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特許7338029ハードコート層形成用活性エネルギー線硬化性組成物、それを用いたハードコートフィルムおよびその積層体。
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  • 特許-ハードコート層形成用活性エネルギー線硬化性組成物、それを用いたハードコートフィルムおよびその積層体。 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-25
(45)【発行日】2023-09-04
(54)【発明の名称】ハードコート層形成用活性エネルギー線硬化性組成物、それを用いたハードコートフィルムおよびその積層体。
(51)【国際特許分類】
   G02B 1/14 20150101AFI20230828BHJP
   G02B 5/22 20060101ALI20230828BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20230828BHJP
   C08J 7/046 20200101ALI20230828BHJP
   B32B 23/08 20060101ALI20230828BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20230828BHJP
   C08F 20/00 20060101ALI20230828BHJP
   C08F 2/00 20060101ALI20230828BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20230828BHJP
【FI】
G02B1/14
G02B5/22
G02B5/30
C08J7/046 A
B32B23/08
B32B27/30 A
C08F20/00 510
C08F2/00 C
H10K59/10
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022209354
(22)【出願日】2022-12-27
【審査請求日】2023-01-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 洋明
【審査官】池田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特許第7214946(JP,B1)
【文献】特開2013-222125(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0008733(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第107245304(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0012311(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 1/14
G02B 5/22
G02B 5/30
C08J 7/046
B32B 23/08
B32B 27/30
C08F 20/00
C08F 2/00
H10K 59/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリアセチルセルロースフィルム上にハードコート層を形成するための組成物であって、
活性エネルギー線硬化性成分(A)、紫外線カット剤(B)、光重合開始剤(C)および溶剤(D)を含み、
前記活性エネルギー線硬化性成分(A)が、
(メタ)アクリロイル基を6個以上有し、かつヌレート環骨格を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレート(a1)、(メタ)アクリロイル基を4個以上15個以下有し、かつ重量平均分子量が500~15,000である多官能ウレタン(メタ)アクリレート(但し(a1)を除く)(a2)およびその他多官能(メタ)アクリレート(a3)を全て含み、
溶剤(D)が、下記式(1)を満足する炭酸ジメチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、アセトン、メチルエチルケトンおよび1,3-ジオキソランからなる群より選ばれる溶剤(d1)および溶剤(d1)以外の溶剤(d2)を含むハードコート層形成用活性エネルギー線硬化性組成物。
式(1) [(X2)/(X1)]≧0.25
(X1):溶剤を滴下していない厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルムのヘイズ値
(X2):溶剤を滴下および乾燥した後の、厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルムのヘイズ値
【請求項2】
トリアセチルセルロースフィルム上に、請求項1記載のハードコート層形成用活性エネルギー線硬化性組成物から形成されるハードコート層を有するハードコートフィルム。
【請求項3】
波長380nmにおける透過率(ta)が4%以下、かつ波長420nmにおける透過率(tb)が70%以上である請求項2のハードコートフィルム。
【請求項4】
下記式(2)を満足する、請求項3記載のハードコートフィルム。
式(2) (tc)-(ta)≦1%
(ta):水酸化ナトリウム水溶液に浸漬していないハードコートフィルムの波長380nmにおける透過率
(tc):水酸化ナトリウム水溶液に浸漬し、水洗および乾燥した後の、ハードコートフィルムの波長380nmにおける透過率
【請求項5】
請求項2~4いずれか記載のハードコートフィルムと円偏光機能層が積層された積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードコート層形成用活性エネルギー線硬化性組成物、それを用いたハードコートフィルム、およびその積層体に関する。
【0002】
より詳細には、TV、ノートパソコン、携帯電話、スマートフォンなどのディスプレイに適用することができる、ハードコート層形成用活性エネルギー線硬化性組成物、それを用いたハードコートフィルム、その積層体に関する。
【背景技術】
【0003】
TV、ノートパソコン、携帯電話、スマートフォン等のディスプレイ用途では従来の多用されていた液晶ディスプレイ(LCD)の他にも様々なディスプレイが開発され、各種の特長を活かした製品が市場へ展開されている。
【0004】
中でも有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイは、TVやスマートフォンなどの各種用途に急速に広がっているが、有機ELディスプレイに使用される発光素子は、構成材料から発生する水蒸気、および不純物ガス等に弱いため、水蒸気による劣化対策として、基材上に無機化合物のバリア層(無機層)を設けたり、不純物ガス対策として、揮発成分の低減等を行ったりすることで、発光素子を保護している。
また、熱や紫外線等の外部要因による影響も大きく、特に、紫外線の影響は、低波長側の高エネルギー領域に限らず、可視光に近い波長400nm近傍の紫外線でも劣化影響が大きい。そのため、屋外での利用を考慮するとディスプレイ外部より侵入する紫外線から内部構造を保護するために、紫外線をカットする機能が必要となる。
一方、一般的な有機ELディスプレイには偏光板が積層されている。有機ELディスプレイに使用されている偏光板は円偏光板と呼ばれ、液晶ディスプレイに使われる光透過制御用途とは異なる。有機ELディスプレイを構成する電極部には金属が用いられており、この電極部で外部からの入射光がディスプレイ内で散乱する。この外部からの入射光の影響を避けるために円偏光板を積層する。
【0005】
従来から偏光板は、液晶へのなじみやすさから水溶性であるポリビニルアルコール(PVA)が多用されており、ヨウ素で染色後にフィルム状に延伸して製造されている。PVA偏光板は吸湿性が有るため、保護フィルムとして不燃性、外観(透明性)、絶縁性に優れているトリアセチルセルロース(TAC)フィルムが使用される。
【0006】
PVAから製造した偏光板とTACフィルムを接着する際には、TACフィルムの表面を苛性アルカリによりけん化処理を行い、TACフィルム表面のアセチル基(-O=COCH基)の一部を親水基である水酸基(-OH)に加水分解する必要がある。
【0007】
TACフィルムのけん化処理法は水酸化ナトリウム(NaOH)、あるいは水酸化カリウム(KOH)等のアルカリ水溶液中にTACフィルムを浸漬して行われている。偏光板はディスプレイでの偏光用途の場合、偏光板と接着する反対の面にはハードコート(HC)、アンチグレア(AG)、アンチリフレクト(AR)、帯電防止(AS)などの別の機能層を積層することが多い。
これらの機能層積層の工程はPVA偏光板とTACフィルムの密着性を保つため、苛性アルカリによる けん化処理前に行うのが一般的である。
そのため、機能層の積層を行った後に強アルカリを使用したけん化処理を行うことになり、折角、積層された機能層に対してダメージを与え、機能低下の不具合を生じる。
【0008】
また、ディスプレイを備えた機器、特にノートパソコン、携帯電話、スマートフォン、パッド、スマートウォッチなどのモバイル機器は携帯性を重視するため、軽量化、ダウンサイズ化が進んでおり、ディスプレイ構成中の機能層の複機能化、薄膜化が検討されている。薄膜化検討では、基材フィルムの小膜厚化が進行しており、100μmから50μm以下の薄膜フィルムも検討されている。
フィルム上に活性エネルギー線硬化物を塗工すると、一般的に硬化収縮による反り、カールが発生することが多く、フィルム基材の薄膜化により、その傾向は顕著となる。
ディスプレイは機能層を積層して構成されているため、機能層形成後の基材カールは、後工程での作業性の悪化、歩留まりの低下を招く。
【0009】
特許文献1および2には、ディスプレイ構成中の機能層の複機能化、薄膜化の検討として偏光板層視認側と有機ELディスプレイ表示部との間に配設して、2つの部材を一体化させるための両面粘着シートであって、少なくとも1層の紫外線吸収層を有し、波長380nmの光線透過率を低減させる透明両面粘着シートが例示されている。
【0010】
しかしながら、両面粘着シートに紫外線カット剤を添加する場合、ブリード防止、粘着性能の点から、添加量に自ずと制限があるため、部材の薄膜化によりディスプレイ部に入射する紫外線を十分にカットできず、ディスプレイへの悪影響を防ぐことが出来なかった。
【0011】
一方、紫外線カット機能層をPVA偏光板と密着するTACフィルムの反対面に積層して対応する場合、TACフィルムのけん化処理によって、紫外線カット機能層からの紫外線カット剤溶出が発生し、紫外線透過率の上昇、けん化処理液への紫外線カット剤溶出(汚染)を引き起こす場合がある。
その対策として、特許文献3には、紫外線硬化型の機能層を設けたTACフィルム面の反対側面のみ、選択的にけん化する処理法が例示されているが、けん化による紫外線カット層への影響をなくすことはできなかった。さらに、機能層の架橋密度を高くすると硬化収縮によりカール発生等の問題があった。けん化処理の間に保護フィルムを貼っておくことも考えられるが、工程が増えることによる劣化やコストアップ等の問題が発生することが考えられる。一方では、紫外線カット剤による紫外線硬化への影響も抑えなくてはならず、未だ改良が必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2012-211305号公報
【文献】特開2022-000694号公報
【文献】特開2007-308670号公報
【文献】国際公開第2020/209264号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、ディスプレイ生産プロセス中の傷付き、硬化収縮によるカール発生、およびTACフィルムのけん化工程での紫外線カット剤の溶出を抑えたハードコート層形成用活性エネルギー線硬化型組成物、それを用いたハードコートフィルムおよびその積層体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記課題に対して鋭意研究を重ねた結果、以下に記載の活性エネルギー線硬化型組成物を用いることで解決することを見出し、本発明に至った。
【0015】
本発明は、トリアセチルセルロースフィルム上にハードコート層を形成するための組成物であって、活性エネルギー線硬化性成分(A)、紫外線カット剤(B)、光重合開始剤(C)および溶剤(D)を含み、前記活性エネルギー線硬化性成分(A)が、(メタ)アクリロイル基を6個以上有し、かつヌレート環骨格を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレート(a1)、(メタ)アクリロイル基を4個以上15個以下有し、かつ重量平均分子量が500~15,000である多官能ウレタン(メタ)アクリレート(但し(a1)を除く)(a2)およびその他多官能(メタ)アクリレート(a3)を全て含み、溶剤(D)が、下記式(1)を満足する溶剤(d1)、および溶剤(d1)以外の溶剤(d2)を含むハードコート層形成用活性エネルギー線硬化性組成物に関する。
式(1) [(X2)/(X1)]≧0.25
(X1):溶剤を滴下していない厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルムのヘイズ値
(X2):溶剤を滴下および乾燥した後の、厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルムのヘイズ値
【0016】
また、本発明は、トリアセチルセルロースフィルム上に、前記ハードコート層形成用活性エネルギー線硬化性組成物からなるハードコート層を有するハードコートフィルムに関する。
【0017】
また、本発明は、波長380nmにおける透過率(ta)が4%以下かつ波長420nmにおける透過率(tb)が70%以上である前記ハードコートフィルムに関する。
【0018】
また、本発明は、下記式(2)を満足する、前記ハードコートフィルムに関する。
式(2) (tc)-(ta)≦1%
(ta):水酸化ナトリウム水溶液に浸漬していないハードコートフィルムの波長380nmにおける透過率
(tc):水酸化ナトリウム水溶液に浸漬し、水洗および乾燥した後の、ハードコートフィルムの波長380nmにおける透過率
【0019】
また、本発明は、前記ハードコートフィルムと円偏光機能層が積層された積層体に関する。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、ディスプレイ生産プロセス中の傷付き、硬化収縮によるカール発生、およびTACフィルムのけん化工程での紫外線カット剤の溶出を抑えたハードコート層形成用活性エネルギー線硬化型組成物、それを用いたハードコートフィルムおよびその積層体を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】有機ELディスプレイの積層構成図(1)
図2】有機ELディスプレイの積層構成図(2)
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本発明の趣旨に合致する限り、他の実施形態も本発明の範疇に含まれることは言うまでもない。また、本明細書において「~」を用いて特定される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値の範囲として含むものとする。
【0023】
初めに本明細書で用いられる用語について説明する。
本明細書では、「(メタ)アクリル」、「(メタ)アクリロイル」、および「(メタ)アクリレート」、と表記した場合には、特に断りがない限り、それぞれ「アクリルまたはメタクリル」、「アクリロイルまたはメタクリロイル」、および「アクリレートまたはメタクリレート」を表すものとする。
また、「ハードコート層形成用活性エネルギー線硬化性組成物」を「ハードコート層形成用組成物」、「(メタ)アクリロイル基を6個以上有し、かつヌレート環骨格を有するウレタンアクリレート(a1)」を「ウレタンアクリレート(a1)」、「(メタ)アクリロイル基を4個以上15個以下有し、かつ重量平均分子量が500以上15000以下である多官能ウレタンアクリレート(但し(a1)を除く)(a2)その他多官能アクリレート(a3)」を「多官能アクリレート(a3)」と、それぞれ称することがある。本明細書中に出てくる各種成分は特に注釈しない限り、それぞれ独立に1種単独で、あるいは2種以上を混合して用いてもよい。
【0024】
≪活性エネルギー線硬化性成分(A)≫
活性エネルギー線硬化性成分(A)は(メタ)アクリロイル基を6個以上有し、かつヌレート環骨格を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレート(a1)および、(メタ)アクリロイル基を4個以上15個以下有し、かつ重量平均分子量が500~15,000である多官能ウレタン(メタ)アクリレート(但し(a1)を除く)(a2)およびその他多官能(メタ)アクリレート(a3)を全て含む。
多官能ウレタン(メタ)アクリレートとは、ウレタン結合を有し、かつ(メタ)アクリレート基を2個以上有するオリゴマーをいう。
【0025】
<多官能ウレタン(メタ)アクリレート(a1)>
ウレタン(メタ)アクリレート(a1)は、(メタ)アクリロイル基を6個以上有し、かつヌレート環骨格を有する。ヌレート環骨格は、窒素原子を有するイソシアネート化合物の三量体であり、六員環構造である。(メタ)アクリロイル基を6個以上有することで、架橋密度が増大し、ハードコート膜表面の硬度や耐擦傷性に優れかつハードコート膜のカールを抑えることができる。カール性を抑える詳細な要因は不明であるが、ヌレート環骨格部分の環構造が応力緩和に大きく寄与していると考える。
(メタ)アクリロイル基を3個有しヌレート環骨格をもつ化合物も比較的入手しやすいが、架橋密度が小さいためハードコート膜表面の硬度や耐擦傷性が不十分であり適さない。
【0026】
ウレタン(メタ)アクリレート(a1)として、具体的には、ジイソシアネートのイソシアヌレート(三量体)と水酸基を有するポリ(メタ)アクリレート化合物との反応物、ポリイソシアネートのイソシアヌレート(三量体)とポリオールおよび水酸基を有するポリ又はモノ(メタ)アクリレート化合物との反応生成物が挙げられるが、ハードコート膜表面の硬度や耐擦傷性に優れる観点から、ジイソシアネートのイソシアヌレート(三量体)化合物と、水酸基を1個および(メタ)アクリロイル基を2個以上有するポリ(メタ)アクリレート化合物との反応生成物が好ましい。
【0027】
ジイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、およびジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族系ジイソシアネート、前記芳香族イソシアネートの水素添加体、並びに、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族系ジイソシアヌレ―トが挙げられる。
水酸基を1個有するモノ(メタ)アクリレートとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、 2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、および4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、
水酸基を1個有するポリ(メタ)アクリレートとしては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、およびジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
前記ポリオールとしては、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール,およびトリシクロデカンジメタノール等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
<多官能ウレタン(メタ)アクリレート(a2)>
多官能ウレタン(メタ)アクリレート(a2)は、(メタ)アクリロイル基を4個以上15個以下有し、かつ重量平均分子量が500~15,000である多官能ウレタン(メタ)アクリレート(但し(a1)を除く)である。重量平均分子量は1,000~5,000であることが好ましい。重量平均分子量(Mw)はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によって求めたポリスチレン換算の重量平均分子量である。重量平均分子量は、[実施例]の項に記載の方法にて測定することができる。
【0030】
多官能ウレタン(メタ)アクリレート(a2)は、ウレタン(メタ)アクリレート(a1)と併用することにより、架橋密度、可撓性、基材密着のバランスがとれ、傷付き、カール(反り)発生、並びに、紫外線カット剤の溶出および劣化を低減できる。
【0031】
多官能ウレタン(メタ)アクリレート(a2)は、例えば、ポリイソシアネートと水酸基を有するモノ(メタ)アクリレート又はポリ(メタ)アクリレートとを反応させて得られるもの、ポリオールとポリイソシアネートとをイソシアネート基過剰の条件下に反応させてなるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを、水酸基を有するモノ(メタ)アクリレート又はポリ(メタ)アクリレート類と反応させて得られるもの等がある。
あるいは、ポリオールとポリイソシアネートとを水酸基過剰の条件下に反応させてなる水酸基含有ウレタンプレポリマーを、イソシアネート基を有する(メタ)アクリレート類と反応させて得ることもできる。
【0032】
以下に、ウレタン(メタ)アクリレート(a2)の製造方法について示すが、一例であり、これらに限定されない。例えば、ウレタン(メタ)アクリレート(a2)は、ポリイソシアネートと水酸基含有(メタ)アクリレートを、適当なウレタン化触媒の存在下で、酸素雰囲気下、60~100℃ 、4~8時間の条件で攪拌して得ることができる。
ウレタン化触媒の具体例としては、ナフテン酸銅、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、ジブチル錫ジラウレ- ト、トリエチルアミン、1,4-ジアザビシクロ〔2.2.2〕オクタン、2,6,7-トリメチル-1,4-ジアザビシクロ〔2.2.2〕オクタン等を挙げることができる。これらの中で、特に、ジブチル錫ジラウレ-ト等が好ましい。
【0033】
ポリイソシアネートは、例えば、脂肪族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等が挙げられ、脂肪族ジイソシアネートとしてはヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイシシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等が挙げられ、芳香族ジイソシアネートとしてはトルエンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなどが挙げられ、イソシアネート基の芳香族基との結合位置はオルト位、メタ位、パラ位のいずれでも良い。また該ジイソシアネートは3量体としてイソシアヌレート環を形成していてもよい。
中でも、光学用途を想定した場合の黄変抑制の観点で、脂肪族ジイソシアネートが好ましい。
【0034】
(メタ)アクリロイル数と重量平均分子量は、ポリオールとポリイソシアネートと水酸基含有モノ(メタ)アクリレート又はポリ(メタ)アクリレートの組み合わせで調整することができる。
【0035】
水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、トリメチロールプロパンジ(メタ) アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸1-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1-ヒドロキシブチル、(メタ) アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチル、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸10-ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12-ヒドロキシラウリル、(メタ)アクリル酸エチル-α-(ヒドロキシメチル)、単官能(メタ)アクリル酸グリセロール、あるいはこれらの(メタ)アクリレートと、ε-カプロラクトンラクトンの開環付加により末端に水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルや、上記水酸基含有(メタ)アクリレートに対してエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを繰り返し付加したアルキレンオキサイド付加(メタ)アクリル酸エステル等の水酸基含有の(メタ)アクリル酸エステル類等が挙げられる。
架橋密度を高め、傷付き、カール発生、紫外線カット材溶出等を抑える観点で、(メタ)アクリロリル基を2~5個有する(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。具体的には、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。
【0036】
カタログ等で分子量およびアクリロイル基数が公表されているウレタンアクリレート(a2)としては、三菱ケミカル(株)製:紫光UV1700B(分子量2000、アクリロイル基数10)、UV7600B(分子量1400、アクリロイル基数6)、UV7605B(分子量1100、アクリロイル基数6)、UV7610B(分子量1100、アクリロイル基数9)、UV7629EA(分子量4100、アクリロイル基数9、揮発分35%)、UV7640B(分子量1500、アクリロイル基数6~7)、およびUV7650B(分子量2300、アクリロイル基数4~5)、MIWON(株)製:MiramerPU610(分子量1800、アクリロイル基数6)、およびMU9500(分子量3200、アクリロイル基数10)、日本化薬(株)製:KAYARAD DPHA―40H(分子量2000、アクリロイル基数10)、UX-5000(分子量1500、アクリロリ基数6)、UX-5102D-M20(分子量3500、アクリロリル基数6 揮発分20%)、UX-5103(分子量7000、アクリロイル基数6)、およびUX―5005(分子量4500、アクリロイル基数9)、根上工業(株)製:アートレジンUN-3320HA(分子量1500、アクリロイル基数6)、UN-3320HC(分子量1500、アクリロイル基数15、揮発分5%)、UN-904(分子量4900、アクリロイル基数10)、UN-906S(分子量1000、アクリロイル基数6)、UN-901T(分子量4000、アクリロイル基数9、揮発分20%)、およびUN-952(分子量6500~11000、アクリロイル基数10)等が挙げられるがこれらに限らない。
【0037】
<多官能(メタ)アクリレート(a3)>
多官能(メタ)アクリレート(a3)は、(a1)、(a2)以外のその他多官能(メタ)アクリレートである。
多官能(メタ)アクリレート(a3)としては、各種ジオール(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の各種ポリオールポリ(メタ)アクリレート、各種ジイソシアネートのイソシアヌレート体のトリ(メタ)アクリレート、多官能ウレタンアクリレート(a1)および多官能ウレタンアクリレート(a2)以外のウレタンアクリレート等が挙げられるが、これらに限らない。
ウレタン(メタ)アクリレート(a1)およびウレタン(メタ)アクリレート(a2)を合成時に残留するペンタエリスリトールトリアクリレート(a3-1)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(a3-2)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(a3-3)、およびジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(a3-4)をそのまま使用できる。
【0038】
多官能(メタ)アクリレート(a3)としては、(メタ)アクリロイル基を2~5個有し、ヌレート環骨格を有する多官能アクリレートである、
東亞合成(株)製:アロニックスM-215等のイソシアヌル酸EO変性ジアクリレート(アクリロイル基数2)、
東亞合成(株):アロニックスM-313、および東亞合成(株):アロニックスM-315等のイソシアヌル酸EO変性ジアクリレートおよび又はトリアクリレート(アクリロイル基数2~3)、
新中村化学(株)製:NKエステルA-9300-1CL等のε―カプロラクトン変性(2-アクリロキシ)イソシアヌレート(アクリロイル基数3)、並びに、
新中村化学(株)製:NKエステルA-9300、アルケマ(株)製:SARTOMER SR368、第一工業製薬(株)製:NEW FRONTIER TEICA(GX-8430)、および昭和電工製:FANCRYL FA-731A等のトリス(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート(アクリロイル基数3)等が挙げられるがこれらに限らない。
【0039】
また、多官能(メタ)アクリレート(a3)としては、(メタ)アクリロイル基数が4~15個の範囲外あるいは、重量平均分子量が500~15,000の範囲外である多官能ウレタンアクリレートである、
三菱ケミカル(株)製:紫光UV-6300B(分子量3700、アクリロイル基数3)、根上工業(株)製:アートレジンUN-5500(分子量50000、アクリロイル基数12.5、揮発分50%)、UN-5507(分子量17000、アクリロイル基数15.5、揮発分50%)、およびUN-905(分子量40000~200000、アクリロイル基数15、揮発分40%)等、並びに、MIWON(株)製:Miramer SC2152(分子量20787、アクリロイル基数15)等のウレタンアクリレートが挙げられるが、これらに限らない。
【0040】
活性エネルギー線硬化性成分(A)中に含まれる多官能ウレタン(メタ)アクリレート(a1)と多官能ウレタン(メタ)アクリレート(a2)の質量比(a1)/(a2)は、20/80~80/20が好ましく、より好ましくは、60/40~40/60である。(a1)/(a2)を20/80~80/20とすることで、工程中の傷付きおよび紫外線カット剤の溶出、並びに、基材に対する密着性およびカール発生を抑制することができる。
【0041】
活性エネルギー線硬化性成分(A)100質量%中の多官能ウレタン(メタ)アクリレート(a1)、多官能ウレタン(メタ)アクリレート(a2)および多官能(メタ)アクリレート(a3)の含有率は、それぞれ、多官能ウレタン(メタ)アクリレート(a1)は12~48質量%、多官能ウレタン(メタ)アクリレート(a2)は20~80質量%、多官能(メタ)アクリレート(a3)は8~32質量%であることが好ましい。この範囲に調整することで、高い傷付き防止、および高基材密着性、並びに、カール発生の抑制、および紫外線カット剤の溶出抑制が実現できる。
【0042】
≪紫外線カット剤(B)≫
紫外線カット剤(B)としては、ブリード防止、けん化工程での溶出防止、価格等の点から少ない添加量で紫外線吸収能に優れるものが好ましい。
このような紫外線カット剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、ヒドロキシフェニルトリアジン系、ベンゾフェノン系等の紫外線カット剤が挙げられる。
塗膜の他の物性への悪影響を最小限に抑えられるという点からは、ヒドロキシフェニルトリアジン系、ベンゾトリアゾール系の紫外線カット剤が好ましい。前記紫外線カット剤は、市販品をそのまま用いてもよいし、または市販品を2種類以上混合して用いてもよい。市販品の紫外線カット剤としては、例えば、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製の商品名「TINUVIN」シリーズ(ベンゾトリアゾール系およびヒドロキシフェニルトリアジン系)、「CHIMASSORB」シリーズ、BASF(株)製の商品名「UVINUL」シリーズ(ベンゾフェノン系およびトリアジン系)、大塚化学(株)製の商品名「RUVA」シリーズ(ベンゾトリアゾール系)、、ADEKA(株)製の商品名「アデガスタブ LA」シリーズ(ベンゾトリアゾール系およびトリアジン系)、Ever Light Chemicals社製の商品名「Eversorb」シリーズ(ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、ベンゾフェノン系)等が挙げられる。
【0043】
紫外線カット剤(B)の含有量は、活性エネルギー線硬化性成分(A)100質量%に対し、例えば、0.5~20質量%であり、好ましくは2~15質量%の範囲である。0.5~20質量%とすることで、十分に紫外線をカットしつつ、光重合開始剤を光励起させるために必要な紫外線は確保でき、塗膜の硬化性を向上することができる。
【0044】
≪光重合開始剤(C)≫
光重合開始剤(C)は、光励起によってラジカル重合を開始できる機能を有するものであれば特に限定はなく、例えばアセトフェノン化合物、ベンゾイン化合物、ベンゾフェノン化合物、ホスフィンオキシド化合物、ケタール化合物、アントラキノン化合物、チオキサントン化合物等が挙げられる。具体的には、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾインジフェニルホスフィンオキシド、N,N-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、2-クロロチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン等が挙げられる。
なお、チオキサントン化合物は、単独で使用する場合は光重合開始剤として機能するが、他の光重合開始剤と組み合わせて使用する場合は、光増感剤としても機能する。
【0045】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、紫外線カット剤を含むことで、積層体に影響を及ぼす可視光に近い波長400nm近傍の紫外線をカットするため、光重合開始剤の光励起に必要な紫外線もカットされる。したがって、できるだけ少量かつわずかな紫外線でも効率的にラジカルを発生させることが可能な高感度開始剤が好ましい。具体的には、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンなどのジアルキルアミノベンゾフェノン誘導体、(±)-カンファキノンなどのカンファキノン誘導体、Sherwin-Williams社製のUltracure CTX、Ultra cure DTX、Ward-Blenkinsop社製:Quantacure ITX、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン等のチオキサンソン誘導体、BASF社製のTBA、2-エチルアントラキノンなどのアントラキノン誘導体、B.A.S.F(株)製のIrgacure OXE01、Irgacure OXE02、Irgacure OXE03などのオキシムエステル誘導体等が好ましく、特に、オキシムエステル誘導体を用いることが好ましい。
【0046】
光重合開始剤(C)の配合量は、活性エネルギー線硬化性成分(A)の合計100質量%に対し、0.1~30質量%が好ましく、5~20質量%がより好ましい。この範囲であることで、十分な重合開始効果が得られ、密着性や耐擦傷性の向上に効果的である。
【0047】
<増感剤(F)>
本発明におけるハードコート層形成用組成物は、光重合開始剤(C)と増感剤を併用できる。増感剤は、アミン系増感剤、アントラセン系増感剤、チオキサントン系増感剤等が挙げられる。増感剤は、単独または2種類以上を併用できる。
アミン系増感剤は、例えばトリメチルアミン、メチルジメタノールアミン、トリエタノールアミン、p-ジエチルアミノアセトフェノン、p-ジメチルアミノ安息香酸エチル(EPA)、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、N,N-ジメチルベンジルアミン、4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等が挙げられる。
アントラセン系増感剤は、例えば9,10-ジブトキシアントラセン(DBA)、9,10-ジエトキシアントラセン(DEA)、9,10-ジプロポキシアントラセン、9,10-ビス(2-エチルヘキシルオキシ)アントラセン等が挙げられる。
チオキサントン系増感剤は、例えば2,4-ジエチルチオキサントン(DETX)、2-イソプロピルチオキサントン(ITX)、4-イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン系増感剤を挙げることができる。
市販品の代表例としては、アミン系増感剤では、日本化薬(株)製:KAYACURE KAYACUREEPA、アントラセン系増感剤では、エア・ウォーター・パフォーマンスケミカル(株)製:アントラキュアー UVS-1331(DBA)およびUVS-1101(DEA)、チオキサントン系増感剤では、IGM Resins B.V.製:Omnirad DETXおよびITX等が例示できる。
紫外線カット領域より更に長波長側の420nm付近まで吸収がある増感剤が好ましく、チオキサントン系増感剤、あるいはアミン系増感剤とチオキサントン系増感剤の併用が好ましい。
【0048】
増感剤を用いる場合、その含有量は、活性エネルギー線硬化性成分(A)100質量%に対し、1~15質量%であることが好ましい。
【0049】
≪溶剤(D)≫
溶剤(D)は、下記式(1)を満足する溶剤(d1)、および溶剤(d1)以外の溶剤(d2)を含む。
式(1) [(X2)/(X1)]≧0.25
(X1):溶剤を滴下していない厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルムのヘイズ値
(X2):溶剤を滴下および乾燥した後の、厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルムのヘイズ値
(X1)および(X2)の測定方法は[実施例]の項に詳細を記載する。
【0050】
溶剤(d1)としては、炭酸ジメチル(0.31)、酢酸エチル(0.63)、酢酸n-ブチル(0.53)、アセトン(0.97)、メチルエチルケトン(0.58)、1,3-ジオキソラン(0.64)、等が挙げられるが、これらに限らない。これらは、1種類単独あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0051】
溶剤(d1)以外の溶剤(d2)としては、メチルイソブチルケトン(0.17)、イソプロピルアルコール(0.20)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(0.15)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(0.14)等が挙げられるがこれらに限らない。
【0052】
ヘイズ変化値[(X2)/(X1)]の上限は、0.90以下が好ましく、さらに好ましくは0.60以下である。これを満たす溶剤(D)により、塗膜のヘイズ、または耐擦傷性を低下させることなく、ハードコート層形成用活性エネルギー線硬化性組成物の基材浸透性が向上し、密着性の向上や、干渉むらの低減に効果的である。
【0053】
溶剤(D)100質量%中の溶剤(d1)の含有率は、50質量%以上100質量%未満が好ましい。溶剤(D)100質量%中、溶剤(d1)が、50質量%以上100質量%未満含まれていれば、ハードコート層形成用活性エネルギー線硬化性組成物が溶剤(d1)と一緒にTACフィルムに浸透して、組成物とTACフィルムの混合層を形成し、TACフィルムとハードコート層の密着性が向上することによって、けん化処理でのUVカット剤溶出防止に効果的である。また、溶剤(d2)を併用することにより、ハードコート層形成用活性エネルギー線硬化性組成の低粘度化、塗工性、および乾燥性を調節できる。
【0054】
溶剤(D)は、ハードコート層形成用活性エネルギー線硬化性成分(A)100質量%中、40~80質量%であることが好ましく、40~70質量%であることがより好ましく、45~65質量%がさらに好ましい。40質量%以上であると、基材浸透性が高いことで、密着性がより向上し、80質量%以下であると、基材浸透性が高すぎず、塗膜ヘイズ、または耐擦傷性の悪化をより抑制できる。
【0055】
[ハードコート層形成用活性エネルギー線硬化性組成物(ハードコート層形成用組成物)]
本発明のハードコート層形成用活性エネルギー線硬化性組成物は、活性エネルギー線硬化性成分(A)、紫外線カット剤(B)、光重合開始剤(C)および溶剤(D)を含む。
【0056】
本発明におけるハードコート層形成用組成物には、必要に応じてその他添加剤を含むことができる。その他添加剤は、例えば、可塑剤、表面調整剤、光安定化剤、酸化防止剤、重合禁止剤が挙げられる。
【0057】
[ハードコートフィルム]
本発明のハードコートフィルムは、トリアセチルセルロースフィルム上に前記ハードコート剤から形成されてなるハードコート層を有する。
本発明のハードコートフィルムは波長380nmにおける透過率(ta)が4%以下かつ波長420nmにおける透過率(tb)が70%以上であることが好ましい。
透過率透過率(tb)は、黄変抑制の観点で75%以上であることがより好ましく、80%以上がさらに好ましい。
波長380nmにおける透過率(ta)が4%以下であることにより、波長380nm以下の有機ELディスプレイに有害な紫外領域の光線がカットされ、有機ELディスプレイの劣化を防止することが出来る。また、波長420nmにおける透過率(tb)が70%以上であることにより、有機ELディスプレイ表示部の正確な色再現が可能となる。
【0058】
さらに、本発明のハードコートフィルムは、下記式(2)を満足することが好ましい。
式(2) (tc)-(ta)≦1%
(ta):水酸化ナトリウム水溶液に浸漬していないハードコートフィルムの波長380nmにおける透過率
(tc):水酸化ナトリウム水溶液に浸漬し、水洗および乾燥した後の、ハードコートフィルムの波長380nmにおける透過率
(tc)-(ta)≦1%であることで、有機ELディスプレイを有害な紫外線の影響から保護しつつ、けん化処理液へのUVカット剤の溶出を低減できる。(ta)および(tc)の測定方法は[実施例]の項に詳細を記載する。
【0059】
<トリアセチルセルロースフィルム>
本発明で用いるトリアセチルセルロースフィルムは、光学的に透明なグレードであればよく、トリアセチルセルロースフィルムの厚さは特に制限はないが、一般には強度や取り扱い等の作業性、薄層性等の点より10~500μm程度である。特に20~250μmが好ましい。
【0060】
<ハードコートフィルムの製造>
ハードコートフィルムの製造方法は、トリアセチルセルロールフィルム上にハードコート層形成用組成物を塗工する等の、従来公知の方法で製造することができ、とくに制限されない。
例えば、本発明のハードコート層形成用組成物をトリアセチルセルロースフィルムに塗工した後、必要に応じ溶剤を乾燥させる。そこへ活性エネルギー線を照射することにより、塗工したハードコート層形成用組成物を架橋硬化させ、トリアセチルセルロースフィルム、混合層、およびハードコート層を有するハードコートフィルムが得られる。
【0061】
塗工方法としては、バーコーティング、ブレードコーティング、スピンコーティング、リバースコーティング、ダイティング、スプレーコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、マイクログラビアコーティング、リップコーティング、エアーナイフコーティング、ディッピング法等が挙げられる。
【0062】
活性エネルギー線としては、電子線や、キセノンランプ、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク灯、タングステンランプ等の光源から発せられる紫外線を用いることができる。
【0063】
ハードコート層の膜厚はハードコート性を保有していれば特に限定されず、通常1~20μm、好ましくは2~15μmである。ハードコート層と混合層を合わせた膜厚も特に制限されないが、干渉むらの低減のために0.5~100μmが好ましく、より好ましくは1.1~30μm、さらに好ましくは1.2~25μmである。
ハードコートフィルムの膜厚は、特に制限されないが、50~300μmが好ましく、より好ましくは81~100μm、さらに好ましくは82~95μmである。
【0064】
[積層体]
本発明の積層体は、ハードコートフィルムと円偏光機能層が積層された構成を有する。すなわち、ハードコート層/トリアセチルセルロース/円偏光機能層の構成を有する。
円偏光機能層は、PVA偏光子と位相差層の積層構成を有しており、位相差層は位相差機能を有する位相差TACであっても良い。位相差TACは、ハードコートフィルムを構成するTACを兼ねることができる。すなわち、ハードコート層/位相差TAC/PVA偏光子の構成も、本発明における積層体と慨する。
積層体の製造方法は特に限定されないが、例えば、ハードコートフィルムのハードコート層を有していないトリアセチルセルロース面とPVA偏光子を接着することで、円偏光機能層積層体を形成することができる。
【0065】
図1に、本発明の積層体の使用例である、有機ELディスプレイの構成図の例を示す。図1において、1は透明光学材料層、2はハードコート層、3はTAC、4は偏光子(PVA)、5は位相差層、6は有機EL発光層を含む構成物、である。
図1における1と2の間、5と6の間は、スタック、粘着剤、接着剤で貼り付けられる場合がある。
【0066】
図2に、本発明の積層体の使用例である、有機ELディスプレイの構成図の例を示す。図2において、1は透明光学材料層、2はハードコート層、4は偏光子(PVA)、6は有機EL発光層、7は位相差TAC、である。
図2における2と6の間は、スタック、粘着剤、接着剤で貼り付けられる場合がある。
【実施例
【0067】
<重量平均分子量(Mw)>
重量平均分子量は、東ソー株式会社製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー「HLC-8220GPC」を使用し、分離カラム:東ソー株式会社製「TSK-GEL SUPER H5000」、「TSK-GEL SUPER H4000」、「TSK-GEL SUPER H3000」、および「TSK-GEL SUPER H2000」を4本直列に繋ぎ、移動相に温度40℃のテトラヒドロフランを用いて、0.6ml/分の流速で測定したポリスチレン換算重量平均分子量である。
【0068】
<溶剤(D)のヘイズ変化値[(X2)/(X1)]>
溶剤(D)のヘイズ変化値[(X2)/(X1)]は、下記の方法で求めた。
未処理の(溶剤を滴下していない)厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルムのヘイズ値(X1)と、短辺10cm×長辺10cm×厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルムに溶剤(D)を0.1g滴下し、25℃2分放置後に60℃1分加熱後のトリアセチルセルロースフィルムのヘイズ値(X2)とのヘイズ変化値[(X2)/(X1)]を求めた。
【0069】
<ヘイズ値の測定>
23℃、相対湿度50%(50%RH)の恒温恒湿室内に設置した日本電色工業(株)製分光・へイズメーター「SH 7000」を使用して、D65光源でのn=3の測定平均値をヘイズ値とした。
【0070】
<透過率の測定>
380nmの透過率が8%以上のUVカット剤入り厚さ50μmのトリアセチルセルロースフィルム上に、得られたハードコート層形成用組成物をバーコーターNo.8を用いて塗布し、熱風オーブンで1分間乾燥した後、出力80w/cmの高圧水銀ランプで紫外線を照射し、塗布層を硬化させて、トリアセチルセルロースフィルム、ハードコート層形成用活性エネルギー線硬化性組成物、およびハードコート層を有するハードコートフィルムを得た。
このハードコート層を有するハードコートフィルムを23℃、50%RHの恒温恒湿室に設置した日立ハイテク(株)分光光度計「U-4100」を使用して380nm、420nmの透過率を測定した。
【0071】
<ハードコートフィルムの透過率差[(tc)-(ta)]>
液温50℃、9wt%のNaOH水溶液にハードコートフィルムを5分間浸漬し、水洗後、ボックスオーブンにて100℃、5分乾燥した後、波長380nmにおける透過率(tc)を測定した。透過率(tc)と、未処理の(水酸化ナトリウム水溶液に浸漬していない)ハードコートフィルムの波長380nmにおける透過率(ta)との差を算出した。
【0072】
<多官能ウレタンアクリレート(a1)の製造>
(合成例1)ウレタンアクリレート混合液(P1): 攪拌機、還流冷却器、窒素導入管、温度計、滴下漏斗を備えた4口フラスコに、アロニックスM306(東亞合成(株)製、分子量298のペンタエリスリトールトリアクリレート(PE-3A)(a3-1)67.5質量%と分子量352のペンタエリスリトールテトラアクリレート(PE-4A)(a3-2)32.5質量%とを含む、ペンタエリスリトールポリアクリレート)1325.6質量部 と、ネオスタンU-810(日東化成(株)製、錫触媒)0.1質量部を入れ、液温を50℃にした後、デスモジュールZ4470BA(住化コベストロ(株)製、不揮発分70質量%(揮発分酢酸ブチル)、不揮発分に対して分子量667のイソホロンジイソシアネート(IPDI)トリマーを85.8質量%含み、NCO含有率11.9%のヌレート環を有するポリイソシアネート)1109.8質量部を滴下漏斗から30分間かけて滴下した。
昇温が治まった後、80℃ に昇温し3時間反応させ、フーリエ変換赤外分光法(FT-IR)においてイソシアネート基のピークが無くなったことを確認後、室温まで温度を下げ、不揮発分中に、重量平均分子量1600のアクリロイル基を9個有するウレタンアクリレート(a1-1)を77.1質量%、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PE-4A)(a3-2)を20.8質量%、および(メタ)アクリロイル基を有さないその他化合物(e-1)を2.1質量%含む、不揮発分86.7質量%のウレタンアクリレート混合液(P1)を得た。
【0073】
(合成例2)ウレタンアクリレート混合液(P2): 攪拌機、還流冷却器、窒素導入管、温度計、滴下漏斗を備えた4 口フラスコに、アロニックスM306 1325.6質量部 と、ネオスタンU-810 0.1質量部 を入れ、液温を50℃ にした後、デュラネートTPA-100(旭化成(株)製、不揮発分100質量%、不揮発分に対して分子量505のヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)トリマーを88.3質量%含む、NCO含有率23.1%のヌレート環を有するポリイソシアネート)571.7質量部を滴下漏斗から30分間かけて滴下した。
昇温が治まった後、80℃ に昇温し3時間反応させ、FT-IRにおいてイソシアネート基のピークが無くなったことを確認後、室温まで温度を下げ、不揮発分中、重量平均分子量1400のアクリロイル基を9個有するウレタンアクリレート(a1-2)を76.1質量%、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PE-4A)(a3-2)を23.0質量%、および(メタ)アクリロイル基を有さないその他化合物(e-2)を0.9質量%含む、不揮発分100質量%のウレタンアクリレート混合液(P2)を得た。
【0074】
(合成例3)ウレタンアクリレート混合液(P3): 攪拌機、還流冷却器、窒素導入管、温度計、滴下漏斗を備えた4口フラスコに、デスモジュールZ4470BA 4439.0質量部と、シクロヘキシルジメタノール(分子量144、水酸基価389mgKOH/g)432.6質量部と、ネオスタンU-810 0.1質量部を入れ、80℃ に昇温して3時間反応させ、FT-IRにおいてイソシアネート基のピーク強度が反応前の5割になったことを確認後、4-ヒドロキシブチルアクリレート(分子量144、水酸基価389mgKOH/g)865.0質量部を入れ、さらに、80℃で3時間反応させ、FT-IRにおいてイソシアネート基のピークが無くなったことを確認後、室温まで温度を下げ、不揮発分中、重量平均分子量4000のアクリロイル基を6個有するウレタンアクリレート(a1-3)96.0質量%、および(メタ)アクリロイル基を有さないその他化合物(e-3)4.0質量%を含む、不揮発分100.0質量%のウレタンアクリレート混合液(P3)を得た。
【0075】
<(メタ)アクリロイル基を4個以上15個以下有し、かつ分子量が500以上15000以下であるウレタンアクリレート(a2)の製造>
(合成例4)ウレタンアクリレート混合液(Q1):攪拌機、還流冷却器、窒素導入管、温度計、滴下漏斗を備えた4口フラスコに、Pentaerythritol Triacrylate(Thermo Fisher Scientific社製、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PE-3A)、純度97%以上、分子量298)533質量部と、アロニックスM306 32.5質量%との混合物)237質量部 と、ネオスタンU-8100.1質量部を入れ、液温を50℃にした後、デスモジュールI(住化コベストロ(株)製、イソホロンジイソシアネート(IPDI))224質量部を滴下漏斗から30分間かけて滴下した。昇温が治まった後、80℃ に昇温し3時間反応させ、FT-IRにおいてイソシアネート基のピークが無くなったことを確認後、室温まで温度を下げ、不揮発分中、分子量900、アクリロイル基を6個有するウレタンアクリレート(a2-1)(アクリロイル基当量137)を82.6質量%、ペンタエリスリトールトリアクリレート(a3-1)(PE-3A、アクリロイル基当量99)を9.7質量%、およびペンタエリスリトールテトラアクリレート(a3-2)(PE-4A、アクリロイル基当量88)を7.7質量%含むウレタンアクリレート混合液Q1を得た。
【0076】
(合成例5)ウレタンアクリレート混合液(Q2):攪拌機、還流冷却器、窒素導入管、温度計、滴下漏斗を備えた4口フラスコに、アロニックスM403(東亞合成(株)製、分子量524のジペンタエリスリトールペンタアクリレート(DPPA(a3-3))55質量%と分子量579のジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA(a3-4))45質量%との混合物)2500質量部 と、ネオスタンU-810 0.1質量部を入れ、液温を50℃にした後、デスモジュールI 224質量部を滴下漏斗から30分間かけて滴下した。昇温が治まった後、80℃ に昇温し3時間反応させ、FT-IRにおいてイソシアネート基のピークが無くなったことを確認後、室温まで温度を下げ、不揮発分中、分子量1300、アクリロイル基を10個有するウレタンアクリレート(a2-2)(アクリロイル基当量127)46.7質量%、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(a3-3)(DPPA、アクリロイル基当量105)12.0質量%、およびジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(a3-4)(DPHA、アクリロイル基当量96)41.3質量%を含むウレタンアクリレート混合液(Q2)を得た。
【0077】
実施例および比較例で使用した材料について、下記に記載する。
【0078】
<多官能ウレタン(メタ)アクリレート(a1)>
・(a1-1):分子量1600、アクリロイル基数9
・(a1-2):分子量1400、アクリロイル基数9
・(a1-3):分子量4000、アクリロイル基数6
<多官能ウレタン(メタ)アクリレート(a2)>
・(a2-1):分子量900、アクリロイル基数6個
・(a2-2):分子量1300、アクリロイル基数10個
<多官能(メタ)アクリレート(a3)>
・(a3-1):ペンタエリスリトールトリアクリレート(PE-3A)
・(a3-2):ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PE-4A)
・(a3-3):ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(DPPA)
・(a3-4):ジペンタエリスリトールテトラアクリレート(DPHA)
・多官能アクリレート液(R1):東亞合成(株)製:アロニックスM-403(ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(a3-3)55%とジペンタエリスリトールテトラアクリレート(a3-4)45%の混合物)
・多官能アクリレート液(R2):アルケマ(株)製:SARTOMER SR368(分子量423、アクリロイル基数3、(a3-5))
・多官能アクリレート液(R3):根上工業(株)製:アートレジンUN-5507(分子量17000、アクリロイル基数15.5、(a3-5)、酢酸n-ブチル50%含有)
【0079】
<紫外線カット剤(B)>
・紫外線カット剤(b-1):BASF社製:UVINUL 3050:ベンゾフェノン系紫外線カット剤
【0080】
<光重合開始剤(C)>
・(c-1):IGM Resins B.V.製:ESACURE ONE:オリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-[1-(メチルビニル)フェニル]プロパノン
・(c-2):大同化成工業(株)製:DAIDO UV-CURE APO:ジフェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィンオキサイド
・(c-3):B.A.S.F(株)製:Irgacure OXE01:1-[4-(フェニルチオ)フェニル]オクタン-1,2-ジオン=2-(O-ベンゾイルオキシム)
・(c-4):B.A.S.F(株)製:Irgacure OXE03:オキシムエステル系光重合開始剤
・(c-5):IGM Resins B.V.製:Omnirad 907:2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オンン
<増感剤(F)>
・(f):IGM Resins B.V.製:Omnirad DETX:2,4-ジエチルチオキサントン
【0081】
<溶剤(D)>
カッコ内の数値は、ヘイズ変化値[(X2)/(X1)]である。
([(X2)/(X1)]≧0.25を満足する溶剤(d1))
・(d1-1)酢酸ブチル(ダイセル(株)製、0.53)
・(d1-2)DMC:炭酸ジメチル(宇部興産(株)製、0.31)
・(d1-3)MEK:メチルエチルケトン(丸善石油化学(株)製、0.58)
([(X2)/(X1)]≧0.25を満足しない溶剤(d2))
・(d2-1)MIBK:メチルイソブチルケトン(三菱ケミカル(株)製、0.17)
・(d2-2)PGM:プロピレングリコールモノメチルエーテル(大伸化学(株)製、0.15)
・(d2-3)PIGMAC:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(三協化学(株)製、0.14)
【0082】
<実施例1>
攪拌機付きフラスコに、(ウレタンアクリレート液(P1)20.9部、ウレタンアクリレート液(Q1)67.8部、多官能アクリレート液(R1)14.4部、紫外線カット剤UVINUL3050(b-1)10部、光重合開始剤ESACURE ONE(c-1)7.0部、光重合開始剤APO(c-2)3.0部、炭酸ジメチル(d1-2)35部、メチルエチルケトン(d1-3)12.2部、メチルイソブチルケトン(d2-1)40部、およびプロピレングリコールモノメチルエーテル(d2-2)10部を加え、攪拌混合して、下記の化合物を含むハードコート層形成用組成物を得た。
・ウレタンアクリレート(a1-1):14部
・ウレタンアクリレート(a2-1):56部
・ペンタエリスリトールトリアクリレート(a3-1):6.6部
・ペンタエリスリトールテトラアクリレート(a3-2):9.0部
・ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(a3-3):7.9部
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(a3-4):6.5部
以上活性エネルギー線硬化成分(A)計100部
・その他の不揮発分:0.3部
・紫外カット収剤UVINUL3035(b-1):10部
・光重合開始剤ESACURE ONE(c-1):7部
・光重合開始剤APO(c-2):3部
・酢酸n-ブチル(d1-1):2.8部
・炭酸ジメチル(DMC)(d1-2):35部
メチルエチルケトン(MEK)(d1-3):12.2部
メチルイソブチルケトン(MIBK)(d2-1):40部
・プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)(d2-2):10部
【0083】
<実施2~31、比較例1~9>
表1~3に示すように、組成および配合量(質量部)を変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2~31、および比較例1~9のハードコート層形成用組成物を製造した。
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】
【表3】
【0087】
得られたハードコート層形成用組成物を用いて、下記の方法で耐溶出性、鉛筆硬度、密着性、反りの評価を行なった。結果を表1~3に示す。
【0088】
[耐溶出性]
380nmの透過率が8%以上のUVカット剤入り厚さ50μmのトリアセチルセルロースフィルム上に、得られた前記ハードコート層形成用組成物をバーコーターNo.8を用いて塗布し、熱風オーブンで1分間乾燥した後、出力80w/cmの高圧水銀ランプで積算露光量400mJ/cm紫外線を照射し、塗布層を硬化させて膜厚5~6μmの耐溶出性評価用のハードコートフィルムを得た。 得られたハードコートフィルムを塗工フィルムは長さ100mm×幅50mmのテストフィルムに切断してテストフィルムとした。
このテストフィルムを50℃に加温した9wt%の水酸化ナトリウム水溶液に5分間浸漬、取り出したテストフィルムを水洗、100℃2分間、ボックスオーブンで乾燥した。
以下に示す透過率(ta)、(tc)を測定した。
(ta):水酸化ナトリウム水溶液に浸漬していないハードコートフィルムの波長380nmにおける透過率
(tc):水酸化ナトリウム水溶液に浸漬し、水洗および乾燥した後の、ハードコートフィルムの波長380nmにおける透過率
得られた(ta)、(tc)より、(tc)-(ta)を算出し、下記の基準で耐溶出性を評価した。なお、UVカット剤を配合していない比較例5は耐溶出性評価不可として「-」とした。
○:(tc)-(ta)≦1%(良好)
△:1%<(tc)-(ta)≦2%(実用上問題なし)
×:2%<(tc)-(ta)(実用不可)
【0089】
[鉛筆硬度]
[耐溶出性]と同様に、鉛筆硬度評価用のハードコートフィルムを得た。得られたハードコートフィルムの鉛筆硬度は、異なる硬度の鉛筆を用い、JIS K5400(1990)に準じた試験方法により測定した。
◎:鉛筆硬度が3H以上(優れている)
○:鉛筆硬度がH~2H(良好)
△:鉛筆硬度がF(実用上問題なし)
×:鉛筆硬度がHB以下(実用不可)
【0090】
[密着性]
[耐溶出性]と同様に密着性評価用のハードコートフィルムを得た。得られたハードコートフィルムのハードコート層が形成された反対側の面を、硝子板に厚み約20μmの粘着剤層を介して貼り付けた後、ハードコート層表面について、JIS K5400に準じた碁盤目剥離試験を実施し、下記の指標により判定した。
◎:剥離個数0/100(優れている)
○:剥離個数1~5/100(良好)
△:剥離個数6~20/100(実用上問題なし)
×:剥離個数21~100/100(実用不可)
【0091】
[反り試験]
[耐溶出性]と同様に反り試験用のハードコートフィルムを得た。
得られたハードコートフィルムを長さ100mm×幅50mmに切断してテストフィルムとし、22℃50%RHの恒温恒湿室にて6時間放置した。
テストフィルムを水平面上に置き、長辺の両端および中央の3箇所について、幅方向の両端間の距離を、マイクロゲージを用いて測定し、その平均値を算出した。
◎:40mm以上(優れている)
○:30mm以上40mm未満(良好)
△:10mm以上30mm未満(実用上問題なし)
×:筒状、あるいは10mm未満(実用不可)
【0092】
表1~3に示す通り、本発明のハードコート剤を用いることで、高い紫外線カット性、けん化工程における紫外線カット剤の溶出を低減し、塗工フィルムの紫外線カット性の低下とけん化処理液の汚染防止、低カール性によるディスプレイ生産プロセス効率の向上、高いハードコート性付与によるディスプレイ生産プロセスでの傷つき防止性を有するハードコート層を有するハードコートフィルムを提供することが出来る。
【符号の説明】
【0093】
1: 透明光学材料層
2: ハードコート層
3: TAC
4: 偏光子(PVA)
5: 位相差層
6: 有機EL発光層を含む構成物
7: 位相差TAC
8: 円偏光機能層
【要約】
【課題】ディスプレイ生産プロセス中の傷付き、硬化収縮によるカール発生、およびTACフィルムのけん化工程での紫外線カット剤の溶出を抑えたハードコート層形成用活性エネルギー線硬化型組成物、それを用いたハードコートフィルムおよびその積層体を提供すること。
【解決手段】トリアセチルセルロースフィルム上にハードコート層を形成するための組成物であって、特定の(メタ)アクリレートを含む活性エネルギー線硬化性成分(A)、紫外線カット剤(B)、光重合開始剤(C)および特定の溶剤(D)を含むハードコート層形成用活性エネルギー線硬化性組成物によって解決される。
【選択図】図1
図1
図2