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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-25
(45)【発行日】2023-09-04
(54)【発明の名称】整髪剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/25 20060101AFI20230828BHJP
   A61Q 5/06 20060101ALI20230828BHJP
   A61K 8/24 20060101ALI20230828BHJP
【FI】
A61K8/25
A61Q5/06
A61K8/24
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021524719
(86)(22)【出願日】2020-05-07
(86)【国際出願番号】 JP2020018487
(87)【国際公開番号】W WO2020246196
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2021-11-18
(31)【優先権主張番号】P 2019107274
(32)【優先日】2019-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390011442
【氏名又は名称】株式会社マンダム
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】橋本 佳和
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-242291(JP,A)
【文献】特開2007-008915(JP,A)
【文献】特開2016-185925(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio-GPG/FX
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分A、成分Bおよび成分Cを含有する、整髪剤組成物であって、前記成分Aの含有量が、前記整髪剤組成物100質量%に対して2.0質量%以上である、整髪剤組成物;
成分A:スメクタイト族粘土鉱物、合成ケイ酸塩および合成ケイ酸塩の誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種の粘土鉱物
成分B:ポリリン酸またはその塩、および
成分C:水。
【請求項2】
前記成分Aの含有量が、前記整髪剤組成物100質量%に対して20.0質量%以下であり、
前記成分Bの含有量が、前記整髪剤組成物100質量%に対して0.01質量%~3.0質量%である、請求項1に記載の整髪剤組成物。
【請求項3】
前記成分Bが、トリポリリン酸またはその塩である、請求項1または2に記載の整髪剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、整髪剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、整髪剤組成物に整髪力を付与する成分としては、固形油剤、皮膜系性ポリマー等が用いられている。しかし、これらの成分を配合することにより、不自然なつやのある風合いが毛髪に付与されてしまうという問題があった。この問題を解決し、十分な整髪力とマットな質感とを両立させるために、粘土鉱物を配合した整髪剤が開発されている。例えば、特許文献1には、粘土鉱物の一種であるカオリンを配合したワックス状整髪料が開示されている。また、特許文献2には、油膨潤性粘土鉱物を配合した整髪料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国公開特許公報「特開2002-114652号公報」
【文献】日本国公開特許公報「特開2003-026550号公報」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、粘土鉱物は、増粘剤としての機能も有している。そのため、粘土鉱物を多量に配合すると、調合途中の中間溶液の粘度および製剤の粘度等が高くなり過ぎてしまう。それゆえ、粘土鉱物を多量に含む組成物は、整髪剤組成物の製造および実用に適さなくなってしまう。つまり、製剤に配合できる粘土鉱物の量には、粘土鉱物の増粘性に起因する限界があった。
【0005】
本発明の一態様は、粘土鉱物の配合に起因する粘度の増加が抑制され、かつマットな質感を付与し得る整髪剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明者らが鋭意検討した結果、(i)粘土鉱物、(ii)ポリリン酸またはその塩、および(iii)水を含有させた整髪剤組成物によれば、粘土鉱物を多量に配合した場合でも、粘土鉱物に起因する粘度の増加が抑制され、かつマットな質感を付与し得ることが見出された。
【0007】
すなわち、本発明の一態様に係る整髪剤組成物は、下記成分A、成分Bおよび成分Cを含有する、整髪剤組成物である;
成分A:粘土鉱物
成分B:ポリリン酸またはその塩、および
成分C:水。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様は、粘土鉱物の配合に起因する粘度の増加が抑制され、かつマットな質感を付与し得る整髪剤組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態の一例について詳細に説明するが、本発明は、これらに限定されない。
【0010】
本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意味する。本明細書において特記しない限り、成分の含有量を表す質量%は、整髪剤組成物全体の質量を100質量%とした値である。
【0011】
〔各成分〕
本発明の一実施形態に係る整髪剤組成物は、成分A:粘土鉱物、成分B:ポリリン酸またはその塩、および、成分C:水を含有する。
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係る整髪剤組成物に含まれる、各成分について順に説明する。
【0013】
[成分A:粘土鉱物]
成分Aは、粘土鉱物である。本発明の一実施形態に係る整髪剤組成物中において、上記成分Aは、マットな質感を付与する役割を有する。成分Aは、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を併せて用いてもよい。
【0014】
成分Aの粘土鉱物は、天然の粘土鉱物であってもよく、天然の粘土鉱物を精製したものであってもよく、合成された粘土鉱物であってもよい。上記成分Aとしては、特に限定されないが、例えば、天然の粘土鉱物または天然の粘土鉱物を精製したものとしては、カオリン族粘土鉱物、アンティゴライト族粘土鉱物、パイロフィライト族粘土鉱物、雲母族粘土鉱物、スメクタイト族粘土鉱物、バーミキュライト族粘土鉱物、および緑泥石族粘土鉱物等が挙げられる。
【0015】
上記カオリン族粘土鉱物としては、カオリン、ナクライト、ディッカイトおよびハロサイト等が挙げられる。上記アンティゴライト族粘土鉱物としては、アンティゴライト、アメサイトおよびクロンステダイト等が挙げられる、上記パイロフィライト族粘土鉱物としては、パイロフィライトおよびタルク(滑石)等が挙げられる。上記雲母族粘土鉱物としては、イライト、海緑石、セラドナイト、セリサイト、マイカ(雲母)、白雲母、クロム白雲母および黒雲母等が挙げられる。上記スメクタイト族粘土鉱物としては、ベントナイト、モンモリロナイト、スメクタイト、バイデライト、ノントナイト、サポナイトおよびヘクトライト等が挙げられる。上記バーミキュライト族粘土鉱物としては、バーミキュライト等が挙げられる。上記緑泥石族粘土鉱物としては、緑泥石(クロライト)等が挙げられる。
【0016】
また、合成された粘土鉱物としては、合成ケイ酸塩および合成ケイ酸塩の誘導体が挙げられる。上記合成ケイ酸塩及び合成ケイ酸塩の誘導体とは、天然由来のケイ酸マグネシウムやケイ酸(ナトリウム/マグネシウム)などを主成分とするケイ酸塩鉱物(少なからず不純物が含まれる)ではなく、合成によって得られるケイ酸塩及びケイ酸塩の誘導体のことを言う。
【0017】
上記合成ケイ酸塩及び合成ケイ酸塩の誘導体としては、例えば、合成ケイ酸(ナトリウム/マグネシウム)(INCI名「SODIUM MAGNESIUM SILICATE」:International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook,第14版,第2巻,CTFA,2012年,p.3076)、フルオロケイ酸マグネシウム(INCI名「MAGNESIUM FLUOROSILICATE」:International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook,第14版,第2巻,CTFA,2012年,p.1793)、フルオロケイ酸(ナトリウム/マグネシウム)(INCI名「SODIUM MAGNESIUM FLUOROSILICATE」:International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook,第14版,第2巻,CTFA,2012年,p.3076)、フルオロケイ酸(マグネシウム/カリウム)(INCI名「MAGNESIUM POTASSIUM FLUOROSILICATE」:International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook,第14版,第2巻,CTFA,2012年,p.1799)、フルオロケイ酸(マグネシウム/ナトリウム)(INCI名「MAGNESIUM SODIUM FLUOROSILICATE」:International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook,第14版,第2巻,CTFA,2012年,p.1800)、合成ケイ酸アルミニウム(INCI名「ALUMINUM SILICATE」:International Cosmetic IngredientDictionary and Handbook,第14版,第1巻,CTFA,2012年,p.156)等が挙げられる。
【0018】
上記合成ケイ酸塩および合成ケイ酸塩の誘導体の市販品としては、例えば、ロックウッド社製、商品名「ラポナイトXLG」及び商品名「ラポナイトXL21」等が挙げられる。
【0019】
本発明の一実施形態において、上記成分Aは、スメクタイト族粘土鉱物、合成ケイ酸塩および合成ケイ酸塩の誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種の粘土鉱物であることが好ましい。これは、スメクタイト族粘土鉱物、合成ケイ酸塩および合成ケイ酸塩の誘導体は、水で膨潤してコロイド状になる性質を有するものであり、毛髪に塗布した際に粉浮き(白い粉が吹いて見える状態)しにくいためである。一方、他の粘土鉱物(例えば、特許文献1に記載の整髪料に配合されているカオリン)は、毛髪に塗布した際に相対的に粉浮きしやすい傾向がある。
【0020】
上記成分Aの含有量の下限値は、本発明の一実施形態に係る整髪剤組成物100質量%に対して、1.0質量%以上が好ましく、2.0質量%以上がより好ましく、3.0質量%以上がさらに好ましい。上記成分Aの含有量の上限値は、本発明の一実施形態に係る整髪剤組成物100質量%に対して、20.0質量%以下が好ましく、12.0質量%以下がより好ましく、8.0質量%以下がさらに好ましい。上記含有量が1.0質量%以上であれば、マットな質感をより十分に与えることができる。また、上記含有量が20.0質量%以下であれば、製剤の粘度がより適切な範囲となり、また製剤の安定性が増す。
【0021】
[成分B:ポリリン酸またはその塩]
成分Bは、ポリリン酸またはその塩である。ポリリン酸は、2以上のリン酸が縮合して形成される化合物である。本発明の一実施形態に係る整髪剤組成物において、成分Bは、粘土鉱物による粘度の増加を抑制する役割を有する。成分Bは、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を併せて用いてもよい。
【0022】
本発明者らは、驚くべきことに、ポリリン酸またはその塩が、粘土鉱物に起因する粘度の増加を抑制することを見出した。このメカニズムは、詳細には判明してない。しかし、単にキレート剤としての機能による効果ではないと推定される(後述する比較例2、3を参照)。
【0023】
ポリリン酸の重合度は2以上であればよく、例えば、2以上、10以下である。ポリリン酸としては、例えば、トリポリリン酸、ヘキサメタリン酸、ピロリン酸、トリメタリン酸、テトラメタリン酸、シクロポリリン酸等が挙げられる。これらの塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩等が挙げられる。
【0024】
上記成分Bの含有量の下限値は、本発明の一実施形態に係る整髪剤組成物100質量%に対して、0.01質量%以上が好ましく、0.02質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上がさらに好ましい。上記成分Bの含有量の上限値は、本発明の一実施形態に係る整髪剤組成物100質量%に対して、3.0質量%以下が好ましく、2.0質量%以下がより好ましく、1.5質量%以下がさらに好ましく、1.0質量%以下がよりさらに好ましい。上記含有量が0.01質量%以上であれば、粘土鉱物に起因する粘度の増加をより十分に抑制できる。上記含有量が3.0質量%以下であることは、安全性の観点から好ましい。また、上記含有量が3.0質量%を超えた場合には、粘土鉱物に起因する粘度の増加の抑制効果が上がりにくい。
【0025】
[成分C:水]
成分Cは、水である。成分Cは特に限定されないが、精製水が好ましい。成分Cの含有量の下限値は、本発明の一実施形態に係る整髪剤組成物100質量%に対して、20.0質量%以上が好ましく、25.0質量%以上がより好ましく、30.0質量%以上がさらに好ましい。成分Cの含有量の上限値は、本発明の一実施形態に係る整髪剤組成物100質量%に対して、95.0質量%以下が好ましく、90.0質量%以下がより好ましく、85.0質量%以下がさらに好ましい。
【0026】
[任意成分]
本発明の一実施形態に係る整髪剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内で、成分A~C以外の成分(その他の成分)を、剤型等に応じて含有してもよい。上記その他の成分としては、特に限定されず、例えば、化粧品や医薬部外品に通常用いられる成分等が挙げられる。具体的には、例えば、エタノール等の低級アルコール;多価アルコール、高級アルコール、シリコーン油、エステル油、ロウ、植物油、炭化水素ワックス、炭化水素油、油脂、高級脂肪酸等の油性成分;カルボキシビニルポリマー、アクリル酸、メタクリル酸アルキル共重合体等の増粘剤;界面活性剤;香料;紫外線吸収剤;酸化防止剤;金属イオン封鎖剤;ピリビニルピロリドン等の皮膜形成性高分子化合物;カオリン、シリカ、タルク等の粉体;色素;顔料;染料;ビタミン類;アミノ酸類;収斂剤;美白剤;動植物抽出物;酸;アルカリ等が挙げられる。
【0027】
〔剤型および製造方法〕
本発明の一実施形態に係る整髪剤組成物の剤型は、特に限定されない。一例として、上記組成物の剤型は、ジェル、ワックス、または水性ポマードである。
【0028】
[ジェル]
ジェル剤とは、例えば、増粘剤によるゲル骨格が形成されており、皮膜形成ポリマー等により毛髪を固定し整髪する、高粘度水性整髪剤である。本発明の一実施形態に係る整髪剤組成物がジェル剤である場合、成分A~Cに加え、皮膜形成ポリマー、多価アルコール、増粘剤、アルコール、pH調整剤を含むことが好ましい。また、上記整髪剤組成物は、界面活性剤、香料、防腐剤を含んでいてもよい。
【0029】
[ワックス]
ワックス剤とは、例えば、固形油性成分(ロウ、炭化水素等)を界面活性剤によりO/W乳化させたものであり、固形油性成分由来の粘着力により毛髪を固定し整髪する、クリーム状乳化型整髪剤である。本発明の一実施形態に係る整髪剤組成物がワックス剤である場合、成分A~Cに加え、油性成分、界面活性剤を含むことが好ましい。また、上記整髪剤組成物は、高級脂肪酸、高級アルコール、多価アルコール、アルコール、増粘剤を含んでいてもよい。
【0030】
[水性ポマード]
水性ポマード剤とは、例えば、高配合した界面活性剤によるゲル骨格が形成されており、界面活性剤由来の粘着力により毛髪を固定し整髪する、ゲル状水性整髪剤である。本発明の一実施形態に係る整髪剤組成物が水性ポマード剤である場合、成分A~Cに加え、界面活性剤、多価アルコールを含むことが好ましい。また、上記整髪剤組成物は、皮膜形成ポリマー、油性成分、pH調整剤、アルコール、香料を含んでいてもよい。
【0031】
本発明の一実施形態に係る整髪剤組成物は、常法に則って製造することができる。
【0032】
〔用途〕
本発明の整髪剤組成物の用途は特に限定されないが、例えば、毛髪を固定、セットすることに加え、毛髪の感触、質感等を改善するために使用されてもよい。
【0033】
また、本発明の一実施形態には、下記成分A、成分Bおよび成分Cの整髪剤組成物としての使用も含まれる;
成分A:粘土鉱物
成分B:ポリリン酸またはその塩、および
成分C:水。
【0034】
また、本発明の一実施形態には、下記成分A、成分Bおよび成分Cを混合する工程を有する、下記成分A、成分Bおよび成分Cを含む整髪剤組成物を製造する製造方法も含まれる;
成分A:粘土鉱物
成分B:ポリリン酸またはその塩、および
成分C:水。
【0035】
なお、本発明の一実施形態に係る「使用」および「製造方法」は、上述した〔発明を実施するための形態〕の各記載を適宜援用し得る。
【0036】
上記各項目で記載した内容は、他の項目においても適宜援用できる。本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。したがって、異なる実施形態にそれぞれ開示されている技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0037】
本明細書中に記載された学術文献および特許文献のすべてが、本明細書中において参考文献として援用される。
【0038】
本発明の一態様に係る整髪剤組成物は、以下の発明を包含する。
【0039】
(1)下記成分A、成分Bおよび成分Cを含有する、整髪剤組成物;
成分A:粘土鉱物
成分B:ポリリン酸またはその塩、および
成分C:水。
【0040】
(2)上記成分Aの含有量が、上記整髪剤組成物100質量%に対して1.0質量%~20.0質量%であり、
上記成分Bの含有量が、上記整髪剤組成物100質量%に対して0.01質量%~3.0質量%である、(1)に記載の整髪剤組成物。
【0041】
(3)上記成分Aが、スメクタイト族粘土鉱物、合成ケイ酸塩および合成ケイ酸塩の誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種の粘土鉱物である、(1)または(2)に記載の整髪剤組成物。
【実施例
【0042】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記実施例のみに限定されるものではない。なお、下記の実施例および比較例における配合量および含有量は、純分に換算した量(質量%)である。
【0043】
〔評価項目〕
(調製の可否)
表1~4に係る整髪剤組成物を常法により調製した際の調製の可否を下記の基準で評価した。
可:整髪剤組成物を問題なく調製することができた。
不可:増粘しすぎて整髪剤組成物を調製することができなかった、又は各成分の調合時に製剤が不均一となり調製することができなかった。
【0044】
(マット感)
得られた整髪剤組成物1.5gを掌にとり、掌上でのばした後、カットウィッグ(ユーカリジャパン社製、商品名「A-386」)に塗布し、整髪を施した。整髪直後のウィッグの毛髪を目視で観察し、「マット感」を下記の基準で評価した。なお、上記「調整の可否」の評価結果が不可であったものについては、マット感の評価は行わなかった。
【0045】
<マット感の評価基準>
++:毛髪にほとんどつやが生じておらず、十分なマット感が付与されている。
+:毛髪につやが少し生じているが、十分なマット感が付与されている。
-:毛髪につやが生じており、マット感が付与されていない。
【0046】
〔実施例1~9、比較例1~3〕
表1の組成に従い、常法に則って、実施例1~9、比較例1~3に係る整髪剤組成物(ジェル)を調製した。
【0047】
表1中、各成分の詳細は以下の通りである。
・ベントナイト:日本有機粘土社製、商品名「ベンゲル」
・サポナイト:クニミネ工業社製、商品名「スメクトンSA」
・ケイ酸(Na/Mg):Rockwood Additives Limited社製、商品名「ラポナイトXLG」
・フルオロケイ酸(Na/Mg):Rockwood Additives Limited社製、商品名「ラポナイトXL21」
・トリポリリン酸Na:米山化学工業社製、商品名「トリポリリン酸ナトリウム」
・ヘキサメタリン酸Na:太平化学産業社製、商品名「ウルトラポリン」
・ピロリン酸Na:米山化学工業社製、商品名「ピロリン酸ナトリウム(無水)」
・エデト酸二ナトリウム:アクゾノーベル社製、商品名「ディゾルビンNA2-S」
・エリソルビン酸ナトリウム:扶桑化学工業社製、商品名「エルビットN」
・カルボマー:LUBRIZOL社製、商品名「CARBOPOL 980 POLYMER」。
【0048】
【表1】
【0049】
〔実施例10~13、比較例4〕
表2の組成に従い、常法に則って、実施例10~13、比較例4に係る整髪剤組成物(ワックス)を調製した。
【0050】
表2中、各成分の詳細は以下の通りである。なお、表1と同じである成分については、記載を省略する。
・カルナウバロウ:東亜化成社製、商品名「TOWAX-1F8」
・マイクロクリスタリンワックス:日本精蝋社製、商品名「HI-MIC-1090」
・ミネラルオイル:Sonneborn Inc社製、商品名「CARNATION」
・シクロペンタシロキサン:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、商品名「TSF405」
・セテス-20:Croda Singapore Pte Ltd.製、商品名「SP
ブリジ C20 MBAL-PA-(SG)」
・ジオレス-8リン酸ナトリウム:日本サーファクタント工業社製、商品名「NIKKOL DOP-8NV」
・ステアリン酸ソルビタン:EVONIK NUTRITION & CARE GMBH社製、商品名「TEGO SMS」
・パルミチン酸エチルヘキシル:交洋ファインケミカル社製、商品名「コーヨーPOC」
・PEG-40水添ヒマシ油:青木油脂工業社製、商品名「ブラウノンRCW-40」。
【0051】
【表2】
【0052】
〔実施例14〕
表3の組成に従い、常法に則って、実施例14に係る整髪剤組成物(水性ポマード)を調製した。
【0053】
表3中、各成分の詳細は以下の通りである。なお、表1または2と同じである成分については、記載を省略する。
・セテス-40:青木油脂社製、商品名「ブラウノンCH-340」。
【0054】
【表3】
【0055】
〔結果〕
成分A~Cを含有する実施例1~9においては、粘土鉱物に起因する粘度の増加が抑制され、整髪剤組成物(ジェル)を調製することができた。一方、成分AおよびCを含有するが、成分Bを含有しない比較例1~3においては、粘度が高くなり過ぎ、整髪剤組成物(ジェル)を調製することができなかった。
【0056】
同様に、成分A~Cを含有する実施例10~13および14においては、粘土鉱物に起因する粘度の増加が抑制され、整髪剤組成物(ワックスおよび水性ポマード)を調製することができた。一方、成分Aおよび成分Cを含有するが、成分Bを含有しない比較例4においては、整髪剤組成物(ワックス)を調製することができなかった。
【0057】
以上のことから、成分Bを含有させることで、成分A(粘土鉱物)に起因する粘度の増加が抑制され、整髪剤組成物の調製が可能になることがわかる。
【0058】
また、比較例2、3では、ポリリン酸に代えてキレート剤を配合しているが、粘土鉱物に起因する製剤の粘度の増加を抑制できなかった。
【0059】
(処方例1:ヘアジェル)
ベントナイト 3.0質量%
トリポリリン酸5ナトリウム 0.3質量%
カルボキシビニルポリマー 0.2質量%
トリエタノールアミン 適 量
グリセリン 6.0質量%
エタノール 15.0質量%
(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリル酸メトキシエチル)コポリマー
1.0質量%
香料 適 量
水 残 部
合計 100.0質量%。
【0060】
(処方例2:ヘアワックス)
ベントナイト 4.0質量%
トリポリリン酸5ナトリウム 0.4質量%
ミネラルオイル 2.0質量%
パルミチン酸エチルヘキシル 5.0質量%
ミツロウ 4.0質量%
ヒマシ油 4.0質量%
ジオレス-8リン酸ナトリウム 4.0質量%
セテス-20 4.0質量%
PEG-40水添ヒマシ油 3.0質量%
グリセリン 2.0質量%
ステアリルアルコール 1.0質量%
ケトグルタル酸 0.2質量%
クエン酸 適 量
フェノキシエタノール 適 量
香料 適 量
水 残 部
合計 100.0質量%。
【0061】
(処方例3:ヘアワックス)
ベントナイト 3.0質量%
トリポリリン酸5ナトリウム 0.3質量%
ミネラルオイル 2.0質量%
ジメチコン 5.0質量%
パルミチン酸エチルヘキシル 5.0質量%
マイクロクリスタリンワックス 8.0質量%
カルナウバロウ 4.0質量%
ジオレス-8リン酸ナトリウム 4.0質量%
セテス-20 4.0質量%
イソペンチルジオール 5.0質量%
グリセリン 2.0質量%
ステアリルアルコール 1.0質量%
ケイソウ土 5.0質量%
ケトグルタル酸 0.02質量%
クエン酸 適 量
安息香酸ナトリウム 適 量
香料 適 量
水 残 部
合計 100.0質量%。
【0062】
(処方例4:ヘアワックス)
ベントナイト 5.0質量%
トリポリリン酸5ナトリウム 0.3質量%
ミネラルオイル 10.0質量%
ジメチコン 5.0質量%
パルミチン酸エチルヘキシル 5.0質量%
マイクロクリスタリンワックス 8.0質量%
カルナウバロウ 4.0質量%
ステアリン酸ソルビタン 3.0質量%
セテス-20 3.0質量%
ステアリルアルコール 1.5質量%
グリセリン 2.0質量%
ステアリン酸 適 量
トリエタノールアミン 適 量
カルボキシビニルポリマー 0.3質量%
香料 適 量
水 残 部
合計 100.0質量%。
【0063】
(処方例5:水性ポマード)
ベントナイト 6.0質量%
トリポリリン酸5ナトリウム 0.5質量%
セテス-40 25.0質量%
セテス-20 5.0質量%
ジグリセリン 6.0質量%
安息香酸ナトリウム 適 量
(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリル酸メトキシエチル)コポリマー
4.0質量%
香料 適 量
クエン酸 適 量
クエン酸3ナトリウム 適 量
水 残 部
合計 100.0質量%。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、整髪剤組成物に利用することができる。