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特許7338105カポックの木の花抽出物、及びそれを含有する美容、医薬又は皮膚科用組成物
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  • 特許-カポックの木の花抽出物、及びそれを含有する美容、医薬又は皮膚科用組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】カポックの木の花抽出物、及びそれを含有する美容、医薬又は皮膚科用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/185 20060101AFI20230829BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALI20230829BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20230829BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230829BHJP
   A61P 39/06 20060101ALI20230829BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230829BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230829BHJP
   A61K 31/353 20060101ALI20230829BHJP
   A61K 31/05 20060101ALI20230829BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20230829BHJP
   A61K 133/00 20060101ALN20230829BHJP
【FI】
A61K36/185
A61K8/9789
A61Q19/00
A61P17/00
A61P39/06
A61P29/00
A61P43/00 107
A61K31/353
A61K31/05
A61Q19/08
A61K133:00
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020554935
(86)(22)【出願日】2018-12-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-03-25
(86)【国際出願番号】 EP2018086754
(87)【国際公開番号】W WO2019122408
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-12-14
(31)【優先権主張番号】1763152
(32)【優先日】2017-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】520223826
【氏名又は名称】ラボラトワール エクスパンサイエンス
【氏名又は名称原語表記】LABORATOIRES EXPANSCIENCE
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ルクレール-ビアンフェ, ソフィー
(72)【発明者】
【氏名】ブレディフ, ステファニー
【審査官】横田 倫子
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-031528(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107308039(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106806161(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105494738(CN,A)
【文献】Pharma Biol., 2011, Vol.49, p.569-576
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/00
A61K 8/00
A61Q 19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥抽出物の総重量に対してポリフェノール少なくとも15重量%、及び乾燥抽出物の総重量に対してカテキン当量として表されるオリゴプロアントシアニジン(OPC)少なくとも15重量%を含む、ボンバクス・コスタツムの花のポリフェノール豊富な抽出物。
【請求項2】
ボンバクス・コスタツムの萼抽出物である、請求項1に記載の抽出物。
【請求項3】
乾燥抽出物の総重量に対してポリフェノール少なくとも20重量%を含む、請求項1又は2に記載の抽出物。
【請求項4】
乾燥抽出物の総重量に対して、有機酸を少なくとも6重量%さらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の抽出物。
【請求項5】
前記有機酸が、酢酸、リンゴ酸、乳酸、クエン酸又はこれらの混合物である、請求項4に記載の抽出物。
【請求項6】
乾燥抽出物の総重量に対して、ルチン当量として表されるフラボノイドを少なくとも5重量%さらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の抽出物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の抽出物の調製のための方法であって、水中のグリコールの割合が30~90%の間の範囲である水/グリコールの二成分混合物の中から選択される溶媒における少なくとも1つの固体/液体抽出ステップを含む、方法。
【請求項8】
以下の連続ステップ:
a)ボンバクス・コスタツムの花を粉砕するステップ、
b)水中のグリコールの割合が30~90%の間の範囲である水/グリコールの二成分混合物の中から選択される溶媒中における、粉砕された花の固体/液体抽出ステップ、
c)デカンテーション及び/又は遠心分離及び/又は連続的な濾過による固相及び液相の分離ステップ、並びに
d)必要ならば、ステップc)で得られた抽出物の乾燥ステップ
を含むことを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記固体/液体抽出溶媒が、水中のグリコールの割合が50~90%の間の範囲である水/グリコールの二成分混合物から選択されることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記グリコールが、プロパンジオール又はプロピレングリコールであることを特徴とする、請求項7~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
活性成分として、請求項1~6のいずれか一項に記載の抽出物、及び適切な賦形剤を含む組成物。
【請求項12】
皮膚における炎症反応又は酸化反応を防止するために使用される、請求項1~6のいずれか一項に記載の抽出物。
【請求項13】
皮膚における炎症反応又は酸化反応を防止するために使用される、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
皮膚における抗しわ又は引き締めのために使用される、請求項1~6のいずれか一項に記載の抽出物。
【請求項15】
皮膚における抗しわ又は引き締めのために使用される、請求項11に記載の組成物。
【請求項16】
乾燥皮膚、高齢又は光老化皮膚、光感受性皮膚及び皮膚老化を防止又は治療するために使用される、請求項1~6のいずれか一項に記載の抽出物。
【請求項17】
乾燥皮膚、高齢又は光老化皮膚、光感受性皮膚及び皮膚老化を防止又は治療するために使用される、請求項11に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カポックの木の花抽出物、特にボンバクス・コスタツム(Bombax costatum)の花抽出物を含む組成物に関する。該組成物は、有利には、美容、医薬又は皮膚科用である。本発明は、カポックの木の花抽出物の、好ましくはカポックの木の萼抽出物の抽出のための方法、並びに前記方法によって得られる抽出物も包含する。本発明は、皮膚、粘膜又は皮膚付属器の障害又は疾患の防止又は治療における、及び血管障害の防止又は治療における使用のための、こうした組成物又はこうした抽出物にも関する。最終的に、本発明は、こうした組成物又はこうした抽出物を投与することからなる、状態又は外観を改善することを考慮した皮膚、皮膚付属器又は粘膜のための美容ケア方法に関する。
【0002】
カポックの木
カポックの木、特にボンバクス・コスタツムは、パンヤ科(APG:アオイ科)のメンバーである。ボンバクス・コスタツムは、ボンバクス・アンドリエウイ(Bombax andrieui)又はボンバクス・ホウアルヂイ(Bombax houardii)とも呼ばれる。ボンバクス・コスタツムは、より一般的には、赤色の花をつける絹綿の木、チーズを作る木、赤カポックの木、絹綿の木、ガンビア絹綿の木、Vaka(More語で)又はBoumbou(Jula語で)として知られている。
【0003】
ボンバクスは、8種:アフリカに2種、アジアに5種及びオセアニアに1種を含む汎熱帯性の属であり、はるばるソロモン諸島にまで見出される。かつて、ボンバクス属は、はるか広範囲に分布していた。ボンバクス・コスタツムは、時々、ボンバクス・ブオノポゼンス(Bombax buonopozense)と同種とされている。
【0004】
ボンバクス・コスタツムの使用
一般に、アフリカでは、ボンバクス・コスタツムは、比較的共通して食物供給源である樹木であり:葉は、バオバブの木と同じ方法で乾燥され、食されており、花、特に萼も食用である。
【0005】
若木の塊根は、ウシによって食される。
【0006】
ボンバクス・コスタツムは、時々神木とされており、呪術的及び宗教的に多く使用されている(Sanou 2013)。
【0007】
ブルキナファソでは、樹皮は、歯を赤色に染色するために使用される。花は、共通して、野菜として料理及び食される多肉質の萼のために収集される。葉も野菜として使用される。未熟果実及び時々花は、増粘剤としてソースに添加される。若い未熟果実は、飲料の調製においても使用される。種子の油は食用である。花は、花の蜜生成品質で非常に評価されている。
【0008】
樹木のいくつかの部分は、様々な疾患に対する伝統薬中に使用される。根は、粉末に粉砕され、ソースとして食される又はてんかんに対する浴として適用される。樹皮調製物は、治癒を促進するために創傷に適用される。
【0009】
セネガル及びシエラ・レオネでは、利尿特性は、茎及び根の皮に起因するとしている。
【0010】
樹皮は、トリコモナス症、アメーバ症、及び赤痢の他の形態に対する薬物療法を調製するためにも使用される。茎皮の抽出物中の浴は、精神異常に備えて入浴される。茎皮の粉末は、頭痛のための燻蒸消毒によって適用される薬の組成物の中に使用される。茎皮の湿布は、頭痛及び歯痛を治療するために頭部に適用することができる。
【0011】
葉は、白帯下及び下痢を治療するために他の薬用植物と一緒に処方される。粉砕された葉の抽出物は、出産中の問題に対して飲料として服用される。粉砕された葉抽出物中の浴は、けいれんを防止するために反復して入浴される。乾燥された葉で作られたハーブ茶は、麻疹を防止するために飲用又は身体に適用される。葉及び茎又は根の皮の煎じ汁は、重度の浮腫のための飲料として服用される。葉及び若い苗条の煎じ汁は、黄疸を治療するために服用される。葉の煎じ汁は、くる病に対して小児に飲料としても与えられる。
【0012】
植物の異なる部分は、泌乳を促進するために及び疲労のための強壮薬として使用される。皮膚は、ハンセン病に対してシアバターと混合された葉を擦り込まれる。
【0013】
マリでは、樹皮及び葉の煎じ汁は他の植物の一部と一緒に、月経問題のために服用される。葉は軟化薬であり、葉の煎じ汁中の温浴は、発熱を有する患者のために、特に小児において処方することができる。葉は鉤虫のための治療として、花はサナダムシのための治療としても使用される。
【0014】
ニジェールでは、果実は、20~25%のタンパク質を含有することが見出された。種子は、高い油含有量(20%)を有する。油の脂肪酸組成は、以下の通りである:カプロン酸3%、カプリル酸7%、パルミチン酸8%、ステアリン酸3%、オレイン酸49%、リノール酸13%、アラキジン酸3%、リグノセリン酸1~2%、及び他13%。粘液質の花抽出物は、主に糖(ラムノース及びアラビノース)からなり;粘液質の花抽出物は、粒子パネルのための適当な接着剤を成す。
【0015】
このデータの全ては、Dr.Lassina SANOU、Water and Forests Directorによる民族植物学レポートから抜き出されている。彼は、ワガドゥグーを本拠地とするブルキナファソ国立森林種子センター(CNRS)で、Ministry of the Environment and Sustainable Developmentのために働いている(2014年12月)。
【0016】
OPC
OPC又はプロシアニジンとしてより周知されているオリゴプロアントシアニジンオリゴマーは、多くの野菜に見出されるフェノール化合物である。OPCは、タンニンの前駆体のフラボノイドのポリマーである。プロシアニジンを構成するモノマーは、カテキン及びエピカテキンである。プロシアニジンは、そのため、2回、3回、4回又は5回反復される、カテキン(式Ia及びIb)又はエピカテキン(式IIa及びIIb)と呼ばれる同じ反復する基で構成される。
【0017】
【化1】
【0018】
6回の反復を超えると、分子は、プロアントシアニジンポリマーと呼ばれ、より高い分子量を有する。プロアントシアニジンポリマーは、非常に弱く吸収され、結果として、非常に弱い生物学的活性を有するのみである。
【0019】
OPCは、アンジオテンシン変換酵素、エラスターゼ及びトリプシンの阻害剤として、並びに結合組織のコラーゲンへの結合によって及びコラゲナーゼの阻害によって、血管壁の保護を提供する、したがって、壁の無傷性、抵抗性及び弾力性を改善するとして、OPCの血管保護特性で知られている。OPCは、OPCの抗酸化、抗フリーラジカル、抗炎症及び抗ウイルスの特性でも知られている。
【0020】
[本発明の記載]
本出願人は、カポックの木の、特にボンバクス・コスタツムの花抽出物、好ましくは萼抽出物が、現在まで記載されたことがない美容的及び皮膚科的特性を所有することを発見した。さらに特に、カポックの木の、特にボンバクス・コスタツムのこうした花抽出物、特に萼抽出物が、該抽出物の特定の特性のため、それ自体使用されるのは、これが初めてである。
【0021】
本発明の目的は、カポックの木の花の、好ましくはカポックの木の萼のポリフェノール豊富な抽出物であり、カポックの木は、特にボンバクス・コスタツムである。有利には、本発明の目的は、ボンバクス・コスタツムの花の、好ましくはボンバクス・コスタツムの萼のポリフェノール豊富な抽出物である。
【0022】
植物学において、花は、全体である場合に外側から内側に向かって、以下を含む植物の部分である:
萼片からなる萼;
花弁からなる花冠;
雄蕊群、すなわち、花粉を生成する雄しべ(雄性部分);及び
心皮(雌性部分)からなる雌しべ又は雌ずい。
【0023】
本発明の範囲内で、「花」という用語は、少なくとも花冠及び萼を含む。花は、全体でもあり得る。
【0024】
本発明による抽出物は、好ましくは、カポックの木の萼の抽出物、より有利にはボンバクス・コスタツムの萼の抽出物である。
【0025】
「ポリフェノール豊富な抽出物」という用語は、ポリフェノールから主に又は基本的になる抽出物を意味すると理解される。
【0026】
本発明による抽出物は、有利には、乾燥抽出物の総重量に対してポリフェノール少なくとも15重量%、より有利には少なくとも20重量%を含み;本発明による抽出物は、液体抽出物1ml当たりポリフェノール少なくとも2.5mg(没食子酸当量で)である。百分率は、前記乾燥抽出物(乾燥剤の任意の添加前)の総重量と比較して与えられる。有利には、本発明による抽出物は、乾燥抽出物の総重量に対してポリフェノール15重量%~40重量%、より有利には20重量%~40重量%を含む。
【0027】
有利には、本発明による抽出物は、前記抽出物の総重量に対してカテキン当量として表される、OPC少なくとも10重量%、より有利には少なくとも13重量%、いっそう有利には少なくとも15重量%、すなわち、液体抽出物1ml当たりOPC少なくとも1.9mgをさらに含む。有利には、本発明による抽出物は、前記乾燥抽出物の総重量に対してカテキン当量として表される、OPC10重量%~25重量%、より有利には13重量%~25重量%、いっそう有利には15重量%~25重量%を含む。
【0028】
有利には、本発明による抽出物は、乾燥抽出物の総重量に対して、有機酸、特にアルファ-ヒドロキシ酸(AHA)、特に酢酸、リンゴ酸、乳酸、クエン酸又はこれらの混合物少なくとも6重量%、有利には6重量%~10重量%をさらに含む。
【0029】
有利には、本発明による抽出物は、乾燥抽出物の総重量に対してルチン当量として表される、フラボノイド少なくとも5重量%、有利には5重量%~10重量%をさらに含む。
【0030】
有利な態様によると、本発明による抽出物は、以下を主に含む(抽出物における以下の含有量の関数として、高いものから順に分類される):ポリフェノール、OPC、有機酸及びフラボノイド。
【0031】
特に、こうした抽出物は、有利には、以下を含有する(得られた乾燥抽出物%分子、及び高いものから順に):
ポリフェノール約20%-没食子酸当量で
OPC約15%(オリゴプロアントシアニジン-カテキン当量で)、
有機酸約6%(主にクエン酸及びリンゴ酸)
フラボノイド約4%(ルチン当量で)。
【0032】
本発明の範囲内で、上に記載されているポリフェノール豊富な抽出物は、有利には、水、エタノール、グリコール及びこれらの混合物の中から選択される溶媒中で、カポックの木の花、好ましくはカポックの木の萼の固体/液体抽出によって得られ、カポックの木は、特にボンバクス・コスタツムである。抽出溶媒は、さらに特に、水/グリコール、水/エタノール、及びこれらの混合物の二成分混合物の中から、有利には水中グリコール及び/又はエタノール30~90%の間、典型的に50~90%の間に含まれる割合で選択される。特に、抽出溶媒は、水/プロパンジオール、水/プロピレングリコール及び水/エタノール、特に水/プロパンジオール、さらに特に水/1,3-プロパンジオールの二成分混合物の中から選択される。
【0033】
より有利には、上に記載されているポリフェノール豊富な抽出物は、水、グリコール及びこれらの混合物の中から選択される溶媒中で、カポックの木の花、好ましくはカポックの木の萼の固体/液体抽出によって得られ、カポックの木は、特にボンバクス・コスタツムである。抽出溶媒は、さらに特に、水/グリコールの二成分混合物の中から、有利には水中グリコール30~90%の間、典型的に50~90%の間に含まれる割合で選択される。特に、抽出溶媒は、水/プロパンジオール及び水/プロピレングリコール、特に水/プロパンジオール、さらに特に水/1,3-プロパンジオールの二成分混合物の中から選択される。
【0034】
有利には、上述されているグリコールは、植物起源のグリコール、特にプロパンジオール及び/又はプロピレングリコール、さらに特にプロパンジオール、特に1,3-プロパンジオールである。
【0035】
より有利な方式において、上に記載されているポリフェノール豊富な抽出物は、水/1,3-プロパンジオールの二成分混合物中で、有利には水中1,3-プロパンジオール30~90%の間、典型的に50~90%の間に含まれる割合で、カポックの木の、特にボンバクス・コスタツムの花、好ましくは萼の固体/液体抽出によって得られる。この特別な溶媒は、より良好な収率の所望の活性成分、特にポリフェノール、OPC、フラボノイド及び/又は有機酸をもたらす。
【0036】
有利な方式において、カポックの木の、特にボンバクス・コスタツムの花、好ましくは萼の固体/液体抽出が、水/溶媒の二成分混合物中で実施される場合、水中の溶媒の割合は、50~90%の間である。
【0037】
本発明の目的は、その上、カポックの木の花の、好ましくはカポックの木の萼の、有利にはボンバクス・コスタツムの萼のポリフェノール豊富な抽出物の調製のための方法であって、カポックの木が特にボンバクス・コスタツムであり、適切な溶媒又は溶媒混合物中での並びに当業者に知られている最適なpH、持続期間及び温度下での少なくとも1つの固体/液体抽出ステップを含む方法である。
【0038】
有利には本発明によると、カポックの木の花の、好ましくはカポックの木の萼のポリフェノール豊富な抽出物の調製のための方法であって、カポックの木が特にボンバクス・コスタツムである方法は、以下の連続ステップを含む:
a)花、特に萼を粉砕すること;
b)粉砕された花、特に粉砕された萼を、適切な溶媒又は溶媒混合物中で及び最適なpH、持続期間及び温度条件下で抽出すること;
c)デカンテーション及び/又は遠心分離及び/又は連続的な濾過によって固相及び液相を分離させること;並びに
d)必要ならば、ステップc)において得られた抽出物を乾燥させること。
【0039】
植物粉砕ステップa)は、特にナイフミル、ハンマーミルなどを活用して、当業者に知られている方法を使用して実施することができる。
【0040】
ステップb)において、抽出相は、好ましくは、水及び/又はグリコール及び/又はエタノール単独の存在下で又は二成分混合物中で実施される。有利には、ステップb)において使用される抽出溶媒は、水/グリコール、水/エタノール、及びこれらの混合物の二成分混合物の中から、有利には水中グリコール及び/又はエタノール30~90%の間、典型的に50~90%の間に含まれる割合で選択される。特に、抽出溶媒は、水/プロパンジオール、水/プロピレングリコール及び水/エタノール、特に水/プロパンジオール、さらに特に水/1,3-プロパンジオールの二成分混合物の中から選択される。より有利には、ステップb)において使用される抽出溶媒は、水/グリコールの二成分混合物の中から、有利には水中グリコール30~90%の間、典型的に50~90%の間に含まれる割合で選択される。特に、抽出溶媒は、水/プロパンジオール、水/プロピレングリコール、特に水/プロパンジオール、さらに特に水/1,3-プロパンジオールの二成分混合物の中から選択される。
【0041】
有利には、上述されているグリコールは、植物起源のグリコール、特にプロパンジオール及び/又はプロピレングリコール、さらに特にプロパンジオール、特に1,3-プロパンジオールである。
【0042】
より有利な方式において、ステップb)において使用される抽出溶媒は、有利には水中1,3-プロパンジオール30~90%の間、典型的に50~90%の間に含まれる割合における、水/1,3-プロパンジオールの二成分混合物である。この特別な溶媒は、より良好な収率の所望の活性成分、特にポリフェノール、OPC、フラボノイド及び/又は有機酸をもたらす。
【0043】
有利な方式において、カポックの木の、特にボンバクス・コスタツムの花、好ましくは萼の固体/液体抽出は、水/溶媒の二成分混合物中で実施される場合、水中の溶媒の割合は50~90%の間である。
【0044】
さらに、固体/液体抽出のステップb)は、好ましくは、20℃~90℃の間、特に30℃~80℃の間、さらに特に30℃~75℃の間、典型的に50℃の温度で実施される。
【0045】
抽出の持続期間は、有利には30分~4時間の間、特に1時間~3時間の間であり、有利には、抽出の持続期間は約2時間である。
【0046】
固相を液相から分離させるステップc)は、当業者に知られている方法を使用して、特にデカンテーション、遠心分離及び/又は連続的な濾過によって、好ましくは濾過によって実施される。ステップc)は、絶対透明度及び微生物学的衛生が達成されるまで実施される。
【0047】
有利には、本発明によるポリフェノール豊富な抽出物は、当業者に知られている方法の手段による乾燥ステップd)によって安定化することができる。
【0048】
乾燥ステップd)は、例えばマルトデキストリン又はアカシア繊維型の担体(CNIによって供給されたファイバーガム(Fibregum)(登録商標))の存在下で、例えば実施され得る。担体含有量は、抽出物の液状形態で得られる乾燥材料の百分率に対して、担体0~80%を範囲とする比に従って変動する。
【0049】
抽出物は、好ましくは、最終粉末を得るために凍結乾燥又は噴霧によって乾燥される。最終粉末は、有利には、乾燥抽出物材料30~70重量%を含み、100%の補完物は凍結乾燥又は噴霧担体である。より有利には、最終粉末は、抽出物由来の乾燥材料50%及び凍結乾燥された又は噴霧担体50%を含む。
【0050】
別の有利な実施形態によると、本発明による抽出物は、プロパンジオール、典型的に1,3-プロパンジオールなどのグリコールの中から選択される溶媒によって物理的に及び微生物学的に安定化することができ、前記溶媒は、こうした安定化に適応させた割合で存在する。好ましくは、グリコール、特にプロパンジオール、好ましくは1,3-プロパンジオールは、単独で、又は水との組合せで水中グリコール30~90%の間及び好ましくは50~90%の間の範囲における割合にて存在する。
【0051】
したがって、本発明は、カポックの木の花の、好ましくはカポックの木の萼のポリフェノール豊富な抽出物を含む別の組成物にさらに関し、カポックの木は特にボンバクス・コスタツムであり、本発明によると、溶媒は、必要であれば水における物理的及び微生物学的安定化作用のための有効な分量で、プロパンジオール、特に1,3-プロパンジオールなどのグリコールの中から選択される。物理的及び微生物学的安定化作用のための有効な分量は、有利には、上に記載されている分量である。
【0052】
好ましくは、例として、本発明によるポリフェノール豊富な抽出物は、以下の方法に従って得ることができる:
a’)粉砕された花を、1,3-プロパンジオール/水(60/40)の混合物中の5%(w/w)の溶液に投入すること;
b’)2時間の間40℃で撹拌しながら抽出;
c’)連続的な濾過ステップによる精製;及び
d’)滅菌濾過。
【0053】
次に続く記載において、「本発明による抽出物」という用語は、上記で定義されている通りの、抽出物それ自体、又は上に記載されている通りの本発明の方法によって得ることができる抽出物を指す。上に記載されている通りの本発明の方法によって得ることができる抽出物は、上記で定義されている通りの、本発明による抽出物それ自体と同じ組成を表す。
【0054】
本発明の別の目的は、活性成分として、本発明によるカポックの木の花の、好ましくはカポックの木の萼のポリフェノール豊富な抽出物、及び必要な場合に適切な賦形剤を含む組成物であり、カポックの木は特にボンバクス・コスタツムである。本発明による抽出物は、抽出物それ自体に関する上記の段落、及び本発明の方法によって得ることができる抽出物に関する段落に定義されている通りである。
【0055】
該組成物は、有利には、美容、医薬又は皮膚科用である。前記組成物は、好ましくは、外部の局所的経路による投与のために製剤化される。
【0056】
有利には、本発明による組成物は、組成物の総重量に対して、本発明による抽出物0.001~10重量%、典型的に0.01重量%~5重量%を含み、抽出物重量は乾燥抽出物として表される。
【0057】
本発明による組成物は、1種又は複数の活性成分をさらに含むことができる。
【0058】
本発明による組成物は、局所的投与に適応させた異なる調製物の形態で製剤化することができ、クリーム、エマルジョン、ミルク、軟膏、ローション、油、水性、アルコール性又はグリコール溶液、粉末、パッチ、スプレー、シャンプー、ワニス、又は外部の適用のための任意の他の生成物が挙げられる。
【0059】
本発明による組成物の型(美容、医薬又は皮膚科用)に依存して、本発明による組成物は、少なくとも1種の美容、医薬又は皮膚科的に許容される賦形剤をさらに含むことができる。特に、本発明による組成物は、界面活性剤、増粘剤、保存料、香料、染料、化学又は鉱物フィルター、水和剤、熱水などの中から選択される、当業者に美容、医薬又は皮膚科的に知られている少なくとも1種のアジュバントをさらに含むことができる。当業者は、当業者の一般的な知識を使用することによって、本発明による組成物の製剤を適応させる方法を知っている。
【0060】
本発明による投与量及び最適なガレヌス製剤は、例えば患者又は動物の年齢及び体重、全身状態の重症度、治療の耐性、観察された副作用、皮膚型など、患者又は動物に適当である薬理学、皮膚科又は美容的治療剤を製剤化する場合に通常考慮される基準に従って確立することができる。
【0061】
本発明の目的は、その上、未成熟、正常又は成熟/高齢かどうかにかかわらず、皮膚及び/又は粘膜(歯茎、歯周組織、生殖器粘膜)及び/又は皮膚付属器(毛髪及び爪)の障害又は疾患、有利には、炎症反応、酸化反応、汚染と関係があるかどうかにかかわらずラジカル攻撃に関連する障害、バリア若しくは恒常性障害、老化、特に経時的老化及び/又は光線老化、及び/又は機械的若しくは熱的攻撃因子(thermal aggressive factor)、より有利には、未成熟、正常又は成熟/高齢にかかわらず、皮膚、皮膚付属器及び/又は粘膜(歯茎、歯周組織、生殖器粘膜)の炎症性及び刺激性の反応若しくは疾患、又はバリア若しくは恒常性障害の防止及び/又は治療における使用のための、本発明による抽出物又は本発明による組成物である。
【0062】
本発明の目的は、その上、血管障害、特に発赤及びシミの防止及び/又は治療における使用のための本発明による抽出物である。
【0063】
本発明の別の目的は、その上、未成熟、正常又は成熟/高齢にかかわらず、皮膚及び/又は粘膜(歯茎、歯周組織、生殖器粘膜)及び/又は皮膚付属器(毛髪及び爪)の障害又は疾患、有利には、炎症反応、酸化反応、汚染と関係があるかどうかにかかわらずラジカル攻撃に関連する障害、バリア若しくは恒常性障害、老化、特に経時的老化及び/又は光線老化、及び/又は機械的若しくは熱的攻撃因子、より有利には、未成熟、正常又は成熟/高齢にかかわらず、皮膚、皮膚付属器及び/又は粘膜(歯茎、歯周組織、生殖器粘膜)の炎症性及び刺激性の反応若しくは疾患、又はバリア若しくは恒常性障害を防止及び/又は治療するための美容、医薬又は皮膚科用組成物を生成するための、本発明による抽出物又は本発明による組成物の使用である。
【0064】
本発明の目的は、その上、血管障害、特に発赤及びシミを防止及び/又は治療するための美容、医薬又は皮膚科用組成物を製造するための、本発明による抽出物又は本発明による組成物である。
【0065】
さらに、本発明の目的は、その上、未成熟、正常又は成熟/高齢にかかわらず、皮膚及び/又は粘膜(歯茎、歯周組織、生殖器粘膜)及び/又は皮膚付属器(毛髪及び爪)の障害又は疾患、有利には、炎症反応;酸化反応、汚染と関係があるかどうかにかかわらずラジカル攻撃に関連する障害;バリア若しくは恒常性障害;老化、特に経時的老化及び/又は光線老化;及び/又は機械的若しくは熱的攻撃因子、より有利には、未成熟、正常又は成熟/高齢にかかわらず、皮膚、皮膚付属器(毛髪及び爪)及び/又は粘膜(歯茎、歯周組織、生殖器粘膜)の炎症性及び刺激性の反応若しくは疾患、又はバリア若しくは恒常性障害を防止及び/又は治療するための方法であって、本発明による抽出物又は本発明による組成物の有効量の、それを必要とする対象への投与、特に局所的投与を含む方法である。
【0066】
本発明の目的は、その上、本発明による抽出物又は本発明による組成物の有効量を、それを必要とする対象に投与すること、特に局所的に投与することを含む、血管障害、特に発赤及びシミを防止及び/又は治療するための方法である。
【0067】
特に、本発明による組成物又は抽出物は、未成熟、正常又は成熟/高齢にかかわらず、皮膚、皮膚付属器(毛髪及び爪)及び/又は粘膜(歯茎、歯周組織、生殖器粘膜)の炎症反応若しくは刺激性反応若しくは疾患、又はバリア若しくは恒常性障害の防止及び/又は治療が意図される。
【0068】
有利には、皮膚の炎症性若しくは刺激性の反応、障害若しくは疾患又はバリア若しくは恒常性障害は以下である:ざ瘡、酒さ又はエリスロクーペロス(erythrocouperose)、血管障害、特に発赤及びシミ、シート皮膚炎、アトピー性皮膚炎、湿疹、接触性皮膚炎、刺激性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎(新生児頭部皮膚炎)、感受性皮膚、反応性皮膚、乾燥皮膚(乾燥症)、脱水皮膚、発赤を有する皮膚、皮膚紅斑、高齢の又は光老化皮膚、光感受性皮膚、色素沈着皮膚(黒皮症、炎症後色素沈着など)、肉割れ、日焼け、化学的、物理的(例えば、妊娠中の女性における自然の組織張力)、細菌学的及び真菌性の薬剤による刺激を有する皮膚、皮膚老化、特に光老化、並びに化学的若しくは大気の汚染と関係がある及び/又はUV若しくはIRへの曝露と関係があるラジカル攻撃に関連する障害。
【0069】
有利には、粘膜の炎症性若しくは刺激性の反応、障害若しくは疾患又はバリア若しくは恒常性障害は、歯肉炎(新たに誕生した赤ん坊における感受性歯茎、喫煙又は他による衛生問題)及び内部又は外部の雄性又は雌性の生殖器領域の刺激である。
【0070】
有利には、皮膚付属器の炎症性若しくは刺激性の反応、障害若しくは疾患又はバリア若しくは恒常性障害は、脆性爪、脆弱爪、傷んだ毛髪、脆性毛髪、乾燥毛髪、脱毛症、脂漏性皮膚炎及び濾胞性皮膚炎である。
【0071】
特に有利な方式において、本発明による組成物又は抽出物は、例えば太陽への曝露若しくは炎症現象に関連する皮膚老化、特に経時的老化若しくは光線老化に対する抗老化である、又は更に、刺激された皮膚において作用すると意図される。
【0072】
本発明の目的は、その上、脱水皮膚;発赤を有する皮膚;高齢の又は光老化皮膚;光感受性皮膚;皮膚老化、特に光老化;並びに化学的若しくは大気汚染と関係がある及び/又はUV若しくはIRへの曝露と関係があるラジカル攻撃に関連する障害の治療及び/又は防止における、本発明による抽出物の美容的使用である。
【0073】
本発明の目的は、その上、皮膚付属器の治療のための、特に脆性爪;脆弱爪;傷んだ毛髪;脆性毛髪;及び乾燥毛髪の治療及び/又は防止のための本発明による抽出物又は本発明による組成物の美容的使用である。
【0074】
本発明は、本発明による組成物又は抽出物を投与することからなる、状態及び/又は外観を改善することを考慮した皮膚及び/又は皮膚付属器及び/又は粘膜のための美容ケア方法にも関する。
【0075】
特に、本発明は、皮膚及び/又は皮膚付属器への本発明による組成物又は抽出物の適用からなる、皮膚バリア及び皮膚バリアの脱水における変化を防止することを考慮した皮膚及び/又は皮膚付属器のための美容ケア方法に関する。
【0076】
本発明は、皮膚及び/又は皮膚付属器への本発明による組成物又は抽出物の適用からなる、老化を防止することを考慮した皮膚及び/又は皮膚付属器のための美容ケア方法に関する。
【0077】
本発明は、皮膚及び/又は粘膜に水分補給するための、特に引き締め剤若しくは抗しわ剤として皮膚の弾力性若しくは硬度に作用するための、感受性皮膚に作用するための、又は汚染に対して作用するための、本発明による組成物又は抽出物の美容的使用にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0078】
図1】健康な線維芽細胞(HF)と比較した、しわ線維芽細胞(WF)によって発生された収縮力を表す図である。
図2】本発明によるKPO抽出物の存在又は非存在下での、健康な線維芽細胞(HF)によって発生された収縮力を表す図である。
図3】本発明によるKPO抽出物の存在又は非存在下での、しわ線維芽細胞(WF)によって発生された収縮力を表す図である。
【0079】
以下の例は、本発明を例示する助けとなる。
実施例1:本発明による抽出物
ボンバクス・コスタツムの萼のポリフェノール豊富な抽出物は、以下の方法に従って得られる:
a)粉砕されたボンバクス・コスタツムの萼は、水/プロパンジオール30/70、20/80又は10/90w/wの混合物中の溶液に投入される
b)2時間50℃での抽出
c)連続的な濾過による固体/液体分離。
【0080】
この方法で得られたポリフェノール豊富な液体抽出物は、以下の特徴を有する(得られた抽出物の分子/乾燥抽出物の重量%)。
【0081】
【表1】
【0082】
実施例1に従って得られた本発明によるカポックの木の抽出物(20/80)は、テキスト及び図においてKPO抽出物とも称される。
【0083】
実施例2:本発明による抽出物
ボンバクス・コスタツムの萼のポリフェノール豊富な抽出物は、以下の方法に従って得られる:
a)粉砕されたボンバクス・コスタツムの萼は、水/エタノール20/70w/wの混合物中の溶液に投入される;
b)2時間75℃での抽出;及び
c)連続的な濾過による固体/液体分離。
【0084】
この方法で得られたポリフェノール豊富な液体抽出物は、以下の特徴を有する(得られた抽出物の%の分子/乾燥抽出物):
乾燥抽出物(2時間、105℃、換気されたオーブン):1.05%
総ポリフェノール(当量の没食子酸):24%
OPC(当量のカテキン):14%
フラボノイド(当量のルチン):7.8%
抗酸化活性(DPPH):34(μg)
【0085】
実施例3:本発明による抽出物の生物学的活性試験
下記の例において、KPO抽出物と呼ばれる試験抽出物は、実施例1に従って得られた本発明による抽出物(水/プロパンジオール20/80の混合物)である。
【0086】
1-線維芽細胞、ケラチノサイト及び皮膚外植片培養物における遺伝子発現のスクリーニング
美容的要件のメッセンジャーRNA発現特徴に対するKPO抽出物の効果を特徴的皮膚モデルにおいて評価し:正常ヒト表皮ケラチノサイト又は正常ヒト皮膚線維芽細胞を、24時間の間0.0005%及び0.001%のKPO抽出物(乾燥抽出物濃度:d.e.)でインキュベートした。追加として、皮膚外植片を24時間の間0.005%及び0.001%のKPO抽出物(d.e.)でインキュベートした。インキュベーションの終わりに、mRNAを抽出し、関心対象の90の遺伝子の発現を、RT-qPCRによって分析した。
【0087】
結果は、以下の領域におけるKPO抽出物の潜在的な生物学的活性を示した:
皮膚マトリックスのネオ合成、構造化及びリモデリング:DCN、SPARC、BGN、COL3A1、TP63、TGFB1遺伝子の刺激;
接着及びバリア機能:CD44、CTNNA1、ITGA2、SDC1、LAMC2、TNC、COL17A1、VCAN、PXN、LAMA5、S100A7遺伝子の刺激;
寿命延長及び再生:SIRT6、ATP5A1、INSR、EGF、SIRT3遺伝子の刺激;
色素沈着:POMC及びPMEL遺伝子の刺激;
解毒作用及び抗酸化防御:BSG、CAT、GLRX、MSRA、MSRB2、TXN、SOD2、PPIA、HMOX1、HSPB1、DGAT1、GBA遺伝子の刺激。
【0088】
要約すると、KPO抽出物の2つの主な効果が、この分析から現れる。第1は、接着及びバリア機能であり、遺伝子の強い発現が細胞-細胞又は細胞-マトリックス接着に関与する。この活性は、組織硬度に対する効果を示す細胞外マトリックスネオ合成及び構造化活性によって増強される。ストレス応答は、その上、一部が特に強い誘発を示す多くの遺伝子の誘発とともに非常に多く存在する。このストレス応答において、酸化ストレスに対する保護が優勢である。他の型のストレスへの反応経路及び解毒作用経路も活性化される。
【0089】
2-皮膚細胞外マトリックスの及び細胞コミュニケーションのマーカーの遺伝子発現
KPO抽出物の効果を、細胞コミュニケーションに、及び線維芽細胞における皮膚細胞外マトリックスの組織化に関与するマーカーの遺伝子発現に対して評価し:正常ヒト皮膚線維芽細胞を、6時間又は24時間の間0.0005%若しくは0.001%のKPO抽出物(d.e.)又は5ng/mlのTGFβ1(皮膚マトリックス誘発マーカーに対する陽性対照)でインキュベートした。インキュベーションの終わりに、以下のマーカーの遺伝子発現をRT-qPCRによって分析した。
CTNNA1(カテニンα):カドヘリンに結合することで、細胞相互作用を促進する。
シンデカン:細胞/細胞及び細胞/マトリックス相互作用を強化するプロテオグリカン。
ラミニン5(α3β3γ2):基底膜への接着を補助する分子。
TNC(テネイシンC):真皮表皮接合部の密着に関与するとともにコラーゲンVIIの合成を促進する細胞外マトリックスタンパク質。
SPARC:細胞外マトリックスの様々な構成要素と関連するとともに細胞外マトリックスの組織化に寄与するタンパク質。
BGN(バイグリカン):コラーゲン繊維の集合体に関与するプロテオグリカン。
バーシカン:組織の形態形成及び維持において中心的役割を果たすECMの主要な構成成分。バーシカンは皮膚の弾性繊維の形成にも寄与する。
皮膚細胞外マトリックス(ECM)構成成分の約70%に相当する、真皮に硬度及び耐圧品質を与えるコラーゲンであって、大部分は、III型コラーゲンと頻繁に関連するI型コラーゲン(皮膚コラーゲンの85~90%)である。
IV及びVII型コラーゲン:真皮表皮接合部の構成要素である糖タンパク質。
フィブロネクチン:高分子量糖タンパク質である。フィブロネクチンは、皮膚ECMの構造において役割を果たす。
弾性繊維は皮膚弾力性に関わる。弾性繊維は、2つの主要な構成成分:エラスチン(真皮の1%~3%)及びミクロフィブリルの集合体に起因する。
LOXL:エラスチン繊維の集合体に関わる。
デコリン:マトリックスの集合体に関与するプロテオグリカン。
デルマトポンチン:コラーゲン繊維の集合体において役割を果たす;デルマトポンチンは、皮膚細胞外マトリックスの構造配置及び組織柔軟性を維持するのに重要である。
ラミニン5(α3β3):基底膜(真皮表皮接合部)への接着を補助する分子。
【0090】
結果は、未処置対照を基準とした相対的分量(RQ)として与えられる。統計試験(一因子分散分析、続いてダネット試験)を使用して、結果の有意性を評価した:p<0,05;**p<0,01;***p<0,001;ns:非有意p>0,05。
【0091】
結果は、下記の表1及び2において一緒にグループ化されている。結果は、研究された一連のマーカーに対するKPO抽出物のかなりの誘発効果を示し、皮膚マトリックスの構造化、真皮表皮接合部(DEJ)及び細胞コミュニケーション方法における強い効力潜在性を示唆している。KPO抽出物は、したがって、水分補給、弾力性、皮膚交換(EDJ)及び皮膚老化において役割を果たす。
【0092】
【表2】
【0093】
【表3】
【0094】
3-皮膚線維芽細胞における抗プロテアーゼ活性の評価
KPO抽出物を、皮膚線維芽細胞において炎症性ストレスが引き金となったMMP1(マトリックスメタロプロテイナーゼ-1)の産生を制限する能力について評価した。
【0095】
正常ヒト皮膚線維芽細胞を24時間の間0.0005%又は0.001%(d.e.)のKPOで予備インキュベートした。線維芽細胞を次いで、100nMのPMA(ホルボールミリステートアセテート)によって刺激し、終夜KPO抽出物でインキュベートした。MMP1の産生を細胞上澄みにおけるELISAアッセイによって評価した。結果は、1mgの総タンパク質当たりのpgのMMP1で与えられている(BCアッセイによって決定された)。有意性を一因子分散分析、続いてチューキー試験の手段によって評価した:p<0.05;***p<0.001;ns:非有意p>0.05。
【0096】
結果は、下記の表3において一緒にグループ化されている。KPO抽出物は、線維芽細胞においてPMAストレスが引き金となったMMP1放出を有意に阻害し;この結果は皮膚マトリックスの保護効果を、並びにこれは経時的及び光線性の抗老化効果を示している。
【0097】
【表4】
【0098】
4-抗炎潜在力の評価
KPO抽出物の抗炎症活性を、PMA処置によって刺激されたケラチノサイトにおいて評価した。
【0099】
正常ヒト表皮ケラチノサイトを24時間の間、0.001%、0.002%若しくは0.005%(d.e.)のKPO抽出物で、又は0.1μMの参照抗炎症性分子デキサメタゾンで、又は0.1μMのインドメタシンで予備インキュベートした。ケラチノサイトを次いで、PMA(ホルボールミリステートアセテート)10μg/mlによって刺激し、終夜KPO抽出物又は参照分子でインキュベートした。炎症性メディエーターインターロイキン-8(IL)、インターロイキン-1β(IL1β)及びプロスタグランジンE2(PGE2)の産生を、細胞上澄みにおけるELISAアッセイによって評価した。有意性を一因子分散分析、続いてチューキー試験の手段によって評価した:p<0.05;***p<0.001;ns:非有意p>0.05。
【0100】
結果は、下記の表4、5及び6において一緒にグループ化されている。KPO抽出物は、ケラチノサイトにおいて炎症促進性ストレスが引き金となったサイトカインIL1β及びIL8、並びにより少ない程度でPGE2の放出を有意に阻害した。これらの結果は、感受性皮膚に対する又は更に刺激された皮膚に対する、KPO抽出物の抗炎潜在力及び抗老化効果を示している。
【0101】
【表5】
【0102】
【表6】
【0103】
【表7】
【0104】
5-抗酸化潜在力の評価
KPO抽出物の抗酸化潜在力を、酸化促進性Hストレスによって誘発された細胞内ROS(反応性酸素種)のアッセイモデルにおいて評価した。
【0105】
正常ヒト表皮ケラチノサイトを24時間の間、0.001%、0.002%若しくは0.005%(d.e.)のKPO抽出物で、又は10μMの参照抗炎症性分子ケルセチンで、又は500μMのビタミンCで予備インキュベートした。細胞層を次いで、100μMのHによる酸化ストレスの誘発の前にDCFH-DAプローブと接触させた。プローブが酸化される時に放射される蛍光を測定することによって、産生されたROSの量を評価した。結果を一因子分散分析、続いてチューキー試験によって統計的に分析した:**p<0.01;***p<0.001。
【0106】
結果は、下記の表7において一緒にグループ化されている。KPO抽出物は、Hの存在が引き金となったROSの産生を有意に阻害した。これらの結果は、力強い抗酸化潜在力を実証している。KPO抽出物は、そのため、汚染及び老化に対して有利に使用することができる。
【0107】
【表8】
【0108】
6-抗しわ及び引き締め効果のインビトロ評価
KPO抽出物の「引き締め」効果を、グラスボックス(GlasBox)(登録商標)システムにおいて、しわの基部からの線維芽細胞に対して及び隣接するしわのない皮膚からの線維芽細胞(「健康な」線維芽細胞)に対して評価した。グラスボックス(登録商標)システムは、皮膚等価物内で、線維芽細胞によって発生された収縮力を測定するのを可能にする。しわの基部に由来する線維芽細胞は、隣接するしわのない皮膚からの線維芽細胞より少ない収縮力を有し、この方法において、化合物の「抗しわ」効果を評価するのが可能である。
【0109】
線維芽細胞(健康な皮膚又はしわのある皮膚)をコラーゲン溶液と混合することによって、皮膚等価物を調製した。線維芽細胞は、同じ患者(65才の女性)からの、しわの深部から及び一方で近くのしわのない皮膚から得られた試料に由来した。この混合物を長方形のグラスボックス(登録商標)タンク中で冷却した。0.005%又は0.001%(d.e.)のKPO抽出物を含有する又は含有しない媒体を添加した。2つの可撓性シリコンブレードを、これらのタンクの各々に導入した。皮膚等価物は、そのため、ひずみゲージ(「センサー」)が備えられている2つのブレード間に発生した。線維芽細胞によって発生された退縮力の効果の下でシリコンブレードは変形され;変形は、ひずみゲージの電気抵抗値の変動によって見られる。リアルタイムで測定されるこの変動は、皮膚等価物内に発生された力の代表である。等尺性力(isometric forces)をしたがって24時間の間測定した。
【0110】
結果は、図1~3及び表8において一緒にグループ化されている。予想された通り、しわ線維芽細胞(WF)によって発生された収縮力は、健康な線維芽細胞(HF)によって発生された収縮力と比較して有意に低減された。
【0111】
しわ線維芽細胞(WF)において、0.0005%のKPO抽出物は、有意に収縮力を増加させた。この結果は、抗しわ効果を実証している。
【0112】
健康な線維芽細胞に適用されて、KPO抽出物は、収縮力を有意に増加させた。グラスボックス(登録商標)グラフの分析は、AUC(曲線下面積)及び最大収縮が抽出物の存在下で著しく増加することを示す。これらの結果は、抽出物の引き締め効果を実証している。
【0113】
【表9】
【0114】
7-皮膚線維芽細胞におけるミトコンドリア活性に対するKPO抽出物の効果の評価
正常ヒト皮膚線維芽細胞を24時間の間0.001%(d.e.)のKPO抽出物でインキュベートした。処置の終わりに、細胞をトリプシン処理によって回収し、酸素感受性蛍光プローブの存在下でインキュベートしたことで、分光蛍光分析によってリアルタイムで酸素消費を測定した。
【0115】
結果は、表9において一緒にグループ化されている。これらの結果は、KPO抽出物が引き金となるとともに全体的な呼吸において増加させることを示している。したがって、KPO抽出物は、ミトコンドリア機能の刺激の代表である効果の呼吸鎖活性の刺激の引き金となる。
【0116】
【表10】
図1
図2
図3