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特許7337874多価フェノール樹脂、多価フェノール樹脂のグリシジルエーテル、及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-25
(45)【発行日】2023-09-04
(54)【発明の名称】多価フェノール樹脂、多価フェノール樹脂のグリシジルエーテル、及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C08G 8/08 20060101AFI20230828BHJP
   G01N 24/08 20060101ALI20230828BHJP
   G01N 27/62 20210101ALI20230828BHJP
   G01N 30/88 20060101ALI20230828BHJP
   C08G 8/30 20060101ALI20230828BHJP
   C08G 59/08 20060101ALI20230828BHJP
【FI】
C08G8/08
G01N24/08 510P
G01N27/62 C
G01N27/62 V
G01N30/88 C
C08G8/30
C08G59/08
【請求項の数】 12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021071126
(22)【出願日】2021-04-20
(65)【公開番号】P2022153210
(43)【公開日】2022-10-12
【審査請求日】2022-04-07
(31)【優先権主張番号】110111383
(32)【優先日】2021-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】595009383
【氏名又は名称】長春人造樹脂廠股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】CHANG CHUN PLASTICS CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】7F., No.301, Songkiang Rd., Zhongshan Dist Taipei City,Taiwan 104
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】洪千▲ブン▼
(72)【発明者】
【氏名】鍾淞廣
(72)【発明者】
【氏名】杜安邦
【審査官】越本 秀幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-237859(JP,A)
【文献】国際公開第2012/043213(WO,A1)
【文献】国際公開第03/042267(WO,A1)
【文献】特開平05-140265(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 4/00- 16/06
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
G01N 24/08
G01N 27/62
G01N 30/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多価フェノール樹脂成分と第1成分とを含む、多価フェノール樹脂であって、
前記多価フェノール樹脂を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で特性評価したとき、前記第1成分は27.1分~28.0分の範囲の保持時間で溶出し、スペクトルの対応する保持時間における前記第1成分のクロマトグラフィーピークの面積百分率は、前記多価フェノール樹脂のクロマトグラフィーピークの総面積を基準にして、1.0%~20.0%の範囲であり、
前記HPLCによる特性評価は、以下の条件、検出器は波長254nmの紫外線を使用、長さ250mm、内径4.6mmで、粒径5μmの充填剤を有するオクタデシルシラン(ODS)カラム、カラム温度40℃、検出器温度35℃、移動相流速1.0mL/分、試料はアセトニトリル(ACN)を溶媒として調製、試料濃度はACN中0.5重量%、注入量15μL、及び移動相の組成:洗浄時間の0分から10分目までの移動相は40体積%の水と60体積%のアセトニトリルの混合物、洗浄時間の10分目から30分目までの移動相は40体積%の水と60体積%のアセトニトリルの混合物から100体積%のアセトニトリルまで、時間に対して直線勾配で変化、洗浄時間の30分目から50分目までの移動相は100体積%のアセトニトリル、で実施され
前記多価フェノール樹脂をガスクロマトグラフィー-質量分析法(GC-MS)で特性評価したとき、前記第1成分は18.000分~21.000分の範囲の保持時間で溶出し、前記第1成分のフラグメンテーションパターンは、51、65、77、89、91、115、130、165、178、193、及び208からなる群から選択される質量電荷比(m/z)において1つ以上のシグナルを有し、
前記多価フェノール樹脂は、スチレン化多価フェノール樹脂であることを特徴とする、
多価フェノール樹脂。
【請求項2】
前記多価フェノール樹脂を炭素-13核磁気共鳴(13C-NMR)で特性評価したとき、前記多価フェノール樹脂の13C-NMRスペクトルは、145ppm~160ppmのシグナルの積分値Aと、28ppm~38ppmのシグナルの積分値Bとを有し、AのBに対する比(A/B)は0.5~3.0の範囲であり、前記13C-NMRに使用される溶媒はジメチルスルホキシドであり、前記13C-NMRに使用される標準物質はテトラメチルシランであることを特徴とする、請求項1に記載の多価フェノール樹脂。
【請求項3】
150g/eq~320g/eqの範囲の水酸基当量を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の多価フェノール樹脂。
【請求項4】
前記多価フェノール樹脂の軟化点温度は30℃~70℃の範囲であり、前記軟化点温度はJIS K 2207環球法によって測定されることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の多価フェノール樹脂。
【請求項5】
多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルの成分と第1成分とを含む、多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルであって、
前記多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で特性評価したとき、前記第1成分は27.1分~28.0分の範囲の保持時間で溶出し、スペクトルの対応する保持時間における前記第1成分のクロマトグラフィーピークの面積百分率は、前記多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルのクロマトグラフィーピークの総面積を基準にして、1.0%~20.0%の範囲であり、
前記HPLCによる特性評価は、以下の条件、検出器は波長254nmの紫外線を使用、長さ250mm、内径4.6mmで、粒径5μmの充填剤を有するオクタデシルシラン(ODS)カラム、カラム温度40℃、検出器温度35℃、移動相流速1.0mL/分、試料はアセトニトリル(ACN)を溶媒として調製、試料濃度はACN中0.5重量%、注入量15μL、及び移動相の組成:洗浄時間の0分から10分目までの移動相は40体積%の水と60体積%のアセトニトリルの混合物、洗浄時間の10分目から30分目までの移動相は40体積%の水と60体積%のアセトニトリルの混合物から100体積%のアセトニトリルまで、時間に対して直線勾配で変化、洗浄時間の30分目から50分目までの移動相は100体積%のアセトニトリル、で実施され
前記多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルをガスクロマトグラフィー-質量分析法(GC-MS)で特性評価したとき、前記第1成分は18.000分~21.000分の範囲の保持時間で溶出し、前記第1成分のフラグメンテーションパターンは、51、65、77、89、91、115、130、165、178、193、及び208からなる群から選択される質量対電荷比(m/z)において1つ以上のシグナルを含み、
前記多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルは、スチレン化多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルであることを特徴とする、
多価フェノール樹脂のグリシジルエーテル。
【請求項6】
前記多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルを炭素-13核磁気共鳴(13C-NMR)で特性評価したとき、前記多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルの前記13C-NMRスペクトルは、145ppm~160ppmのシグナルの積分値Aと、28ppm~38ppmのシグナルの積分値Bとを有し、AのBに対する比(A/B)は0.5~3.0の範囲であり、前記13C-NMRに使用される溶媒はジメチルスルホキシドであり、前記13C-NMRに使用される標準物質はテトラメチルシランであることを特徴とする、請求項に記載の多価フェノール樹脂のグリシジルエーテル。
【請求項7】
200g/eq~400g/eqの範囲のエポキシ当量(EEW)を有することを特徴とする、請求項5又は6に記載の多価フェノール樹脂のグリシジルエーテル。
【請求項8】
300ppm以下の加水分解性塩素(HyCl)を含むことを特徴とする、請求項5~7のいずれか一項に記載の多価フェノール樹脂のグリシジルエーテル。
【請求項9】
0.040eq/100g~0.10eq/100gの範囲の水酸基価(HV)を有することを特徴とする、請求項5~8のいずれか一項に記載の多価フェノール樹脂のグリシジルエーテル。
【請求項10】
0.003meq/g~0.015meq/gのα-グリコールを含むことを特徴とする、請求項5~9のいずれか一項に記載の多価フェノール樹脂のグリシジルエーテル。
【請求項11】
請求項5~10のいずれか一項に記載の多価フェノール樹脂のグリシジルエーテル(a1)と、
硬化剤(b1)と、を含むことを特徴とする、
硬化性組成物。
【請求項12】
請求項11に記載の硬化性組成物を硬化することで得られる誘電体材料(a2)を含む、誘電体層と、
前記誘電体層の表面に配置された銅箔(b2)と、を含む、
銅張積層板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多価フェノール樹脂、多価フェノール樹脂のグリシジルエーテル、及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は、半導体産業で回路基板材料として広く使用されている。また、室温で液体であり、加工性に優れ、硬化剤及び添加剤と容易に混合できる。しかし、従来のエポキシ樹脂は耐熱性と吸水の点で不十分であり、要求される低い吸水率(高い耐湿性)、高い耐熱性、高い難燃性、及び回路基板の卓越した誘電特性を得るには更なる改質を必要とする。
【0003】
スチレンをエポキシ樹脂の改質に使用して、エポキシ樹脂の耐湿性を改善できることは公知である。しかし、この改質中に生成した副生成物(例えば、スチレンオリゴマー)は、エポキシ樹脂の耐熱性及び難燃性に悪影響を及ぼすと考えられる。したがって、低い吸水率、高い耐熱性、高い難燃性、及び卓越した誘電特性を有するエポキシ樹脂が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記を考慮して、本発明は、特定量のスチレンオリゴマーを含み、低い吸水率、高い耐熱性、高い難燃性、及び卓越した誘電特性を付与できるグリシジルエーテルを当該樹脂から作製した電子材料に提供できる、多価フェノール樹脂を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は、多価フェノール樹脂成分と第1成分とを含む多価フェノール樹脂であって、当該多価フェノール樹脂を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で特性評価したとき、第1成分は27.1分~28.0分の範囲の保持時間で溶出し、スペクトルの対応する保持時間における第1成分のクロマトグラフィーピークの面積百分率は、多価フェノール樹脂のクロマトグラフィーピークの総面積を基準にして、1.0%~20.0%の範囲である、多価フェノールを提供することである。
【0006】
本発明のいくつかの実施形態では、多価フェノール樹脂を炭素-13核磁気共鳴(13C-NMR)で特性評価したとき、多価フェノール樹脂の13C-NMRスペクトルは、145ppm~160ppmのシグナルの積分値Aと、28ppm~38ppmのシグナルの積分値Bとを有し、AのBに対する比(A/B)は0.5~3.0の範囲であり、ここで13C-NMRに使用される溶媒はジメチルスルホキシドであり、13C-NMRに使用される標準物質はテトラメチルシランである。
【0007】
本発明のいくつかの実施形態では、多価フェノール樹脂はスチレン化多価フェノール樹脂である。
【0008】
本発明のいくつかの実施形態では、多価フェノール樹脂をガスクロマトグラフィー-質量分析法(GC-MS)で特性評価したとき、第1成分は18.000分~21.000分の範囲の保持時間で溶出し、第1成分のフラグメンテーションパターンは、51、65、77、89、91、103、104、105、115、130、165、178、193、及び208からなる群から選択される質量電荷比(m/z)において、1つ以上のシグナルを有する。
【0009】
本発明のいくつかの実施形態では、多価フェノール樹脂は、150g/eq~320g/eqの範囲の水酸基当量を有する。
【0010】
本発明のいくつかの実施形態では、多価フェノール樹脂の軟化点温度は30℃~70℃の範囲であり、軟化点温度はJIS K 2207環球法によって測定される.
【0011】
本発明の別の目的は、多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルの成分と第1成分とを含む多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルであって、当該多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で特性評価したとき、第1成分は27.1分~28.0分の範囲の保持時間で溶出し、スペクトルの対応する保持時間における第1成分のクロマトグラフィーピークの面積百分率は、多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルのクロマトグラフィーピークの総面積を基準にして、1.0%~20.0%の範囲である、多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルを提供することである。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態では、多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルを炭素-13核磁気共鳴(13C-NMR)で特性評価したとき、多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルの13C-NMRスペクトルは、145ppm~160ppmのシグナルの積分値Aと、28ppm~38ppmのシグナルの積分値Bとを有し、AのBに対する比(A/B)は0.5~3.0の範囲であり、ここで13C-NMRに使用される溶媒はジメチルスルホキシドであり、13C-NMRに使用される標準物質はテトラメチルシランである。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態では、多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルはスチレン化多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルである。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態では、多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルをガスクロマトグラフィー-質量分析法(GC-MS)を特性評価したとき、第1成分は18.000分~21.000分の範囲の保持時間で溶出し、第1成分のフラグメンテーションパターンは、51、65、77、89、91、103、104、105、115、130、165、178、193、及び208からなる群から選択される質量電荷比(m/z)において、1つ以上のシグナルを有する。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態では、多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルは、200g/eq~400g/eqの範囲のエポキシ当量(EEW)を有する。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態では、多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルは、300ppm以下の加水分解性塩素(HyCl)を含む。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態では、多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルは、0.040eq/100g~0.10eq/100gの範囲の水酸基価(HV)を有する。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態では、多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルは、0.003meq/g~0.015meq/gのα-グリコールを含む。
【0019】
本発明の更に別の目的は、上記の多価フェノール樹脂のグリシジルエーテル(a1)と、硬化剤(b1)とを含む、硬化性組成物を提供することである。
【0020】
本発明の更に別の目的は、上記の硬化性組成物を硬化することで得られる誘電体材料(a2)を含む、誘電体層と、上記誘電体層の表面に配置された銅箔(b2)と、を含む銅張積層板を提供することである。
【0021】
本発明の上記目的、技術的特徴及び利点をより明らかにするため、以下に、本発明をいくつかの実施形態に関して詳述する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明のいくつかの実施形態を詳述する。しかし、本発明は、様々な実施形態で実施されてもよく、本明細書に記載された実施形態に限定されるべきではない。
【0023】
追加の説明がない限り、本明細書及び特許請求の範囲に記載される「1つの」、「ある」、「当該」(「a」、「the」)等の表現は、単数形と複数形の両方を含むものとする。
【0024】
追加の説明がない限り、本明細書及び特許請求の範囲に記載される「第1」「第2」等の表現は、例示された要素又は構成成分を特別な意味なく単に区別するために使用され、これらの表現はいかなる優先性を示すことも意図しない。
【0025】
追加の説明がない限り、「軟化点温度」は、JIS K 2207環球法に従って測定される。
【0026】
追加の説明がない限り、「加水分解性塩素(HyCl)量」は、ASTM-D1652に従って測定される。
【0027】
追加の説明がない限り、「α-グリコール量」は、JIS-K-7146に従って測定される。
【0028】
追加の説明がない限り、本明細書及び特許請求の範囲において、「常圧」という用語は1気圧(760torr)の圧力を指し、「常温」という用語は25℃の温度を指す。
【0029】
本明細書及び特許請求の範囲において、特定成分が特定範囲の保持時間に溶出することは、当該特定範囲の保持時間内に現れるクロマトグラフィーピークが当該特定成分を表わす領域を示すことを意味する。特定成分のクロマトグラフィーピークの積分面積は、保持時間範囲内のクロマトグラフィーピークの積分面積から計算される。加えて、NMR検出において、積分値は、所与のppm範囲内のシグナルの総面積の積分値を表わす。
【0030】
本明細書及び特許請求の範囲において、HPLCスペクトル及びNMRスペクトルのクロマトグラフィーピークの面積の決定は、以下のとおりである。B-V-B(ベースライン-バレー-ベースライン)法が適用される。この方法では、全てのクロマトグラフィーピーク又はシグナル値が同じベースラインを使用し、特定のクロマトグラフィーピークの谷(バレー)又は特定のシグナル値のそれぞれからベースラインまで直線を垂直に延ばし、特定のクロマトグラフィーピーク又は特定のシグナル値について、積分すべき面積を決定する。ベースラインは、試験試料が検出器を通っていないときに検出される移動相のシグナル又はバックグラウンドシグナルを意味する。
【0031】
本発明の多価フェノール樹脂及び多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルは、それぞれ卓越した耐熱性、難燃性、耐湿性、及び電気特性を有する。多価フェノール樹脂及び多価フェノール樹脂のグリシジルエーテル並びにその使用を、以下に詳述する。
【0032】
1.多価フェノール樹脂
本発明の多価フェノール樹脂は、多価フェノール樹脂成分と第1成分とを含み、HPLCスペクトルで特徴づけられる特徴を有する。本発明のいくつかの実施形態では、多価フェノール樹脂成分は、スチレン化多価フェノール樹脂成分である。スチレン化多価フェノール樹脂成分は、以下の化学式(I)で表される構造を有し得る。
[化学式(I)]
【0033】
【化1】
【0034】
化学式(I)において、R
【0035】
【化2】
であり、nは1~20の整数であり;mは0.1~3.0、例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、若しくは3.0、又は本明細書に記載の値のうち任意の2つの間の範囲内である。ここで、mは、1つのフェノール環に結合したスチリルの平均数を表わす。例えば、nが4であり、左端のフェノール環には2個のスチリル基が結合していて、他のフェノール環にはそれぞれ1個のスチリルが結合している場合、mは1.2である。
【0036】
1.1.多価フェノール樹脂のHPLC及び13C-NMR特性
多価フェノール樹脂をHPLCで特性評価したとき、第1成分は27.1分~28.0分の範囲の保持時間で溶出する。すなわち、第1成分のクロマトグラフィーピークの波頂(ピーク値)は27.1分、27.2分、27.3分、27.4分、27.5分、27.6分、27.7分、27.8分、27.9分、若しくは28.0分にあるか、又は本明細書に記載の値のうち任意の2つの間の範囲内であり得る。更に、スペクトルの対応する保持時間における第1成分のクロマトグラフィーピークの面積百分率は、多価フェノール樹脂のクロマトグラフィーピークの総面積を基準にして、1.0%~20.0%の範囲である。例えば、スペクトルの対応する保持時間における第1成分のクロマトグラフィーピークの面積百分率は、1.0%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、2.0%、2.1%、2.2%、2.3%、2.4%、2.5%、2.6%、2.7%、2.8%、2.9%、3.0%、3.1%、3.2%、3.3%、3.4%、3.5%、3.6%、3.7%、3.8%、3.9%、4.0%、4.1%、4.2%、4.3%、4.4%、4.5%、4.6%、4.7%、4.8%、4.9%、5.0%、5.1%、5.2%、5.3%、5.4%、5.5%、5.6%、5.7%、5.8%、5.9%、6.0%、6.1%、6.2%、6.3%、6.4%、6.5%、6.6%、6.7%、6.8%、6.9%、7.0%、7.1%、7.2%、7.3%、7.4%、7.5%、7.6%、7.7%、7.8%、7.9%、8.0%、8.1%、8.2%、8.3%、8.4%、8.5%、8.6%、8.7%、8.8%、8.9%、9.0%、9.1%、9.2%、9.3%、9.4%、9.5%、9.6%、9.7%、9.8%、9.9%、10.0%、10.1%、10.2%、10.3%、10.4%、10.5%、10.6%、10.7%、10.8%、10.9%、11.0%、11.1%、11.2%、11.3%、11.4%、11.5%、11.6%、11.7%、11.8%、11.9%、12.0%、12.1%、12.2%、12.3%、12.4%、12.5%、12.6%、12.7%、12.8%、12.9%、13.0%、13.1%、13.2%、13.3%、13.4%、13.5%、13.6%、13.7%、13.8%、13.9%、14.0%、14.1%、14.2%、14.3%、14.4%、14.5%、14.6%、14.7%、14.8%、14.9%、15.0%、15.1%、15.2%、15.3%、15.4%、15.5%、15.6%、15.7%、15.8%、15.9%、16.0%、16.1%、16.2%、16.3%、16.4%、16.5%、16.6%、16.7%、16.8%、16.9%、17.0%、17.1%、17.2%、17.3%、17.4%、17.5%、17.6%、17.7%、17.8%、17.9%、18.0%、18.1%、18.2%、18.3%、18.4%、18.5%、18.6%、18.7%、18.8%、18.9%、19.0%、19.1%、19.2%、19.3%、19.4%、19.5%、19.6%、19.7%、19.8%、19.9%、若しくは20.0%、又は本明細書に記載の値のうち任意の2つの間の範囲内であり得る。多価フェノール樹脂中の第1成分の量を上記範囲内に制御することで、多価フェノール樹脂の耐熱性及び難燃性が改善でき、当該多価フェノール樹脂から形成されたエポキシ樹脂(本明細書で「多価フェノール樹脂のグリシジルエーテル」とも呼ばれる)は、回路基板材料又は高周波接着剤に特に有用である。
【0037】
上記のHPLC分析は以下のように実施される。最初に、多価フェノール樹脂を、長さ250mm、内径4.6mmで、粒径5μmの充填剤を有するオクタデシルシラン(ODS)カラムにロードする。次いで、HPLC分析を、以下の条件:検出器は波長254nmの紫外線を使用;カラム温度40℃;検出器温度35℃;移動相流速1.0mL/分;試料はアセトニトリル(ACN)を溶媒として調製し、試料濃度はACN中0.5重量%;注入量15μL、及び移動相の組成:洗浄時間の0分から10分目までの移動相は40体積%の水と60体積%のアセトニトリルの混合物;洗浄時間の10分目から30分目までの移動相は、40体積%の水と60体積%のアセトニトリルの混合物から100体積%のアセトニトリルまで、時間に対して直線勾配で変化、洗浄時間の30分目から50分目までの移動相は100体積%のアセトニトリル、で実施する。直線勾配に関する詳細な説明は、以下の実施例の項の測定方法に記載する。
【0038】
本発明のいくつかの実施例では、第1成分は、以下の化学式(II)で表される化合物である。化学式(II)で表される化合物は、スチレンの二量体である。
[化学式(II)]
【0039】
【化3】
【0040】
本発明のいくつかの実施形態では、多価フェノール樹脂を炭素-13核磁気共鳴(13C-NMR)で特性評価したとき、多価フェノール樹脂の13C-NMRスペクトルは、145ppm~160ppmのシグナルの積分値Aと、28ppm~38ppmのシグナルの積分値Bとを有し、AのBに対する比(A/B)は0.5~3.0の範囲である。例えば、AのBに対する比は、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、若しくは3.0、又は本明細書に記載の値のうち任意の2つの間の範囲内であり得る。
【0041】
本発明において、13C-NMRは、溶媒としてジメチルスルホキシド、標準物質としてテトラメチルシランを使用して測定を実施することで得られる。本発明のいくつかの実施形態では、13C-NMRは、核磁気共鳴分光計を用いて以下の条件下で実施される:試験温度25℃、共鳴周波数400MHz、パルス幅5.3μs、待ち時間1秒、積算回数10000回、テトラメチルシランのシグナルを0ppmに設定。
【0042】
1.2.多価フェノール樹脂のGC-MS特性及びその他の特性
本発明のいくつかの実施形態では、多価フェノール樹脂をガスクロマトグラフィー-質量分析法(GC-MS)で特性評価したとき、第1成分は18.000分~21.000分の範囲の保持時間で溶出し、すなわち第1成分のクロマトグラフィーピークの波頂(ピーク値)は18.000分、18.100分、18.200分、18.300分、18.400分、18.500分、18.600分、18.700分、18.800分、18.900分、19.000分、19.100分、19.200分、19.300分、19.400分、19.500分、19.600分、19.700分、19.800分、19.900分、20.000分、20.100分、20.200分、20.300分、20.400分、20.500分、20.600分、20.700分、20.800分、20.900分、若しくは21.000分にあり得、又は本明細書に記載の値のうち任意の2つの間の範囲内である。第1成分のフラグメンテーションパターンは、51、65、77、89、91、103、104、105、115、130、165、178、193、及び208からなる群から選択される質量電荷比(m/z)において1つ以上のシグナルを含む。
【0043】
上記のGC-MS分析は以下のように実施され、GC-MS分析実施の前に、分析しようとする多価フェノール樹脂の試料に以下の前処理を施すことが好ましい。最初に、多価フェノール樹脂の試料を70℃のオーブン内で1時間加熱し、試料を均一にする。次いで、試料をアセトン(すなわち、溶媒)と混合して重量パーセント濃度1%の溶液を調製して、分析試料の前処理を完了する。
【0044】
最初に、前処理した多価フェノール樹脂の試料をガスクロマトグラフにロードする。ガスクロマトグラフには、長さ30m、内径0.25mm、膜厚0.25μmのPhenomenex Zebron ZB-5キャピラリーカラム(固定相組成:5%フェニル、95%ジメチルポリシロキサン)を取り付ける。入口温度350℃及びキャリアガスのヘリウム流量1.8mL/分で、ガスクロマトグラフのオーブンを以下のように段階的に加熱する。温度を50℃で5分間保持、次いで50℃から340℃まで加熱速度10℃/分で昇温、340℃で26分間保持する。その後、ガスクロマトグラフを質量分光計に接続し、GC-MS分析を以下の条件下で実施する:電子エネルギー70eV、イオン源温度250℃、四重極質量フィルタの使用、界面温度340℃、質量スキャン範囲29.0ダルトン~1090ダルトン、溶媒遅延時間1.85分、及びスキャン速度5000u/sec。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態では、多価フェノール樹脂は、150g/eq~320g/eqの範囲の水酸基当量を更に有する。例えば、多価フェノール樹脂の水酸基当量は、150g/eq、155g/eq、160g/eq、165g/eq、170g/eq、175g/eq、180g/eq、185g/eq、190g/eq、195g/eq、200g/eq、205g/eq、210g/eq、215g/eq、220g/eq、225g/eq、230g/eq、235g/eq、240g/eq、245g/eq、250g/eq、255g/eq、260g/eq、265g/eq、270g/eq、275g/eq、280g/eq、285g/eq、290g/eq、295g/eq、300g/eq、305g/eq、310g/eq、315g/eq、若しくは320g/eq、又は本明細書に記載の値のうち任意の2つの間の範囲内であり得る。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態では、多価フェノール樹脂は、更に30℃~70℃の範囲の軟化点温度を有する。例えば、多価フェノール樹脂の軟化点温度は、30℃、31℃、32℃、33℃、34℃、35℃、36℃、37℃、38℃、39℃、40℃、41℃、42℃、43℃、44℃、45℃、46℃、47℃、48℃、49℃、50℃、51℃、52℃、53℃、54℃、55℃、56℃、57℃、58℃、59℃、60℃、61℃、62℃、63℃、64℃、65℃、66℃、67℃、68℃、69℃、若しくは70℃、又は本明細書に記載の値のうち任意の2つの間の範囲内であり得る。上記の軟化点温度は、JIS K 2207の環球法に従って測定される。
【0047】
1.3.多価フェノール樹脂の調製
本発明の多価フェノール樹脂は、フェノールをホルムアルデヒドと反応させることによって調製できる。例えば、スチレン化多価フェノール樹脂は、フェノールをスチレンと反応させてスチレン化フェノールを形成し、次いでスチレン化フェノールをホルムアルデヒドと反応させることで調製できる。別の方法としては、スチレン化多価フェノール樹脂は、フェノールをホルムアルデヒドと反応させて多価フェノール樹脂を形成し、次いでスチレンを付加反応によって多価フェノール樹脂と反応させることで調製できる。
【0048】
上記フェノールの例として、フェノール、m-クレゾール、p-クレゾール、o-クレゾール、エチルフェノール、イソプロピルフェノール、t-ブチルフェノール、アリルフェノール、及びフェニルフェノールが挙げられるがこれらに限定されない。本発明のいくつかの実施形態では、多価フェノールは、フェノールとスチレンとを使用することで調製される。
【0049】
上記のスチレン化フェノールとホルムアルデヒドとの反応は、酸触媒の存在下で実施できる。酸触媒には、有機酸と無機酸とが含まれる。無機酸の例としては、塩酸、硫酸、及びリン酸が挙げられるがこれらに限定されない。有機酸の例としては、メタン酸、シュウ酸、トリフルオロ酢酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、及びジメチル硫酸が挙げられるがこれらに限定されない。本発明のいくつかの実施形態では、多価フェノールは、シュウ酸、p-トルエンスルホン酸、又はメタンスルホン酸を使用することで調製される。更に、上記のフェノールとホルムアルデヒドとの反応及びスチレンと多価フェノール樹脂との付加反応も酸触媒の存在下で実施でき、酸触媒の例としては、スチレン化フェノールとホルムアルデヒドとの反応に好適な上記の有機酸及び無機酸が挙げられる。
【0050】
本発明で使用されるスチレンは、1つ以上の置換基を更に含み得る。置換基の例としては、メチル、エチル、プロピル、ジメチル、及びジエチルが挙げられる。スチレンから形成されるオリゴマーも、上記の置換基を含み得る。
【0051】
スチレン化フェノールとホルムアルデヒドとの反応は、以下の条件下で実施できる。ホルムアルデヒドを、スチレン化フェノールと酸触媒との混合物に80℃~100℃で1時間~4時間かけて滴下し、次いで温度を120℃~160℃に上げて常圧下で1時間~4時間蒸留することによって水を除去する。その後、中和剤を添加し、温度を150℃~200℃に上げて、10mmHg~100mmHgの絶対圧力下、0.5時間~3時間の減圧蒸留を実施して、スチレン化多価フェノール樹脂を得る。中和剤の例としては、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、酢酸ナトリウム、及び炭酸ナトリウムが挙げられるがこれらに限定されない。
【0052】
フェノールとホルムアルデヒドとの反応は、以下の条件下で実施できる。ホルムアルデヒドを、フェノールと酸触媒との混合物に80℃~100℃で1時間~4時間かけて滴下し、次いで温度を120℃~160℃に上げて常圧下で1時間~4時間蒸留することによって水を除去する。その後、温度を150℃~200℃に上げて、10mmHg~100mmHgの絶対圧力下で減圧蒸留を0.5時間~3時間実施して、多価フェノール樹脂を得る。
【0053】
スチレンと多価フェノール樹脂との付加反応は、以下の条件下で実施できる。スチレンを、多価フェノール樹脂と酸触媒との混合物に90℃~140℃で1時間~4時間かけて滴下し、0.5時間~2時間反応させる。その後、温度を150℃~200℃に上げて、10mmHg~100mmHgの絶対圧力下で減圧蒸留を0.5時間~3時間を実施して、スチレン化多価フェノール樹脂を得る。
【0054】
2.多価フェノール樹脂のグリシジルエーテル
本発明は、多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルも提供し、当該グリシジルエーテルは、本発明の多価フェノール樹脂のグリシジルエーテル化を行うことで得られる。本発明の多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルは、HPLCスペクトルで特徴付けられる特徴を有し、本発明の多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルは、多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルの成分と第1成分とを含む。本発明のいくつかの実施形態では、多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルの成分は、スチレン化多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルの成分である。本発明のいくつかの実施形態では、スチレン化多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルの成分は、以下の化学式(III)で表される構造を有する。
[化学式(III)]
【0055】
【化4】
【0056】
化学式(III)において、R
【0057】
【化5】
であり、nは1~20の整数であり;mは0.1~3.0、例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、又は3.0、又は本明細書に記載の値のうち任意の2つの間の範囲内である。ここで、mは、1つのフェノール環に結合したスチリルの平均数を表わす。例えば、nが4であり、左端のフェノール環には2個のスチリル基が結合していて、他のフェノール環にはそれぞれ1個のスチリルが結合している場合、mは1.2である。
【0058】
2.1.多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルのHPLC及び13C-NMR特性
多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルの成分をHPLCで特性評価したとき、第1成分は27.1分~28.0分の範囲の保持時間で溶出する。すなわち、第1成分のクロマトグラフィーピークの波頂(ピーク値)は27.1分、27.2分、27.3分、27.4分、27.5分、27.6分、27.7分、27.8分、27.9分、若しくは28.0分にあり得、又は本明細書に記載の値のうち任意の2つの間の範囲内である。更に、スペクトルの対応する保持時間における第1成分のクロマトグラフィーピークの面積百分率は、多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルのクロマトグラフィーピークの総面積を基準にして、1.0%~20.0%の範囲である。例えば、スペクトルの対応する保持時間における第1成分のクロマトグラフィーピークの面積百分率は、1.0%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、2.0%、2.1%、2.2%、2.3%、2.4%、2.5%、2.6%、2.7%、2.8%、2.9%、3.0%、3.1%、3.2%、3.3%、3.4%、3.5%、3.6%、3.7%、3.8%、3.9%、4.0%、4.1%、4.2%、4.3%、4.4%、4.5%、4.6%、4.7%、4.8%、4.9%、5.0%、5.1%、5.2%、5.3%、5.4%、5.5%、5.6%、5.7%、5.8%、5.9%、6.0%、6.1%、6.2%、6.3%、6.4%、6.5%、6.6%、6.7%、6.8%、6.9%、7.0%、7.1%、7.2%、7.3%、7.4%、7.5%、7.6%、7.7%、7.8%、7.9%、8.0%、8.1%、8.2%、8.3%、8.4%、8.5%、8.6%、8.7%、8.8%、8.9%、9.0%、9.1%、9.2%、9.3%、9.4%、9.5%、9.6%、9.7%、9.8%、9.9%、10.0%、10.1%、10.2%、10.3%、10.4%、10.5%、10.6%、10.7%、10.8%、10.9%、11.0%、11.1%、11.2%、11.3%、11.4%、11.5%、11.6%、11.7%、11.8%、11.9%、12.0%、12.1%、12.2%、12.3%、12.4%、12.5%、12.6%、12.7%、12.8%、12.9%、13.0%、13.1%、13.2%、13.3%、13.4%、13.5%、13.6%、13.7%、13.8%、13.9%、14.0%、14.1%、14.2%、14.3%、14.4%、14.5%、14.6%、14.7%、14.8%、14.9%、15.0%、15.1%、15.2%、15.3%、15.4%、15.5%、15.6%、15.7%、15.8%、15.9%、16.0%、16.1%、16.2%、16.3%、16.4%、16.5%、16.6%、16.7%、16.8%、16.9%、17.0%、17.1%、17.2%、17.3%、17.4%、17.5%、17.6%、17.7%、17.8%、17.9%、18.0%、18.1%、18.2%、18.3%、18.4%、18.5%、18.6%、18.7%、18.8%、18.9%、19.0%、19.1%、19.2%、19.3%、19.4%、19.5%、19.6%、19.7%、19.8%、19.9%、若しくは20.0%、又は本明細書に記載の値のうち任意の2つの間の範囲内であり得る。多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルの第1成分の量を上記範囲内に制御することによって、多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルの耐熱性及び難燃性を改善でき、この多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルは、回路基板材料又は高周波接着剤に特に有用である。
【0059】
上記のHPLCは以下のように実施される。最初に、多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルを、長さ250mm、内径4.6mmで、粒径5μmの充填剤を有するODSカラムにロードする。次いで、HPLC分析を、以下の条件:検出器は波長254nmの紫外線を適用;カラム温度40℃;検出器温度35℃;移動相流速1.0mL/分;試料はアセトニトリル(CAN)を溶媒として調製し、試料濃度はACN中0.5重量%;注入量15μL、及び移動相の組成:洗浄時間の0分から10分目までの移動相は40体積%の水と60体積%のアセトニトリルの混合物;洗浄時間の10分目から30分目までの移動相は40体積%の水と60体積%のアセトニトリルの混合物から100体積%のアセトニトリルまで、時間に対して直線勾配で変化、洗浄時間の30分目から50分目までの移動相は100体積%のアセトニトリル、で実施する。
【0060】
本発明のいくつかの実施例では、第1成分は、以下の化学式(II)で表される化合物である。
[化学式(II)]
【0061】
【化6】
【0062】
本発明のいくつかの実施形態では、多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルを13C-NMRで特性評価したとき、多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルの13C-NMRスペクトルは、145ppm~160ppmのシグナルの積分値Aと、28ppm~38ppmのシグナルの積分値Bとを有し、AのBに対する比(A/B)は、0.5~3.0、例えば、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、若しくは3.0、又は本明細書に記載の値のうち任意の2つの間の範囲内であり得る。
【0063】
本発明において、13C-NMRは、溶媒としてジメチルスルホキシド、標準物質としてテトラメチルシランを使用して測定を実施することで得られる。本発明のいくつかの実施形態では、13C-NMRは、核磁気共鳴分光計を用いて以下の条件下で実施される:試験温度25℃、共鳴周波数400MHz、パルス幅5.3μs、待ち時間1秒、積算回数10000回、テトラメチルシランのシグナルを0ppmに設定。
【0064】
2.2.多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルのGC-MS特性及びその他の特性
本発明のいくつかの実施形態では、多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルをGC-MSで特性評価したとき、第1成分は18.000分~21.000分の範囲の保持時間で溶出する。すなわち、第1成分のクロマトグラフィーピークの波頂(ピーク値)は18.000分、18.100分、18.200分、18.300分、18.400分、18.500分、18.600分、18.700分、18.800分、18.900分、19.000分、19.100分、19.200分、19.300分、19.400分、19.500分、19.600分、19.700分、19.800分、19.900分、20.000分、20.100分、20.200分、20.300分、20.400分、20.500分、20.600分、20.700分、20.800分、20.900分、若しくは21.000分にあり得、又は本明細書に記載の値のうち任意の2つの間の範囲内である。第1成分のフラグメンテーションパターンは、51、65、77、89、91、103、104、105、115、130、165、178、193、及び208からなる群から選択される質量電荷比(m/z)において1つ以上のシグナルを含む。
【0065】
上記のGC-MS分析は以下のように実施され、GC-MS分析実施の前に、分析しようとする多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルの試料に以下の前処理を施すことが好ましい。最初に、多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルの試料を70℃のオーブン内で1時間加熱し、試料を均一にする。次いで、試料をアセトン(すなわち、溶媒)と混合して重量パーセント濃度1%の溶液を調製して、試験試料の前処理を完了する。
【0066】
前処理した多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルの試料をガスクロマトグラフにロードする。ガスクロマトグラフには、長さ30m、内径0.25mm、膜厚0.25μmのPhenomenex Zebron ZB-5キャピラリーカラム(固定相組成:5%フェニル、95%ジメチルポリシロキサン)を取り付ける。キャリアガスのヘリウム流量1.8mL/分、及び入口温度350℃で、ガスクロマトグラフのオーブンを以下のように段階的に加熱する:温度を50℃で5分間保持、次いで50℃から340℃まで加熱速度10℃/分で昇温、340℃で26分間保持する。その後、ガスクロマトグラフを質量分光計に接続し、GC-MS分析を以下の条件下で実施する:電子エネルギー70eV、イオン源温度250℃、四重極質量フィルタの使用、界面温度340℃、質量スキャン範囲29.0ダルトン~1090ダルトン、溶媒遅延時間1.85分、及びスキャン速度5000u/sec。
【0067】
本発明のいくつかの実施形態では、多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルは、更に、200g/eq~400g/eqの範囲のEEW、例えば、200g/eq、205g/eq、210g/eq、215g/eq、220g/eq、225g/eq、230g/eq、235g/eq、240g/eq、245g/eq、250g/eq、255g/eq、260g/eq、265g/eq、270g/eq、275g/eq、280g/eq、285g/eq、290g/eq、295g/eq、300g/eq、305g/eq、310g/eq、315g/eq、320g/eq、325g/eq、330g/eq、335g/eq、340g/eq、345g/eq、350g/eq、355g/eq、360g/eq、365g/eq、370g/eq、375g/eq、380g/eq、385g/eq、390g/eq、395g/eq、若しくは400g/eqのEEW、又は本明細書に記載の値のうち任意の2つの間の範囲内のEEWを有する。
【0068】
本発明のいくつかの実施形態では、多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルは、300ppmのHyClを含む。例えば、HyClの含有量は、300ppm、290ppm、280ppm、270ppm、260ppm、250ppm、240ppm、230ppm、220ppm、210ppm、200ppm、190ppm、180ppm、170ppm、160ppm、150ppm、140ppm、130ppm、120ppm、110ppm、100ppm、90ppm、80ppm、70ppm、60ppm、50ppm、40ppm、30ppm、20ppm、10ppm、5ppm、1ppm、若しくは0ppm、又は本明細書に記載の値のうち任意の2つの間の範囲内であり得る。
【0069】
本発明のいくつかの実施形態では、多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルは、更に、0.040eq/100g~0.10eq/100gの範囲のHV、例えば0.040eq/100g、0.045eq/100g、0.050eq/100g、0.055eq/100g、0.060eq/100g、0.065eq/100g、0.070eq/100g、0.075eq/100g、0.080eq/100g、0.085eq/100g、0.090eq/100g、0.095eq/100g、若しくは0.10eq/100gのHV、又は本明細書に記載の値のうち任意の2つの間の範囲内のHVを有する。
【0070】
本発明のいくつかの実施形態では、多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルは、更に、0003meq/g~0.015meq/gのα-グリコールを含む。例えば、α-グリコールの含有量は、0.003meq/g、0.004meq/g、0.005meq/g、0.006meq/g、0.007meq/g、0.008meq/g、0.009meq/g、0.01meq/g、0.011meq/g、0.012meq/g、0.013meq/g、0.014meq/g、若しくは0.015meq/g、又は本明細書に記載の値のうち任意の2つの間の範囲内であり得る。
【0071】
2.3.多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルの調製
本発明の多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルは、多価フェノール樹脂をエピハロヒドリンと反応させることによって調製できる。例えば、スチレン化多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルは、スチレン化多価フェノール樹脂をエピハロヒドリンと反応させることで調製でき、又はスチレン化多価フェノール樹脂をハロゲン化アリルと反応させてスチレン化多価フェノール樹脂のアリルエーテルを形成した後、スチレン化多価フェノール樹脂のアリルエーテルを過酸化物と反応させることで調製できる。エピハロヒドリンの例としては、エピクロロヒドリンが挙げられるが、これに限定されない。ハロゲン化アリルの例としては、塩化アリルが挙げられるが、これに限定されない。
【0072】
スチレン化多価フェノール樹脂とエピクロロヒドリンとの反応は、アルカリ金属水酸化物の存在下で実施できる。アルカリ金属水酸化物の例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化リチウムが挙げられるが、これに限定されない。
【0073】
具体的には、スチレン化多価フェノール樹脂とエピクロロヒドリンとの反応は、以下の条件下で実施できる。スチレン化多価フェノール樹脂と、エピクロロヒドリンと、溶媒とを、常圧下で混合して、混合物を得る。混合物を、170mmHg~200mmHgの絶対圧力下で60~80℃に加熱し、次いで、混合物を60℃~80℃に維持しながら、アルカリ金属水酸化物を滴下して、5時間~10時間反応させる。未反応のエピクロロヒドリン及び溶媒を真空により回収し、生成物を溶媒で洗浄する。その後、真空により溶媒を除去し、スチレン化多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルを得る。
【0074】
別の方法として、スチレン化多価フェノール樹脂とエピクロロヒドリンとの反応は、以下の条件下で実施できる。スチレン化多価フェノール樹脂と、エピクロロヒドリンと、カップリング剤とを、常圧下、20℃~50℃で混合して、均一組成の混合物を形成する。次いで、混合物を40時間~60時間以内で60℃~90Cに加熱し、上記温度を12時間~20時間維持する。その後、アルカリ金属水酸化物を、50℃~70℃、5時間~7時間以内で混合物に滴下する。混合物の共沸蒸留及び凝縮を、50mmHg~150mmHgの絶対圧力で0.5時間~2時間維持することで脱ハロゲン化水素を実施し、この共沸蒸留及び凝縮の間に、有機相を回収して反応器に戻す。次に、未反応のエピクロロヒドリンを減圧下で除去した後、脱ハロゲン化水素を再度実施し、アルカリ金属水酸化物を60℃~100℃の常圧下で添加する。得られた粗生成物を溶媒で洗浄し、次いで溶媒を減圧下で濾過及び除去して、スチレン化多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルを得る。
【0075】
3.硬化性組成物
本発明の多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルは、硬化して、誘電体材料又は高周波接着剤を形成し得る。従って、本発明は、上記の多価フェノール樹脂のグリシジルエーテル(a1)と、硬化剤(b1)とを含む、硬化性組成物も提供する。
【0076】
上記硬化剤の例としては、グアニジンベースの硬化剤、無水物ベースの硬化剤、多価フェノールベースの硬化剤、芳香族アミンベースの硬化剤、及び脂肪族アミンベースの硬化剤が挙げられるがこれらに限定されない。グアニジンベースの硬化剤の例には、ジシアンジアミドが挙げられるがこれらに限定されない。無水物ベースの硬化剤の例としては、無水フタル酸、テトラヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルビシクロへプテンジカルボン酸無水物、ドデシルコハク酸無水物、及びトリメリット酸無水物が挙げられるがこれらに限定されない。多価フェノールベースの硬化剤の例としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、2,2’-ジフェノール、4,4’-ジフェノール、ヒドロキノン、レゾルシノール、ナフタレンジオール、トリ-(4-ヒドロキシフェニル)メタン、及び1,1,2,2,-テトラ(4-ヒドロキシフェニル)エタンが挙げられるがこれらに限定されない。芳香族アミンベースの硬化剤の例としては、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、m-フェニレンジアミン、及びp-キシレンジアミンが挙げられるがこれらに限定されない。脂肪族アミンベースの硬化剤の例としては、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、及びジエチレンテトラアミンが挙げられるがこれらに限定されない。添付の実施例では、ジシアンジアミドが硬化剤として使用される。
【0077】
4.多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルの利用
本発明の硬化性組成物は、回路基板材料の調製に使用できる。したがって、本発明は、銅張積層板も提供する。銅張積層板は、上記の硬化性組成物を硬化することで得られる誘電体材料(a2)を含む、誘電体層と、上記誘電体層の表面に配置された銅箔(b2)と、を含む。本発明の銅張積層板は、288℃はんだフロート試験に合格でき、優れた剥離強度、難燃性及び耐熱性(例えば、低いガラス転移温度(Tg)、特に低い吸水率及び低い熱膨張係数(CTE))を有する。
【0078】
加えて、本発明の多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルは、高周波接着剤の材料としても使用できる。例えば、高周波接着フィルムは、多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルと、ポリテトラフルオロエチレンと、ポリイミドと、硬化剤と、硬化促進剤とを混合して混合物を形成し、次いで当該混合物を剥離フィルム上にコーティングし、コーティングした混合物を焼付することによって得られる。硬化剤の例としては、イミダゾール、アミン、フェノール、及び有機金属塩が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。本発明の高周波接着剤は、288℃はんだフロート試験に合格でき、優れたf剥離強度並びに誘電特性を有する。
【0079】
5.実施例
【0080】
5.1.測定方法
本出願を、以下の実施形態によって更に例証する。その試験装置及び方法は以下のとおりである。
【0081】
[HPLC分析]
多価フェノール樹脂又は多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルを、高速液体クロマトグラフ(型番:Waters600)に注入する。高速液体クロマトグラフには、長さ250mm、内径4.6mmで、粒径5μmの充填剤が入ったODSカラムが取り付けられている。HPLC分析は、以下の条件:検出器は波長254nmの紫外線を適用;カラム温度40℃;検出器温度35℃;移動相流速1.0mL/分;試料はアセトニトリル(ACN)を溶媒として調製し、試料濃度はACN中0.5重量%;注入量15μL;及び移動相の組成:洗浄時間の0分から10分目までの移動相は40体積%の水と60体積%のアセトニトリルの混合物;洗浄時間の10分目から30分目までの移動相は40体積%の水と60体積%のアセトニトリルの混合物から100体積%のアセトニトリルまで、時間に対して直線勾配で変化、洗浄時間の30分目から50分目までの移動相は100体積%のアセトニトリル、で実施する。移動相を直線勾配で変化させることの意味は以下のとおりである:40体積%の水と60体積%のアセトニトリルとの混合物を10分目の開始時に使用する;30体積%の水と70体積%のアセトニトリルとの混合物を15分目の開始時に使用する;20体積%の水と80体積%のアセトニトリルとの混合物を20分目の開始時に使用する;10体積%の水と90体積%のアセトニトリルとの混合物を25分目の開始時に使用する;100体積%のアセトニトリルを30分目の開始時に使用する。
【0082】
[13C-NMR分析]
10mgの多価フェノール樹脂又は多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルを0.75mLのジメチルスルホキシドに添加して、試験試料を調製する。テトラメチルシランを、化学シフト参照用の標準物質として試験試料に添加し、試験試料を核磁気共鳴分光計(型番:DRX-400、Brukerより入手可能)を用いて測定して、試験試料の13C-NMRスペクトルを得る。測定条件は以下のとおりである:試験温度25℃、共鳴周波数400MHz、パルス幅5.3μs、待ち時間1秒、積算回数(NMR)10000、及びテトラメチルシランのシグナルを0ppmに設定。
【0083】
[GC-MS分析]
多価フェノール樹脂又は多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルの試料を、70℃のオーブン内で1時間加熱し、試料を均一にする。次いで、試料をアセトン(すなわち、溶媒)と混合して重量パーセント濃度1%の溶液を調製して、試験試料の前処理を完了する。
【0084】
前処理した試料をガスクロマトグラフにロードする。ガスクロマトグラフには、長さ30m、内径0.25mm、膜厚0.25μmのPhenomenex Zebron ZB-5キャピラリーカラム(固定相組成:5%フェニル、95%ジメチルポリシロキサン)を取り付ける。キャリアガスのヘリウム流量1.8mL/分、及び入口温度350℃で、ガスクロマトグラフのオーブンを以下のように段階的に加熱する:温度を50℃で5分間保持、次いで50℃から340℃まで加熱速度10℃/分で昇温、340℃で26分間保持する。その後、ガスクロマトグラフを質量分光計に接続し、GC-MS分析を以下の条件下で実施する:電子エネルギー70eV、イオン源温度250℃、四重極質量フィルタの使用、界面温度340℃、質量スキャン範囲29.0ダルトン~1090ダルトン、溶媒遅延時間1.85分、及びスキャン速度5000u/sec。
【0085】
[水酸基当量測定]
最初に、多価フェノール樹脂の水酸基価(単位:mgKOH/g)を、HG/T2709に記載のアセチル化法に従って決定する。次に、水酸基価を、次式により水酸基当量(単位:g/eq)に変換する。
【0086】
[軟化点温度測定]
軟化点温度は、JIS-K-2207に記載の環球法に従って測定される。
【0087】
[エポキシ当量測定]
多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルのエポキシ当量は、ASTM-D1652に従って測定される。
【0088】
[加水分解性塩素含有量測定]
多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルの加水分解性塩素含有量は、ASTM-D1726に従って測定される。
【0089】
[α-グリコール含有量測定]
多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルのα-グリコール含有量は、JIS-K-7146に従って測定される。
【0090】
[ガードナー色数測定]
多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルのガードナー色数は、ASTM-D6166に従って測定され、ここでクレゾール中のポリフェノール縮合物濃度は5重量%であり、メタノール中の多官能エポキシ樹脂の濃度は17.5重量%である。
【0091】
[水酸基価測定]
多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルの水酸基価(HV)は、ASTM-E222 Method Cに従って測定され、水酸基価は次式に従って変換される。
式中、
Cは、水酸化ナトリウム標準溶液の含有量を表し、0.5meq/mLであり、EEWは、試験試料のエポキシ当量(単位:g/eq)を表し、Vは、ブランクテストに必要な水酸化ナトリウム標準溶液のミリリットル数を表し、Vは、試験試料の試験に必要な水酸化ナトリウム標準溶液のミリリットル数を表し、Wは、試験試料の重量(単位:グラム)を表わす。
【0092】
[288℃はんだフロート試験]
288℃はんだフロート試験は、JIS-C-6481に従って実施され、銅張積層板又は高周波接着剤を288℃のはんだ炉に浸漬し、銅張積層板又は高周波接着剤の層剥離に必要な時間を記録する。基準は以下のとおりである。60秒以内に銅張積層板の層間剥離が起きた場合、銅張積層板が288℃はんだフロート試験に不合格であることを意味し、結果は「不合格」と記録される。60秒以内に銅張積層板の層間剥離が起こらなければ、銅張積層板が288℃はんだフロート試験に合格であることを意味し、結果は「合格」と記録される。60秒以内に高周波接着剤の層間剥離が起きた場合、高周波接着剤が288℃はんだフロート試験に不合格であることを意味し、結果は「不合格」と記録される。60秒以内に高周波接着剤の層間剥離が起こらなければ、高周波接着剤が288℃はんだフロート試験に合格であることを意味し、結果は「合格」と記録される。
【0093】
[剥離強度試験]
銅張積層板又は高周波接着剤の剥離強度は、IPC-TM-650-2.4.8に従って測定する。剥離強度は、銅箔と積層された誘電体層との間の接着強度、又は銅箔と積層された高周波接着フィルムとの間の接着強度を指す。この試験では、剥離強度は、積層誘電体層又は積層接着フィルムの表面から銅箔を1回垂直に剥離するために必要な力として表される。剥離強度の単位は、キログラム力/センチメートル(kgf/cm)である。
【0094】
[難燃性試験]
難燃性試験は、UL94V(垂直燃焼)に従って実施し、銅張積層板を垂直に保持してブンゼンバーナーを用いて燃焼し、銅張積層板が燃焼を停止するまでに要する時間(単位:秒)を記録する。
【0095】
[吸水率試験]
最初に、銅張積層板の重量を測定する。次いで、銅張積層板を100℃の水の中に7日間置き、この水に7日間浸漬した後の銅張積層板の重量を測定して、増加した重量の比率(重量%)を計算する。
【0096】
[分解温度(Td)試験]
銅張積層板のTd(すなわち、5%重量損失温度)は、IPC-TM-650-2.3.40に従って測定する。Tdの測定に使用する装置は、熱重量分析装置(型番:Q500、TA Instrumentsより入手可能)で、スキャン速度は10℃/分である。
【0097】
[ガラス転移温度(Tg)試験]
銅張積層板のTgは、IPC-TM-650-2.44.4に従って測定する。Tgの測定に使用する装置は、動的機械分析装置(型番:Q800、TA Instrumentsより入手可能)で、スキャン速度は2℃/分である。
【0098】
[熱膨張係数(CTE)試験]
銅張積層板のCTE-α1及びCTE-α2は、IPC-TM-650-2.4.24に従って測定する。CTE-α1及びCTE-α2の測定に使用する装置は、熱機械分析装置(型番:TMA 7、Perkin Elmerより入手可能)であり、CTE-α1はTgよりも低い温度におけるCTEで、CTE-α2はTgよりも高い温度におけるCTEである。
【0099】
[誘電特性試験]
高周波接着フィルムの誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)は、IPC-TM-2.5.5.9に従って、10GHzの動作周波数下で測定する。
【0100】
5.2.スチレン化多価フェノール樹脂の合成
【0101】
[合成例1-1]
最初に、スチレン化フェノールの精製を実施した。1リットルの四つ口ガラス反応釜に、凝縮管、回収瓶、及び真空装置を取り付けた。300gのスチレン化モノフェノール(Sanko Chemicalより入手可能、純度:96%、OH当量:201g/eq)をガラス釜に入れ、減圧蒸留精製を実施した。その際、絶対圧力を20mmHgまで低下させ、190℃~196℃の範囲の沸点を有する物質を回収した。回収した物質は重さ275gであった。精製スチレン化モノフェノールは、GC分析により、純度99.1%、OH当量199g/eqであった。
【0102】
次に、スチレン化多価フェノール樹脂を、スチレン化モノフェノールとホルムアルデヒドとを反応させることによって合成した。2000gの精製スチレン化モノフェノール(純度:99.1%、OH当量:199g/eq、9.95mol)と、5.3gのp-トルエンスルホン酸一水和物(0.03mol)とを、1リットルの四つ口ガラス反応釜に入れ、温度を85℃に設定した。116.5gの37重量%ホルムアルデヒド水溶液(1.44mol)を、上記四つ口ガラス反応釜に2時間以内に連続的に滴下し、温度を140℃に上げ、常圧で2時間蒸留して水を除去した。2.3gの49重量%NaOH水溶液を添加して中和し、20mmHgの絶対圧力下で減圧蒸留を実施し、温度を195℃まで上げて1時間保持して、合成例1-1のスチレン化多価フェノール樹脂(OH当量:209g/eq)を329g得た。
【0103】
[合成例1-2]
最初に、多価フェノール樹脂の合成を実施した。1223.4gのフェノール(13mol)と、4.3gのシュウ酸二水和物(oxalic acid dehydrate)(0.03mol)とを、3リットルの四つ口ガラス反応釜に入れ、温度を90℃に設定した。105.4gの37重量%ホルムアルデヒド水溶液(1.3mol)を、上記四つ口ガラス反応釜に2時間以内で連続滴下し、温度を140℃に上げ、常圧で2時間蒸留して水を除去した。次いで、30mmHgの絶対圧力下で減圧蒸留を実施し、温度を170℃まで上げて1時間保持して、214.0gの多価フェノール樹脂(OH当量:103g/eq)を得た。
【0104】
次いで、多価フェノール樹脂をスチレンで改質した。200gの上記多価フェノール樹脂(OH当量:103g/eq、1.9mol)と、0.18gのメタンスルホン酸(596ppm)とを、1リットルの四つ口ガラス反応釜に入れ、温度を110℃に設定した。102gのスチレン(1.0mol)を上記四つ口ガラス反応釜に2時間以内で連続滴下し、次いで、1時間反応させた後、3.2gの5重量%NaHCO水溶液を添加して中和した。次に、30mmHgの絶対圧力下で減圧蒸留を実施し、温度を170℃まで上げて1時間保持して、合成例1-2のスチレン化多価フェノール樹脂(OH当量:156g/eq)を296g得た。
【0105】
[合成例1-3]
合成例1-3のスチレン化多価フェノール樹脂の調製には、合成例1-2の調製手順を繰返したが、異なる点として、多価フェノール樹脂のスチレンでの改質において、メタンスルホン酸の量は0.8g(2504ppm)であり、150gのトルエンを溶媒として追加的に添加し、温度を120℃に設定し、連続滴下したスチレンの量は119.4g(1.1mol)であり、0.7gの49重量%NaOH水溶液を中和に使用した。得られた合成例1-3のスチレン化多価フェノール樹脂は、重量315gで、OH当量166g/eqであった。
【0106】
[合成例1-4]
合成例1-4のスチレン化多価フェノール樹脂の調製には、合成例1-2の調製手順を繰返したが、異なる点として、多価フェノール樹脂のスチレンでの改質において、メタンスルホン酸の量は0.4g(982ppm)であり、連続滴下したスチレンの量は207.5g(2.0mol)であり、7gの5重量%NaHCO水溶液を中和に使用した。得られた合成例1-4のスチレン化多価フェノール樹脂は、重量401gで、OH当量212g/eqであった。
【0107】
[合成例1-5]
合成例1-5のスチレン化多価フェノール樹脂の調製には、合成例1-2の調製手順を繰返したが、異なる点として、多価フェノール樹脂のスチレンでの改質において、メタンスルホン酸の量は0.4g(891ppm)であり、連続滴下したスチレンの量は249g(2.4mol)であり、7gの5重量%NaHCO水溶液を中和に使用した。得られた合成例1-5のスチレン化多価フェノール樹脂は、重量442gで、OH当量234g/eqであった。
【0108】
[合成例1-6]
合成例1-6のスチレン化多価フェノール樹脂の調製には、合成例1-2の調製手順を繰返したが、異なる点として、多価フェノール樹脂のスチレンでの改質において、メタンスルホン酸の量は0.9g(1700ppm)であり、連続滴下したスチレンの量は311.3g(3.0mol)であり、15.2gの5重量%NaHCO水溶液を中和に使用した。得られた合成例1-6のスチレン化多価フェノール樹脂は、重量504gで、OH当量266g/eqであった。
【0109】
[合成例1-7]
合成例1-7のスチレン化多価フェノール樹脂の調製には、合成例1-2の調製手順を繰返したが、異なる点として、多価フェノール樹脂のスチレンでの改質において、メタンスルホン酸の量は1.5g(2500ppm)であり、温度は100℃に設定し、連続滴下したスチレンの量は400g(3.8mol)であり、1.3gの49重量%NaOH水溶液を中和に使用した。得られた合成例1-7のスチレン化多価フェノール樹脂は、重量588gで、OH当量309g/eqであった。
【0110】
[合成例1-8]
合成例1-8のスチレン化多価フェノール樹脂の調製には、合成例1-2の調製手順を繰返したが、異なる点として、多価フェノール樹脂のスチレンでの改質において、メタンスルホン酸を2.4g(6950ppm)のp-トルエンスルホン酸一水和物で置き換え、10gの水を追加的に溶媒として添加し、温度を85℃に設定し、連続滴下したスチレンの量は145.3g(1.4mol)であり、1gの49重量%NaOH水溶液を中和に使用した。得られた合成例1-8のスチレン化多価フェノール樹脂は、重量339gで、OH当量178g/eqであった。
【0111】
[合成例1-9]
合成例1-9のスチレン化多価フェノール樹脂の調製には、合成例1-2の調製手順を繰返したが、異なる点として、多価フェノール樹脂のスチレンでの改質において、メタンスルホン酸を1g(2896ppm)のp-トルエンスルホン酸一水和物で置き換え、40gの酢酸イソプロピルを追加的に溶媒として添加し、温度を120℃に設定し、連続滴下したスチレンの量は145.3g(1.4mol)であり、0.4gの49重量%NaOH水溶液を中和に使用した。得られた合成例1-9のスチレン化多価フェノール樹脂は、重量340gで、OH当量178g/eqであった。
【0112】
[比較合成例1-1]
400gのスチレン化モノフェノール(純度:96%、OH当量:201g/eq)と、58.7gの92重量%ポリオキシメチレンと、12gの水とを、1リットルの四つ口ガラス反応釜に入れ、温度を80℃に設定した。13.7gの10重量%p-トルエンスルホン酸水溶液を上記四つ口ガラス反応釜に30分以内で連続滴下した後、反応を95℃~100℃で4時間実施した。その後、3gの10重量%NaOH水溶液を添加して中和し、1.8gの10重量%シュウ酸水溶液を添加し、温度を165℃に上げて水を除去した。次に、5mmHgで温度を170℃まで上げ、比較合成例1-1のスチレン化多価フェノール樹脂(OH当量:232g/eq)を421g得た。
【0113】
[比較合成例1-2]
105gの多価フェノール(型番:PF-5080、OH当量:105g/eq、1.0mol、Chang Chun Plasticsより入手可能)と、5.3gのトルエンと、0.078g(299ppm)のp-トルエンスルホン酸一水和物とを、1リットルの四つ口ガラス反応釜に入れ、温度を100℃に設定した。156.0gのスチレン(1.5mol)を上記四つ口ガラス反応釜に3時間以内で連続滴下し、反応を2時間実施した後、0.071gの30重量%NaCO水溶液を添加して中和した。次に、反応釜内の混合物を485gのメチルイソブチケトンに溶解し、次いで、80℃の水で5回洗浄した。その後、5mmHgの絶対圧力下で減圧蒸留を実施して溶媒を除去し、比較合成例1-2のスチレン化多価フェノール樹脂(OH当量:261g/eq)を248g得た。
【0114】
[比較合成例1-3]
比較合成例1-3のスチレン化多価フェノール樹脂の調製には、比較合成例1-2の調製手順を繰り返したが、異なる点として、p-トルエンスルホン酸一水和物の量は0.047g(299ppm)であり、スチレンの量は52g(0.5mol)であり、NaCO水溶液の量は0.043gであった。得られた比較合成例1-3のスチレン化多価フェノール樹脂は、重量154gで、OH当量157g/eqであった。
【0115】
[比較合成例1-4]
比較合成例1-4のスチレン化多価フェノール樹脂の調製には、比較合成例1-2の調製手順を繰り返したが、異なる点として、p-トルエンスルホン酸一水和物を0.551g(1500ppm)のメタンスルホン酸で置き換え、スチレンの量は262g(2.5mol)であり、NaCO水溶液の量は0.5gであった。得られた比較合成例1-4のスチレン化多価フェノール樹脂は、重量361gで、OH当量367g/eqであった。
【0116】
[比較合成例1-5]
比較合成例1-4のスチレン化多価フェノール樹脂の調製には、比較合成例1-2の調製手順を繰り返したが、異なる点として、多価フェノールPF-5080を200gの合成例1-2の多価フェノール(OH当量:103g/eq、1.9mol)で置き換え、p-トルエンスルホン酸一水和物を0.25g(962ppm)のメタンスルホン酸で置き換え、スチレンの量は60g(0.6mol)であり、NaCO水溶液の量は0.235gであった。得られた比較合成例1-5のスチレン化多価フェノール樹脂は、重量254gで、OH当量135g/eqであった。
【0117】
合成例1-1~1-9及び比較合成例1-1~1-5のスチレン化多価フェノール樹脂の特性として、水酸基当量、軟化点、HPLCスペクトルの対応する保持時間における第1成分のクロマトグラフィーピークの面積百分率、及び13C-NMRスペクトルにおけるA/B値等を上記の測定方法に従って測定した。結果を表1に示す。
【0118】
【表1】
【0119】
5.3.スチレン化多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルの合成
【0120】
[合成例2-1]
最初に、3リットルの四つ口ガラス反応釜に凝縮油水分離管、真空装置、供給管、及び電気撹拌棒を取り付け、反応釜を定温電気加熱パックで覆った。次いで、300g(1.46mol)の合成例1-1のスチレン化多価フェノール樹脂と、550g(5.94mol)のエピクロロヒドリン(TRIPLEX CHEMICAL CORP.より入手可能)と、179gの酢酸イソプロピルとを、反応釜に入れ、常圧下で混合して、均質溶液を得た。その後、190mmHgの絶対圧力下で温度を70℃に上げ、117.0gの49重量%NaOH水溶液を上記均質溶液に滴下し、温度を70℃で7時間維持した。反応完了後、20mmHgの絶対圧力下で減圧蒸留を実施し、温度を170℃に上げて、エピクロロヒドリンと酢酸イソプロピルを回収した。次いで、トルエン及び純水を添加して洗浄を実施し、油と水との間の剥離における不溶性加水分解物を目視点検し、記録した。3回洗浄した後、20mmHgの絶対圧力及び170℃で減圧蒸留を実施することで、有機相中の溶媒を除去して、合成例2-1のスチレン化多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルを370g得た。
【0121】
[合成例2-2]
合成例2-2のスチレン化多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルの調製には、合成例2-1の調製手順を繰返したが、異なる点として、300g(1.93mol)の合成例1-2のスチレン化多価フェノール樹脂、816.6g(8.83mol)のエピクロロヒドリン、及び152gの49重量%NaOH水溶液を使用した。得られた合成例2-2のスチレン化多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルは、重量396gであった。
【0122】
[合成例2-3]
合成例2-3のスチレン化多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルの調製には、合成例2-1の調製手順を繰返したが、異なる点として、300g(1.83mol)の合成例1-3のスチレン化多価フェノール樹脂、510g(5.51mol)のエピクロロヒドリン、及び145gの49重量%NaOH水溶液を使用した。得られた合成例2-3のスチレン化多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルは、重量390gであった。
【0123】
[合成例2-4]
合成例2-4のスチレン化多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルの調製には、合成例2-1の調製手順を繰返したが、異なる点として、300g(0.97mol)の合成例1-7のスチレン化多価フェノール樹脂、850g(9.19mol)のエピクロロヒドリン、及び77gの49重量%NaOH水溶液を使用した。得られた合成例2-4のスチレン化多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルは、重量343gであった。
【0124】
[合成例2-5]
合成例2-5のスチレン化多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルの調製には、合成例2-1の調製手順を繰返したが、異なる点として、300g(1.69mol)の合成例1-8のスチレン化多価フェノール樹脂、816.6g(8.83mol)のエピクロロヒドリン、及び133gの49重量%NaOH水溶液を使用し、酢酸イソプロピルを使用しなかった。得られた合成例2-5のスチレン化多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルは、重量382gであった。
【0125】
[合成例2-6]
最初に、3リットル四つ口反応器を用意し、以下のデバイスを取り付けた:温度及び圧力を制御及び表示するためのデバイス、及び水とエピクロロヒドリンの共蒸留混合物を凝縮し、共蒸留混合物と有機相と水相とに分離するためのデバイス。300g(1.69mol)の合成例1-9のスチレン化多価フェノール樹脂と、816.6g(8.83mol)のエピクロロヒドリンと、2.7g(多価フェノール樹脂を基準にして9,000ppm)のベンジルトリエチル塩化アンモニウム(カップリング剤として)を反応器に添加して混合物を得、この混合物を常圧及び40℃で撹拌して均質溶液を形成した。次に、50時間以内に温度を40℃から75℃に上げ、75℃で16時間維持した。その後、脱ハロゲン化水素工程を実施した。当該工程では133gの49重量%NaOH水溶液を、一定速度で60℃の混合物に6時間以内で添加し、その間に、100torrの絶対圧力で、反応系に含まれる水を共沸蒸留及び凝縮した。凝縮共沸混合物を有機相と水相とに分離し、有機相(主にエピクロロヒドリン)は回収して反応器に戻し、水相は廃棄した。NaOH水溶液の添加完了後、反応系を1時間維持して、脱ハロゲン化水素工程を達成した。未反応のエピクロロヒドリンを、20mmHgの絶対圧力及び170℃での減圧蒸留によって除去した。脱ハロゲン化水素工程を繰り返したが、異なる点として、4.0gの49重量%NaOH水溶液を、80℃及び常圧下で2時間以内に混合物に添加した。次に、得られた粗生成物に含まれる塩化ナトリウムをトルエン及びイオン水に溶解し、水で洗浄した。得られた混合物から、20mmHgの絶対圧力及び170℃での減圧蒸留によって溶媒を除去して、合成例2-6のスチレン化多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルを381g得た。
【0126】
[比較合成例2-1]
比較合成例2-1のスチレン化多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルの調製には、合成例2-1の調製手順を繰返したが、異なる点として、300g(1.29mol)の比較合成例1-1のスチレン化多価フェノール樹脂、418.7g(4.53mol)のエピクロロヒドリン、及び103gの49重量%NaOH水溶液を使用した。得られた比較合成例2-1のスチレン化多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルは、重量361gであった。
【0127】
[比較合成例2-2]
比較合成例2-2のスチレン化多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルの調製には、合成例2-1の調製手順を繰返したが、異なる点として、300g(1.91mol)の比較合成例1-3のスチレン化多価フェノール樹脂、819g(8.85mol)のエピクロロヒドリン、及び153gの49重量%NaOH水溶液を使用した。得られた比較合成例2-2のスチレン化多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルは、重量394gであった。
【0128】
[比較合成例2-3]
比較合成例2-3のスチレン化多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルの調製には、合成例2-1の調製手順を繰返したが、異なる点として、300g(0.82mol)の比較合成例1-4のスチレン化多価フェノール樹脂、343.8g(3.72mol)のエピクロロヒドリン、及び65.5gの49重量%NaOH水溶液を使用した。得られた比較合成例2-3のスチレン化多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルは、重量335gであった。
【0129】
[比較合成例2-4]
比較合成例2-4のスチレン化多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルの調製には、合成例2-1の調製手順を繰返したが、異なる点として、300g(2.24mol)の比較合成例1-5のスチレン化多価フェノール樹脂、809g(8.74mol)のエピクロロヒドリン、及び179gの49重量%NaOH水溶液を使用した。得られた比較合成例2-4のスチレン化多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルは、重量412gであった。
【0130】
合成例2-1~2-6及び比較合成例2-1~2-4のスチレン化多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルの特性として、エポキシ当量(EEW)、加水分解性塩素(HyCl)含有量、水酸基価(HV)、α-グリコール含有量、ガードナー色指数、HPLCスペクトルの対応する保持時間におけるf第1成分のクロマトグラフィーピークの面積百分率、及び13C-NMRスペクトルにおけるA/B値等を上記の測定方法に従って測定した。結果を表2に示す。
【0131】
【表2】
【0132】
5.4.銅張積層板の調製
【0133】
[実施例1]
最初に、240gの合成例2-1のスチレン化多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルと、97gのジシアンジアミド希釈液(メタノールに溶解したジシアンジアミド、濃度:10重量%、Juyi Chemicalより入手可能)と、1.64gの2-メチルイミダゾール希釈液(メタノールに溶解した2-メチルイミダゾール、濃度:10重量%、Juyi Chemicalより入手可能)と、60gのアセトンとを、撹拌機を用いて混合して、樹脂組成物を形成した。ガラス繊維布(型番:GF-7628、厚さ:0.175cm)を上記樹脂組成物に浸漬し、160℃で乾燥して、プリプレグを形成した。その後、5枚のプリプレグを重ね、重ねたプリプレグの2つの外面に2枚の銅箔(35μm)をそれぞれ重ねた。次いで、上記の重ねたプリプレグに210℃及び25kg/cmで高温ホットプレス硬化処理を実施して、実施例1の銅張積層板を得た。
【0134】
[実施例2]
実施例2の銅張積層板の調製には、実施例1の調製手順を繰返したが、異なる点として、樹脂組成物を、240gの合成例2-2のスチレン化多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルと、114gのジシアンジアミド希釈液(メタノールに溶解したジシアンジアミド、濃度:10量%)と、1.75gの2-メチルイミダゾール希釈液(メタノールに溶解した2-メチルイミダゾール、濃度:10重量%)と、60gのアセトンと、を使用して形成した。
【0135】
[実施例3]
実施例3の銅張積層板の調製には、実施例1の調製手順を繰返したが、異なる点として、樹脂組成物を、240gの合成例2-4のスチレン化多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルと、75gのジシアンジアミド希釈液(メタノールに溶解したジシアンジアミド、濃度:10量%)と、1.55gの2-メチルイミダゾール希釈液(メタノールに溶解した2-メチルイミダゾール、濃度:10重量%)と、60gのアセトンと、を使用して形成した。
【0136】
[実施例4]
実施例4の銅張積層板の調製には、実施例1の調製手順を繰返したが、異なる点として、樹脂組成物を、240gの合成例2-6のスチレン化多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルと、115gのジシアンジアミド希釈液(メタノールに溶解したジシアンジアミド、濃度:10量%)と、1.74gの2-メチルイミダゾール希釈液(メタノールに溶解した2-メチルイミダゾール、濃度:10重量%)と、60gのアセトンと、使用して形成した。
【0137】
[比較例1]
比較例1の銅張積層板の調製には、実施例1の調製手順を繰返したが、異なる点として、樹脂組成物を、240gの比較合成例2-1のスチレン化多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルと、100gのジシアンジアミド希釈液(メタノールに溶解したジシアンジアミド、濃度:10量%)と、1.65gの2-メチルイミダゾール希釈液(メタノールに溶解した2-メチルイミダゾール、濃度:10重量%)と、60gのアセトンと、を使用して形成した。
【0138】
[比較例2]
比較例2の銅張積層板の調製には、実施例1の調製手順を繰返したが、異なる点として、樹脂組成物を、240gの比較合成例2-2のスチレン化多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルと、117gのジシアンジアミド希釈液(メタノールに溶解したジシアンジアミド、濃度:10量%)と、1.73gの2-メチルイミダゾール希釈液(メタノールに溶解した2-メチルイミダゾール、濃度:10重量%)と、60gのアセトンと、を使用して形成した。
【0139】
[比較例3]
比較例3の銅張積層板の調製には、実施例1の調製手順を繰返したが、異なる点として、樹脂組成物を、240gの比較合成例2-3のスチレン化多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルと、62gのジシアンジアミド希釈液(メタノールに溶解したジシアンジアミド、濃度:10量%)と、1.52gの2-メチルイミダゾール希釈液(メタノールに溶解した2-メチルイミダゾール、濃度:10重量%)と、60gのアセトンと、を使用して形成した。
【0140】
[比較例4]
比較例4の銅張積層板の調製には、実施例1の調製手順を繰返したが、異なる点として、樹脂組成物を、240gの比較合成例2-4のスチレン化多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルと、134gのジシアンジアミド希釈液(メタノールに溶解したジシアンジアミド、濃度:10量%)と、1.82gの2-メチルイミダゾール希釈液(メタノールに溶解した2-メチルイミダゾール、濃度:10重量%)と、60gのアセトンと、を使用して形成した。
【0141】
実施例1~4及び比較例1~4の銅張積層板の特性について、288℃はんだフロート試験、剥離強度、難燃性、吸水率、Td、Tg、CTE-α1及びCTE-α2等を上記の試験方法に従って測定した。結果を表3に示す。
【0142】
【表3】
【0143】
表3に示すように、本発明の多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルから調製した銅張積層板は、288℃はんだフロート試験に合格でき、優れた物理化学的特性(例えば、高い剥離強度、高い難燃性、高いTd、高いTg等)、特に低い吸水率及び低いCTEを有する。対照的に、比較例1~4に示すように、HPLCスペクトルで対応する保持時間における第1成分のクロマトグラフィーピークの面積百分率が指定範囲外にある場合、調製された銅張積層板は288℃はんだフロート試験に合格できない、又は優れた物理化学的特性を、特に吸水率及びCTEに関して示さない。したがって、比較例1~4の銅張積層板は、本発明の所望の効果を提供できない。
【0144】
5.5.高周波接着剤の調製
【0145】
[実施例5]
最初に、25gのトルエン(溶媒として)と、35gのポリテトラフルオロエチレン(型番:POLYFLON PTFE L-5、ダイキン工業より入手可能)とを混合して、撹拌機を用いて30分間撹拌することで、均一なスラリーを得た。次に、60gのポリイミド(型番:PIAD200、荒川化学工業より入手可能)と、5gの合成例2-1のスチレン化多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルとを、上記スラリーに添加し、撹拌機を用いて30分間撹拌することで、均一な樹脂スラリーを得た。上記樹脂スラリーを、高速ホモジナイザーを3000rpmで30分間使用することで均質化し、顆粒のない均一な外観とした。硬化剤として0.77gのジシアンジアミド希釈液(ジメチルアセトアミドに溶解したジシアンジアミド、濃度:20重量%)と、硬化促進剤として0.206gの2-メチルイミダゾール希釈液(ジメチルアセトアミドに溶解した2-メチルイミダゾール、濃度:15重量%)を、均質化した樹脂スラリーに添加し、15分間撹拌してコーティング組成物を得た。上記コーティング組成物を、ギャップ125μmの自動塗装機を用いて剥離ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上にコーティングした後、コーティングしたフィルムを140℃のオーブンで3分間焼付し、その後冷却して、実施例5の半硬化(Bステージ)高周波接着フィルムを得た。
【0146】
[実施例6]
実施例6の高周波接着剤の調製には、実施例5の調製手順を繰返したが、異なる点として、5gの合成例2-2のスチレン化多価フェノール樹脂のグリシジルエーテル、0.91gの硬化剤と、0.244gの硬化促進剤を使用した。
【0147】
[実施例7]
実施例7の高周波接着剤の調製には、実施例5の調製手順を繰返したが、異なる点として、5gの合成例2-4のスチレン化多価フェノール樹脂のグリシジルエーテル、0.59gの硬化剤と、0.158gの硬化促進剤を使用した。
【0148】
[実施例8]
実施例8の高周波接着剤の調製には、実施例5の調製手順を繰返したが、異なる点として、5gの合成例2-6のスチレン化多価フェノール樹脂のグリシジルエーテル、0.92gの硬化剤と、0.246gの硬化促進剤を使用した。
【0149】
[比較例5]
比較例5の高周波接着剤の調製には、実施例5の調製手順を繰返したが、異なる点として、5gの比較合成例2-1のスチレン化多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルと、0.6gの硬化剤と、0.16gの硬化促進剤を使用した。
【0150】
[比較例6]
比較例6の高周波接着剤の調製には、実施例5の調製手順を繰返したが、異なる点として、5gの比較合成例2-2のスチレン化多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルと、0.93gの硬化剤と、0.247gの硬化促進剤を使用した。
【0151】
[比較例7]
比較例7の高周波接着剤の調製には、実施例5の調製手順を繰返したが、異なる点として、5gの比較合成例2-3のスチレン化多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルと、0.49gの硬化剤と、0.1311gの硬化促進剤を使用した。
【0152】
[比較例8]
比較例8の高周波接着剤の調製には、実施例5の調製手順を繰返したが、異なる点として、5gの比較合成例2-4のスチレン化多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルと、1.08gの硬化剤と、0.289gの硬化促進剤を使用した。
【0153】
実施例5~8及び比較例5~8の高周波接着剤の特性として、288℃はんだフロート試験、剥離強度、Dk及びDf等を上記の試験方法に従って測定した。結果を表4に示す。
【0154】
【表4】
【0155】
表4に示すように、本発明の多価フェノール樹脂のグリシジルエーテルから調製した高周波接着剤は、288℃はんだフロート試験に合格でき、卓越した剥離強度と誘電特性(Dk,Df)とを有する。対照的に、比較例5~8に示すように、HPLCスペクトルで対応する保持時間における第1成分のクロマトグラフィーピークの面積百分率が指定範囲外にある場合、それによって調製された高周波接着剤は、288℃はんだフロート試験に合格できない、又は調製された高周波接着剤は、優れた物理化学的特性を示さない。したがって、比較例5~8の高周波接着剤は、本発明の所望の効果を提供できない。
【0156】
上記の例は、本発明の原理及び効果を例証し、その発明の特徴を示すために使用されるが、本発明の範囲を限定するためには使用されない。当業者は、記載された本発明の開示及び提案に基づき、様々な修正及び置換を進めることが可能である。したがって、本発明の保護の範囲は、添付の特許請求の範囲に定義されるとおりである。