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特許7338058フェルール、光コネクタ、光通信素子、通信装置、及び準備方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-25
(45)【発行日】2023-09-04
(54)【発明の名称】フェルール、光コネクタ、光通信素子、通信装置、及び準備方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/36 20060101AFI20230828BHJP
   G02B 6/26 20060101ALI20230828BHJP
【FI】
G02B6/36
G02B6/26
【請求項の数】 29
(21)【出願番号】P 2022526168
(86)(22)【出願日】2020-06-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-04
(86)【国際出願番号】 CN2020099462
(87)【国際公開番号】W WO2021088387
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2022-06-03
(31)【優先権主張番号】201911086437.0
(32)【優先日】2019-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】503433420
【氏名又は名称】華為技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】HUAWEI TECHNOLOGIES CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Huawei Administration Building, Bantian, Longgang District, Shenzhen, Guangdong 518129, P.R. China
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】グオ,ダン
(72)【発明者】
【氏名】ワーン,バオチイ
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ,ジュインイーン
【審査官】林 祥恵
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0039023(US,A1)
【文献】特開2006-293234(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0163930(US,A1)
【文献】特開2010-164708(JP,A)
【文献】国際公開第2014/192944(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第108490550(CN,A)
【文献】米国特許第09154230(US,B2)
【文献】米国特許出願公開第2013/0004129(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/24
G02B 6/255
G02B 6/26-6/27
G02B 6/30-6/34
G02B 6/36-6/40
G02B 6/42-6/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェルールであって、
収容スルーホールを有するフェルール基体であり、前記収容スルーホールの一端が当該フェルール基体の第1表面にあり、当該フェルール基体の前記第1表面は、当該フェルールの相手フェルールに面する当該フェルール基体の表面である、フェルール基体と、
第2表面を持つ光伝送媒体であり、当該光伝送媒体の前記第2表面は前記相手フェルールに面し、当該光伝送媒体の前記第2表面は光伝送面であり、当該光伝送媒体は前記収容スルーホール内に配置されている、光伝送媒体と、
前記フェルール基体の前記第1表面を覆う反射膜であり、当該反射膜の反射帯域は前記光伝送媒体の通信帯域の少なくとも一部を含む、反射膜と、
を有し、
前記光伝送媒体の前記第2表面は前記フェルール基体の前記第1表面から突出し、前記反射膜は前記光伝送媒体の外周側面を覆う、
フェルール。
【請求項2】
前記光伝送媒体の前記第2表面は光コア領域を有し、
前記反射膜は、前記光伝送媒体の前記第2表面を覆うとともにスルーホールを有し、前記光伝送媒体の前記第2表面上への前記スルーホールの直交投影が前記光コア領域を覆う、
請求項1に記載のフェルール。
【請求項3】
前記光伝送媒体の前記第2表面は主光路領域を有し、前記光伝送媒体の前記第2表面上への前記反射膜の前記スルーホールの前記直交投影は前記主光路領域を覆う、請求項2に記載のフェルール。
【請求項4】
当該フェルールは更に、
前記相手フェルールに面する前記光伝送媒体の1つの面上に位置する反射防止膜であり、前記光伝送媒体の前記第2表面上への当該反射防止膜の直交投影が、前記光伝送媒体の前記第2表面上への前記反射膜の前記スルーホールの前記直交投影を覆い、当該反射防止膜の反射防止帯域は前記光伝送媒体の通信帯域の少なくとも一部を含む、反射防止膜、
を有する、請求項2又は3に記載のフェルール。
【請求項5】
前記反射防止膜は前記反射膜と前記光伝送媒体との間に位置し、前記反射防止膜は更に、前記フェルール基体の前記第1表面の少なくとも一部を覆う、請求項4に記載のフェルール。
【請求項6】
前記反射防止膜は前記反射膜の前記スルーホール内に位置する、請求項4に記載のフェルール。
【請求項7】
前記相手フェルールに面する前記反射防止膜の表面は、前記相手フェルールに面する前記反射膜の表面からリセス化されている、請求項6に記載のフェルール。
【請求項8】
前記反射防止帯域内の光波に対する前記反射防止膜の反射率は0.25%以下である、請求項4乃至7のいずれか一項に記載のフェルール。
【請求項9】
前記反射帯域内の光波に対する前記反射膜の反射率は80%以上である、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のフェルール。
【請求項10】
前記フェルール基体の前記収容スルーホールの内壁と前記光伝送媒体の外周側面との間のギャップにフィラーが配置され、
前記反射膜は、前記相手フェルールに面する前記フィラーの1つの面上に配置されて、前記フィラーに対向する、
請求項1乃至9のいずれか一項に記載のフェルール。
【請求項11】
基準面上への前記反射膜の直交投影が前記基準面上への前記フィラーの直交投影を覆い、前記基準面は、前記フェルール基体の前記収容スルーホールの軸方向に対して垂直である、請求項10に記載のフェルール。
【請求項12】
フェルールであって、
収容スルーホールを有するフェルール基体であり、前記収容スルーホールの一端が当該フェルール基体の第1表面にあり、当該フェルール基体の前記第1表面は、当該フェルールの相手フェルールに面する当該フェルール基体の表面である、フェルール基体と、
第2表面を持つ光伝送媒体であり、当該光伝送媒体の前記第2表面は前記相手フェルールに面し、当該光伝送媒体の前記第2表面は光伝送面であり、当該光伝送媒体は前記収容スルーホール内に配置されている、光伝送媒体と、
前記フェルール基体の前記第1表面を覆う反射膜であり、当該反射膜の反射帯域は前記光伝送媒体の通信帯域の少なくとも一部を含む、反射膜と、
を有し、
前記反射膜の内面には耐熱膜が配置される、
ェルール。
【請求項13】
前記光伝送媒体の前記第2表面は前記フェルール基体の前記第1表面から突出し、前記反射膜は前記光伝送媒体の外周側面を覆う、請求項12に記載のフェルール。
【請求項14】
前記光伝送媒体の前記第2表面は前記フェルール基体の前記第1表面からリセス化され、前記反射膜は前記フェルール基体の前記収容スルーホールの内壁を覆う、請求項12に記載のフェルール。
【請求項15】
前記光伝送媒体の前記第2表面は前記フェルール基体の前記第1表面と揃えられ、前記反射膜は、前記フェルール基体の前記収容スルーホールの内壁と前記光伝送媒体の外周側面との間のギャップを覆う、請求項12に記載のフェルール。
【請求項16】
ハウジングと、請求項1乃至15のいずれか一項に記載のフェルールと、を有するコネクタであって、前記フェルールが前記ハウジング内に配置される、コネクタ。
【請求項17】
光通信素子ボディと、請求項1乃至15のいずれか一項に記載のフェルールと、を有する光通信素子であって、前記フェルールが前記光通信素子ボディに接続される、光通信素子。
【請求項18】
相手光通信素子と、請求項17に記載の光通信素子とを有する通信装置であって、前記相手光通信素子は相手フェルールを有し、前記光通信素子のフェルールが、前記相手光通信素子の前記相手フェルールに接続される、通信装置。
【請求項19】
フェルールを準備する方法であって、当該フェルールは、収容スルーホールを有するフェルール基体であり、前記収容スルーホールの一端が当該フェルール基体の第1表面にあり、当該フェルール基体の前記第1表面は、当該フェルールの相手フェルールに面する当該フェルール基体の表面である、フェルール基体と、第2表面を持つ光伝送媒体であり、当該光伝送媒体の前記第2表面は前記相手フェルールに面し、当該光伝送媒体の前記第2表面は光伝送面であり、当該光伝送媒体は前記収容スルーホール内に配置されている、光伝送媒体と、を有し、前記収容スルーホールの内壁と前記光伝送媒体の外周側面との間のギャップにフィラーが配置され、当該方法は、
前記相手フェルールに面する前記フェルール基体の1つの面上に反射膜を形成し、当該反射膜は前記フェルール基体の前記第1表面を覆い、当該反射膜の反射帯域は前記光伝送媒体の通信帯域の少なくとも一部を含む、
ことを有
前記光伝送媒体の前記第2表面は前記フェルール基体の前記第1表面から突出し、前記反射膜は前記光伝送媒体の外周側面を覆う、
方法。
【請求項20】
前記光伝送媒体の前記第2表面は光コア領域を有し、
前記反射膜は、前記光伝送媒体の前記第2表面を覆うとともにスルーホールを有し、前記光伝送媒体の前記第2表面上への前記スルーホールの直交投影が前記光コア領域を覆う、
請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記光伝送媒体の前記第2表面は主光路領域を有し、前記光伝送媒体の前記第2表面上への前記反射膜の前記スルーホールの前記直交投影は前記主光路領域を覆う、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記相手フェルールに面する前記フェルール基体の1つの面上に反射膜を前記形成することは、
前記相手フェルールに面する前記光伝送媒体の1つの面上に犠牲層を形成し、
前記相手フェルールに面する前記光伝送媒体の前記面上に前記反射膜を形成し、前記反射膜は、前記犠牲層及び前記光伝送媒体の前記第2表面を覆い、
前記犠牲層と前記犠牲層の表面上の前記反射膜とを除去して、前記反射膜の前記スルーホールを形成する、
ことを有する、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項23】
前記相手フェルールに面する前記フェルール基体の1つの面上に反射膜を前記形成することは、
前記相手フェルールに面する前記光伝送媒体の1つの面上に前記反射膜を形成し、
前記反射膜の前記スルーホールを前記反射膜に形成するように前記反射膜をパターニングする、
ことを有する、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項24】
当該方法は更に、前記相手フェルールに面する前記光伝送媒体の前記面上に反射防止膜を形成することを有し、当該反射防止膜の反射防止帯域は、前記光伝送媒体の前記通信帯域の少なくとも一部を含み、前記光伝送媒体の前記第2表面上への当該反射防止膜の直交投影が、前記光伝送媒体の前記第2表面上への前記反射膜の前記スルーホールの前記直交投影を覆う、請求項20乃至23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記相手フェルールに面する前記光伝送媒体の前記面上に反射防止膜を前記形成することは、
前記相手フェルールに面する前記フェルール基体の1つの面上に反射膜を前記形成することの前に、前記相手フェルールに面する前記光伝送媒体の前記面上に前記反射防止膜を形成する、
ことを有する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記相手フェルールに面する前記光伝送媒体の前記面上に反射防止膜を前記形成することは、
前記相手フェルールに面する前記フェルール基体の1つの面上に反射膜を前記形成することの後に、前記反射膜の前記スルーホール内に前記反射防止膜を形成する、
ことを有する、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記フィラーは、前記フェルール基体の前記収容スルーホールの内壁と前記光伝送媒体の外周側面との間の前記ギャップに配置され、
前記反射膜は、前記相手フェルールに面する前記フィラーの1つの面上に配置されて、前記フィラーに対向する、
請求項19に記載の方法。
【請求項28】
基準面上への前記反射膜の直交投影が、前記基準面上への前記フィラーの直交投影を覆い、前記基準面は、前記フェルール基体の前記収容スルーホールの軸方向に対して垂直である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
フェルールを準備する方法であって、当該フェルールは、収容スルーホールを有するフェルール基体であり、前記収容スルーホールの一端が当該フェルール基体の第1表面にあり、当該フェルール基体の前記第1表面は、当該フェルールの相手フェルールに面する当該フェルール基体の表面である、フェルール基体と、第2表面を持つ光伝送媒体であり、当該光伝送媒体の前記第2表面は前記相手フェルールに面し、当該光伝送媒体の前記第2表面は光伝送面であり、当該光伝送媒体は前記収容スルーホール内に配置されている、光伝送媒体と、を有し、前記収容スルーホールの内壁と前記光伝送媒体の外周側面との間のギャップにフィラーが配置され、当該方法は、
前記相手フェルールに面する前記フェルール基体の1つの面上に反射膜を形成し、当該反射膜は前記フェルール基体の前記第1表面を覆い、当該反射膜の反射帯域は前記光伝送媒体の通信帯域の少なくとも一部を含む、
ことを有し、
当該方法は更に、前記相手フェルールに面する前記フェルール基体の1つの面上に反射膜を前記形成することの前に、前記相手フェルールに面する前記フェルール基体の前記面上に耐熱膜を形成する、ことを有する
法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
の出願は、通信技術の分野に関し、特に、フェルール、光コネクタ、光通信素子、通信装置、及び準備方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビッグデータ時代において、光通信は大量のデータを伝送するために広く使用されている。しかしながら、光伝送媒体(例えば、シングルモードファイバ又は導波路)のエネルギー密度が、データ伝送量の急激な増加により非常に高くなっている。光伝送媒体は、コネクタのフェルールの一部であり、フェルール基体内に配置される。2つのコネクタのフェルール同士を接続することにより、それら2つのフェルール内の光伝送媒体を用いた光通信が実現される。一方のフェルールの光伝送媒体からの光が、他方のフェルールのフェルール基体の表面に伝送される。光は表面によって吸収されて熱に変換される。熱が蓄積すると、他方のフェルールのフェルール基体が焼損する。
【発明の概要】
【0003】
この出願は、フェルール基体又はフェルール内の光伝送媒体の焼損の可能性を低減させるための、フェルール、光コネクタ、光通信素子、通信装置、及び準備方法を提供する。これは、光通信システムにおけるデータ伝送の安定性を保証する。
【0004】
第1の態様によれば、フェルールが提供される。当該フェルールは、例えば光ファイバコネクタ又は光導波路コネクタなどの光コネクタに適用されることができ、別の光コネクタの相手フェルールと組み合わせて使用される。斯くして、2つの光コネクタの間で光通信が実現される。この出願で提供されるフェルールは、フェルール基体、光伝送媒体、及び反射膜を含む。フェルール基体は、第1表面を含み、当該フェルールが対応する相手フェルールと接続されるときに相手フェルールに面する第1表面を含む。フェルール基体は、収容スルーホールを含み、収容スルーホールの一端がフェルール基体の第1表面上に位置する。光伝送媒体は収容スルーホール内に配置される。光伝送媒体は、当該フェルールが対応する相手フェルールと接続されるときに相手フェルールに面する第2表面を含む。第2表面は光伝送面である。フェルール基体の第1表面を反射膜が覆い、該反射膜の反射帯域は、光伝送媒体の通信帯域の少なくとも一部を含む。フェルールが相手フェルールと組み合わせて使用されるとき、相手フェルールから第1表面に伝送される光が、第1表面上の反射膜によって別方向に反射される。これは、フェルール基体の第1表面上の熱へと光が変換されることを軽減する。これは、フェルール基体の焼損の可能性を減少させる。
【0005】
また、光伝送媒体の第2表面は、例えばダストなどの不純物で容易に汚染されることがある。従って、相手フェルールからの光が第2表面に伝送されるときに、光が熱に変換され、その熱によって第2表面の不純物が燃えることがある。これは光伝送媒体の焼損を引き起こす。これに鑑み、特定の一実装において、反射膜は第2表面の一部も覆う。反射膜はスルーホールを有する。第2表面上へのスルーホールの直交投影は、第2表面の光コア領域を覆う。斯くして、反射膜は、相手フェルールから第2表面に伝送される光を別方向に反射することができる。従って、残りの光から変換される熱では、第2表面上の不純物が発火点に達して燃えることを可能にするには不十分となる。これは、光伝送媒体の焼損の可能性を減少させる。反射膜に配置されたスルーホールは、光コア領域から延びる光ファイバを反射膜が遮蔽することを防止することができる。さらに、これは、スルーホールの側壁によって囲まれた溝構造の底面を相手フェルールが引っ掻くことを防止する。従って、光信号の損失率が低減される。特に、反射膜の厚さが1.0μm以上且つ3.0μm以下である場合、スルーホールの側壁によって囲まれた溝構造の底面を容易に引っ掻くことはできず、また、スルーホール内のダストは除去容易である。
【0006】
特定の一実装において、第2表面は主光路領域を有する。相手フェルールから伝送される光の全てがフェルール内の光伝送媒体に入ることができることを確保するために、また、信号損失率を低減させるために、第2表面上へのスルーホールの直交投影は主光路領域を覆う。
【0007】
生産プロセスにおける困難さを低減させ、大量生産を容易にするために、特定の一実装において、例えば、光伝送媒体はシングルモードファイバである。この場合、第2表面上へのスルーホールの直交投影のエッジと主光路領域のエッジとの間のギャップは、12.5μm以上且つ42.5μm以下である。
【0008】
この出願でのフェルールが相手フェルールと組み合わせて使用されるとき、フェルール内の反射膜及びスルーホールは、反射膜の表面とスルーホールの側壁によって囲まれた溝構造の底面との間に高低差を生じさせる。この場合、スルーホール内に空気が存在し、フレネル反射が容易に引き起こされる。これに鑑み、特定の一実装において、フェルールは更に、相手フェルールに面する光伝送媒体の1つの面上に位置する反射防止膜を含む。第2表面上への反射防止膜の直交投影が、第2表面上へのスルーホールの直交投影を覆うとともに、反射防止膜の反射防止帯域が、光伝送媒体の通信帯域の少なくとも一部を含む。この場合、この反射防止膜を用いてフレネル反射が低減される。
【0009】
反射防止膜は、複数の方式で配置され得る。例えば、特定の一実装において、反射防止膜は、反射膜と光伝送媒体との間に位置する。特定の他の一実装において、反射防止膜は、反射膜のスルーホール内に形成される。反射防止膜の表面が引っ掻かれるのを防止するため、特定の一実装において、相手フェルールに面する反射防止膜の表面が、相手フェルールに面する反射膜の表面からリセス化される。例えば、相手フェルールに面する反射防止膜の表面と、相手フェルールに面する反射膜の表面との間の高低差は、0.8μm以上且つ2.8μm以下である。
【0010】
特定の一実装において、光信号伝送の損失率が基準を満たすことを確保するために、反射防止帯域内の光波に対する反射防止膜の反射率は0.25%以下である。より具体的には、反射防止帯域内の光波に対する反射防止膜の反射率は0.1%以下である。
【0011】
フィラーが焼損するのを防止するため、特定の一実装において、反射帯域内の光波に対する反射膜の反射率は80%以上である。
【0012】
相手フェルールに面するフェルールの表面(第1表面又は第2表面)が焼損するのを更に防止するため、反射膜の内面に耐熱膜が配置される。
【0013】
収容スルーホールの内壁と光伝送媒体の外周側面との間のギャップにフィラーが配置される。特定の一実装において、フィラーが焼損するのを防止するため、反射膜は、相手フェルールに面するフィラーの1つの面上に配置されて、フィラーに対向する。
【0014】
特定の一実装において、収容スルーホールの軸方向に対して垂直な基準面上への反射膜の直交投影が、基準面上へのフィラーの直交投影を覆う。
【0015】
特定の配置では、最初にフィラーに伝送される光を反射膜が遮断して反射することができるのであれば、反射膜は、光伝送媒体がフェルールと接続する方式に基づいて複数の方式で配置され得る。特定の一実装において、第2表面は第1表面から突出し、反射膜は光伝送媒体の外周側面を覆う。特定の他の一実装において、第2表面は第1表面からリセス化され、反射膜は収容スルーホールの内壁を覆う。特定の他の一実装において、第2表面は第1表面と揃えられ、反射膜は、収容スルーホールの内壁と光伝送媒体の外周側面との間のギャップを覆う。
【0016】
第2の態様によれば、この出願は更にコネクタを提供する。当該コネクタは、例えば光ファイバコネクタ又は光導波路コネクタなどの光コネクタとし得る。当該コネクタは、ハウジングと、前述の技術的ソリューションで提供されるフェルールとを含む。フェルールはハウジング内に配置される。フェルールは、2つのコネクタ間で光信号を伝送することができるように、他のコネクタの相手フェルールと組み合わせて使用される。前述の技術的ソリューションで提供されるフェルールを用いて、相手フェルールから来る光の、フェルール基体の第1表面上の熱への変換が軽減される。これは、フェルール基体の焼損の可能性を減少させる。
【0017】
第3の態様によれば、この出願は光通信素子を提供する。当該光通信素子は、前述の技術的ソリューションで提供されるフェルールと、光通信素子本体とを含む。フェルールは光通信素子本体に接続される。光通信素子本体は、光バックプレーン、光ファイババンドルバックプレーン、共パッケージモジュール、又はWSSモジュールとし得る。前述の技術的ソリューションで提供されるフェルールを用いて、相手フェルールから来る光の、フェルール基体の第1表面上の熱への変換が軽減される。これは、フェルール基体の焼損の可能性を減少させる。
【0018】
第4の態様によれば、この出願は更に通信装置を提供する。例えば、当該通信装置は、ルータ、交換機、又はこれらに類するものとし得る。当該通信装置は、前述の技術的ソリューションで提供される光通信素子と、相手光通信素子とを含む。相手光通信素子は相手フェルールを含む。光通信素子のフェルールが、相手光通信素子の相手フェルールに接続される。光通信素子は、前述の技術的ソリューションで提供されるフェルールを含む。従って、光通信素子のフェルールが相手光通信素子の相手フェルールに接続されるとき、相手フェルールから来る光の、フェルール基体の第1表面上の熱への変換を軽減することができる。これは、フェルール基体の焼損の可能性を減少させる。
【0019】
光通信素子のフェルールが相手光通信素子の相手フェルールと接続するとき、フェルールにおけるスルーホールの側壁に囲まれた溝の底面と相手フェルールの光出射面との間のギャップが過大になることはない。このギャップが大き過ぎると、光信号の大きな損失が容易に引き起こされる。特定の一実装において、このギャップは5μm以下である。
【0020】
第5の態様によれば、この出願は更に、フェルールを準備する方法を提供する。フェルールは、フェルール基体と光伝送媒体とを含む。フェルール基体は収容スルーホールを含み、収容スルーホールの一端が第1表面上に配置される。フェルールが相手フェルールと接続するとき、第1表面が相手フェルールに面する。光伝送媒体は、収容スルーホール内に配置される。光伝送媒体は第2表面を有する。フェルールが相手フェルールと接続するとき、第2表面が相手フェルールに面する。第2表面は光伝送面である。収容スルーホールの内壁と光伝送媒体の外周側面との間のギャップにフィラーが配置される。フィラーは、収容スルーホールの内壁と光伝送媒体の対応する表面とを固定するために使用される。フェルールを準備する方法は、相手フェルールに面するフェルール基体の1つの面上に反射膜を形成することを含み、当該反射膜は第1表面を覆い、当該反射膜の反射帯域は光伝送媒体の通信帯域の少なくとも一部を含む。相手フェルールから第1表面に伝送される光は、第1表面上の反射膜によって別方向に反射される。これは、フェルール基体の第1表面上の熱への光の変換を軽減し、それにより、フェルール基体の焼損の可能性を低減させる。
【0021】
特定の一実装において、形成される反射膜は、光伝送媒体の第2表面の一部も覆い、反射膜はスルーホールを有する。第2表面上へのスルーホールの直交投影は、第2表面の光コア領域を覆う。斯くして、反射膜は、相手フェルールから第2表面に伝送される光を別方向に反射することができる。これは、フェルール基体の焼損の可能性を減少させる。
【0022】
特定の一実装において、第2表面は主光路領域を有する。相手フェルールから伝送される光の全てがフェルール内の光伝送媒体に入ることができることを確保するために、また、信号損失率を低減させるために、形成される反射膜の第2表面上へのスルーホールの直交投影は主光路領域を覆う。
【0023】
相手フェルールに面するフェルール基体の1つの面上に反射膜を形成することには、様々な方式を用いることができる。特定の一実装において、先ず、相手フェルールに面する光伝送媒体の1つの面上に犠牲層が形成される。次いで、相手フェルールに面する光伝送媒体の上記面上に反射膜が形成され、該反射膜は犠牲層及び第2表面を覆う。続いて、犠牲層と、犠牲層の表面上の膜とが除去されて、スルーホールを形成する。あるいは、特定の他の一実装では、先ず、相手フェルールに面するフェルール基体の1つの面上に反射膜が形成される。次いで、反射膜にスルーホールを形成するように反射膜がパターニングされる。
【0024】
スルーホールの側壁によって囲まれた溝構造の底面とスルーホール内の空気との間の直接的な接触によって生じるフレネル反射を抑制するために、特定の一実装において、フェルールを準備する方法は更に、相手フェルールに面するフェルール基体の1つの面上に反射膜を形成することを含む。第2表面上への反射防止膜の直交投影は、第2表面上へのスルーホールの直交投影を覆う。反射防止膜の反射防止帯域は、光伝送媒体の通信帯域の少なくとも一部を含む。この場合、反射防止膜を用いて、フレネル反射が抑制される。
【0025】
反射防止膜は、複数の方式で形成され得る。例えば、特定の一実装において、相手フェルールに面するフェルール基体の面上に反射膜が形成される前に、先ず、相手フェルールに面する光伝送媒体の面上に反射防止膜が形成される。あるいは、特定の他の一実装では、相手フェルールに面するフェルール基体の面上に反射膜が形成された後に、スルーホール内に反射防止膜が形成される。
【0026】
特定の他の一実装において、収容スルーホールの内壁と光伝送媒体の外周側面との間のギャップにフィラーが配置される。フィラーの焼損の可能性を減らすために、相手フェルールに面するフィラーの1つの面上に反射膜が配置され、フィラーは反射膜と対向する。
【0027】
特定の配置において、フィラーが光に直接曝されることを防止するように、フィラーが反射膜によって完全に遮蔽されることを確保するために、特定の一実装において、基準面上への反射膜の直交投影が、基準面上へのフィラーの直交投影を覆う。基準面は、収容スルーホールの軸方向に対して垂直である。
【0028】
相手フェルールに面するフェルールの表面が焼損することを更に防止するために、特定の一実装において、反射膜が形成される前に、先ず、相手フェルールに面するフェルール基体の面上に耐熱膜が形成される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】一対のMPOコネクタ間の接続の分解図の一例である。
図2図1の左側のMPOコネクタを方向Aに沿って見ることによって得られる拡大図である。
図3】この出願の一実施形態に従ったフェルールの軸方向断面図の一例である。
図4図3の光ファイバの断面の拡大図の一例である。
図5図3のフェルール基体及び光ファイバを負のX軸方向に沿って見ることによって得られる概略的な部分図である。
図6図5に基づく第1表面及び第2表面上への誘電体反射膜の直交投影の分布の概略図である。
図7】この出願の一実施形態に従った、フェルール001及びフェルール001’が互いに接続するシナリオの概略図である。
図8図7のフェルール001及びフェルール001’が組み合わせて使用されるときのハイパワー試験に使用した装置の概略図である。
図9a】この出願の一実施形態に従ったフェルールの別の概略図の一例である。
図9b図9aの部分Fの部分拡大図である。
図10】この出願の一実施形態に従ったフェルールの別の概略図の一例である。
図11】この出願の一実施形態に従った、光バックプレーンとボードとの間の接続の概略図の一例である。
図12a】この出願の一実施形態に従った、通信装置のフェルール及び相手フェルールが組み合わせて使用されるシナリオの概略図の一例である。
図12b】この出願の一実施形態に従った、通信装置のフェルール及び相手フェルールが組み合わせて使用されるシナリオの別の概略図の一例である。
図13a】この出願の一実施形態で提供されるフェルール準備方法に従った、ステップS100の前にフェルール基体が光ファイバと接続する概略図である。
図13b】この出願の一実施形態で提供されるフェルール準備方法に従った、ステップS100の後に得られるフェルールの概略図である。
図13c】この出願の一実施形態で提供されるフェルール準備方法に従った、ステップS200の後に得られるフェルールの概略図である。
図13d】この出願の一実施形態で提供されるフェルール準備方法に従った、ステップS300の後に得られるフェルールの概略図である。
図13e】この出願の一実施形態で提供されるフェルール準備方法に従った、ステップS400の後に得られるフェルールの概略図である。
図13f】この出願の一実施形態で提供されるフェルール準備方法に従った、ステップS500の後に得られるフェルールの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
この出願の目的、技術的ソリューション、及び利点をより明確にするため、以下にて更に、添付の図面を参照して、この出願を詳細に説明する。
【0031】
この出願の実施形態で提供されるフェルールの理解を容易にするため、最初にフェルールの適用シナリオを説明する。図1は、一対のMPO(Multi-fiber Pull Off)コネクタ間の接続の分解図の一例である。図2は、図1の左側のMPOコネクタ20を方向Aに沿って見ることによって得られる拡大図である。図1及び図2を参照するに、例えば、MPOコネクタ20はハウジング21を含む。ハウジング21内にフェルール22が位置する。フェルール22の中に光ファイバリボン25が延びており、フェルール22の前端面aに一対のガイドピン23が配置されている。光ファイバリボン25内の複数の光ファイバ24が、フェルール22の前端面aに延びている。MPOコネクタ30は、位置決めのためにMPOコネクタ20のガイドピン23と合致するように、前端面aのガイドピン23の代わりに前端面aからリセス化されたガイドホールが設けられている点を除いて、MPOコネクタ20と同様の構造を持つ。接続スルーホールがアダプタ10に配置されている。接続中に、MPOコネクタ20が、アダプタ10の接続スルーホールの1つの入口を通って、該入口にMPOコネクタ20の前端面aが面して、アダプタ10に挿入される。MPOコネクタ30が、反対方向から、アダプタ10の接続スルーホールの他方の入口を通ってアダプタ10に挿入される。位置決めのために、MPOコネクタ20のガイドピン23がMPOコネクタ30のガイドホールに挿入される。MPOコネクタ20のフェルール22の前端面aの光ファイバ24が、光を伝送するために、MPOコネクタ30のフェルールの前端面の光ファイバと一対一ベースで対向配置される。この出願のこの実施形態で提供されるフェルールは、MPOコネクタ20のフェルール22又はMPOコネクタ30のフェルールとし得る。なお、この出願のこの実施形態で提供されるフェルールは、前述の適用シナリオに限定されるものではない。代わりに、フェルールは、例えばOBコネクタ(Optical Backplane Connector、光バックプレーンコネクタ)、MTアレイコネクタ、及びHBMTコネクタなどのマルチコア光コネクタのフェルール、例えばFC(Ferrule Connector、フェルールコネクタ)、LC(Latch Connector、ラッチコネクタ)、SC(Square Connector、スクエアコネクタ)、及びST(Spring Tension、スプリングテンション)コネクタなどのシングルコア光ファイバコネクタのフェルール、光導波路コネクタのフェルール、光ファイバアレイコネクタのフェルール、又は他のMTコネクタ(Mechanical transferコネクタ、メカニカルトランスファーコネクタ)のフェルールであってもよい。
【0032】
図3は、この出願の一実施形態に従ったフェルールの軸方向断面図(例えば、B-B方向に沿った図2のフェルール22の断面図とし得る)の一例である。図3のコンポーネントのサイズは、実際のサイズ比率を反映しておらず、単にコンポーネントの相対的な位置を明確にするために提供されるものである。図3を参照するに、例えば、この出願のこの実施形態で提供されるフェルール001は、フェルール基体100及び光ファイバ200を含む。フェルール基体100の材料は、以下に限られないが、セラミック又はプラスチックである。フェルール基体100の軸方向に沿って、フェルール基体100に1つ以上の収容スルーホール101が配される。光ファイバ200の一部が収容スルーホール101内に配置される。X軸方向に沿ったフェルール基体100の側面が第1表面102を有する。第1表面102は、フェルール001が別コネクタの相手フェルール(この出願のこの実施例で言及されている各相手フェルールは、この出願のこの実施形態で提供されるフェルールに光を伝達するフェルールである)と接続するときに、相手フェルールに面するフェルール基体100の表面である。図4は、図3の光ファイバ200の断面の拡大図の一例である。図4を参照するに、光ファイバ200は、内側から外側に同心配置された、ファイバコア201、クラッド203、及び被覆204を含む。ファイバコア201が光を伝送するとき、光はファイバコア201に閉じ込められない。代わりに、光の一部が、ファイバコア201の周囲のクラッド203の円形空間に散乱される。光を伝送するファイバコア201及びクラッド203の全ての部分をまとめて主光路202と称する。換言すれば、光ファイバ200中を伝送される光は全て、主に主光路202中を伝送される。例えば、光ファイバ200はシングルモードファイバである。ファイバコア201の外径は9μmであり、クラッド203の外径は125μmであり、主光路202の外径は通常25μmである。なおも図3において、収容スルーホール101は、正のX軸方向に沿って互いに隣接する第1セグメントeと第2セグメントfとを含む。例えば、第1セグメントeの開口は、負のX軸方向に沿ったフェルール基体100の端面に位置する。正のX軸方向に沿った第2セグメントfの端部は第1表面102に位置する。第1セグメントeの内径は、第2セグメントfの内径よりも大きい。第1セグメントeで、光ファイバ200の部分は被覆204を有する。その被覆204の外径が、第1セグメントeの内径と一致する。被覆204の外表面と第1セグメントeの内壁との間には、固定するために例えば接着剤などのフィラー208(図5及び図6に示す)が使用される。第2セグメントfで、光ファイバ200の部分は被覆204を除去されており、この部分をベアファイバと称する。ベアファイバの一部(これは、例えば、1μm以上且つ3.5μm以下の長さを持つ)は第1表面102から突出する。ベアファイバのクラッド203の外径が、第2セグメントfの内径と一致する。例えば、クラッド203の外径が125μmである場合、第2セグメントfの内径は127μmとし得る。クラッド203の外周壁と第2セグメントfの内壁との間に、固定するために例えば接着剤などのフィラー208が使用される。図5は、図3のフェルール基体100及び光ファイバ200を負のX軸方向に沿って見ることによって得られる概略的な部分図である。図5を参照するに、第1表面102から突出する光ファイバ200の部分は、正のX軸方向を向いた第2表面205を有する。第2表面205は、光ファイバ200のベアファイバの表面であって、フェルール001が相手フェルールと接続するときに、別コネクタの相手フェルールに面する表面である。第2表面205を光伝送面とも称する(すなわち、フェルール001の光が第2表面から光ファイバ200を出て伝送される、又は相手フェルールからの光が第2表面を通って光ファイバ200に入る)。図3及び図4に示す主光路202は、第2表面205上に主光路領域206を形成する。ファイバコア201は、光を伝送するためのコア機能コンポーネント(コア領域)であり、第2表面205上に光コア領域207を形成する。光コア領域207は、主光路領域206内に位置し、通常、主光路領域206の面積よりも小さい面積を持つ。フェルール001の以上の説明(例えば材料及びサイズなど)は、この分野の従来技術において一般的且つ既知であり得る。詳細をここで説明することはしない。
【0033】
なおも図3を参照するに、上述のフェルール001の構造に基づき、フェルール基体100の第1表面102は更に、正のX軸方向に沿って順次に、反射防止膜301、接続層302、及び誘電体反射膜303によって覆われる。接続層302は、反射防止膜301と誘電体反射膜303とを接続するために使用される。図3及び図5を参照するに(図5には、反射防止膜301、接続層302、及び誘電体反射膜303は図示されておらず、故に、第1表面102、第2表面205、及び主光路領域206の相対位置のみを参照する)、例えば、反射防止膜301は、第1表面102と、第2表面205と、第1表面102から突出した光ファイバ200のベアファイバの部分の外周側面とを覆う(この出願のこの実施形態において、外周側面は、光伝送媒体によって囲まれた光路の表面である。例えば、図3及び図5において、外周側面は、ベアファイバの外周面である)。この場合、第1表面102上への反射防止膜301の直交投影は第1表面102を完全に覆い、第2表面205上への反射防止膜301の直交投影は第2表面205を完全に覆う。誘電体反射膜303は、第1表面102を覆うとともにスルーホール303hを有する(この場合、基準面Mは収容スルーホール101の軸方向に対して垂直であるとして、基準面M上への誘電体反射膜303の直交投影が、基準面M上への第1表面102の直交投影を覆う。例えば、図3においては、スルーホール101がX軸方向に沿って延びており、基準面MはX軸方向に対して垂直である)。誘電体反射膜303は、第1表面102から突出した光ファイバ200のベアファイバの部分の外周面を覆う。誘電体反射膜303は第2表面205の一部を覆う(すなわち、基準面M上への誘電体反射膜303の直交投影は、基準面M上への第2表面205の直交投影の一部を覆う)。また、誘電体反射膜303は、フェルール基体100と光ファイバ200のベアファイバの外周側面との間のギャップを覆い(換言すれば、基準面M上へのギャップの直交投影は、基準面M上への誘電体反射膜303の直交投影によって完全に覆われる)、該ギャップ内のフィラー208を誘電体反射膜303が遮蔽するようにされる。図6は、図5に基づく第1表面102及び第2表面205上への誘電体反射膜303の直交投影の分布を示しており、図6の格子状の陰影付き部は、第1表面102及び第2表面205上への誘電体反射膜303の直交投影を示している。図6を参照するに、第1表面102上への誘電体反射膜303の直交投影は、第1表面102を覆う。第2表面205上への誘電体反射膜303の直交投影は、第2表面205の一部を覆う。スルーホール303hは主光路領域206と対向する。第2表面205上へのスルーホール303hの直交投影303hsは、主光路領域206を覆う。加えて、基準面M(図3に示す)上へのスルーホール303hの直交投影303hsは、基準面M上への第2表面205の直交投影の中に完全に収まる。第2表面205上へのスルーホール303hの直交投影303hsのエッジと主光路領域206のエッジとの間のギャップの幅は、正確に0μm以上且つ50μm以下であるとし得る。斯くして、誘電体反射膜303は、主光路領域206を遮蔽することなく、フィラー208を遮蔽することができる。より具体的には、第2表面205上へのスルーホール303hの直交投影303hsのエッジと主光路領域206のエッジとの間のギャップの幅は、正確に12.5μm以上且つ42.5μm以下とし得る。例えば、該ギャップの幅は、12.5μm、15μm、17μm、20μm、23μm、25μm、30μm、35μm、40μm、又は42.5μmとし得る。斯くして、第2表面205上へのスルーホール303hの直交投影303hsのエッジが主光路領域206のエッジ又は第2表面205のエッジに過度に近づくことが防止される。これは、生産効率を改善し、大量生産に有益である。例えば、ファイバコア201の外径は9μmであり、クラッド203の外径(すなわち、第2表面205の直径)は125μmであり、主光路領域206は直径25μmの円である。この場合、第2表面205上へのスルーホール303hの直交投影303hsは、直径50μm以上且つ110μm以下の円(例えば、この円は主光路領域206と同心である)とし得る。あるいは、第2表面205上へのスルーホール303hの直交投影303hsは、円ではないが、直径がそれぞれ50μm及び110μmである2つの同心円の間に正確に収まる。斯くして、誘電体反射膜303は、主光路領域206を遮蔽することなく、フィラー208を遮蔽することができる。これは、直交投影303hsが主光路領域206と完全に重なる場合と比較して、大量生産に有利である。他の一ケースでは、第2表面205上へのスルーホール303hの直交投影303hsのエッジは、代わりに、光コア領域207の外側ではあるが主光路領域206の内側に置かれてもよい。斯くして、誘電体反射膜303は、光の大部分が依然としてファイバコア201に入りながら、主光路202に入る光の一部を遮ることができる。接続層302は、反射防止膜301と誘電体反射膜303との間に充たされて、反射防止膜301と誘電体反射膜303とを接続する。これは、反射防止膜301と誘電体反射膜303との間の接着及び滑らかな遷移を確保し、反射防止膜301と誘電体反射膜303との間の剥離を回避する。例えば、反射防止膜301のうち誘電体反射膜303に近い層はSiOからなり、誘電体反射膜303のうち反射防止膜に近い層もSiOからなる。この場合、接続層302もSiOからなる場合、類似性-相互混和性原理により、反射防止膜301が誘電体反射膜303に強固に接続される。
【0034】
図3のフェルール001の反射防止膜301は、Mg化合物/SiO、Ta化合物/SiO、Ti化合物/SiO、Hf化合物/SiO、又はこれらに類するもの、の構造のものとし得る。反射防止膜301の厚さは、400nm以上且つ800nm以下である。あるいは、反射防止膜301は、従来技術において公知であって一般的に使用されている構造のものであってもよい。反射防止膜301の反射防止帯域は、光ファイバ200’の通信帯域の少なくとも一部を含む。光信号が主光路202に入った後に生じる損失が基準を満たすことを確実にするために、反射防止帯域内の光波に対する反射防止膜301の反射率は0.25%以下である。例えば、該反射率は0.25%、0.22%、0.20%、0.17%、0.15%、0.1%、0.08%、又は0.05%である。一部のケースにおいて、反射防止帯域内の光波に対する反射防止膜301の反射率は0.1%以下である。これは、光信号が主光路202に入った後に生じる損失を大幅に低減させ得る。さらに、反射防止膜301の膜層は各々、比較的高いLIDT(Laser Induced Damage Threshold、レーザ誘起損傷閾値)を有する材料で作製され得る。例えば、反射防止膜301の材料は、少なくとも600mW/cmのエネルギーに耐えることができる(反射防止膜301の材料の最大許容エネルギーは、波長1064nm及び直径0.53mmのレーザビームを用いて反射防止膜301の材料を照射し、光パワーを連続的に上昇させることによって試験される)。斯くして、反射防止膜301は、良好な温度耐性を持つことができる。これは、ある程度、フェルール001の焼損の可能性を減少させる。さらに、これは、フェルール基体100及び光ファイバ200の材料を変更することなく、フェルール基体100及び光ファイバ200のハイパワー耐性を改善する。誘電体反射膜303は、Si/SiO、Ag化合物/SiO、Al化合物/SiO、Au化合物/SiO、又はTi化合物/SiOの構造のものとし得る。あるいは、誘電体反射膜303は、従来技術において公知であって一般的に使用されている構造のものであってもよい。誘電体反射膜303の反射帯域は、光ファイバ200の通信帯域の少なくとも一部を含む。第1表面102、第2表面205、及びフィラー208が焼損されることを防止するため、反射帯域内の光波に対する誘電体反射膜303の反射率は80%以上である。例えば、該反射率は、80%、85%、90%、95%、又は98%である。さらに、誘電体反射膜303の膜層は各々、比較的高いLIDTを有する材料で作製され得る。例えば、誘電体反射膜303の材料は、少なくとも600mW/cmのエネルギーに耐えることができる(誘電体反射膜303の材料の最大許容エネルギーは、波長1064nm及び直径0.53mmのレーザビームを用いて誘電体反射膜303の材料を照射し、光パワーを連続的に上昇させることによって試験される)。これは、フェルール基体100及び光ファイバ200のハイパワー耐性を改善する。
【0035】
図7は、この出願の一実施形態に従った、フェルール001及びフェルール001’が組み合わせて使用されるシナリオの概略図である。フェルール001’は、フェルール基体100’と、フェルール基体100’を貫いて延びる光ファイバ200’とを含む。フェルール001’が、フェルール001と接続する相手フェルールとして使用されるとき、フェルール001’は、正のX軸方向に沿ったフェルール001の側に配置され、第1表面102がフェルール基体100’に面し、そして、第2表面205が、負のX軸方向に沿って配置された光ファイバ200’の光出射端面と対向する。斯くして、光が、光ファイバ200’の主光路から、負のX軸方向に沿って第2表面205の主光路領域206に伝送され、そして、主光路202に沿って伝送され続ける。第2表面205は反射防止膜301で覆われており、反射防止膜301が、空気への第2表面205の直接曝露によって生じるフレネル反射を低減させ得る。従って、伝送中の光信号の損失が低減される。しかしながら、実際の操作において(例えば、フェルール001又はフェルール001’が差し込まれる又は引き抜かれるとき)、光ファイバ200’の主光路から伝送される光が主光路領域206の中に完全に入ることは困難である。例えば、ファイバ200’の主光路が主光路領域206とミスアライメントされたり、光ファイバ200’の主光路と光ファイバ200’の主光路202とが同じ直線に沿って延在しなかったりする。また、光ファイバ200’の主光路から伝送される光が、屈折又は他の要因によって主光路から外れることがある。この場合、光ファイバ200’からの光は、主光路領域206以外の第2表面205の領域及び第1表面102に伝送される。光ファイバ200’からの光が第1表面102に伝送されるとき、第1表面102上の誘電体反射膜303が光を別方向に反射する。この場合、光のうち少ない部分のみが誘電体反射膜303によって吸収されて熱に変換される。この熱は、フェルール基体100の第1表面102の燃焼を引き起こすには不十分である。さらに、第2表面205上の誘電体反射膜303が例えばダストなどの不純物で汚染されている場合であっても、誘電体反射膜303が光の大部分を反射する。この場合、残りの光から変換される熱は、不純物を燃やすには不十分である。同様に、フィラー208を容易に焼損させることはできない。
【0036】
図8は、フェルール001及びフェルール001’が組み合わせて使用されるときのハイパワー試験に使用した装置の概略図である。図8を参照するに、光源401、光減衰器402、及びフェルール001’が、光ファイバを用いて順に接続される。フェルール001’はフェルール001と一致する。フェルール001の出力端が、光ファイバを用いて光パワーメータ403に接続される。光源401が、17dBm、17.5dBm、18dBm、18.5dBm、…、25dBm、27dBm、及び30dBmのパワーを別々に出力する。そして、端面検出器を用いて、フェルール001の第1表面102及び第2表面205をそれぞれ検出する。検出結果は、フェルール001が30dBm(これは約1000mWのエネルギーに相当する)のパワーを受けるときにフェルール001が焼損されないことを示している。従って、フェルール001は、従来のMTフェルール(従来のMTフェルールが17dBm(約50mWのエネルギーに相当する)より大きいパワーを受けるときに焼損されるのが通常である)と比較して、焼損されずに生き残ることにおいて遥かに良好な性能を持つ。
【0037】
なおも図7において、第2表面205上へのスルーホール303hの直交投影は、第2表面205の一部のみを覆う。この場合、フェルール001’がフェルール001に接続され、光ファイバ200’の外径が光ファイバ200’の外径と同じ(又はそれより大きい)であるとき、光ファイバ200’の光出射端面が誘電体反射膜303に良好に接触することができ、スルーホール303hの中まで侵入することはない。具体的には、光ファイバ200’の光出射端面がスルーホール303hの底の反射防止膜301に直接接触することが困難となるよう、誘電体反射膜303が光ファイバ200’を持ち上げる。従って、光ファイバ200’の光出射端面によって反射防止膜301が容易に引っ掻かれることがない。また、スルーホール303hの底の反射防止膜301は、光信号を伝送する経路上に位置しており、伝送中の光信号の損失が低減されるようになる。例えば、誘電体反射膜303の厚さは、1.0μm以上且つ3.0μm以下である。例えば、該厚さは、1.0μm、1.2μm、1.5μm、1.7μm、2.0μm、2.2μm、2.5μm、2.8μm、又は3.0μmとし得る。誘電体反射膜の厚さが1.0μm未満であると、誘電体反射膜303が薄すぎ、それ故にスルーホール303hが浅くなりすぎる。この場合、スルーホール303hの底の反射防止膜301は、異物(例えば光ファイバ200’の角など)によって容易に引っ掻かれる。誘電体反射膜303の厚さが3.0μmよりも大きいと、誘電体反射膜303が厚すぎ、それ故にスルーホール303hが深くなりすぎて、スルーホール303h内の空間が大きくなる。この場合、ダストがスルーホール303hに容易に入り、容易に取り除かれることができない。これは、光信号の伝送に影響を及ぼす。誘電体反射膜303の厚さが1.0μm以上且つ3.0μm以下の場合には、上述の問題の両方が回避され得る。また、誘電体反射膜303の厚さが上述の範囲内である場合、誘電体反射膜303の反射率は良好であることができる。試験が示すことには、フェルール001及びフェルール001’の1000回以内の差し込み及び引き抜きで、スルーホール303hの底の反射防止膜301の表面を洗浄する必要はない。試験全体を通して、IL(Insertion Loss、挿入損失)は0.25dB未満であり、損失変化は0.05dB未満である。なお、光ファイバ200の第2表面205と光ファイバ200’の光出射端面との間のギャップにかかわらず、反射防止膜301の存在は、フレネル反射によって生じる光信号損失をある程度低減させることができる。
【0038】
さらに、光ファイバ200’の光出射端面と光ファイバ200の第2表面205との間の直接的な接触なしに、低い光信号損失を達成することができる。従って、フェルール001がフェルール001’と接続するとき、空隙を除去するために大きい力を加えて光ファイバ200の第2表面205と光ファイバ200’の光出射端面とを押し付け合わす必要なく、フレネル反射を抑制することができる。また、フェルール001は、従来のMTフェルールに誘電体反射膜303及び反射防止膜301を付着させることにより、従来のMTフェルールの構造を変更することなく形成されることができる。斯くして、この出願のこの実施形態で提供されるフェルール001は、従来のMTフェルールと直接接続することができる。フェルール001と従来のMTフェルールとを接続することには機械的なドッキングが使用され、熱溶接は必要でない。これは、温度に敏感なデバイスが容易に損傷されてしまうことを防止する。この出願のこの実施形態で提供されるフェルール001は、温度に敏感なコンポーネントに容易に適用されることができる。
【0039】
一部のケースにおいて、第2表面205でのフレネル反射を排除するために別の手段が講じられる場合、反射防止膜301は除去されてもよい。例えば、誘電体反射膜303が直に第1表面102及び第2表面205に接触する。他の一部のケースにおいて、誘電体反射膜303は第2表面205を覆わなくてもよい。例えば、誘電体反射膜303は第1表面102のみを覆ってもよい(すなわち、基準面M上への誘電体反射膜303の直交投影が基準面M上への第1表面102の直交投影を覆うのみでもよい)。あるいは、誘電体反射膜303は、第1表面102と、第1表面102から突出する光ファイバ200の部分の外周側面とを覆うのみでもよい。あるいは、誘電体反射膜303は、第1表面102と、主光路領域以外の第2表面205の領域とを覆うのみでもよい。
【0040】
なお、この出願の実施形態で提供されるフェルールは、図3に示す特定の形態のフェルール001に限定されるものではない。例えば、図3の反射防止膜301は、第2表面205のみを覆ってもよく、これも、第2表面205におけるフレネル反射をある程度抑制することができる。図9aは、この出願の一実施形態に従ったフェルールの別の概略図の一例である。図9bは、図9aの部分Fの部分拡大図である。図9a及び図9bを参照するに、図9a及び図9bに示すフェルール001と図3に示したフェルール001との間の違いは、反射防止膜301と誘電体反射膜303とが同じ層に配置されていることである。反射防止膜301がスルーホール303h内に配置されて第2表面205に密着されることで、反射防止膜301と第2表面205との間に例えば空気などの中間媒体が存在しないことを確保する。これは、ある程度、光が第2表面205上に伝送されるときに生じるフレネル反射を減少させる。また、この場合、反射防止膜301の厚さは、誘電体反射膜303の厚さよりも薄いとし得る。従って、相手フェルールに面する反射防止膜301の表面が、相手フェルールに面する誘電体反射膜303の表面からリセス化される。換言すれば、誘電体反射膜303の表面と反射防止膜301の表面との間に高低差hが存在する。誘電体反射膜303の表面と反射防止膜301の表面との間の高低差hは、0.8μm以上且つ2.8μm以下である。例えば、高低差hは、0.8μm、1.0μm、1.2μm、1.5μm、1.7μm、2.0μm、2.3μm、2.5μm、又は2.8μmとし得る。これは、反射防止膜301が引っ掻かれることを防止するとともに、スルーホール303hがダストを保持することを防止することができる。
【0041】
図10は、この出願の一実施形態に従ったフェルール001の別の概略図の一例である。図10を参照するに、図10に示すフェルール001と図3に示したフェルール001との間の違いは、第1表面102の中央部がフェルール基体100の内部に向けてリセス化されて、第2表面205が第1表面102の底と揃うようにされていることである。図10に示すフェルール001は、図3に示したフェルール001と組み合わせて使用され得る。図3に示したフェルール001の光ファイバ200の、第1表面102から突出した部分が、図10に示すフェルール001の第1表面102に形成されたリセスと一致する。これは、2つのフェルール間の横方向のミスアライメントを防止し、2つのフェルールの第2表面間の過大な距離による高い光信号損失を回避する(この距離は、例えば1μm、2μm、3μm、4μm、又は5μmなど、5μm以下である必要がある)。
【0042】
また、図3に示したフェルール001は、変形例を得るべく以下のように変更されてもよい。例えば、光ファイバ200の第2表面205は、第1表面102と揃えられるか、第1表面102からリセス化されるかする。他の一例では、図3に示した誘電体反射膜303の内側(例えば、誘電体反射膜303と反射防止膜301との間)に、比較的高い温度に耐えることができる例えばセラミック膜又は金属膜などの耐熱膜が充填され得る。耐熱膜の被覆領域は、誘電体反射膜303に基づいて調節され得る。セラミック耐熱膜又は金属耐熱膜は、電気めっきにより反射防止膜301の表面に形成される。一般に、例えばセラミック膜又は金属膜などの耐熱膜(金属膜の材料はAl、Ag、Ti、Au、Cr、又はこれらに類するものであるが、金属は酸化されやすいので、典型的に、この金属を覆って、SiO、MgF、又はこれらに類するものからなる保護層がPVD物理気相堆積によってコーティングされる)は、1700℃より高い温度に耐えることができる。斯くして、反射膜の耐熱性が大幅に改善される。反射膜のレーザ誘起損傷閾値及び耐熱性を更に向上させるために、耐熱膜上に更に、誘電体反射膜、セラミック反射膜、又は金属反射膜を形成して、光を反射するとともに耐熱膜の焼損を防止するための反射膜として用いてもよい。別の変形例において、代わりに光ファイバ200のベアファイバが第1表面102からリセス化されてもよく、収容スルーホール101の内壁に誘電体反射膜303が配置される。あるいは、第2表面205が第1表面102と揃えられ、収容スルーホール101と光ファイバ200のベアファイバの外周側面との間のギャップを誘電体反射膜303が覆う。
【0043】
なお、この出願の前述の実施形態では、フェルールの例としてファイバフェルールのみを用いている。光導波路コネクタのフェルールでは、フェルール基体の中に、光ファイバの代わりに光導波路が配置される。光導波路は、その屈折率が基体の屈折率よりも高いコアチャネル(すなわち、コア領域)を持つ。コアチャネルは、導波路の端面まで延びて、導波路の端面に光コア領域を形成する。上述の光ファイバ200と同様に、光コアチャネル内の光の小さい部分が、コアチャネルを取り囲む基体に散乱され得る。従って、主光路が形成され、主光路は光導波路の端面に主光路領域を形成する。これらの構造は従来技術に基づき得る。これを基礎として、導波路の端面に反射膜が形成され、該反射膜は、光の大部分を遮断することを回避するように光コア領域から離して配置される。あるいは、主光路からの全ての光が遮断されないことを確実にするために、反射膜は、光コア領域及び主光路領域の両方から離して配置されてもよい。加えて、光導波路の光入射端面に更に反射防止膜が配置され得る。反射防止膜及び反射膜を配置する方式については、前述の実施形態でのファイバフェルールにおいて対応する膜層を配置する方式を参照されたい。また、光ファイバアレイコネクタのフェルールは、フェルール基体と、フェルール基体内で互いに対向配置されたカバーと、カバー間に固定された光ファイバのアレイとを含む。詳細については、光ファイバアレイコネクタの既存のフェルール構造を参照されたい。光ファイバの光入射端面に反射膜が配置される。該反射膜は、光コア領域から離して配置され、又は光コア領域及び主光路領域の両方から離して配置される。加えて、反射膜はカバーの端面も覆い得る。要するに、フェルール基体内の光伝送媒体は、光ファイバに限定されるものではなく、光伝送媒体の端面(即ち、例えば光入射端面といった、相手フェルールに面する端面)に、光コア領域(又は、光コア領域及び主光路領域の両方)から離して、反射膜が形成される限り、代わりに光導波路又は別形態のフェルールを形成する光伝送媒体であってもよい。
【0044】
同じ発明概念に基づいて、この出願の一実施形態は更にコネクタを提供する。当該コネクタは、ハウジングと、この出願の前述の実施形態で提供されるフェルールとを含む。例えば、図1において、この出願のこの実施形態で提供されるコネクタの一形態例について、図1のMPOコネクタ20を参照し得る。MPOコネクタ20は、ハウジング21及びフェルール22を含む。フェルール22はハウジング21内に配置される。フェルール22は、図3から図10の実施形態で提供されるフェルール001とし得る。
【0045】
同じ発明概念に基づいて、この出願の一実施形態は更に光通信素子を提供する。当該光通信素子は、光通信素子本体と、この出願の前述の実施形態で提供されるフェルールとを含む。フェルールは光通信素子本体に接続される。一部のケースにおいて、光通信素子は、光通信素子本体とコネクタとを含む。コネクタは、この出願の前述の実施形態で提供されるフェルールを含む。フェルールは光通信素子本体に接続される。この場合、光通信素子本体は例えばボードとし得る。図11は、この出願の一実施形態に従った、光バックプレーンとボードとの間の接続の概略図の一例である。図11を参照するに、例えば、光通信素子は、ボード010及びコネクタ020を含む。ボード010は光通信素子本体として機能し、コネクタ020は、この出願の前述の実施形態で提供されるフェルールを含む。コネクタ020は、ボード010上に固定される。フェルールは、ボード010の通信ラインに接続される。一部の他の光通信素子では、当該一部の他の光通信素子の各々が別の光通信素子と組み立てられる必要がある場合にのみ、フェルールを光コネクタへと組み立てる必要がある。この場合、光通信素子本体は、光バックプレーン、光ファイババンドルバックプレーン、共パッケージモジュール、又はWSSモジュールとし得る。なおも図11を参照するに、例えば、別の光通信素子は、光バックプレーン030及びフェルール040を含む。光バックプレーン030は光通信素子本体として機能する。フェルール040は、共有光ファイバを用いて光バックプレーン030に接続される。
【0046】
同じ発明概念に基づいて、この出願の一実施形態は更に通信装置を提供する。例えば、当該通信装置は、ルータ、交換機、及びこれらに類するものとし得る。当該通信装置は、相手光通信素子(相手光通信素子は、図11の光バックプレーン030及びフェルール040を含む)と、前述の実施形態で提供される少なくとも1つの光通信素子とを含む。相手光通信素子は相手フェルール(例えば図11のフェルール040など)を含む。光通信素子(光通信素子は、図11のボード010及びコネクタ020を含む)のフェルール(例えば図11のコネクタ020のフェルールなど)が相手フェルール(例えば図11のフェルール040など)に接続される。
【0047】
図12aは、この出願の一実施形態に従った、通信装置のフェルール及び相手フェルールが組み合わせて使用されるシナリオの概略図の一例である。図12aのフェルール001aの構造は、図3のフェルール001の構造と同じである。フェルール001bの構造は、図10のフェルール001の構造と同じである。フェルール001a及びフェルール001bが互いに接続する。フェルール001bが相手フェルールとして機能し、フェルール001bの光ファイバがフェルール001aの第2表面上の反射防止膜に光を伝送するとき、フェルール001aのスルーホールの側壁によって囲まれた溝の底面(フェルール001aの反射防止膜がスルーホールの表面に露出され、フェルール001aから反射防止膜が除かれる場合に該スルーホールの底面がフェルール001aの第2表面である)と、フェルール001bの光出射面(フェルール001bの反射防止膜がフェルール001bの表面に露出され、フェルール001bに反射防止膜が備えられない場合に光出射面がフェルール001bの第2表面である)の底面(フェルール001aの反射防止膜がフェルール001aの表面に露出している場合、フェルール001aの底面はフェルール001aの第2表面である)との間のギャップは5μm以下である。例えば、該ギャップは、1μm、2μm、3μm、4μm、又は5μmである。これは、過度に大きいギャップに起因した光信号の低い伝送効率を回避する。同様に、フェルール001aが相手フェルールとして機能してフェルール001bに光信号を伝送する場合、図12aのギャップに対する要件は変わらない。図12bは、この出願の一実施形態に従った、通信装置のフェルール及び相手フェルールが組み合わせて使用されるシナリオの別の概略図の一例である。図12bのフェルール001c及びフェルール001dの構造は、図3のフェルール001の構造と同じである。フェルール001c及びフェルール001dが互いに接続するとき、図12bに示すギャップの要件は、どちらのフェルールが相手フェルールとして機能するかにかかわらず、図12aに示したギャップの要件と同じである。要するに、光通信素子のフェルールが相手光通信素子の相手フェルールと接続するとき、フェルールのスルーホールの側壁によって囲まれた溝の底面と相手フェルールの光出射面との間のギャップは5μm以下である。
【0048】
同じ発明概念に基づいて、この出願の一実施形態は更に、フェルールを準備する方法を提供する。フェルールの形態については、図3から図10に示したフェルールの特定の実装を参照されたい。図13aは、この出願の一実施形態で提供されるフェルール準備方法に従った、ステップS100の前にフェルール基体が光ファイバと接続する概略図である。図13aを参照するに、フェルール基体100の収容スルーホール101内に光ファイバ200が配置される。光ファイバ200の第2表面205が、フェルール基体100の第1表面102と揃えられる(あるいは、揃えられないこともある)。また、光ファイバ200とフェルール基体100との間の別の構成関係については、図3に示したフェルール基体001に対応する説明を参照されたい。図13bは、この出願の一実施形態で提供されるフェルール準備方法に従った、ステップS100の後に得られるフェルールの概略図である。図13bを参照するに、ステップS100にて、第2表面205上に反射防止膜301が形成され、反射防止膜301は代わりに第2表面205及び第1表面102の両方を覆ってもよい。図13cは、この出願の一実施形態で提供されるフェルール準備方法に従った、ステップS200の後に得られるフェルールの概略図である。ステップS200にて、反射防止膜301上に犠牲層305が形成される。対応する第2表面205上への犠牲層305の直交投影は、第2表面205の主光路領域を覆う(一部のケースにおいて、該直交投影は第2表面205の光コア領域のみを覆ってもよい)。さらに、対応する第2表面205上への犠牲層305の直交投影の面積は、第2表面205の面積よりも小さい。第1表面102上への犠牲層305の直交投影の面積はゼロである。犠牲層305は、例えば、熱によって粘着性が低下して反射防止膜301から剥がれる材料、又は微孔性材料など、容易に除去可能な材料で作製され得る。犠牲層305は、この分野で公知であって一般的に使用されている特定の材料で作製されてもよい。詳細をここで説明することはしない。図13dは、この出願の一実施形態で提供されるフェルール準備方法に従った、ステップS300の後に得られるフェルールの概略図である。図13dを参照するに、ステップS300にて、犠牲層305の表面上に接続層302が形成される。図13eは、この出願の一実施形態で提供されるフェルール準備方法に従った、ステップS400の後に得られるフェルールの概略図である。図13eを参照するに、ステップS400にて、接続層302の表面上に誘電体反射膜303が形成される。誘電体反射膜は、第1表面102及び第2表面205を覆う。図13fは、この出願の一実施形態で提供されるフェルール準備方法に従った、ステップS500の後に得られるフェルールの概略図である。図13fを参照するに、ステップS500にて、犠牲層305が除去される。換言すれば、犠牲層305が反射防止膜301から剥がされる。犠牲層305上に位置する接続層302の部分及び誘電体反射膜303の部分が、犠牲層305とともに除去される。斯くして、誘電体反射膜303が第2表面205の主光路領域と対向する各位置にスルーホール303hが形成される。
【0049】
誘電体反射膜303の具体的な被覆領域及び形態については、基準面M上への誘電体反射膜303の直交投影が基準面M上への第1表面102の直交投影を覆うとして、前述の実施形態でのフェルールの説明を参照されたい。互いに近接する誘電体反射膜303の表面と反射防止膜301の表面とが比較的良好な密着性を持つ場合、接続層302を形成するステップS300は省略され得る。他の一部のケースにおいて、犠牲層305を配置することに加えて、スルーホール303hを代わりに以下のように形成してもよい:先ず誘電体反射膜303の層全体を形成し、次いで、第2表面205の主光路領域に対向する位置で誘電体反射膜303をパターニングしてスルーホール303hを形成する。例えば、マスクを用いたエッチングによってスルーホール303hが形成される。あるいは、スルーホール303hは別の方法で形成される。他の一部のケースでは、誘電体反射膜303を形成する前に、先ず、比較的高い温度に耐えることができる例えばセラミック膜及び金属膜などの耐熱膜を形成してもよい。該耐熱膜上に誘電体反射膜303を形成した後に、犠牲層を除去して、耐熱膜及び誘電体反射膜を貫通するスルーホールを形成する(スルーホールの位置及び大きさについては、スルーホール303hを参照されたい)。他の一部のケースでは、反射防止膜301を形成するステップS100も省略され得る。スルーホール303hが形成された後、反射防止膜が光ファイバ200の第2表面205の面に配置され、且つ第2表面205上への反射防止膜の直交投影が第2表面の主光路領域を覆うとして、反射防止膜は堆積又は別の方法でスルーホール303h内に形成される。また、以下の条件が満たされる限り、すなわち、相手フェルールに面する光伝送媒体の表面が主光路領域を含むこと、及び相手フェルールに面する光伝送媒体の表面上への反射膜の直交投影が主光路領域を覆わないこと、という条件がみたされる限り、光ファイバ200は代わりに導波路又は異なる形態のフェルールを形成する他の形態の光伝送媒体で置き換えられてもよい。
【0050】
また、反射防止膜301、接続層302、及び誘電体反射膜303などの他のパラメータ(例えば材料、大きさ、及び位置など)については、この出願の前述の実施形態でのフェルールにおける対応する構造の説明を参照されたい。
【0051】
以上の説明は、単にこの出願の特定の実装であり、この出願の保護範囲を限定する意図ではない。この出願にて開示された技術範囲内で当業者が容易に考え付く如何なる変更又は置換もこの出願の保護範囲に入るものである。従って、この出願の保護範囲は請求項の保護範囲に従うものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9a
図9b
図10
図11
図12a
図12b
図13a
図13b
図13c
図13d
図13e
図13f