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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-25
(45)【発行日】2023-09-04
(54)【発明の名称】粒子、粒子の製造方法及び電気化学セル
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/38 20060101AFI20230828BHJP
   C01B 33/00 20060101ALI20230828BHJP
   H01M 4/134 20100101ALI20230828BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20230828BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20230828BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20230828BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20230828BHJP
   H01M 10/054 20100101ALI20230828BHJP
【FI】
H01M4/38 Z
C01B33/00
H01M4/134
H01M4/36 B
H01M4/36 C
H01M4/48
H01M4/58
H01M10/052
H01M10/054
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2021100404
(22)【出願日】2021-06-16
(62)【分割の表示】P 2019060315の分割
【原出願日】2014-02-12
(65)【公開番号】P2021166185
(43)【公開日】2021-10-14
【審査請求日】2021-07-15
(31)【優先権主張番号】13/815,258
(32)【優先日】2013-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515222610
【氏名又は名称】ウプレティ シャイレシュ
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100162765
【弁理士】
【氏名又は名称】宇佐美 綾
(72)【発明者】
【氏名】ウプレティ シャイレシュ
【審査官】鈴木 雅雄
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/100837(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/38
C01B 33/00
H01M 4/134
H01M 4/36
H01M 4/48
H01M 4/58
H01M 10/052
H01M 10/054
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学セルにおいて使用するための複合組成物の粒子であって、
一般式MM’Zで表される複合体(MがSiからなり、M’がAl及びCuの群からなり、ZがCl及びHの群からなる)と、
MZ及び/又はM’Zを含むオキシドである表面組成物と、を含み、
前記表面組成物はテクスチャ加工されており、
前記粒子の一次粒子径が100ミクロン未満であり、
少なくとも2重量%のM’がMの結晶構造内にドープされており、
Mが、デンドライト構造を有する、粒子。
【請求項2】
前記表面組成物の内容物は、少なくとも1重量%のMZ及び/又はM’Zである、請求項1に記載の粒子。
【請求項3】
前記電気化学セルは、リチウムイオン、ナトリウムイオン、リチウム硫黄、及びリチウム空気の何れか1つである、請求項1に記載の粒子。
【請求項4】
前記オキシド若しくはMZ若しくはM’Z、又はそれらの組合せの主な用途は、前記電気化学セルのサイクルにおいて、SEI層の構造を維持することである、請求項2に記載の粒子。
【請求項5】
M’がMの前記結晶構造内に固溶され、表面にMZ及び/又はM’Zが存在する、請求項1に記載の粒子。
【請求項6】
M’及びMZを含む合金/金属間化合物からの1以上の成分を選択的に抽出することによって合成され、
前記抽出は、HCl、HF、HSO、CHCOOH、HPO、HNOからなる群から選択される1以上の酸を含む腐食剤を、化学的に使用することで前記テクスチャ加工と同時に実施される、請求項1に記載の粒子の製造方法
【請求項7】
電気化学セルにおいて使用するための複合組成物の粒子であって、前記粒子は、
一次粒子径が1~100ミクロンの範囲であり、
表面積が30m/g超であり、
表面にMZ及び/又はM’Zを含むオキシド成分を含み、
一般式MM’Zで表される複合体(MがSiからなり、M’がAl及びCuの群からなり、ZがCl及びHの群からなる)を含み、
Mが、デンドライト構造を有する、粒子。
【請求項8】
前記粒子の一次粒子径が50ミクロン未満である、請求項1に記載の粒子。
【請求項9】
前記粒子の一次粒子径が40ミクロン未満である、請求項1に記載の粒子。
【請求項10】
再充電可能な電気化学セルであって、
複合体の粒子、バインダー、及び溶媒を含むアノードを含み、
前記複合体の粒子は、一般式MM’Zで表される複合体(MがSiからなり、M’がAl及びCuの群からなり、ZがCl及びHの群からなる)を有し、
前記複合体の粒子は、MZ及び/又はM’Zを含むオキシドである表面組成物を含み、前記表面組成物はテクスチャ加工されており、前記粒子の一次粒子径が100ミクロン未満であり、
少なくとも2重量%のM’がMの結晶構造内にドープされており、
Mが、デンドライト構造を有する、再充電可能な電気化学セル。
【請求項11】
前記複合体の粒子における前記表面組成物の内容物は、少なくとも1重量%のMZ及び/又はM’Zである、請求項10に記載の再充電可能な電気化学セル。
【請求項12】
前記再充電可能な電気化学セルは、リチウムイオン、ナトリウムイオン、リチウム硫黄、及びリチウム空気の何れか1つである、請求項10に記載の再充電可能な電気化学セル。
【請求項13】
前記複合体の粒子は、Mの前記結晶構造内に固溶されたM’を有し、表面にMZ及び/又はM’Zが存在する、請求項10に記載の再充電可能な電気化学セル。
【請求項14】
電気化学セルにおいて使用するための複合組成物の粒子であって、
一般式MM’Z.Cで表される複合体(MがSiからなり、M’がAl及びCuの群からなり、ZがCl及びHの群からなり、Cが炭素である)と、MZ及び/又はM’Zを含むオキシドである表面組成物とを含み、前記表面組成物はテクスチャ加工されており、
前記粒子の一次粒子径が100ミクロン未満であり、
少なくとも2重量%のM’がMの結晶構造内にドープされており、
Mが、デンドライト構造を有する、粒子。
【請求項15】
MM’Z.Cは、MM’ZとCの混合物である、請求項14に記載の粒子。
【請求項16】
CがMM’Z粒子の表面にコーティングされる、請求項14に記載の粒子。
【請求項17】
0.2重量%のCが、MM’Z粒子の表面にコーティングされる、請求項14に記載の粒子。
【請求項18】
CのコーティングがMM’Z粒子の表面に形成され、前記コーティングは、MM’Z粒子内及びその周辺の1%を有する、請求項14に記載の粒子。
【請求項19】
Cは、MM’Z粒子内に挿入される、請求項14に記載の粒子。
【請求項20】
Cは、MM’Z粒子内に少なくとも0.5重量%挿入される、請求項14に記載の粒子。
【請求項21】
Cは、sp炭素、導電性の炭素、黒鉛状炭素、カーボンブラック、ナノ炭素、グラフェン、グラファイト、アセチレンブラック及びこれらの混合物のうち1種以上である、請求項14に記載の粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2012年2月14日出願された米国仮特許出願第61/598,681号に基づく優先権を主張する。
【0002】
開示された技術は、一般的に、再充電可能なリチウムバッテリーなどにおいて、リチウムを貯蔵(吸蔵)するために使用されるケイ素複合体又はスズ複合体粒子に関する。
【背景技術】
【0003】
従来、バッテリーは、アノード材料として、グラファイト又は他の炭素系複合材料を使用していた。黒鉛状炭素は、そのリチウムに対する低い電圧、高い電気伝導率、かなりのサイクル寿命、及び汎用性のため、歴史的によく用いられている。しかしながら、リチウムイオンバッテリーの性能を一層向上させるためには、より多くの量のリチウムを貯蔵でき、且つ、グラファイトより高いエネルギー密度及び比容量を提供できる、実用的な材料を得るのが必須である。近年、バッテリーには、Sn及びSi系アノードの、これらを異なる金属と混合すること、又は合金を炭素と混合して複合体を形成することによる使用が始められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
Si及びSn材料にはいくつかの分類がある。例えば、一分類のSi材料は、多孔質のケイ素を製造するためのエッチング方法を用いて形成される。HF/HNOのような強酸を用いるこのエッチング方法は、純粋なケイ素結晶に細孔を形成する。他のエッチング方法では、純粋なケイ素にエッチングを施し、高性能リチウム二次電池に用いられる、多孔質の3次元ケイ素粒子を形成する。また、これらのエッチング方法では、HF酸を使用する。
【0005】
別の分類に係るSiは、ナノ微結晶になることがある。これらのナノ微結晶は、溶融したアルミニウム合金を超高速冷却し、次いで2回のエッチング工程を実施することにより形成することができる。第一にはエッチングを施して、ケイ素からアルミニウムを除去し、次いで、第二には、ナノ微結晶のクラスター内の空隙に対してエッチングを施す。別の分類に係るケイ素系アノード材料は、金属マトリクスを形成すること、又はケイ素材料を金属コンパウンドコーティングすることにより形成される。この分類のSiは、再充電可能なリチウムバッテリーに対する非活物質として用いることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願明細書は、電気化学セルにおいて使用するためのケイ素複合体又はスズ複合体粒子、及びその製造方法に関する技術を説明する。開示された技術のケイ素複合体又はスズ複合体粒子は、(i)容易なSEI(固体電解質界面)形成のためのテクスチャ加工された保護面と、(ii)これらの粒子から形成されたバッテリーが高速用途に有用となるように、その粒子の固有伝導度を向上する原子可溶性(atomic solubility)と、(iii)電解質反応性(electrolyte reactivity)のための選択的にテクスチャ加工された表面とを有する組成物を形成する。
【0007】
また、開示された技術のケイ素複合体又はスズ複合体粒子は、セルの安定したサイクルを提供し、SEI層の構造も向上させ、サイクル中、SEI層を安定させる、別の組成物で覆われたコア組成物からなるミクロンサイズの一次粒子径であり、大きい表面積を有する。
【0008】
ケイ素複合体又はスズ複合体粒子の構造は、棒状体が結晶学的に結合され、空間に拡大して、それにより、使用が体積拡大に適応する、拡大した微結晶(crystallite extensions)間の裂け目を供給するように、列に配置された棒状体を有する。
【0009】
ケイ素複合体又はスズ複合体粒子は、(1)開放構造(open structure)に由来する少なくとも10m/gの表面積を有し、(2)全表面積が20m/gより大きく、(3)50%超のケイ素複合体又はスズ複合体粒子がデンドライトを有し、それぞれのフィンガーが少なくとも直径の10倍より大きい長さを有し、(4)フィンガーの30%超が同じ結晶面において配向されている。また、ケイ素複合体又はスズ複合体粒子は、90重量%のケイ素又はスズ、7重量%のアルミニウム、及び3重量%オキシドであってもよい。
【0010】
ケイ素複合体又はスズ複合体粒子は、例えばAl-Siの合金粉末から、pHが調整された環境において軽い酸(light acids)を適用することにより形成されてもよい。軽い酸は、マトリクス材料を除去し、酸処理は、複合体の形成により、一次粒子内で、細孔形成を極小化し、棒状形態を促進するように終了する。
【0011】
ケイ素又はスズ複合体は、ケイ素複合体又はスズ複合体粒子の拡大した微結晶間の裂け目の空間内に導入されたバインダーをさらに含んでもよい。また、ケイ素複合体又はスズ複合体粒子は異なる気体雰囲気下において、高温で加熱され、ケイ素複合体又はスズ複合体粒子の電気化学的性能が高められてもよい。ケイ素複合体又はスズ複合体粒子は炭素材料と混合されてもよい。炭素材料は、カーボンブラック、又はナノ炭素、又はグラフェン、又はグラファイト、又はアセチレンブラックのような、sp炭素、又は、導電性の炭素、又は黒鉛状炭素である。
【0012】
別の実施形態において、再充電可能な電気化学セルは、ケイ素複合体又はスズ複合体、バインダー、及び溶媒から形成されるアノードを含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態の倍率1k×視野のSEMである。
図2】本発明の実施形態の倍率5k×視野のSEMである。
図3】本発明の実施形態の倍率10k×視野のSEMである。
図4】本発明の実施形態の倍率25k×視野のSEMである。
図5】本発明の実施形態の倍率25k×視野のSEMである。
図6】本発明の実施形態の倍率50k×視野のSEMである。
図7】本発明の実施形態の結晶データである。
図8】本発明により製造される粉末における非晶質相を示す高分解能x線回折である。
図9】3D開放構造が現れた球形の複合粒子の画像である。
図10】複合粒子の周囲に見られるナノ単位の表面組織の画像である。
図11】複合粒子の周囲のテクスチャ加工を表す画像である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本願明細書は、電気化学セルにおいて使用するためのケイ素複合体又はスズ複合体粒子、及びその製造方法に関する技術を説明する。開示された技術のケイ素複合体又はスズ複合体粒子は、(i)容易なSEI(固体電解質界面)形成のためのテクスチャ加工された保護面と、(ii)これらの粒子から形成されたバッテリーが高速用途に有用となるように、その粒子の固有伝導度を向上する原子可溶性と、(iii)電解質反応性のための選択的にテクスチャ加工された表面とを有する組成物を形成する。
【0015】
可逆的にリチウムと反応し(エネルギーを失うことなく電気化学セルを充放電することを意味する)、長いバッテリー寿命を提供できるアノード材料のために、アノード材料は、それ自身の最初の充電/放電プロセスから安定した固体電解質界面(SEI)を形成し得るべきである。このSEIは、好適な厚さを備え、セルにおいてアノード材料の安定化を助けるテクスチャ加工又は変性された表面を備えるべきである。開示された技術において、ケイ素複合体又はスズ複合体粒子は、表面組織の形成、SEI層の安定化を助けるイオン透過性の表面を有する。また、ケイ素複合体又はスズ複合体粒子は、粒子の固有伝導度の改良するケイ素結晶構造に固溶させた非ケイ素原子を有する。
【0016】
開示された技術において、ケイ素複合体又はスズ複合体粒子は、粒子の表面上の細孔を最小限にし、粒子の個々結晶間の空間を形成するように形成され、電気化学セルに生じる体積変化率を適応させる(約300%)。換言すれば、開示された技術は、実質的に細孔が欠ける一方、開放構造及びデンドライト棒状形態を有する微粒子状のケイ素複合体又はスズ複合体系材料/合金の合成方法を含む。これらの特徴は、電気化学セルにおいて、アノード材料内の貯蔵/合金化能力を高め、それによって、一般的に用いられている複合体を含有するグラファイト又は他の炭素より、優れたエネルギー密度、比容量、及びサイクル寿命を提供する。
【0017】
ケイ素又はスズは、再充電可能なバッテリーのための候補材料として広く認識されている。しかしながら、2つの種類の障害:(1)Si又はSnの合金化の働きを伴う次のサイクル毎に新しいSEI層が形成される結果として生じる、体積の拡大及び収縮に起因する、バッテリー充放電サイクルの中におけるケイ素又はスズの自滅的な働き、及び(2)好適な粒子特性のケイ素又はスズを形成する際の高いコスト、が再充電可能なバッテリーにおけるケイ素又はスズの使用を妨げている。
【0018】
セルサイクル(充電/放電)中のケイ素又はスズの自滅的な働きは、一時的に貯蔵/ケイ素又はスズと合金化されるリチウムの非常に大きい容量に至るケイ素又はスズの合金化の働きに起因する、非常に高い容量のために生じる。これは、アノードの非常に大きい体積の拡大及び収縮を、例えば、300倍までの体積変化率で、引き起こす。この拡大及び収縮の間、結果として、SEI層が損傷を受け、セルのサイクル安定性が悪化し、リチウムイオンセル内のリチウムのいくつかがサイクル毎に失われ、サイクル毎の容量の減少に至ることがある。
【0019】
多くの研究が実施されており、安定したサイクルを達成し、サイクル中の損傷からSEI層を保護するためのケイ素又はスズ系材料を製造する方法が特許されている。これらの発明は、特定の条件下の試験におけるサイクル安定性を確実にすることに有効であることが証明されている。しかしながら、これらの発明は、商業的に利用可能なセルを製造するための他の重要な特徴を欠く。これは以下の1以上に関連する:セル密度、容量、及びカソード材料に対するフルセル(full cell)の製造原価。
【0020】
開示された技術は、組成上の特徴を有する、共晶のケイ素又はスズデンドライトから得られるような、良好な粒子形態を組み合わせることが優れたサイクル安定性を提供することが分かっている。好適なケイ素複合体又はスズ複合体粒子の構造は、「羽毛状」、又はより一般的に樹枝状(dendritic)として説明されることがある共晶の微細構造を有する好適な合金から得ることができる。いくつかの実施態様において、ケイ素複合体又はスズ複合体の構造は、それぞれのセグメントが、別のセグメントと結合して、結晶学的に整列されている拡大された構造となり得る。これらの構造は、棒状体又は板状体が結晶学的な配列と結合されるが、拡大した微結晶間の裂け目に供給する方法で、空間内へ拡大されるように、拡大されたケイ素又はスズ相ネットワークにおいて棒状体又は板状体を列に配置させる。このケイ素又はスズ相は、アノード材料において使用するのに理想的であるが、複合体の表面組成物がSEI層の堅牢な維持を行う複合材料を提供する方法で形成されない限り、サイクル安定性に悩まされる形状及び大きさであることが分かった。
【0021】
1つの実施形態において、ケイ素複合体又はスズ複合体は、合金溶融からの指向性凝固(controlled solidification)によるアルミニウム-ケイ素又はスズ合金において、ケイ素又はスズ相を有する合金を選別することによって得られた。アルミニウム-ケイ素又はスズは、しかしながら、そのケイ素又はスズ相が実質的に純粋であり、望ましい形態又は他の特性を有し得るため、唯一の合金系ではない。さらに、融液のスズ含有量が原子的に微量成分である(全ての他の要素の組合せと比較して)場合、及び冷却の際、スズ相が凝集してスズが75重量%超となる場合のスズを含有する合金の中には、アノード材料として用いるための好適な材料がある。
【0022】
また、他の可能性のある合金は、これらに限定されないが、以下の一連の材料が知られている:AlSi、LiSi、SiMg、SiFe(鉄-ケイ素又はスズリレー鋼(Relay Steel))、NiSi(ナイシル)、KSi、TiSi、SiMn、CuSi(ケイ素又はスズ-青銅)、BeCuSi、CeCuSi、AlMgSi、FeSiZn、CuSiZn、CuMnSi、CrNiSi、SiZnAl、AlSiNa、CrSiMg(ナイクロシル)、NiSiTi、CoCuSi、MoSiTi、NiMnAlSi(アルメル)、MnSiC(スピーゲル)、NiCrMoSi、NiCoCrSi、AlSiFeZn、SiAlMgCu、CMnCrSi(銀鋼)、CMnCrSiV、及びSiCuMgFeMnTiZr。この内、Mn、Mg、Al、Mo、青銅(例えば、青銅はスズ、銅、アルミニウム、ニッケル、亜鉛、鉛、ビスマス、鉄、マンガン、ゲルマニウム、タングステン、モリブデン、亜リン酸、スルフィドなどの元素を含有する合金系に用いられてもよい)、Be、Ti、Cu、Ce、Li、Fe、Ni、Zn、Co、Zr、K、及びNaなどのH未満の電極電位を有する主要成分のうちの少なくとも1つの要素の何れの組合せも用いられる。
【0023】
次いで、酸は、マトリクスから共晶の構造化したネットワークを抽出中に、ケイ素複合体又はスズ複合体を、その場で形成するのに使用され得る。酸及び調整されたpH環境の選択は、図10a及びb、並びに図11に示されるように、ケイ素又はスズある特性が例えば、結晶構造を保つことと、製造した粒子上に非ケイ素又は非スズ表面を得ることとに必要であるため、開示された技術の重要な部分である。軽い酸又は有機酸、例えば塩酸を使用する場合、少なくとも20時間、pHが0~1に調整された環境において使用され得る。軽い酸は、高い腐食性はなく、例えばHF(フッ化水素酸)などの「接触中毒剤(contact poison)」ではない種類の酸である。軽い酸の種類には、(1)低い解離定数を有し、(2)典型的な鉱酸より早く組織を透過する脂溶性分子である、如何なる酸も含まない。また、軽い酸には、金属酸化物を溶かす如何なる酸も含まない。硬い/柔らかい(hard/soft)の考慮事項が、酸又は塩基の強度とは関係がないことは特筆に値する。酸又は塩基は硬くても、或いは柔らかくてもよく、また、弱くても、或いは強くてもよい。同じ塩基のための、2つの酸の間の競争反応において、酸の相対的強度と、酸及び塩基それぞれの硬い/柔らかい性質との双方を考慮すべきである。このように、特定の軽い酸の選択は、用いた合金又は元素系に基づく。
【0024】
この軽い酸を用いた処理は、主要な非ケイ素又は非スズ相を溶かす。しかしながら、酸の選択により、図1~6に示されるように、マトリクスをエッチングするだけではなく、ケイ素複合体又はスズ複合体の表面を選択的にテクスチャ加工することができ、粒子内での細孔又は穴の形成を避けることができる。このように形成されたケイ素複合体又はスズ複合体は、図9に示されるように、周辺の流体力学的境界を超えて測定した場合、ミクロンサイズのアセンブリにかなりの開放構造を有する。開放構造は、細孔、多孔質、又は空隙などの表現と混同されるべきではない。細孔、多孔質、又は空隙は固形構造物における上皮性の穴として定義されるが、「開放構造」との用語は、微結晶間の空間について言及される。
【0025】
加えて、ケイ素複合体又はスズ複合体粒子の大きさは、40ミクロン以下である。この大きさは、これらの合金が異なる粒径になり得るので、使用される合金に依存する。開示された技術において、合金粉末は40ミクロン未満の大きさで使用されてもよい。そのような大きさを選択することの重要性は、アノード薄片の厚さが通常100ミクロン未満であることであり,もし、大きい粒子(40ミクロン超)が使用されるなら、カレンダプロセス、すなわち、Liイオンセル製造に含まれるプロセスを通過する際に、粒子が個々の微結晶に侵入し得る機会を増やす。
【0026】
この開放構造、及びケイ素複合体又はスズ複合体の選択的にテクスチャ加工された表面は、アノードとして電気化学装置に使用される際、通常はケイ素又はスズ粒子を自滅させる体積拡大に適応する。換言すれば、ケイ素複合体又はスズ複合体粒子は、機械的に剛性ではないが、代わりに、安定したサイクルを提供する表面組成物も提供する一方、セルサイクルの間の大きさの変化に適応するのに容易に移動できる構造を含む。高分解能x線回折及びドープされたケイ素結晶の原子配列は図7に示される。
【0027】
また、この開放した複合構造体は、充放電中に、粒子が、電流コレクタ、バインダー、導電剤、及び電解質と接触するのを助ける。また、必要なら、開放構造は、以下に説明されるように、拡大を調整する他の活性又は非活性物質を添加するのに用いられてもよい。
【0028】
1つの実施形態において、複合材料は、酸/塩基を用いることで形成され、又はケイ素又はスズである主要成分Mの塩を形成することによる化合物である。合金供給物質は約10~15%のケイ素又はスズを含有するが、酸によりマトリクス材料を除去した後、ケイ素又はスズの多くを含有する複合体が得られる。製造物の許容できる範囲は80%~97%である。得られた複合粒子には純粋なアルミニウムマトリクスが残存していない。
【0029】
ケイ素複合体又はスズ複合体は、ケイ素又はスズの結晶格子内に合金(M’)、例えば、Alの卑金属の一部を含んでもよく、ケイ素又はスズ複合体の重量の約7~8%を占め、その固有の特性を改良する。また、ケイ素又はスズ(又はスズ)結晶構造に固溶させたアルミニウムの一部は、如何なる細孔も形成するに至らず、ケイ素複合体又はスズ複合体構造内に留まる。
【0030】
ケイ素複合体又はスズ複合体は、非晶質性又は結晶性の成分、例えば、MZ及び/又はM’Z(図10a及びb、並びに図11に示されるように、Zは、例えば、O、N、Cl、P、C、S、H、及びFであってもよい)を含むべきである。Z成分は、主に、一般的に用いられる酸又は塩基における対イオンである。表面上のテクスチャ加工は、用いられる酸に依存する。例えば、一般的な酸はHCl、HSO、CHCOOH、HPO、HNOなどである。用いられる浸出剤に基づいて、複合体の設計は変えられる。MZ若しくはM’Z、又はそれら双方の存在は、特性解析技術、例えば、シンクロトロンXRD、EELS、ICP、高分解能TEM、及びEDの組合せによって発見できる。いくつかの実施態様において、非晶質性又は結晶性の成分は、SiOx若しくはAlOx、又はそれら双方の何れであってもよく、粒子の結晶内又は表面の何れかに存在する。すなわち、弱酸(mild acids)の使用は、ケイ素又はスズの表面上に不均一な厚さのオキシドコーティングを広げ、クラスターの中心に向かって連続的に厚くなり得る。高分解能X線回折、シンクロトロンを用いると、粒子中の非晶質相の存在は、図8に示されるように、50重量%未満である。いくつかの実施態様において、コーティングは、最も外側周辺のケイ素又はスズの特徴が、それぞれのクラスターの中心へ組成勾配を有してもよい。粒子構造におけるオキシド表面層の存在は、再充電可能なバッテリーセルにおける比容量、サイクル特性を改善する。
【0031】
好ましい実施形態において、ケイ素複合体又はスズ複合体は、式MM’Zで表され、90重量%のケイ素又はスズ、結晶構造内に存在する7重量%のアルミニウム、及び大部分がオキシドである3重量%の表面材料を含み、オキシド表面材料は他の元素を含有してもよい。得られたケイ素複合体又はスズ複合体は、金属/セラミックマトリクス、金属酸化物マトリクス又は複合体(ケイ素又はスズ及び金属酸化物)材料として説明され得る。ケイ素複合体又はスズ複合体は粉末の形態であってもよい。
【0032】
いくつかの実施態様において、ケイ素複合体又はスズ複合体は少なくとも75重量%のケイ素又はスズを含有し得、表面積が50m/g超であり、粒子の少なくとも30%が同じ結晶面において配向され、リチウムを有する合金に使用される。
【0033】
いくつかの実施態様において、ケイ素複合体又はスズ複合体は、ケイ素又はスズ含有量が75重量%超であり、粒子直径(ミクロン)に対するBET表面積(m/g)の比が4超であり、全BET表面積に対する空隙の寄与(void contribution)が、全表面積の10%未満であり、リチウムとの合金に用いられる粒子であってもよい。
【0034】
いくつかの実施態様において、複合組成物粒子は、結晶全体が1ミクロン超となるように、100nmよりずっと大きくてもよい。いくつかの実施態様において、ケイ素又はスズにおける細孔の数は、全BET表面積の10%未満に寄与する。いくつかの実施態様において、粒子は、50m/g超のBET表面積を有してもよい。いくつかの実施態様において、全ての粒子は、50m/g超のBET表面積、及び1,000nm超の直径を有してもよい。このようにして形成された粒子は、Fd-3m空間群で結晶化する。
【0035】
いくつかの実施態様において、複合粒子内で、ケイ素又はスズ結晶の少なくとも30%は、[111]結晶面において物理的に成長し、ケイ素又はスズ結晶の少なくとも5%は、他の平面[200]、又は[311]、又は[400]、[311]、又は[422]、又は[511]、又は[440]、又は[531]、又は[620]、又は[533]、又は[711]、又は[551]、又は[642]、[553]、又は[731]において成長し、表面積の少なくとも30m/gは[111]において成長した結晶からの寄与であり、全表面積の10%超は[111]、又は[100]、又は[010]、又は[001]、又は[110]のような結晶面からの寄与である。
【0036】
いくつかの実施態様において、粒子は、p型半導体(三価の原子のドーピング、典型的には、ホウ素又はアルミニウムなどのような周期表の13族から)又はn型半導体(アンチモン、ヒ素、又は亜リン酸などのような五価の元素のドーピング)の何れかにする、ドーピング又は置換(20重量%まで)を行うことで、より高い結晶レベル(crystal level)を有してもよい。すなわち、結晶における少量のドーピング(又は置換)は、結晶の機械的強度を向上するだけではなく、電気化学セルにおけるLi合金又は非合金化の間、体積拡大及び収縮に耐える。また、そのようなドーピングは、[111]、又は[100]、又は[010]、又は[001]の周辺を核として、主要な微結晶又は微結晶粒子の結晶面の配向させるようにし、形態、形状、及びフラクタルの寸法(fractals dimensions)を最終的に決定し、材料の固有伝導度に寄与する。
また、これはケイ素又はスズ複合体の耐破壊性を向上し、それゆえサイクル効率を向上し、30%までのリチウム合金化が100サイクル超で最高98%までのサイクル効率となる。
【0037】
いくつかの実施態様において、堅牢な構造内に一次粒子の全てを保持するバインダー材料が存在するように、複合組成物粒子内に棒状の形態でケイ素又はスズ粒子をクラスター化する手段が含まれている。バインダー材料は、有機分子(例えば、ポリマー、界面活性剤、長鎖アミン、生体分子、海藻類、ラテックス、導電性ポリマー、若しくはナノ炭素)、金属、セラミック、複合材料、又はこれらの組合せであってもよい。換言すれば、高アスペクト比の一次複合粒子を含有する複合粒子は、マクロ粒子の一般的な形態で、第二の材料により一緒に保持されてもよい。複合組成物粒子間の種々の間隔は、機能しなくなるほど自滅することなく、リチウム化の間に複合体の体積を拡大させるのに十分であり得る。バインダー材料は、クラスター化した複合体の棒状体がアノード材料としての使用に適した機能を有するように、自滅を制限しながら、リチウム化の間の複合体の体積拡大が可能となる十分な程度まで、種々の複合粒子を一緒に機械的に保持するのに十分であってもよい。バインダー相は、クラスター化された棒状複合体の堅牢性に重要である。このバインダーは、少なくとも0.5重量%まで粒子内に挿入されてもよい。次いで、そのように含浸した粒子は、より高い温度(200℃超)で加熱され、Si表面上に0.2重量%超の炭素のコーティングを付与してもよい。このようにして形成されたコーティングは、粒子内及びその周辺に存在する全ての炭素の少なくとも1重量%のsp炭素を有する。
【0038】
いくつかの実施態様において、異なる雰囲気下(空気、若しくは酸素、若しくは窒素、若しくはHe/H、若しくはアルゴン、又はそれらの組合せ)、1分間超、高温(100℃以上)で、遊離した複合粒子を加熱することにより、材料の電気化学的性能を5%超まで高められる。すなわち、異なる雰囲気下(空気、若しくは酸素、若しくは窒素、若しくはHe/H、若しくはアルゴン、又はそれらの組合せ)、1分間超(100℃、又は200℃、又は300℃、又は400℃、又は400℃超)での、遊離した複合体の制御された加熱に続いて、他の融解処理(dissolution treatment)は、複合体の比容量を20%まで高められる。好ましい実施形態において、複合体は空気中で400℃に加熱された。別の実施形態において、複合体は、100%窒素リッチ環境で400℃に加熱された。
【0039】
いくつかの実施態様において、材料の密度は、溶融合金の選択又は選択的なエッチングに基づいて調整されてもよく、例えば、その密度は0.6~3g/ccの間で調整されてもよい。最終生成物のBET又は粒子の表面積は、30~200m/gの間で調整されてもよい。
【0040】
1つの実施形態において、複合構造体を合成するための方法は、構造が、酸又は酸/塩基混合物を用いて金属/金属酸化物/炭素複合体を形成するより前に、ケイ素又はスズは原子的に少数で存在している、1つの相としてケイ素又はスズを有する少なくとも2種の金属の組合せ/合金/金属間化合物で形成され、大多数で存在している他の元素が抽出後に塩で存在し、得られた複合組成物粒子は、電気化学セル(リチウム、ナトリウム、リチウム硫黄、リチウム空気など)において用いられ得る。出発物の合金は、ほぼ30%のケイ素又はスズを有するが、酸で処理した後は、80%超のケイ素又はスズと残余の塩とを有する。このように製造される複合体は、111方向に、少なくとも30%の粒子を含有し、少なくとも33%の表面積が開放構造に由来する表面積を有する。また、複合体は、長さが直径の少なくとも3倍である、葉状(leaf)/脈状(vein)/フィンガー状(finger)の構造を有する、少なくとも30%の粒子を有する。複合構造体は、重量の少なくとも20%が非晶質相であるが、1%超の遷移金属の大部分は、スズ、Mn、Fe、Co、Cu、Zn、Cr、V、Moなどと合金化されてもよい。工業的に公知の1つの組成は、Al-V-Sn-Fe-Cu(Sn濃度は11~14%の範囲で変化する)である。しかしながら、酸は、HClとは異なる必要がある(Snもエッチングできるように)。有機酸又は他の減量の方法は、代替できる。
【0041】
別の実施形態において、複合組成物粒子は、それぞれのセグメントが、別のセグメントと結合して結晶学的に配列されて、ナノサイズよりずっと大きい、全体の結晶が数ミクロン~十数ミクロン(microns to 10s of microns)で測定されるような、拡大された構造である。粒子内に細孔の有意な数は見られず、それぞれの複合粒子は、その重量と比較するとかなり大きい表面積を有する。
【0042】
別の実施形態において、粒子は、それぞれのセグメントが、100nmよりずっと大きい別のセグメントと結合して結晶学的に配列されて、全体の複合体が1ミクロン超であり、複合粒子内の細孔の数が総BET表面積の10%未満に寄与し、それぞれの粒子が50m/g超のBET表面積を有するような、拡大された構造であってもよい。本発明の実施形態は、全て、50m/g超のBET表面積、及び1,000nm超の直径を有するケイ素又はスズ複合粒子である。
【実施例
【0043】
実施形態は概して説明されており、以下の実施例は、本開示の詳細な実施形態として記載され、それらの実証及び利点を説明する。実施例は、説明として記載されており、如何なる方法によっても詳細な説明又は請求項の限定を意図しないことを理解されたい。
【0044】
[実施例1]
実施例において、Si複合体を、6MのHCl2.5リットルに、120gのSiAlCu合金を逐次(10分毎に15g)混合することにより合成した。この間に、テフロン(登録商標)で被覆されたステンレス鋼撹拌機を用いて、200rpmの定速でその溶液を撹拌した。固体の添加が完了した後、粉末分散、及び水素の気泡及びガスの円滑な排出を続けるため、次の24時間、600rpmの速度で撹拌しながら、溶液の酸濃度を-0.4pHで維持した。反応の完了(水素の気泡又は他のガスの発生が無くなった(no evolution))後、溶液を濾別し、残った固体を洗浄し、真空で乾燥した。そのようなケイ素又はスズ複合体粉末は、1200mAh/gより大きい比容量を有することが分かり、100サイクル超のサイクル後に、90%超の容量維持を証明した。種々の倍率でのケイ素又はスズ複合粒子のSEM写真を図1~6に示す。
【0045】
[実施例2]
ケイ素又はスズ複合粒子内に有機分子を挿入するために、0.3gの寒天(出発物の合金の0.25重量%)を、6時間毎に逐次、溶液内へ添加し、24時間で、全部で1.2g(出発物の合金の1重量%)を生成した。そのような溶液を、ろ過前に2時間、超音波処理及び/又は撹拌処理した。
【0046】
[実施例3]
得られた実施例2のSi複合体を、SuperP炭素及びアルギン酸アンモニウムバインダーと重量比75:15:10で混合した。ジルコニア系メディアを有するテフロン(登録商標)バイアル(重量比1:3)において、脱イオン化した水を、スラリーを生成するのに用い、2時間粉砕し、その後、銅箔を被覆した炭素において鋳造し(casted)、その鋳造により1.4cmの円形電極に切り分け、空気中において、100℃で一晩乾燥した。約3~5mg/cmの能動負荷を得た。リチウム箔を電気化学的試験のための対電極として用いた。電解質は、4重量%のFECを有するEC/DMCの1:1混合物に溶解させた1MのLiPFであった。コインセルを、0.01V~1.5V、0.07V~1.5V、0.1V~1.5V、及び0.15V~1.5Vを含む種々の臨界電圧間でサイクルした。全ての結果は、50サイクル後に90%サイクル効率を有する最低800mAh/gの容量を示す。
【0047】
実施例3にて説明されるように、上述の複合粒子は、負極用のペーストを形成するために使用することができる。ペーストは、ケイ素又はスズ複合体、バインダー、及び溶媒を含んでもよい。ペーストは、ケイ素又はスズ複合体、バインダー、及び溶媒をシート状、ペレット状など練り込むことによって形成されてもよい。
【0048】
バインダーは、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンプロピレンターポリマー、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、及び高いイオン伝導性を有するポリマー化合物であってもよい。ケイ素又はスズ複合体グラファイトに対する、バインダーの好ましい混合比は、バインダーが、ケイ素又はスズ複合体100質量部に基づき0.5~20質量部の範囲使用されるよう混合比である。
【0049】
溶媒は特に限定されない。溶媒の例には、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルホルムアミド、イソプロパノール、及び水が含まれる。バインダーに溶媒として水が用いられる場合、増粘剤を一緒に用いることが好ましい。溶媒の量は、ペーストによるコレクタを被覆する工程を容易にする好適な粘度を有するように調整される。
【0050】
負極は、ペーストによりコレクタを被覆し、その組合せたものを乾燥し、次いで、その組合せたものを加圧成形することによって形成されてもよい。コレクタの例には、ニッケル又は銅の箔及びメッシュが含まれる。ペーストによるコレクタの被覆方法は限定されない。被覆膜の厚さは、一般的に50~200nmの範囲である。
【0051】
加圧成形方法の例には、ロール圧又はプレス圧を用いる方法が含まれる。加圧成形の際の好ましい圧力は、約100~300MPa(約1~3t/cm)である。このようにして得られる負極は、リチウムバッテリーに好適である。
【0052】
正極は、成分としてカソード活物質を含有する。カソード活物質例には、LiMPO(M=Fe、Ni、Mn、Co、又はそれらの組合せ)、LiNiO、LiMO(M=Mn、Co、Ni、又はそれらの組合せ)、及びLiM(M=Mn、Ni、Cr、Ga、又はそれらの組合せ)が含まれる。リチウムバッテリーに用いられる電解液は限定されない。その例には、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、アセトニトリル、プロピオニトリル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、及びγ-ブチロラクトン、及び固形又はゼラチン質のいわゆるポリマー電解質のような非水の溶媒に、LiClO、LiPF、LiAsF、LiBF、LiSOCF、CHSOLi、及びCFSOLiのようなリチウム塩を溶解することにより得られる、いわゆる有機電解液が含まれる。
【0053】
分離器は、正極及び負極間に提供されてもよい。分離器の例には、不織布、布、並びにポリエチレン、及びポリプロピレン、及びこれらの材料の組合せのような、主にポリオレフィンからなる細孔性の膜が含まれる。
【0054】
このケイ素又はスズ複合体を用いたバッテリーは、従来の方法により組み立てられ、種々の用途に用いられる。使用例は、ラップトップ型パーソナル・コンピューター、携帯電話機、無線アプリケーション、電子手帳、電子化メータ、自動車用電子キー、電力貯蔵装置、電動工具、無線操縦玩具、デジタルカメラ、デジタルビデオ、携帯用のAV機器、掃除機、電動自転車、電動二輪車、電動アシスト自転車、自動車、飛行機、及び船を含む。
このバッテリーは、これらの何れにも使用できる。
【0055】
本願明細書は、多くの特定の実施形態の詳細を含む一方、開示された技術の範囲又は特許請求の範囲に制限するものとして解釈されるべきではなく、むしろ開示された技術の特定の実施形態における特有の特徴の説明として解釈されるべきである。また、異なる実施形態において、本願明細書に説明されているある特定の特徴は、単一の実施形態に組み合わせて実施されてもよい。逆に、単一の実施形態において説明されている種々の特徴は、複数の実施形態に分離して、或いは任意の好適な部分的組合せで実施されてもよい。さらに、特徴は、ある特定の組合せにおいて、及び特許請求の範囲に当初記載のそれ自体においても作用するように説明されてもよいが、特許請求の範囲に記載の組合せからの1以上の特徴は、ある場合には、その組合せから取り除かれてもよく、特許請求の範囲に記載の組合せが、部分的組合せ又は部分的組合せの変形物に向けられてもよい。
【0056】
前述の詳細な説明は、あらゆる点で、限定としてではなく、説明として理解され、本願明細書に開示された技術の範囲は、詳細な説明から決定されるものではなく、むしろ、特許法により認められる最大限の解釈に従って特許請求の範囲から決定されるものである。
示された実施形態及び本願明細書の記載は、開示された技術の原理の説明となるだけであり、種々の変更が、開示された技術の範囲及び趣旨から逸脱せずに実施されてもよいということを理解されたい。
図1
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