(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-25
(45)【発行日】2023-09-04
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/64 20060101AFI20230828BHJP
H01R 13/639 20060101ALI20230828BHJP
H01R 13/52 20060101ALI20230828BHJP
【FI】
H01R13/64
H01R13/639 Z
H01R13/52 301E
(21)【出願番号】P 2021554320
(86)(22)【出願日】2020-10-14
(86)【国際出願番号】 JP2020038744
(87)【国際公開番号】W WO2021085133
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-04-25
(31)【優先権主張番号】P 2019196577
(32)【優先日】2019-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227995
【氏名又は名称】タイコエレクトロニクスジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094330
【氏名又は名称】山田 正紀
(72)【発明者】
【氏名】吉野 博道
【審査官】高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-037977(JP,A)
【文献】特開2017-050232(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R13/40-13/533
H01R13/56-13/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手コネクタと嵌合する嵌合部を有するハウジングと、該ハウジング上の第1位置と該第1位置よりも該嵌合部側の第2位置との間でスライドして該第2位置にあることをもって相手コネクタと完全嵌合した状態にあることを保証するコネクタ位置保証デバイスとを備え、
前記ハウジングが、前記コネクタ位置保証デバイスのスライド方向に延びて前記コネクタ位置保証デバイスをスライド自在に支持し、該コネクタ位置保証デバイスと干渉するハウジング側係止部を有し該コネクタ位置保証デバイスと干渉して撓む可撓ビームを
該スライド方向に交わる幅方向両側に備え、
前記コネクタ位置保証デバイスが、前記ハウジング側係止部と干渉するデバイス側係止部を有し前記可撓ビームに支持されてスライドするレールを
前記幅方向両側に備え、
前記幅方向両側に備えられた前記可撓ビームと前記レールとのペアのうちの第1の側のペアに設けられた前記ハウジング側係止部と前記デバイス側係止部が、前記コネクタ位置保証デバイスが前記第1位置にあるときの係止を受け持ち、該幅方向両側のうちの第2の側のペアに設けられた前記ハウジング側係止部と前記デバイス側係止部が、前記コネクタ位置保証デバイスが前記第2位置にあるときの係止を受け持つことを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
防水用のシール部材をさらに備えたことを特徴とする請求項
1に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相手コネクタと完全嵌合した状態にあることを保証するコネクタ位置保証デバイス(CPA,Connector Position Assurance)を備えたコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、上記のCPAを備えたコネクタが知られている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1のCPAは、コネクタハウジングに形成されたスライド面上を相手コネクタとの嵌合方向にスライドする部材である。そして、相手コネクタと完全嵌合した状態にあるときのみ、特定の位置へのスライドを可能とする。これにより、そのCPAがその特定の位置にスライドした状態にあることをもって相手コネクタと完全嵌合していることが保証される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1のCPAは、ハウジングに、CPAがスライドするスライド面が形成されている。
【0005】
しかしながら、防水用のシール部材を配置した防水コネクタの場合、ハウジングに、シール部材を支持する部分が必要となり、その部分が大型化したハウジングとなる。例えば、このような、大型化したハウジングにCPAを搭載しようとする。すると、スライド面を形成する金型をハウジングの大型化した部分を避けてスライドさせることができるように高い位置にスライド面を設ける必要が生じ、ハウジングがさらに大型化(高背化)するおそれがある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み、CPAを備え、ハウジングの高さを抑えたコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明のコネクタは、
相手コネクタと嵌合する嵌合部を有するハウジングと、該ハウジング上の第1位置と該第1位置よりも該嵌合部側の第2位置との間でスライドして該第2位置にあることをもって相手コネクタと完全嵌合した状態にあることを保証するコネクタ位置保証デバイスとを備え、
前記ハウジングが、前記コネクタ位置保証デバイスのスライド方向に延びて前記コネクタ位置保証デバイスをスライド自在に支持し、該コネクタ位置保証デバイスと干渉するハウジング側係止部を有し該コネクタ位置保証デバイスと干渉して撓む可撓ビームを該スライド方向に交わる幅方向両側に備え、
前記コネクタ位置保証デバイスが、前記ハウジング側係止部と干渉するデバイス側係止部を有し前記可撓ビームに支持されてスライドするレールを前記幅方向両側に備え、
前記幅方向両側に備えられた前記可撓ビームと前記レールとのペアのうちの第1の側のペアに設けられた前記ハウジング側係止部と前記デバイス側係止部が、前記コネクタ位置保証デバイスが前記第1位置にあるときの係止を受け持ち、該幅方向両側のうちの第2の側のペアに設けられた前記ハウジング側係止部と前記デバイス側係止部が、前記コネクタ位置保証デバイスが前記第2位置にあるときの係止を受け持つことを特徴とする。
【0008】
本発明のコネクタは、ハウジングが可撓ビームを幅方向両側に備え、位置保証デバイスが可撓ビームに支持されてスライドするレールを幅方向両側に備えている。本発明のコネクタは、この構造を採用することにより、ハウジングにCPA用のスライド面を設ける必要をなくし、CPAを備えたことによるハウジングの大型化を抑えている。
【0010】
また、本発明は、可撓ビームとレールとのペアを幅方向両側に備えているため、CPAをハウジングに安定的に支持および係止させ、またCPAを円滑にスライドさせることができる。
【0011】
また、本発明のコネクタは、防水用のシール部材を備えた防水型コネクタであってもよい。
【0012】
本発明のコネクタによれば、シール部材を備えたことにより大型化したコネクタの、CPAを備えることに起因するさらなる大型化が抑えられる。
【発明の効果】
【0013】
以上の本発明によれば、CPAを備え、ハウジングの高さが抑えられたコネクタが実現する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態のコネクタ(A)およびそのコネクタと組み合う相手コネクタ(B)の斜視図である。
【
図2】
図1(A)に示したコネクタの分解斜視図(A)と、CPAの背面図(B)である。
【
図4】嵌合開始時の姿勢にある、
図1(A)に示したコネクタと
図1(B)に示した相手コネクタを示した図面である。
【
図5】
図4(B)に示した領域R1の部分の拡大図(B)と、
図4(C)に示した領域R2の部分の拡大図(C)である。
【
図6】
図4と比べ嵌合が少し進んだときの
図4と同様な斜視図(A)および各断面図(B),(C)である。
【
図7】
図6(B)に示した領域R1の部分の拡大図(B)と、
図6(C)に示した領域R2の部分の拡大図(C)である。
【
図8】
図6と比べ嵌合がさらに進み、
図1(A)のコネクタと相手コネクタが完全に嵌合したときの、
図4および
図6と同様な斜視図(A)および各断面図(B),(C)である。
【
図9】
図8(B)に示した領域R1の部分の拡大図(B)と、
図8(C)に示した領域R2の部分の拡大図(C)である。
【
図10】CPAが完全係止位置に進んだときの
図4,
図6,
図8と同様な斜視図(A)および各断面図(B),(C)である。
【
図11】
図10(B)に示した領域R1の部分の拡大図(B)と、
図10(C)に示した領域R2の部分の拡大図(C)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態のコネクタ(A)およびそのコネクタと組み合う相手コネクタ(B)の斜視図である。
【0017】
また、
図2は、
図1(A)に示したコネクタの分解斜視図(A)と、CPAの背面図(
B)である。
【0018】
【0019】
コネクタ10は、ハウジング20、CPA30、端子モジュール40(
図2参照)、シール部材211(
図2参照)およびシールホルダ70を備えている。シール部材211は、端子モジュール40の組立前に予めケーブル41上に配置される。端子モジュール40はコンタクトを備えており、そのコンタクトにはケーブル41が接続されている。そして、端子モジュール40は、ハウジング20内に、その後端部の開口21(
図2参照)から矢印Fの向きに挿し込まれる。シール部材211は、開口21の内側に収まるようにセットされる。その後、シールホルダ70を取り付けることで、シール部材211を後方へ抜けないように固定する。ケーブル41は、その開口21から後方(矢印Rの向き)に延びてハウジング20から露出する。シール部材211は、端子モジュール40に接続されたケーブル41を取り巻いて、ハウジング20とケーブル41との間を防水する。このシール部材211が配置されていることにより、ハウジング20は、その後端部23が大きく膨らんだ形状となっている。また、このハウジング20の上部にはCPA30が配置されている。CPA30については、後で説明する。
【0020】
このコネクタ10は、矢印Fで示す向きの前端側が嵌合部11である。そして、このコネクタ10のハウジング20の前端には、相手コネクタ50との嵌合時に相手コネクタ50の嵌合部である端子モジュール52(
図3参照)が挿し込まれる嵌合開口22が設けられている。また、この嵌合開口22の内側には、相手コネクタ50の端子モジュール52の外面に接してその部分を防水するシール部材221が備えられている。相手コネクタ50が嵌合すると、相手コネクタ50の端子モジュール52に備えられたコンタクトがこのコネクタ10の端子モジュール40に備えられたコンタクトと電気的に接触する。
【0021】
図1(B)に示す相手コネクタ50は、ハウジング51、端子モジュール52(
図3参照)、シール部材512(
図3参照)、およびシールホルダ80を備えている。ハウジング51には、矢印Rの向きの前端が開口したフード部53が設けられている。また、端子モジュール52はコンタクトを備えており、そのコンタクトにはケーブル59が接続されている。シール部材512は、端子モジュール52の組立前に予めケーブル59上に配置される。端子モジュール52は、ハウジング51の、矢印Fで示す後端の開口511から、ハウジング51内に、フード部53の内側に突き出た位置まで挿し込まれる。シール部材512は、開口511の内側に収まるようにセットされる。その後、シールホルダ80をハウジング51に取り付け、シール部材512を固定する。ケーブル59は、CPA後端の開口511から矢印Fの向きに延びてハウジング51から露出する。シール部材512は、端子モジュール52に接続されたケーブル59を取り巻いて、ハウジング51とケーブル59との間を防水する。
【0022】
嵌合の際、
図1(A)のコネクタ10の嵌合部11は、相手コネクタ50のフード部53内に挿し込まれる。ここで、このフード部53には、その先端531よりもやや後方の位置にロック孔54が形成されている。また、コネクタ10には、ロック部26が設けられている。そして、嵌合部11をフード部53に挿し込み、ロック部26がロック孔54に嵌まることにより、両コネクタ10,50が完全嵌合状態になる。嵌合の過程については、後述する。
【0023】
このハウジング20の、矢印F,Rで示す前後方向の中間部分には、CPA30を保持するCPA保持部60(
図2参照)が設けられている。このCPA30の保持を可能とするために、CPA保持部60は、その幅方向両側に、可撓ビーム61を備えている。この可撓ビーム61は、ハウジング本体との間に空間62を設けて、CPA30がスライドす
る矢印F,R方向に延び、前端と後端がハウジング本体に接続された、両持ち梁形状を有する。そして、この可撓ビーム61は、後述するようにしてCPA30と干渉し、ハウジング本体との間の空間62を縮める向きに弾性的に撓む。この可撓ビーム61には外向きに突き出たハウジング側係止部63が形成されている。
図4(C)およびその部分拡大図である
図5(C)には、幅方向両側の可撓ビーム61a,61bが示されている。
図4(C),
図5(C)に示すように、それらの可撓ビーム61a,61bに形成されているハウジング側係止部63a,63bは、形成されている位置や形が互いに異なっている。
【0024】
一方、CPA30は、左右両側にレール32が形成された基部31を有する。これらのレール32は、上壁321と、その上壁321の先端から下向きに垂れ下がった横壁322と、横壁322の下端から上壁322と対面する向きに広がる下壁323とを有する、そして、このレール32は、ハウジング20の可撓ビーム61を上壁321と下壁323とで上下から挟むようにして可撓ビーム61に矢印F,Rの方向にスライド自在に支持される。
【0025】
また、このレール32の横壁322には、内向きに突き出たデバイス側係止部324が形成されている。このデバイス側係止部324は、可撓ビーム61のハウジング側係止部63と干渉して可撓ビーム61を撓ませる。
図4(C),
図5(C)には、幅方向両側のレール32a,32bが示されている。
図4(C),
図5(C)に示すように、レール32a,32bに形成されているデバイス側係止部324a,324bは、形成されている位置や形が互いに異なっている。
【0026】
ここで、前掲の特許文献1に示されているように、CPAを備えたコネクタの場合、一般的には、ハウジング20の上面にCPAがスライド自在に載置されるスライド面が設けられる。しかしながら、ここで説明しているコネクタ10の場合、上述の通り、ハウジング20の後端部の開口21のすぐ内側に、シール部材211が備えられている。このため、ハウジング20は、このシール部材211を覆う部分が大きく膨らんだ形状となっている。このハウジング20は、絶縁樹脂製であり、成形により製造される。ところが、ハウジング20の後端部が大きく膨らんでいるため、後方に移動する金型でスライド面を形成しようとすると、ハウジング20の大きく膨らんだ後端部が邪魔になり、それを避けた高い位置にスライド面を形成する必要がある。また、前方に移動する金型でスライド面を形成しようとすると、ハウジング20の、後述するロックアーム24が邪魔となる。そこで、本実施形態のコネクタ10の場合、ハウジング20にスライド面を形成することが不要な構造としている。すなわち、本実施形態のコネクタ10の場合、ハウジング20に可撓ビーム61を設けるとともにCPA30にレール32を設けた構造を採用している。
【0027】
このCPA30には、左右のレール32を備えた基部31のほか、ビーム部33と、操作部34が形成されている。
【0028】
操作部34は、ユーザにより操作される部分である。この操作部34は、その位置を視認することによって、CPA30が、完全嵌合位置にあるか否かを指し示す指標となっている。CPA30が完全嵌合位置にあることによって、このコネクタ10と相手コネクタ50が完全嵌合状態にあることを保証している。
図10には、完全嵌合位置にあるCPA30が示されている。ただし、
図1には、完全嵌合位置よりも矢印R向きに後退した未嵌合位置にあるCPA30が示されている。
【0029】
また、このCPAのビーム部33は、基部31から矢印Fで示す前方、かつ斜め上に片持ち梁形状に延びている。このビーム部33の先端331よりもやや基部31寄りの位置に、上方に突き出た突起332が形成されている。そして、この突起332が先端331よりもやや基部31寄りの位置に形成されていることから、このビーム部33には、その
先端331と突起332との間に段部333が形成されている。
【0030】
このCPA30は、ハウジング20の後方から挿し込まれてCPA保持部60に保持される。CPA保持部60に保持されたCPA30は、
図1に示す未嵌合位置に置かれる。そして、相手コネクタ50との嵌合時に、後述するようにして、矢印Fの向きに、
図10に示す完全嵌合位置(
図10の部分拡大図である
図11を合わせて参照)にスライドする。未嵌合位置は、本発明にいう第1位置の一例に相当し、完全嵌合位置は、本発明にいう第2位置の一例に相当する。
【0031】
ハウジング20には、前端が固定されて後方に片持ち梁形状に延びたロックアーム24が形成されている。そして、このロックアーム24の後方の自由端側には、このコネクタ10と相手コネクタ50との嵌合を解除するときに操作される操作部25が設けられている。さらに、このロックアーム24の、後方に延びる途中位置には、ロック部26が設けられている。そして、さらに、このロックアーム24には、長孔27が形成されている。この長孔27は、ロック部26よりも前方の位置から、後端の自由端まで延びている。そして、操作部25およびロック部26は、その長孔27の上部を幅方向に跨ぐように形成されている。
【0032】
図4は、嵌合開始時の姿勢にある、
図1(A)に示したコネクタと
図1(B)に示した相手コネクタを示した図面である。ここで、
図4(O)は、矢印Fの向きに見た背面図である。また、
図4(A)は斜視図である。さらに、
図4(B),(C)は、
図4(O)に示した各矢印A-A,B-Bに沿う各断面図である。
【0033】
また、
図5は、
図4(B)に示した領域R1の部分の拡大図(B)と、
図4(C)に示した領域R2の部分の拡大図(C)である。
【0034】
CPA30がこの未嵌合位置にあるときには、CPA30のビーム部33の突起332が、ハウジング20のロックアーム24のロック部26に当接している。
【0035】
CPA30がこの未嵌合位置にあるとき、第1のデバイス側係止部324aと第1のハウジング側係止部63aとの係合により、矢印Rの向きへのCPA30の抜けが防止される。
【0036】
また、CPA30がこの未嵌合位置にあるとき、ビーム部33の突起332がロックアーム24のロック部26に当接していることで、CPA30の矢印Fの向きへのスライドが阻止されている。ただし、突起332がロック部26に当接していることのみでは、矢印Fの向きへの強い力が作用した時に、ビーム部33が変形してCPA30の矢印Fの向きへのスライドを抑えきれないおそれがある。そこで、第2のデバイス側係止部324bを、その第2のハウジング側係止部63bに当接させることで、CPA30の矢印Fの向きへのスライドの動作防止をアシストしている。なお、第2のデバイス側係止部324bと第2のハウジング側係止部63bとの当接は、CPA30が完全嵌合位置に向かって矢印Fの向きにスライドする際に、クリック感を与える役割も有する。
【0037】
図6は、
図4と比べ嵌合が少し進んだときの
図4と同様な斜視図(A)および各断面図(B),(C)である。
【0038】
また、
図7は、
図6(B)に示した領域R1の部分の拡大図(B)と、
図6(C)に示した領域R2の部分の拡大図(C)である。
【0039】
この
図6,
図7では、相手コネクタ50のフード部53の先端531が、コネクタ10
のハウジング20の上部に設けられた、後方に延びるロックアーム24に当接している。フード部53の先端531から矢印Fの向きに少し後退した位置には、ロック孔54が形成されている。
【0040】
この
図6,
図7におけるCPA30は、未嵌合位置にあり、かつ、
図4,
図5と同じ姿勢のままである。
【0041】
図8は、
図6と比べ嵌合がさらに進み、
図1(A)のコネクタと相手コネクタが完全に嵌合したときの、
図4および
図6と同様な斜視図(A)および各断面図(B),(C)である。
【0042】
また、
図9は、
図8(B)に示した領域R1の部分の拡大図(B)と、
図8(C)に示した領域R2の部分の拡大図(C)である。
【0043】
図6においては、相手コネクタ50のフード部53の先端531が、コネクタ10のハウジング20の上部に設けられた、後方に延びるロックアーム24に当接している。そして、嵌合がさらに進むと、フード部53がロックアーム24を押し下げてロックアーム24を弾性的に撓ませる。すると、そのロックアーム24のロック部26が、CPA30のビーム部33の先端の段部333を下に押し、これによりビーム部33も弾性的に押し下げられる。そして、嵌合の最終段階において、押し下げたロック部26の上を当接解除部55が通過する。当接解除部55がロック部26の上を通過すると、
図8(B),(C)および
図9(B),(C)に示すように、ロック部26と当接解除部55の、矢印F,Rで示す前後方向の位置が入れ替わることとなる。コネクタ10と相手コネクタ50は、この段階で嵌合状態となるが、CPA30は未だ未嵌合位置にある。上記の通り、相手コネクタ50のフード部53の先端531からやや後退した位置にはロック孔54が形成されている。フード部53の先端531がロック部26の上を通り過ぎてロック孔54がロック部26の直上に到達する。すると、ロックアーム24の弾性変形が解除されてロック部26がロック孔54に入り込む。これにより、コネクタ10と相手コネクタ50が完全嵌合するとともに、ロック部26とロック孔54との係合により、コネクタ10と相手コネクタ50が完全嵌合状態にロックされる。
【0044】
図10は、CPAが完全嵌合位置に進んだときの
図4,
図6,
図8と同様な斜視図(A)および各断面図(B),(C)である。
【0045】
また、
図11は、
図10(B)に示した領域R1の部分の拡大図(B)と、
図10(C)に示した領域R2の部分の拡大図(C)である。
【0046】
図8,
図9に示す、コネクタ10と相手コネクタ50が完全嵌合状態となり、CPA30が未嵌合位置にとどまっている段階で、CPA30を矢印Fで示す前方に向けて押す。
【0047】
図8,
図9に示した状態では、ビーム部33は、当接解除部55により押し下げられたままとなっている。つまり、ビーム部33の、ロック部26との当接は解除されている。したがって、この段階では、CPA30の前方(矢印Fで示す向き)へのスライドの妨げとなっているのは、第2のデバイス側係止部324bと第2のハウジング側係止部63bとの干渉だけとなる。そこで、CPA30の操作部34を、第2のデバイス側係止部324bと第2のハウジング側係止部63bとの干渉に打ち勝つだけの強さで前方(矢印Rで示す向き)に押す。すると、CPA30は、その干渉によるクリック感を伴って、
図10,
図11に示す完全嵌合位置までスライドする。
【0048】
このように、CPA30は、コネクタ10と相手コネクタ50が完全嵌合状態となって
始めて、完全嵌合位置にスライドすることができる。CPA30がこの完全嵌合位置にスライドすると、ビーム部33の突起332が、ロックアーム24の長孔27の、ロック部26よりも前方の部分に嵌入して、突起332がロック部26に当接する。また、CPA30が完全嵌合位置にスライドすると、第2のデバイス側係止部324bが第2のハウジング側係止部63bの前方に位置してその第2のハウジング側係止部63bと干渉する。すなわち、第2のデバイス側係止部324bと第2のハウジング側係止部63bとのペアが、CPA30を完全嵌合位置に留める本係止の役割を受け持っている。このようにして、これらの当接および干渉により、CPA30の、完全嵌合位置からの意図しないスライドが阻止される。
【0049】
また、CPA30が完全嵌合位置にあるときは、ロックアーム24の操作部25の下面251がCPA30の基部31の上面311に当接することで、ロックアーム24の操作部25の押下が阻止される。すなわち、CPA30が完全嵌合位置にスライドした状態にあると、ロック部26のロック孔54からの不用意な抜けが阻止され、コネクタ10と相手コネクタ50との完全嵌合状態のロックが維持される。
【0050】
すなわち、CPA30が完全嵌合位置にあることをもって、コネクタ10と相手コネクタ50が完全嵌合状態にあることが保証される。
【0051】
なお、ここでは、コネクタ10と相手コネクタ50との嵌合とCPA30のスライドとを分けて説明してきた。ただし、本実施形態の場合、完全嵌合に至る前の段階からCPA30の操作部34を押す操作のみでコネクタ10,50を嵌合させることも可能である。その場合、CPA30の操作部34を押すことによって嵌合が進み、完全嵌合の直後にCPA30が完全嵌合位置にスライドする。
【0052】
完全嵌合状態にあるコネクタ10と相手コネクタ50とを分離させるときは、先ず、CPA30の操作部34を後方(矢印Rの向き)に引いてCPA30を未嵌合位置までスライドさせる。次に、コネクタ10のハウジング20のロックアーム24の操作部25を指などで押し下げて、ロック部26をロック孔54から外すことでロックを解除する。このロック解除により、コネクタ10と相手コネクタ50との分離が可能となる。
【0053】
ここでは、CPAを搭載した防水型のコネクタについて説明したが、本発明のコネクタは、必ずしも防水型に限られるものではない。スライド面を形成するとさらに大型化するハウジングを持つコネクタに広く適用することができる。
【符号の説明】
【0054】
10 コネクタ
11 嵌合部
20 ハウジング
30 CPA(コネクタ位置保証デバイス)
32 レール
324 デバイス側係止部
50 相手コネクタ
61 可撓ビーム
63 ハウジング側係止部
211 シール部材
221 シール部材