(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-25
(45)【発行日】2023-09-04
(54)【発明の名称】コイル装置
(51)【国際特許分類】
H01F 17/00 20060101AFI20230828BHJP
H01F 27/28 20060101ALI20230828BHJP
H01F 27/29 20060101ALI20230828BHJP
H01F 5/00 20060101ALI20230828BHJP
H05K 1/16 20060101ALI20230828BHJP
【FI】
H01F17/00 B
H01F27/28 K
H01F27/29 123
H01F5/00 M
H05K1/16 B
(21)【出願番号】P 2022506433
(86)(22)【出願日】2020-08-19
(86)【国際出願番号】 KR2020011001
(87)【国際公開番号】W WO2021034088
(87)【国際公開日】2021-02-25
【審査請求日】2022-01-31
(31)【優先権主張番号】10-2019-0101718
(32)【優先日】2019-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0103807
(32)【優先日】2020-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】517210783
【氏名又は名称】ステムコ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】キム,カン トン
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-307367(JP,A)
【文献】特開2014-222707(JP,A)
【文献】特開2019-091879(JP,A)
【文献】特開2019-003993(JP,A)
【文献】特開2017-092444(JP,A)
【文献】特開2018-166160(JP,A)
【文献】特表2007-503715(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00
H01F 27/28
H01F 27/29
H01F 5/00
H05K 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、
前記基材層上にパターン部とビアパッド部または外部電極部を含むコイルパターンを形成し、
前記コイルパターンが複数で形成される場合、多重螺旋形構造で巻線されるコイル基板を含
み、
前記基材層上に第1コイルパターンおよび第2コイルパターンが形成される場合、前記第2コイルパターンのパターン部は前記第1コイルパターンのパターン部の内側に平行に離隔して並んで巻線される二重螺旋形構造であり、
前記基材層の裏面にパターン部とビアパッド部または外部電極部を含む第3コイルパターンがさらに形成され、前記第3コイルパターンの一端部と他端部は基材層表面の相異なるコイルパターンとビアを介してそれぞれ電気的に接続される、コイル装置。
【請求項2】
前記複数のコイルパターンの巻線数はすべて同一であるかまたは少なくとも一つ以上相異なる巻線数で巻線される、請求項1に記載のコイル装置。
【請求項3】
前記複数のコイルパターンはすべて同じ方向に電流が流れたり、または一つ以上のコイルパターンが相異なる方向に電流が流れる、請求項1に記載のコイル装置。
【請求項4】
前記ビアは第1ビアまたは第2ビアを含み、前記第1ビアは第1コイルパターンと第3コイルパターンを電気的に接続し、第2ビアは第2コイルパターンと第3コイルパターンを電気的に接続する、請求項
1に記載のコイル装置。
【請求項5】
基材層と、
前記基材層上にパターン部とビアパッド部または外部電極部を含むコイルパターンを形成し、
前記コイルパターンが複数で形成される場合、多重螺旋形構造で巻線されるコイル基板を含み、
前記コイル基板は複数で備えられ、各コイル基板の間に形成された層間絶縁層または保護層によって積層され、前記層間絶縁層または保護層に形成された複数のビアによって電気的に接続され、
前記コイル基板が第1コイル基板と第2コイル基板として備えられる場合、前記第2コイル基板上に第4コイルパターンが形成され、前記複数のビアは第3ビアまたは第4ビアを含み、第3ビアは第4コイルパターンと第1コイル基板の第2コイルパターンを接続し、第4ビアは第4コイルパターンと第1コイル基板の外部接続部と接続する
、コイル装置。
【請求項6】
前記第3ビアまたは前記第4ビアは二つ以上の層間絶縁層、保護層または基材層を貫いて形成される、請求項
5に記載のコイル装置。
【請求項7】
前記外部電極部は複数で形成され、複数の外部電極部が同じ層に形成される、請求項1に記載のコイル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコイル装置に関する。より詳細には、薄膜型コイル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォン、デジタルカメラなど小型電子製品の登場により小型電子製品に内蔵される各種電子部品も小型化されつつある。コイル部品の場合、最近、銅線を適用した巻線型から銅を電解メッキしてパターン化した薄膜型コイル部品が脚光を浴びている。
【0003】
薄膜型コイル部品は各種電子機器でノイズ除去、焦点補正などのために使われる電子部品として、十分な電磁気力を確保するためにコイルパターンの厚さを拡張させたり、コイルパターンを多層で形成するなどの方式を採択することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、コイルパターンを多層で形成する場合、コイル部品には次のような問題が発生し得る。
【0005】
第一に、コイルパターンを3層以上の多層で形成する場合、層間絶縁層の形成、ビアホールの形成、蒸着膜の形成など多数の工程がさらに求められるので、コイル部品の生産性が低下し得る。
【0006】
第二に、コイルパターンを多層で形成する場合、上層のコイルパターンが外側から内側に巻線されると、下層のコイルパターンはこれに反対になる方向に巻線される。一例としてコイル部品100がL1階層110、L2階層120、L3階層130など3個の階層で構成される場合、L1階層110の第1コイルパターン111、L2階層120の第2コイルパターン121、L3階層130の第3コイルパターン131などは
図1に示すように巻線されてビアホールを介して電気的に接続される。
【0007】
しかし、多層のコイルパターンが前記のような方式で巻線されて電気的に接続される場合、陽極端子140と陰極端子150のいずれか一つがコイルの巻芯側(内側)に位置するので、コイル部品と外部電源の間の連結が難しくなる。
【0008】
第三に、コイルパターンを多層で形成する場合、各層のコイルパターンを区分する層間絶縁層が電流を完全に遮断できず漏洩電流が発生し得、そのためコイル部品の磁気的特性が低下し得る。
【0009】
したがって、本発明で解決しようとする課題は、複数のコイルパターンが一面に形成されたコイル装置を提供することにある。
【0010】
本発明の課題は、以上で言及した課題に制限されず、言及されていないまた他の課題は以下の記載から当業者に明確に理解されることができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を達成するための本発明のコイル装置の一面(aspect)は、基材層と、前記基材層上にパターン部とビアパッド部または外部電極部を含むコイルパターンを形成し、前記コイルパターンが複数で形成される場合、多重螺旋形構造で巻線されるコイル基板を含む。
【0012】
前記でコイル基板は前記コイルパターンが複数で形成される場合、複数のコイルパターンは重ならないように各コイルパターンのパターン部が互いに平行に離隔して多重螺旋形構造で巻線され得る。
【0013】
前記基材層上に第1コイルパターンおよび第2コイルパターンが形成される場合、前記第2コイルパターンのパターン部は前記第1コイルパターンのパターン部の内側に平行に離隔して並んで巻線される二重螺旋形構造で形成され得る。
【0014】
前記複数のコイルパターンの巻線数はすべて同一であるかまたは少なくとも一つ以上相異なる巻線数で巻線され得る。
【0015】
前記複数のコイルパターンはすべて同じ方向に電流が流れたりまたは一つ以上のコイルパターンが相異なる方向に電流が流れ得る。
【0016】
前記基材層の裏面にパターン部とビアパッド部または外部電極部を含む第3コイルパターンがさらに形成され、前記第3コイルパターンの一端部と他端部は基材層表面の相異なるコイルパターンとビアを介してそれぞれ電気的に接続され得る。
【0017】
前記ビアは第1ビアまたは第2ビアを含み、前記第1ビアは第1コイルパターンと第3コイルパターンを電気的に接続し、第2ビアは第2コイルパターンと第3コイルパターンを電気的に接続し得る。
【0018】
前記コイル基板は複数で備えられ、各コイル基板の間に形成された層間絶縁層または保護層によって積層され、前記層間絶縁層または保護層に形成された複数のビアによって電気的に接続され得る。
【0019】
前記コイル基板が第1コイル基板と第2コイル基板として備えられる場合、前記第2コイル基板上に第4コイルパターンが形成され、前記複数のビアは第3ビアまたは第4ビアを含み、第3ビアは第4コイルパターンと第1コイル基板の第2コイルパターンを接続し、第4ビアは第4コイルパターンと第1コイル基板の外部接続部と接続し得る。
【0020】
前記第3ビアまたは前記第4ビアは二つ以上の層間絶縁層、保護層または基材層を貫いて形成され得る。
【0021】
前記外部電極部は複数で形成され、複数の外部電極部が同じ層に形成され得る。
その他実施形態の具体的な内容は詳細な説明および図面に含まれている。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、コイルパターンの積層数を減少させ、かつ高い電磁気力を確保でき、回路自由度が高い薄膜型コイル装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図2】本発明の一実施形態によるコイル装置の断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態によるコイル基板を構成するコイルパターンを説明するための分解斜視図である。
【
図4】本発明の一実施形態によるコイル基板を構成するコイルパターンを説明するための各階層の平面図である。
【
図5】本発明の一実施形態によるコイル基板を構成するコイルパターンを説明するための各階層の平面図である。
【
図6】本発明の一実施形態によるコイル基板を構成するコイルパターンを説明するための各階層の平面図である。
【
図7】本発明の他の実施形態によるコイル基板を構成するコイルパターンを説明するための分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付する図面を参照して本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。本発明の利点および特徴、並びにこれらを達成する方法は添付する図面と共に詳細に後述されている実施形態を参照すると明確になる。しかし、本発明は以下に開示する実施形態に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で実現することができ、本実施形態は、単に本発明の開示を完全にし、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供するものであり、本発明は請求項の範疇によってのみ定義される。明細書全体にわたって同一参照符号は同一構成要素を指すものとする。
【0025】
素子(elements)または層が他の素子または層の「上(on)」または「の上(on)」と称される場合は他の素子または層の真上だけでなく中間に他の層または他の素子が介在する場合をすべて含む。反面、素子が「直接上(directly on)」または「真上」と称される場合は中間に他の素子または層を介在しない場合を示す。
【0026】
空間的に相対的な用語である「下(below)」、「下(beneath)」、「下部(lower)」、「上(above)」、上部(upper)」などは図面に示されているように一つの素子または構成要素と他の素子または構成要素との相関関係を容易に記述するために使われる。空間的に相対的な用語は図面に示されている方向に加えて使用時または動作時素子の互いに異なる方向を含む用語として理解されなければならない。例えば、図面に示されている素子をひっくり返す場合、他の素子の「下(below)」または「下(beneath)」と記述された素子は他の素子の「上(above)」に置かれ得る。したがって、例示的な用語の「下」は下と上の方向をすべて含み得る。素子は他の方向に配向されてもよく、そのため空間的に相対的な用語は配向によって解釈されることができる。
【0027】
第1、第2などが多様な素子、構成要素および/またはセクションを叙述するために使われるが、これらの素子、構成要素および/またはセクションはこれらの用語によって制限されないのはもちろんである。これらの用語は単に一つの素子、構成要素またはセクションを他の素子、構成要素またはセクションと区別するために使用する。したがって、以下で言及される第1素子、第1構成要素または第1セクションは本発明の技術的思想内で第2素子、第2構成要素または第2セクションであり得るのはもちろんである。
【0028】
本明細書で使われた用語は実施形態を説明するためのものであり、本発明を制限しようとするものではない。本明細書で、単数形は文面で特記しない限り、複数形も含む。明細書で使われる「含む(comprises)」および/または「含む(comprising)」は言及された構成要素、段階、動作および/または素子は一つ以上の他の構成要素、段階、動作および/または素子の存在または追加を排除しない。
【0029】
他に定義のない限り、本明細書で使われるすべての用語(技術的および科学的用語を含む)は本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者に共通して理解される意味で使われる。また、一般的に使われる辞典に定義されている用語は明白に特に定義されていない限り、理想的にまたは過度に解釈されない。
【0030】
以下、添付する図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明し、添付図面を参照して説明するにあたり図面符号に関係なく同一であるかまたは対応する構成要素は同じ参照番号を付与し、これに係る重複する説明は省略する。
【0031】
本発明ではコイルパターンの積層数を減少させ、かつ高(high)電磁気力を確保することができ、回路自由度が高い薄膜型コイル装置を提供することを目的とする。以下では図面を参照して本発明を詳しく説明する。
【0032】
図2は本発明の一実施形態によるコイル基板の断面図である。
【0033】
本実施形態で基材層、コイルパターンおよび保護層を含み得、薄膜型コイル装置、インダクタ、キャパシタ、アクチュエータなどの電子部品に適用できるだけでなく、スマートフォン、デジタルカメラなどの小型電子製品や、振動モータ、スピーカー、アンテナなど各種電子機器に適用することもできる。
【0034】
図2によるコイル基板200は、例えば、第1基材層210、第1および第2コイルパターン220,230および保護層250を含んで構成されることができる。
【0035】
第1基材層210は、ベース基材(base film)として、所定の厚さ(例えば、5μm~100μm)を有する平板形態のフィルムで形成される。このような第1基材層210はフレキシブルフィルム(flexible film)、リジットフィルム(rigid film)およびリジットフレキシブルフィルム(rigid flexible film)のいずれか一つの形態で形成されることができる。
【0036】
第1基材層210は、多様な高分子物質から選択される少なくとも一つの物質を素材にして製造されることができる。一例として、第1基材層210は、ポリイミド(polyimide)、ポリエチレンテレフタレート(PET;Poly-Ethylene Terephthalate)、ポリエチレンナフタレート(PEN;Poly-Ethylene Naphthalate)、ポリカーボネート(poly-carbonate)、エポキシ(epoxy)、ガラス繊維(glass fiber)などの高分子物質から選択される少なくとも一つの物質を素材にして製造されることができる。
【0037】
第1基材層210の一面上または両面上には、伝導性物質で構成されるシード層(seed layer;図示せず)または下地層(under layer;図示せず)が形成される。
【0038】
シード層または下地層はニッケル(Ni)、クロム(Cr)、銅(Cu)、金(Au)などから選択される少なくとも一つの金属を伝導性物質として用いて第1基材層210上に形成される。このようなシード層または下地層は蒸着、接着、メッキなどの物理的方式または化学的方式で第1基材層210上に形成されることができる。しかし、本実施形態はこれに限定されるものではない。第1基材層210は一面上または両面上にシード層または下地層を含まない形態で形成されることも可能である。
【0039】
第1コイルパターン220は、電磁気力を誘導するためのものとして、第1基材層210の一面上に形成される。このような第1コイルパターン220は、伝導性物質を素材にして第1基材層210の一面上に形成される。一例として、第1コイルパターン220は銀(Ag)、パラジウム(Pd)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、金(Au)、白金(Pt)、銅(Cu)などから選択される少なくとも一つの金属を素材にして第1基材層210の一面上に形成されることができる。
【0040】
第1コイルパターン220は、メッキ、印刷、コーティングなど多様な技法を用いて第1基材層210上に形成される。一例としてメッキ技法を用いる場合、第1コイルパターン220は電解メッキと無電解メッキのいずれか一つの技法を用いて第1基材層210上に形成されることができる。また、メッキは1回以上実施され得、この時、メッキ進行回数またはメッキ条件の変更などによって第1コイルパターン220は断面に複数の境界線が形成され得る。
【0041】
電解メッキ方式の一例として、第1コイルパターン220は、第1基材層210上でレジストパターン層(図示せず)が形成されていない部分に形成されることができる。ここで、レジストパターン層は、絶縁性物質で構成される樹脂層として、第1コイルパターン220より先に第1基材層210上に形成される。第1コイルパターン220は、レジストパターン層と同じ厚さで第1基材層210上に形成されるか、レジストパターン層よりさらに薄い厚さで第1基材層210上に形成されることができる。第1コイルパターン220がこのように第1基材層210上に形成されると、上部にメッキが偏重されることを防止することができ、上部の幅と下部の幅を均一に形成することができる。
【0042】
一方、レジストパターン層は、第1コイルパターン220を第1基材層210上に形成した後、第1基材層210から除去することができる。一例として、レジストパターン層は、第1コイルパターン220を第1基材層210上に形成した後、第1コイルパターン220上に保護層250を形成する前に第1基材層210から除去することができる。
【0043】
一方、第1コイルパターン220は、
図3に示すように第1パターン部221、第1ビアパッド部222または第1外部電極部223を含んで形成されることができる。
【0044】
図3は本発明の一実施形態によるコイル基板を構成するコイルパターンを説明するための分解斜視図であり、
図4ないし
図6は本発明の一実施形態によるコイル基板を構成するコイルパターンを説明するための各階層の平面図である。以下の説明は
図3~
図6を参照する。
【0045】
第1コイルパターン220の第1パターン部221は、ライン形状で形成されたパターンを意味し、連続する単一ラインとして同じ幅で第1基材層210上に形成される。しかし、本実施形態はこれに限定されず、連続するラインの一部が相異なる幅で第1基材層210上に形成されることも可能である。
【0046】
第1ビアパッド部222または第1外部電極部223は、第1コイルパターン220の一端部または他端部に位置し得、第1パターン部221に対して広い幅で第1基材層210上に形成され得る。
【0047】
一方、第1基材層210上には、第1および第2コイルパターン220,230が複数で形成され得、複数のコイルパターンが多重螺旋形構造で巻線され得る。本発明で多重螺旋形構造で巻線されることの意味は、複数のコイルパターンが互いに重ならないように各コイルパターンのパターン部ラインが互いに平行に離隔して形成されることと定義する。
図4を参照して第1基材層210上に形成された2個のコイルパターン220,230すなわち、第1コイルパターン220および第2コイルパターン230を例に挙げると、第1コイルパターン220の第1パターン部221は、第2コイルパターン230の第2パターン部231と同じ間隔で平行に離隔し、第2パターン部231は第1パターン部221の内側に並んで巻線されるように第1基材層210上に形成される。すなわち、コイル基板200の第1基材層210に垂直である一端面は、中心方向に第1パターン部221と第2パターン部231が交互に形成されることができる。この際、第1および第2コイルパターン220,230に対して電流が印加される場合、第1コイルパターン220のみ形成された場合に比べて約1.1~2.5倍の電磁気力を確保することができる。しかし、本実施形態はこれに限定されず互いに異なる間隔で離隔するように第1基材層210上に形成されることも可能である。
【0048】
また、前記複数のコイルパターンは、各コイルパターンの巻線数がすべて同一であるかまたは少なくとも一つ以上が相異なる巻線数で巻線され得る。これは第1コイル基板200に誘導される電磁気力の強度に影響を及ぼし得、特に各コイルパターンの巻線数が全て同一でかつ同じ方向に電流が流れる場合は電磁気力の強度が強い。これに対し、複数のコイルパターンのうちある一つ以上のコイルパターンに対して相異なる方向の電流が流れる場合は電磁気力が相殺されて強度が弱くなる。この時相異なる方向に電流が流れるコイルパターンの巻線数を少なくする場合、相殺される電磁気力の大きさを減少させることができる。すなわち、コイルパターンの設計によって各コイルパターンの巻線数を変更して要求する電磁気力の強度を取得することができる。
【0049】
前記では第1基材層210上にコイルパターン、ビアパッド部または外部電極部が形成される構造について説明したが、その他にもメッキバランスまたは層間均衡維持などのためのダミーパターン、放熱パターン、電磁気遮蔽パターンなどが含まれたり、フィルタ、センサなどの外部素子などがさらに含まれる構造で形成されることもできる。
【0050】
一方、
図5に示すように第1基材層210の裏面にも第3パターン部241、第3および第4ビアパッド部242,243または外部電極部を含む第3コイルパターン240がさらに形成されることができる。
【0051】
図5で第1基材層210の表面/裏面に形成されたコイルパターン220,230,240はビアによって電気的に接続される。例えば、第1コイルパターン220および第2コイルパターン230の一端部に形成された第1ビアパッド部222と第3コイルパターン240の一端部に形成された第3ビアパッド部242が第1ビア225により接続され、第3コイルパターン240の他端部に形成された第4ビアパッド部243が第2ビア245により第1基材層210の表面第2外部電極部(または第2ビアパッド部)と電気的に接続され得る。本発明では一つのコイル基板200に3個のコイルパターンが表面/裏面にそれぞれ形成された例を説明したが、これに限定されず複数のコイルパターンがさらに形成されることができる。
【0052】
すなわち、第1コイルパターン220および第2コイルパターン230の他端部に形成された第1外部電極部223と第3コイルパターン240と接続される第2外部電極部232が同一面に形成されるので、回路自由度を向上させて電磁気力を強化することができる。さらに、従来には基材層の一面とコイルパターンが一対一に対応して形成されるため、3個のコイルパターンを形成するために基材層の3面が求められ、結果的に2個以上の基材層が積層されなければならなかった。しかし、本発明では基材層一面に対してコイルパターンが一対多の対応で形成できるため、別途の積層工程が追加されず、かつ1個の基材層で従来の電磁気力を満たすコイル基板を提供することができる。
【0053】
一方、本発明ではコイル基板200が複数で備えられ、各コイル基板の間に形成された層間絶縁層によって積層され、前記層間絶縁層に形成されたビアによって電気的に接続され得る。層間絶縁層は絶縁性物質で構成される樹脂層である。このような層間絶縁層は、第1基材層210と同じ高分子物質を素材にして形成される。または別途の基材層上にコイルパターンが形成されたコイル基板と積層されて形成されることもできる。
【0054】
一例として、第1コイル基板の裏面の下に第1層間絶縁層(図示せず)が形成され、前記第1層間絶縁層の下に第4コイルパターン420を形成することができる。後述するが、前記第4コイルパターン420は、第1および第2コイルパターン220,230と同時に形成されることもできる。または第4コイルパターン420を含む第2コイル基板がさらに形成されることができる。すなわち、第4コイルパターン420は、前記第1層間絶縁層にも形成されるが、第2コイル基板の第2基材層410上にも形成できるものである。さらに、第2コイル基板がさらに形成される場合、第2基材層410上には第4コイルパターン420の他に単数または複数のコイルパターンがさらに形成され得るが、本発明では第2基材層410の一面に一つのコイルパターン、すなわち、第4コイルパターン420が形成された例を挙げて説明する。
【0055】
【0056】
他端に第1外部電極部223が形成された第1コイルパターン220は第1ビア225を介して第3コイルパターン240に電気的に接続され、第3コイルパターン240の他端と接続される第2ビア245を介して第2コイルパターン230と電気的に接続され得る。前記第2コイルパターン230は、第1コイルパターン220の第1ビアパッド部222と一端が接続されて第1コイル基板200の第1基材層210と第2基材層410を貫く第3ビア425を介して第4コイルパターン420の第5ビアパッド部422と電気的に接続され得る。また、第4コイルパターン420の他端部に形成された第6ビアパッド部423は、第2コイル基板400の第2基材層410または第2基材層410と第1コイル基板200の第1基材層210を通過する第4ビア426を介して第1コイル基板200の第1基材層210表面に形成された第2外部電極部232と電気的に接続され得る。すなわち、本実施形態でも、各コイルパターンが相互電気的に接続され、同じ一面上に第1外部電極部および第2外部電極部が形成されるので、回路自由度を向上させることができる。
【0057】
また、前記では第1コイル基板200と第2コイル基板にそれぞれ形成されたコイルパターンには、同じ方向の電流が印加されて強い電磁気力を提供することができる。またはこれに限定されず、各コイル基板または一部コイルパターンの電流方向を異にして印加されることもできる。
【0058】
一方、第1コイル基板200に形成されたコイルパターンと第2コイル基板に形成されたコイルパターンの巻線数はすべて同一であってもよく、異なってもよい。例えば、第1コイル基板200の表面に形成された第1コイルパターン210と第2コイルパターン230の巻線数はそれぞれ8回であり、裏面に形成された第3コイルパターン240と第2コイル基板に形成された第4コイルパターン420の巻線数は各10回で形成される。この場合、4個のコイルパターンによって合計36回の巻線数を提供するが、実際のコイルパターンは3個の層に形成されることができる。すなわち、コイル基板の電磁気力、抵抗特性、インダクタンスなどを考慮して全体コイルパターンの巻線数は維持し、層数を減少させ得るため生産効率もまた、向上させることができる。
【0059】
したがって、本発明によるコイル装置は、このような第1コイル基板200、第2コイル基板の電気的接続関係により電磁気力を誘導する電流の流れを効果的に発生させることができる。また、コイル装置200は、第1外部電極223と第2外部電極232をすべて第1コイル基板200の第1基材層210の表面に位置させて外部電源との連結を容易に実現することができ、そのため回路自由度が向上する効果を得ることができる。さらに層数は減らし、かつ電磁気力の強度を強化できるため生産効率も向上させることができる。
【0060】
ただし、本発明の実施形態は、
図3~6に示された構造に限定されない。
図3では、第1コイル基板200が最上層に形成された構造の例を示すが、第1コイル基板200が中間層または最下層に形成されてもよい。例えば、第1コイル基板200が中間層に位置する場合、すなわち第1,2コイルパターンが形成された第1基材層の上/下側に第3,4コイルパターンがそれぞれ形成されることができる。この時、第1外部電極部223は外部電極(図示せず)と直接的に接続されたり、または第3,4コイルパターンと同一面に形成された第n外部電極部(nは3以上自然数)または第mビア(mは4以上自然数)により外部電極と間接的に接続される。さらに、外部電極は、最上層または最下層に位置してコイルパターンを含む基材層の一面に形成されたり、またはコイルパターンが含まれない基材層の一面に形成されることができる。したがって、本発明は、コイル基板が含まれる電子デバイスの内部構造によってコイルパターンが多重巻線された基材層の位置変形が容易であり、かつ上述した効果をすべて含み得る。
【0061】
図7は本発明の他の実施形態によるコイル基板を構成するコイルパターンを説明するための分解斜視図である。前記コイル基板500は、基材層510の表面/裏面上にそれぞれ2個のコイルパターンを含むように構成でき、表面上のコイルパターンをそれぞれ第5コイルパターン520および第6コイルパターン530とし、裏面上のコイルパターンをそれぞれ第7コイルパターン620および第8コイルパターン630と名付けて説明する。
【0062】
第5コイルパターン520の一端部に形成された第3外部電極部523から電流が印加されると他端部に形成された第7ビアパッド部の第5ビア522を介して第7コイルパターン620一端部の第8ビアパッド部522と接続され、他端部の第9ビアパッド部の第6ビア623を介して第6コイルパターン530の一端部と接続され得る。また、第6コイルパターン530の他端部と接続される第7ビアパッド部の第7ビア533を介して第8コイルパターン630一端部の第8ビアパッド部と接続され得、他端部の第9ビアパッド部の第10ビア633を介して第4外部電極部540と接続される。すなわち、一つの基材層に4個のコイルを形成することにより高電磁気力を確保できるだけでなく、同一層の基材層の一面に外部電極が位置することができる。
【0063】
一方、図面に示していないが、コイル基板500を含む電子デバイスの内部構造によって層間絶縁層または別途基材層に形成された外部電極と直接または間接的に接続されることもできる。
【0064】
本発明はこれに限定されず、4個のコイルが形成されたコイル基板500の上部または下部に別途コイル基板をさらに形成することができ、別途のコイル基板は単一巻線または多重巻線タイプでコイルパターンが形成された構造であり得る。
【0065】
一方、図面に示していないが、本発明によるコイル基板はコイルパターンを保護するために形成された保護層をさらに含み得る。前記保護層はコイルパターンの上部を覆うように形成され、基材層上でレジストパターン層が除去された後コイルパターン上に形成されることができる。
【0066】
保護層は絶縁性を有する物質を素材にし、一例として、保護層はソルダレジスト(solder resist)を素材にしてコイルパターン上に形成されることができる。保護層は印刷、コーティング、フォトリソグラフィーなどの工法を用いて形成されることができる。
【0067】
次に本発明の一実施形態によるコイル装置200の製造方法について説明する。
先に、第1基材層210を準備する。
【0068】
その後、第1基材層210上にコイルパターンを形成する。本段階では第1基材層210の一面にのみコイルパターンを形成したり、または両面にコイルパターンを同時に形成することも可能である。一例として、基材層の一面に第1コイルパターン220と第2コイルパターン230を螺旋形構造で巻線して形成する。第1基材層210上に第1,2コイルパターン220,230を形成するときには、第1基材層210上にレジストパターン層を形成した後、レジストパターン層が形成されていない開口に第1,2コイルパターン220,230を形成する。この時、レジストパターン層は印刷、ラミネート、フォトリソグラフィーなどの工法を用いて第1基材層210上に形成され得、第1コイルパターン220は電解メッキ技法を用いて第1基材層210上に形成されることができる。また、第1,2コイルパターン220,230は、各コイルパターンに含まれるパターン部とビアパッド部または外部電極部が互いに重ならないように形成され、特に連続するライン形態のパターン部は互いに平行に離隔して巻線される二重巻線構造で形成されることができる。
【0069】
また、第1基材層210の裏面上に第3コイルパターン240を形成するときには第1,2コイルパターン220,230と同じ技法を用いることができる。しかし、これに限定されず、表面のコイルパターンと相異なる方式で形成されることもでき、第1,2コイルパターン220,230と同時にまたは順次形成されることもできる。
【0070】
また、前記第1,2コイルパターン220,230と第3コイルパターン240が電気的に接続されるように第1基材層210には単数または複数のビアがさらに形成され得、導電性物質がペースト形態で充填されたり、または無電解、電解メッキ技法を用いて形成されることができる。
【0071】
その後、各コイルパターン上に保護層を形成する。保護層250を形成するときにはレジストパターン層を除去した後、コイルパターンを覆うように印刷、ラミネート、フォトリソグラフィーなどの工法を用いて形成されることができる。
【0072】
次に、本発明の他の実施形態によるコイル装置の製造方法について説明する。
【0073】
準備された第1コイル基板200の第1基材層210の一面に第1および第2コイルパターン220,230を、裏面に第3コイルパターン240を形成する。
【0074】
前記第3コイルパターン240を覆うように保護層250を形成する。前記保護層250に後述する第2コイル基板400と接続されるようにビアを形成する。
【0075】
第2コイル基板400の第2基材層410を準備し、第1コイル基板200と接続するビアが形成される穴を備える。
【0076】
前記第2コイル基板400の第2基材層410の一面に第4コイルパターン420を形成し、同時に第2基材層410に形成された穴に導電性物質を充填してビアを形成する。
【0077】
その後、第4コイルパターン420を覆うように保護層を形成する。
【0078】
前記第2コイル基板400の第2基材層410の裏面と前記第1コイル基板200の第3コイルパターン240を覆った保護層250を互いに接合する。この時、接合方式はホットプレス(hot press)方式、圧延方式などを用いることができる。
【0079】
本発明によるまた他の実施形態として、基材層の一面にのみコイルパターンが形成された複数のコイル基板を積層してコイル装置を構成することができる。
【0080】
また他の方法として、基材層の一面に二つのコイルパターンを二重巻線構造で形成したコイル基板を準備する。前記コイルパターンを覆うように保護層または層間絶縁層を形成する。前記保護層または層間絶縁層に穴を形成する。その後、保護層または層間絶縁層の上面および基材層の裏面にコイルパターンを形成し、同時に穴を充填してビアを形成することができる。
【0081】
以上、添付する図面を参照して本発明の実施形態について説明したが、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更せず他の具体的な形態で実施できることを理解することができる。したがって、上記一実施形態はすべての面で例示的なものであり、限定的なものではないと理解しなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は薄膜型コイル装置に適用することができる。また、本発明はインダクタ、キャパシタ、アクチュエータなどの電子部品に適用できるだけでなく、スマートフォン、デジタルカメラなどの小型電子製品や振動モータ、スピーカー、アンテナなど各種電子機器に適用することもできる。