(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-25
(45)【発行日】2023-09-04
(54)【発明の名称】鳥インフルエンザウイルスH5亜型に対する免疫原性組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 39/145 20060101AFI20230828BHJP
A61K 39/39 20060101ALI20230828BHJP
A61P 31/16 20060101ALI20230828BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20230828BHJP
C07K 14/11 20060101ALN20230828BHJP
C12N 15/44 20060101ALN20230828BHJP
C12P 21/02 20060101ALN20230828BHJP
【FI】
A61K39/145 ZNA
A61K39/39
A61P31/16
A61P37/04
C07K14/11
C12N15/44
C12P21/02 C
(21)【出願番号】P 2021523705
(86)(22)【出願日】2019-11-05
(86)【国際出願番号】 CN2019115471
(87)【国際公開番号】W WO2020093984
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2021-08-04
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2018/114050
(32)【優先日】2018-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】505258715
【氏名又は名称】ベーリンガー インゲルハイム フェトメディカ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Boehringer Ingelheim Vetmedica GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】ムント エグバート ジークフリート
(72)【発明者】
【氏名】クイ シャオピン
(72)【発明者】
【氏名】フー ゼンレイ
【審査官】池上 文緒
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-508030(JP,A)
【文献】特表2002-541797(JP,A)
【文献】特開平08-333279(JP,A)
【文献】特表平06-505392(JP,A)
【文献】特表2015-512871(JP,A)
【文献】特表2010-523724(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1632124(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102234635(CN,A)
【文献】Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. (2008) vol.105, no.36, p.13538-13543
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/145
A61P 31/16
C07K 14/11
C12N 15/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鳥インフルエンザウイルスH5亜型のヘマグルチニンタンパク質を含む免疫原性組成物であって、前記ヘマグルチニンタンパク質が、
(a)配列番号6に示されるアミノ酸配列;または
(b)配列番号5に示されるアミノ酸配列
を含む免疫原性組成物。
【請求項2】
前記ヘマグルチニンタンパク質が細胞培養物に含有されており、前記細胞培養物が、請求項1に定義されるヘマグルチニンタンパク質をコードする核酸分子を含む発現ベクターを含有する細胞を培養することによって調製される、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項3】
前記核酸分子が配列番号10または11に示される、請求項2に記載の免疫原性組成物。
【請求項4】
前記発現ベクターがバキュロウイルスであり、前記細胞が昆虫細胞である、請求項2~3のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項5】
前記細胞培養物が不活化ステップに供される、請求項2~4のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項6】
前記細胞培養物の一部または全部を含む、請求項2~5のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項7】
アジュバントをさらに含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項8】
前記アジュバントが油中水型エマルジョンである、請求項7に記載の免疫原性組成物。
【請求項9】
単回投与もしくは複数回投与で投与される;および/または
皮下もしくは筋肉内投与される;および/または
1日齢以降、7日齢以降、10日齢以降、15日齢以降もしくは21日齢以降で動物に投与される、
請求項1~8のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項10】
鳥インフルエンザウイルスによって引き起こされる感染症の予防および/または処置に使用するための、請求項1~9のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項11】
鳥インフルエンザウイルスH5Nxによって引き起こされる感染症の予防および/または処置に使用するための、請求項1~9のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項12】
鳥インフルエンザH5N1、H5N2およびH5N6のうちの1つまたは複数によって引き起こされる感染症の予防および/または処置に使用するための、請求項1~9のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項13】
免疫原性組成物の単回投与または複数回投与後に、鳥インフルエンザウイルスによって引き起こされる感染症の予防および/または処置に有効である、請求項10~12のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項14】
免疫原性組成物の単回投与または複数回投与後に、鳥インフルエンザH5Nxによって引き起こされる感染症の予防および/または処置に有効である、請求項10~12のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項15】
免疫原性組成物の単回投与または複数回投与後に、鳥インフルエンザH5N1、H5N2およびH5N6のうちの1つまたは複数によって引き起こされる感染症の予防および/または処置に有効である、請求項10~12のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、獣医学の分野、特に鳥インフルエンザウイルスH5亜型に対する免疫原性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
鳥インフルエンザウイルス(AIV)は、A型インフルエンザウイルスのタイプに属し、世界中で野生の水鳥の間で自然に発生し、哺乳動物を含めて、家禽類およびその他の鳥に感染し得る。A型インフルエンザウイルスは、ヘマグルチニン(HA)とノイラミニダーゼ(NA)というウイルスの表面上の2つのタンパク質に基づいて亜型に区分される。18種のHA亜型および11種のNA亜型が知られている。HAタンパク質とNAタンパク質の多くの異なる組合せが可能である。例えば、「H5N1ウイルス」は、ウイルスがHA亜型5およびNA亜型1を有することを意味する。
H5ウイルスの9種の亜型(H5N1、H5N2、H5N3、H5N4、H5N5、H5N6、H5N7、H5N8およびH5N9、本明細書で「H5Nx」と呼ばれる)が知られている。野鳥および家禽において世界中で同定されているほとんどのH5ウイルスは低病原性鳥インフルエンザウイルスであるが、一部のH5含有ウイルスは高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)ウイルスに属する。H5Nxウイルスは急速に進化し、異なるH5系統間での進化的関係を明らかにする異なるクレード間での相当多様な抗原変異をもたらす。家禽がHPAIウイルスに感染すると、高い死亡率の重病を引き起こし得る。
地域的流行性H5Nxウイルスを有する国々では、この病気を制御するためにワクチン接種が使用されている。ほとんどの一般的なAIVワクチンは、全ウイルスの不活化および適切なアジュバントによる乳化によって調製される不活化全ウイルスを含有するワクチン(不活化ワクチン)である。しかしながら、不活化ワクチンは異なるクレードに対する広範な防御を提供することができない。AIVが急速に進化するために、人々は異なるクレードに対する新たなワクチンを絶えず開発しなければならない。さらに、不活化ワクチンの製造には大量の生きたAIVが必要であるので、バイオセイフティーが深刻な問題となる。
【0003】
HAタンパク質は、A型インフルエンザウイルスの受容体結合および膜融合糖タンパク質である。HAタンパク質は、防御抗体を誘発することができることが知られており、よって、研究者が組換えHAタンパク質に基づくサブユニットワクチンの開発に興味を持つようになっている。国際公開第2007/019094号は、HA分子を、その受容体結合部位のアミノ酸置換を欠くHA分子と比較してより抗原性にする、受容体結合部位のアミノ酸置換を含むHA分子を開示している。国際公開第2008/052173号は、いくつかのアミノ酸変異を含む鳥インフルエンザウイルスH5亜型のヘマグルチニンタンパク質(以下「AIV H5亜型のHAタンパク質」または「H5 HAタンパク質」と呼ぶ)を開示しており、アジュバント付加(adjuvanted)H5 HAタンパク質を含むワクチンが、A型インフルエンザウイルスによって引き起こされる臨床疾患からの防御を提供することができる。しかしながら、上記開示は、異なるクレードのA型インフルエンザウイルスに対するより広範な防御に関連しない。
国際公開第2013/148164号は、ヒトH5N1およびブタH1N1インフルエンザ分離株に基づいて最適化H5N1およびH1N1インフルエンザHAポリペプチドを作製する方法を開示している。最適化インフルエンザHAポリペプチドを含むインフルエンザウイルス様粒子(VLP)も調製されている。実験結果は、VLPが、マウスで2つの異なるクレードのインフルエンザウイルスを認識することができる抗体応答を誘発することができるが、防御有効性がわずか40~60%であることを示している。
AIV H5亜型に対する、家禽でのより広範で、より有効な、長期持続性で、早発性の防御を提供することができるワクチンを開発する必要がある。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、鳥インフルエンザウイルスH5亜型のヘマグルチニンタンパク質を含む免疫原性組成物であって、ヘマグルチニンタンパク質が、配列番号1に示されるアミノ酸残基を参照したナンバリングによる、(a)アミノ酸残基120Nまたは120S、155N、および223Nまたは223S;ならびに(b)61D、87I、99A、102A、110N、136S、140D、149S、156T、157P、170N、172T、178R、190V、191L、200A、226V、243D、268Y、279Aおよび298Iからなる群から選択される1つまたは複数のアミノ酸残基を含む、免疫原性組成物を提供する。
本発明はまた、免疫原性組成物を調製する方法であって、(i)鳥インフルエンザウイルスH5亜型のヘマグルチニンタンパク質を発現する発現ベクターを含有する細胞を培養するステップと;(ii)全細胞培養物を収穫するステップとを含み、ヘマグルチニンタンパク質が、配列番号1に示されるアミノ酸残基を参照したナンバリングによる、(a)アミノ酸残基120Nまたは120S、155N、および223Nまたは223S;ならびに(b)61D、87I、99A、102A、110N、136S、140D、149S、156T、157P、170N、172T、178R、190V、191L、200A、226V、243D、268Y、279Aおよび298Iからなる群から選択される1つまたは複数のアミノ酸残基を含む、方法を提供する。
【0005】
鳥インフルエンザウイルス、好ましくはH5Nxによって引き起こされる感染症の予防および/または処置に使用するための、本発明の免疫原性組成物も提供される。一実施形態では、H5NxがH5N1、H5N2および/またはH5N6である。一実施形態では、H5NxがH5N1である。一実施形態では、H5NxがH5N2である。一実施形態では、H5NxがH5N6である。一実施形態では、H5NxがH5N1およびH5N2である。一実施形態では、H5NxがH5N2およびH5N6である。
AIVに自然感染した動物と本発明の免疫原性組成物をワクチン接種した動物を区別する方法も提供される。
本発明の免疫原性組成物は、家禽でのより広範で、より有効な、長期持続性で、早発性の防御を提供することができる。一実施形態では、本発明の免疫原性組成物が、家禽でのより広範な防御を提供する。一実施形態では、本発明の免疫原性組成物が、家禽でのより有効な防御を提供する。一実施形態では、本発明の免疫原性組成物が、家禽での長期持続性の防御を提供する。一実施形態では、本発明の免疫原性組成物が、家禽での早発性の防御を提供する。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕鳥インフルエンザウイルスH5亜型のヘマグルチニンタンパク質を含む免疫原性組成物であって、前記ヘマグルチニンタンパク質が、
配列番号1に示されるアミノ酸残基を参照したナンバリングによる、
(a)アミノ酸残基120Nまたは120S、155N、および223Nまたは223S;ならびに
(b)61D、87I、99A、102A、110N、136S、140D、149S、156T、157P、170N、172T、178R、190V、191L、200A、226V、243D、268Y、279Aおよび298Iからなる群から選択される1つまたは複数のアミノ酸残基
を含む、免疫原性組成物。
〔2〕前記ヘマグルチニンタンパク質が、
(a)アミノ酸残基61D、87I、99A、102A、110N、120N、136S、140D、149S、155N、156T、157P、170N、172T、178R、190V、191L、200A、223N、226V、243D、268Y、279Aおよび298I;
(b)配列番号6に示されるアミノ酸配列;または
(c)配列番号5に示されるアミノ酸配列
を含む、前記〔1〕に記載の免疫原性組成物。
〔3〕前記ヘマグルチニンタンパク質が配列番号6に示されるアミノ酸配列を含む、前記〔1〕または〔2〕に記載の免疫原性組成物。
〔4〕前記ヘマグルチニンタンパク質が配列番号5に示されるアミノ酸配列を含む、前記〔1〕または〔2〕に記載の免疫原性組成物。
〔5〕前記ヘマグルチニンタンパク質が細胞培養物に含有されており、前記細胞培養物が、前記〔1〕~〔4〕のいずれか1項に定義されるヘマグルチニンタンパク質を発現することができる発現ベクターを含有する細胞を培養することによって調製される、前記〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
〔6〕前記発現ベクターが、前記〔1〕~〔4〕のいずれか1項に定義されるヘマグルチニンタンパク質をコードする核酸分子を含む、前記〔1〕~〔5〕のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
〔7〕前記核酸分子が配列番号10に示される、前記〔6〕に記載の免疫原性組成物。
〔8〕前記核酸分子が配列番号11に示される、前記〔6〕に記載の免疫原性組成物。
〔9〕前記発現ベクターがバキュロウイルスであり、前記細胞が昆虫細胞である、前記〔5〕~〔8〕のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
〔10〕前記細胞培養物が不活化ステップ、好ましくはバイナリエチレンイミンによる不活化ステップに供される、前記〔5〕~〔9〕に記載の免疫原性組成物。
〔11〕前記細胞培養物の一部または全部を含む、前記〔5〕~〔10〕のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
〔12〕アジュバントをさらに含む、前記〔1〕~〔11〕のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
〔13〕前記アジュバントが油中水型エマルジョンである、前記〔12〕に記載の免疫原性組成物。
〔14〕単回投与もしくは複数回投与で投与される;および/または
皮下もしくは筋肉内投与される;および/または
1日齢以降、7日齢以降、10日齢以降、15日齢以降もしくは21日齢以降で動物に投与される、
前記〔1〕~〔13〕のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
〔15〕鳥インフルエンザウイルス、好ましくはH5Nx、より好ましくはH5N1、H5N2およびH5N6のうちの1つまたは複数によって引き起こされる感染症の予防および/または処置に使用するための、前記〔1〕~〔14〕のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
〔16〕免疫原性組成物の単回投与または複数回投与後に、鳥インフルエンザウイルス、好ましくはH5Nx、より好ましくはH5N1、H5N2およびH5N6のうちの1つまたは複数によって引き起こされる感染症の予防および/または処置に有効である、前記〔15〕に記載の免疫原性組成物。
〔17〕免疫原性組成物の単回投与後に、鳥インフルエンザウイルス、好ましくはH5Nx、より好ましくはH5N1、H5N2およびH5N6のうちの1つまたは複数によって引き起こされる感染症の予防および/または処置に有効である、前記〔16〕に記載の免疫原性組成物。
〔18〕鳥インフルエンザウイルスに自然感染した動物と前記〔1〕~〔14〕のいずれか1項に記載の免疫原性組成物をワクチン接種した動物を区別する方法であって、
(a)動物の試料を、前記免疫原性組成物には存在しないが、前記自然感染した動物には存在する鳥インフルエンザマーカーの存在について、酵素免疫測定法もしくは酵素結合免疫吸着測定法である免疫検査および/またはゲノム解析検査で分析するステップと、
(b)前記試料が前記鳥インフルエンザマーカーについて陽性であるか陰性であるかを決定するステップと、
(c)前記検査結果を前記検査動物の状態と相関させ、前記鳥インフルエンザマーカーについて陽性である動物は自然感染した動物であり、前記鳥インフルエンザマーカーについて陰性である動物は前記〔1〕~〔14〕のいずれか1項に記載の免疫原性組成物をワクチン接種した動物である、ステップと
を含む方法。
〔19〕鳥インフルエンザウイルスに自然感染した動物と前記〔1〕~〔14〕のいずれか1項に記載の免疫原性組成物をワクチン接種した動物を区別する方法であって、
(a)動物の試料を、前記免疫原性組成物に特異的であるが、前記自然感染した動物には存在しない鳥インフルエンザマーカーの存在について、酵素免疫測定法もしくは酵素結合免疫吸着測定法である免疫検査および/またはゲノム解析検査で分析するステップと、
(b)前記試料が前記鳥インフルエンザマーカーについて陽性であるか陰性であるかを決定するステップと、
(c)前記検査結果を前記検査動物の状態と相関させ、前記鳥インフルエンザマーカーについて陽性である動物は前記〔1〕~〔14〕のいずれか1項に記載の免疫原性組成物をワクチン接種した動物である、ステップと
を含む方法。
【発明を実施するための形態】
【0006】
一態様では、本発明は、H5 HAタンパク質を含む免疫原性組成物であって、H5 HAタンパク質が、配列番号1に示されるアミノ酸残基を参照したナンバリングによる、(a)アミノ酸残基120Nまたは120S、155N、および223Nまたは223S;ならびに(b)61D、87I、99A、102A、110N、136S、140D、149S、156T、157P、170N、172T、178R、190V、191L、200A、226V、243D、268Y、279Aおよび298Iからなる群から選択される1つまたは複数のアミノ酸残基を含む、免疫原性組成物を提供する。
【0007】
本明細書で使用される場合、「ワクチン」とも呼ばれる、「免疫原性組成物」という用語は、組成物に対する免疫応答を誘発する少なくとも1つの抗原を含む組成物を指す。宿主は、新たな感染症に対する耐性が増強される、および/または臨床徴候の重症度が低減されるように、治療的または防御的免疫応答を示す。
H5 HAタンパク質のアミノ酸配列は、一連のHAアミノ酸配列アラインメント、その後のコンセンサスアミノ酸配列の作製、および各位置で最も共通の残基の分析を通して設計される。本明細書で使用される場合、「本発明のヘマグルチニンタンパク質」、「AIV H5亜型のHAタンパク質」および「H5 HAタンパク質」という用語は互換的である。
【0008】
本明細書で使用される場合、配列番号1は、A/アヒル/中国/E319-2/03株のものであるが、アミノ末端のシグナルペプチドを欠くHAタンパク質のアミノ酸配列を表す(A/アヒル/中国/E319-2/03株のHAタンパク質のアミノ酸配列は国際公開第2008/052173号でも開示された)。配列番号1は、本発明のHAタンパク質のアミノ酸位置を決定するためのHAタンパク質の標準配列として使用される。
【0009】
本明細書で使用される本発明のHAタンパク質のアミノ酸位置のナンバリングは、配列番号1に示されるアミノ酸位置を指す。例えば、「120Nまたは120S」という指定は、配列番号1の120位に対応する位置のNまたはSを意味する。「155N」は、配列番号1の155位に対応する位置のNを意味する。「223Nまたは223S」は、配列番号1の223位に対応する位置のNまたはSを意味する。「61D」は、配列番号1の61位に対応する位置のDを意味する。「87I」は、配列番号1の87位に対応する位置のIを意味する。「99A」は、配列番号1の99位に対応する位置のAを意味する。「102A」は、配列番号1の102位に対応する位置のAを意味する。「110N」は、配列番号1の110位に対応する位置のNを意味する。「136S」は、配列番号1の136位に対応する位置のSを意味する。「140D」は、配列番号1の140位に対応する位置のDを意味する。「149S」は、配列番号1の149位に対応する位置のSを意味する。「156T」は、配列番号1の156位に対応する位置のTを意味する。「157P」は、配列番号1の157位に対応する位置のPを意味する。「170N」は、配列番号1の170位に対応する位置のNを意味する。「172T」は、配列番号1の172位に対応する位置のTを意味する。「178R」は、配列番号1の178位に対応する位置のRを意味する。「190V」は、配列番号1の190位に対応する位置のVを意味する。「191L」は、配列番号1の191位に対応する位置のLを意味する。「200A」は、配列番号1の200位に対応する位置のAを意味する。「226V」は、配列番号1の226位に対応する位置のVを意味する。「243D」は、配列番号1の243位に対応する位置のDを意味する。「268Y」は、配列番号1の268位に対応する位置のYを意味する。「279A」は、配列番号1の279位に対応する位置のAを意味する。「298I」は、配列番号1の298位に対応する位置のIを意味する。それだけに限らないが、BLASTプログラムを使用することによって実施されるアミノ酸アラインメントを含む、アミノ酸の位置を決定する方法が当技術分野で知られている。
【0010】
本発明の免疫原性組成物の一実施形態では、H5 HAタンパク質が、61D、87I、99A、102A、110N、136S、140D、149S、156T、157P、170N、172T、178R、190V、191L、200A、226V、243D、268Y、279Aおよび298Iからなる群から選択されるアミノ酸残基のいずれか1つを含む。一実施形態では、本発明のH5 HAタンパク質が、61D、87I、99A、102A、110N、136S、140D、149S、156T、157P、170N、172T、178R、190V、191L、200A、226V、243D、268Y、279Aおよび298Iからなる群から選択される2つのアミノ酸残基を含む。一実施形態では、本発明のH5 HAタンパク質が、61D、87I、99A、102A、110N、136S、140D、149S、156T、157P、170N、172T、178R、190V、191L、200A、226V、243D、268Y、279Aおよび298Iからなる群から選択される3つ、4つ、5つ、......、または全てのアミノ酸残基を含む。天然に存在するAIV由来のHAタンパク質全体は約568アミノ酸残基長であり、アミノ酸514の上流の全てのアミノ酸残基はウイルス表面上に位置する。本発明の上記アミノ酸部位は、免疫原性エピトープのほとんどを含むと考えられているHAタンパク質のアミノ酸60~300の領域内に位置すると特定されている。一実施形態では、本発明のH5 HAタンパク質がアミノ酸残基120Nまたは120S、155N、および223Nまたは223Sをさらに含む。一実施形態では、本発明のH5 HAタンパク質がアミノ酸残基120N、155Nおよび223Nを含む。一実施形態では、本発明のH5 HAタンパク質がアミノ酸残基120N、155Nおよび223Sを含む。一実施形態では、本発明のH5 HAタンパク質がアミノ酸残基120S、155Nおよび223Nを含む。一実施形態では、本発明のH5 HAタンパク質がアミノ酸残基120S、155Nおよび223Sを含む。
【0011】
本発明の免疫原性組成物の一実施形態では、H5 HAタンパク質が、アミノ酸残基61D、87I、99A、102A、110N、120N、136S、140D、149S、155N、156T、157P、170N、172T、178R、190V、191L、200A、223N、226V、243D、268Y、279Aおよび298Iを含む。一実施形態では、本発明のH5 HAタンパク質が、アミノ酸残基61D、87I、99A、102A、110N、120S、136S、140D、149S、155N、156T、157P、170N、172T、178R、190V、191L、200A、223S、226V、243D、268Y、279Aおよび298Iを含む。一実施形態では、本発明のH5 HAタンパク質が、アミノ酸残基61D、87I、99A、102A、110N、120S、136S、140D、149S、155N、156T、157P、170N、172T、178R、190V、191L、200A、223N、226V、243D、268Y、279Aおよび298Iを含む。一実施形態では、本発明のH5 HAタンパク質が、アミノ酸残基61D、87I、99A、102A、110N、120N、136S、140D、149S、155N、156T、157P、170N、172T、178R、190V、191L、200A、223S、226V、243D、268Y、279Aおよび298Iを含む。
【0012】
本発明の免疫原性組成物の一実施形態では、H5 HAタンパク質が配列番号6に示されるアミノ酸配列を含む。一実施形態では、本発明のH5 HAタンパク質が配列番号5に示されるアミノ酸配列を含む。一実施形態では、本発明のH5 HAタンパク質が配列番号6に示されるアミノ酸配列からなる。一実施形態では、本発明のH5 HAタンパク質が配列番号5に示されるアミノ酸配列からなる。
本明細書で使用される場合、「本発明のH5 HAタンパク質」という用語は、H5 HAタンパク質の単離形態、またはH5 HAタンパク質の非単離形態、例えば細胞培養物に含有されているH5 HAタンパク質であり得る。本発明の免疫原性組成物の一実施形態では、H5 HAタンパク質がH5 HAタンパク質の非単離形態である。本発明の免疫原性組成物の一実施形態では、H5 HAタンパク質がH5 HAタンパク質の単離形態である。
本発明の免疫原性組成物の一実施形態では、H5 HAタンパク質が、H5 HAタンパク質をコードする核酸分子を発現させることによって調製される。
【0013】
一実施形態では、本発明の核酸分子が、細胞での発現のためにさらにコドン最適化され得る。本明細書で使用される「コドン最適化核酸分子」という用語は、コドンが特定の系(特定の種または種のグループなど)での発現に最適となるように選択された核酸分子を意味する。コドン最適化は、コードされるタンパク質のアミノ酸配列を変化させない。一実施形態では、本発明の核酸分子が、昆虫細胞での発現のためにコドン最適化される。
一実施形態では、本発明の核酸分子が配列番号10に示される核酸配列を含む。一実施形態では、本発明の核酸分子が配列番号10に示される核酸配列からなる。一実施形態では、本発明の核酸分子が配列番号11に示される核酸配列を含む。一実施形態では、本発明の核酸分子が配列番号11に示される核酸配列からなる。
本発明の核酸分子は発現ベクターに含まれ得る。一実施形態では、本発明の発現ベクターがウイルス、プラスミド、コスミドまたはファージである。ベクターはDNAまたはRNAのいずれか、好ましくはDNAで構成され得る。
【0014】
ベクターならびに発現のためにベクター(または組換え体)を作製および/または使用する方法は、特に米国特許第4603112号、同第4769330号、同第5174993号、同第5505941号、同第5338683号、同第5494807号、同第4722848号、同第5942235号、同第5364773号、同第5762938号、同第5770212号、同第5942235号、同第382425号、PCT公開、国際公開第94/16716号、国際公開第96/39491号、国際公開第95/30018号;Paoletti, "Applications of pox virus vectors to vaccination: An update, "PNAS USA 93: 11349-11353, October 1996;Moss, "Genetically engineered poxviruses for recombinant gene expression, vaccination, and safety," PNAS USA 93: 11341-11348, October 1996;Smithらの米国特許第4745051号(組換えバキュロウイルス);Richardson, C. D. (Editor), Methods in Molecular Biology 39, "Baculovirus Expression Protocols" (1995 Humana Press Inc.);Smith et al., "Production of Human Beta Interferon in Insect Cells Infected with a Baculovirus Expression Vector", Molecular and Cellular Biology, December, 1983, Vol. 3, No. 12, p. 2156-2165;Pennock et al., "Strong and Regulated Expression of Escherichia coli B-Galactosidase in Infect Cells with a Baculovirus vector, "Molecular and Cellular Biology March 1984, Vol. 4, No. 3, p. 406;欧州特許第0370573号;1986年10月16日に出願された米国特許出願第920197号;欧州特許公開第265785号;米国特許第4769331号(組換えヘルペスウイルス);Roizman, "The function of herpes simplex virus genes: A primer for genetic engineering of novel vectors," PNAS USA 93:11307-11312, October 1996;Andreansky et al., "The application of genetically engineered herpes simplex viruses to the treatment of experimental brain tumors," PNAS USA 93: 11313-11318, October 1996;Robertson et al., "Epstein-Barr virus vectors for gene delivery to B lymphocytes", PNAS USA 93: 11334-11340, October 1996;Frolov et al., "Alphavirus-based expression vectors: Strategies and applications," PNAS USA 93: 11371-11377, October 1996;Kitson et al., J. Virol. 65, 3068-3075, 1991;米国特許第5591439号、同第5552143号;国際公開第98/00166号; 共に1996年7月3日に出願されて認められた米国特許出願第08/675556号および同第08/675566号(組換えアデノウイルス);Grunhaus et al., 1992, "Adenovirus as cloning vectors," Seminars in Virology (Vol. 3) p. 237-52, 1993;Ballay et al. EMBO Journal, vol. 4, p. 3861-65, Graham, Tibtech 8, 85-87, April, 1990;Prevec et al., J. Gen Virol. 70, 42434;PCT国際公開第91/11525号;Felgner et al. (1994), J. Biol. Chem. 269, 2550-2561、Science, 259: 1745-49, 1993;およびMcClements et al., "Immunization with DNA vaccines encoding glycoprotein D or glycoprotein B, alone or in combination, induces protective immunity in animal models of herpes simplex virus-2 disease", PNAS USA 93: 11414-11420, October 1996;ならびに米国特許第5591639号、同第5589466号および同第5580859号ならびに国際公開第90/11092号、国際公開第93/19183号、国際公開第94/21797号、国際公開第95/11307号、国際公開第95/20660号;DNA発現ベクターに関連するTang et al., NatureおよびFurth et al., Analytical Biochemistryに開示される方法により得るまたはこれらと同様であり得る。国際公開第98/33510号;Ju et al., Diabetologia, 41: 736-739, 1998(レンチウイルス発現系);Sanfordらの米国特許第4945050号;Fischbachetら(Intracel)の国際公開第90/01543号;Robinson et al., Seminars in Immunology vol. 9, pp. 271-283 (1997)(DNAベクター系);Szokaらの米国特許第4394448号(DNAを生細胞に挿入する方法);McCormickらの米国特許第5677178号(細胞変性ウイルスの使用);および米国特許第5928913号(遺伝子送達用のベクター);ならびに本明細書で引用される他の文献も参照されたい。
【0015】
一実施形態では、本発明の発現ベクターがウイルスベクターである。
一実施形態では、本発明の発現ベクターが、オーエスキー病ウイルス、ウマヘルペスウイルスまたは単純ヘルペスウイルスなどのヘルペスウイルスである。一実施形態では、本発明の発現ベクターがブタアデノウイルスなどのアデノウイルスである。一実施形態では、本発明の発現ベクターが、ワクシニアウイルス、トリポックスウイルス、カナリアポックスウイルスまたはブタポックスウイルスなどのポックスウイルスである。
【0016】
一実施形態では、ウイルスベクターが組換えバキュロウイルスである。一実施形態では、本発明の組換えバキュロウイルスが、BaculoGold(BD Biosciences Pharmingen、サンディエゴ、カリフォルニア州)から得られる。一実施形態では、本発明の組換えバキュロウイルスが、Sapphire(商標)バキュロウイルス(Allele Biotechnology)から得られる。一実施形態では、本発明の組換えバキュロウイルスが本発明のH5 HAタンパク質をコードする核酸分子を含む。一実施形態では、本発明の組換えバキュロウイルスが配列番号10に示される核酸分子を含む。一実施形態では、本発明の組換えバキュロウイルスが配列番号11に示される核酸分子を含む。
本発明の免疫原性組成物の一実施形態では、H5 HAタンパク質が細胞培養物に含有されている。本発明の細胞培養物は、HAタンパク質を含有する細胞および培養培地、または細胞培養物の一部、例えば濾過または任意の他の分離ステップによって得られるHAタンパク質を含有する細胞培養物の一部を含む、細胞培養法から得られる全細胞培養物であり得る。
【0017】
一実施形態では、細胞培養物が、配列番号1に示されるアミノ酸残基を参照したナンバリングによる、(a)アミノ酸残基120Nまたは120S、155N、および223Nまたは223S;ならびに(b)61D、87I、99A、102A、110N、136S、140D、149S、156T、157P、170N、172T、178R、190V、191L、200A、226V、243D、268Y、279Aおよび298Iからなる群から選択される1つまたは複数のアミノ酸残基を含むH5 HAタンパク質を含む。一実施形態では、細胞培養物が、アミノ酸残基61D、87I、99A、102A、110N、120N、136S、140D、149S、155N、156T、157P、170N、172T、178R、190V、191L、200A、223N、226V、243D、268Y、279Aおよび298Iを含むH5 HAタンパク質を含む。一実施形態では、細胞培養物が、配列番号6に示されるアミノ酸配列を含むH5 HAタンパク質を含む。一実施形態では、細胞培養物が、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含むH5 HAタンパク質を含む。
【0018】
本発明の免疫原性組成物はアジュバントをさらに含む。一実施形態では、免疫原性組成物がアジュバント中で製剤化される。本明細書で使用される「アジュバント」は、水酸化アルミニウムおよびリン酸アルミニウム、サポニン、例えばQuil A、QS-21(Cambridge Biotech Inc.、マサチューセッツ州ケンブリッジ)、GPI-0100(Galenica Pharmaceuticals,Inc.、バーミンガム、アラバマ州)、油中水型エマルジョン、水中油型エマルジョン、水中油中水型エマルジョンを含むことができる。エマルジョンは特に、ライトリキッドパラフィン油(欧州薬局方型);スクアランまたはスクアレンなどのイソプレノイド;アルケン、特にイソブテンまたはデセンのオリゴマー化から得られる油;直鎖アルキル基を含む酸またはアルコールのエステル、より具体的には植物油、オレイン酸エチル、プロピレングリコールジ(カプリレート/カプレート)、グリセリルトリ(カプリレート/カプレート)またはプロピレングリコールジオレエート;分岐脂肪酸またはアルコールのエステル、特にイソステアリン酸エステルに基づき得る。油はエマルジョンを形成するために乳化剤と組み合わせて使用される。乳化剤は、好ましくは非イオン性界面活性剤、特にソルビタン、マンニド(例えば、アンヒドロマンニトールオレエート)、グリコール、ポリグリセロール、プロピレングリコールおよびエトキシル化されていてもよいオレイン酸、イソステアリン酸、リシノール酸またはヒドロキシステアリン酸のエステル、およびポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンコポリマーブロック、特にPluronic製品、特にL121である。Hunter et al., The Theory and Practical Application of Adjuvants (Ed.Stewart-Tull, D. E. S.), JohnWiley and Sons, NY, pp51-94 (1995)およびTodd et al., Vaccine 15:564-570 (1997)を参照されたい。例示的なアジュバントは、“Vaccine Design, The Subunit and Adjuvant Approach” edited by M. Powell and M. Newman, Plenum Press, 1995の147頁に記載されるSPTエマルジョンおよびこの同じ本の183頁に記載されるエマルジョンMF59である。
【0019】
アジュバントのさらなる例は、アクリル酸またはメタクリル酸のポリマー、および無水マレイン酸とアルケニル誘導体のコポリマーから選択される化合物である。有利なアジュバント化合物は、特に糖またはポリアルコールのポリアルケニルエーテルと架橋したアクリル酸またはメタクリル酸のポリマーである。これらの化合物は、カルボマーという用語で知られている(Phameuropa Vol. 8, No. 2, June 1996)。当業者はまた、少なくとも3個、好ましくは8個以下のヒドロキシル基を有し、少なくとも3個のヒドロキシルの水素原子が少なくとも2個の炭素原子を有する不飽和脂肪族基によって置き換えられているポリヒドロキシル化化合物と架橋したこのようなアクリルポリマーを記載する米国特許第2909462号を参照することができる。好ましい基は、2~4個の炭素原子を含むもの、例えばビニル、アリルおよび他のエチレン性不飽和基である。不飽和基自体がメチルなどの他の置換基を含んでもよい。Carbopol(BF Goodrich、オハイオ州、米国)という名称で販売されている製品が特に適切である。これらは、アリルスクロースまたはアリルペンタエリスリトールと架橋している。その中でも、Carbopol 974P、934Pおよび971Pが挙げられる。Carbopol 971Pの使用が最も好ましい。無水マレイン酸とアルケニル誘導体のコポリマーの中には、無水マレイン酸とエチレンのコポリマーであるコポリマーEMA(Monsanto)がある。これらのポリマーを水に溶解すると酸溶液が得られ、これは、免疫原性、免疫学的またはワクチン組成物自体が組み込まれるアジュバント溶液を得るために、好ましくは生理的pHに中和される。
【0020】
さらに適切なアジュバントには、それだけに限らないが、RIBIアジュバント系(Ribi Inc.)、ブロックコポリマー(CytRx、ジョージア州アトランタ)、SAF-M(Chiron、カリフォルニア州エメリービル)、モノホスホリルリピドA、Avridine脂質-アミンアジュバント、大腸菌(E.coli)(組換え体またはその他)由来の易熱性エンテロトキシン、コレラ毒素、IMS 1314もしくはムラミルジペプチド、または天然に存在するもしくは組換えのサイトカインもしくはその類似体、または内因性サイトカイン放出の刺激剤などが含まれる。
【0021】
一実施形態では、免疫原性組成物が、適切なアジュバントで油中水型エマルジョンに製剤化される。アジュバントは油および界面活性剤を含むことができる。一実施形態では、アジュバントがMONTANIDE(商標)ISA 71R VG(Seppic Incによって製造される、カタログ番号:365187)である。アジュバントは1用量当たり約100μg~約10mgの量で添加され得る。さらにより好ましくは、アジュバントは1用量当たり約100μg~約10mgの量で添加される。さらにより好ましくは、アジュバントは1用量当たり約500μg~約5mgの量で添加される。さらにより好ましくは、アジュバントは1用量当たり750μg~約2.5mgの量で添加される。最も好ましくは、アジュバントは1用量当たり約1mgの量で添加される。一実施形態では、本発明の免疫原性組成物が、1用量当たり約7部のアジュバントを含有する油相および約3部の本発明のH5 HAタンパク質を含有する水相を含む。
【0022】
驚くべきことに、本発明の免疫原性組成物が家禽でのより広範な防御をもたらすことができることが分かった。本明細書で使用される「家禽でのより広範な防御」という用語は、異なるAIV H5亜型に対する広範な防御を包含する。このような亜型は、H5N1、H5N2および/またはH5N6を包含する、またはさらなる実施形態によると、からなる。さらなる実施形態によると、「家禽でのより広範な防御」という用語はまた、AIV H5亜型の異なるクレードに対する防御を包含する。このようなAIV H5クレードは、2.3.4.4、2.3.2.1、2.3.2.1d、2.3.4.4dおよび/または7.2を包含する、またはさらなる実施形態によると、からなる。
【0023】
さらに、本発明の免疫原性組成物によって提供される防御は早発性および長期持続性期間を有する。本明細書で使用される「早発性期間」または「早発性の防御」という用語は、感染性AIV H5ウイルスに対する部分的防御がワクチン接種7日後に得られることを意味する。感染性AIV H5ウイルスに対する完全な防御はワクチン接種14日後に得られる。「長期持続性期間」または「家禽での長期持続性の防御」という用語は、ワクチン接種後少なくとも42日間の防御期間を包含する。
本発明の免疫原性組成物は、異なる日齢のニワトリ、生まれたばかりのニワトリ、すなわち出生1日目のニワトリさえも防御を提供することができる。本発明の免疫原性組成物は、ある特定の投与経路に限定されてはならず、本発明の免疫原性組成物の防御有効性は異なる投与経路によって影響されない。
【0024】
別の態様では、本発明はまた、免疫原性組成物を調製する方法であって、(i)H5 HAタンパク質を発現することができる発現ベクターを含有する細胞を培養するステップと;(ii)H5 HAタンパク質またはH5 HAタンパク質を含む全細胞培養物を収穫するステップとを含み、H5 HAタンパク質が、配列番号1に示されるアミノ酸残基を参照したナンバリングによる、(a)アミノ酸残基120Nまたは120S、155N、および223Nまたは223S;ならびに(b)61D、87I、99A、102A、110N、136S、140D、149S、156T、157P、170N、172T、178R、190V、191L、200A、226V、243D、268Y、279Aおよび298Iからなる群から選択される1つまたは複数のアミノ酸残基を含む、方法を提供する。
【0025】
本発明の方法の一実施形態では、H5 HAタンパク質が、アミノ酸残基61D、87I、99A、102A、110N、120N、136S、140D、149S、155N、156T、157P、170N、172T、178R、190V、191L、200A、223N、226V、243D、268Y、279Aおよび298Iを含む。一実施形態では、H5 HAタンパク質が配列番号6に示されるアミノ酸配列を含む。一実施形態では、H5 HAタンパク質が配列番号5に示されるアミノ酸配列を含む。
本発明の方法の一実施形態では、発現ベクターが、本発明の核酸分子を含む組換えバキュロウイルスである。一実施形態では、本発明の核酸分子が配列番号10に示される。一実施形態では、本発明の核酸分子が配列番号11に示される。一実施形態では、組換えバキュロウイルスが、商標Sapphire(商標)バキュロウイルス(Allele Biotechnology)で販売されている市販の製品から得られる。一実施形態では、細胞が昆虫細胞である。一実施形態では、昆虫細胞がSF+細胞である。一実施形態では、SF+細胞が、Protein Sciences Corporation(メリデン、コネチカット州)によって販売されている市販の製品である。
【0026】
本発明の方法の一実施形態では、本方法が、本発明の核酸分子を含む組換えバキュロウイルスを調製するステップを含む。一実施形態では、本発明の核酸分子が配列番号10に示される。一実施形態では、本発明の核酸分子が配列番号11に示される。一実施形態では、組換えバキュロウイルスが、商標Sapphire(商標)バキュロウイルス(Allele Biotechnology)で販売されている市販の製品から得られる。
本発明の方法の一実施形態では、本方法が、細胞を本発明の組換えバキュロウイルスに感染させるステップを含む。一実施形態では、細胞が昆虫細胞である。一実施形態では、昆虫細胞がSF+細胞である。一実施形態では、SF+細胞が、Protein Sciences Corporation(メリデン、コネチカット州)によって販売されている市販の製品である。
【0027】
本発明の方法の一実施形態では、本方法が、本発明の核酸分子を含む組換えバキュロウイルスを調製するステップと、昆虫細胞を組換えバキュロウイルスに感染させるステップとを含む。一実施形態では、組換えバキュロウイルスが、商標Sapphire(商標)バキュロウイルス(Allele Biotechnology)で販売されている市販の製品から得られる。一実施形態では、本発明の核酸分子が配列番号10に示される。一実施形態では、本発明の核酸分子が配列番号11に示される。一実施形態では、昆虫細胞がSF+細胞である。一実施形態では、SF+細胞が、Protein Sciences Corporation(メリデン、コネチカット州)によって販売されている市販の製品である。
【0028】
本発明の方法の一実施形態では、本方法が、(i)本発明の核酸分子を含む組換えバキュロウイルスを調製するステップと;(ii)昆虫細胞を組換えバキュロウイルスに感染させるステップと;(iii)昆虫細胞を培養培地で培養するステップと;(iv)本発明のH5 HAタンパク質または本発明のH5 HAタンパク質を含む全細胞培養物を収穫するステップとを含む。一実施形態では、組換えバキュロウイルスが、商標Sapphire(商標)バキュロウイルス(Allele Biotechnology)で販売されている市販の製品から得られる。一実施形態では、本発明の核酸分子が配列番号10に示される。一実施形態では、本発明の核酸分子が配列番号11に示される。一実施形態では、昆虫細胞がSF+細胞である。一実施形態では、SF+細胞が、Protein Sciences Corporation(メリデン、コネチカット州)によって販売されている市販の製品である。
【0029】
本発明の方法の一実施形態では、本発明の細胞を培養するための培養培地が当業者によって決定される。一実施形態では、培養培地が無血清昆虫細胞培地である。一実施形態では、培養培地がEx-CELL 420(昆虫細胞用のEx-CELL(登録商標)420無血清培地、Sigma-Aldrich、カタログ14420C)である。
本発明の方法の一実施形態では、昆虫細胞が、H5 HAタンパク質の発現に適した条件下で培養される。一実施形態では、昆虫細胞が、最大10日間、好ましくは約2日間~約10日間、より好ましくは約4日間~約9日間、さらにより好ましくは約5日間~約8日間の期間にわたってインキュベートされる。一実施形態では、昆虫細胞を培養するのに適した条件が、約22~32℃の間、好ましくは約24~30℃、より好ましくは約25~29℃、さらにより好ましくは約26~28℃、最も好ましくは約27℃の温度を含む。
本発明の方法の一実施形態では、本方法が、本発明の細胞培養物を不活化するステップをさらに含む。それだけに限らないが、化学処理および/または物理処理を含む、任意の慣用的な不活化方法を本発明の目的に使用することができる。
【0030】
一実施形態では、不活化ステップが、好ましくは約1~約20mM、好ましくは約2~約10mM、より好ましくは約5mMまたは10mMの濃度の環化バイナリエチレンイミン(BEI)の添加を含む。一実施形態では、不活化ステップが、NaOH中で環化されてBEIを形成する2-ブロモエチレンアミン臭化水素酸塩の溶液の添加を含む。
一実施形態では、不活化ステップが、25~40℃の間、好ましくは28~39℃の間、より好ましくは30~39℃の間、より好ましくは35~39℃の間で実施される。一実施形態では、不活化ステップが、24~72時間、好ましくは30~72時間、より好ましくは48~72時間実施される。一般に、不活化ステップは、ウイルスベクターの複製が検出できなくなるまで実施される。
【0031】
本発明の方法の一実施形態では、本方法が、不活化ステップの後の中和ステップのステップをさらに含む。中和ステップは、溶液中の不活化剤を中和する当量の薬剤を添加することを含む。一実施形態では、不活化剤がBEIである。一実施形態では、中和剤がチオ硫酸ナトリウムである。一実施形態では、不活化剤がBEIである場合、当量のチオ硫酸ナトリウムが添加される。例えば、BEIが最終濃度5mMまで添加される場合、1.0Mのチオ硫酸ナトリウム溶液が添加されて最終的な最小濃度5mMを与えて、残留BEIを中和する。一実施形態では、不活化剤がBEIである場合、中和ステップが、チオ硫酸ナトリウム溶液を1~20mM、好ましくは2~10mM、より好ましくは5mMまたは10mMの最終濃度まで添加することを含む。一実施形態では、ウイルスベクターの複製を検出することができないことを意味する、不活化ステップが完了した後に、中和剤が添加される。一実施形態では、不活化ステップが24時間実施された後に、中和剤が添加される。一実施形態では、不活化ステップが30時間実施された後に、中和剤が添加される。一実施形態では、不活化ステップが48時間実施された後に、中和剤が添加される。一実施形態では、不活化ステップが72時間実施された後に、中和剤が添加される。
【0032】
本発明の免疫原性組成物に含有されるH5 HAタンパク質の量は、当技術分野で知られている任意の慣用的な方法、例えば赤血球凝集アッセイ(OIE Terrestrial Manual 2015, Chapter 2.3.1 & 2.3.2, Avian Influenza (infection with avian influenza viruses)参照)を使用することによって定量化することができる。一実施形態では、本発明の免疫原性組成物に含有されるH5 HAタンパク質の量が、ニワトリ赤血球を使用する赤血球凝集検査によって決定され、H5 HAタンパク質の量が赤血球凝集アッセイ単位(HAU)として表され得る。
【0033】
「HAU」という用語は赤血球(RBC)を凝集させる活性の単位を指し、1HAUのヘマグルチニンタンパク質は、ヘマグルチニンをRBCと混合した場合に凝集を引き起こす最小単位を指す。HAUは赤血球凝集価アッセイによって評価することができる。このアッセイでは、ヘマグルチニンタンパク質を含有する試料を96ウェルプレートでの2倍系列希釈に供し、PBC溶液をウェルに添加する。HAUの値は、RBCの完全な凝集をもたらす試料の最大希釈倍率である。例えば、25μl試料の最大希釈倍率が256である場合、試料に含有されるヘマグルチニンタンパク質の量は25μl当たり256HAUである。
本発明による有効な免疫応答を誘発するために、本発明の免疫原性組成物に含有されるH5 HAタンパク質の量は1用量当たり少なくとも32HAUである。よって、本発明の免疫原性組成物は、1用量当たり少なくとも32HAUの本発明のH5 HAタンパク質を含む。さらなる態様では、本発明の免疫原性組成物が、1用量当たり少なくとも64HAUの本発明のH5 HAタンパク質を含む。さらなる態様では、本発明の免疫原性組成物が、1用量当たり少なくとも128HAUの本発明のH5 HAタンパク質を含む。さらなる態様では、本発明の免疫原性組成物が、1用量当たり少なくとも256HAUの本発明のH5 HAタンパク質を含む。
【0034】
当業者は、単なる日常的な試験によってH5 HAタンパク質の量の上限を決定することができる。一般に、当業者によって使用される上限は1用量当たり約1024HAUの範囲となるが、より高くてもよいだろう。さらなる態様では、本発明の免疫原性組成物が、1用量当たり少なくとも32~1024HAUの本発明のH5 HAタンパク質を含む。さらなる態様では、本発明の免疫原性組成物が、1用量当たり少なくとも64~1024HAUの本発明のH5 HAタンパク質を含む。さらなる態様では、本発明の免疫原性組成物が、1用量当たり少なくとも128~1024HAUの本発明のH5 HAタンパク質を含む。さらなる態様では、本発明の免疫原性組成物が、1用量当たり少なくとも256~1024HAUの本発明のH5 HAタンパク質を含む。
バイオセイフティーレベル2または3(BSL-2、BSL-3)で製造されるために必要とされる従来の全ウイルス不活化ワクチンと比較して、H5 HAタンパク質を製造するための上記製造方法は、バイオセイフティーレベル1要件に分類されている。
別の態様では、本発明はまた、AIVによって引き起こされる感染症を予防および/または処置する方法であって、有効量の本発明の免疫原性組成物を、それを必要とする対象に投与するステップを含む方法を提供する。本発明はまた、AIVによって引き起こされる感染症の予防および/または処置に使用するための、本発明の免疫原性組成物を提供する。
【0035】
本明細書で使用される場合、「予防」という用語は、最大でインフルエンザ感染症の臨床徴候の完全な予防を含む、このような臨床徴候の発生または重症度の減少を指す。免疫原性組成物の予防防御有効性は、異なるAIVクレードに対するワクチン接種した対象の生存率に基づいて評価することができる。一実施形態では、免疫原性組成物の防御有効性が、本発明のワクチンを受けなかったが、感染レベルのAIVに曝露された対象と比較して、少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、なおより好ましくは少なくとも30%、さらにより好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、なおより好ましくは少なくとも60%、さらにより好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、なおより好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは100%増加する。一実施形態では、免疫原性組成物の防御有効性が、異なるAIVクレードに対してワクチン接種した対象で100%である。
【0036】
一実施形態では、それを必要とする対象が家禽、さらにより好ましくは鳥、ニワトリ、アヒル、シチメンチョウなどであり得る。一実施形態では、対象がニワトリまたはアヒルである。
一実施形態では、AIVがH5亜型である。一実施形態では、AIVがH5Nxである。一実施形態では、AIVが、主にアジア、中東およびアフリカで広がっているHPAI H5Nxである。一実施形態では、H5NxがH5N1、H5N2および/またはH5N6である。一実施形態では、H5NxがH5N1である。一実施形態では、H5NxがH5N2である。一実施形態ではH5NxがH5N6である。一実施形態では、H5NxがH5N1およびH5N2である。一実施形態では、H5NxがH5N2およびH5N6である。一実施形態では、AIVがクレード2、好ましくはクレード2.3、より好ましくはクレード2.3.4および2.3.2である。一実施形態では、AIVがクレード2.3.4.4、2.3.2.1、2.3.2.1dまたは2.3.4.4dである。一実施形態では、AIVがクレード7.2である。
亜型H5N1、H5N2および/またはH5N6のH5Nxは当技術分野で周知である。
【0037】
本明細書で使用される場合、「クレード」という用語は、1つの共通の祖先の全ての子孫を含む生物学的分類群(種など)を指す。A/アヒル/広東/1/96が全てのH5系統ウイルスの先祖であると考えられ、クレード0と指定された。この命名法が現在H5 HA遺伝子の変異群を区別するために使用されており、今までに約20種の異なるクレードのウイルスが公式に同定されている。クレード0以外に、寄託された全ての配列に基づいて、さらに9種のクレード(1~9)が記載および定義された。しかしながら、ウイルスのクレードのほとんどは時間とともに絶滅した。H5系統ウイルスは、アジア、中東およびアフリカの一部で家禽および野鳥で広がり続けており、進化し続けている。いくつかの異なる国々で地域的流行性感染症をもたらしたほとんどの優勢なクレードがクレード2ウイルスであり、抗原連続変異から得られたさらなる亜系統が二次、三次、四次およびさらには五次クレードとして記載されている。命名法および出現したクレードは、WHO/OIE/FAO. Continuing progress towards a unified nomenclature for the highly pathogenic H5N1 avian influenza viruses: divergence of clade 2.2 viruses. Influenza Other Respiration Viruses. Letter. 2009;3:59-62;WHO/OIE/FAO. Continued evolution of highly pathogenic avian influenza A (H5N1): updated nomenclature. Influenza Other Respiration Viruses 2012;6:1-5;およびWHO-OIE-FAO HNEWG. Revised and updated nomenclature for highly pathogenic avian influenza A (H5N1) viruses. Influenza Other Respiration Viruses 2014;8:384-388から見ることができる。
【0038】
例えば、クレード2.3.4.4のH5Nxは、Lee et al., Emerging Infectious Diseases, 2016; Volume 22(7) pp.1283-1284およびLee et al., Journal Veterinary Science 2017; Vol.(S1), pp.269-280に記載されている。Smith et al., Emerging Infectious Diseases, 2009; Volume 15(3), pp.402-407に記載される鳥インフルエンザ分離株A/一般的なカササギ/香港/5052/2007(H5N1)は、クレード2.3.2.1に属する。A/ニワトリ/インド/CL03485/2011(H5N1)またはA/ニワトリ/インド/CA0302/2011(H5N1)を含む、クレード2.3.2.1のさらなるH5Nx分離株は、例えばBhat et al., 2015, Microbial Pathogenesis; volume 88, pp.87-93に記載されている。2.3.2.1ならびに例えばA/アヒル/ベトナム/HU1-1507/2014(H5N6)またはA/アヒル/ベトナム/HU1-1151/2014(H5N6)などの2.3.4.4dを含む2.3.4.4のサブクレードのさらなるH5Nxは、Nguyen et al., 2019, Scientific Reports 9; Article 7723, pp.1-13に記載されている。例えば(A/ニワトリ/甘粛/62012(H5N1))を含むクレード7.2のH5Nx分離株は、例えばLiu et al., Journal of Virology 2016, Volume 90(21), pp.9797-9804に記載され、特徴づけられている。
【0039】
一実施形態では、本発明の免疫原性組成物が皮下(S.C.)または筋肉内(I.M.)投与を介して投与され得る。
本発明の免疫原性組成物の投与の時間は、実用上の要件に従って当業者によって決定され得る。例えば、その寿命が約40~50日間であるホワイトブロイラーについては、本発明の免疫原性組成物が1回で投与され得;その寿命が約70日間であるイエローブロイラーについては、本発明の免疫原性組成物が2回で投与され得;その寿命が1年超またはそれより長い種鶏などのニワトリについては、本発明の免疫原性組成物が複数回で投与され得る。一実施形態では、本発明の免疫原性組成物が単回投与で投与される。一実施形態では、本発明の免疫原性組成物が2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回または10回などの複数回投与で投与される。一実施形態では、2回の間の間隔が4週間、5週間または6週間などの約4~6週間である。
【0040】
当業者はまた、実用的な要件に従って、いつ初回投与を行うかを決定することができる。例えば、ニワトリをワクチン接種する場合。一実施形態では、本発明の免疫原性組成物が、1日齢以降、7日齢以降、10日齢以降、15日齢以降または21日齢以降で最初に投与され得る。一実施形態では、本発明の免疫原性組成物が、1日齢以降、7日齢以降、10日齢以降、15日齢以降または21日齢以降で投与される。一実施形態では、本発明の免疫原性組成物が、単回投与で1日齢、7日齢、10日齢、15日齢または21日齢から投与される。一実施形態では、本発明の免疫原性組成物が、単回投与で1日齢から投与される。
【0041】
別の態様では、本発明はまた、AIVに自然感染した動物と本発明のワクチンまたは免疫原性組成物をワクチン接種した動物を区別する方法を提供する。本発明はまた、AIVに自然感染した動物とワクチン接種した動物を区別するための薬剤の調製における本発明の免疫原性組成物の使用を提供する。
【0042】
一実施形態では、本方法が、a)動物の試料を、免疫原性組成物には存在しないが、自然感染した動物には存在する鳥インフルエンザマーカーの存在について、酵素免疫測定法もしくは酵素結合免疫吸着測定法もしくは寒天ゲル内沈降アッセイもしくはウエスタンブロットアッセイである免疫検査および/またはゲノム解析検査で分析するステップと、b)試料が鳥インフルエンザマーカーについて陽性であるか陰性であるかを決定するステップと、c)検査結果を検査動物の状態と相関させ、鳥インフルエンザマーカーについて陽性である動物は自然感染した動物であり、鳥インフルエンザマーカーについて陰性である動物は本発明の免疫原性組成物またはワクチンをワクチン接種した動物である、ステップとを含む。
一実施形態では、本方法が、a)動物の試料を、免疫原性組成物に特異的であるが、自然感染した動物には存在しない鳥インフルエンザマーカーの存在について、酵素免疫測定法もしくは酵素結合免疫吸着測定法である免疫検査および/またはゲノム解析検査で分析するステップと、b)試料が鳥インフルエンザマーカーについて陽性であるか陰性であるかを決定するステップと、c)検査結果を検査動物の状態と相関させ、鳥インフルエンザマーカーについて陽性である動物は本発明の免疫原性組成物またはワクチンをワクチン接種した動物である、ステップとを含む。
一実施形態では、動物が家禽、さらにより好ましくは鳥、ニワトリ、アヒル、シチメンチョウなどであり得る。一実施形態では、動物がニワトリまたはアヒルである。
【0043】
一実施形態では、AIVがH5亜型である。一実施形態では、AIVがH5Nxである。一実施形態では、AIVが、主にアジア、中東およびアフリカで広がっているHPAI H5Nxである。一実施形態では、H5NxがH5N1、H5N2および/またはH5N6である。一実施形態では、H5NxがH5N1である。一実施形態では、H5NxがH5N2である。一実施形態ではH5NxがH5N6である。一実施形態では、H5NxがH5N1およびH5N2である。一実施形態では、H5NxがH5N2およびH5N6である。
一実施形態では、AIVがクレード2、好ましくはクレード2.3、より好ましくはクレード2.3.4および2.3.2である。一実施形態では、AIVがクレード2.3.4.4または2.3.2.1、2.3.2.1dまたは2.3.4.4dである。一実施形態では、AIVがクレード7.2である。
【0044】
本発明のH5 HAタンパク質を含むワクチンまたは免疫原性組成物をワクチン接種した動物はこの特異的抗原に対する抗体応答を有するに過ぎず、他のウイルス構成要素に対する不の応答を有する。本発明のさらなる利点は、これがAIV感染動物とワクチン接種した動物を区別するための特異的ELISAによるDIVA概念に役立つことである。
別の態様では、本発明はまた、本発明のH5 HAタンパク質、核酸分子、ベクター、細胞、または本発明のワクチンもしくは免疫原性組成物を含むキットを提供する。一実施形態では、キットが、家禽、さらにより好ましくは鳥、ニワトリ、アヒル、シチメンチョウなどの対象に使用され得る。一実施形態では、ニワトリがワクチン接種される場合、本発明のH5 HAタンパク質、ワクチンまたは免疫原性組成物が、1日齢以降、7日齢以降、10日齢以降、15日齢以降または21日齢以降でワクチン接種に使用され得る。一実施形態では、本発明の免疫原性組成物が、単回投与で1日齢、7日齢、10日齢、15日齢または21日齢から投与される。一実施形態では、本発明の免疫原性組成物が、単回投与で1日齢から投与される。
【0045】
特に定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、出願時に本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。用語の意味および範囲は明らかになるはずであるが、潜在的に曖昧である場合には、本明細書で提供される定義が辞書または外的定義より優先する。さらに、文脈によって特に要求されない限り、単数形の用語は複数形を含むものとし、複数形の用語は単数形を含むものとする。本明細書では、特に明言しない限り、「または(or)」の使用が「および/または(and/or)」を意味する。さらに、「含む(including)」という用語ならびに「含む(comprises)」および「含まれる(comprised)」などの他の形態の使用は限定的ではない。本明細書で言及される全ての特許および刊行物は参照により本明細書に組み込まれる。
【0046】
本発明の実施は、特に指示しない限り、当業者の技能の範囲内である、ウイルス学、分子生物学、微生物学、組換えDNA技術、タンパク質化学および免疫学の慣用的な技術を使用する。このような技術は文献で完全に説明されている。例えば、Sambrook, Fritsch & Maniatis, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Vols. I, II and III, Second Edition (1989);DNA Cloning, Vols. I and II (D. N. Glover ed. 1985);Oligonucleotide Synthesis (M. J. Gait ed. 1984);Nucleic Acid Hybridization (B. D. Hames & S. J. Higgins eds. 1984);Animal Cell Culture (R. K. Freshney ed. 1986);Immobilized Cells and Enzymes (IRL press, 1986); Perbal, B., A Practical Guide to Molecular Cloning (1984);the series, Methods In Enzymology (S. Colowick and N. Kaplan eds., Academic Press, Inc.);Protein purification methods - a practical approach (E.L.V. Harris and S. Angal, eds., IRL Press at Oxford University Press);およびHandbook of Experimental Immunology, Vols. I-IV (D. M. Weir and C. C. Blackwell eds., 1986, Blackwell Scientific Publications)を参照されたい。
【0047】
本明細書で使用される用語法が、本発明の特定の実施形態を記載する目的のためのものに過ぎず、限定的であることを意図していないことも理解されるべきである。本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、文脈が明確に指示しない限り、単数形「a」、「an」および「the」が複数指示対象を含むことに留意しなければならない。よって、例えば、「抗原(an antigen)」への言及は2つ以上の抗原の混合物を含み、「担体(a carrier)」への言及は2つ以上の担体の混合物を含む等々である。
【0048】
条項
以下の条項もまた本明細書に記載され、本発明の開示の一部である:
1.鳥インフルエンザウイルスH5亜型のヘマグルチニンタンパク質を含む免疫原性組成物であって、ヘマグルチニンタンパク質が、
配列番号1に示されるアミノ酸残基を参照したナンバリングによる、
(a)アミノ酸残基120Nまたは120S、155N、および223Nまたは223S;ならびに
(b)61D、87I、99A、102A、110N、136S、140D、149S、156T、157P、170N、172T、178R、190V、191L、200A、226V、243D、268Y、279Aおよび298Iからなる群から選択される1つまたは複数のアミノ酸残基
を含む、免疫原性組成物。
【0049】
2.ヘマグルチニンタンパク質が、
(a)アミノ酸残基61D、87I、99A、102A、110N、120N、136S、140D、149S、155N、156T、157P、170N、172T、178R、190V、191L、200A、223N、226V、243D、268Y、279Aおよび298I;
(b)配列番号6に示されるアミノ酸配列;または
(c)配列番号5に示されるアミノ酸配列
を含む、条項1に記載の免疫原性組成物。
【0050】
3.ヘマグルチニンタンパク質が配列番号6に示されるアミノ酸配列を含む、条項1または2に記載の免疫原性組成物。
4.ヘマグルチニンタンパク質が配列番号5に示されるアミノ酸配列を含む、条項1または2に記載の免疫原性組成物。
5.ヘマグルチニンタンパク質が細胞培養物に含有されており、細胞培養物が、条項1~4のいずれか1項に定義されるヘマグルチニンタンパク質を発現することができる発現ベクターを含有する細胞を培養することによって調製される、条項1~4のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
6.発現ベクターが、条項1~4のいずれか1項に定義されるヘマグルチニンタンパク質をコードする核酸分子を含む、条項1~5のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
7.核酸分子が配列番号10に示される、条項6に記載の免疫原性組成物。
8.核酸分子が配列番号11に示される、条項6に記載の免疫原性組成物。
9.発現ベクターがバキュロウイルスであり、細胞が昆虫細胞である、条項5~8のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【0051】
10.細胞培養物が不活化ステップ、好ましくはバイナリエチレンイミンによる不活化ステップに供される、条項5~9に記載の免疫原性組成物。
11.細胞培養物の一部または全部を含む、条項5~10のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
12.アジュバントをさらに含む、条項1~11のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
13.アジュバントが油中水型エマルジョンである、条項12に記載の免疫原性組成物。
14.単回投与もしくは複数回投与で投与される;および/または
皮下もしくは筋肉内投与される;および/または
1日齢以降、7日齢以降、10日齢以降、15日齢以降もしくは21日齢以降で動物に投与される、
条項1~13のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【0052】
15.1日齢以降、7日齢以降、10日齢以降、15日齢以降または21日齢以降で動物に投与される、条項1~14のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
16.21日齢から動物に投与される、条項1~14のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
17.15日齢から動物に投与される、条項1~14のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
18.7日齢から動物に投与される、条項1~14のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
19.1日齢から動物に投与される、条項1~14のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【0053】
20.1日齢から動物に投与される、条項1~14のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
21.鳥インフルエンザウイルス、好ましくはH5Nx、より好ましくはH5N1、H5N2およびH5N6のうちの1つまたは複数によって引き起こされる感染症の予防および/または処置に使用するための、条項1~20のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
22.H5N1鳥インフルエンザウイルスによって引き起こされる感染症の予防および/または処置に使用するための、条項1~20のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
23.H5N2鳥インフルエンザウイルスによって引き起こされる感染症の予防および/または処置に使用するための、条項1~20のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
24.H5N6鳥インフルエンザウイルスによって引き起こされる感染症の予防および/または処置に使用するための、条項1~20のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【0054】
25.クレード2、好ましくはクレード2.3、より好ましくはクレード2.3.4または2.3.2のH5Nx鳥インフルエンザウイルスによって引き起こされる感染症の予防および/または処置に使用するための、条項1~20のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
26.クレード2のH5Nx鳥インフルエンザウイルスによって引き起こされる感染症の予防および/または処置に使用するための、条項1~20のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
27.クレード2.3のH5Nx鳥インフルエンザウイルスによって引き起こされる感染症の予防および/または処置に使用するための、条項1~20のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
28.クレード2.3.4のH5Nx鳥インフルエンザウイルスによって引き起こされる感染症の予防および/または処置に使用するための、条項1~20のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
29.クレード2.3.4.4のH5Nx鳥インフルエンザウイルスによって引き起こされる感染症の予防および/または処置に使用するための、条項1~20のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【0055】
30.クレード2.3.4.4dのH5Nx鳥インフルエンザウイルスによって引き起こされる感染症の予防および/または処置に使用するための、条項1~20のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
31.クレード2.3.2のH5Nx鳥インフルエンザウイルスによって引き起こされる感染症の予防および/または処置に使用するための、条項1~20のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
32.クレード2.3.2.1のH5Nx鳥インフルエンザウイルスによって引き起こされる感染症の予防および/または処置に使用するための、条項1~20のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
33.クレード2.3.2.1dのH5Nx鳥インフルエンザウイルスによって引き起こされる感染症の予防および/または処置に使用するための、条項1~20のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
34.クレード7.2のH5Nx鳥インフルエンザウイルスによって引き起こされる感染症の予防および/または処置に使用するための、条項1~20のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【0056】
35.単回投与で投与される、条項1~34のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
36.単回投与として投与され、前記単回が鳥インフルエンザウイルスによって引き起こされる感染症の予防および/または処置に有効である、条項1~34のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
37.単回投与として投与され、前記単回がH5N1、H5N2およびH5N6のうちの1つまたは複数によって引き起こされる感染症の予防および/または処置に有効である、条項1~34のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
38.単回投与として投与され、前記単回が条項22~34で引用されるいずれかのH5Nxによって引き起こされる感染症の予防および/または処置に有効である、条項1~34のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【0057】
39.鳥インフルエンザウイルスに自然感染した動物と条項1~13のいずれか1項に記載の免疫原性組成物をワクチン接種した動物を区別する方法であって、
(a)動物の試料を、免疫原性組成物には存在しないが、自然感染した動物には存在する鳥インフルエンザマーカーの存在について、酵素免疫測定法もしくは酵素結合免疫吸着測定法である免疫検査および/またはゲノム解析検査で分析するステップと、
(b)試料が鳥インフルエンザマーカーについて陽性であるか陰性であるかを決定するステップと、
(c)検査結果を検査動物の状態と相関させ、鳥インフルエンザマーカーについて陽性である動物は自然感染した動物であり、鳥インフルエンザマーカーについて陰性である動物は条項1~13のいずれか1項に記載の免疫原性組成物をワクチン接種した動物である、ステップと
を含む方法。
【0058】
40.鳥インフルエンザウイルスに自然感染した動物と条項1~13のいずれか1項に記載の免疫原性組成物をワクチン接種した動物を区別する方法であって、
(a)動物の試料を、免疫原性組成物に特異的であるが、自然感染した動物には存在しない鳥インフルエンザマーカーの存在について、酵素免疫測定法もしくは酵素結合免疫吸着測定法である免疫検査および/またはゲノム解析検査で分析するステップと、
(b)試料が鳥インフルエンザマーカーについて陽性であるか陰性であるかを決定するステップと、
(c)検査結果を検査動物の状態と相関させ、鳥インフルエンザマーカーについて陽性である動物は条項1~13のいずれか1項に記載の免疫原性組成物をワクチン接種した動物である、ステップと
を含む方法。
【0059】
配列概要
以下の配列を本発明でこれにより詳述および開示する:
配列番号1:アヒル/中国/E319-2/03株のものであるが、アミノ末端のシグナルペプチドを欠くHAタンパク質のアミノ酸配列。
配列番号2:H5Con1のアミノ酸配列。
配列番号3:H5Con3のアミノ酸配列。
配列番号4:H5Con5のアミノ酸配列。
配列番号5:H5Con5Mutのアミノ酸配列。
配列番号6:H5Con5Mutの60~300位のアミノ酸配列。
配列番号7:H5Con1の最適化核酸配列。
配列番号8:H5Con3の最適化核酸配列。
配列番号9:H5Con5の最適化核酸配列。
配列番号10:H5ConMutの最適化核酸配列。
配列番号11:H5Con5Mutの60~300位のアミノ酸配列をコードする最適化核酸配列。
以下の図面は本発明の一部を形成し、本発明のある特定の態様をさらに実証するために含まれる。本発明は、本明細書に提示される具体的な実施形態の詳細な説明と組み合わせてこれらの図面のうちの1つまたは複数を参照することによってより良く理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【
図1】H5Con1配列を1996~2012年に分離された444個の配列から連続法で作製したことを示す図である。
【
図2】H5Con3配列を1996~2012年に分離された特定のクレードの297個の配列から1ラウンド法で作製したことを示す図である。
【
図3】H5Con5配列を2005~2012年に分離された196個の配列から1ラウンド法で作製したことを示す図である。
【
図4】トランスファープラスミドpVL1393-H5Con5Mutの構築を示す図である。
【実施例】
【0061】
以下の実施例は、本明細書に記載される本発明をさらに説明し、本発明の実施形態を実証するために含まれる。以下の実施例に開示される技術は、本発明の実施でうまく機能することが本発明者らによって発見された技術を表し、よって、その実施のためのモードを構成するとみなすことができることが当業者によって認識されるはずである。しかしながら、当業者は、本開示に照らして、多くの変更が、開示される具体的な実施形態で行われ、本発明の精神および範囲内にある同様のまたは類似の結果をなお得ることができることを認識するはずである。
【0062】
(実施例1)
H5 HAコンセンサスアミノ酸配列およびその突然変異体の作製
H5N1インフルエンザHAコンセンサスアミノ酸配列1の作製
H5N1インフルエンザHAコンセンサスアミノ酸配列1(H5Con1)を作製するために、1996年~2012年に中国で分離された444個の鳥H5N1インフルエンザHAアミノ酸配列を収集および分析した。444個のHAアミノ酸配列は、クレード0、クレード2.2、クレード2.3.2、クレード2.3.2.1、クレード2.3.4、クレード2.4、クレード2.5、クレード3、クレード4、クレード5、クレード6、クレード7およびクレード9で構成される。
図1は、1996~2012年に分離された444個のアミノ酸配列からH5Con1を作製する連続法を示している。最初に、13個の第1層コンセンサスアミノ酸配列を作製し、各層は、(1)36個のクレード0配列;(2)31個のクレード2.2配列;(3)8個のクレード2.3.2;(4)49個のクレード2.3.2.1;(5)2個のクレード2.3.3;(6)210個のクレード2.3.4;(7)18個のクレード2.4;(8)6個のクレード2.5;(9)9個のクレード3;(10)5個のクレード4;(11)8個のクレード5;(12)3個のクレード6;(13)34個のクレード7;および(14)21個のクレード9を使用して個々のクレードを表す。最終コンセンサスアミノ酸配列は、MEGA 5.0ソフトウェアを使用して、全13個の第1層コンセンサスアミノ酸配列を整列および分析することによって作製された第2層コンセンサスアミノ酸配列である。この最終コンセンサスアミノ酸配列をH5Con1(配列番号2)として指定した。
【0063】
H5N1インフルエンザHAコンセンサス配列3の作製
H5N1インフルエンザHAコンセンサスアミノ酸配列3(H5Con3)を作製するために、1996年~2012年に中国で分離された297個の鳥H5N1インフルエンザHAアミノ酸配列を収集および分析した。297個のHAアミノ酸配列は、特定のクレードのみ、すなわち、クレード2.3.2.1、クレード2.3.4およびクレード7で構成される。
図2は、1996~2012年に分離された特定のクレードの297個のアミノ酸配列からH5Con3を作製する1ラウンド法を示している。最終コンセンサスアミノ酸配列は、MEGA 5.0ソフトウェアを使用して、(1)49個のクレード2.3.2.1、(2)214個のクレード2.3.4;および(3)34個のクレード7を整列および分析することによって作製した。この最終コンセンサスアミノ酸配列をH5Con3(配列番号3)として指定した。
【0064】
H5N1インフルエンザHAコンセンサスアミノ酸配列5の作製
H5N1インフルエンザHAコンセンサスアミノ酸配列5(H5Con5)を作製するために、2005年~2012年に中国で分離された196個の鳥H5N1インフルエンザHAアミノ酸配列を収集および分析した。196個のHAアミノ酸配列は、クレード0、2.2、2.3.1、2.3.2、2.3.2.1、2.3.4、2.4、7および9のものである。
図3は、2005~2012年に分離された196個のアミノ酸配列からH5Con5を作製する1ラウンド法を示している。合計196個のアミノ酸配列をMEGA 5.0ソフトウェアを使用して同時に整列した。最終コンセンサスアミノ酸配列をH5Con5(配列番号4)として指定した。
H5Con1、H5Con3およびH5Con5を作製する戦略を表1に要約する。
【0065】
H5N1インフルエンザHAコンセンサスアミノ酸配列5突然変異体の作製
H5N1インフルエンザHAコンセンサスアミノ酸配列5突然変異体(H5Con5Mut)を作製するために、2つのアミノ酸突然変異をH5Con5のアミノ酸配列に導入した。アミノ酸120位および223位で、両方のセリン(S)をアスパラギン(N)に変異させた、すなわち、S120NおよびS223Nとした。H5Con5Mutのアミノ酸配列は配列番号5によって示された。
【0066】
H5Con1、H5Con3およびH5Con5の分析
表2は、H5Con1、H5Con3およびH5Con5のコンセンサスアミノ酸配列と流行しているクレードの配列の同一性%を示している。表3は、H5 HAタンパク質の一部の予想される抗原部位でのH5Con1、H5Con3およびH5Con5のコンセンサスアミノ酸配列の各々のアミノ酸使用をさらに示している。
【0067】
表2. H5Con1、H5Con3およびH5Con5のコンセンサスアミノ酸配列と流行しているクレードの配列の同一性%の要約
【0068】
表3. H5 HAタンパク質の予想される抗原部位でのH5Con1、H5Con3およびH5Con5のコンセンサスアミノ酸配列の各々のアミノ酸使用の要約
【0069】
H5Con1、H5Con3およびH5Con5が流行しているクレードの各々の配列と比較してアミノ酸配列が異なり、また3つの異なる流行しているクレード間で抗原部位のいくつかのアミノ酸変化を有することが表2および表3から分かる。
【0070】
(実施例2)
H5Con1、H5Con3、H5Con5およびH5Con5Mutの核酸配列の最適化、組換えバキュロウイルス発現系の構築、ならびに昆虫細胞でのH5Con1、H5Con3、H5Con5およびH5Con5Mutの発現
H5Con1、H5Con3、H5Con5およびH5Con5Mutの核酸配列の最適化
より優れた発現のために最適化するために、実施例1で特定されるH5Con1、H5Con3およびH5Con5のアミノ酸配列の各々を、Vector NTIソフトウェアによって対応する核酸配列に逆推定し、バキュロウイルス発現系(Allele Biotechnology、カタログABP-BVP-10002)の昆虫細胞での発現のために最適化した。H5Con1、H5Con3およびH5Con5の最適化核酸配列をGenScript(GenScript、ニュージャージー州、米国)によって合成した。H5Con1、H5Con3およびH5Con5の最適化核酸配列はそれぞれ配列番号7~9によって示された。H5Con5Mutの最適化核酸配列を、H5Con5の最適化核酸配列に基づいて、部位特異的変異誘発用のキット(QuickChange Site-directed Mutagenesisキット、カタログ番号200518、Agilent)を使用することによって作製した。H5ConMutの最適化核酸配列は配列番号10によって示された。
【0071】
組換えバキュロウイルス発現系の構築、ならびに昆虫細胞でのH5Con1、H5Con3、H5Con5およびH5Con5Mutの発現
上で調製されるH5Con1、H5Con3、H5Con5およびH5Con5Mutの最適化核酸配列の各々を、Sapphire(商標)バキュロウイルスDNAおよびトランスフェクションキット(Allele Biotechnology、カタログABP-BVD-10002)に含まれるバキュロウイルス発現系トランスファーベクターpVL1393に挿入して、それぞれpVL1393-H5Con1、pVL1393-H5Con3、pVL1393-H5Con5およびpVL1393-H5Con5Mutとして指定されるトランスファープラスミドを作製した。
図4は、トランスファープラスミドpVL1393-H5Con5Mutの構築を例示的に示している。
【0072】
次いで、pVL1393-H5Con1、pVL1393-H5Con3、pVL1393-H5Con5およびpVL1393-H5Con5Mutの各々を、線状化野生型Sapphire(商標)バキュロウイルスDNA(Sapphire(商標)バキュロウイルスDNAおよびトランスフェクションキット;Allele Biotechnology、カタログABP-BVD-10002)と共にsf9昆虫細胞(Invitrogen、カタログ番号B825-01、ロット番号1030672)にコトランスフェクトして、救済組換えバキュロウイルスを得た。H5Con1、H5Con3、H5Con5およびH5Con5Mutの最適化核酸配列を含む組換えバキュロウイルスを、それぞれrBacH5Con1、rBacH5Con3、rBacH5Con5およびrBacH5Con5Mutとして指定した。そして、組換えバキュロウイルスの各々を含有するトランスフェクトsf9細胞を得た。
上で調製されるトランスフェクトsf9細胞を27℃インキュベーターで4日間培養し、細胞培養物の上清を収穫した。純粋な組換えウイルスを得るために、次いで、収穫した上清をプラーク精製に供した。3ラウンドのプラーク精製を行って、それぞれrBacH5Con1、rBacH5Con3、rBacH5Con5およびrBacH5Con5Mutを含有するウイルスプラークを第3ラウンドのプラーク精製後にピックアップして、精製rBacH5Con1、rBacH5Con3、rBacH5Con5およびrBacH5Con5Mutを得た。
【0073】
上記精製rBacH5Con1、rBacH5Con3、rBacH5Con5およびrBacH5Con5Mutの各々を、振盪フラスコ中の懸濁培養昆虫細胞株SF+細胞(昆虫細胞用のEx-CELL(登録商標)420無血清培地、Sigma-Aldrich、カタログ14420C)でさらに増殖させた。手短に言えば、SF+細胞(Protein Sciences Corporation、メリデン、コネチカット州)を、振盪フラスコに106細胞/mlの密度で播種し、上記精製rBacH5Con1、rBacH5Con3、rBacH5Con5およびrBacH5Con5Mutの各々を、MOI=0.01~MOI=1でSF+細胞(Protein Sciences,Inc.、メリデン、コネチカット州)に接種した。接種したSF+細胞を、27℃、振盪速度80~120rpm/分で、EX-CELL 420培地で3~7日間培養し、それぞれ発現したH5Con1、H5Con3、H5Con5およびH5Con5Mutを含有する細胞培養物懸濁液を次のステップのために後で収穫した。収穫した細胞培養物懸濁液は、0.5~1.5×106細胞/mlの間の細胞数を含んでいた。
【0074】
(実施例3)
細胞培養物懸濁液のHAUの決定
それぞれH5Con1、H5Con3、H5Con5およびH5Con5Mutを含有する細胞培養物懸濁液のHAUを、2倍系列希釈法により赤血球凝集アッセイ(OIE Terrestrial Manual 2015, Chapter 2.3.1 & 2.3.2, Avian Influenza (infection with avian influenza viruses)参照)によって試験した。手短に言えば、10mlのRBC(Southern Regent Plant、浙江省製)を500gで20分間遠心分離し、1体積の4%遠心分離RBCを3体積のPBSに添加して1%RBCを調製した。25μlのPBSを96ウェルプレートのウェル1~ウェル11に分注した。25μlの細胞培養物懸濁液の各々をウェル1~ウェル11に添加し、次いで、1:2~1:2048倍の系列希釈に供した。25μlの1%RBCを全てのウェルに添加し、室温で約40分間インキュベートした。
陰性ウェルはウェルの中心にドットとして現れ、陽性結果はウェルにわたって均一な赤みがかった色を形成した。希釈の終点は、RBCの完全な凝集をもたらす試料の最大希釈に対応する。結果は、H5Con1、H5Con3、H5Con5およびH5Con5Mutの細胞培養物懸濁液のHAUが71.1HAU/25μl(256HAU/90μlまたは256HAU/用量に対応する)超であることを示した。
【0075】
(実施例4)
免疫原性組成物の調製
HAUが256/用量超の収穫した細胞培養物懸濁液を、37℃で72時間、10mMバイナリエチレンイミン(BEI)溶液を添加することによるBEI処理にさらに供して、バキュロウイルスの感染力を不活化した。次いで、10mMの4℃チオ硫酸ナトリウム溶液を添加してBEI残留物を中和した。
不活化後、細胞培養物懸濁液のHAUを再度評価し、HAUが256/用量超の不活化細胞培養物懸濁液を、アジュバントによる次の乳化手順に使用するための活性抗原成分として使用した。
【0076】
H5Con1、H5Con3、H5Con5およびH5Con5Mutの免疫原性組成物を油中水型エマルジョンに調製した。手短に言えば、油中水型エマルジョンは連続油相および分散水相からなる二相系であり、水相が油相に小液滴として分散している。免疫原性組成物を調製するために使用される油相は市販のアジュバントMONTANIDE(商標)ISA 71R VG(Seppic Inc.によって製造されている、カタログ番号365187)であり、水相はH5Con1、H5Con3、H5Con5およびH5Con5Mutの不活化細胞培養物懸濁液の各々を含有していた。各用量(0.3ml)の免疫原性組成物について、約3部の水相(90μl)を約7部の油相(210μl)に添加し、低せん断速度(約11000rpmで1分間)下、室温で、次いで、氷水浴中、16000rpmの高せん断速度で2分間分散させた。Miccra分散機(分散機、カタログ番号:Miccra D-9、分散機ヘッド、カタログ番号:DS-14/P)を使用して油中水中エマルジョンを調製した。H5Con1、H5Con3、H5Con5およびH5Con5Mutの免疫原性組成物の各々について、H5Con1、H5Con3、H5Con5およびH5Con5Mutの量は少なくとも256HAU/用量とした。
【0077】
(実施例5)
H5Con1、H5Con3、H5Con5およびH5Con5Mutについての交差反応性試験および選択
SPFニワトリ孵化卵をSPAFAS Jinanから購入した。孵化後、SPFニワトリをランダムに選び取り、指定される隔離飼育器で飼育した。H5Con1、H5Con3、H5Con5およびH5Con5Mutの交差反応性試験では、Re-4~Re-8および03H5(MutK+)を使用してH5Con1、H5Con3、H5Con5およびH5Con5Mutの反応性試験を評価した。
【0078】
Re-4~Re-8はそれぞれクレード7.2、2.3.4、2.3.2.1、7.2および2.3.4.4に対する全AIV(H5亜型)の不活化ワクチンであり、これらはHarbin Weike Biotechnology Development Co.,Ltd.製の市販の製品である。03H5(MutK+)は、さらに以下のアミノ酸の変化:S120N、D150N、S223NおよびさらにK328(国際公開第2013024113号参照)を有する、A/アヒル/中国/E319-2/03株由来のバキュロウイルス発現HAタンパク質である。03H5(MutK+)を、H5Con1、H5Con3、H5Con5およびH5Con5Mutと同じ方法を使用することによって、免疫原性組成物に製剤化した。
【0079】
10日齢の10羽の特定病原菌不在(SPF)ニワトリに、それぞれ皮下注射を介して、1用量(0.3ml)の上記Re-4~Re-8および免疫原性組成物をワクチン接種した。ワクチン接種したニワトリを隔離飼育器で絶えず飼育した。個々のニワトリの血清試料を、ワクチン接種前、ワクチン接種2週間後およびワクチン接種3週間後に収集した。さらに、赤血球凝集阻止(HI)試験(OIE Terrestrial Manual 2015, Chapter 2.3.4, Avian Influenza (infection with avian influenza viruses参照)を使用することによって、同じワクチン接種群内の10羽のニワトリのプールから調製した血清試料を試験してH5Con1、H5Con3、H5Con5およびH5Con5Mutの交差HI反応性を決定した。HI試験では、H5Con1、H5Con3、H5Con5およびH5Con5Mutと6つの異なるクレード(rBac03H5はクレード2.3.2を表し、Re4はクレード7.2を表し、Re5はクレード2.3.4を表し、Re6はクレード2.3.2.1を表し、Re7はクレード7.2を表し、Re8はクレード2.3.4.4を表す)の抗原の交差反応性を評価した。
【0080】
Re-4~Re-8、03H5(MutK+)、H5Con1、H5Con3、H5Con5およびH5Con5Mutの交差HI反応性のスコアを表4に示した。表4中、「+」は試験した血清が交差反応し得る異なるクレードに由来する異種抗原の数を表す。「++++」でスコアリングされた血清は4つの異なるクレードとの交差反応性を示し、「+++」でスコアリングされた血清は3つの異なるクレードとの交差反応性を示し、「++」でスコアリングされた血清は2つの異なるクレードとの交差反応性を示し、「+」でスコアリングされた免疫血清はただ1つのクレードとの交差反応性を示した。「+」~「++++」のスコアはより広範な交差反応性を示す。「++++」スコアをもたらす抗原を次の実験に選択した。
【0081】
交差反応性の結果に基づいて、H5Con5Mutがより広範な交差反応性を有すると決定することができる。
【0082】
(実施例6)
ウイルス曝露および防御有効性試験
03H5MutK+(クレード2.3.2)、H5Con3およびH5Con5Mutの防御有効性をこの実施例でさらに試験した。防御有効性試験では、Re6+7+8、03H5MutK+(クレード2.3.2)、H5Con3およびH5Con5Mutを評価した。Re6+7+8は、クレード2.3.2.1、クレード7.2およびクレード2.3.4.4に対する三価ワクチン(Re6+Re7+Re8の混合物)であり、Harbin Weike Biotechnology Development Co.,Ltd.から購入した。Re6+7+8を各クレードの曝露ウイルスに対する防御有効性についての陽性対照ワクチンとして使用した。1)383株(クレード2.3.2.1)、2)14079株(クレード2.3.4.4)および3)13147株(クレード7.2)の3つの異なるクレードの高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)H5Nxウイルスのストックを調製し、曝露試験に使用した。SPFニワトリに、1用量(0.3ml)のRe6+7+8、ならびに03H5MutK+(クレード2.3.2)、H5Con3およびH5Con5Mutを含む免疫原性組成物(それぞれ少なくとも256/用量の同等のHAUを有する)を、21日齢で皮下経路を介してワクチン接種した。ワクチン接種したニワトリをABSL3(動物生物学的安全性レベル3)施設で飼育した。
【0083】
ワクチン接種3週間(21日)後、ニワトリを試験1回当たり3種のH5Nx曝露ウイルスのうちの1つに点鼻によって曝露した。各ニワトリについての曝露量は6Log10EID50(EID50=胚感染量の50%、これは接種した孵化卵の50%で感染を引き起こす感染性ウイルスの量を意味する)とした。ニワトリを曝露後2週間監視し、ニワトリの死亡率および罹患率を毎日記録した。各ニワトリの気管および総排出腔の綿スワブを曝露3日後、5日後および7日後に収集した。ウイルス排出を、ニワトリ胚ベースのウイルス分離を介して綿スワブ試料で試験した。
【0084】
曝露ウイルスの各々に対する防御有効性の評価は、以下の基準に基づいた:1)100%のワクチン接種したニワトリが2週間の監視期間中に生存する(死亡率0%)かどうか。
3回のワクチン接種/曝露動物試験を行い、表5はRe6+7+8、03H5MutK+(クレード2.3.2)、H5Con3およびH5Con5Mutの防御有効性を示す。
【0085】
H5Con5Mutを含む免疫原性組成物をワクチン接種したニワトリは、クレード2.3.4.4、クレード2.3.2.1およびクレード7.2のHPAIウイルスに曝露した場合、100%の防御を示すことが実証された。すなわち、Re6+Re7+Re8の混合物などの従来のワクチンと比較して、H5Con5Mutを含む免疫原性組成物それ自体が、3つの異なるクレードのAIVに対するより優れたより広範な防御を同時に提供した。
【0086】
(実施例7)
異なるHPAI H5亜型に対する防御有効性試験
異なるHPAI H5亜型に対するH5Con5Mutの防御有効性をこの実施例でさらに試験した。
1a~5a群を、H5Con5Mutを投与した免疫化群として設定し、1b~5b群を、HPAI曝露のみを実施した対照群として設定した。各群は12羽の10日齢SPFニワトリを含んでいた。試験日(D0)に、1a~5aの群のニワトリに1用量(0.3ml)のH5Con5Mutを含む免疫原性組成物を皮下経路を介してワクチン接種した。21免疫化後日数(dpi)後、全ての群のニワトリを異なるHPAI H5亜型に鼻腔内曝露し、曝露量は6Log10EID50/200μl/ニワトリとした。曝露後14日間、各群のニワトリの罹患率および死亡率を毎日計算した。
【0087】
HAPIの臨床症状には、元気がない(insufficient spirits)、乱れた羽毛、有意に低下した食欲、咳、鼻および目からの分泌物、顔の腫脹、チアノーゼ、下痢、神経症状が含まれる。少なくとも3つの臨床症状の出現を罹患率の計算に使用した。死亡率は死んだニワトリを数えることによって計算した。防御%は、防御されたニワトリを試験したニワトリの総量で割ることによって計算した。
曝露に使用したHPAI H5亜型は以下の通りであった:
【0088】
曝露株は、South China Agriculture University、Wushan Road、Tianhe District、広州、広東省、中国から入手し、上記のH5N1(クレード2.3.3.1(d)および2.3.4.4)、H5N2(クレード7.2)およびH5N6クレード(2.3.4.4(d))の代表的な分離株である。
【0089】
異なるAIV H5亜型に対するH5Con5Mutの観察された防御有効性を表6に要約した。
【0090】
表6は、各対照群で、曝露後14週間の間に100%の死亡率が観察されたので、21dpiでの曝露が有効であり、ニワトリをH5N1、H5N2およびH5N6に曝露した場合、H5Con5Mutが100%の防御を示すことを示した。このデータは、H5Con5Mutが異なるHPAI H5亜型に対するより優れたより広範な防御有効性を提供することを実証した。
【0091】
(実施例8)
H5Con5Mutの防御開始試験
HPAI曝露に対するH5Con5Mutの防御開始をこの実施例でさらに試験した。
1aおよび2a群を、H5Con5Mutを投与した免疫化群として設定し、1bおよび2b群を、HPAI曝露(14079株)のみを実施した対照群として設定した。各群は12羽の10日齢SPFニワトリを含んでおり、実験を2回繰り返した。試験日(D0)に、1aおよび2a群のニワトリに1用量(0.3ml)のH5Con5Mutを含む免疫原性組成物を皮下経路を介してワクチン接種した。7免疫化後日数(dpi)後、1aおよび1b群のニワトリを14079株に鼻腔内曝露した。14免疫化後日数(dpi)後、2aおよび2b群のニワトリを14079株に鼻腔内曝露した。曝露量は6Log10EID50/200μl/ニワトリとした。曝露後14日間、各群のニワトリの罹患率および死亡率を毎日計算した。H5Con5Mutの観察された防御開始を表7に要約した。
【0092】
表7は、H5Con5Mutが、早くも7dpiで防御を誘導し、14dpiで防御100%であることを実証した。このデータは、H5Con5MutがHPAI曝露に対する迅速な早発性防御を提供することを実証した。
【0093】
(実施例9)
H5Con5Mutの防御期間試験
HPAI曝露に対するH5Con5Mutの防御期間をこの実施例でさらに試験した。
【0094】
1~3群を、H5Con5Mutを投与した免疫化群として設定し、4群を、HPAI曝露(14079株)のみを実施した対照群として設定した。各群は、12羽の10日齢SPFニワトリを含んでおり、実験を2回実施した。試験日(D0)に、1~3群のニワトリに1用量(0.3ml)のH5Con5Mutを含む免疫原性組成物を皮下経路を介してワクチン接種した。28dpi、35dpiおよび42dpi後、1~3群のニワトリをそれぞれ14079株に鼻腔内曝露した。対照群では、ニワトリを28dpi後に14079株に鼻腔内曝露した。曝露量は6Log10EID50/200μl/ニワトリとした。曝露後14日間、各群のニワトリの罹患率および死亡率を毎日計算した。H5Con5Mutの観察された防御期間を表8に要約した。
【0095】
表8は、H5Con5Mutが少なくとも42dpi続く100%防御を提供することを示した。このデータは、H5Con5MutがHPAI曝露に対する長期持続性の有効な防御を提供することを実証した。
【0096】
(実施例10)
異なる日齢のニワトリでの防御試験
HPAI曝露に対する異なる日齢のニワトリでのH5Con5Mutの防御をこの実施例でさらに試験した。
【0097】
1~2群を、H5Con5Mutを投与した免疫化群として設定し、3群を、HPAI曝露(14079株)のみを実施した対照群として設定した。各群は12羽のSPFニワトリを含んでおり、実験を2回実施した。1群では、1日齢のニワトリに1用量(0.3ml)のH5Con5Mutを含む免疫原性組成物を皮下経路を介してワクチン接種した。2群では、10日齢のニワトリに1用量(0.3ml)のH5Con5Mutを含む免疫原性組成物を皮下経路を介してワクチン接種した。21dpi後、1~3群のニワトリをそれぞれ14079株に鼻腔内曝露した。曝露量は6Log10EID50/200μl/ニワトリとした。曝露後14日間、各群のニワトリの罹患率および死亡率を毎日計算した。異なる日齢のニワトリでのH5Con5Mutの観察された防御を表9に要約した。
【0098】
表9は、H5Con5MutがHPAI曝露に対する100%防御を1日齢ニワトリに提供することを示した。このデータは、H5Con5Mutが新生仔からでさえニワトリでの優れた防御を提供することを実証した。
【0099】
(実施例11)
異なる投与経路の防御試験
異なる投与経路を介したニワトリでのH5Con5Mutの防御をこの実施例でさらに試験した。
1~2群を、H5Con5Mutを投与した免疫化群として設定し、3群を、HPAI曝露(14079株)のみを実施した対照群として設定した。各群は12羽の10日齢SPFニワトリを含んでおり、実験を2回実施した。試験日(D0)に、1~2群のニワトリに皮下(S.C.)または筋肉内(I.M.)投与を介して1用量(0.3ml)のH5Con5Mutを含む免疫原性組成物を皮下経路を介してワクチン接種した。21dpi後、1~3群のニワトリをそれぞれ14079株に鼻腔内曝露した。曝露量は6Log10EID50/200μl/ニワトリとした。曝露後14日間、各群のニワトリの罹患率および死亡率を毎日計算した。異なる投与経路を介したニワトリでのH5Con5Mutの観察された防御を表10に要約した。
【0100】
【0101】
表10は、H5Con5MutがS.C.経路とI.M.経路の両方を介してニワトリで優れた防御を提供し、H5Con5Mutの防御有効性はある特定の投与経路に限定されないことを示した。柔軟な投与方法により、H5Con5Mutがほとんど筋肉のない新生仔などの異なる発育状態のニワトリに適したものとなることが可能になった。
【0102】
本明細書に開示および請求される組成物および方法の全てが、本開示に照らして、不要な実験をすることなく調製および実行することができる。本発明の組成物および方法は例示される実施形態に関して記載されているが、本発明の概念、精神および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載される組成物および方法および方法のステップまたはステップの順序に変化を適用できることが当業者に認識されよう。より具体的には、化学的と生理的の両方で関連するある特定の薬剤が本明細書に記載される薬剤に置換し得るが、同じまたは類似の結果が達成されることが明らかである。当業者に明らかなこのような類似の代替物および修正の全てが、以下の特許請求の範囲によって定義される本発明の精神、範囲および概念の中にあるとみなされる。
【配列表】