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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20230829BHJP
   B41J 2/21 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
B41J2/01 205
B41J2/01 207
B41J2/01 305
B41J2/21
B41J2/01 107
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019057651
(22)【出願日】2019-03-26
(65)【公開番号】P2020157530
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】荒金 覚
【審査官】高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-215900(JP,A)
【文献】特開2018-079633(JP,A)
【文献】特開2010-120254(JP,A)
【文献】特開平04-226772(JP,A)
【文献】特開2015-189095(JP,A)
【文献】特開平09-193419(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0060707(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に配列された複数のノズル、を有する液体吐出ヘッドと、
前記複数のノズルの少なくとも一部について、異常が生じた異常ノズルであるか否かに応じた信号を出力する信号出力部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記信号出力部からの信号に基づいて、前記複数のノズルの中に前記異常ノズルがあるか否かを判定し、
前記液体吐出ヘッドに、前記複数のノズルのうち前記一方向に連続して並ぶ一部のノズルのみから液体を吐出させる部分吐出モードで、被吐出媒体へ液体を吐出させることが可能であり、
前記部分吐出モードで前記液体吐出ヘッドから前記被吐出媒体へ液体を吐出させるときに、
前記複数のノズルのうち前記一方向に連続して並ぶ複数の第1ノズルの中に前記異常ノズルがないと判定した場合には、前記複数の第1ノズルを前記一部のノズルに設定し、
前記複数の第1ノズルの中に前記異常ノズルがあると判定した場合には、
前記複数の第1ノズルのうち、前記異常ノズルでない、1又は前記一方向に連続して並ぶ一部の第1ノズルと、前記複数のノズルのうち、前記異常ノズルでなく、且つ、前記一部の第1ノズルと前記一方向に連続して並ぶ第2ノズルと、を前記一部のノズルに設定することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記複数のノズルから前記液体吐出ヘッド内の液体を排出させる排出動作を行う排出手段、を備え、
前記制御部は、
前記部分吐出モードと、前記複数のノズル全てから液体を吐出させる全吐出モードとのうち、いずれかで選択的に前記液体吐出ヘッドから前記被吐出媒体へ液体を吐出させることが可能であり、
前記全吐出モードで前記液体吐出ヘッドから前記被吐出媒体へ液体を吐出させるときに、
前記複数のノズルの中に前記異常ノズルがあると判定した場合には、
前記排出手段に前記排出動作を行わせてから、前記液体吐出ヘッドに前記複数のノズルから前記被吐出媒体へ液体を吐出させ、
前記部分吐出モードで前記液体吐出ヘッドから前記被吐出媒体へ液体を吐出させるときに、
前記複数のノズルの中に前記異常ノズルがあると判定した場合には、
前記異常ノズルを含まないように前記一部のノズルを設定し、
前記排出手段に前記排出動作を行わせずに、前記液体吐出ヘッドに前記一部のノズルから前記被吐出媒体へ液体を吐出させることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記被吐出媒体を搬送方向に搬送する搬送部と、
前記液体吐出ヘッドを搭載し、前記搬送方向と交差する走査方向に移動するキャリッジと、を備え、
前記複数のノズルが前記搬送方向に配列されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記搬送部は、
前記液体吐出ヘッドよりも前記搬送方向の下流側に配置され、シート状の前記被吐出媒体を挟んで前記搬送方向に搬送するローラ対、を有し、
前記複数の第1ノズルは、前記複数のノズルのうち、前記搬送方向の下流側のノズルであることを特徴とする請求項に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記搬送部は、
前記被吐出媒体として、シート状の第1被吐出媒体と、前記第1被吐出媒体よりも着弾した液体が浸透しにくいシート状の第2被吐出媒体のうちいずれかを選択的に搬送するものであり、
前記液体吐出ヘッドよりも前記搬送方向の下流側に配置され、前記被吐出媒体を挟んで前記搬送方向に搬送するローラ対、を有し、
前記液体吐出ヘッドよりも前記搬送方向の上流側に配置され、前記被吐出媒体の前記液体吐出ヘッドと対向可能な対向面を押さえる押さえ部材、を備え、
前記被吐出媒体が前記第1被吐出媒体である場合には、前記複数の第1ノズルが、前記複数のノズルのうち下流側のノズルであり、
前記被吐出媒体が前記第2被吐出媒体である場合には、前記複数の第1ノズルが、前記複数のノズルのうち上流側のノズルであることを特徴とする請求項に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
被吐出媒体を一方向に搬送する搬送部と、
前記一方向に配列された複数のノズル、を有する液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドを搭載し、前記一方向と交差する走査方向に移動するキャリッジと、
前記複数のノズルの少なくとも一部について、異常が生じた異常ノズルであるか否かに応じた信号を出力する信号出力部と、
前記複数のノズルのうち前記一方向に連続して並ぶ前記ノズルによってそれぞれ構成された複数のノズルグループの情報を記憶する記憶部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記信号出力部からの信号に基づいて、前記複数のノズルの中に前記異常ノズルがあるか否かを判定し、
前記液体吐出ヘッドに、前記複数のノズルのうち前記一方向に連続して並ぶ一部のノズルのみから液体を吐出させる部分吐出モードで、前記被吐出媒体へ液体を吐出させることが可能であり、
前記部分吐出モードで前記液体吐出ヘッドから前記被吐出媒体へ液体を吐出させるときに、
前記複数のノズルグループのうち第1ノズルグループを構成する複数の第1ノズルの中に前記異常ノズルがないと判定した場合には、前記複数の第1ノズルを前記一部のノズルに設定し、
前記複数の第1ノズルの中に前記異常ノズルがあると判定し、且つ、前記複数のノズルグループのうち、第1ノズルグループ以外の第2ノズルグループを構成する複数の第2ノズルの中に前記異常ノズルがないと判定した場合には、前記複数の第2ノズルを前記一部のノズルに設定し、
前記搬送部は、
前記液体吐出ヘッドよりも前記一方向の下流側に配置され、シート状の前記被吐出媒体を挟んで前記一方向に搬送するローラ対、を有し、
前記複数の第1ノズルは、前記複数のノズルのうち、前記一方向の下流側のノズルであることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項7】
被吐出媒体を一方向に搬送する搬送部と、
前記一方向に配列された複数のノズル、を有する液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドを搭載し、前記一方向と交差する走査方向に移動するキャリッジと、
前記複数のノズルの少なくとも一部について、異常が生じた異常ノズルであるか否かに応じた信号を出力する信号出力部と、
前記複数のノズルのうち前記一方向に連続して並ぶ前記ノズルによってそれぞれ構成された複数のノズルグループの情報を記憶する記憶部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記信号出力部からの信号に基づいて、前記複数のノズルの中に前記異常ノズルがあるか否かを判定し、
前記液体吐出ヘッドに、前記複数のノズルのうち前記一方向に連続して並ぶ一部のノズルのみから液体を吐出させる部分吐出モードで、前記被吐出媒体へ液体を吐出させることが可能であり、
前記部分吐出モードで前記液体吐出ヘッドから前記被吐出媒体へ液体を吐出させるときに、
前記複数のノズルグループのうち第1ノズルグループを構成する複数の第1ノズルの中に前記異常ノズルがないと判定した場合には、前記複数の第1ノズルを前記一部のノズルに設定し、
前記複数の第1ノズルの中に前記異常ノズルがあると判定し、且つ、前記複数のノズルグループのうち、第1ノズルグループ以外の第2ノズルグループを構成する複数の第2ノズルの中に前記異常ノズルがないと判定した場合には、前記複数の第2ノズルを前記一部のノズルに設定し、
前記搬送部は、
前記被吐出媒体として、シート状の第1被吐出媒体と、前記第1被吐出媒体よりも着弾した液体が浸透しにくいシート状の第2被吐出媒体のうちいずれかを選択的に搬送するものであり、
前記液体吐出ヘッドよりも前記一方向の下流側に配置され、前記被吐出媒体を挟んで前記一方向に搬送するローラ対、を有し、
前記液体吐出ヘッドよりも前記一方向の上流側に配置され、前記被吐出媒体の前記液体吐出ヘッドと対向可能な対向面を押さえる押さえ部材、を備え、
前記被吐出媒体が前記第1被吐出媒体である場合には、前記複数の第1ノズルが、前記複数のノズルのうち下流側のノズルであり、
前記被吐出媒体が前記第2被吐出媒体である場合には、前記複数の第1ノズルが、前記複数のノズルのうち上流側のノズルであることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項8】
前記複数の第1ノズルの中に前記異常ノズルがある場合に前記一部のノズルに設定される前記ノズルの数は、前記複数の第1ノズルの数よりも少ないことを特徴とする請求項3~7のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記液体吐出ヘッドは、
ブラックインクを吐出する複数のブラックノズルが前記一方向に配列されることによって形成されたブラックノズル列と、
カラーインクを吐出する複数のカラーノズルが前記一方向に配列されることによって形成され、前記一方向と直交する方向に前記ブラックノズル列と並んで配置されたカラーノズル列と、を有し、
前記制御部は、
前記部分吐出モードとして、
前記複数のブラックノズルのうち一部のブラックノズルと、前記複数のカラーノズルのうち、前記一部のブラックノズルと前記一方向の位置が同じ一部のカラーノズルとの両方からインクを吐出させる両部分吐出モードで、前記液体吐出ヘッドから前記被吐出媒体へ液体を吐出させることが可能であり、
前記両部分吐出モードで前記液体吐出ヘッドから被吐出媒体へ液体を吐出させるときに、
前記複数のブラックノズルのうち、前記一方向に連続して並ぶ複数の第1ブラックノズルの中に異常ノズルがないと判定され、且つ、前記複数のカラーノズルのうち、前記一方向の位置が前記複数の第1ブラックノズルと同じ複数の第1カラーノズルの中に前記異常ノズルがないと判定した場合には、
前記複数の第1ブラックノズルを、前記一部のブラックノズルに設定し、
前記複数の第1カラーノズルを、前記一部のカラーノズルに設定し、
前記複数の第1ブラックノズル及び前記複数の第1カラーノズルの少なくともいずれかの中に、前記異常ノズルがあると判定した場合には、
前記複数のブラックノズルのうち、前記一方向に連続して並び、且つ、前記異常ノズルを含まず、且つ、前記一方向の位置が同じとなる前記カラーノズルも前記異常ノズルを含まない複数の第2ブラックノズルを、前記一部のブラックノズルに設定し、
前記複数のカラーノズルのうち、前記複数の第2ブラックノズルと前記一方向の位置が同じ複数の第2カラーノズルを、前記一部のカラーノズルに設定することを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項10】
前記制御部は、
前記部分吐出モードとして、
前記両部分吐出モードと、前記一部のカラーノズルからカラーインクを吐出させ、前記ブラックノズルからはブラックインクを吐出させない片部分吐出モードと、のうちいずれかで選択的に前記液体吐出ヘッドから被吐出媒体へ液体を吐出可能であり、
前記片部分吐出モードで前記液体吐出ヘッドから被吐出媒体へ液体を吐出させるときに、
前記複数の第1ブラックノズルの中に前記異常ノズルがあると判定しても、前記複数の第1カラーノズルの中に前記異常ノズルがないと判定した場合には、前記複数の第1カラーノズルを、前記一部のカラーノズルに設定することを特徴とする請求項に記載の液体吐出装置。
【請求項11】
一方向に配列された複数のノズル、を有する液体吐出ヘッドと、
前記複数のノズルの少なくとも一部について、異常が生じた異常ノズルであるか否かに応じた信号を出力する信号出力部と、
前記複数のノズルのうち前記一方向に連続して並ぶ前記ノズルによってそれぞれ構成された複数のノズルグループの情報を記憶する記憶部と、
制御部と、を備え、
前記液体吐出ヘッドは、
ブラックインクを吐出する複数のブラックノズルが前記一方向に配列されることによって形成されたブラックノズル列と、
カラーインクを吐出する複数のカラーノズルが前記一方向に配列されることによって形成され、前記一方向と直交する方向に前記ブラックノズル列と並んで配置されたカラーノズル列と、を有し、
前記制御部は、
前記信号出力部からの信号に基づいて、前記複数のノズルの中に前記異常ノズルがあるか否かを判定し、
前記液体吐出ヘッドに、前記複数のノズルのうち前記一方向に連続して並ぶ一部のノズルのみから液体を吐出させる部分吐出モードで、被吐出媒体へ液体を吐出させることが可能であり、
前記部分吐出モードで前記液体吐出ヘッドから前記被吐出媒体へ液体を吐出させるときに、
前記複数のノズルグループのうち第1ノズルグループを構成する複数の第1ノズルの中に前記異常ノズルがないと判定した場合には、前記複数の第1ノズルを前記一部のノズルに設定し、
前記複数の第1ノズルの中に前記異常ノズルがあると判定し、且つ、前記複数のノズルグループのうち、第1ノズルグループ以外の第2ノズルグループを構成する複数の第2ノズルの中に前記異常ノズルがないと判定した場合には、前記複数の第2ノズルを前記一部のノズルに設定し、
前記部分吐出モードとして、
前記複数のブラックノズルのうち一部のブラックノズルと、前記複数のカラーノズルのうち、前記一部のブラックノズルと前記一方向の位置が同じ一部のカラーノズルとの両方からインクを吐出させる両部分吐出モードと、
前記一部のカラーノズルからカラーインクを吐出させ、前記ブラックノズルからはブラックインクを吐出させない片部分吐出モードと、のうちいずれかで選択的に前記液体吐出ヘッドから被吐出媒体へ液体を吐出可能であり、
前記両部分吐出モードで前記液体吐出ヘッドから被吐出媒体へ液体を吐出させるときに、
前記複数のブラックノズルのうち、前記一方向に連続して並ぶ複数の第1ブラックノズルの中に異常ノズルがないと判定され、且つ、前記複数のカラーノズルのうち、前記一方向の位置が前記複数の第1ブラックノズルと同じ複数の第1カラーノズルの中に前記異常ノズルがないと判定した場合には、
前記複数の第1ブラックノズルを、前記一部のブラックノズルに設定し、
前記複数の第1カラーノズルを、前記一部のカラーノズルに設定し、
前記複数の第1ブラックノズル及び前記複数の第1カラーノズルの少なくともいずれかの中に、前記異常ノズルがあると判定した場合には、
前記複数のブラックノズルのうち、前記一方向に連続して並び、且つ、前記異常ノズルを含まず、且つ、前記一方向の位置が同じとなる前記カラーノズルも前記異常ノズルを含まない複数の第2ブラックノズルを、前記一部のブラックノズルに設定し、
前記複数のカラーノズルのうち、前記複数の第2ブラックノズルと前記一方向の位置が同じ複数の第2カラーノズルを、前記一部のカラーノズルに設定し、
前記片部分吐出モードで前記液体吐出ヘッドから被吐出媒体へ液体を吐出させるときに、
前記複数の第1ブラックノズルの中に前記異常ノズルがあると判定しても、前記複数の第1カラーノズルの中に前記異常ノズルがないと判定した場合には、前記複数の第1カラーノズルを、前記一部のカラーノズルに設定することを特徴とする液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルから液体を吐出する液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ノズルから液体を吐出する液体吐出装置の一例として、特許文献1には、ノズルからインクを吐出して印刷を行うプリンタが記載されている。特許文献1のプリンタでは、複数のヘッドが列方向に沿って並んでおり、用紙を列方向と直交する搬送方向に搬送しつつ、複数のヘッドのノズルからインクを吐出して用紙への印刷を行う。また、特許文献1のプリンタでは、用紙の幅(列方向の長さ)に応じて、複数のヘッドのうち、印刷に使用する使用ヘッドを選択し、それ以外のヘッドを未使用ヘッドとする。そして、全てのヘッドのノズル検査を行い、使用ヘッドにノズル抜けがある場合には、使用ノズルに対するクリーニングを行ってノズル抜けの回復を図る。一方、未使用ヘッドのノズルに抜けがある場合には、直ちにクリーニングを行わずに印刷を続ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-103464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1では、用紙の幅によって使用ヘッドと未使用ヘッドが決まり、使用ヘッドにノズル抜けがあった場合には必ずクリーニングを行ってから印刷を行うことになる。そのため、印刷指令が入力されてから記録が完了するまでの時間が長くなってしまう。
【0005】
本発明の目的は、被吐出媒体への液体の吐出の指令が入力されてから、被吐出媒体への液体の吐出が完了するまでの時間を極力短くすることが可能な液体吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の液体吐出装置は、一方向に配列された複数のノズル、を有する液体吐出ヘッドと、前記複数のノズルの少なくとも一部について、異常が生じた異常ノズルであるか否かに応じた信号を出力する信号出力部と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記信号出力部からの信号に基づいて、前記複数のノズルの中に前記異常ノズルがあるか否かを判定し、前記液体吐出ヘッドに、前記複数のノズルのうち前記一方向に連続して並ぶ一部のノズルのみから液体を吐出させる部分吐出モードで、被吐出媒体へ液体を吐出させることが可能であり、前記部分吐出モードで前記液体吐出ヘッドから前記被吐出媒体へ液体を吐出させるときに、前記複数のノズルのうち前記一方向に連続して並ぶ複数の第1ノズルの中に前記異常ノズルがないと判定した場合には、前記複数の第1ノズルを前記一部のノズルに設定し、前記複数の第1ノズルの中に前記異常ノズルがあると判定した場合には、前記複数の第1ノズルのうち、前記異常ノズルでない、1又は前記一方向に連続して並ぶ一部の第1ノズルと、前記複数のノズルのうち、前記異常ノズルでなく、且つ、前記一部の第1ノズルと前記一方向に連続して並ぶ第2ノズルと、を前記一部のノズルに設定する。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、部分吐出モードで被吐出媒体への液体の吐出を行うときに、複数のノズルの中に異常ノズルがある場合には、異常ノズルを避けて、複数のノズルのうち液体を吐出させる一部のノズルを設定する。これにより、複数のノズルの中に異常ノズルがある場合でも、異常ノズルを避けて上記一部のノズルを設定すれば、排出動作を行わなくても、被吐出媒体に適切に液体を着弾させることができ、被吐出媒体への液体の吐出の指令が入力されてから、被吐出媒体への液体の吐出が完了するまでの時間を極力短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係るプリンタの概略構成図である。
図2図1の矢印IIの方向からみたときの、キャリッジ、サブタンク、インクジェットヘッド、プラテン、搬送ローラ対、押さえ部材の位置関係を示す図である。
図3図1のインクジェットヘッドの平面図である。
図4図3のIV-IV線断面図である。
図5】キャップ内に配置された検出用電極、及び、検出用電極と高電圧電源回路及び判定回路との接続関係を説明するための図である。
図6】(a)はノズルからインクが吐出された場合の検出用電極の電圧値の変化を示す図であり、(b)はノズルからインクが吐出されなかった場合の検出用電極の電圧値の変化を示す図である。
図7】プリンタの電気的構成を示すブロック図である。
図8】記録時の処理の流れを示すフローチャートである。
図9】ノズルグループを説明するための図である。
図10】変形例1における記録時の処理の流れを示すフローチャートである。
図11】変形例2におけるノズルグループを説明するための図である。
図12】変形例3における記録時の処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
【0010】
<プリンタ全体の構成>
図1図2に示すように、本実施形態に係るプリンタ1(本発明の「液体吐出装置」)は、キャリッジ2、サブタンク3、インクジェットヘッド4(本発明の「液体吐出ヘッド」)、プラテン5、搬送ローラ対6,7(本発明の「搬送部」)、メンテナンスユニット8などを備えている。
【0011】
キャリッジ2は、走査方向に延びた2本のガイドレール11,12に支持されている。キャリッジ2は、図示しないベルトなどを介してキャリッジモータ86(図6参照)に接続されており、キャリッジモータ86を駆動させると、キャリッジ2がガイドレール11,12に沿って走査方向に移動する。なお、以下では、図1に示すように、走査方向の右側及び左側を定義して説明を行う。
【0012】
サブタンク3は、キャリッジ2に搭載されている。ここで、プリンタ1には、カートリッジホルダ14が設けられており、カートリッジホルダ14に4つのインクカートリッジ15が取り外し可能に装着されている。4つのインクカートリッジ15には、走査方向の右側に配置されたものから、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクが貯留されている。サブタンク3は、4本のチューブ13を介してカートリッジホルダ14に装着された4つのインクカートリッジ15と接続されている。これにより、4つのインクカートリッジ15からサブタンク3に上記4色のインクが供給される。
【0013】
インクジェットヘッド4は、キャリッジ2に搭載され、サブタンク3の下端部に接続されている。インクジェットヘッド4には、サブタンク3から上記4色のインクが供給される。また、インクジェットヘッド4は、その下面であるノズル面4aに形成された複数のノズル10からインクを吐出する。より詳細に説明すると、複数のノズル10は、走査方向と直交する搬送方向(本発明の「一方向」)に配列されることによってノズル列9を形成しており、インクジェットヘッド4は、走査方向に並んだ4列のノズル列9を有する。複数のノズル10からは、走査方向の右側のノズル列9を構成するものから、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクが吐出される。
【0014】
プラテン5は、インクジェットヘッド4の下方に配置され、複数のノズル10と対向している。プラテン5は、走査方向に記録用紙P(本発明の「シート状の被吐出媒体」)の全長にわたって延び、記録用紙Pを下方から支持する。また、プラテン5の上方には、インクジェットヘッド4よりも搬送方向の上流側に位置する部分に、押さえ部材16が配置されている。押さえ部材16は、記録用紙Pの上面Pa(本発明の「対向面」)を上方から押さえることで、記録用紙Pが浮き上がるのを抑える。これにより、ノズル10と記録用紙Pの上面Paとの距離が変動してしまうのが抑えられる。
【0015】
搬送ローラ対6は、インクジェットヘッド4及びプラテン5よりも搬送方向の上流側に配置されている。搬送ローラ対6は、走査方向に延びた駆動ローラ6aと従動ローラ6bとを有する。従動ローラ6bは、駆動ローラ6aの上方に配置され、図示しないバネなどによって駆動ローラ6aに押し付けられている。搬送ローラ対7(本発明の「ローラ対」)は、インクジェットヘッド4及びプラテン5よりも搬送方向の下流側に配置されている。搬送ローラ対7は、走査方向に延びた駆動ローラ7aと従動ローラ7bとを有する。従動ローラ7bは、駆動ローラ7aの上方に配置され、図示しないバネなどによって駆動ローラ7aに押し付けられている。
【0016】
駆動ローラ6a,7aは、図示しないギヤなどを介して搬送モータ87(図6参照)に接続されている。搬送モータ87を駆動させると、駆動ローラ6a,7aが回転し、これに伴って従動ローラ6b,7bが従動回転する。これにより、記録用紙Pが、駆動ローラ6aと従動ローラ6b、及び、駆動ローラ7aと従動ローラ7bによってそれぞれ挟まれた状態で搬送方向に搬送される。ここで、プリンタ1では、図示しない給紙機構により、記録用紙Pとして、普通紙(本発明の「第2被吐出媒体」)及び光沢紙(本発明の「第1被吐出媒体」)のいずれかが選択的に供給され、駆動ローラ対6,7は、給紙機構により供給された記録用紙Pを搬送する。
【0017】
メンテナンスユニット8は、後述するように吸引パージを行って複数のノズル10からインクジェットヘッド4内のインクを排出させるためのものである。メンテナンスユニット8については後程詳細に説明する。
【0018】
<インクジェットヘッド>
次に、インクジェットヘッド4について詳細に説明する。図3図4に示すように、インクジェットヘッド4は、流路ユニット21と圧電アクチュエータ22とを備えている。
【0019】
<流路ユニット>
流路ユニット21は、4枚のプレート31~34が上からこの順に積層されることによって形成されている。プレート31~33は、ステンレスなどの金属材料からなる。プレート34は、ポリイミドなどの合成樹脂材料からなる。
【0020】
プレート34には、複数のノズル10が形成されている。複数のノズル10は、上述したような4列のノズル列9を形成している。そして、プレート34の下面が、インクジェットヘッド4のノズル面4aとなっている。プレート31には複数の圧力室40が形成されている。圧力室40は、走査方向を長手方向とする楕円の平面形状を有している。また、複数の圧力室40は、複数のノズル10に個別のものであり、走査方向の左側の端部がノズル10と上下方向に重なっている。これにより、プレート31には、複数の圧力室40が搬送方向に配列されることによってそれぞれ形成され、走査方向に並んだ4列の圧力室列29が形成されている。
【0021】
プレート32には、各圧力室40の走査方向の右側の端部と上下方向に重なる部分に円形の貫通孔42が形成されている。また、プレート32には、各圧力室40の走査方向の左側の端部及びノズル10と上下方向に重なる部分に、円形の貫通孔43が形成されている。
【0022】
プレート33には、4つのマニホールド流路41が形成されている。4つのマニホールド流路41は、4つの圧力室列29に対応している。マニホールド流路41は、搬送方向に延び、対応する圧力室列29を構成する複数の圧力室40の走査方向の右側の部分と上下方向に重なっている。これにより、各圧力室40が、貫通孔42を介してマニホールド流路41と連通する。また、各マニホールド流路41の搬送方向の上流側の端部には供給口39が設けられている。インクジェットヘッド4は、供給口39においてサブタンク3内の流路と接続されている。これにより、マニホールド流路41には、供給口39からインクが供給される。また、プレート33には、各貫通孔43及びノズル10と上下方向に重なる部分に、円形の貫通孔44が形成されている。これにより、各ノズル10が貫通孔43,44を介して圧力室40と連通する。
【0023】
<圧電アクチュエータ>
圧電アクチュエータ22は、振動板51と、圧電層52と、共通電極53と、複数の個別電極54とを備えている。振動板51は、チタン酸鉛とジルコン酸鉛との混晶であるチタン酸ジルコン酸鉛を主成分とする圧電材料からなり、流路ユニット21の上面に配置され、複数の圧力室40を覆っている。なお、振動板51は、次に説明する圧電層52とは異なり、圧電材料以外の絶縁性材料からなるものであってもよい。
【0024】
圧電層52は、上記圧電材料からなり、振動板51の上面に配置され、複数の圧力室40にわたって連続的に延びている。共通電極53は、振動板51と圧電層52との間に配置され、複数の圧力室40にわたって連続的に延びている。共通電極53は、図示しない配線部材などを介して図示しない電源回路に接続され、グランド電位に保持されている。
【0025】
複数の個別電極54は、複数の圧力室40に個別のものである。個別電極54は、圧力室40よりも一回り小さい楕円の平面形状を有し、圧電層52の上面に配置され、圧力室40の中央部と上下方向に重なっている。また、個別電極54の走査方向の右側の端部は、圧力室40と上下方向に重ならない位置まで走査方向の右側に延び、その先端部が接続端子54aとなっている。接続端子54aには図示しない配線部材が接続され、個別電極54は、この配線部材を介してドライバIC59(図6参照)に接続されている。そして、ドライバIC59により、複数の個別電極54に個別に、グランド電位及び所定の駆動電位(例えば20V程度)のいずれかが選択的に付与される。
【0026】
また、共通電極53及び複数の個別電極54がこのように配置されているのに対応して、圧電層52の共通電極53と各個別電極54とに挟まれた部分が、それぞれ、厚み方向に分極されている。そして、以上のような構造の圧電アクチュエータ22では、振動板51、圧電層52及び共通電極53の、各圧力室40と上下方向に重なる部分と、個別電極54とによって形成される部分が、それぞれ、圧力室40内のインクに圧力を付与する駆動素子50となっている。
【0027】
ここで、圧電アクチュエータ22を駆動して、ノズル10からインクを吐出させる方法について説明する。圧電アクチュエータ22では、予め、全ての個別電極54が、共通電極53と同じグランド電位に保持されている。あるノズル10からインクを吐出させるときには、そのノズル10に対応する駆動素子50における個別電極54の電位を、グランド電位から駆動電位に切り換える。すると、個別電極54と共通電極53との間の電位差により、圧電層52のこれらの電極に挟まれた部分に、分極方向と平行な厚み方向の電界が生じる。この電界により、圧電層52の上記部分が水平方向に収縮し、振動板51及び圧電層52の圧力室40と上下方向に重なる部分が全体として圧力室40側に凸となるように変形する。これにより、圧力室40の容積が小さくなって圧力室40内のインクの圧力が上昇し、圧力室40に連通するノズル10からインクが吐出される。
【0028】
<メンテナンスユニット>
次に、メンテナンスユニット8について説明する。図1に示すように、メンテナンスユニット8は、キャップ61と、吸引ポンプ62と、廃液タンク63とを備えている。キャップ61は、プラテン5よりも走査方向の右側に配置されている。そして、キャリッジ2を、プラテン5よりも走査方向の右側のメンテナンス位置に位置させると、複数のノズル10がキャップ61と対向する。
【0029】
また、キャップ61は、キャップ昇降機構88(図6参照)によって昇降可能となっている。そして、キャリッジ2を上記メンテナンス位置に位置させて複数のノズル10とキャップ61とを対向させた状態で、キャップ昇降機構88によりキャップ61を上昇させると、キャップ61の上端部がノズル面4aに密着し、複数のノズル10がキャップ61に覆われる。なお、キャップ61はノズル面4aに密着することで複数のノズル10を覆うものであることには限られない。キャップ61は、例えば、インクジェットヘッド4のノズル面4aの周囲に配置される図示しないフレーム等に密着することで、複数のノズル10を覆うものであってもよい。
【0030】
吸引ポンプ62はチューブポンプなどであり、キャップ61及び廃液タンク63と接続されている。そして、メンテナンスユニット8では、上述したように複数のノズル10がキャップ61によって覆われた状態で吸引ポンプ62を駆動させると、複数のノズル10からインクジェットヘッド4内のインクを排出させる、いわゆる吸引パージ(本発明の「排出動作」)を行うことができる。インクジェットヘッド4から排出されたインクは廃液タンク63に貯留される。なお、本実施形態では、キャップ61及び吸引ポンプ62を含むメンテナンスユニット8が、本発明の「排出手段」に相当する。
【0031】
なお、ここでは、便宜上、キャップ61が全てのノズル10をまとめて覆い、吸引パージにおいて、全てのノズル10からインクジェットヘッド4内のインクを排出させるものとして説明を行ったが、これには限られない。例えば、キャップ61が、ブラックインクを吐出する最も右側のノズル列9を構成する複数のノズル10を覆う部分と、カラーインク(イエロー、シアン、マゼンタのインク)を吐出する左側3列のノズル列9を構成する複数のノズル10を覆う部分とを別々に備えており、吸引パージにおいて、インクジェットヘッド4内のブラックインク及びカラーインクのいずれかを選択的に排出させることができるようになっていてもよい。
【0032】
また、図5に示すように、キャップ61内には、矩形の平面形状を有する検出用電極66が配置されている。検出用電極66は、抵抗69を介して高電圧電源回路67に接続されている。そして、検出用電極66には、高電圧電源回路67により所定の正の電位(例えば300V程度)が付与される。一方で、インクジェットヘッド4の流路ユニット21は、グランド電位に保持されている。これにより、インクジェットヘッド4と検出用電極66との間に所定の電位差が生じる。検出用電極66には、判定回路68(本発明の「信号出力部」)が接続されている。判定回路68は、検出用電極66から出力された電圧信号の電圧値と、閾値Vtとを比較し、その結果に応じた信号を出力する。
【0033】
より詳細に説明すると、インクジェットヘッド4と、検出用電極66との間には電位差が生じているため、ノズル10から吐出されたインクは帯電している。キャリッジ2を上記メンテンナンス位置に位置させた状態で、ノズル10から検出用電極66に向けてインクを吐出させると、図6(a)に示すように、帯電したインクが検出用電極66に近づき、検出用電極66にインクが着弾するまで、検出用電極66の電圧値が上昇し、インクジェットヘッド4が駆動されていないときの電圧値V1と比べて高い電圧値V2に達する。そして、帯電したインクが検出用電極66に着弾した後、検出用電極66の電圧値が徐々に電圧値V1まで低下する。すなわち、インクジェットヘッド4の駆動期間Tdにおいて、検出用電極66の電圧値が変化する。
【0034】
一方で、ノズル10からインクが吐出されていない場合には、図6(b)に示すように、インクジェットヘッド4の駆動期間Tdにおいて、検出用電極66から出力される電圧信号の電圧値は、電圧値V1からほとんど変化しない。そこで、判定回路68は、これらを区別するために閾値Vt(V1<Vt<V2)が設定されている。そして、判定回路68は、インクジェットヘッド4の駆動期間Tdにおいて、検出用電極66から出力される電圧信号の最大の電圧値と閾値Vtとを比較し、その判定結果に応じた信号を出力する。
【0035】
なお、ここでは、高電圧電源回路67により、検出用電極66に正の電位が付与されているが、高電圧電源回路67により、検出用電極66に負の電位(例えば-300V程度)が付与されていてもよい。この場合には、上述したのとは逆に、キャリッジ2を上記メンテンナンス位置に位置させた状態で、ノズル10から検出用電極66に向けてインクを吐出させると、帯電したインクが検出用電極66に近づき、検出用電極66にインクが着弾するまで、検出用電極66の電圧値が低下する。
【0036】
<プリンタの電気的構成>
次に、プリンタ1の電気的構成について説明する。プリンタ1の動作は、制御装置80によって制御される。図7に示すように、制御装置80は、CPU(Central Processing Unit)81、ROM(Read Only Memory)82、RAM(Random Access Memory)83、フラッシュメモリ84、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)85などからなり、キャリッジモータ86、搬送モータ87、ドライバIC59、キャップ昇降機構88、高電圧電源回路67、吸引ポンプ62などの動作を制御する。また、制御装置80には、判定回路68から上述の信号が入力される。
【0037】
なお、制御装置80は、CPU81のみが各種処理を行うものであってもよいし、ASIC85のみが各種処理を行うものであってもよいし、CPU81とASIC85とが協働して各種処理を行うものであってもよい。また、制御装置80は、1つのCPU81が単独で処理を行うものであってもよいし、複数のCPU81が処理を分担して行うものであってもよい。また、制御装置80は、1つのASIC85が単独で処理を行うものであってもよいし、複数のASIC85が処理を分担して行うものであってもよい。
【0038】
<画像の記録>
次に、プリンタ1による記録用紙Pへの画像の記録について説明する。プリンタ1では、制御装置80の制御により、キャリッジ2を走査方向に移動させつつ、インクジェットヘッド4に複数のノズル10から記録用紙Pに向けてインクを吐出させる記録パスと、搬送ローラ対6,7に記録用紙Pを搬送方向に搬送させる搬送動作とを交互に行うことで、記録用紙Pに画像を記録させる。
【0039】
このとき、プリンタ1では、制御装置80の制御により、高速記録モード(本発明の「全吐出モード」)及び高画質記録モード(本発明の「部分吐出モード」)のうちのいずれかで、選択的に記録用紙Pに画像を記録することができる。高速記録モードでは、記録パスにおいて、各ノズル列9を構成する複数のノズル10を全て使用する。これにより、1回の記録パスで記録する領域の搬送方向の長さが最大限大きくなり、記録用紙Pへの記録が完了するまでの記録パスの回数が少なくなる。その結果、高速に記録を行うことができる。
【0040】
一方、キャリッジ2とガイドレール11,12との間には多少のがたがあり、記録パスでは、キャリッジ2が移動中に傾き、ノズル列9を構成する複数のノズル10間で、走査方向の位置がずれることがある。このとき、搬送方向に大きく離れたノズル10同士ほど走査方向の位置が大きくずれる。そこで、高画質記録モードでは、記録パスにおいて、各ノズル列9を構成する複数のノズル10のうち、搬送方向に連続して並ぶ一部のノズル10のみを使用する。これにより、記録パスで使用されるノズル10のうち、搬送方向に最も離れたノズル10同士の間隔が小さくなり、各ノズル列9を構成する複数のノズル10間での走査方向の位置ずれを極力小さくすることができる。その結果、各ノズル列9を構成する複数のノズル10から吐出されたインクによって形成される、記録用紙P上の複数のドット間での走査方向の位置ずれが極力小さくなり、記録される画像の画質を高くすることができる。なお、以下では、高画質記録モードで記録用紙Pへの画像の記録を行うときに使用される上記一部のノズルのことを「使用ノズル」とすることがある。
【0041】
また、本実施形態では、高速記録モード及び高画質記録モードのいずれで記録を行うときにも、インクジェットヘッド4の4列のノズル列9を構成するノズル10から上記4色のインクを吐出して画像の記録を行う。
【0042】
<記録時の制御>
次に、記録時の制御装置80の処理について説明する。プリンタ1において記録用紙Pへの記録を行うときに、制御装置80は、図8のフローに沿って処理を行う。図8のフローは、プリンタ1に画像の記録を指示する記録指令が入力されたときに開始される。
【0043】
図8のフローについてより詳細に説明すると、制御装置80は、まず、ノズル判定処理を実行する(S101)。ノズル判定処理では、制御装置80は、キャリッジモータ86を制御してキャリッジ2を上記メンテナンス位置に移動させ、インクジェットヘッド4の複数のノズル10のうち1つのノズル10から検出用電極66に向けてインクを吐出させる。これにより、判定回路68からは、上述したように、このノズル10からインクが吐出されたか否かによって異なる信号が出力される。そして、制御装置80は、判定回路68からの信号に基づいて、ノズル10が異常ノズルであるか否かを判定する。具体的には、判定回路68からの信号がノズル10からインクが吐出されなかったことを示しているときに、そのノズル10が異常ノズルであると判定する。また、S101では、制御装置80は、インクジェットヘッド4の複数のノズル10の各々について、上記のように、異常ノズルであるか否かを判定する。
【0044】
続いて、制御装置80は、入力された記録指令に基づいて、記録モードを判定する(S102)。具体的には、高速記録モードで画像の記録を行うか、高画質記録モードで画像の記録を行うかを判定する。なお、例えば、プリンタ1において、記録モードが事前に設定され、事前に高速記録モードに設定されている場合にはS101の処理の後、後述のS103に直接進み、事前に高画質記録モードに設定されている場合にはS101の処理の後、後述のS106に直接進むようにしてもよい。
【0045】
高速記録モードで画像の記録を行う場合には(S102:高速記録モード)、制御装置80は、S101での判定結果に基づいて、インクジェットヘッド4の複数のノズル10の中に異常ノズルがあるか否かを判定する(S103)。そして、インクジェットヘッド4の複数のノズル10の中に異常ノズルがある場合には(S103:YES)、制御装置80は、上述の吸引パージを行わせるパージ処理を実行してから(S104)、記録処理を実行する(S105)。一方、インクジェットヘッド4の複数のノズル10の中に異常ノズルがない場合には(S103:NO)、制御装置80は、吸引パージを行わせずに、記録処理を実行し(S105)、処理を終了する。S105の記録処理では、制御装置80は、上述したように、記録パスと搬送動作とを交互に行わせることによって記録用紙Pへの画像の記録を行わせる。
【0046】
一方、高画質記録モードで画像の記録を行う場合には(S102:高画質記録モード)、制御装置80は、続いて、記録用紙Pの種類を判定する(S106)。具体的には、記録用紙Pが普通紙であるか光沢紙であるかを判定する。
【0047】
ここで、プリンタ1では、図9に示すように、インクジェットヘッド4の複数のノズル10のうち、搬送方向の上流側の半分のノズル10によって構成されるノズルグループG1の情報と、インクジェットヘッド4の複数のノズル10のうち、搬送方向の下流側の半分のノズル10によって構成されるノズルグループG2の情報とが、フラッシュメモリ84(本発明の「記憶部」)に記憶されている。
【0048】
そして、記録用紙Pが普通紙である場合には(S106:普通紙)、制御装置80は、搬送方向の下流側のノズルグループG2を構成するノズル10を使用ノズルに設定する(S107)。一方、記録用紙Pが光沢紙である場合には(S106:光沢紙)、制御装置80は、搬送方向の上流側のノズルグループG1を構成するノズル10を使用ノズルに設定する(S108)。なお、S107,S108で使用ノズルを設定したときには、これに合わせて、記録される画像を構成するドットと、各ノズル10との対応関係も設定する。後述するようにS111で使用ノズルを変更したときについても同様である。また、本実施形態では、記録用紙Pが普通紙である場合のノズルグループG2を構成するノズル10、及び、記録用紙Pが光沢紙である場合のノズルグループG1を構成するノズル10が、それぞれ、本発明の「第1ノズル」に相当する。
【0049】
S107又はS108に続いて、制御装置80は、S101での判定の結果に基づいて、使用ノズルの中に異常ノズルがあるか否かを判定する(S109)。使用ノズルの中に異常ノズルがなければ(S109:NO)、制御装置80は、記録処理を実行して(S105)、処理を終了する。
【0050】
使用ノズルの中に異常ノズルがある場合には(S109:YES)、ノズルグループG1,G2の中に異常ノズルのないノズルグループがあるか否かを判定する(S110)。具体的には、S107のようにノズルグループG2を構成するノズル10を使用ノズルに設定した場合には、ノズルグループG1を構成するノズル10の中に異常ノズルがあるか否かを判定する。一方、S108のようにノズルグループG1を構成するノズル10を使用ノズルに設定した場合には、ノズルグループG2を構成するノズル10の中に異常ノズルがあるか否かを判定する。
【0051】
そして、異常ノズルのないノズルグループがある場合には(S110:YES)、制御装置80は、使用ノズルを、現在設定されているノズル10から、異常ノズルのないノズルグループを構成するノズル10に変更し(S111)、記録処理を実行して(S105)、処理を終了する。一方、異常ノズルのないノズルグループがない場合には(S110:NO)、制御装置80は、パージ処理を実行してから(S104)、記録処理を実行し(S105)、処理を終了する。なお、本実施形態では、記録用紙Pが普通紙である場合のノズルグループG1を構成するノズル10、及び、記録用紙Pが光沢紙である場合のノズルグループG2を構成するノズル10が、それぞれ、本発明の「第2ノズル」に相当する。
【0052】
<効果>
ノズル列9を構成する複数のノズル10のうち搬送方向に連続して並ぶ一部のノズル10(使用ノズル)のみを使用して記録を行う高画質記録モードで記録用紙Pへの画像の記録を行うときに、複数のノズル10の中に異常ノズルがある場合には、異常ノズルを避けて使用ノズルを設定する。これにより、複数のノズル10の中に異常ノズルがある場合でも、異常ノズルを避けて使用ノズルを設定すれば、記録の前に吸引パージを行わなくても、記録用紙Pに適切にインクを着弾させることができ、記録用紙Pへの記録を指示する記録指令が入力されてから、記録用紙Pへの画像の記録が完了するまでの時間を極力短くすることができる。
【0053】
また、高画質記録モードで記録用紙Pに画像の記録を行うときには、上記のように異常ノズルがあっても、記録前に吸引パージを行わなくてもよいことがあるため、インクの排出量を抑えることができる。一方、ノズル列9を構成するノズル10を全て使用する高速記録モードで記録用紙Pへの画像の記録を行うときに、インクジェットヘッド4の複数のノズル10の中に異常ノズルがある場合には、吸引パージを行ってから記録用紙Pへの画像の記録を行う。これにより、記録の前に異常ノズルが回復し、記録用紙Pに適切にインクを着弾させることができる。
【0054】
また、本実施形態では、2つのノズルグループG1,G2の情報をフラッシュメモリ84に記憶させておく。そして、これら2つのノズルグループG1,G2のうち一方のノズルグループを構成するノズル10の中に異常ノズルがない場合には、上記一方のノズルグループを構成するノズル10を使用ノズルに設定する。これに対して、上記一方のノズルグループを構成するノズル10の中に異常ノズルがあり、且つ、他方のノズルグループを構成するノズル10の中に異常ノズルがない場合には、上記他方のノズルグループを構成するノズル10を使用ノズルに設定する。これにより、上記のように、異常ノズルが存在している場合でも、異常ノズルを避けて使用ノズルを設定することができる。また、予め記憶されたノズルグループG1,G2の中から適切なノズルグループを選択し、選択したノズルグループを構成するノズル10を使用ノズルに設定するため、使用ノズルを設定する処理を簡単に行うことができる。
【0055】
また、本実施形態では、記録パスと搬送動作とを交互に繰り返して記録用紙Pに画像の記録を行うため、搬送動作での記録用紙Pの搬送量を調整することにより、使用ノズルとして設定されるノズル10が変わっても、記録用紙Pの搬送方向における同じ位置にインクを着弾させることができる。
【0056】
また、記録用紙Pは、インクが着弾するとインクが浸透して膨潤する。記録用紙Pが膨潤したときには、記録用紙Pのインクが着弾した部分とその周囲の部分の高さが変化することでノズル10と記録用紙Pとの距離が変動する。ただし、光沢紙は普通紙と比較して着弾したインクが浸透しにくく、膨潤が生じにくい。一方、プリンタ1では、インクジェットヘッド4の搬送方向の下流側に、記録用紙Pを挟んで搬送する搬送ローラ対7が配置されている。また、インクジェットヘッド4の搬送方向の上流側には、記録用紙Pの浮き上がりを抑える押さえ部材16が配置されている。
【0057】
そこで、本実施形態では、記録用紙Pが膨潤の生じやすい普通紙である場合に、搬送方向の下流側のノズルグループG2を構成するノズル10の中に異常ノズルがない場合には、ノズルグループG2を構成するノズル10を使用ノズルに設定する。これにより、記録パスで記録用紙Pのある領域にインクを着弾させた後、次の記録パスで上記ある領域の搬送方向の上流側の領域へインクを吐出させるときに、上記ある領域が搬送ローラ対7によって挟まれた状態となる。これより、記録用紙Pの、上記上流側の領域とノズル10との距離が、上記ある領域が膨潤していることの影響を受けにくく、記録用紙Pの上記上流側の領域の適切な位置にインクを着弾させることができる。
【0058】
また、記録用紙Pが普通紙である場合に、ノズルグループG2を構成するノズル10の中に異常ノズルがあり、且つ、搬送方向の上流側のノズルグループG1を構成するノズル10の中に異常ノズルがない場合には、ノズルグループG1を構成するノズル10を使用ノズルに設定する。これにより、記録の前に吸引パージを行わなくても、記録用紙Pに適切にインクを着弾させることができ、記録用紙Pへの記録を指示する記録指令が入力されてから、記録用紙Pへの画像の記録が完了するまでの時間を極力短くすることができる。
【0059】
一方、記録用紙Pが膨潤の生じにくい光沢紙である場合に、搬送方向の上流側のノズルグループG1を構成するノズル10の中に異常ノズルがない場合には、ノズルグループG1を構成するノズル10を使用ノズルに設定する。これにより、各記録パスにおいて、記録用紙Pの押さえ部材16に近く、ノズル10と記録用紙Pとの距離が安定している部分に向けてノズル10からインクが吐出され、記録用紙Pにおけるインクの着弾位置が安定する。
【0060】
また、記録用紙Pが光沢紙である場合に、ノズルグループG1を構成するノズル10の中に異常ノズルがあり、且つ、搬送方向の下流側のノズルグループG2を構成するノズル10の中に異常ノズルがない場合には、ノズルグループG2を構成するノズル10を使用ノズルに設定する。これにより、記録の前に吸引パージを行わなくても、記録用紙Pに適切にインクを着弾させることができ、記録用紙Pへの記録を指示する記録指令が入力されてから、記録用紙Pへの画像の記録が完了するまでの時間を極力短くすることができる。
【0061】
<変形例>
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載の限りにおいて様々な変更が可能である。
【0062】
上述の実施形態では、記録用紙Pが普通紙と光沢紙のいずれかであったが、これには限られない。例えば、記録用紙Pが、着弾したインクの浸透しやすさが異なる複数種類の記録用紙のいずれかであってもよい。なお、この場合には、上記複数種類の記録用紙のうちの2種類において、インクがより浸透しやすいほうの記録用紙が、本発明の「第1被吐出媒体」に相当し、インクがより浸透しにくいほうの記録用紙が、本発明の「第2被吐出媒体」に相当する。
【0063】
また、上述の実施形態では、記録用紙Pが光沢紙である場合に(S106:光沢紙)、搬送方向の上流側のノズルグループG1を構成するノズル10を使用ノズルに設定し(S108)、記録用紙Pが普通紙である場合に(S106:普通紙)、搬送方向の下流側のノズルグループG2を構成するノズル10を使用ノズルに設定した(S107)が、これには限られない。
【0064】
例えば、記録用紙Pの種類によらず、搬送方向の下流側のノズルグループG2を構成するノズル10を使用ノズルに設定し、ノズルグループG2を構成するノズル10の中に異常ノズルがあり、且つ、ノズルグループG1を構成するノズル10の中に異常ノズルがない場合に、使用ノズルを、搬送方向の上流側のノズルグループG1を構成するノズル10に変更してもよい。また、この場合には、押さえ部材16はなくてもよい。
【0065】
あるいは、記録用紙Pの種類によらず、搬送方向の上流側のノズルグループG1を構成するノズル10を使用ノズルに設定し、ノズルグループG1を構成するノズル10の中に異常ノズルがあり、且つ、ノズルグループG2を構成するノズル10の中に異常ノズルがない場合に、使用ノズルを、搬送方向の下流側のノズルグループG2を構成するノズル10に変更してもよい。
【0066】
また、上述の実施形態では、ノズル列9を構成する複数のノズル10を、2つのノズルグループに分けたが、これには限られない。ノズル列9を構成する複数のノズル10を3以上のノズルグループに分けてもよい。この場合には、例えば、予めこれら3以上のノズルグループのうち1つのノズルグループを構成するノズル10を使用ノズルに設定する。そして、このノズルグループを構成するノズル10の中に異常ノズルがあり、且つ、残りのノズルグループのうちのいずれかを構成するノズル10の中に異常ノズルがない場合に、使用ノズルを、異常ノズルを含まないノズルグループを構成するノズル10に変更する。
【0067】
また、上述の実施形態では、ノズル列9を構成する複数のノズル10を複数のノズルグループに分け、各ノズルグループの情報をフラッシュメモリ84に記憶させておき、いずれかのノズルグループを構成するノズル10を使用ノズルに設定したが、これには限られない。
【0068】
例えば、変形例1では、フラッシュメモリ84にノズルグループの情報が記憶されておらず、制御装置80は、ノズル列9の任意のノズル10を使用ノズルに設定することができる。そして、変形例1では、プリンタによる記録用紙Pへの画像の記録時に、制御装置80が図10のフローに沿って処理を行う。
【0069】
より詳細に説明すると、制御装置80は、上述の実施形態のS101と同様のノズル判定処理を実行する(S201)。そして、高速記録モードで画像の記録を行う場合には(S202:高速記録モード)、上述の実施形態のS103~S105と同様のS203~~S205の処理を実行する。また、制御装置80は、高画質記録モードで画像の記録を行う場合において(S202:高画質記録モード)、記録用紙Pが普通紙である場合には(S206:普通紙)、制御装置80は、ノズル列9のうち下流側の半分を構成するノズル10を使用ノズルに設定する(S207)。一方、記録用紙Pが光沢紙である場合には(S206:光沢紙)、制御装置80は、ノズル列9のうち上流側の半分を構成するノズル10を使用ノズルに設定する(S208)。なお、変形例1では、S207,S208で使用ノズルに設定されるノズル10が、本発明の「第1ノズル」に相当する。
【0070】
S207又はS208で使用ノズルを設定した後、制御装置80は、現在の使用ノズルの中に異常ノズルがあるか否かを判定する(S209)。現在の使用ノズルの中に異常ノズルがない場合には(S209:NO)、制御装置80は、S205の記録処理に進む。
【0071】
現在の使用ノズルの中に異常ノズルがある場合(S209:YES)、制御装置80は、第1条件を満たすか否かを判定する(S210)。第1条件とは、使用ノズルに設定するノズル10を、現在の使用ノズルから、現在の使用ノズル一部が重複する範囲で搬送方向にずらしたノズル10に変更することで、異常ノズルを含まないようにできる、という条件である。
【0072】
上記第1条件を満たす場合には(S210:YES)、制御装置80は、使用ノズルに設定するノズル10を、現在の使用ノズルから、現在の使用ノズルの一部が重複する範囲で搬送方向にずらしたノズル10に変更することで、異常ノズルを含まないようにし(S211)、S205の記録処理に進む。この場合には、第1ノズル(S207又はS208で設定された使用ノズル)のうち、異常ノズルでない、1又は搬送方向に連続して並ぶ一部の第1ノズルと、異常ノズルでなく、且つ、上記一部の第1ノズルと搬送方向に連続して並ぶ、第1ノズルとは別のノズル10(本発明の「第2ノズル」)とが、使用ノズルに設定される。なお、S211での変更後の使用ノズルの数は、S207又はS208で設定された使用ノズルの数と同じである。
【0073】
一方、上記第1条件を満たさない場合(S210:NO)、制御装置80は、第2条件を満たすか否かを判定する(S212)。第2条件とは、使用ノズルに設定するノズル10を、現在の使用ノズルから、現在の使用ノズルの一部が重複する範囲を超えて搬送方向にずらしたノズル10に変更することによって、異常ノズルを含まないようにできる、という条件である。
【0074】
上記第2条件を満たす場合には(S212:YES)、制御装置80は、使用ノズルに設定するノズル10を、現在の使用ノズルから、現在の使用ノズルの一部が重複する範囲を超えて搬送方向にずらしたノズル10に変更することによって、異常ノズルを含まないようにし(S213)、S205の記録処理に進む。この場合には、S207又はS208で設定された使用ノズルとは重複しないノズル10が、使用ノズルに設定される。なお、S213での変更後の使用ノズルの数は、S207又はS208で設定された使用ノズルの数と同じである。
【0075】
第1条件及び第2条件のいずれをも満たさない場合には(S210:NO、S212:NO)、制御装置80は、S204のパージ処理を実行してから、S205の記録処理を実行する。
【0076】
ここで、上述したように、搬送方向に大きく離れたノズル10同士ほど走査方向の位置が大きくずれる。そのため、S207,S208で設定した使用ノズルと、その後変更された場合の変更後の使用ノズルとが、搬送方向に大きく離れている場合には、S207,S208で設定された使用ノズルを用いて記録が行われたときと、上記の変更後の使用ノズルを用いて記録が行われたときとで、記録用紙Pにおけるインクの走査方向の着弾位置がずれてしまう虞がある。
【0077】
そこで、変形例1では、S207,S208で設定した使用ノズルの中に異常ノズルがない場合には、S207,S208で設定した使用ノズルを用いて記録を行う。一方、S207,S208で設定した使用ノズルの中に異常ノズルがあり、且つ、上記第1条件を満たす場合には、S207,S208で設定した使用ノズルと、その一部が重複するように使用ノズルを変更する。これにより、S207,S208で設定した使用ノズルと、その後変更された場合の変更後の使用ノズルとを、搬送方向に極力離れないようにすることができ、S207,S208で設定された使用ノズルを用いて記録が行われたときと、上記の変更後の使用ノズルを用いて記録が行われたときとの、記録用紙Pにおけるインクの走査方向の着弾位置のずれを極力抑えることができる。
【0078】
また、S207,S208で設定した使用ノズルの中に異常ノズルがあり、且つ、上記第1条件を満たさない場合で、上記第2条件を満たす場合には、S207,S208で設定した使用ノズルと重複しないように使用ノズルを変更する。これにより、S207,S208で設定した使用ノズルと、その後変更された場合の変更後の使用ノズルとが、搬送方向に大きく離れてしまうものの、吸引パージを行わずに記録を行うことはできる。
【0079】
また、上述の実施形態では、ノズルグループG1を構成するノズル10と、ノズルグループG2を構成するノズル10とが重複していなかったが、これには限られない。例えば、ノズルグループG1が、ノズル列9を構成する複数のノズル10のうち上流側3分の2のノズル10によって構成され、ノズルグループG2が、ノズル列9を構成する複数のノズル10のうち下流側3分の2のノズル10によって構成されるなど、ノズルグループ間で一部のノズル10が重複していてもよい。
【0080】
また、上述の実施形態では、使用ノズルを変更する場合に、変更後の使用ノズルの数を変更前の使用ノズルの数と同じとしたが、これには限られない。
【0081】
例えば、変形例2では、図11に示すように、フラッシュメモリ84に、上述の実施形態と同様のノズルグループG1,G2の情報のほかに、ノズルグループG3,G4の情報が記憶されている。ノズルグループG3は、ノズルグループG1よりも搬送方向の下流側に位置し、搬送方向に連続して並ぶ複数のノズル10によって構成されている。また、ノズルグループG3を構成するノズル10の数は、ノズルグループG1を構成するノズル10の数よりも少ない。ノズルグループG4は、ノズルグループG2よりも搬送方向の上流側に位置し、搬送方向に連続して並ぶ複数のノズル10によって構成されている。また、ノズルグループG4を構成するノズル10の数は、ノズルグループG2を構成するノズル10の数よりも少ない。
【0082】
変形例2でも、記録用紙Pへの画像の記録時に、制御装置80が図8のフローに沿って処理を行う。ただし、変形例2では、S107のようにノズルグループG2を構成するノズル10を使用ノズルに設定した場合で、且つ、S109でノズルグループG2を構成するノズル10の中に異常ノズルがあると判定された場合には、S110において、ノズルグループG4を構成するノズル10の中に異常ノズルがあるか否かを判定する。そして、ノズルグループG4を構成するノズル10の中に異常ノズルがない場合に(S110:YES)、S111において、使用ノズルを、ノズルグループG4を構成するノズル10に変更する。
【0083】
また、変形例2では、S108のようにノズルグループG1を構成するノズル10を使用ノズルに設定した場合で、S109でノズルグループG1を構成するノズル10の中に異常ノズルがあると判定された場合には、S110において、ノズルグループG3を構成するノズル10の中に異常ノズルがあるか否かを判定する。そして、ノズルグループG3を構成するノズル10の中に異常ノズルがない場合に(S110:YES)、S111において、使用ノズルを、ノズルグループG3を構成するノズル10に変更する。
【0084】
なお、変形例2では、記録用紙Pが普通紙であり、S108のようにノズルグループG2を構成するノズル10が使用ノズルに設定された場合において、ノズルグループG4を構成するノズル10が本発明の「第2ノズル」に相当する。また、記録用紙Pが光沢紙であり、S107のようにノズルグループG1を構成するノズル10が使用ノズルに設定された場合において、ノズルグループG3を構成するノズル10が本発明の「第2ノズル」に相当する。
【0085】
例えば、上述の実施形態で説明したように、S107,S108では、記録用紙Pの種類に応じて、ノズル10と記録用紙Pとの距離が安定しやすいノズル10を使用ノズルに設定する。そのため、S111において、使用ノズルをS107,S108で設定されたノズル10から変更したときには、ノズル10と記録用紙Pとの距離が変わりやすくなり、記録パスでのインクの着弾位置が多少ずれやすくなることがある。そこで、変形例2では、S111での変更後の使用ノズルの数を、S107,S108で使用ノズルに設定されるノズルの数よりも少なくする。これにより、記録用紙Pへの画像の記録に必要な記録パス回数が多くなるが、各記録パスでのインクの着弾位置のずれを極力抑えることができる。
【0086】
また、上述の実施形態では、常に4列のノズル列9を構成する複数のノズル10から上記4色のインクを吐出して記録用紙Pに画像を記録する例を説明したが、これには限られない。
【0087】
例えば、変形例3では、プリンタにおいて、上述の実施形態と同様の高速記録モード及び高画質記録モード(本発明の「両部分吐出モード」)のほか、写真記録モード(本発明の「片部分吐出モード」)で画像の記録を行うことができる。高速記録モード及び高画質記録モードでは、上記4色のインクを吐出して画像の記録を行うのに対して、写真記録モードでは、左側3列のノズル列9を構成するノズル10からカラー(イエロー、シアン、マゼンタ)インクを吐出して画像の記録を行い、最も右側のノズル列9を構成するノズル10からブラックインクを吐出しない。
【0088】
なお、以下では、ブラックインクを吐出するノズル10をブラックノズル10Kとし、カラーインクを吐出するノズル10をカラーノズル10Cとすることがある。また、変形例3では、搬送方向に配列された複数のブラックノズル10Kによって構成される最も右側のノズル列9が、本発明の「ブラックノズル列」に相当し、搬送方向に配列された複数のカラーノズル10Cによってそれぞれ構成される左側3列のノズル列9が、本発明の「カラーノズル列」に相当する。
【0089】
そして、変形例3では、プリンタにおいて記録用紙Pに画像の記録を行うときに、制御装置80が図12のフローに沿って処理を行う。より詳細に説明すると、制御装置80は、まず、上述の実施形態のS101と同様のノズル判定処理を実行する(S301)。続いて、制御装置80は、記録モードを判定する(S302)。具体的には、高速記録モードであるか、高画質記録モードであるか、写真記録モードであるかを判定する。
【0090】
高速記録モードである場合には(S302:高速記録モード)、制御装置80は、上述の実施形態のS103~S105と同様の、S303~S305の処理を実行する。高画質モード又は写真記録モードである場合には(S302:高画質記録モードor写真記録モード)、制御装置80は、続いて、上述の実施形態のS106~S108と同様のS306~S308の処理によって、ノズルグループG1,G2のうちの一方を構成するノズル10を使用ノズルに設定する。
【0091】
なお、変形例3では、高画質記録モードで記録を行う場合において、記録用紙Pが普通紙である場合のノズルグループG2を構成するブラックノズル10K、及び、記録用紙Pが光沢紙である場合のノズルグループG1を構成するブラックノズル10Kが、それぞれ、本発明の「第1ブラックノズル」に相当する。
【0092】
また、変形例3では、高画質記録モード及び写真記録モードで記録を行う場合において、記録用紙Pが普通紙である場合のノズルグループG2を構成するカラーノズル10C、及び、記録用紙Pが光沢紙である場合のノズルグループG1を構成するカラーノズル10Cが、それぞれ、本発明の「第1カラーノズル」に相当する。
【0093】
続いて、高画質記録モードの場合には(S309:高画質記録モード)、制御装置80は、上述の実施形態のS109~S111と同様の、S310~S312の処理を実行する。
【0094】
これにより、変形例3では、記録用紙Pの種類に応じて、ノズルグループG1,G2のうち一方のノズルグループを構成するブラックノズル10K及びカラーノズル10Cが使用ノズルに設定される(S307又はS308)。なお、S307,S308で使用ノズルに設定されるブラックノズル10Kとカラーノズル10Cとは、搬送方向の位置が同じである。
【0095】
そして、上記一方のノズルグループを構成するブラックノズル10K及びカラーノズル10Cのいずれかの中に異常ノズルがあり(S310)、且つ、他方のノズルグループを構成するブラックノズル10K及びカラーノズル10Cの中に異常ノズルがない場合に(S311:YES)、使用ノズルが、上記他方のノズルグループを構成するブラックノズル10K及びカラーノズル10Cに変更される(S312)。なお、S312での変更後において使用ノズルに設定されるブラックノズル10Kとカラーノズル10Cとは、搬送方向の位置が同じである。
【0096】
写真記録モードの場合には(S309:写真記録モード)、制御装置80は、使用ノズルに設定されているカラーノズル10Cの中に、異常ノズルがあるか否かを判定する(S313)。そして、カラーノズル10Cの中に異常ノズルがない場合には(S313:NO)、ブラックノズル10Kについての異常ノズルであるか否かの判定結果によらず、S305の記録処理に進む。
【0097】
使用ノズルに設定されているカラーノズル10Cの中に異常ノズルがある場合には(S313:YES)、制御装置80は、続いて、カラーノズル10Cの中に異常ノズルがないノズルグループがあるか否かを判定する(S314)。具体的には、S307のようにノズルグループG2を構成するノズル10を使用ノズルに設定した場合には、ノズルグループG1を構成するカラーノズル10Cの中に異常ノズルがあるか否かを判定する。一方、S308のようにノズルグループG1を構成するノズル10を使用ノズルに設定したされている場合には、ノズルグループG2を構成するカラーノズル10Cの中に異常ノズルがあるか否かを判定する。
【0098】
そして、カラーノズル10Cの中に異常ノズルがないノズルグループがある場合には(S314:YES)、ブラックノズル10Kについての異常ノズルであるか否かの判定結果によらず、制御装置80は、使用ノズルを、現在設定されているノズル10から、カラーノズル10Cの中に異常ノズルがないノズルグループを構成するノズル10に変更し(S315)、S305の記録処理に進む。一方、カラーノズル10Cの中に異常ノズルがないノズルグループがない場合には(S314:NO)、制御装置80は、S304のパージ処理を実行してから、S305の記録処理を実行する。
【0099】
なお、変形例3では、高画質記録モードで記録を行う場合において、記録用紙Pが普通紙である場合のノズルグループG1を構成するブラックノズル10K、及び、記録用紙Pが光沢紙である場合のノズルグループG2を構成するブラックノズル10Kが、それぞれ、本発明の「第2ブラックノズル」に相当する。
【0100】
また、変形例3では、高画質記録モード及び写真記録モードで記録を行う場合において、記録用紙Pが普通紙である場合のノズルグループG2を構成するカラーノズル10C、及び、記録用紙Pが光沢紙である場合のノズルグループG1を構成するカラーノズル10Cが、それぞれ、本発明の「第2カラーノズル」に相当する。
【0101】
変形例3では、一部のブラックノズル10K及び一部のカラーノズル10Cの両方からインクを吐出させる高画質記録モードで記録を行うときに、ノズルグループG1,G2のうち記録用紙Pの種類に応じた一方のノズルグループを構成するノズル10の中に異常ノズルがない場合には、上記一方のノズルグループを構成するノズル10を使用ノズルに設定して記録を行う。また、上記一方のノズルグループを構成するノズル10の中に異常ノズルがあり、且つ、他方のノズルグループを構成するノズル10の中に異常ノズルがない場合には、上記他方のノズルグループを構成するノズル10を使用ノズルに設定して記録を行う。これにより、異常ノズルが含まれないブラックノズル及びカラーノズルから記録用紙Pに向けてインクを吐出させることができる。
【0102】
これに対して、一部のカラーノズル10Cからインクを吐出させ、且つ、ブラックノズル10Kからはインクを吐出させない写真記録モードでは、ノズルグループG1,G2のうち記録用紙Pの種類に応じた一方のノズルグループを構成するカラーノズル10Cの中に異常ノズルがない場合には、上記一方のノズルグループを構成するブラックノズル10Kの中に異常ノズルがあるか否かによらず、上記一方のノズルグループを構成するカラーノズル10Cを使用ノズルに設定して記録を行う。また、上記一方のノズルグループを構成するカラーノズル10Cの中に異常ノズルがあり、且つ、他方のノズルグループを構成するカラーノズル10Cの中に異常ノズルがない場合には、上記他方のノズルグループを構成するブラックノズル10Kの中に異常ノズルがあるか否かによらず、上記他方のノズルグループを構成するカラーノズル10Cを使用ノズルに設定して記録を行う。これにより、異常ノズルを含まないカラーノズル10Cから記録用紙Pに向けてインクを吐出させることができる。
【0103】
また、以上の例では、インクジェットヘッド4がブラックインクを吐出する複数のブラックノズルと、カラーインクを吐出する複数のカラーノズル10とを有する。そして、一部のブラックノズルと一部のカラーノズルの両方からインクを吐出して記録を行う高画質記録モードにおいて、搬送方向の位置が同じブラックノズルとカラーノズルとを使用ノズルに設定したが、これには限られない。例えば、インクジェットヘッドが、搬送方向に配列された複数のノズルによって構成されるノズル列を1列だけ有するものであってもよい。
【0104】
また、上述の実施形態では、高画質記録モードで画像を記録するときに、ノズル列を構成する複数のノズル10のうち、搬送方向に連続して並ぶ一部のノズル10を使用して画像の記録を行ったが、これには限られない。例えば、ノズル列9を構成する複数のノズル10のうち、1つおきに並ぶノズルを使用して画像の記録を行うなど、使用ノズルのうち少なくとも一部については、搬送方向に連続して並んでおらず、間に使用されないノズルが配置されていてもよい。
【0105】
また、上述の実施形態では、プリンタにおいて、ノズル列9を構成する全てのノズル10を使用する高速記録モードと、ノズル列9を構成する一部のノズルのみを使用する高画質モードと、のいずれかで選択的に記録用紙Pへの画像の記録を行うことができるようになっていたが、これには限られない。例えば、プリンタにおいて、ノズル列9を構成する一部のノズルのみを使用する複数種類の記録モードのいずれかで選択的に記録用紙Pへの画像の記録が可能であってもよい。あるいは、プリンタにおいて、ノズル列9を構成する一部のノズルを使用する1種類の記録モードでのみ記録用紙Pへの画像の記録が可能であってもよい。
【0106】
また、以上の例では、一旦使用ノズルを設定し、設定した使用ノズルの中に異常ノズルがある場合に、使用ノズルを変更したが、これには限られない。例えば、S101のノズル判定処理の結果に基づいて、最初から、異常ノズルを避けるように使用ノズルを設定するようにしてもよい。
【0107】
また、上述の実施形態では、インクジェットヘッドが、キャリッジとともに走査方向に移動するいわゆるシリアルヘッドであったが、これには限られない。インクジェットヘッドは、走査方向に記録用紙Pの全長にわたって延びた、いわゆるラインヘッドであってもよい。この場合には、例えば、プリンタに、記録用紙Pの走査方向のサイズに応じて、記録用紙Pの走査方向の位置合わせをするためのガイドが設けられる。そして、ラインヘッドの一部のノズルのみからインクを吐出して画像を記録する場合に、ガイドにより最初に位置合わせされた記録用紙Pの走査方向の位置に基づいて、ラインヘッドの複数のノズルのうち一部のノズルを使用ノズルに設定する。そして、使用ノズルの中に異常ノズルがある場合に、異常ノズルを含まないように使用ノズルを変更し、これに合わせてガイドを移動させることによって記録用紙Pの走査方向の位置を変更するようにする。あるいは、ガイドにより記録用紙Pの走査方向の位置を変える代わりに、ラインヘッドを走査方向に移動可能なものとし、ラインヘッドを移動させて走査方向の位置を変えてもよい。
【0108】
また、上述の実施形態では、吸引パージによって、複数のノズル10からインクジェットヘッド4内のインクを排出させたが、これには限られない。例えば、サブタンク3とインクカートリッジ15とを接続するチューブ13の途中部分に加圧ポンプが設けられていてもよい。あるいは、プリンタにインクカートリッジと接続された加圧ポンプが設けられていてもよい。そして、複数のノズル10がキャップ61で覆われた状態で、上記加圧ポンプを駆動させることで、インクジェットヘッド4内のインクを加圧してノズル10からインクジェットヘッド4内のインクを排出させる、いわゆる加圧パージを行ってもよい。なお、この場合には、キャップ61と加圧ポンプとを合わせたものが、本発明の「排出手段」に相当する。
【0109】
さらには、パージにおいて、吸引ポンプ62による吸引と加圧ポンプによる加圧の両方を行ってもよい。この場合には、メンテナンスユニット8と加圧ポンプとを合わせたものが、本発明の「排出手段」に相当する。
【0110】
あるいは、パージの代わりに、異常ノズルに対応する駆動素子50を駆動させてノズル10からインクを排出させるフラッシング(本発明の「排出動作」)を行わせてもよい。なお、この場合には、駆動素子50が、本発明の「排出手段」に相当する。
【0111】
また、上述の実施形態では、ノズル10から検出用電極66に向けてインクを吐出させたときの検出用電極66の電圧値を用いて、ノズル10が異常ノズルであるか否かを判定したが、これには限られない。
【0112】
例えば、上下方向に延びた検出用電極を配置し、ノズル10から検出用電極と対向する領域を通過するようにインクを吐出させたときの検出用電極の電圧値を用いて、ノズル10が異常ノズルであるか否かを判定してもよい。あるいは、ノズル10から吐出されたインクを検出する光センサを設け、光センサによる検出結果に基づいて、ノズル10が異常ノズルであるか否かを判定してもよい。
【0113】
あるいは、例えば、特許第4929699号公報に記載されているのと同様に、インクジェットヘッドのノズルが形成されたプレートに、ノズルからインクが吐出されたときの電圧の変化を検出する電圧検出回路(本発明の「信号出力部」)を接続し、電圧検出回路から制御装置80に、ノズル10が異常ノズルであるか否かに応じた信号を出力するようにしてもよい。
【0114】
あるいは、例えば、特許第6231759号公報に記載されているのと同様に、インクジェットヘッドの基板を、温度検知素子を備えたものとしてもよい。そして、インクの吐出のために第1印加電圧を印加してヒータを駆動した後に、インクが吐出されないように第2印加電圧を印加してヒータを駆動し、第2印加電圧を印加してから、その後、所定時間が経過するまでの間の、温度検知素子で検知された温度の変化に基づいて正常に吐出されたか否かを判定してもよい。
【0115】
また、上述の実施形態では、ノズル10からインクが吐出されなかった場合に、そのノズル10を異常ノズルと判定したが、これには限られない。例えば、ノズル10から吐出されたインクの飛翔速度が所定の速度範囲にあるか否か、ノズル10から吐出されたインクが所定の着弾位置に着弾したか否か、ノズル10から所望量のインクが吐出されたか否か等に基づいて、ノズル10に異常が生じているか否かを判定してもよい。
【0116】
また、上述の実施形態では、複数のノズル10の各々について、判定回路68からの信号に基づいて、異常ノズルであるか否かを判定したが、これには限られない。例えば、一部のノズル10について判定回路68からの信号に基づいて異常ノズルであるか否かを判定し、残りのノズル10については、上記一部のノズル10についての判定結果から異常ノズルであるか否かを推定してもよい。
【0117】
また、上述の実施形態では、駆動素子50により圧力室40内のインクに圧力を付与することで、ノズル10からインクを吐出させたが、これには限られない。例えば、インクを加熱してインク流路内に気泡を発生させることで、ノズルからインクを吐出させてもよい。
【0118】
また、上述の実施形態では、搬送ローラ対6,7によって記録用紙Pを搬送したが、これには限られない。例えば、搬送ベルトによって記録用紙Pを搬送してもよい。なお、この場合には、搬送ベルトが本発明の「搬送部」に相当する。あるいは、ボールねじなどによって移動可能なテーブルを設け、このテーブル上に被記録媒体を載置した状態でテーブルを移動させることで、被記録媒体を搬送してもよい。なお、この場合には、ボールねじなどによって移動可能なテーブルが、本発明の「搬送部」に相当する。
【0119】
また、以上では、ノズルからインクを吐出して記録用紙Pに記録を行うプリンタに本発明を適用した例について説明したが、これには限られない。例えば、Tシャツ、屋外広告用のシート、スマートフォン等の携帯端末のケース、段ボール、樹脂部材など、記録用紙以外の被吐出媒体に画像を記録するプリンタにも適用され得る。また、インク以外の液体、例えば、液体状にした樹脂や金属を吐出する液体吐出装置にも適用され得る。
【符号の説明】
【0120】
1 プリンタ
2 キャリッジ
4 インクジェットヘッド
6,7 搬送ローラ対
10 ノズル
16 押さえ部材
68 判定回路
80 制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12