(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 3/30 20060101AFI20230829BHJP
H02K 3/38 20060101ALI20230829BHJP
H02K 3/50 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
H02K3/30
H02K3/38 Z
H02K3/50 Z
(21)【出願番号】P 2018232749
(22)【出願日】2018-12-12
【審査請求日】2021-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】山道 学
(72)【発明者】
【氏名】石塚 敦朗
(72)【発明者】
【氏名】藤原 慎平
【審査官】稲葉 礼子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-165484(JP,A)
【文献】特開2000-278901(JP,A)
【文献】特開2004-229460(JP,A)
【文献】特開2018-113794(JP,A)
【文献】中国実用新案第202615972(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子コア(51)と、
導体(520)と、前記導体を覆う絶縁皮膜(521)と、を有し、前記固定子コアに装着された固定子コイル(52)と、
フィラー(62)が添加され、前記固定子コイルの一部を封止する封止樹脂体(60)と、を備え、
前記固定子コイルは、前記固定子コアから突出する部分として、前記導体に設けられた接合部(522)を含み、前記導体が前記絶縁皮膜から露出された露出部(523)と、前記露出部に連なり、前記導体が前記絶縁皮膜によって覆われた被覆部(524)と、を有するコイルエンド(55)を備え、
前記封止樹脂体は、
前記コイルエンドにおいて、前記接合部を含む前記露出部と、該露出部に連なる前記被覆部それぞれの少なくとも一部と、を一体的に封止し、
前記フィラーの含有率が大きくなるほ
ど線膨張係数が小さくなるものであり、
前記露出部を覆う部分の前記フィラーの含有率が、前記被覆部を覆う部分の前記フィラーの含有率よりも大きくされて
おり、
前記フィラーの含有率が互いに異なる複数の樹脂部(63,64,65)を有して構成されている回転電機。
【請求項2】
前記接合部として、隣り合う前記導体の端部同士が互いに溶接された溶接部(522)を含み、
隣り合う前記導体の間に、前記封止樹脂体が介在している請求項
1に記載の回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書における開示は、回転電機及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示の回転電機では、導体の露出部が封止樹脂体によって封止されている。封止樹脂体は、硬化性樹脂を用いて成形されている。封止樹脂体は、接合部を含み、絶縁皮膜から露出された導体の露出部と、露出部に連なり、導体が絶縁皮膜によって覆われた被覆部それぞれの一部と、を一体的に封止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したように、封止樹脂体は、露出部を覆う部分と、被覆部を覆う部分を有している。導体と、導体を覆う絶縁皮膜とは、線膨張係数が互いに異なっている。従来の構成では、導体及び絶縁皮膜のそれぞれと封止樹脂体との線膨張係数差に基づく熱応力により、接合部のクラック及び絶縁皮膜界面での剥離の少なくとも一方が生じる虞がある。すなわち、信頼性が低いという問題がある。
【0005】
本開示はこのような課題に鑑みてなされたものであり、信頼性を向上できる回転電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の他のひとつである回転電機は、
固定子コア(51)と、
導体(520)と、導体を覆う絶縁皮膜(521)と、を有し、固定子コアに装着された固定子コイル(52)と、
フィラー(62)が添加され、固定子コイルの一部を封止する封止樹脂体(60)と、を備え、
固定子コイルは、固定子コアから突出する部分として、導体に設けられた接合部(522)を含み、導体が絶縁皮膜から露出された露出部(523)と、露出部に連なり、導体が絶縁皮膜によって覆われた被覆部(524)と、を有するコイルエンド(55)を備え、
封止樹脂体は、
コイルエンドにおいて、接合部を含む露出部と、該露出部に連なる被覆部それぞれの少なくとも一部と、を一体的に封止し、
フィラーの含有率が大きくなるほど線膨張係数が小さくなるものであり、露出部を覆う部分のフィラーの含有率が、被覆部を覆う部分のフィラーの含有率よりも大きくされてり、
フィラーの含有率が互いに異なる複数の樹脂部(63,64,65)を有して構成されている。
【0009】
この回転電機によれば、封止樹脂体において、露出部を覆う部分のフィラー含有率が、被覆部を覆う部分のフィラー含有率よりも大きくされている。これにより、露出部を覆う部分と被覆部を覆う部分とのフィラー含有率が等しい構成に較べて、たとえば露出部を覆う部分の線膨張係数を導体の線膨張係数に近づけることができる。また、フィラー含有率が互いに等しい構成に較べて、たとえば被覆部を覆う部分の線膨張係数を絶縁皮膜の線膨張係数に近づけることができる。すなわち、接合部に作用する熱応力、及び、絶縁皮膜の界面に作用する熱応力の少なくとも一方を小さくすることができる。したがって、信頼性を向上することができる。
【0012】
この明細書における開示された複数の態様は、それぞれの目的を達成するために、互いに異なる技術的手段を採用する。請求の範囲およびこの項に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態の部分との対応関係を例示的に示すものであって、技術的範囲を限定することを意図するものではない。この明細書に開示される目的、特徴、及び効果は、後続の詳細な説明、および添付の図面を参照することによってより明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態に係る回転電機の概略構成を示す断面図である。
【
図3】コイルエンドの溶接部周辺を示す斜視図である。
【
図7】第2実施形態に係る回転電機において、封止樹脂体を示す断面図である。
【
図8】第3実施形態に係る回転電機において、封止樹脂体を示す断面図である。
【
図9】第4実施形態に係る回転電機において、封止樹脂体を示す断面図である。
【
図10】第5実施形態に係る回転電機において、封止樹脂体を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面を参照しながら、複数の実施形態を説明する。複数の実施形態において、機能的に及び/又は構造的に対応する部分及び/又は関連付けられる部分には、同一の参照符号を付与する。対応する部分及び/又は関連付けられる部分については、他の実施形態を参照することができる。
【0015】
(第1実施形態)
回転電機は、電動機(モータ)、及び/又は、発電機(ジェネレータ)として機能する。以下に、車両に搭載される回転電機を例に説明する。
【0016】
<回転電機の概略構成>
図1に示す回転電機10は、電動発電機(モータジェネレータ)である。回転電機10は、電力の供給を受け、電動機として機能する。回転電機10は、たとえば内燃機関(エンジン)や車輪の回転力によって駆動され、発電機として機能する。本実施形態の回転電機10は、電気自動車やハイブリッド自動車に搭載される。電動機としての回転電機10は、車両の走行駆動源として機能する。
【0017】
回転電機10には、図示しない制御装置が電気的に接続されている。制御装置は、インバータなどの電力変換回路を含む。回転電機10が電動機として機能するとき、制御装置は、回転電機10に多相交流電力を供給する。制御装置は、図示しないバッテリから供給される直流電力を多相交流電力に変換し、回転電機10に供給する。本実施形態において、多相交流電力は三相電力である。回転電機10が発電機として機能するとき、制御装置は、回転電機10から出力される電力を整流する。整流された電力は、たとえばバッテリに充電される。
【0018】
図1及び
図2に示すように、回転電機10は、ハウジング20と、シャフト30と、回転子40と、固定子50と、封止樹脂体60を備えている。回転子40は、軸AXの周りを回転可能とされている。固定子50は、軸AXを有する筒状をなしている。以下の説明において、軸方向、径方向、及び周方向の語は、軸AXによって規定される。
【0019】
ハウジング20は、固定子50を固定し、且つ、回転子40を回転可能に支持している。回転子40と固定子50とは、ハウジング20に収容されている。ハウジング20は、内燃機関の部品を提供する場合がある。たとえばハウジング20は、クランクケースの一部、又は、トランスミッションケースの一部を提供する場合がある。ハウジング20は、有底筒状の第1ハウジング21と、有底筒状の第2ハウジング22を有する。回転子40及び固定子50は、第1ハウジング21と第2ハウジング22との間に収容されている。
【0020】
シャフト30は、金属からなる略円柱状の部材である。シャフト30は、回転軸を提供する。シャフト30は、軸受31を介してハウジング20に回転可能に支持されている。
【0021】
回転子40は、固定子50と磁気的に結合されている。回転子40は、シャフト30により、ハウジング20に対して回転可能に支持されている。回転子40は、磁路の一部を構成するとともに、磁束を発生する。回転子40は、固定子50の発生する磁束が鎖交することで回転力を発生する。また、たとえば内燃機関から供給される駆動力によって回転することで、発生した磁束を後述する固定子コイル52と鎖交させ、固定子コイル52に交流を発生させる。回転子40は、回転子コア41を備えている。
【0022】
回転子コア41は、磁性材を用いて形成されている。回転子コア41は、磁路の一部を構成する円柱状の部材である。回転子コア41の中心部には、円形状の貫通孔41aが形成されている。この貫通孔41aにシャフト30が嵌合し、回転子40がシャフト30と一体的に回転可能とされている。回転子コア41は、固定子50の径方向内側に配置されている。すなわち、回転電機10は、インナーロータ構造をなしている。回転子コア41は、周方向に沿って配置された複数の磁極を有している。複数の磁極は、回転子コア41に埋設、又は、回転子コア41の外周面に固定された複数の永久磁石によって形成されている。本実施形態では、回転子コア41の外周面に永久磁石が固定されている。
【0023】
固定子50は、固定子コア51と、固定子コイル52を有している。固定子コア51は、磁性材を用いて形成されている。固定子コア51は、磁路の一部を構成する筒状の部材である。固定子コア51は、円環状でもある。固定子コア51は、軸方向に沿って積層された複数の鋼板を有している。
【0024】
固定子コア51は、周方向に配置された複数のスロット53を有している。複数のスロット53は、周方向に関して、等しいピッチで配置されている。複数のスロット53は、いくつかの異なるピッチで配置されていてもよい。複数のスロット53は、複数の鋼板を貫通するように、軸方向に延びている。さらに、複数のスロット53は、径方向に広がっている。典型的な固定子コア51は、環状のバックコアを有している。固定子コア51は、バックコアから径方向内側に延び出す複数のティースを有している。複数のティースは、それらの間に、複数のスロット53を形成している。
【0025】
固定子コイル52は、通電により磁束を発生する。固定子コイル52は、回転子40の発生する磁束と鎖交することで交流を発生する。固定子コイル52は、多相結線としてスター結線を採用している。固定子コイル52は、U相、V相、W相を有している。
【0026】
固定子コイル52は、固定子コア51に装着されている。固定子コイル52は、コイルサイド54と、コイルエンド55,56を有している。コイルサイド54は、軸方向に沿って真っ直ぐに延びている。コイルサイド54は、スロット53に収容されている。コイルエンド55,56は、固定子コア51の端部に位置づけられている。コイルエンド55,56は、固定子コア51から突出している。固定子コア51は、一端面51aと、他端面51bを有している。コイルエンド55は、一端面51aから軸方向に延び出している。コイルエンド56は、他端面51bから軸方向に延び出している。
【0027】
コイルエンド55,56は、固定子コイル52に含まれる複数の導体の集合体である。コイルエンド55,56において、ひとつの導体は、ひとつのスロット53内に位置するコイルサイド54を、他の異なるスロット53内に位置するコイルサイド54に接続している。固定子コイル52は、複数のコイル端を有している。固定子コイル52は、各相のコイル端を複数有している。各相のコイル端の一部は、互いに接続されて中性点を構成している。各相の残りのコイル端52aは、図示しないバスバーなどを介して、上記した制御装置(インバータ)に接続される。コイル端52aは、外部接続用の引き出し線である。本実施形態では、コイルエンド55側にコイル端52aが設けられている。
【0028】
ひとつのコイルは、複数のセグメントを接合することによって提供することができる。セグメントは、たとえば略U字状や略I字状をなしている。複数のセグメントは、多様な接合手法によって接合することができる。接合手法として、たとえば母材同士を溶かして接合する溶接、溶加材を溶かして母材同士をぬれ性で接合するろう接などを利用することができる。ひとつのコイルは、ひとつの相とみなすことができるコイルである。ひとつのコイルは、その中に、電気角が異なる複数のコイル要素を含んでいてもよい。たとえば、ひとつのコイルは、電気角が数度異なる複数のコイル要素を含むことができる。
【0029】
図3に示すように、固定子コイル52は、導体520と、導体520を被覆する絶縁皮膜521を有している。導体520は、銅などの導電性が良好な金属材料を用いて形成されている。導体520は、延設方向と直交する断面形状が略長方形とされている。絶縁皮膜521は、電気絶縁性の樹脂材料を用いて形成されている。絶縁皮膜521としては、たとえば耐熱に応じた材料を選択することができる。本実施形態では、耐熱性を考慮して、ポリイミドを用いている。
図3では、コイルエンド55において、便宜上、封止樹脂体60を省略して図示している。
【0030】
導体520には、接合部が設けられている。導体520に設けられた接合部としては、異なるセグメントの導体520同士の接合部、異なるセグメントの導体520を電気的に中継するバスバー(渡り線)との接合部、制御装置と電気的に接続するための接合部などがある。本実施形態では、封止樹脂体60により封止される接合部として、導体520同士が溶接された溶接部522を含んでいる。溶接部522は、ひとつのコイルを構成する異なるセグメントの導体520同士が溶接された部分である。上記した中性点を形成する接合部も、封止樹脂体60によって封止されている。
【0031】
固定子コイル52は、導体520が絶縁皮膜521から露出された部分である露出部523と、導体520が絶縁皮膜521によって覆われた部分である被覆部524を有している。溶接部522を含む接合部は、露出部523に設けられている。露出部523は、少なくとも接合部を含んでいる。すなわち、絶縁皮膜521から露出された部分の一部のみが接合部とされてもよいし、露出された部分のすべてが接合部とされてもよい。コイルエンド55,56の少なくとも一方は、被覆部524に加えて、接合部を含む露出部523を有している。
【0032】
本実施形態では、固定子コイル52を構成するセグメントが、略U字状をなしている。セグメントのU字の両端において、導体520は絶縁皮膜521から露出されている。すなわち、U字の両端に露出部523が設けられている。セグメントは、U字の両端が固定子コア51の一端面51aから突出するように、固定子コア51に対して配置されている。複数のセグメントの端部は、一端面51a上において、軸AXを取り囲むように周方向に並んで配置されるとともに、径方向に並んで配置されている。すなわち、多重の円環状に配置されている。
【0033】
そして、径方向に隣り合う2つのセグメントにおいて、導体520の端部同士が溶接され、溶接部522が形成されている。具体的には、導体520の端部に設けられた露出部523のうち、先端から一部が溶接部522とされ、残りが導体520の溶接されていない部分である非溶接部とされている。2つのセグメントにおいて、非溶接部の間には隙間が存在する。溶接部522により、2つのセグメントが連なっている。固定子50は、複数の溶接部522を有している。ひとつのコイルは、複数の溶接部522を介して、複数のセグメントにより構成されている。複数の溶接部522のすべては、一端面51a側に配置されている。また、4つの溶接部522が、径方向に並んで配置されている。
【0034】
よって、コイルエンド55は、露出部523と、被覆部524を有している。一方、コイルエンド56は、露出部523を有さず、被覆部524を有している。溶接部522を含むすべての接合部が、コイルエンド55に設けられている。コイルエンド56は、接合部を有しておらず、連続した導体520のターン部によって提供されている。なお、コイルサイド54は、露出部523を有さず、被覆部524を有している。
【0035】
封止樹脂体60は、接合部を含む露出部523を封止により保護している。封止樹脂体60は、露出部523を有するコイルエンドにおいて、接合部を含む露出部523と、露出部523に連なる被覆部524それぞれの少なくとも一部とを、一体的に封止している。本実施形態では、封止樹脂体60が、コイルエンド55側に設けられている。封止樹脂体60は、コイル端52aに形成される接合部を除く残りの接合部を、一体的に封止している。封止樹脂体60は、略円環状をなしている。次に、封止樹脂体60の詳細構造について説明する。
【0036】
<封止樹脂体の詳細構造>
図4は、封止樹脂体60の断面構造を示している。
図4では、便宜上、封止樹脂体60及び該封止樹脂体60に覆われる要素のみを断面図としている。
図4では、フィラー62を分かりやすい大きさにして示している。フィラー62は、溶接部522を介して接続された2つのセグメントの間にも配置されている。たとえば導体520の間、絶縁皮膜521の間に配置されている。
【0037】
封止樹脂体60は、主たる要素として樹脂61及びフィラー62を含んで、形成されている。樹脂61としては、硬化性樹脂、たとえば熱硬化性樹脂を採用することができる。フィラー62としては、樹脂よりも線膨張係数が小さい材料、たとえば無機系のフィラーを用いることができる。無機系のフィラーとしては、たとえばシリカ系フィラー、ガラスフィラーを採用することができる。本実施形態では、樹脂61として、熱硬化性樹脂、具体的にはエポキシ樹脂を採用している。また、フィラー62として、シリカを採用している。封止樹脂体60の線膨張係数は、ほぼ等方的となっている。
【0038】
図4に示すように、封止樹脂体60は、固定子コイル52のコイルエンド55のうち、溶接部522(接合部)を含む露出部523を覆う部分である第1樹脂部63と、被覆部524を覆う部分である第2樹脂部64を有している。封止樹脂体60のうち、第2樹脂部64は軸方向において固定子コア51側の部分であり、第1樹脂部63は固定子コア51とは反対側の部分である。封止樹脂体60は、すべての溶接部522及び中性点をなす接合部を一体的に封止している。
図4では、径方向に並んで配置された4つの溶接部522を含む断面を示している。封止樹脂体60は、コイルエンド55において、被覆部524のうち、露出部523側の一部のみを封止している。封止樹脂体60は、露出部523に連なる被覆部524それぞれの一部を封止している。
【0039】
露出部523と被覆部524との境界が、軸方向において、第1樹脂部63と第2樹脂部64との境界となっている。
図4では、この境界を、一点鎖線で示している。露出部523と被覆部524との境界よりも固定子コア51の一端面51aに近い側が第2樹脂部64とされ、一端面51aに対して遠い側が第1樹脂部63とされている。第1樹脂部63は、絶縁皮膜521から露出された導体520の部分、すなわち溶接部522(接合部)と非溶接部との周辺に配置されている。第2樹脂部64は、導体520が絶縁皮膜521により覆われた部分、すなわち絶縁皮膜521の周辺に配置されている。
【0040】
第1樹脂部63と第2樹脂部64において、樹脂61及びフィラー62は共通材料となっている。ただし、第1樹脂部63の線膨張係数α1は、第2樹脂部64の線膨張係数α2よりも小さくされている。第1樹脂部63の線膨張係数α1は、第2樹脂部64の線膨張係数α2よりも露出部523を構成する導体520に近い値とされている。また、第2樹脂部64の線膨張係数α2は、第1樹脂部63の線膨張係数α1よりも絶縁皮膜521に近い値とされている。
【0041】
本実施形態では、封止樹脂体60におけるフィラー62の配置の偏りによって、第1樹脂部63と第2樹脂部64とに線膨張係数の違いを生じさせている。具体的には、第1樹脂部63のほうが第2樹脂部64よりも、フィラー62が多く存在している。すなわち、第1樹脂部63のほうが第2樹脂部64よりも、フィラー62の含有率が大きくされている。第1樹脂部63は、樹脂61(エポキシ樹脂)よりも線膨張係数の小さいフィラー62(溶融シリカ)を、第2樹脂部64に較べて多く含んでおり、これにより線膨張係数α1が線膨張係数α2よりも小さくされている。
【0042】
ここで、絶縁皮膜521を構成するポリイミドの線膨張係数は、たとえば35ppm程度である。よって、好ましくは、線膨張係数α2が30~40ppmの範囲内で設定される。また、導体520を構成する銅の線膨張係数は、たとえば18ppm程度である。よって、好ましくは、線膨張係数α1が13~23ppmの範囲内で設定される。
【0043】
本実施形態の封止樹脂体60は、樹脂成形体である。次に、回転電機10の製造方法、特に上記構成の封止樹脂体60の製造方法について説明する。
【0044】
<回転電機の製造方法>
図5及び
図6は、
図4に対応する断面図である。
図5及び
図6に示す一点鎖線は、
図4に示した境界に対応している。
【0045】
先ず、固定子コア51に固定子コイル52を装着する。本実施形態では、略U字状のセグメントを、他端面51b側からスロット53に挿入し、U字の両端を一端面51aから軸方向外側に突出させる。そして、径方向において隣り合う2つのセグメントにおいて、導体520の端部同士を溶接し、溶接部522を形成する。また、コイル端のうち、中性点を形成する部分についても溶接を行う。これにより、固定子コイル52が固定子コア51に装着される。
【0046】
次いで、
図5に示すように、フィラー62を添加した液状の樹脂61aに、固定子コイル52のコイルエンド55を浸漬する。コイルエンド55のうち、封止すべき接合部を含む露出部523と、露出部523に連なる被覆部524それぞれの少なくとも一部とを、浸漬させる。樹脂61aは、硬化前の樹脂61である。このとき、容器90を用いる。容器90は、底壁91と、筒状に設けられた側壁92を有している。容器90において、側壁92の一端側が底壁91により閉塞され、他端側に開口部93が設けられている。本実施形態の容器90は、熱伝導が良好な金属製である。開口部93に対して底壁91が鉛直下方となるように、容器90を配置する。
【0047】
たとえば、容器90内に樹脂61a及びフィラー62を導入し、次いで、コイルエンド55を溶接部522側から浸漬させる。このとき、コイルエンド55を浸漬する前に撹拌混合によって樹脂61a中にフィラー62を分散させておく、若しくは、浸漬させた後に、撹拌混合によって樹脂61a中にフィラー62を分散させるとよい。なお、撹拌処理をしなくとも、容器90内に樹脂61a及びフィラー62を導入する際、及び、コイルエンド55を浸漬する際の樹脂61aの流れによって、フィラー62が少なからず分散する。
【0048】
別の方法としては、容器90内に、溶接部522側からコイルエンド55を配置し、この状態で、容器90内に樹脂61a及びフィラー62を導入することで、コイルエンド55を浸漬させる。このとき、浸漬させた後に、撹拌混合によって樹脂61a中にフィラー62を分散させる、若しくは、予め樹脂61a中にフィラー62を分散させた状態で容器90内に導入するとよい。なお、撹拌処理をしなくとも、容器90内に樹脂61a及びフィラー62を導入する際にフィラー62が少なからず分散する。
【0049】
このように、浸漬処理を行った状態で、フィラー62は、
図5に示すように樹脂61a中に分散している。
【0050】
次いで、樹脂61aを硬化させて、封止樹脂体60を形成する。浸漬処理後の静置により、時間の経過とともにフィラー62が鉛直下方に移動する。すなわち、フィラー62が沈降する。フィラー62は、軸方向において固定子コア51から遠ざかる方向に移動する。浸漬処理から所定時間が経過すると、
図6に示すように、浸漬処理時に対してフィラー62の配置に偏りが生じ、樹脂61a中において、露出部523を覆う部分のほうが被覆部524を覆う部分よりもフィラー62の量が多くなる。浸漬処理時よりも、露出部523を覆う部分のフィラー62の量が多くなる。
【0051】
よって、所定時間が経過した時点で、樹脂61aを硬化させることで、上記した封止樹脂体60を得ることができる。本実施形態では、加熱処理によって樹脂61aを硬化させ、容器90の収容空間の形状に封止樹脂体60を成形する。そして、硬化後に、コイルエンド55の一部が封止樹脂体60により封止された固定子50を、容器90から取り出す。これにより、一体成形物である封止樹脂体60を得ることができる。
【0052】
次いで、ハウジング20、シャフト30、回転子40、及び封止樹脂体60が一体化された固定子50を所定の手順で組み付けることで、
図1に示した回転電機10を得ることができる。
【0053】
<効果>
本実施形態では、封止樹脂体60において、露出部523を覆う第1樹脂部63の線膨張係数α1が、被覆部524を覆う第2樹脂部64の線膨張係数α2よりも小さくされている。これにより、第1樹脂部63と第2樹脂部64との線膨張係数が等しい構成に較べて、たとえば第1樹脂部63の線膨張係数α1を導体520の線膨張係数に近づけることができる。この場合、封止樹脂体60と露出部523の導体520との線膨張係数差に基づいて、溶接部522などの接合部に作用する熱応力を小さくすることができる。また、線膨張係数が互いに等しい構成に較べて、たとえば第2樹脂部64の線膨張係数α2を絶縁皮膜521の線膨張係数に近づけることができる。この場合、封止樹脂体60と絶縁皮膜521との線膨張係数差に基づいて、絶縁皮膜521における封止樹脂体60との界面に作用する熱応力を小さくすることができる。
【0054】
このように、接合部に作用する熱応力、及び、絶縁皮膜521の界面に作用する熱応力の少なくとも一方を小さくすることができる。接合部に作用する熱応力の低減により、接合部にクラックなどが生じるのを抑制することができる。絶縁皮膜521の界面に作用する熱応力の低減により、封止樹脂体60の剥離(界面剥離)が生じるのを抑制することができる。したがって、信頼性を向上することができる。
【0055】
本実施形態では、封止樹脂体60において、露出部523を覆う第1樹脂部63のフィラー62の含有率が、被覆部524を覆う第2樹脂部64のフィラー62の含有率よりも大きくされている。フィラー62が多いと、封止樹脂体60の線膨張係数が小さくなる。これにより、第1樹脂部63と第2樹脂部64とのフィラー62の含有率が等しい構成に較べて、たとえば第1樹脂部63の線膨張係数α1を導体520の線膨張係数に近づけることができる。また、フィラー62の含有率が互いに等しい構成に較べて、たとえば第2樹脂部64の線膨張係数α2を絶縁皮膜521の線膨張係数に近づけることができる。
【0056】
このように、接合部に作用する熱応力、及び、絶縁皮膜521の界面に作用する熱応力の少なくとも一方を小さくすることができる。したがって、信頼性を向上することができる。また、フィラー62の含有率によって封止樹脂体60の線膨張係数に部分的に違いを設けるため、第1樹脂部63と第2樹脂部64とで樹脂61を同一材料とすることもできる。この場合、構成を簡素化することができる。
【0057】
このような回転電機10は、固定子コイル52のコイルエンド55を、容器90内において、フィラー62を添加した樹脂61aに浸漬し、浸漬処理から所定時間経過後に樹脂を硬化させることで得ることができる。所定時間経過によりフィラー62が沈降してフィラー62の配置に偏りが生じ、樹脂61a中において、露出部523を覆う部分のほうが被覆部524を覆う部分よりもフィラー62の量が多くなる。この状態で樹脂61aを硬化させるため、露出部523を覆う第1樹脂部63のフィラー62の含有率が、被覆部524を覆う第2樹脂部64のフィラー62の含有率よりも大きくされた封止樹脂体60を得ることができる。
【0058】
本実施形態では、第1樹脂部63の線膨張係数α1が、第2樹脂部64の線膨張係数α2よりも露出部523を構成する導体520に近い値とされている。第2樹脂部64の線膨張係数α2が、第1樹脂部63の線膨張係数α1よりも絶縁皮膜521に近い値とされている。したがって、接合部に作用する熱応力と、絶縁皮膜521の界面に作用する熱応力との両方を小さくすることができる。
【0059】
本実施形態では、封止樹脂体60によって溶接部522が封止されている。溶接部522は、径方向に隣り合う2つのセグメントにおいて、導体520の端部同士が溶接された部分である。2つのセグメントにおいて、導体520の溶接されていない部分である非溶接部の間には隙間が存在する。このため、隙間に介在する封止樹脂体60と導体520との線膨張係数差が大きいと、封止樹脂体60によって導体520間が押し広げられ、溶接部522に応力が作用する。これに対し、本実施形態では、第1樹脂部63の線膨張係数α1が第2樹脂部64の線膨張係数α2よりも小さくされているため、溶接部522に作用する応力を低減することができる。
【0060】
また、溶接された隣り合う導体520間の隙間は狭い。フィラー62を含む液状の樹脂61aのほうが、樹脂粉末を塗布し、加熱溶融して導体520を個別に被覆する方法に較べて、隙間に入り込みやすい。
【0061】
なお、フィラー62の配置は、
図4に示す例に限定されない。すなわち、第1樹脂部63内において、フィラー62がほぼ均一に分散する例に限定されない。第1樹脂部63内において、フィラー62の配置に偏りがあっても良い。また、第2樹脂部64内において、フィラー62がほぼ均一に分散する例に限定されない。第2樹脂部64内において、フィラー62の配置に偏りがあっても良い。たとえば、封止樹脂体60において、固定子コア51側の一面60aから、一面60aとは軸方向において反対の裏面60bに向けて、徐々にフィラー62の含有率が大きくなる構成としてもよい。軸方向において、第1樹脂部63におけるフィラー62の含有率の平均値が、第2樹脂部64におけるフィラー62の含有率の平均値よりも大きければよい。さらに、境界部分を除いて、第1樹脂部63におけるフィラー62の含有率の最小値が、第2樹脂部64におけるフィラー62の含有率の最大値よりも大きいと、なおよい。
【0062】
同様に、第1樹脂部63内において、線膨張係数α1に偏りがあっても良い。また、第2樹脂部64内において、線膨張係数α2に偏りがあっても良い。たとえば、封止樹脂体60において、一面60aから裏面60bに向けて、徐々に線膨張係数が小さくなる構成としてもよい。軸方向において、第1樹脂部63における線膨張係数α1の平均値が、第2樹脂部64における線膨張係数α2の平均値よりも大きければよい。さらに、境界部分を除いて、第1樹脂部63における線膨張係数α1の最大値が、第2樹脂部64における線膨張係数α2の最小値よりも小さいと、なおよい。
【0063】
また、封止樹脂体60の形成方法も上記例に限定されない。たとえばフィラー62を多めに添加した樹脂61aにより第1樹脂部63を成形する。次いで、フィラー62を少なめに添加した樹脂61aにより第2樹脂部64を成形する。このように、2段階で封止樹脂体60を形成してもよい。第1樹脂部63と第2樹脂部64とで成形を分けるため、樹脂61a中にフィラー62をほぼ均一に分散させた状態で、樹脂61aを硬化させることができる。すなわち、第1樹脂部63の線膨張係数α1を軸方向でほぼ均一とすることができる。同様に、第2樹脂部64の線膨張係数α2を軸方向でほぼ均一とすることができる。
【0064】
(第2実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、第1樹脂部63及び第2樹脂部64のそれぞれにフィラー62が配置されている。これに代えて、第2樹脂部64にフィラー62が配置されなくてもよい。
【0065】
図7において、第1樹脂部63にはフィラー62が配置されている。一方、第2樹脂部64には、フィラー62が配置されていない。第1樹脂部63と第2樹脂部64は、樹脂61として同一材料を用いている。第1樹脂部63におけるフィラー62の含有率は、第2樹脂部64におけるフィラー62の含有率よりも大きくされている。これにより、第1樹脂部63の線膨張係数α1は、第2樹脂部64の線膨張係数α2よりも小さくされている。
【0066】
このような封止樹脂体60は、たとえばフィラー62を添加した樹脂61aにより第1樹脂部63を成形後、次いで、フィラー62を添加しない樹脂61aにより第2樹脂部64を成形することで、得ることができる。若しくは、浸漬処理後、硬化するまでの所定時間を長くすることで得ることが可能である。
【0067】
(第3実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、フィラー62の配置に偏りをもたせている。これに代えて、樹脂を異ならせてもよい。
【0068】
図8において、第1樹脂部63を構成する樹脂61bと、第2樹脂部64を構成する樹脂61cとが異なっている。樹脂61bの線膨張係数は、樹脂61cの線膨張係数よりも小さい。これにより、第1樹脂部63の線膨張係数α1は、第2樹脂部64の線膨張係数α2よりも小さくされている。樹脂61bのほうが樹脂61cよりも導体520に近い線膨張係数とされ、樹脂61cのほうが樹脂61bよりも絶縁皮膜521に近い線膨張係数とされている。
【0069】
このような封止樹脂体60は、樹脂61bにより第1樹脂部63を成形後、次いで、樹脂61cにより第2樹脂部64を成形することで、得ることができる。
【0070】
なお、本構成において、第1樹脂部63及び第2樹脂部64の少なくとも一方に、フィラー62を含むようにしてもよい。
【0071】
(第4実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、成形後に容器90から封止樹脂体60を取り出す。これに代えて、樹脂製の容器を封止樹脂体の一部として含んでもよい。
【0072】
図9において、容器90aは、樹脂材料を用いて成形されたものである。封止樹脂体60は、第1樹脂部63と、第2樹脂部64と、樹脂製の容器90aを備えている。第1樹脂部63及び第2樹脂部64は、容器90a内に収容されている。容器90aは、樹脂製であることを除けば、先行実施形態に示した容器と同様の構成とされている。容器90aの線膨張係数は、第1樹脂部63及び第2樹脂部64の少なくとも一方と異なってもよいし、第1樹脂部63及び第2樹脂部64のいずれかと同じとされてもよい。
【0073】
このように、露出部523を覆う第1樹脂部63と、被覆部524を覆う第2樹脂部64とは別の樹脂部をさらに備えてもよい。
【0074】
このような封止樹脂体60は、容器90a内で第1樹脂部63と第2樹脂部64を成形することで、得ることができる。
【0075】
(第5実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、封止樹脂体60が樹脂製の容器90aを備えている。これに代えて、容器90aとは別の樹脂部を備えてもよい。
【0076】
図10において、封止樹脂体60は、第1樹脂部63と、第2樹脂部64と、第3樹脂部65を備えている。軸方向において、固定子コア51側から、第2樹脂部64、第1樹脂部63、第3樹脂部65の順に設けられている。
図10では、それぞれの境界を一点鎖線で示している。第3樹脂部65は、第1樹脂部63よりも線膨張係数が大きくされている。第3樹脂部65は、第1樹脂部63及び第2樹脂部64と同じ樹脂61及び同じフィラー62を用いて形成されている。第3樹脂部65は、第1樹脂部63よりもフィラー62の含有率が小さくされている。
【0077】
このように、封止樹脂体60を、フィラー62の含有率が互いに異なる3層以上の構成としてもよい。また、線膨張係数が互いに異なる3層以上の構成としてもよい。
【0078】
このような封止樹脂体60は、先ず、フィラー62を添加した樹脂61aにより第3樹脂部65を成形する。次いで、フィラー62を添加した樹脂61aにより、第3樹脂部65上に第1樹脂部63を成形する。そして、フィラー62を添加した樹脂61aにより、第1樹脂部63上に第2樹脂部64を成形する。これにより、3層構造の封止樹脂体60を得ることができる。
【0079】
なお、第2樹脂部64における第1樹脂部63とは反対側に、別の樹脂部を設けてもよい。
【0080】
(他の実施形態)
この明細書および図面等における開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。例えば、開示は、実施形態において示された部品および/または要素の組み合わせに限定されない。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品および/または要素が省略されたものを包含する。開示は、ひとつの実施形態と他の実施形態との間における部品および/または要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示されるいくつかの技術的範囲は、請求の範囲の記載によって示され、さらに請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものと解されるべきである。
【0081】
明細書および図面等における開示は、請求の範囲の記載によって限定されない。明細書および図面等における開示は、請求の範囲に記載された技術的思想を包含し、さらに請求の範囲に記載された技術的思想より多様で広範な技術的思想に及んでいる。よって、請求の範囲の記載に拘束されることなく、明細書および図面等の開示から、多様な技術的思想を抽出することができる。
【0082】
回転電機10として、インナーロータ型の例を示したが、これに限定されない。アウターロータ側の回転電機10にも適用できる。
【0083】
固定子コア51がスロット53を有し、固定子コイル52のコイルサイド54がスロット53に収容される例を示したが、これに限定されない。スロット53を有さない固定子コア51に、固定子コイル52が装着される構成にも適用できる。
【0084】
コイルエンド55のみに封止樹脂体60が配置される例を示したが、これに限定されない。コイルエンド56に接合部が設けられる構成において、この接合部を覆うようにコイルエンド56に封止樹脂体60を設けてもよい。さらには、コイルエンド55,56の両方に接合部が設けられる構成において、コイルエンド55,56のそれぞれに封止樹脂体60を設けてもよい。
【0085】
固定子コイル52の構成は、上記した例に限定されない。固定子コイル52は、導体520と絶縁皮膜521を備え、接合部を含む露出部523と被覆部524を有するコイルエンド55を有せばよい。
【0086】
容器90,90a及び封止樹脂体60の形状は、上記例に限定されない。
【0087】
封止樹脂体60は、周方向において、複数個に分割されてもよい。封止樹脂体60のそれぞれは、複数の接合部を一体的に封止する。
【0088】
樹脂60として、熱硬化性樹脂の例を示したが、これに限定されない。硬化性樹脂であればよい。
【符号の説明】
【0089】
10…回転電機、20…ハウジング、21…第1ハウジング、22…第2ハウジング、30…シャフト、31…軸受、40…回転子、41…回転子コア、41a…貫通孔、50…固定子、51…固定子コア、51a…一端面、51b…他端面、52…固定子コイル、520…導体、521…絶縁皮膜、522…溶接部、523…露出部、524…被覆部、53…スロット、54…コイルサイド、55,56…コイルエンド、60…封止樹脂体、60a…一面、60b…裏面、61,61a,61b,61c…樹脂、62…フィラー、63…第1樹脂部、64…第2樹脂部、65…第3樹脂部、90,90a…容器、91…底壁、92…側壁、93…開口部