IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋ゴム工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-タイヤ加硫金型 図1
  • 特許-タイヤ加硫金型 図2
  • 特許-タイヤ加硫金型 図3
  • 特許-タイヤ加硫金型 図4
  • 特許-タイヤ加硫金型 図5
  • 特許-タイヤ加硫金型 図6
  • 特許-タイヤ加硫金型 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】タイヤ加硫金型
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/02 20060101AFI20230829BHJP
   B29C 35/02 20060101ALI20230829BHJP
   B29L 30/00 20060101ALN20230829BHJP
【FI】
B29C33/02
B29C35/02
B29L30:00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019196600
(22)【出願日】2019-10-29
(65)【公開番号】P2021070175
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【弁理士】
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(72)【発明者】
【氏名】川端 万里子
【審査官】▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-109441(JP,A)
【文献】特開昭59-055730(JP,A)
【文献】実開昭61-105115(JP,U)
【文献】特開2011-031519(JP,A)
【文献】特開2014-133402(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/02
B29C 35/02
B29L 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤを成型するタイヤ成型面と、前記タイヤ成型面に対して凹状に形成された取り付け凹部と、表側に標識形成部が形成されたステンシルプレートとが設けられ、前記取り付け凹部に前記ステンシルプレートが配置されたタイヤ加硫金型において、
前記取り付け凹部の底面と前記ステンシルプレートとの間に配置されたスペーサと、少なくとも前記ステンシルプレートと前記スペーサとを連結する第1連結部材と、前記スペーサと前記取り付け凹部とを連結する第2連結部材とが設けられ
前記ステンシルプレート及び前記スペーサがそれぞれ1枚の板状の部材であり、
前記標識形成部が前記ステンシルプレートの表側の面に形成された凹部であり、前記ステンシルプレートの裏側の面における前記標識形成部に対応する位置に膨出部が形成され、
前記スペーサに、前記ステンシルプレート側への凸部と、前記凸部に対する凹部とが形成され、
前記スペーサの前記凸部が、前記ステンシルプレートの裏側の面に接し、前記ステンシルプレートと前記スペーサが前記凸部において前記第1連結部材により連結され、
前記スペーサの前記凹部が、前記標識形成部の裏側の場所に形成され、
前記スペーサの前記凹部の深さが前記ステンシルプレートの前記膨出部の膨出高さ以上であり、
前記第1連結部が、少なくとも前記ステンシルプレートを貫通し、前記ステンシルプレート側から前記スペーサ側へ向かう方向に入ったねじであり、前記第2連結部が、前記スペーサを貫通し、前記スペーサ側から前記取り付け凹部の前記底面側へ向かう方向に入ったねじである
ことを特徴とする、タイヤ加硫金型。
【請求項2】
前記取り付け凹部の内側に前記ステンシルプレートが配置された、請求項1に記載のタイヤ加硫金型。
【請求項3】
前記第1連結部材が前記ステンシルプレートと前記スペーサのみを連結している、請求項1又は2に記載のタイヤ加硫金型。
【請求項4】
前記スペーサは前記ステンシルプレートよりも面積が小さい、請求項1~3のいずれか1項に記載のタイヤ加硫金型。
【請求項5】
前記スペーサは前記ステンシルプレートよりも硬度が高い、請求項1~4のいずれか1項に記載のタイヤ加硫金型。
【請求項6】
前記スペーサは前記ステンシルプレートよりも熱膨張率が小さい、請求項1~5のいずれかに記載のタイヤ加硫金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタイヤ加硫金型に関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤのサイド部には、メーカー名、製造工場、サイズ、製造週、製造年等を表す標識が形成されている。標識は空気入りタイヤのサイド部の表面上に凹又は凸として形成されている。
【0003】
このような標識を形成するために、標識を形成するための凹凸のあるステンシルプレートが、タイヤ加硫金型に設けられている。具体的には、タイヤ加硫金型を構成しているサイドプレート等のタイヤ成型面に凹部が形成され、その凹部内にステンシルプレートが配置されている。特許文献1や特許文献2に記載されているように、ステンシルプレートはネジで凹部内に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-172660号公報
【文献】特開2014-133402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、空気入りタイヤのサイド部の標識は頻繁に変更されるため、ステンシルプレートは頻繁に交換される。ステンシルプレートの交換が繰り返されるうちに、サイドプレート等の凹部のネジ穴が変形してしまうことがある。ネジ穴が変形すると、サイドプレート等を交換しなければならなくなる。
【0006】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、ステンシルプレートの交換が繰り返し行われても支障が生じにくいタイヤ加硫金型を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は、タイヤを成型するタイヤ成型面と、前記タイヤ成型面に対して凹状に形成された取り付け凹部と、表側に標識形成部が形成されたステンシルプレートとが設けられ、前記取り付け凹部に前記ステンシルプレートが配置されたタイヤ加硫金型において、前記取り付け凹部の底面と前記ステンシルプレートとの間に配置されたスペーサと、少なくとも前記ステンシルプレートと前記スペーサとを連結する第1連結部材と、前記スペーサと前記取り付け凹部とを連結する第2連結部材とが設けられ、前記ステンシルプレート及び前記スペーサがそれぞれ1枚の板状の部材であり、前記標識形成部が前記ステンシルプレートの表側の面に形成された凹部であり、前記ステンシルプレートの裏側の面における前記標識形成部に対応する位置に膨出部が形成され、前記スペーサに、前記ステンシルプレート側への凸部と、前記凸部に対する凹部とが形成され、前記スペーサの前記凸部が、前記ステンシルプレートの裏側の面に接し、前記ステンシルプレートと前記スペーサが前記凸部において前記第1連結部材により連結され、前記スペーサの前記凹部が、前記標識形成部の裏側の場所に形成され、前記スペーサの前記凹部の深さが前記ステンシルプレートの前記膨出部の膨出高さ以上であり、前記第1連結部が、少なくとも前記ステンシルプレートを貫通し、前記ステンシルプレート側から前記スペーサ側へ向かう方向に入ったねじであり、前記第2連結部が、前記スペーサを貫通し、前記スペーサ側から前記取り付け凹部の前記底面側へ向かう方向に入ったねじであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
上記のタイヤ加硫金型によれば、ステンシルプレートの交換が繰り返し行われても、サイドプレートの交換が必要になる等の支障が生じにくい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態のタイヤ加硫金型の断面図。
図2】実施形態のサイドプレートを金型内側から見た図。
図3】実施形態の取り付け凹部、スペーサ及びステンシルプレートの断面図。図2のX-X断面図。なおこの図において標識形成凹部の数及び形状は図2に対して簡略化してある。
図4図3の取り付け凹部、スペーサ及びステンシルプレートを分解して示した図。
図5】実施形態のタイヤ加硫金型で成型された空気入りタイヤの部分側面図。
図6】変更例の取り付け凹部、スペーサ及びステンシルプレートの断面図。図2のX-Xに相当する位置での断面図。
図7図6の取り付け凹部、スペーサ及びステンシルプレートを分解して示した図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に本実施形態のタイヤ加硫金型10を示す。タイヤ加硫金型10は、円周状に並べられた複数のセクター12と、複数のセクター12が形成する円周の軸方向両側に設けられた一対のサイドプレート14と、同じく一対のビードリング16とを備えている。サイドプレート14及びビードリング16は前記軸方向から見て円形である。
【0011】
セクター12、サイドプレート14及びビードリング16は、空気入りタイヤ(以下「タイヤ」)を成型するための成型面12a、14a、16aを有する成型部材である。複数のセクター12の成型面12aは主にタイヤのトレッド部を、一対のサイドプレート14の成型面14aは主にタイヤのサイド部を、一対のビードリング16の成型面16aは主にタイヤのビード部を、それぞれ成型する。
【0012】
セクター12の材質は、限定されないが、例えばアルミニウム又はアルミニウム合金(例えばAl-Cu系、Al-Mg系、Al-Mn系、Al-Si系の合金)である。またサイドプレート14及びビードリング16の材質は、限定されないが、例えば、一般構造用圧延鋼材(例えばSS400)等の鋼材である。セクター12、サイドプレート14、ビードリング16は、加硫成型時には、図示しない電気ヒータや高温蒸気により加硫温度(例えば130~200℃)に熱せられる。
【0013】
図1図4に示すように、サイドプレート14にはステンシルプレート30が設けられている。ステンシルプレート30の取り付けのための構造として、サイドプレート14には、成型面14aに対して凹状の取り付け凹部20(図4参照)が形成されている。この取り付け凹部20内にステンシルプレート30とスペーサ40とが設けられている。スペーサ40は、取り付け凹部20の底面21とステンシルプレート30との間に設けられている。
【0014】
ステンシルプレート30は、タイヤの表面を成型する表面33と、その裏面34(図4参照)とを有する、板状の部材である。ステンシルプレート30の材質は、限定されないが、例えばアルミニウム又はアルミニウム合金である。ステンシルプレート30の厚みt1(図4参照)は例えば0.4~0.6mmである。図2に示すように、ステンシルプレート30は、表面33側から見ると、サイドプレート14の周方向に沿って湾曲するように延長された細長い形状をしている。
【0015】
ステンシルプレート30の延長方向中央付近の表面33には、標識形成部としての複数の凹部(以下「標識形成凹部31」)が並べて形成されている。これらの標識形成凹部31は、図5に示すようにタイヤTのサイド部に標識Mを形成するための凹部である。標識Mは、文字、記号、図形等が並べられて形成されたもので、全体でメーカー名、製造工場、サイズ、製造週、製造年等の一部又は全部を表すものである。ステンシルプレート30を表面33側から見たとき(つまり図2を見たとき)の複数の標識形成凹部31は、全体として、標識Mが反転した形となっている。
【0016】
標識形成凹部31はプレス加工によって平坦な板状部材の一部を陥没させる形で形成されている。そのため、ステンシルプレート30の裏面34側には、標識形成凹部31に対応する膨出部32が現れている。標識形成凹部31の深さt2(図4参照)は例えば0.2~0.8mmであり、膨出部32の膨出の高さは標識形成凹部31の深さと同等である。
【0017】
ステンシルプレート30の延長方向両側には、ステンシルプレート30を貫通するねじ孔35が形成されている。ねじ孔35は、スペーサ40側に向かって徐々に縮径する円形の孔であり、皿ねじの頭部が収まる形をしている。
【0018】
スペーサ40は、ステンシルプレート30側から見て、ステンシルプレート30と同じ形の板状の部材である。スペーサ40の材質は、限定されないが、例えばSUS631等のステンレスである。常温すなわち5~35℃において、スペーサ40の面積(成型面14aに平行な面の面積)は、ステンシルプレート30の面積と同じであっても良いが、ステンシルプレート30の面積より小さくても良い。なお図3には、スペーサ40の面積がステンシルプレート30の面積より小さい例が示されている。
【0019】
スペーサ40の延長方向両側には、ステンシルプレート30側へ凸となった凸部42が形成されている。凸部42のステンシルプレート30側の面は、図3に示すようにステンシルプレート30の裏面34に接している。また、2つの凸部42の間には、凸部42に対して凹となった凹部41が形成されている。また、スペーサ40の裏面(取り付け凹部20の底面21側の面)44は、全体が1つの平面になっており、図3に示すように取り付け凹部20の底面21に接している。スペーサ40の凸部42での厚みt3(図4参照)は例えば1.1~1.3mmであり、スペーサ40の凹部41での厚みt4(図4参照)は例えば0.5~0.7mmである。
【0020】
凹部41の場所は、ステンシルプレート30の標識形成凹部31の裏側の場所、つまりステンシルプレート30の膨出部32と対向する場所である。また、凹部41の深さはステンシルプレート30の膨出部32の膨出高さ以上となっている。そのためステンシルプレート30の裏面34とスペーサ40の凸部42とが接触した状態において、ステンシルプレート30の膨出部32がスペーサ40の凹部41の中に収まっている。膨出部32と凹部41とは接触していても良いし接触していなくても良い。
【0021】
スペーサ40の延長方向両側には、スペーサ40を貫通する第1ねじ孔45が形成されている。この第1ねじ孔45はスペーサ40の凸部42に形成されている。また、この第1ねじ孔45はステンシルプレート30のねじ孔35と上下方向(ステンシルプレート30の表面33に垂直な方向)に一致する場所に形成されている。さらに、スペーサ40の凹部41の2箇所には、上記の第1ねじ孔45とは別の第2ねじ孔46も設けられている。第2ねじ孔46もスペーサ40を貫通している。
【0022】
スペーサ40は、ステンシルプレート30よりも硬度が高いことが好ましい。また、スペーサ40は、ステンシルプレート30よりも熱膨張率が小さいことが好ましい。上で例示したようにスペーサ40がステンレス製でステンシルプレート30がアルミニウム製であれば、スペーサ40は、ステンシルプレート30よりも硬度が高く熱膨張率が小さいこととなる。
【0023】
図3に示すように、サイドプレート14の取り付け凹部20内には、ステンシルプレート30及びスペーサ40が収まっている。そして、ステンシルプレート30の表面33と、サイドプレート14の成型面14aとが面一となっている。なお取り付け凹部20の深さt5(図4参照)は例えば1.5~1.9mmである。
【0024】
取り付け凹部20は、その底面21に垂直な方向から見て、ステンシルプレート30と同じ形をしている。取り付け凹部20の開口端20a(つまり、ステンシルプレート30が嵌まる位置、換言すればステンシルプレート30の縁と接触する位置)での面積は、限定されないが、例えば常温においてスペーサ40の面積より大きくステンシルプレート30の面積より小さい。
【0025】
この例の面積の関係であれば、作業者が常温において取り付け凹部20にステンシルプレート30を取り付ける際、取り付け凹部20より面積の大きなステンシルプレート30を、取り付け凹部20に、力を入れて押して入れることになる。押し込まれたステンシルプレート30は塑性変形して取り付け凹部20に入ることとなり、ステンシルプレート30と取り付け凹部20の開口端20aとの間に隙間が生じないことになる。
【0026】
なお、取り付け凹部20の開口端20aでの面積が、常温においてステンシルプレート30の面積より大きくても良い。その場合、常温では取り付け凹部20の開口端20aとステンシルプレート30との間に僅かな隙間が生じている。しかし、加硫温度においては、ステンシルプレート30が膨張し、取り付け凹部20の開口端20aでの面積とステンシルプレート30の面積とが同じになる。それにより、常温において生じていたステンシルプレート30と取り付け凹部20の開口端20aとの隙間が、加硫温度において閉じることになる。
【0027】
図4に示すように、取り付け凹部20の延長方向両側の底面21には第1下穴25が形成されている。この第1下穴25は、ステンシルプレート30のねじ孔35及びスペーサ40の第1ねじ孔45と上下方向に一致する場所に形成されている。
【0028】
さらに、取り付け凹部20の底面21における、上記の2つの第1下穴25の間の場所に、上記の第1下穴25とは別の2つの第2下穴26が形成されている。この第2下穴26は、スペーサ40の第2ねじ孔46と一致する場所に形成されている。
【0029】
ステンシルプレート30のねじ孔35、スペーサ40の第1ねじ孔45及び取り付け凹部20の第1下穴25には、第1連結部材としての1本の第1ねじ50が通されている。それにより、ステンシルプレート30がスペーサ40に連結され、さらに取り付け凹部20にも連結されている。
【0030】
第1ねじ50は皿ねじであり、その頭部52がステンシルプレート30のねじ孔35に収まり、頭部52の面52aとステンシルプレート30の表面33とが面一となっている。また、第1ねじ50のねじ部53がスペーサ40の第1ねじ孔45及び取り付け凹部20の第1下穴25と螺合している。
【0031】
また、スペーサ40の第2ねじ孔46及び取り付け凹部20の第2下穴26には、第2連結部材としての1本の第2ねじ51が通されている。それにより、スペーサ40が取り付け凹部20に連結されている。
【0032】
以上の構造のタイヤ加硫金型10で空気入りタイヤの加硫成型が行われる際は、図1のようなタイヤ加硫金型10の内部に未加硫タイヤ(不図示)がセットされる。そして、セットされた未加硫タイヤの内側に配置されているブラダー(不図示)が膨張し、未加硫タイヤの表面が金型内面(成型部材の成型面)に押し当てられる。この状態でタイヤ加硫金型10のサイドプレート14等が上記の加硫成型温度に保持され、未加硫タイヤが加硫成型される。
【0033】
図5に示すように、加硫成型後のタイヤTには、ステンシルプレート30によって標識Mが形成される。上記のようにステンシルプレート30の標識形成凹部31は凹部であるため、加硫成型後のタイヤTには標識が凸部として形成される。
【0034】
そして、タイヤの標識を変更するときは、作業者は、第1ねじ50をステンシルプレート30のねじ孔35、スペーサ40の第1ねじ孔45及び取り付け凹部20の第1下穴25から抜き、ステンシルプレート30のみを外す。そして、作業者は、新しいステンシルプレート30を取り付け凹部20内のスペーサ40の上に配置し、第1ねじ50をステンシルプレート30、スペーサ40及び取り付け凹部20に通し、新しいステンシルプレート30を取り付ける。
【0035】
このとき、作業者はステンシルプレート30を交換するために第2ねじ51を外してスペーサ40を外す必要がない。ただし、ステンシルプレート30の交換を繰り返すうちにスペーサ40が変形してきた場合には、作業者は第2ねじ51を抜いてスペーサ40を外し、新しいスペーサ40に交換する。
【0036】
以上の実施形態によれば、取り付け凹部20の底面21とステンシルプレート30との間にスペーサ40が挟まれているため、作業者がステンシルプレート30の取り付けの際に第1ねじ50を強く締めても、その力がスペーサ40全体に分散される。そのため、第1ねじ50と取り付け凹部20の第1下穴25との間に大きな力が働きにくく、第1下穴25が変形しにくい。
【0037】
また、仮に第1下穴25が変形したとしても、スペーサ40の第1ねじ孔45が変形していなければ、作業者はステンシルプレート30をスペーサ40に固定することができ、それによりステンシルプレート30をサイドプレート14に取り付けることができる。
【0038】
また、本実施形態によれば、ステンシルプレート30を交換する際にスペーサ40を外す必要がなく、スペーサ40を取り付け凹部20に連結している第2ねじ51を外す必要がないため、取り付け凹部20の第2下穴26が変形しにくい。
【0039】
これらのことから、ステンシルプレート30の交換が繰り返し行われても、サイドプレート14の交換が必要になる等の支障が生じにくい。
【0040】
また、ステンシルプレート30の標識形成凹部31が凹部であり、タイヤには標識が凸部として形成されるため、標識の視認性が良い。また、標識を凸部として形成すべきという近年の要求があり、その要求に応えることができる。
【0041】
また、スペーサ40に、ステンシルプレート30側への凸部42と、凸部42に対する凹部41とが形成され、凸部42が第1ねじ50によるステンシルプレート30との連結部に形成され、凹部41がステンシルプレート30の標識形成凹部31の裏側の場所に形成されている。この構成のため、スペーサ40の凹部41の内側にステンシルプレート30の膨出部32が収まることとなる。そのため、ステンシルプレート30の膨出部32がスペーサ40に押されてステンシルプレート30が浮くことを防ぐことができる。
【0042】
また、スペーサ40の面積がステンシルプレート30の面積より小さいという関係のため、スペーサ40を取り付け凹部20に出し入れすることが容易な上、ステンシルプレート30と取り付け凹部20の開口端20aとの間に隙間が生じにくい。
【0043】
また、スペーサ40の硬度がステンシルプレート30の硬度より高いという関係のため、スペーサ40が変形しにくく長期の使用に耐えられる上、ステンシルプレート30の取り付け凹部20への取り付け及び取り外しが容易である。
【0044】
また、スペーサ40の熱膨張率がステンシルプレート30の熱膨張率より小さいという関係のため、加硫成型時にステンシルプレート30が膨張してステンシルプレート30が取り付け凹部20の開口端20aと密着でき、また、スペーサ40が熱膨張して取り付け凹部20の内壁に当たり取り付け凹部20を損傷させることを防ぐことができる。
【0045】
以上の実施形態は例示であり、発明の範囲は以上の実施形態に限定されない。以上の実施形態に対し、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、様々な変更を行うことができる。以下では複数の変更例について説明するが、上記実施形態に対して、複数の変更例のうちいずれか1つを適用しても良いし、複数の変更例のうちいずれか2つ以上を組み合わせて適用しても良い。
【0046】
(変更例1)
図6及び図7に示す変更例では、上記実施形態のものと同じステンシルプレート30が使用されているが、スペーサ及び取り付け凹部は上記実施形態と異なる。
【0047】
この変更例のスペーサ140では、上記実施形態におけるスペーサ40の第1ねじ孔45の代わりに、図7に示すようにスペーサ40を貫通せず途中で終端しているねじ穴145が形成されている。また、この変更例の取り付け凹部120には、上記実施形態の取り付け凹部20の第1下穴25に相当する穴が存在しない。
【0048】
そして、スペーサ140が第2ねじ51で取り付け凹部120に連結されている点は上記実施形態と同じだが、本実施形態では第1連結部材としての第1ねじ150がステンシルプレート30とスペーサ140のみを連結している。
【0049】
この変更例では、第1ねじ150がサイドプレート14に達していないので、ステンシルプレート30の交換が頻繁に行われたとしても、そのことがサイドプレート14に影響せず、サイドプレート14が損傷しにくい。
【0050】
(変更例2)
ステンシルプレート30が設けられる成型部材はサイドプレート14に限定されない。例えばビードリング16に上記実施形態と同様に取り付け凹部20、スペーサ40及びステンシルプレート30が設けられても良い。
【0051】
(変更例3)
ステンシルプレートの標識形成部は、上記実施形態とは逆に凸部として形成されていても良い。ステンシルプレートの標識形成部が凸部の場合、タイヤのサイド部の標識は凹部として形成される。
【0052】
(変更例4)
金型は、上記実施形態のようにセクター12、サイドプレート14及びビードリング16を備えたものに限定されない。例えば、上型及び下型からなり、トレッド部を含むタイヤ外面の全体を上型及び下型の2つの型で成型する金型が知られている。そのような金型において、上記実施形態と同様の構成でステンシルプレートが設けられても良い。
【0053】
(変更例5)
少なくともステンシルプレート30とスペーサ40とを連結する第1連結部材は、これらを連結できるものであれば良く、上記実施形態のようなねじに限定されない。また、スペーサ40と取り付け凹部20とを連結する第2連結部材も、上記実施形態のようなねじに限定されない。
【符号の説明】
【0054】
T…タイヤ、M…標識、10…タイヤ加硫金型、12…セクター、12a…成型面、14…サイドプレート、14a…成型面、16…ビードリング、16a…成型面、20…取り付け凹部、20a…開口端、21…底面、25…第1下穴、26…第2下穴、30…ステンシルプレート、31…標識形成凹部、32…膨出部、33…表面、34…裏面、35…ねじ孔、40…スペーサ、41…凹部、42…凸部、44…裏面、45…第1ねじ孔、46…第2ねじ孔、50…第1ねじ、51…第2ねじ、52…頭部、53…ねじ部、120…取り付け凹部、140…スペーサ、145…ねじ穴、150…第1ねじ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7