そのためには例えば液圧式の圧力センサ、ロードセル、およびこれに類したものなどのような、種々様々な実施形態が適している。
【0057】
さらに別の実施形態は、少なくとも1つの力センサが制御および/または評価ユニットに接続されており、制御および/または評価ユニットを有している制御回路の測定装置を形成しているように構成されている。制御および/または評価ユニットは、コンピュータを有していてよく、このコンピュータのプログラミングは、1つまたは複数の調整プログラムによって拡張することができる。
【0058】
これによって下記の利点、すなわち、
熱膨張作用の補償、
(特に挽砕工具交換時における)グラインダの迅速な初期調整
豆交換時における粒度適合
という利点が生ぜしめられる。
【0059】
別の好適な構成は、残りの従属請求項において開示されている。
【0060】
次に本発明の実施例を、図面を参照しながら詳説する。図面は、単に本発明の詳細な説明のためにだけ働き、本発明を制限するものではない。記載された幾つかの特徴は、一般的な専門知識の枠内において、別の変化形態にも転用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
図1】コーヒー豆を挽くための本発明に係るグラインダの1変化形態を、断面して概略的に示す正面図である。
図2】一連の挽砕実験の結果を示す線図である。
図3】一連の挽砕実験の結果を示す別の線図である。
図4図1に示されたコーヒー豆を挽くための本発明に係るグラインダの別の変化形態を、断面して概略的に示す正面図である。
図5図1に示された本発明に係るグラインダを、力センサ装置と共に示す正面図である。
【0062】
図1には、コーヒー豆5を挽くためのグラインダ1の形態の本発明に係る装置が、断面されて概略的に正面図で示されている。グラインダ1は第1の挽砕工具2を有している。第1の挽砕工具2は、ここでは図示されていないハウジング内に回動不能に支持されている。したがって第1の挽砕工具2は、グラインダ1の作動中に停止している。
【0063】
第1の挽砕工具2は、ここでは挽砕ディスクとして形成されていて、ゆえに円筒形のカバージオメトリと中心の貫通開口3とを有している。挽砕工具2は、他の形態で、例えば挽砕コーンとして形成されていてもよい。貫通開口3は、充填ホッパ4によって貫通係合されていてよい。充填ホッパ4および貫通開口3を通して、装置1には挽くべきコーヒー豆5が供給される。グラインダ1は、他の嗜好品または食料品を挽くために設けられていてもよく、しかしながらグラインダ1は、好ましくはコーヒー豆5を挽くために設けられている。充填ホッパ4は、好ましくは、充填ホッパ4内におけるコーヒー豆5の不所望のブリッジ形成が阻止されるように形成されている。
【0064】
第1の挽砕工具2は、充填ホッパ4とは反対の側に円錐形状の凹部6を有している。凹部6は、少なくとも1つの挽砕切刃7を有している。
【0065】
グラインダ1は、第2の挽砕工具8を有している。第2の挽砕工具8は、第1の挽砕工具2に対して同軸に、かつ第1の挽砕工具2の下に配置されている。「下」という概念は、図1の図平面に関連している。
【0066】
第2の挽砕工具8は、ここでは図示されていないハウジング内に回転可能に支持されている。したがって第2の挽砕工具8は、グラインダ1の作動中に回転する。
【0067】
第2の挽砕工具8は、同様に円筒形のカバージオメトリを有している。第2の挽砕工具8は、また他の形態で、例えば挽砕コーンとして形成されていてもよい。第2の挽砕工具は、第1の挽砕工具に対して相対的に回転可能である。ここでは第2の挽砕工具8は、モータ10の駆動軸9に回動不能に結合されているので、第2の挽砕工具8は、グラインダ1の作動中に回転運動させられ、これに対して第1の挽砕工具2は停止している。
【0068】
このことは好適ではあるが、必須ではない。択一的に、第1の挽砕工具2が作動中に回転可能である、もしくは回転することができ、これに対して第2の挽砕工具8は停止していることも可能である。また、両挽砕工具が、例えば互いに逆の回転方向にかつ/または互いに異なった速度で回転可能であってもよく、このようにすると、常に両挽砕工具2,8の間において相対運動が生じる。
【0069】
択一的にまた、両挽砕工具2,8のうちの一方の挽砕工具がモータ10のロータである、軸なしの直接駆動形態か、またはモータ10が伝動装置を介して両挽砕工具2,8のうちの一方の挽砕工具に作用する、間接的な駆動形態も可能である。第2の挽砕工具8は、モータ10とは反対の側に、円錐形状の凹部11を有している。凹部11は、少なくとも1つの挽砕切刃12を有している。
【0070】
これによって第1の挽砕工具2の円錐形状の凹部6と、第2の挽砕工具8の円錐形状の凹部11とは、一種のダブル円錐形状の挽砕室13を形成しており、この挽砕室13は、その外周部で挽砕間隙14において開口している。挽砕間隙14には、捕集装置(ここでは図示せず)が接続していてよく、この捕集装置は、挽砕間隙14から進出するコーヒー豆、好ましくはコーヒー粉末を捕集し、抽出プロセスに供給する。
【0071】
グラインダ1は、さらに少なくとも1つの力発生装置15を有している。力発生装置15は、ここでは第1の挽砕工具2に作用する。これによってそれぞれの力Fが、常に、つまり作動時において一方または両方の挽砕工具の回転中に、第1の挽砕工具2と第2の挽砕工具8との間に位置しているコーヒー豆に作用する。このことは好適ではあるが、必須ではない。力発生装置15は、第2の回転可能な挽砕工具8に作用しても、または両挽砕工具2,8に作用してもよい。
【0072】
力発生装置15は、ここでは2つの圧縮ばね16を含んでおり、これらの圧縮ばね16には、相応の装置17によって、例えばサーボモータによって、可変の予荷重距離Xだけ予荷重を加えることができ、これによって、第1の挽砕ディスク2に、ひいては作動中にコーヒー豆に作用するそれぞれの力Fの値が、可変もしくは調節可能である。
【0073】
力発生装置15は、図1に示されたのとは異なる形態で形成されていてもよい。このときに重要なことは、力作用であり、力Fの値が好ましくは可変もしくは調節可能なことである。力発生装置15はまた、力Fの値が自動的にかつ/または無段階式に、コーヒーマシンの最優先の作動パラメータに関連して調整されるように形成されていてもよい。
【0074】
これによって、挽砕度Cの確定された予調節を行うことが好適に可能である。それというのは、力Fは、挽砕度Cに、つまり挽かれたコーヒーの50%中央値の粒子サイズによって特徴付けられた、コーヒー粉の挽かれた被挽砕物粒子のサイズ分布に、関連しているからであり、このことについては、後でさらに説明する。
【0075】
さらに、コーヒー豆にグラインダ1によって作用する力は、挽くべきコーヒー豆5および所望の挽砕度Cに関連して、好ましくは力発生装置によって調節することができる。好ましくは、そのために挽砕度Cおよび豆タイプ、ならびに力発生装置によって生ぜしめるべき力に関するデータセットが、コーヒーマシン、特にグラインダ1を制御するための制御および/または評価ユニット18のデータメモリにおいて格納されている。上に述べた制御および/または評価ユニット18は、グラインダ1に対応配置されていても、または例えば全自動コーヒーマシンであるコーヒーマシンの一部であってもよい。
【0076】
つまり挽砕度Cの調節は、豆固有に調整することができる(例えば硬い/強く焙煎された豆なのか、あるいは僅かしか強く焙煎されなかったカフェオレ豆なのか)。これについては図3も参照。
【0077】
択一的に豆種は、モータ10を作動させる挽砕出力の出力差によっても確定することができる。
【0078】
さらに、挽砕度Cの力制御された調節によって、挽砕度Cの持続的な再現性を、挽砕工具の摩耗時にも可能にすることができる。そのために、時間的な摩耗に対する特性線を豆タイプに応じて格納することができる。挽砕過程の回数は、使用される豆タイプに応じて種々様々に重み付けすることができる。したがって例えば「硬い」豆タイプの100挽砕過程の後では、後調整を装置17によって行うことができる。
【0079】
同様に挽砕度Cの力制御された調節によって、好ましくは、特に挽砕工具2,8の熱膨張作用を補償することができる。そのために図示されていない温度センサが、コーヒー豆の温度をグラインダ1からの進出時に検出することができ、挽砕工具の材料の熱膨張係数の考慮下で、力発生装置の力、特に圧縮ばねの予荷重を相応に調整することができる。
【0080】
さらに例えば挽砕工具2,8の心振れ誤差(Planlauftoleranz)のような、挽砕工具2,8の製造精度は、グラインダ1の「挽砕度0位置」に対して、他の挽砕装置よりも著しく僅かな妨害影響しか及ぼさない。
【0081】
結果として、グラインダ1の挽砕出力Oおよびグラインダ1の作動中に生ぜしめられる挽砕度Cは、比較的僅かしか変動しない。
【0082】
ここに記載されたグラインダ1は、エスプレッソ豆を含むコーヒー豆の挽砕度Cを、力発生装置15を介して力制御して変化させるという可能性を開示している。
【0083】
本発明の思想は、挽砕工具2,8に作用する力Fと、これによって生じるコーヒー豆の粒子サイズの分布との間の関係に基づいている。挽砕間隙14が狭ければ狭いほど、生ぜしめられる被挽砕物はますます細かくなり、かつ挽砕工具2,8を互いに押し離す力Fも大きくなる。従来技術の構成では、この力は上側の挽砕工具を介して挽砕ハウジングによって受け止められる。
【0084】
挽砕工具2,8の決定されたジオメトリと、これによって生じる、力の値と挽砕度Cとの間の関係との間の関係は、経験に基づいて求めることができる(図2参照)。このことに基づいて得られた認識は、装置1の挽砕度Cを持続的にかつ正確に調節するために使用することができる。力の値が知られている場合には、これらの値は、目的に合った挽砕度Cを生ぜしめるために、確定された段階付けにおいて設定することができる(図3参照)。
【0085】
図2には、一連の挽砕実験の結果が示されている。このとき上側の挽砕ディスク2には、異なった力Fが加えられ、それぞれ3回の挽砕がバチオネロ(Bacio Nero)豆を用いて実施された。その後でコーヒー粉末は、粒子測定器によって測定された(レーザ回折に基づく測定)。種々様々な挽砕試料は、3つの特性線、粒度測定1~3に相当しており、粒度分布(挽砕度C)の中央値(Median)はそれぞれ特徴として使用される。
【0086】
同時に装置1の挽砕出力Oが、つまり毎秒の装置1のアウトプット挽砕量が記入されている。装置1は、モータ10によって、それぞれ5秒の長さに対して電圧供給230V、50Hzで駆動制御された。図3には、挽砕度Cへの力Fの値の影響と、種々様々な豆を挽く場合における挽砕出力Oが示されている。ここでは、バチオネロ、ラタッツァベルデ(La Tazza Verde)(Melitta)である豆種、および比較種が挽かれた。ここでも再び挽砕出力Oおよび挽砕度Cは、挽砕工具2,8に作用する種々様々な値の力Fにおいて固定された。
【0087】
したがって実験によれば、挽砕工具2,8の製造精度がある一定の誤差内にある限り、挽砕出力Oと豆の挽砕度Cとの間において良好な相関関係が存在するということが示された(図2および図3参照)。つまり挽砕工具2,8の特性が知られている限り、種々様々なグラインダの挽砕出力Oから、生ぜしめられる挽砕度Cを高い精度で推測することができる。
【0088】
この前提条件下で、所望の粒子サイズ分布もしくは所望の挽砕度Cが得られる、豆固有の力Fを推測することができる。基準焙煎および基準豆の特性が記憶されているデータベースを用いて、現在の焙煎および豆のための所望の粒子サイズ分布もしくは所望の挽砕度Cを調節するために、力Fの調整を行うことができる。他の豆または焙煎が使用されること、または焙煎または豆種のバッチ(Charge)を異なった形式で挽くことができることに基づいて、所属の力Fに対する挽砕出力Oが変化するや否や、システムは独自に、挽砕度に関連したファクタだけ後調整を行う(nachregeln)。すなわち力Fは、このとき再び所望の粒子サイズ分布もしくは所望の挽砕度Cを得るために、適合させられる。
【0089】
さらに全自動コーヒーマシンの予調節のために、挽砕度Cに対する挽砕出力Oの関係を挽砕工具固有に確定することが考えられる。このようにすると確定された挽砕工具、およびそこで挽くべき焙煎または豆種のために、高められた精度を生ぜしめることができ、これによって力Fの値が設定されている場合に、要求される挽砕度Cを調節することができる。
【0090】
装置1の挽砕出力Oは、既に公知の方法によって求めることができる。すなわち、間接的な可能性は、設定された圧着力時における、抽出プロセスにおいて存在するコーヒー粉末のケーキ高さを介して、抽出プロセスのために準備されたコーヒー粉末の重量を推測することである。ピストンコーヒーマシンは、いずれにせよ存在している湯通しユニットに基づいてこの可能性を提供する。グラインダの駆動制御時間は設定されるので、挽砕出力Oを推測することができる。
【0091】
直接的な可能性は、コーヒー粉末の計量(Auswiegen)である。これは、挽かれたコーヒー粉末をセット引出し内にもたらし、セット引出しをロードセルによって監視することによって自動化することができる。
【0092】
挽砕度Cの力制御された調節の別の使用可能性は、装置1と、湯通し水とコーヒー粉末との間の接触時間の調整との組合せである。等しいままの配分の溶かされた芳香剤を備えた、一定の飲料品質を生ぜしめるためには、等しいままの量のコーヒー粉末を、同一の挽砕度Cで、設定された水量によってある一定の時間において貫流することが必要である。水温、圧着圧、および湯通し圧のような別の基本条件は、湯通し過程時に同様に可能な限り一定に保つことが必要であり、これによってコーヒーの膨潤特性を同等に、ひいては湯通し水とコーヒー粉末との間の接触時間を同一に保つことができる。
【0093】
図4には、図1に示されたコーヒー豆を挽くための本発明に係るグラインダ1の別の変化形態が、断面されて概略的な正面図で示されている。
【0094】
図1と同様に図4に示されているように、本発明に係るグラインダ1の別の変化形態も考えられ、挽砕工具2と圧縮ばね16との間にそれぞれ1つの転動体19が配置されていてよい。この転動体19は、転動体ケージを備えたころがり軸受、例えば玉軸受またはニードル軸受であってもよく、このとき圧縮ばねは転動体ケージに載置されている。ころがり軸受は、充填ホッパ4に対して同軸に延在していてよい。転動体支持装置は、それぞれの圧縮ばねの結合点が一緒に回転することなしに、挽砕工具2の回転を可能にする。
【0095】
これによって1つの回転する工具要素にも力を加えることができ、例えば両工具要素に力を加えることもできる。
【0096】
図5には、図1に示された本発明に係るグラインダが、力センサ装置20と共に正面図で示されている。
【0097】
力センサ装置20は、両挽砕工具2,8のうちの一方の挽砕工具と協働するように配置されている。2つまたはそれ以上の力センサ装置20が設けられていてよい。力センサ装置20は、少なくとも1つの力センサ21,22を有している。
【0098】
ここで図示されているように、第1の力センサ21を備えた第1の力センサ装置20は、停止している挽砕工具8と協働しており、第2の力センサ22を備えた第2の力センサ装置20は、第1の挽砕工具2と協働している。
【0099】
それぞれの力センサ21,22は、所属の挽砕工具2,8に直接または間接的に接続されている。
【0100】
力センサ21,22は、例えば圧力センサ(例えばロードセル、液圧式の圧力センサ)であってよく、この圧力センサはそれぞれ、力を挽砕過程中に直接または間接的な測定によって検出する。
【0101】
力測定装置20は、制御および/または評価ユニット18に接続されていて、制御回路の測定装置を形成している。制御および/または評価ユニット18は、少なくとも1つの目標値/実際値比較器および調節値発生器を有しており、この調節値発生器は、グラインダ1の、図示されていないが容易に想像可能な電気式の粒度調節装置に連結されている。
【0102】
グラインダの種々様々な豆の軸方向力と粒度との関係は、経験的に求めることができるので、グラインダ1は電気式の粒度調節装置を介して、所望の挽砕度を調節すること、およびこの挽砕度を傷害ファクタ(温度、豆交換、挽砕ディスク交換)に対してこの制御回路によって調整することができる。
【0103】
これによって下記の利点、すなわち、
熱膨張作用の補償
(特に挽砕工具交換時における)グラインダの迅速な初期調整
豆交換時における粒度適合
粒子粒度に関するグラインダ1の直接的な調整(コーヒーケーキの抽出時間に関する間接的な調整)
といった利点が生ぜしめられる。
【符号の説明】
【0104】
1 グラインダ
2 挽砕工具
3 貫通開口
4 充填ホッパ
5 コーヒー豆
6 凹部
7 挽砕切刃
8 挽砕工具
9 駆動軸
10 モータ
11 凹部
12 挽砕切刃
13 挽砕室
14 挽砕間隙
15 力発生装置
16 圧縮ばね
17 装置
18 制御および/または評価ユニット
19 転動体
20 力センサ装置
21 センサ
22 センサ
F 力
X 予荷重距離
C 挽砕度
O 挽砕出力
図1
図2
図3
図4
図5