(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】シートパレットの牽引補助装置、牽引補助装置付きシートパレット及びシートパレットの牽引方法
(51)【国際特許分類】
B66F 9/19 20060101AFI20230829BHJP
【FI】
B66F9/19 E
(21)【出願番号】P 2019187164
(22)【出願日】2019-10-10
【審査請求日】2022-04-11
(73)【特許権者】
【識別番号】591206500
【氏名又は名称】株式会社 ダイサン
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】小瀧 大蔵
【審査官】三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-091268(JP,U)
【文献】特開昭52-037363(JP,A)
【文献】特開2002-173296(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/19
B65G 7/00-7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートパレットの端部の荷物が載置されていない部分が上方に折り曲げられた立上げ部の裏面を受ける立上受け面と、前記立上受け面から前記シートパレットの端部の床面に対向している裏面の下へ潜り込んで延出する下受け面と、を備えた第1押え具と、
前記シートパレットの端部を間において前記第1押え具と重ね合わせられ、前記シートパレットの端部の立上げ部の表面を押える立押え面を備えた第2押え具と、
前記第2押え具に連結された牽引部材と、
を有するシートパレットの牽引補助装置。
【請求項2】
前記牽引部材は、牽引動力装置に対して着脱自在である、
請求項1に記載のシートパレットの牽引補助装置。
【請求項3】
前記牽引部材の一端部には雄ネジ部が形成されると共に、他端部にはリング部が設けられ、
前記第2押え具には、前記牽引部材の雄ネジ部が螺合する雌ネジ部が形成されている、
請求項2に記載のシートパレットの牽引補助装置。
【請求項4】
前記第1押え具と前記シートパレットの端部との間、又は、前記第2押え具と前記シートパレットの端部との間には、滑り止めシートが配置されている、
請求項1~3のいずれか一項に記載のシートパレットの牽引補助装置。
【請求項5】
前記第2押え具は、前記シートパレットの端部の基部の表面を押える下押え面を備え、
前記第1押え具の前記立上受け面と前記下受け面とが形成する隅部へ、前記第2押え具の前記立押え面と前記下押え面が形成する角部を引き付けるネジ部材が、前記第1押え具から前記第2押え具へ亘って締結されている、
請求項1~4のいずれか1項に記載のシートパレットの牽引補助装置。
【請求項6】
前記第1押え具及び前記第2押え具は、前記シートパレットの牽引方向の端部に沿った幅と等しい長さとされ、
前記第1押え具の両端部に設けられた側壁と、前記側壁に設けられ前記第2押え具の両端部を前記第1押え具に対して接離可能に支持する支持部材と、を有する、
請求項1~5のいずれか1項に記載のシートパレットの牽引補助装置。
【請求項7】
前記第2押え具は、前記第1押え具と前記シートパレットの端部とが嵌合する凹部を有するコ字形の固定具と、前記固定具の前記牽引部材側の側壁に設けられた雌ネジ孔に差し込まれた固定ボルトとを備える、
請求項1~4のいずれか1項に記載のシートパレットの牽引補助装置。
【請求項8】
シートパレットと、
折り曲げられた前記シートパレットの端部の立上げ部の裏面を受ける立上受け面と、前記立上受け面から前記シートパレットの端部の裏面へ延出する下受け面と、を備えた第1押え具と、
前記シートパレットの端部を間において前記第1押え具と重ね合わせられ、前記シートパレットの端部の立上げ部の表面を押える立押え面を備えた第2押え具と、
前記第2押え具に連結された牽引部材と、
を有する牽引補助装置付きシートパレット。
【請求項9】
請求項
1~7のいずれか一項に記載のシートパレットの牽引補助装置を、コンテナの内側で第1の荷物が搭載された第1のシートパレットの端部に取り付けるステップと、
取付けられた前記牽引補助装置を介して前記第1のシートパレットを牽引して前記第1の荷物を前記コンテナの外側に降ろすステップと、
前記牽引部材を前記第2押え具から取り外すことによって前記第1のシートパレットから前記牽引補助装置を取り外すステップと、
取り外した前記牽引補助装置を、コンテナの内側で
前記牽引部材を前記第2押え具に取り付けることによって、第2の荷物が搭載された第2のシートパレットの端部に取り付けるステップと、
前記牽引補助装置を介して前記第2のシートパレットを牽引して前記第2の荷物を前記コンテナの外側に降ろすステップと、
を含むシートパレットの牽引方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートパレットの牽引補助装置、牽引補助装置付きシートパレット及びシートパレットの牽引方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば海上輸送されたコンテナの内側では、床面上に敷かれたシートパレットの上に、輸送対象である荷物が載置される場合が多い。このシートパレットを牽引することで、コンテナから荷物を降ろすことができる。
【0003】
ここで、シートパレットは、通常、ポリプロピレン(PP)等の比較的柔らかい素材で作製されているため、破損し易い。このため、コンテナから荷物が載置されているシートパレットを牽引して荷降ろしする荷役作業の際には、シートパレットが破損して抜け落ちないようにシートパレットを確実に把持して牽引する必要があり、特許文献1に引用されているようなプッシュプルフォークリフトを用いることが知られている。
【0004】
プッシュプルフォークリフトは、通常のフォークリフトのフォーク部分に、プッシュプルアタッチメントと呼ばれるオプションの装置を取り付けて構成されている。プッシュプルアタッチメントは、例えば、フォークの上に載置される板状のプラテンや、水平方向及び鉛直方向のそれぞれに沿って進退自在にスライドする牽引用グリッパー及び推進用フェイスプレート等の部材を備える。この構成では、グリッパーがフォーク上に載置されたプラテンの先端よりも前の位置でシートパレットの端部を把持した状態で、プラテンの根元側に向かって水平方向にスライドすることによって、荷物がシートパレットごとプラテンの上面上に取り込まれる。
【0005】
グリッパーの把持動作及びスライド動作のため、プッシュプルアタッチメントは、プラテンやグリッパー等に加え、油圧装置等の駆動用の部材も必要とし、部材数も多く、構造が比較的複雑になっている。このため、プッシュプルアタッチメントは、非常に高価であり、零細荷役業者にとっては、イニシャルコストが嵩み、負担が大きく、中々普及が進まないという問題がある。
【0006】
また、プッシュプルアタッチメントは、荷物を搭載したシートパレットの引き寄せ動作と押し出し動作の両方を行う機能を持たせているために便利である反面、そのシートパレット移動可能距離が押し出し動作におけるフェイスプレートの伸長限度で制約され、その移動可能距離よりも遠くにあるシートパレットは何らかの手段によってその移動可能距離の範囲内に移動させなければならず、二度手間を要するという問題もある。
【0007】
一方、特許文献1で開示される発明は、前記プッシュプルアタッチメントにおける油圧装置等の高価な装置を必要とする欠点、移動距離が短いという欠点等を解決する手段を提供するものであるが、やはり高価な装置であるフォークリフトの利用を前提としており、また、高価な油圧装置等を用いず手動のトグルクランプ装置を提案しているものの、トグル機構等を備えるために油圧装置ほどではないがやはり複雑で高価な構造を必要としている。
【0008】
また、シートパレットの把持方法も、牽引方向に対して垂直上方からシートパレットをグリッパーで基板に押圧して把持するプッシュプルアタッチメントの方法を踏襲している。このように、シートパレットをその牽引方向に対して垂直上方からグリッパーで押圧して把持する方法では、シートパレット上に載置した荷物の荷重によりシートパレット下面と床面の間に生じる摩擦力に抗して牽引する牽引力よりも、グリッパーの押圧力によってグリッパー先端とシートパレット上面の間及びシートパレット下面と基板との間に生じる静止摩擦力が大きいことが必要である。従って、荷物が重くなれば牽引力も大きくする必要があり、牽引力の増大に伴ってグリッパーの押圧力も大きくする必要があるが、手動トグルクランプ装置は、油圧装置に比較して、加えられる押圧力に限界があり、重い荷物の牽引には向かないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のような従来のプッシュプルアタッチメント以外の有効かつ安価な装置を検討しようとする要望や試みがなかった訳ではないが、上記問題を解決してシートパレットを破損させることなく確実に牽引できる、実用的で安価な装置は、いまだ提供されていないのが実情である。このため、シートパレットの牽引作業を確実に実行でき、かつ、コストを低減できる新たな技術が求められている。
【0011】
本発明は上記した問題に着目して為されたものであって、シートパレットの牽引作業を確実に実行でき、かつ、コストを低減できるシートパレットの牽引補助装置、牽引補助装置付きシートパレット及びシートパレットの牽引方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載のシートパレットの牽引補助装置は、シートパレットの端部の荷物が載置されていない部分が上方に折り曲げられた立上げ部の裏面を受ける立上受け面と、立上受け面からシートパレットの端部の床面に対向している裏面の下へ潜り込んで延出する下受け面と、を備えた第1押え具と、シートパレットの端部を間において第1押え具と重ね合わせられ、シートパレットの端部の立上げ部の表面を押える立押え面を備えた第2押え具と、第2押え具に連結された牽引部材と、を有する。シートパレットの表面とは、荷物が載置されている側の面であり、裏面とは、荷物が載置されていない側の面である。
【0013】
一般的にシートパレットを用いた荷役作業では、荷物が載せられたシートパレットの端部を牽引して、シートパレットが敷かれた床面等の上で荷物を移動させる。請求項1に記載のシートパレットの牽引補助装置では、第1押え具の下受け面がシートパレットの端部の裏面へ延出しており、立上受け面が折り曲げられたシートパレットの端部の立上げ部の裏面を受けて支持する。また、シートパレットの端部を間において第1押え具と第2押え具とを重ね合わせると、第2押え具の立押え面がシートパレットの端部の立上げ部の表面を押える。
【0014】
ここで、牽引部材を第2押え具と連結し、牽引部材にワイヤ等を掛けてウィンチ等の牽引動力装置で引っ張ると、第2押え具の立押え面が折り曲げられたシートパレットの端部の立上げ部を第1押え具の立上受け面へ押し付ける。このため、シートパレットの端部は、第1押え具と第2押え具からの押圧力によってシートパレットとの間に生じる摩擦力及び同じく押圧力によって第2押え具の角がシートパレットに食い込むことによって生じる機械的抵抗力により第1押え具と第2押え具との間から抜け落ちることなく、牽引部材と一体となって移動することができる。
【0015】
このように牽引力を利用してシートパレットを把持することにより、従来技術のようにシートパレットの把持のために油圧装置やトグルクランプ装置など把持力を付与する装置を別途必要とせずに、重い荷物を移動させることができる。なお、本発明の構成において、第1押え具と第2押え具とを締め付ける押圧力を高める目的で、クランプその他の締付具を補助的に併用してシートパレットを挟持した両方の押え具を締め付けることもできる。
【0016】
請求項2に記載のシートパレットの牽引補助装置では、牽引部材は、牽引動力装置に対して着脱自在である。上記構成によれば、荷物を所定の場所まで移動させた後、牽引部材を牽引動力装置から取り外すことで、第1押え具、第2押え具及び牽引部材を次の荷役作業場所へ運ぶことができ、牽引補助装置の使い回しが可能となり、牽引作業のランニングコストを抑えることができる。また、牽引部材は、第2押え具に対しても脱着自在としておけば、牽引補助装置の格納や運搬の利便性が向上する。
【0017】
請求項3に記載のシートパレットの牽引補助装置では、牽引部材の一端部には雄ネジ部が形成されると共に、他端部にはリング部が設けられ、第2押え具には、牽引部材の雄ネジ部が螺合する雌ネジ部が形成されている。上記構成によれば、第2押え具の雌ネジ部へ第1押え具の貫通孔を貫通させた牽引部材の雄ネジ部を螺合させることで、牽引部材を第2押え具に連結することができる。そして、例えば、牽引部材のリングにワイヤに取付けられたフックを引っ掛けることで、牽引部材と牽引動力装置の間隔の自在な延長や短縮が可能となり、シートパレットと牽引動力装置との任意の位置関係に合わせてスムーズに牽引作業の準備ができる。
【0018】
請求項4に記載のシートパレットの牽引補助装置では、第1押え具とシートパレットの端部との間、又は、第2押え具とシートパレットの端部との間には、滑り止めシートが配置されている。上記構成によれば、滑り止めシートを間に入れることで、シートパレットが抜け落ちることが更に抑制される。
【0019】
請求項5に記載のシートパレットの牽引補助装置では、第2押え具は、シートパレットの端部の基部の表面を押える下押え面を備え、第1押え具の立上受け面と下受け面とが形成する隅部へ、第2押え具の立押え面と下押え面が形成する角部を引き付けるネジ部材が、第1押え具から第2押え具へ亘って締結されている。上記構成によれば、第1押え具の隅部へ第2押え具の角部が喰い込んでシートパレットの端部が押え込まれるため、シートパレットがズレ難くなる。
【0020】
請求項6に記載のシートパレットの牽引補助装置は、第1押え具及び第2押え具は、シートパレットの牽引方向の端部に沿った幅と等しい長さとされ、第1押え具の両端部に設けられた側壁と、側壁に設けられ第2押え具の両端部を第1押え具に対して接離可能に支持する支持部材と、を有する。上記構成によれば、第1押え具に対して第2押え具を牽引時に配置する際の横ずれを防止でき、また、第1押え具及び第2押え具の一体性が高められているため、牽引補助装置の第1押え具や第2押え具を紛失し難くなる。
【0021】
請求項7に記載のシートパレットの牽引補助装置では、第2押え具は、第1押え具とシートパレットの端部とが嵌合する凹部を有するコ字形の固定具と、固定具の牽引部材側の側壁に設けられた雌ネジ孔に差し込まれた固定ボルトとを備える。上記構成によれば、第2押え具を第1押え具に嵌合させ、固定ボルトが第1押え具の側壁部を押圧することによって、第1押え具及び第2押え具の間にシートパレットの端部を挟持できるので、作業が容易になる。
【0022】
請求項8に記載の牽引補助装置付きシートパレットは、シートパレットと、折り曲げられたシートパレットの端部の立上げ部の裏面を受ける立上受け面と、立上受け面からシートパレットの端部の裏面へ延出する下受け面と、を備えた第1押え具と、シートパレットの端部を間において第1押え具と重ね合わせられ、シートパレットの端部の立上げ部の表面を押える立押え面を備えた第2押え具と、第2押え具に連結された牽引部材と、を有する。
【0023】
上記構成によれば、請求項1に記載のシートパレットの牽引補助装置と同様に、シートパレットの端部は第1押え具と第2押え具との間から簡単には抜け落ちず、牽引部材と一体となって移動する。このため、油圧でシートパレットの端部を挟持するグリッパーを使用しなくても、荷物を移動させることができる。
【0024】
請求項9に記載のシートパレットの牽引方法は、請求項2~7のいずれか一項に記載のシートパレットの牽引補助装置を、コンテナの内側で第1の荷物が搭載された第1のシートパレットの端部に取り付けるステップと、取付けられた牽引補助装置を介して第1のシートパレットを牽引して第1の荷物をコンテナの外側に降ろすステップと、第1のシートパレットから牽引補助装置を取り外すステップと、取り外した牽引補助装置を、コンテナの内側で第2の荷物が搭載された第2のシートパレットの端部に取り付けるステップと、牽引補助装置を介して第2のシートパレットを牽引して第2の荷物をコンテナの外側に降ろすステップと、を含む。
【0025】
上記構成によれば、第1の荷物を降ろした後、牽引補助装置を第1のシートパレットから取り外すことで、牽引補助装置を次の第2の荷物の荷降ろしのために使い回すことが可能となり、牽引作業のランニングコストを抑えることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係るシートパレットの牽引補助装置によれば、シートパレットの牽引作業を確実に実行でき、かつ、コストを低減できるシートパレットの牽引補助装置、牽引補助装置付きシートパレット及びシートパレットの牽引方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の実施形態に係るシートパレットの牽引補助装置の構成を説明する斜視図である。
【
図2】本実施形態に係るシートパレットの牽引補助装置を
図1中の2-2線の位置における鉛直面で断面した図である。
【
図3】本実施形態に係るシートパレットの牽引方法を、一部を断面して説明する側面図である(その1)。
【
図4】本実施形態に係るシートパレットの牽引方法を説明する断面図である(その2)。
【
図5】本実施形態に係るシートパレットの牽引方法を、一部を断面して説明する側面図である(その3)。
【
図6】本実施形態に係るシートパレットの牽引方法を、一部を断面して説明する側面図である(その4)。
【
図7】本実施形態の第1変形例に係る牽引補助装置を説明する断面図である。
【
図8】本実施形態の第2変形例に係る牽引補助装置を説明する斜視図である。
【
図9】本実施形態の第3変形例に係る牽引補助装置を説明する断面図である。
【
図10】本実施形態の第4変形例に係る牽引補助装置を説明する断面図である。
【
図11】シートパレットの巻き方の他の例を
図1中の2-2線の位置における鉛直面で牽引補助装置を断面して説明する図である。
【
図12】本実施形態の第5変形例に係るシートパレットの牽引補助装置の構成を説明する斜視図である。
【
図13】本実施形態の第6変形例に係るシートパレットの牽引補助装置を
図1中の2-2線の位置における鉛直面で断面して説明する図である。
【
図14】本実施形態の第7変形例に係るシートパレットの牽引補助装置の構成を説明する斜視図である。
【
図15】本実施形態の第7変形例に係るシートパレットの牽引補助装置を固定ボルトの位置における鉛直面で断面して説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一の部分及び類似の部分には、同一の符号又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各装置や各部材の厚みの比率等は現実のものとは異なる。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判定すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
【0029】
<牽引補助部材の構造>
本実施形態に係るシートパレットの牽引補助装置10(以下、単に「牽引補助装置10」とも称する。)は、
図1に示すように、第1押え具12、第2押え具14及び牽引部材16を有する。第1押え具12と第2押え具14とは、シートパレット20の端部22を間において、互いに重ね合わせられている。
【0030】
第1押え具12とシートパレット20の端部22の間には、第1滑り止めシート13が配置されると共に、第2押え具14とシートパレット20の間には、第2滑り止めシート15が配置されている。なお、第1滑り止めシート13及び第2滑り止めシート15のうちいずれか一方のみが配置されても、牽引補助装置を実現できる。
【0031】
(シートパレット)
シートパレット20は、例えばPP製であり、厚みは、例えば、約0.6mm~約3.0mmである。シートパレット20は、平面視で、上面上に載置される荷物40の底面より大きい面積を有する矩形状である。例えば、荷物40の底面が約1000mm×約1000mmである場合、この荷物40が載置されるシートパレット20の矩形の寸法は、約1500mm×約1500mmや、約1500mm×約2000mm等に設定できる。
【0032】
シートパレット20の端部22は、上側に荷物40が存在しない余剰部分であり、立上げ部22Aと基部22Bとを有する。立上げ部22A及び基部22Bは、折り曲げられたシートパレット20の端部22において、折り曲げ線を挟んで隣接する。シートパレット20の端部22は、牽引補助装置10の第1押え具12と第2押え具14との間に挟持され、シートパレット20は、牽引補助装置10を介して、外部の牽引動力装置30(
図5参照)によって、牽引方向Dに牽引される。以下、牽引補助装置10について具体的に説明する。
【0033】
(第1押え具)
第1押え具12は、側面視又は断面視で、L字状の部材であり、例えばアルミニウム等の軽量金属素材で作製されている。なお、第1押え具の材料としては、鉄鋼等、他の金属素材又は適切な強度を有するものであれば非金属素材が採用されてもよい。第1押え具12の長手方向(
図1中の左上側から右下側に向かう方向)に沿って測った幅は、シートパレット20の端部22の長手方向の幅とほぼ同じであり、例えば、約1500mmである。なお、第1押え具12の長手方向の幅は、シートパレット20の幅より長くても短くてもよく、適宜変更できる。
【0034】
第1押え具12は、側壁部12Aと載置部12Bとを備える。側壁部12Aと載置部12Bとはいずれも平板状で、ほぼ直交し、第1押え具12のL字を構成している。載置部12Bは、床面G上に配置されると共に、側壁部12Aは、載置部12Bから上側に鉛直に起立している。L字のコーナーに相当する、側壁部12Aと載置部12Bとの連結部分において、連結部分の外側面の下部は、
図2中の右側から左側に向かう方向(牽引方向D)に沿って、連結部分と床面Gとの隙間が拡がるように、湾曲していることが望ましいが、湾曲の程度は、湾曲が全くないものも含め、適宜選択することができる。
【0035】
側壁部12Aと載置部12Bとは、平面視で、牽引方向Dにほぼ直交するように延びている。すなわち、第1押え具12の長手方向と牽引方向Dとは直交している。載置部12Bの牽引方向Dに沿って測った長さは、例えば、約100mmであり、側壁部12Aの高さは、例えば約50mmである。なお、載置部12Bの長さ及び側壁部12Aの高さは、適宜変更できる。
【0036】
側壁部12Aと載置部12Bとが牽引方向Dと成す最初の角度は、荷物を載置したシートパレットの向きを変えるために引き回す必要がある場合には、適宜変更できる。なお、第1押え具12及び第2押え具14が、シートパレット20の一辺の端部を縁に沿って平行に把持することによって、シートパレット20全面に牽引力が均等に作用する。すなわち、本実施形態に係る牽引補助装置10は、局部的に力が掛かってシートパレット20が裂けないような位置関係或いは角度関係が実現するように構成されている。
【0037】
シートパレット20を牽引するためにシートパレット20を牽引補助装置10で挟んでセットした最初の段階では、微妙に垂直からのズレが生じる場合がある。しかし、ズレは、牽引を始めれば、動作に伴って自然に垂直になるため、セット時の角度のズレはほぼ無視できる。また、最初にシートパレット20が置かれている場所でのシートパレット20の方向を、牽引して移動した場所では異なる方向に向けたいような場合、敢えてシートパレット20の正面でなく、違う辺の端部を把持して牽引することも可能である。この場合、牽引の初期には引き回しが生じ、引き回しでシートパレット20の向きが変わった後、通常の直線的牽引に移行することになる。
【0038】
図2に示すように、側壁部12Aの内壁面である立上受け面12A1は、折り曲げられたシートパレット20の端部22の立上げ部22Aの裏面(
図2中の立上げ部22Aの左側の面)を、第1滑り止めシート13を介した状態で、受ける。載置部12Bの上面である下受け面12B1は、立上受け面12A1からシートパレット20の端部22の基部22Bの裏面(
図2中の基部22Bの下側の面)の下へ潜り込んで延出する。下受け面12B1は、基部22Bの裏面を、第1滑り止めシート13を介した状態で受けて支持する。
【0039】
側壁部12Aの長手方向のほぼ中央で、上下方向のほぼ中央の高さには、円形状の貫通孔12Cが設けられている。貫通孔12Cの径は、貫通孔12Cに差し込まれている牽引部材16の一端の軸の径より大きい。なお、本実施形態では、貫通孔12Cの個数は1個であるが、2個以上設けられてもよい。
【0040】
(第1滑り止めシート)
第1滑り止めシート13は、例えば、静止摩擦係数の大きいゴム素材を用いた部材であり、第1押え具12に接着剤等によって接合されている。本実施形態では、第1滑り止めシート13は、載置部12Bのシートパレット20側(
図2中の上側)の上面上と側壁部12Aのシートパレット20側(
図2中の右側)の壁面上とにおいて、長手方向全体に亘って延びるように配置されている。なお、第1滑り止めシート13の材料としては、ゴム素材に限定されず、例えばウレタン等、静止摩擦係数が大きいものである限り、適宜変更できる。また、第1滑り止めシートの厚みも適宜変更できる。
【0041】
第1滑り止めシート13の配置形状はこれに限定されず、シートパレット20の端部22と接触する限り、適宜変更できる。例えば、第1滑り止めシート13は、立上受け面12A1及び下受け面12B1のそれぞれの上に、部分的に配置されてもよい。第1滑り止めシート13の貫通孔12Cに対応する位置には、貫通孔13C(
図4参照)が設けられている。
【0042】
なお、第1滑り止めシート13の素材としては、多くの素材が利用でき、例えば、ゴム以外にも、布、特に粗めに織った布、不織布、粗め壁紙、和紙なども、採用可能である。第1滑り止めシート13の素材の摩擦係数は、少なくとも第1押え具12の表面とシートパレット20の表面とを直接接触させた場合の摩擦係数より大きければよい。また、上記した各種の素材に、ロジンや松ヤニのような滑止剤を付着或いは含浸させれば、更に、滑り止め効果が大きくなる。
【0043】
また、例えば、両面テープの一面に、細い針金製のネットを貼り付けた滑り止め素材を用意し、両面テープの粘着面を第1押え具12側に貼り付けて固定し、針金ネットを貼り付けた側の他面をシートパレットと当接させることもできる。シートパレットが弾性を有するプラスチック製であるので、第1押え具12とシートパレットに押圧力が加われば、針金がシートパレットの表面に一定程度食い込んで、大幅に滑るのを抑制できる。このように、滑り止めシートとしては、色々な素材が色々な形状で利用可能である。
【0044】
(第2押え具)
第2押え具14は、
図1に示したように、底面が正方形状の直方体型であり、例えばアルミニウム等の軽量金属素材で作製されている。なお、第2押え具の材料としては、鋼製等、他の金属素材又は適切な強度を有するものであれば非金属素材が採用されてもよい。また、複数の素材を組み合わせた複合材、例えば周囲がプラスチック素材で、内部に金属の芯材を有する材料であってもよい。第2押え具14は、平面視で、牽引方向Dにほぼ直交するように延び、第1押え具12のL字の内側に配置されている。第2押え具14の長手方向に沿って測った幅は、第1押え具12とほぼ同じである。すなわち、第1押え具12及び第2押え具14の長手方向の長さはいずれも、シートパレット20の端部22に沿った長さとほぼ同じとされている。前記第2押え具14が牽引方向Dと成す最初の角度は、荷物を載置したシートパレットの向きを変えるために引き回す必要がある場合には、適宜変更できる。
【0045】
第2押え具14の牽引方向Dに沿って測った長さは、例えば、約40mmであると共に、上下方向の高さは、例えば、約40mmである。なお、第2押え具14の寸法は、適宜変更できる。また、第2押え具14の形状は、直方体型に限定されず、円柱型等、他の幾何学形状に適宜変更できる。
【0046】
図2に示すように、第2押え具14は、立押え面14Aと、下押え面14Bとを備える。立押え面14Aは、シートパレット20の端部22の立上げ部22Aの表面(
図2中の立上げ部22Aの右側の面)を、第2滑り止めシート15を介した状態で、押える。下押え面14Bは、シートパレット20の端部22の基部22Bの表面(
図2中の基部22Bの上側の面)を、第2滑り止めシート15を介した状態で、押さえる。なお、第2押え具の下受け面14Bは必須ではない。
【0047】
第2押え具14には、牽引部材16の雄ネジ部16Aが螺合する雌ネジ部14Cが、第2押え具14の長手方向のほぼ中央で、上下方向のほぼ中央の高さに形成されている。雌ネジ部14Cは、第1押え具12の貫通孔12Cとほぼ同心の位置に対応して設けられている。
【0048】
(第2滑り止めシート)
第2滑り止めシート15は、第1滑り止めシート13と同様に、例えば、静止摩擦係数の大きいゴム素材を用いた部材であり、第2押え具14に接着剤等によって接合されている。本実施形態では、第2滑り止めシート15は、
図2中の第2押え具14の下面上と、第2押え具14の左側面上とにおいて、長手方向全体に亘って延びるように配置されている。
【0049】
しかし、第2滑り止めシート15の配置形状はこれに限定されない。シートパレット20の端部22と接触する限り、適宜変更できる。例えば、第2滑り止めシート15は、第2押え具14の下面上及び左側面上で、部分的に配置されてもよい。第2滑り止めシート15には、第1押え具12の貫通孔12C、及び、第1滑り止めシート13の貫通孔13Cに対応する位置に、貫通孔15C(
図4参照)が設けられている。
【0050】
(牽引部材)
牽引部材16は、例えば鉄鋼等の金属製であり、棒状の一端部(
図2中の右端部)の周面上には雄ネジ部16Aが形成されると共に、他端部にはリング部16Bが設けられている。雄ネジ部16Aは、第1押え具12の貫通孔12C、第1滑り止めシート13の貫通孔13C及び第2滑り止めシート15の貫通孔15Cに差し込まれている。また、雄ネジ部16Aの先端は尖っており、雄ネジ部16Aは、シートパレット20を部分的に貫通している。
【0051】
雄ネジ部16Aは、第2押え具14の雌ネジ部14Cと対応する。雄ネジ部16Aが第1押え具12に形成された貫通孔12Cを貫通して雌ネジ部14Cに差し込まれることによって、牽引部材16は、第2押え具14へ連結されている。雄ネジ部16Aと雌ネジ部14Cとは、ネジ結合しているため、ネジを締める又は緩めることによって、牽引部材16は、第2押え具14に対して着脱自在である。
【0052】
リング部16Bは、牽引部材16の他端(
図2中の左端)側に設けられ、リング部16Bの開口に、外部の牽引動力装置30(
図5参照)に連結されたフック18が差し込まれている。なお、牽引部材16が牽引動力装置30と連結するための構造としては、リング部16Bとフック18との組み合わせに限定されない。例えば、牽引部材16側にリング部16Bに代えてフック状の部分が設けられると共に、フック状の部分に対応するリング状の部材が牽引動力装置30側に設けられてもよい。
【0053】
また、牽引補助装置10の牽引部材16側に、牽引動力装置30側のフック18が差し込まれる凹部が設けられてもよい。また、第2押え具14に対して着脱自在な連結構造としては、リング部16Bとフック18との組み合わせ以外であってもよく、例えば、牽引部材16側の部材と牽引動力装置30側の部材とが互いに嵌合して連結されてもよい。牽引部材16は、牽引動力装置30に対して着脱自在である。
【0054】
<シートパレットの牽引方法>
次に、本実施形態に係る牽引補助装置10を用いたシートパレットの牽引方法を、
図3~
図6を参照して説明する。本実施形態では、
図3に示すように、コンテナヤードYにおいて、海上輸送されたコンテナ24の開口部24Aから荷降ろしする場合を例示的に説明する。コンテナ24の床面G上には、第1の荷物40A、第2の荷物40B、第3の荷物40C及び第4の荷物40Dが、それぞれ対応するシートパレット20A~20Dを介して載置されている。
【0055】
第1の荷物40Aは、第1のシートパレット20Aの上に、第2の荷物40Bは、第2のシートパレット20Bの上に、第3の荷物40Cは、第3のシートパレット20Cの上に、第4の荷物40Dは、第4のシートパレット20Dの上に、それぞれ載置されている。第1のシートパレット20A、第2のシートパレット20B、第3のシートパレット20C及び第4のシートパレット20Dは、
図1及び
図2中で説明したシートパレット20と等価である。
【0056】
(取り付けステップ)
まず、
図4に示すように、牽引補助装置10を、コンテナ24の内側で、第1の荷物40Aが搭載された第1のシートパレット20Aの端部22を間において、第1押え具12と第2押え具14とを互いに重ね合わせる。そして、牽引部材16(
図2参照)を、第1押え具12の貫通孔12Cを貫通させて差し込み、第2押え具14へ連結する。差し込みの際、牽引部材16の雄ネジ部16A(
図2参照)の尖った先端によって、第1のシートパレット20Aの端部22に孔が開けられる。なお、この取り付けステップは、フォークリフト28(
図5参照)のオペレータ26が、フォークリフト28から降りて、自ら実施することができる。
【0057】
(連結ステップ)
次に、
図5に示すように、オペレータ26は、フォークリフト28に搭乗し、フォークリフト28を操作して、フォーク28Aに差し込んだフォークリフトパレット32を、コンテナ24の開口部24Aに近接させる。そして、オペレータ26は、フォークリフトパレット32の上面と高さと、コンテナ24の床面Gの高さとを揃える。本実施形態では、牽引動力装置30は、フォーク28Aの上に配置されている。なお、牽引動力装置30の配置位置は、これに限定されず、例えばフォークリフト28の操作室の屋根の上等、適宜変更できる。また、フォーク28Aの根元側(
図5中の左側)の上面上には、木材等からなるスペーサ34が設けられている。
【0058】
次に、オペレータ26は、フォークリフト28から降りて、再度、牽引補助装置10に近接し、牽引部材16のリング部16B(
図2参照)に、牽引動力装置30側のフック18を差し込む。フック18は、ワイヤロープ36の一端に連結され、ワイヤロープ36の他端は、ウィンチ等の牽引動力装置30に連結されている。
【0059】
(牽引ステップ)
次に、
図6に示すように、オペレータ26は、再度、フォークリフト28に搭乗し、牽引動力装置30を操作して、取付けられた牽引補助装置10を介して第1のシートパレット20Aを牽引する。牽引時、牽引補助装置10では、第1のシートパレット20Aの端部22の裏面へ延出する第1押え具12の下受け面12B1が、端部22の裏面を支持する。また、立上受け面12A1が、折り曲げられた第1のシートパレット20Aの端部22の立上げ部の裏面を受けて支持する。また、第2押え具14の下押え面14Bが第1のシートパレット20Aの端部22の表面を押さえ、立押え面14Aが端部22の立上げ部の表面を押える(
図2参照)。
【0060】
そして、牽引の進行によって、第2押え具14の立押え面14Aが、折り曲げられた第1のシートパレット20Aの端部22の立上げ部を第1押え具12の立上受け面12A1へ押し付ける。このため、第1のシートパレット20Aの端部22は、第1押え具12と第2押え具14との間から抜け落ちない。そして、端部22が第1押え具12と第2押え具14との間で挟持された状態が保持されたまま、第1のシートパレット20は、牽引部材16と一体となって牽引動力装置30側に移動する。そして、第1の荷物40Aが第1のシートパレット20Aごと、フォークリフトパレット32の上に引き込まれ、コンテナ24から降ろされる。
【0061】
なお、スペーサ34によって第1の荷物40Aと牽引動力装置30との間に一定長の隙間が確保されているため、引き込み動作の際、牽引補助装置10が牽引動力装置30に衝突することが防止される。一方、スペーサ34の長さ(
図6中の左右方向の長さ)を一定長確保すると、フォークリフトパレット32に差し込むためのフォーク28Aの長さが相対的に短くなる場合がある。フォーク28Aの長さが短くなると、フォークリフトパレット32を十分に支持できず、上側の第1の荷物40Aの重量に起因して、フォーク28Aが先端側に沈下して撓む懸念が生じる。フォーク28Aの撓みを防止する観点から、長さがより長いフォークを使用したり、延長用のカバーをフォーク28Aの先端に取り付けたりすることができる。
【0062】
(取り外しステップ)
次に、オペレータ26は、フォークリフト28から降りて、牽引部材16のリング部16Bからフック18を取り外すと共に、牽引部材16を第1押え具12及び第2押え具14から抜き取ることによって、第1のシートパレット20Aから牽引補助装置10を取り外す。取り外された牽引補助装置10は、例えば、コンテナ24の床面G上に仮置きしておけばよい。そして、オペレータ26は、第1のシートパレット20Aごと第1の荷物40Aを、フォークリフト28を操作して、所定の場所へ搬送する。本実施形態では、第1のシートパレット20Aが用いられることによって、第1のシートパレット20Aごと荷物40Bを所望の場所に容易に移動できる。
【0063】
次に、オペレータ26は、フォークリフト28を操作して、コンテナ24に戻る。そして、仮置きされた牽引補助装置10を、
図4を用いて説明した取り付けステップの場合と同様に、コンテナ24の内側で第2の荷物40Bが搭載された第2のシートパレット20Bの端部22に取り付ける。そして、オペレータ26は、第1のシートパレット20Aの場合と同様に、連結ステップ及び牽引ステップを実施することによって、牽引補助装置10を介して第2のシートパレット20Bを牽引して第2の荷物40Bをコンテナ24の外側に降ろす。
【0064】
そして、オペレータ26は、第1のシートパレット20Aの場合と同様に、第2のシートパレット20Bにおいて、第1のシートパレット20Aの場合と同様に取り外しステップを実施する。そして、第3の荷物40Cが載置された第3のシートパレット20Cに対しても、取り付けステップ、連結ステップ、牽引ステップ及び取り外しステップの一連の作業を実施する。更に、第4の荷物40Dが載置された第4のシートパレット20Dに対しても一連の作業を実施する。
【0065】
上記のとおり、取り付けステップ、連結ステップ、牽引ステップ及び取り外しステップの一連の作業を逐次的に実施することによって、オペレータ26単独でも、コンテナ24の内側のすべての荷物40A~40Dを荷降ろしできる。オペレータ26以外の他の作業員が必須でないため、作業に係る人員コストを低減できる。なお、本実施形態に係るシートパレットの牽引方法は、牽引補助装置10の取り付け、連結及び取り外し作業については他の作業員が実施し、オペレータ26はフォークリフト28の操作を含む他の作業を実施するように、分業して実施することもできる。
【0066】
(作用効果)
本実施形態に係るシートパレット20の牽引補助装置10では、牽引時、シートパレット20の端部22は第1押え具12と第2押え具14との間から抜け落ちることなく、牽引部材16と一体となって移動する。このため、油圧でシートパレット20の端部22を挟持するグリッパーを必要とするプッシュプルアタッチメントを使用しなくても、重い荷物40を移動させることができる。よって、シートパレット20の牽引作業を確実に実行でき、かつ、コストを低減することができる。
【0067】
また、本実施形態では、牽引部材16は、牽引動力装置30に対して着脱自在であると共に、第2押え具14に対して着脱自在である。荷物40を所定の場所まで移動させた後、牽引部材16を、牽引動力装置30及び第2押え具14から取り外すことで、第1押え具12、第2押え具14、及び牽引部材16を次の荷役作業場所へ運ぶことができる。このため、牽引補助装置10の使い回しが可能となり、牽引作業のランニングコストを抑えることができる。なお、牽引部材16が第2押え具14に対して比較的小さい場合、牽引部材16と第2押え具14とを分解すると、牽引部材16が紛失し易い。このため、牽引補助装置10を移動させる際には、牽引部材16と第2押え具14とを組み立てた状態で移動させれば、牽引部材16の紛失を防止できる。
【0068】
また、本実施形態では、第2押え具14には、牽引部材16の雄ネジ部16Aが螺合する雌ネジ部14Cが形成されている。第2押え具14の雌ネジ部14Cへ第1押え具12の貫通孔12Cを貫通させた牽引部材16の雄ネジ部16Aを螺合させることで、牽引部材16を第2押え具14に連結することができる。そして、例えば、牽引部材16のリングにワイヤに取付けられたフック18を引っ掛けることで、スムーズに牽引作業の準備を行うことができる。
【0069】
また、本実施形態では、第1押え具12とシートパレット20の端部22との間に第1滑り止めシート13が配置されると共に、第2押え具14とシートパレット20との間に第2滑り止めシート15が配置されている。第1滑り止めシート13及び第2滑り止めシート15が間に挟まれることで、シートパレット20が抜け落ちることが、更に抑制される。
【0070】
また、本実施形態に係るシートパレットの牽引方法によれば、第1の荷物40Aを降ろした後、牽引補助装置10が第1のシートパレット20Aから取り外される。このため、牽引補助装置10を次の第2の荷物40Bの荷降ろしのために使い回すことが可能となり、牽引作業のランニングコストを抑えることができる。また、本実施形態に係るシートパレットの牽引方法は、オペレータ26が単独でも実施できるため、人員削減の面で有利であり、ランニングコストを一層抑えることができる。
【0071】
また、
図2中の床面G上に例示された突出部G1のような、上側に突出した障害物が牽引経路(搬送経路)の途中に存在する場合を考える。図示を省略するが、障害物としては、床面G上の突出部G1に限定されず、例えば、フォークリフトパレット32(
図5参照)の上面上に形成された1mm程度の高さの凸部等、他の形態も存在し得る。突出部G1や凸部によって、牽引補助装置10が牽引方向Dに沿って移動する際、第1押え具12の下面が接触する面に段差が形成される。
【0072】
牽引補助装置10が床面G上の突出部G1やフォークリフトパレット32の上面上の凸部を乗り越える際、第1押え具12の外側面が突出部G1や凸部と衝突し、第1押え具12は、その進行を妨げる反力を突出部G1や凸部から受ける。ここで、本実施形態に係るシートパレットの牽引補助装置10では、
図2に示したように、第1押え具12の側壁部12Aと載置部12Bとの連結部分の外側面の下部は、牽引方向Dに沿って外側面と床面Gとの隙間が拡がるように、湾曲している。このため本実施形態によれば、連結部分が湾曲することなく角張っている場合と比べ、第1押え具12が突出部G1や凸部と衝突する際に受ける反力によって第1押え具12の進行が湾曲した斜面に沿って上方に反らされ、突出部G1や凸部を乗り越えることになる。結果、牽引補助装置10が衝突により停止せずに移動を続けることができる。
【0073】
なお、第1押え具12の受ける反力を低減するため、牽引動力装置30を、例えばフォークリフト28のマストの上側やキャビンの屋根の上等に配置し、特許文献1のように、牽引動力装置30と牽引補助装置10との高低差を拡げる方法が考えられる。高低差を拡げることによって、水平面に対するワイヤロープ36の傾斜角度を大きくすることが可能になるため、第1押え具12の下部と床面G又はフォークリフトパレット32の上面との間に隙間を大きく形成でき、床面G又はフォークリフトパレット32の上面に存在する凸部などの障害物との衝突をある程度回避できる。
【0074】
しかし、牽引動力装置30を高い位置に配置すると、牽引補助装置10を上側に引き上げるために必要な力が大きくなるため、電力消費が大きくなると共に、牽引動力装置30への負担も大きくなる。すなわち、牽引補助装置10に対して、牽引力を効率よく伝達することが難しくなる。また、牽引動力装置30の配置位置がフォークリフト28のマストの上側の場合、マストが前傾する懸念が生じる。また、牽引動力装置30の配置位置がキャビンの屋根の上の場合、ワイヤロープ36がマストと干渉することを回避するため、特開2002-173296号に開示されているように、ワイヤロープ36の位置を調整する滑車等の部材が必要になり、全体の構成が複雑になる。
【0075】
本実施形態では、
図5に示したように、牽引動力装置30と牽引補助装置10とは、互いにほぼ同じ高さであると見做せる程度に、牽引動力装置30と牽引補助装置10との高低差が抑えられている。このため、牽引補助装置10に対して牽引力を効率よく伝達できると共に、マストの前傾や全体の構成が複雑になることを回避できる。また、第1押え具12の外側面の下部が湾曲していることによって、牽引動力装置30の出力が比較的小さくても牽引補助装置10が突出部G1や凸部を乗り越えることが可能になるので、牽引動力装置30を小型化することも可能である。
【0076】
<第1変形例>
図7に示すように、牽引補助装置10Aに、ボルト等のネジ部材50が設けられてもよい。
図7の断面図は、牽引補助装置10Aの長手方向において、
図2とは異なる位置で、牽引補助装置10Aを鉛直面によって断面した図である。
【0077】
第1変形例では、第1押え具12において、牽引部材16が差し込まれる貫通孔12Cとは異なる位置に、ネジ部材50が差し込まれる貫通孔12Dが設けられている。貫通孔12Dは、
図7中の側壁部12Aの左側の外壁面から、内壁面である立上受け面12A1に向かうに従って、下側から上側に向かって延びるように傾斜している。
【0078】
また、第1滑り止めシート13及び第2滑り止めシート15には、第1押え具12の貫通孔12Dに対応する位置に貫通孔(符号省略)が、それぞれ設けられている。また、第2押え具14には、第1押え具12の貫通孔12Dと同心の位置に雌ネジ部14Dが設けられている。雌ネジ部14Dの穴は、
図7中の第2押え具14の左側から右側に向かうに従って、上側に向かうように傾斜している。
【0079】
ネジ部材50は、第1押え具12の貫通孔12D、第1滑り止めシート13の貫通孔及び第2滑り止めシート15の貫通孔に差し込まれている。また、ネジ部材50は、シートパレット20を部分的に貫通している。また、ネジ部材50は、雌ネジ部14Dに差し込まれ、ネジ結合している。すなわち、ネジ部材50は、第1押え具12から第2押え具14へ亘って締結されている。
【0080】
ネジ部材50によって、第1押え具12の立上受け面12A1と下受け面12B1とが形成する隅部へ、第2押え具14の立押え面14Aと下押え面14Bが形成する角部が、引き付けられる。第1変形例に係るシートパレット20の牽引補助装置10Aの他の構成については、
図1~
図6に示した牽引補助装置10における同名の部材と等価であるため、重複説明を省略する。
【0081】
第1変形例では、第1押え具12の隅部へ第2押え具14の角部が喰い込んでシートパレット20の端部22が押え込まれるため、シートパレット20がズレ難くなる。第1変形例に係るシートパレット20の牽引補助装置10Aの他の効果については、
図1~
図6に示したシートパレット20の牽引補助装置10の場合と同様である。
【0082】
<第2変形例>
図8に示すように、第2変形例に係る牽引補助装置10Bは、第1押え具12の両端部に設けられた側壁52と、側壁52に設けられ第2押え具14の両端部を第1押え具12に対して接離可能に支持する支持部材54と、を有する。なお、第1滑り止めシート、第2滑り止めシート及びシートパレットの図示は、見易さのため省略する。また、第1押え具12及び第2押え具14の長手方向の長さはいずれも、シートパレット20の端部22に沿った長さとほぼ同じとされている。
【0083】
側壁52には、上下方向に延びる長孔の貫通孔56が設けられ、貫通孔56には、ボルト等の支持部材54を差し込むことが可能である。支持部材54の軸の先端は、第2押え具14に設けられた固定穴58に差し込まれる。固定穴58には、雌ネジ部が設けられ、雌ネジ部は、支持部材54の雄ネジ部と結合する。
【0084】
なお、
図8中では、第1押え具12及び第2押え具14の手前側の端部のみが図示され、奥側の端部の図示が省略されているが、奥側においても手前側と同様に、側壁52、支持部材54、貫通孔56及び固定穴58が設けられている。なお、側壁52、支持部材54、貫通孔56及び固定穴58は、長手方向の両端のうちいずれか一方にのみ設けられてもよい。第2変形例に係るシートパレット20の牽引補助装置10Bの他の構成については、
図1~
図7に示した牽引補助装置10,10Aにおける同名の部材と等価であるため、重複説明を省略する。
【0085】
第2変形例では、第1押え具12及び第2押え具14の長手方向の両端に、側壁52、支持部材54、貫通孔56及び固定穴58が設けられているため、第1押え具12及び第2押え具14の一体性が高められている。このため、牽引補助装置10Bを紛失し難くなる。第2変形例に係るシートパレット20の牽引補助装置10Bの他の効果については、
図1~
図7に示した牽引補助装置10,10Aの場合と同様である。
【0086】
<第3変形例>
図9に示すように、第1押え具12の立上受け面12A2と第2押え具14の立押え面14A1とが嵌合するように、凹凸形状を用いて構成されてもよい。第3変形例に係る牽引補助装置10Cでは、立上受け面12A2は、牽引動力装置側(
図9中の左側)に向かって窪むと共に、立押え面14A1は、立上受け面12A2の窪みに対応して、牽引動力装置側(
図9中の左側)に向かって膨らんでいる。
【0087】
第3変形例では、互いに嵌合する立上受け面12A2と立押え面14A1との間でシートパレット20の端部22が挟持されている。なお、嵌合するために互いに対応した立上受け面12A2及び立押え面14A1の凹凸形状は、
図9中に例示したものに限定されず、適宜変更できる。例えば、立上受け面12A2が、牽引動力装置30と反対側のシートパレット20側(
図9中の右側)に膨らむと共に、立押え面14A1が、立上受け面12A2と反対側(
図9中の右側)に窪んでもよい。
【0088】
また、
図9中では、凹凸形状が1個の場合が例示されたが、凹凸形状は、2個以上設けられてもよい。また、
図9中では、凹凸形状は湾曲面によって構成されていたが、これに限定されず、傾斜面を含んで構成されることも除外されない。第3変形例に係るシートパレット20の牽引補助装置10Cの他の構成については、
図1~
図8に示した牽引補助装置10,10A、10Bにおける同名の部材と等価であるため、重複説明を省略する。
【0089】
第3変形例では、立上受け面12A2と立押え面14A1とが凹凸形状を用いて嵌合することによって、シートパレット20の端部22を、より堅固に挟持できる。第3変形例に係る牽引補助装置10Cの他の効果については、
図1~
図8に示した牽引補助装置10,10A、10Bの場合と同様である。
【0090】
<第4変形例>
図10に示すように、第1押え具12が板状の天井部12Eを有し、側面視又は断面視で、U字状であってよい。また、第2押え具64が、板状の側壁部64A、板状の載置部64B及び板状の天井部64Dを有し、第1押え具12と相似なU字状であってもよい。
図10中の側壁部64Aの左側の壁面は、立押え面64A1であり、載置部64Bの下面は、下押え面64B1をなす。このように押え具をU字形状にした場合、L字形状の押え具に比較して強度が増し、曲がり難くなる利点がある。
【0091】
牽引部材16の一端の雄ネジ部16Aは、ナット部材62の雌ネジ部に差し込まれてネジ結合している。第4変形例に係る牽引補助装置10Dでは、第1押え具12と第2押え具64との間では、互いに対向する側壁部12A,64A間及び載置部12B,64B間に加え、天井部12E,64D間においてもシートパレット20の端部22が挟持される。また、第4変形例では、第1押え具12の床面Gに接する載置部12Bの端部12B2において、
図10中の右側から左側に向かう方向(牽引方向D)に沿って、端部12B2の端面と床面Gとの隙間が拡がるように、端面の下部が湾曲している。第4変形例に係る牽引補助装置10Dの他の構成については、
図1~
図9に示した牽引補助装置10,10A~10Cにおける同名の部材と等価であるため、重複説明を省略する。
【0092】
第4変形例では、互いに対向する側壁部12A,64A間、載置部12B,64B間、及び、天井部12E,64D間において、シートパレット20の端部22が挟持されるため、
図1中に例示した牽引補助装置10の場合より、挟持力を更に高めることができる。また、載置部12Bの端部12B2の端面と床面Gとの隙間が拡がるように、端部12B2の端面の下部が湾曲している。このため、牽引補助装置10Dが床面G上の突出部G1やフォークリフトパレット32の上面上の凸部を乗り越える際、牽引方向Dの後側に位置する端部12B2においても、突出部G1や凸部と衝突する際に受ける反力を低減できる。結果、牽引補助装置10Dがより円滑に移動できる。第4変形例に係る牽引補助装置10Dの他の効果については、
図1~
図9に示した牽引補助装置10,10A~10Cの場合と同様である。
【0093】
なお、第1押え具12を構成する天井部12Eと載置部12Bは、必ずしも平行である必要はなく、例えば、側壁部12Aに向かって間隔が狭まるような楔形であってもよい。また、第1押え具のU字形に嵌合する第2押え具(U字状であってもなくてもよい)において、第1押え具の天井部内面に対向する第2押え具の上面と第1押え具の載置部に対向する第2押え具の下面も、必ずしも平行である必要はなく、例えば前記第1押え具の楔形の傾斜と傾斜を同じくする楔形であってもよい。
【0094】
このように第1押え具のU字形を楔型にした場合には、シートパレットを間に挟んだ状態で第2押え具を第1押え具のU字形内部に嵌合して引き込むに従って、第2押え具の先端面の角が第1押え具U字内面に接触する部分でシートパレットを強く締め付けて強固に把持することができる。また、第1押え具と第2押え具とを同じ傾斜の楔型にした場合には、第1押え具にシートパレットを間に挟んで第2押え具を嵌合して引き込むに従って、第1押え具の天井部内面と第2押え具の上面及び第1押え具の載置部と第2押え具の下面によってシートパレットを強く締め付けて把持することができる。
【0095】
<その他の実施形態>
本発明は上記の開示した実施の形態によって説明したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。例えば、本実施形態で説明したシートパレット20と、本実施形態に係る牽引補助装置10とを組み合わせることによって、牽引補助装置付きシートパレットを実現することができる。
【0096】
また、本実施形態では、シートパレット20が第2押え具14の下側から上側に向かって巻き付けられた場合が例示されたが、
図11に示すように、シートパレット20は、第2押え具14の上側から下側に向かって巻き付けられてもよい。また、
図11中には、上側から下側に向かって巻き付けられたシートパレット20に対応して、第2滑り止めシート15Aが、第2押え具14の上面全体を覆うように配置された場合が例示されている。このため、第2滑り止めシート15Aとシートパレット20との接触面積が増加する。
【0097】
シートパレット20が牽引補助装置10の上側から下側に向かって巻き付けられることによって、
図2中に例示したシートパレット20の場合に比べ、第1押え具12の載置部12Bとシートパレット20との間に、隙間Sを大きく確保することができる。このため、牽引補助装置10が牽引方向Dに沿って移動し、第1押え具12が床面G上の突出部G1やフォークリフトパレット32の上面上の凸部を乗り越える際、シートパレット20を介して載置部12Bが下側に押し込まれる力を低減できる。結果、第1押え具12が突出部G1や凸部を乗り越え易くなり、牽引補助装置10がより円滑に移動できる。
【0098】
<第5変形例>
また、
図12に示すように、本発明では、第1押え具12の側壁部12Aにおいて牽引部材16の雄ネジ部16Aに対応する位置に、切欠き12Fが設けられてもよい。すなわち、第5変形例に係る牽引補助装置10Eでは、
図1に示した牽引補助装置10の第1押え具12の側壁部12Aにおいて設けられていた貫通孔12Cの代わりに切欠き12Fが設けられている。切欠き12Fには、雄ネジ部16Aが上側から差し込まれる。
【0099】
また、第1滑り止めシート13及び第2滑り止めシート15にも、牽引部材16に対応する位置に、それぞれ切欠き(符号省略)が設けられている。また、シートパレット20の端部22には、ハサミやカッターナイフ等の切断器具によって切断された切り込み23が形成され、切り込み23の内側に牽引部材16が差し込まれている。第5変形例では、第1押え具12の切欠き12F及びシートパレット20の端部22の切り込み23によって、牽引部材16の第2押え具14への差し込み及び抜き取りがいずれも可能である。このため、牽引部材16は、第2押え具14に対して着脱自在に構成されている。
【0100】
また、
図12中の第1押え具12の側壁部12Aの外側面上で、切欠き12Fの左右には、補強板材17が、溶接等によって接合されている。ここで、第1押え具12に切欠き12Fが形成されると、部材としての体積が減少するため、側壁部12Aの強度が低下し、牽引の際、牽引部材16を中心として第1押え具12が反る場合がある。しかし、補強板材17によって、切欠き12Fに起因する側壁部12Aの強度低下を補強できる。第5変形例に係る牽引補助装置10Eの他の構成については、
図1~
図11に示した牽引補助装置10,10A~10Dにおける同名の部材と等価であるため、重複説明を省略する。
【0101】
第5変形例に係る牽引補助装置10Eを用いて荷物40を牽引する場合、フォークリフト28のオペレータ26は、まず、ハサミやカッターナイフ等の切断器具を用いて、シートパレット20の端部22を切断し、切り込み23を形成する。そして、
図4~
図6を用いて説明したように、シートパレット20と牽引補助装置10Eとを一体化すると共に、牽引部材16を切り込み23に差し込んで、牽引補助装置10Eと連結する。そして、牽引部材16にフック18を介してワイヤロープ36を連結し荷物40を牽引すればよい。
【0102】
なお、第5変形例では、牽引部材16の雄ネジ部16Aと第2押え具14の雌ネジ部とのネジ結合は必須ではなく、例えば、牽引部材16の第2押え具14側の端部が第2押え具14に溶接等によって、常時、固定されていてもよい。第5変形例に係る牽引補助装置10Eによっても、シートパレット20の牽引作業を確実に実行でき、かつ、コストを低減することができる。
【0103】
また、第5変形例では、第2押え具14に固定された牽引部材16の雄ネジ部16Aを、切欠き12Fの上側から切欠き12Fに差し込むだけで、第1押え具12と第2押え具14とを一体化できるため、作業が容易である。なお、第5変形例の切欠き12Fは、上側に開口していたが、切欠きの開口位置は、これに限定されず、下側に開口してもよい。また、第1押え具12に牽引部材16を2個以上設けてもよく、牽引部材16を中心として第1押え具12が反る状態を、1個の場合より抑制できる。また、第5変形例の切欠き12Fの形状は、U字状であったが、これに限定されず、例えばV字状等、適宜変更できる。
【0104】
<第6変形例>
図1中に例示した牽引補助装置10の場合、第2押え具14を側面から見た形状又は第2押え具14の断面形状は正方形状であり、正方形の各辺の長さは、ほぼ同じであった。しかし、本発明では、これに限定されず、第2押え具14の形状は適宜変更できる。例えば、
図13に示すように、第6変形例に係る牽引補助装置10Fの場合、第2押え具14の側面から見た形状又は断面形状は、第1押え具12側(
図13中の左側)の下部のコーナー部の曲率半径が、他のコーナー部の曲率半径より大きくなるように湾曲している。また、第6変形例では、第2押え具14の湾曲形状に応じて、第1押え具12の側壁部12Aと載置部12Bとの連結部分も、大きく湾曲している。第1押え具12のコーナーの内面湾曲と第2押え具14のコーナーの外面湾曲については、両押え具の形状的密着性がないと、シートパレット20を挟持した際、牽引時に隙間ができて望ましくないため、両者の対面する部分での表面湾曲度を合わせることが望ましい。
【0105】
第1押え具12の側壁部12Aと載置部12Bとの連結部分、及び、第2押え具14の第1押え具12側の下部のコーナー部の曲率半径を大きくすることによって、第1押え具12と第2押え具14との一体性が向上する。特に、牽引時の一体性が向上すると、例えば、数トンレベルのような非常に重い荷物を、牽引補助装置10Fを用いて牽引する際、荷物の重量によって第2押え具14の長手方向に生じる反りを抑制することができる。換言すると、牽引時の一体性を向上させることによって、例えばアルミニウム等の軽量部材を用いた第2押え具14を採用して、軽量化の実現と第2押え具14の反りの抑制とを両立させることも可能になる。
【0106】
また、シートパレットを挟持(把持)する手段としては、本実施形態で説明したもの以外であっても、適宜採用できる。例えば、シートパレットがプラスチック素材であり弾性を有する場合、第1押え具及び第2押え具のうち一方又は両方の押え具の表面に、シートパレットに食い込んでもシートパレットが破れない程度の多数の小突起或いは連続したリブ突起が設けられてもよい。例えば、押え具が、周囲がプラスチック素材であり、内部に金属の芯材を有する場合、周囲の部分は射出成形によって作製可能であるため、押え具がすべて金属製である場合等に比べ、小突起やリブ突起等の形状を自在に形成できる。
【0107】
シートパレットを挟んだ押え具間に押圧力がそれほど大きくなくてもよいものの、ある程度の大きさの押圧力が加われば、小突起又はリブ突起がシートパレット表面に食い込む。この食い込みによって、シートパレットが押え具から滑って外れることを大幅に抑制できる。また、滑り止めシートも不要になる。すなわち、第1押え具及び第2押え具の摩擦力によって滑りを防止するだけでなく、小突起又はリブ突起のような突起物の機械力によっても滑りを防止できる。
【0108】
機械力に関し、
図9中の牽引補助装置10Cや
図13中の牽引補助装置10Fでは、第1押え具及び第2押え具の互いに対向する面に、凸部及び凹部を形成する場合が例示的に説明された。凸部及び凹部の形状、凹部の縁部の形状、並びに、凸部及び凹部の設置数などは、適宜変更できる。また、それぞれの形状や個数等を組み合せることによって、滑りを抑制する効果を適宜調節できる。
【0109】
ここで、上記のような突起物をパレットシートに食い込ませる場合、小突起又はリブ突起の食い込みの繰り返しによって、パレットシートの寿命が短くなり易い。一方、小突起又はリブ突起と比べ、緩やかな凸部及び凹部によって滑りを抑制する場合、
パレットシートの寿命への影響を低減できる。
【0110】
また、例えば、洗濯ばさみのようにスプリングを介して結合した押え具押し付け手段を用いて、第1押え具と第2押え具を挟持してもよい。シートパレットを第1押え具と第2押え具を間に挟む際には、スプリングを手で伸ばして両方の第1押え具と第2押え具を引き離す。また、シートパレットを挟んだ状態で手を離すだけで、スプリング力によって押え具がシートパレットに押し付けられて、上記のような突起物が、シートパレットに食い込む。押え具押し付け手段によって、押し付ける力は維持され、挟まれているシートパレットが牽引中にも脱落しない。また、第1押え具と第2押え具が一体化して扱い易く、離散して紛失することも防止できる。
【0111】
また、別の押え具押し付け手段として、第1押え具及び第2押え具のうち一方の押え具に磁石を装着し、他方の押え具に磁石に吸着される鉄材など磁性体材料を装着してもよい。或いは、両方の押え具に極性が反対の磁石を装着した押え具押し付け手段を用いてもよい。一方の押え具にシートパレットの把持部を当接した状態で他方の押え具を近づければ、磁力によって両方の押え具が自動的に押し付けられて、突起物がシートパレットに食い込み、押し付ける力は維持され、挟まれているシートパレットが牽引中にも脱落しない。また、不使用時には第1押え具と第2押え具を磁力で吸着しておけば、一体化して扱い易く、離散して紛失することも防止できる。
【0112】
なお、磁石を利用した押し付け手段において、磁石として永久磁石でなく、電磁石を利用することも可能である。必要な電源を接続すれば、スイッチのオンオフで磁力の有無を切り換えることが可能になる。このため、作業者は、磁力に逆らって押え具を適正位置に配置する必要はなく、押え具を適正位置に配置した後にスイッチを入れれば済み、作業性が向上する。
【0113】
また、上記のスプリング式及び磁石式のいずれにおいても、押えとして使われる第2押え具は、必ずしも牽引すべきシートパレットの端部の横幅一杯に連続している必要はなく、適宜分割されていてもよい。分割されることによって、分割片のそれぞれに設けるスプリング力を小さくできるので、作業性が向上し、スプリング材や磁石材の調達も容易になる。ただし、シートパレットに局部的な力が掛かって破れる恐れを回避するため、過度に間隔が開かないように、形状を設計することが好ましい。
【0114】
また、スプリング式及び磁石式のいずれにおいても、牽引動力装置からの牽引力を直接受けるのは牽引部を設けた第1押え具となるため、牽引索を複数にすれば、第一押え具を分割できる。また、食事用フォークのように、第1押え具を複数に分岐して構成してもよい。分岐したそれぞれの先端に、対応して分割した第2押え具のそれぞれの領域を、スプリングで取り付けたり、磁石で吸着させたりする構造も採用可能である。
【0115】
<第7変形例>
また、スプリングや磁石ではなく、単純にネジだけで締め付ける方法として、
図14に示すように、長手方向に一定の長さを有するコ字形(U字形)の固定具74Bを備えた第2押え具74を使用できる。
図15に示すように、第7変形例に係る牽引補助装置10Gの第2押え具74には、固定具74Bのコ字の内側に配置される押え部74Aと、固定具74Bの牽引部材16側の側壁に設けられた雌ネジ孔74B1に差し込まれた固定ボルト74Cとが設けられている。固定ボルト74Cには、取手74C1が設けられている。
【0116】
押え部74Aは、例えば、金属製であって、断面が矩形状の四角筒である。角筒は、強度及び軽量化の両立の点で有利である。なお、押え部の断面形状は、矩形状に限定されず、他の多角形状が採用されてもよい。また、押え部としては、角筒に限定されず、板状部材であってもよい。
【0117】
固定具74Bは、例えば、金属製であり、固定具74Bには、符号の付記を省略するが、牽引部材16が着脱自在に差し込まれる貫通孔が設けられている。また、
図14中の中央の第2押え具74の固定具74Bには、貫通孔12Cが設けられ、貫通孔12Cには牽引部材16が連結されている。なお、押え部74A及び固定具74Bは、別部材として説明されたが、一体的に作製されてもよい。また、押え部74A及び固定具74Bの素材は、金属に限定されず、樹脂等、他の素材で作製されてもよい。また、押え部74A及び固定具74Bは、金属製の芯材に樹脂被覆が施された部材で構成されてもよい。
【0118】
固定具74Bの雌ネジ孔74B1と固定ボルト74Cの雄ネジ部とはネジ結合する。固定ボルト74Cの回転によって、固定ボルト74Cの先端が牽引部材16側から第1押え具12側に向かって前進すると、先端は、第1押え具12の側壁部12Aを押圧する。押圧によって、第1押え具12の側壁部12Aと第2押え具74の押え部74Aとの隙間が消失し、第1押え具12の側壁部12Aと第2押え具74の押え部74Aとが密着する。このため、第2押え具74の立押え面74A1が、シートパレット20の端部22の立上げ部22Aの表面を押え、側壁部12Aと押え部74Aとの間に配置されたシートパレット20の端部22が、牽引補助装置10Gによって堅固に挟持される。すなわち、固定ボルト74Cによってシートパレット20の挟持力を調節できる。
【0119】
また、第7変形例では、固定ボルト74Cに取手74C1が設けられているため、作業者は、取手74C1を摘まんで固定ボルト74Cを回転させ易く、第1押え具12への固定具74Bの取付け取外し作業の負担が容易になる。なお、取手74C1は必須ではなく、固定ボルト74Cとしては、キャップボルト等、他の形状のボルト等も適宜採用できる。
【0120】
また、押え部74Aが比較的軽量であるため、シートパレット20の端部22を牽引補助装置10Gに挟持させる際、例えば、第1押え具12、シートパレット20の端部22及び押え部74Aを、作業者が一方の手で一体的に把持することが容易になる。そして、作業者が他方の手で、雌ネジ孔74B1に固定ボルト74Cが差し込まれた状態の固定具74Bを、固定具74Bのコ字の内側の凹部が第1押え具12、シートパレット20の端部22及び押え部74Aに嵌合するように、第1押え具12の上側から被せる。そして、第1押え具12及び第2押え具74が嵌合した状態のまま、作業者が、他方の手で固定ボルト74Cを回転させることができる。このため、
図15に示したように、端部22の上端が第1押え具12の上端と揃った状態を、長手方向全体に亘って実現することが容易になる。
【0121】
なお、ネジだけで締め付ける方法としては、第7変形例の場合に限定されず、他にも、第1押え具12の牽引部材16側(
図15中の左側)の側面と、第2押え具74の荷物側(
図15中の右側)の側面とを、1本以上のネジで貫通して止めてもよい。コ字形押え具は、ネジによって両側面の間隔が自在に変えられるように構成され、第1押え具と第2押え具でシートパレットを挟持した状態で、コ字形押え具を第1押え具と第2押え具の上部から被せ、両側面の間隔を狭めるようにネジを締める。ネジ締めされたコ字形押え具によって第1押え具と第2押え具との間にシートパレットを強固に挟持(把持)することができる。
【0122】
なお、コ字形押え具を使用する際、コ字形押え具を上部から被せることによって、作業を容易にできる。ただし、下部から被せることを排除するものではない。また、コ字形押え具の幅や個数は任意であるが、
図14中の固定具74Bのように、例えば、コ字形押え具を3個用意し、牽引補助装置の中央と両側の3箇所で締め付けることが、安定性の観点で望ましい。また、牽引部材は、中央に配置するコ字形押え具に装着して牽引してもよいが、第1押え具に装着して牽引してもよい。
【0123】
また、
図1~
図15中に示したそれぞれのシートパレットの牽引補助装置10,10A~10Gに含まれる構成を、部分的に組み合わせて本発明を構成してもよい。本発明は、上記に記載していない様々な実施の形態等を含むと共に、本発明の技術的範囲は、上記の説明から妥当な特許請求の範囲の発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0124】
10,10A~10G 牽引補助装置
12 第1押え具
12A1,12A2 立上受け面
12B1 下受け面
12C 貫通孔
13 第1滑り止めシート
14 第2押え具
14A,14A1 立押え面
14B 下押え面
14C 雌ネジ部
15,15A 第2滑り止めシート
16 牽引部材
16A 雄ネジ部
16B リング部
20,20A~20D シートパレット
22 端部
22A 立上げ部
22B 基部
24 コンテナ
40,40A~40D 荷物
50 ネジ部材
52 側壁
54 支持部材
64A1 立押え面
64B1 下押え面
74A 第2押え具
74A1 立押え面