(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-25
(45)【発行日】2023-09-04
(54)【発明の名称】少なくとも1つの環境固有のGNSSプロファイルを記述するモデルを求めるための方法
(51)【国際特許分類】
G01S 19/07 20100101AFI20230828BHJP
G01S 19/22 20100101ALI20230828BHJP
【FI】
G01S19/07
G01S19/22
(21)【出願番号】P 2022505365
(86)(22)【出願日】2020-07-15
(86)【国際出願番号】 EP2020069932
(87)【国際公開番号】W WO2021018575
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-01-25
(31)【優先権主張番号】102019211174.2
(32)【優先日】2019-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン スクーピン
(72)【発明者】
【氏名】ハノ ホーマン
(72)【発明者】
【氏名】モーリッツ ミヒャエル クノル
【審査官】渡辺 慶人
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-090912(JP,A)
【文献】特開2015-184113(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0094379(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102016220581(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0278465(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 5/00 - 5/14
19/00 - 19/55
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの環境固有のGNSSプロファイルを記述するモデルを求めるための方法であって、
a)GNSS衛星とGNSS受信機との間のGNSS信号の少なくとも1つのGNSSパラメータを記述する
複数の測定データセットを
コンピュータが受信するステップと、
b)前記ステップa)で受信した
複数の前記測定データセットを使用して
、少なくとも1つの
前記環境固有のGNSSプロファイルを記述するモデルのための少なくとも1つのモデルパラメータを
前記コンピュータが求めるステップと、
c)
少なくとも1つの
前記環境固有のGNSSプロファイルを記述する前記モデルを
前記コンピュータが提供するステップと
を少なくとも含
み、
前記ステップb)において、複数の前記測定データセットの少なくとも一部に区分的線形回帰が適用される、方法。
【請求項2】
少なくとも1つの
前記GNSSパラメータは、前記GNSS衛星と前記GNSS受信機との間の伝搬パスを記述する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
複数の前
記測定データセットは、前記GNSS信号が受信された前記GNSS受信機の位置を含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記モデルパラメータは、統計的パラメータである、請求項1から
3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記モデルは、補正モデルの形態で提供される、請求項1から
4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記モデルは、パターン認識ベースの測位に使用できるように提供される、請求項1から
5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
コンピュータプログラムであって、請求項1から
6までのいずれか1項記載の方法を
コンピュータに実施
させるためのコンピュータプログラム。
【請求項8】
機械可読記憶媒体であって、該機械可読記憶媒体上に請求項
7記載のコンピュータプログラムが格納されている、機械可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの環境固有のGNSSプロファイルを記述するモデルを求めるための方法、その方法を実施するためのコンピュータプログラム、ならびにコンピュータプログラムが格納された機械可読記憶媒体に関する。本発明は、特に、自律的な運転に適用することができる。
【0002】
背景技術
とりわけ、車両には、自律的な運転のために、特に、ナビゲーション衛星データ(GPS、GLONASS、Beidou、Galileo)を用いて、高精度な車両位置を求めることができるセンサシステムが必要である。この目的のために、現在GNSS(Global Navigations Satellite System)信号は、車両屋根上のGNSSアンテナを介して受信され、GNSSセンサを用いて処理されている。
【0003】
GNSSの精度を向上させるために、軌道上のGNSS誤差(実質的には衛星の軌道誤差、衛星の時計誤差、コードや位相の偏り、ならびに電離圏や対流圏の屈折の影響)による誤差の影響を求めることができるGNSS補正データサービスが公知である。この種の既存の補正データサービスを用いることで、GNSSベースの測位において既述の誤差の影響を考慮に入れることが可能となり、それによって、GNSSベースの測位結果の精度が向上する。しかしながら、例えば都市環境において、特にビルの谷間では、GNSS衛星の顕著なシャドーイングが生じる可能性がある。その上さらに、住宅街ではGNSS信号の反射が生じる可能性があり、これは、いわゆるマルチパス伝搬やそれに伴って生じる疑似オレンジ誤差につながる可能性がある。GNSSベースの測位精度をより一層向上させるために、そのような影響も考慮に入れる努力がなされている。
【0004】
既存の補正データサービスは、使用される衛星までの見通し内伝搬が生じる限り、cm範囲でのGNSSベースの測位精度の向上を可能にする。例えば、高層ビルによるシャドウイングの場合、補正データサービスを使用することによって、通常は、補正データを使用しない場合に比べて精度のさらなる向上は達成されるが、しかしながらこの場合、測位精度は低下する(例えば、1メートルまたは10メートル規模の精度)。
【0005】
特に、GNSS受信機が、ここで説明した場合のように補正データを使用しても、生じている誤差を完全に把握しないことは問題であり、そのため、例えば、楕円の誤差はより大雑把になっても楕円の中心が適正でないことが想定され得る。この種のGNSSベースのシステムを用いた測位の信頼性の低下は、例えば、GNSSベースの測位システムに対する精度要件および完全性要件にとって、高度に自動化された運転もしくは自律的な運転に適用するためには可及的に回避すべき事案のはずである。
【0006】
発明の開示
本明細書では、請求項1によれば、少なくとも1つの環境固有のGNSSプロファイルを記述するモデルを求めるための方法が提案され、該方法は、少なくとも以下のステップ、すなわち、
a)GNSS衛星とGNSS受信機との間のGNSS信号の少なくとも1つのGNSSパラメータを記述する少なくとも1つの測定データセットを受信するステップと、
b)ステップa)で受信した測定データセットを使用して、少なくとも1つの環境固有のGNSSプロファイルを記述するモデルのための少なくとも1つのモデルパラメータを求めるステップと、
c)少なくとも1つの環境固有のGNSSプロファイルを記述するモデルを提供するステップとを含む。
【0007】
GNSSとは、これに関連して、例えばGPS(Global Positioning System)やガリレオなどの全地球航法衛星システムの略である。ステップa)、b)、およびc)の提示された順序は、例示的なものであり、そのため、本方法の正規の動作シーケンスにおいて生じるか、もしくは提示されたシーケンスで少なくとも1回実行することができる。その上さらに、少なくともステップa)、b)、およびc)は、少なくとも部分的に並行してもしくは同時に実施することもできる。
【0008】
これにより、環境固有のGNSSプロファイルに基づいたまったく新規のモデルアプローチを提示することができる。このモデルアプローチは、特に有利なやり方でデータ量、ひいてはリソース(メモリスペース)を節約するのに役立つ。それにもかかわらず、GNSSプロファイルを用いることにより、測位精度を有利に向上させることができる。このことは、特に、衛星のシャドウイングが生じる可能性がある都市環境においても当てはまる。
【0009】
ステップa)では、GNSS衛星とGNSS受信機との間のGNSS信号の少なくとも1つのGNSSパラメータを記述する少なくとも1つの測定データセットの受信が行われる。その際には、GNSS衛星とGNSS受信機との間のGNSS信号の例えば伝搬パスもしくは受信状況などの各GNSSパラメータを記述する複数の測定データセットが受信できる。この目的のために、(場合によっては事前に)測定データの記録を行うことができ、そこから測定データセットが形成される。これに関連して、好適には、測定データは、1つ以上の(自動車)車両から、例えばGNSS受信機および/または車両の環境センサシステムを介して記録される。車両とは、好適には自動車、特に好適には自動化された運転または自律的な運転用に構成された自動車である。
【0010】
測定データセットには、通常、それぞれ以下のような(信号固有の)測定データ、すなわち、
-GNSS受信機の(実際の)位置(GNSS信号が受信された場所)、
-GNSS衛星の衛星位置(GNSS信号が送信された場所)、
-GNSS信号の測定された疑似距離(PR)、および
-GNSS信号の測定された信号強度(代替的にC/N0)および/またはその他のGNSS生測定値(例えば、ドップラーおよび搬送波位相など)
が含まれる。
【0011】
GNSS受信機(例えば、受信アンテナ)の(実際の)位置は、例えば(GNSS信号の信号伝搬が妨害された場合でも)デュアル周波数受信機を用いて求めることができる。デュアル周波数受信機は、符号化された2つの周波数(L1およびL2)に基づいてGNSS衛星から到来した無線信号を分析することができるGNSS受信機である。この測定原理は、((L1のみが受信される)通常の疑似距離を超える)搬送波の位相測定である。対応するデュアル周波数受信機は、例えば(自動車)車両内または車両上に取り付けることができる。これに関連して、車両は、例えば、測定データセットを作成するために所期の特定のルートの走破を目的とした車両であってもよい。
【0012】
代替的または付加的に、環境センサシステムは、GNSS受信機の(実際の)位置を求めるために役立たせることができる。その際、環境センサシステムからの測定データは、GNSS測定データと組み合わせたり、単独で使用したりすることができる。環境センサシステムは、例えば、(自動車)車両内または車両上に取り付けられてもよい。これに関連して、GNSS受信機の位置は、例えば、車両の位置と一致させることができる。環境センサシステムは、例えば、光学センサ(例えば、カメラ)、超音波センサ、レーダーセンサ、LIDARセンサなどであり得る。
【0013】
GNSS受信機の位置と衛星位置とにより、通常、GNSS衛星とGNSS受信機との間のLOS(見通し内)距離もしくは直接の(最短)接続線がわかる。疑似距離(PR)は、通常、GNSS信号の伝搬時間測定(例えば、L1周波数)を介して測定される。GNSS受信機の地点位置、衛星位置、および疑似距離を用いることにより、疑似距離誤差(PR誤差)もわかる(例えば次の方程式を介して:PR誤差=測定されたPR-LOS距離)。
【0014】
好適には、測定データは、最初に、比較的長い期間にわたって、例えば、少なくとも10日間にわたって、かつ/またはクラウドソーシングを使用して収集される。クラウドソーシングは、これに関連して、様々な測定インスタンスの測定値が編集されるように記述することもできる。この目的のために、例えば、観測期間(例えば、10日以上)にわたって観測領域(その3D環境モデルが作成される)にあった様々な車両の測定データを編集することができる。
【0015】
ステップb)では、ステップa)で受信した測定データセットを使用して、少なくとも1つの環境固有のGNSSプロファイルを(簡素化して)記述するモデルのための少なくとも1つのモデルパラメータを求めるステップが行われる。特に、ステップb)では、複数のGNSSプロファイルを記述するモデルパラメータもしくはモデルが、複数の受信された測定データセットから導出または抽象化され得る。このモデルは、好適には、モデルパラメータにより、GNSSプロファイルの簡素化された記述を可能にし、これにより、データ量および/または計算能力を節約することができる(例えば、すべてのGNSS生データを用いた完全なGNSSプロファイルの提供と比較して)。
【0016】
(各)GNSSプロファイルは、基本的に、衛星データから求められたパス長(および/または衛星データ(もしくはパス長)とステップa)で決定された受信機位置とから求められたパス長誤差)と、受信機位置および衛星位置からの値対との間の関係を記述する。これらのGNSSプロファイルもしくはこれらのGNSSプロファイルからの関係は、ここでは、モデルアプローチを介して有利に簡素化されて提供されるべきである。
【0017】
衛星位置とは、本明細書では、通常、送信時点で対応する衛星データもしくはGNSS信号を送信した衛星の位置に関する。また受信機位置とは、簡単化のために、例えば、GNSS受信機を有する車両の車両位置と同等に扱うことができる。プロファイルは、環境固有のものである。なぜなら、そのデータ、例えばパス長誤差などは、環境の影響を受けるか、環境に依存するからである。
【0018】
モデルは、特に、測定変数と依存性パラメータとの間の関数関係のコンパクトな記述を可能にするように形成される。さらに、モデルは、複数の測定値がわずかな(特に統計的な)パラメータに統合されるように形成することができる(例えば平均値や分散など)。
【0019】
モデルは、例えば、線形モデルであり得る。さらに、モデルは、例えば3次元などの多次元であってもよい。その上さらに、モデルは、(それに基づき記述されるGNSSプロファイルのように)環境固有であってもよい。
【0020】
モデルは、代替的または付加的に、GNSS信号特性のマッピングをGNSSプロファイル(のパラメータ化された記述)の形態で含むことができる。これは、例えば、既存の道路地図の付加的なマップ層(例えばNDSマップ)であってもよい。
【0021】
ステップc)では、少なくとも1つの環境固有のGNSSプロファイルを記述するモデルを提供するステップが行われる。このモデルは、例えば車両外で、特に車両によって記録されたデータに基づいて求めることができる。この目的のために、モデルは、例えば、上位の評価ユニットで形成することができる。それに続いて、このモデルは、少なくとも1つの車両に伝送(返送)することができる。
【0022】
好適な実施形態によれば、少なくとも1つのGNSSパラメータは、GNSS衛星とGNSS受信機との間の伝搬パス(例えば、疑似距離)を記述することが提案される。さらなる好適な実施形態によれば、少なくとも1つの測定データセットは、GNSS信号が受信されたGNSS受信機の位置を含むことが提案される。ここでは、例えば、GNSS受信機が車両内または車両上に配置されている場合に、車両位置となる。
【0023】
さらなる好適な実施形態によれば、ステップb)において、測定データセットの少なくとも一部に区分的線形回帰が適用されることが提案される。このことは、換言すれば、モデリングのために有利にかつ例示的に区分的線形回帰を使用できるように記述することもできる。
【0024】
さらなる好適な実施形態によれば、モデルパラメータは、統計的パラメータおよび/または依存性パラメータであることが提案される。統計的パラメータとは、例えば、平均値および/または分散であり得る。依存性パラメータとは、例えば、モデル化すべき値(もしくはGNSSプロファイル)の変化、例えば、GNSS受信アンテナの高さの変化であり得る。
【0025】
さらなる好適な実施形態によれば、モデルパラメータは、複数の測定データセットを使用して求められることが提案されている。これに関連して、例えば、同じ(測地)位置またはこの位置周りの領域に割り当てることができる複数の測定データセットを、モデルパラメータを求めるために使用することができる。
【0026】
さらなる好適な実施形態によれば、モデルは、補正モデルの形態で提供されることが提案される。これに関連して、モデルは、例えば、車両などの(測地)位置(入力変数)に依存して特定の補正値(出力変数)を出力することができる。
【0027】
本明細書で説明するモデルは、(測地)位置の他に、入力変数および出力変数として、他の可能なパラメータのすべての範囲をさらに有することもできる。
【0028】
例えば、以下のパラメータ、すなわち、
-疑似距離(衛星からセンサまでの衛星信号の伝搬時間)、および
-PR誤差(疑似距離の誤差)
の少なくとも1つがモデルの出力変数であってもよい。
【0029】
以下のパラメータ、すなわち、
-GNSSセンサによって受信されたGNSS信号の信号強度、
-GNSSセンサによって受信されたGNSS信号のノイズ比(C/N0=Carrier-to-noise density ratio)、
-GNSSセンサによって受信されたGNSS信号の搬送波位相、
-GNSSセンサのアンテナのアンテナ高さ、
-それぞれのGNSS衛星の移動の時間的動特性、
のうちの少なくとも1つは、モデルの入力変数であってもよい。
【0030】
モデルは、モデルパラメータを用いて、GNSSパラメータの分布をコンパクトな形態にモデル化する。好適には、このモデルは、パラメータ限界値を含む。出力変数は、好適には、それぞれモデルの使用における不確実性を反映する静的部分変数を含む。特に好適には、各出力変数は、本来の出力変数を表す期待値と、それぞれの期待値の不確実性を記述する分散とを含む。
【0031】
さらなる好適な実施形態によれば、モデルは、パターン認識ベースの測位に使用できるように提供されることが提案される。これは、換言すれば、モデルが1つ以上のGNSSフィンガープリントについて表されるように構成されているように記述することもできる。
【0032】
さらなる態様によれば、本明細書で説明する方法を実施するためのコンピュータプログラムも提案される。これは、換言すれば、特に、プログラムがコンピュータによって実行されるときに、コンピュータに本明細書で説明する方法を実行させる命令を含んだコンピュータプログラム(製品)に関している。
【0033】
さらなる態様によれば、コンピュータプログラムが格納された機械可読記憶媒体も提案される。通常、機械可読記憶媒体とは、コンピュータ可読データ担体である。
【0034】
その他に、ここでは、本明細書で説明する方法を実施するように構成された位置センサも説明されるべきである。例えば、前述した記憶媒体は、位置センサの構成部品であるか、または位置センサに接続されてもよい。好適には、位置センサは、(自動車)車両内または車両上に配置されているか、またはそのような車両内または車両上に取り付けるように設けられ、構成されている。好適には、位置センサは、GNSSセンサである。位置センサは、さらに好適には、車両の自律的な運転のために設けられ、構成されている。さらに、位置センサは、組み合わされた運動センサおよび位置センサであり得る。そのような位置センサは、自律的な車両にとって特に有利である。位置センサもしくは位置センサの計算ユニット(プロセッサ)は、例えば、本明細書で説明する方法を実行するために、本明細書で説明するコンピュータプログラムにアクセスすることができる。
【0035】
それに応じて、本方法に関連して論じられる詳細、特徴、および好適な実施形態は、本明細書で提示される位置センサ、コンピュータプログラム、および/または記憶媒体においても出現する可能性があり、その逆もまた同様である。その限りでは、そこでの実施形態は、これらの特徴のより詳細な特徴付けのために包括的に参照される。
【0036】
以下では、本明細書で提示される解決手段ならびにそれらの技術的環境を、図面に基づきより詳細に説明する。ここでは、本発明が、図示の実施例によって限定されるべきものではないことを指摘しておく。特に、別段のものが明示的に示されない限りは、図面で説明された事実の一部の態様を抽出し、それらを他の構成部品と組み合わせること、ならびに/または他の図面および/または本発明の説明からの知見と組み合わせることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】説明される方法の概略的なフローチャートである。
【
図2】GNSSプロファイルを記述するモデルの概略的な一例である。
【
図3】疑似距離についての誤差プロファイルの概略的な一例である。
【0038】
図1は、説明する方法のフローチャートを概略的に示す。この方法は、少なくとも1つの環境固有のGNSSプロファイルを記述するモデルを求めるために用いられる。ブロック110、120、および130で示されるステップa)、b)、およびc)の順序は例示的なものであり、そのため、正規の動作シーケンスで生じ得る。
【0039】
ブロック110では、ステップa)に従って、GNSS衛星とGNSS受信機との間のGNSS信号の少なくとも1つのGNSSパラメータを記述する少なくとも1つの測定データセットを受信するステップが行われる。ブロック120では、ステップb)に従って、ステップa)で受信された測定データセットを使用して、少なくとも1つの環境固有のGNSSプロファイルを記述するモデルのための少なくとも1つのモデルパラメータを求めるステップが行われる。ブロック130では、ステップc)に従って、少なくとも1つの環境固有のGNSSプロファイルを記述するためのモデルを提供するステップが行われる。
【0040】
図2は、GNSSプロファイルを記述するモデルについての一例を概略的に示している。ここでは、疑似距離1(記号:PR)が、例えば車両位置(記号:x)の位置2にわたってプロットされている。このプロファイルは、見通し外疑似距離4および見通し内疑似距離5を含む。その上さらに、
図2には、これらの2つの疑似距離4,5の間の差分が誤差値3(記号:e)として記述できることが例示的に入力されている。
【0041】
したがって、
図2は、この例では特定の衛星(SV)の疑似距離(PR)の平均値を、(車両)位置に依存して表すためのGNSSプロファイルの簡素化された例を示している。それに応じて、GNSSプロファイルもしくはモデルパラメータが、さらなるGNSS信号特性(例えば、受信したGNSS信号電力、ドップラーなど)のために、およびさらなる次元(関連するSVの空間次元および方位)に関して作成されてもよい。その上さらに、対応するGNSSプロファイルもしくはまたは対応するモデルパラメータは、受信した衛星ごとに存在していてもよいし、あるいは受信した衛星ごとに求めることができる。
【0042】
図2の誤差値3は、本明細書で説明する方法に関連して、例えば、少なくとも1つの環境固有のGNSSプロファイルを記述するモデルのためのモデルパラメータとして用いることができる。このモデルパラメータは、(図示のように)例示的に、見通し外疑似距離4の経過と見通し内疑似距離5の経過との間の差分形成を介して導出することができる。これは、場合によっては、少なくとも1つのGNSSパラメータ4,5が、どのようにGNSS衛星とGNSS受信機との間の伝搬パスを記述できるかについての一例も表している。モデルパラメータは、特定の衛星(SV)の疑似距離(PR)の平均値を、(車両)位置に依存して記述するため、これは、場合によっては、モデルパラメータがどのような統計的パラメータであり得るかについての一例でもある。
【0043】
その上さらに、少なくとも1つの測定データセットは、GNSS信号が受信されたGNSS受信機の位置を含むことができる。さらに、ステップb)では、例えば、区分的線形回帰を、測定データセットの少なくとも一部に適用することができる。さらに、モデルパラメータは、複数の測定データセットを使用して求めることができる。
【0044】
図3は、疑似距離についての誤差プロファイルの一例を概略的に示す。
【0045】
図3は、ここでは、新規の補正データを生成するための例示的なアプローチを示している。これは、特に、GNSS受信機における疑似距離および搬送波位相を補正するために興味深いものである。
【0046】
補正値を決定するために、GNSS測定データセットでは目標値も実際値も観察される。この目的のために、実際値は、GNSS測定値(GNSS信号の伝搬時間測定)から直接取得され、目標値は、既知の受信機位置および衛星位置から間接的に決定される(オフラインで計算可能)。
【0047】
一変化形態では、プロファイルは、目標値のためにも実際値のためにも作成される。これに関連して、好適には、少なくとも1つのモデルパラメータ自体が(環境固有の)プロファイル方式で形成される。
【0048】
図2は、疑似距離に対応する一例を示している。したがって、NLOS_PR値4は、実際値(実際値プロファイル)を表し、LOS_PR値5は、目標値(目標値プロファイル)を表す。目標値および実際値からの値の差分形成を用いることにより(例えば、誤差値e=目標値-実際値)、関連する誤差値3が決定され、この誤差値3は、誤差プロファイルとして表すことができる。
【0049】
図3は、
図2のGNSSプロファイルから導出された疑似距離についての誤差プロファイルを示す。
図3に示されている経過は、それ自体が(環境固有の)プロファイル方式で形成されたモデルパラメータとして用いることができよう。これは、換言すれば、特に、モデルパラメータの特定のシーケンスとして、またはステップb)で求めることができるモデル特性曲線として記述することができる。
【0050】
誤差値3は、ここでは、モデルパラメータについての一例を表している。この誤差値3は、将来のGNSS測定値を修正するために用いることができる。したがって、
図3は、場合によっては、モデルが補正モデルの形態でどのように提供できるかについての一例も表している。
【0051】
補正データを生成するアプローチのみを追求すべき場合には、GNSS測定データセットから直接補正データを生成することもできる。そのため、GNSS信号特性(測定された疑似距離、信号電力、ドップラー、搬送波位相)のためのプロファイルが最初に生成されるのではなく、むしろその代わりに補正値がプロファイル(もしくは誤差プロファイル)として直接生成される。これは、換言すれば、特にこの場合、少なくとも1つのモデルパラメータが、(実際値プロファイルと目標値プロファイルとを介することなく)GNSS測定データセットから直接求められることを意味する。
【0052】
そのように求められた補正データは、GNSS信号と周囲の物体との相互作用(例えば建物の反射など)による誤差の影響を補正することができ、したがって、有利には新種の補正データを表す。これらの補正データの車両への提供は、以下の例示的なやり方で行うことができる。すなわち、
・新種の補正データは、既存の補正データサービス(例えば、OSR、SSRなど)に統合される。すなわち、車両は、補正データサービスプロバイダ(KDP)に自車の位置を通知し、KDPは、現下の補正を例えば毎秒車両に伝送する。
・車両は、KDPに自車の予想軌道を通知し、KDPは、前方区間のための誤差プロファイルの形態(場合によってはパラメータ化された形態)で補正データを供給する。
・車両は、その内容がKDPによって提供され、広大な領域(例えば1つ以上のタイル)に対して車両内にプリロードされ、任意選択的に維持することができる、補正データを含んだマップ層を有する。このマップ層は、例えば、特定の間隔で(例えば毎週)、あるいはKDPにおいて新規データが入手可能な場合に更新することができる。
【0053】
車両内のGNSS測定データの補正は、現下の実際値を関連する補正値で精算することによって行うことができ、例えば、現下の車両内で求められたGNSS測定値(例えば、特定のSVの現在測定されたPR)と、関連する(すなわち、現下の車両位置およびSVにとって有効な)補正値(ここではPR誤差)とからの合計を形成することによって行うことができる。
【0054】
代替的または付加的に、モデルは、パターン認識ベースの測位に使用できるように提供することができる。
【0055】
これに関連して、好適には、GNSSプロファイルを記述するモデルを使用するためのアプローチは、モデルもしくはその少なくとも一部を、パターン認識ベースの測位のための参照として使用することにある。衛星コンステレーションと、特定の環境によるGNSS信号の障害とに応じて、GNSS信号特性の特定の障害が、ここでは特定のGNSSプロファイルの形態で生じる。GNSSプロファイルは、GNSS信号特性(疑似距離、ドップラー、信号電力など)の値を、関連する衛星の位置および方位に依存して表すため、現在の衛星位置の知識とともに、現下の車両内で測定されたGNSS測定値(疑似距離、ドップラー、信号電力など)を、GNSSプロファイルと(ここでは、GNSSプロファイルを記述する(簡素化された)モデルを介して)比較することによって、車両の位置を推論することができる。
【0056】
図2は、この状況を、特定の方位からのGNSS信号が受信される1つのSVのみのGNSSプロファイルの簡素化された使用によって表している。この例では、現下の時点での疑似距離について特定の値6が測定される(「measured PR」)。この測定値6を、疑似距離4のためのGNSSプロファイルからの実際値(「NLOS_PR」)と比較することにより、測定値が期待される位置7(「x’estimated Positionx」)を推論することができる。
【0057】
現下のGNSS測定値(M)と、GNSSプロファイルの値(R(x):位置xでの基準値)との間の類似性を決定するために、様々な基準が可能であり、以下はそれらの例である(例として
図2の例が示される)。
・単純な偏差(abs(M-R(x)));ここでは最小の偏差が探索される。
・二乗偏差((M-R(x))^2);ここでは最小の二乗偏差が探索される。
・値の確率(P(M,x):値Mが位置xで測定される確率);ここでは最大の確率が探索される。
【0058】
この方法の信頼性は、特に、1つのSVのGNSSプロファイルだけでなく、複数のSVの、例えば現下で受信しているすべてのSV(すなわち、現下で受信しているすべての衛星)のGNSSプロファイルを用いることによって大幅に向上させることができる。その上さらに、本方法の信頼性は、1つのGNSS信号特性(例えば疑似距離)のGNSSプロファイルだけでなく、付加的にさらなるGNSS信号特性(例えば信号電力)のGNSSプロファイルを使用した場合にさらに向上させることができる。
【0059】
例として単純な偏差を比較基準として用いるならば、受信機の推定位置x’は、用いられたすべてのGNSSプロファイルにわたって、現下で測定されたGNSS値と、様々な位置xを考慮した位置xに関連付けられたGNSSプロファイルの値との間の偏差の合計がx’で最小値に達することから生じる。すなわち、
【数1】
【0060】
この例では、WSV,GNSS-Signaleigenschaftは、衛星SVに関連付けられたGNSS信号特性の測定値であり、RSV,GNSS-Signaleigenschaft(x)は、位置xを想定した衛星SVの対応するGNSS信号特性に関連付けられたGNSSプロファイルの基準値である。位置xは、一般性の制約なしで、多次元空間(例えば2Dや3D)に拡張可能である。
【0061】
ここに示すGNSSフィンガープリント法に使用すべき、GNSSプロファイルを記述するモデルは、車両内で、道路地図(例えばNDS)の付加的データ層として利用することができる。好適な変形形態では、対応するデータ層は、例えば、モバイル無線および/またはWLANを介したIP通信を用いて、サービスプロバイダから提供される。伝送戦略として、車両からは、例えば、
・MPPに従って、前方区間のためのGNSSプロファイルや対応するモデルパラメータを要求することができる。
・より広い領域、例えば、1つ以上のタイルに対するGNSSプロファイルもしくは対応するモデルパラメータがプリロードされる。GNSSプロファイルを記述するモデルは、サービスプロバイダ側で更新されたGNSSプロファイルまたは更新されたモデルが存在するまで、車両内に維持することができる。
【0062】
これ(パターン認識ベースの測位)に関連した、GNSSプロファイルを記述するモデルを使用するためのさらなる好適なアプローチは、上記2つのアプローチの組み合わせ(補正データ+パターン認識ベースの測位)からなる。
【0063】
そのため、一変形形態では、最初に疑似距離の補正を行うことができ、それによって、GNSS受信機は、それに基づきより正確な開始位置を計算することができる。さらなるステップでは、GNSSフィンガープリント法を用いて補償を実施することができる。それにより、GNSSフィンガープリント法のためにより好適な開始位置が生じ、そのため、生じ得る多義性により良好に対処することが可能になる。