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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】車両の加減速制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 26/02 20060101AFI20230829BHJP
   B60L 7/14 20060101ALI20230829BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20230829BHJP
   B60L 9/18 20060101ALI20230829BHJP
   B60L 58/12 20190101ALI20230829BHJP
【FI】
B60K26/02
B60L7/14
B60L15/20 J
B60L9/18 J
B60L58/12
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019064371
(22)【出願日】2019-03-28
(65)【公開番号】P2020163918
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】山崎 聖悟
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-299532(JP,A)
【文献】特開2002-171605(JP,A)
【文献】特開2012-240447(JP,A)
【文献】国際公開第2018/178526(WO,A1)
【文献】特開平5-284610(JP,A)
【文献】特開2005-23886(JP,A)
【文献】特開2017-34889(JP,A)
【文献】特開2017-17810(JP,A)
【文献】特開2014-213748(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 26/02
B60K 23/00- 23/08
B60K 6/20
B60K 6/547
B60L 1/00- 3/12
B60L 7/00- 13/00
B60L 15/00- 15/42
B60L 58/12
B60W 10/00
B60W 10/02
B60W 10/06
B60W 10/08
B60W 10/10
B60W 10/18
B60W 10/26
B60W 10/28
B60W 10/30- 20/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源を備える車両の加速および減速を制御する加減速制御装置であって、
第1の位置と第2の位置との間を連続的に移動可能な操作部と、
前記操作部の操作量に応じて前記駆動源が出力するトルクを増減させるトルク制御部と、を備え、
前記トルク制御部は、前記操作部を前記第1の位置から前記第2の位置に向う第1の方向へ移動する際の発生トルクの変化を示す第1トルクマップと、前記操作部が前記第2の位置から前記第1の位置に向う第2の方向へ移動する際の発生トルクの変化を示す第2トルクマップと、を備え、前記操作部が前記第1の方向に移動する際には前記トルクを増加させ、前記第2の方向に移動する際には前記トルクを減少させ、
前記第1の方向への操作量に対するトルクの変化量より、前記第2の方向への前記操作量に対するトルクの変化量を大きくし、
前記操作部が前記第1の方向へ移動し前記第2の位置に到達する前に前記第2の方向へ移動する際には前記第2トルクマップの変化量より大きいトルクの変化量で減少させ、前記第1の方向への再操作時には、当該再操作時の操作速度に応じて、前記第1トルクマップへの復帰時期を変更する、
ことを特徴とする車両の加減速制御装置。
【請求項2】
前記駆動源には回転電機を含み、前記回転電機は、前記車両を減速する際に行われる回生発電で発生した回生電力をバッテリに蓄積可能であり、
前記トルク制御部は、前記操作部の前記第2の方向への移動時に、前記バッテリの充電率に基づいてトルクの変化量を変更する、
ことを特徴とする請求項1記載の車両の加減速制御装置。
【請求項3】
前記トルク制御部は、前記バッテリの充電率が高いほど前記操作量に応じた前記トルクの減少量を小さくする、
ことを特徴とする請求項2記載の車両の加減速制御装置。
【請求項4】
前記トルク制御部は、前記第1の方向への再操作時の操作速度が速いほど前記第1トルクマップへの復帰時期を遅らせる、
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項記載の車両の加減速制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の加減速制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転電機を備える電動車両において、車両の加速および減速を1つのペダルで制御可能とする技術が知られている。
例えば、下記特許文献1は、加速ペダルの操作状態によって運転者が要求する水準の惰性走行特性を確保することを目的として、車両が走行中の状況で、加速ペダル操作量が所定の制御範囲内であるかを判断する回生制動判断段階と、回生制動判断段階を実行した結果、加速ペダル操作量が制御範囲内であると判断された場合、制御範囲内で加速ペダル操作量に対する減速要求変換指数を対比した変換マップから現在の加速ペダル操作量に対す
る減速要求変換指数を確定する指数確定段階と、車速によって決定される減速要求トルクに、指数確定段階で確定された減速要求変換指数を減速要求変換指数の最大値で除した値を乗じて変換減速要求トルクを計算する減速要求トルク算出段階と、減速要求トルク算出段階で算出された変換減速要求トルクによって回生制動を行う回生制動段階とを含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-34889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術においては、ペダル踏み込み量が0に近い領域では回生トルク(負のトルク)が発生し、踏み込み量が大きくなるにつれて駆動トルク(正のトルク)が大きくなっていくように制御されている。
アクセルペダルとブレーキペダルとを有する車両のアクセルペダル(いわゆる通常のアクセルペダル)においては、踏み込み量が0に近い領域に割り当てられた回生トルクは小さく、踏み込み開始後短期間で駆動トルクが発生するが、車両が停止するまでの回生トルクは得られない。
また、アクセルペダルの操作のみで車両を停止させることが可能な車両のアクセルペダル(いわゆるワンペダル)では、ペダル踏み込み量が0に近い領域に割り当てられた回生トルクが大きく、車両が停止する程度の回生トルクを発生させることができるが、駆動トルクに対応する踏み込み量までの操作量が大きく、走行開始時のペダル操作へのレスポンスが低いという課題がある。
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、その目的は、アクセルペダルの操作のみで車両を停止させることが可能なワンペダル構成の車両において、走行開始時のペダルレスポンスを向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するため、請求項1の発明にかかる車両の加減速制御装置は、駆動源を備える車両の加速および減速を制御する加減速制御装置であって、第1の位置と第2の位置との間を連続的に移動可能な操作部と、前記操作部の操作量に応じて前記駆動源が出力するトルクを増減させるトルク制御部と、を備え、前記トルク制御部は、前記操作部を前記第1の位置から前記第2の位置に向う第1の方向へ移動する際の発生トルクの変化を示す第1トルクマップと、前記操作部が前記第2の位置から前記第1の位置に向う第2の方向へ移動する際の発生トルクの変化を示す第2トルクマップと、を備え、前記操作部が前記第1の方向に移動する際には前記トルクを増加させ、前記第2の方向に移動する際には前記トルクを減少させ、前記第1の方向への操作量に対するトルクの変化量より、前記第2の方向への前記操作量に対するトルクの変化量を大きくし、前記操作部が前記第1の方向へ移動し前記第2の位置に到達する前に前記第2の方向へ移動する際には前記第2トルクマップの変化量より大きいトルクの変化量で減少させ、前記第1の方向への再操作時には、当該再操作時の操作速度に応じて、前記第1トルクマップへの復帰時期を変更する、ことを特徴とする。
請求項2の発明にかかる車両の加減速制御装置は、前記駆動源には回転電機を含み、前記回転電機は、前記車両を減速する際に行われる回生発電で発生した回生電力をバッテリに蓄積可能であり、前記トルク制御部は、前記操作部の前記第2の方向への移動時に、前記バッテリの充電率に基づいてトルクの変化量を変更する、ことを特徴とする。
請求項3の発明にかかる車両の加減速制御装置は、前記トルク制御部は、前記バッテリの充電率が高いほど前記操作量に応じた前記トルクの減少量を小さくする、ことを特徴とする。
請求項4の発明にかかる車両の加減速制御装置は、前記トルク制御部は、前記第1の方向への再操作時の操作速度が速いほど前記第1トルクマップへの復帰時期を遅らせる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、操作部が第2の方向に操作される際のトルクの減少量を、操作部が第1の方向に操作される際のトルクの増加量よりも大きくするので、第2の方向への操作時に大きな負のトルクを発生させつつ、第1の方向への操作開始直後から正のトルクを発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施の形態にかかる加減速制御装置10の構成を示す図である。
図2】加減速ペダル12の操作状態を模式的に示す図である。
図3】本願発明におけるペダル操作量と回転電機20の発生トルクとの関係を示すグラフである。
図4】踏み戻し発生時における発生トルクを示すグラフである。
図5】踏み戻し発生時における発生トルクを示すグラフである。
図6】踏み戻し中再度踏み込みが行われた場合の発生トルクを示すグラフである。
図7】踏み戻し中再度踏み込みが行われた場合の発生トルクを示すグラフである。
図8】充電率に基づく発生トルクの変更を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に添付図面を参照して、本発明にかかる車両の加減速制御装置(以下、単に「加減速制御装置」という)の好適な実施の形態を詳細に説明する。
図1は、実施の形態にかかる加減速制御装置10の構成を示す図である。
本実施の形態では、駆動源として回転電機20のみを搭載した電気自動車に加減速制御装置10が搭載されているものとする。
回転電機20は、バッテリ22から供給される電力で駆動トルク(正のトルク)を発生させ電動車両の駆動輪を駆動するとともに、電動車両の減速時には回生トルク(負のトルク)を発生させ発電動作が可能である。すなわち、回転電機20は、バッテリ22から蓄積電力の供給を受けて駆動するとともに、回生発電で発生した回生電力をバッテリ22に蓄積可能である。
【0009】
より詳細には、運転者が加減速ペダル12を踏み込むと、バッテリ22に蓄積された電力が図示しないインバータで交流電流に変換され、回転電機20へと供給される。回転電機20は、インバータから供給された交流電流を用いて作動し、電動車両の走行のための駆動トルクを駆動輪に出力する。
また、運転者が加減速ペダル12を踏み戻すと、回転電機20が出力する駆動トルクを減少させる。加減速ペダル12の踏み戻しが更に大きくなると、回転電機20はジェネレータとして機能して発電動作を行う。すなわち、回転電機20は回生発電を行うことにより駆動輪に対して回生トルクを与え、この発電負荷を車両の制動力(回生制動力)として発揮する。回生発電で得られた電力は、インバータで直流に変換されて、バッテリ22に充電される。
【0010】
バッテリ22の充電率や温度、入出力電力量などは、BMU(Battery Management Unit)24によって検知され、後述するECU(Electronic Control Unit)14へと出力される。
【0011】
加減速制御装置10は、操作部としての加減速ペダル12とECU14とを備える。
加減速ペダル12は、電動車両の運転者の足元に設けられ、運転者が踏み込む、または踏み戻すことにより操作される。上述のように、加減速ペダル12の操作により電動車両の加速および減速(停止を含む)が可能である。従来アクセルペダルとブレーキペダルが設けられている位置に加減速ペダル12のみを設けてもよいし、加減速ペダル12と別個にブレーキペダルを設けてもよい。
【0012】
図2は、加減速ペダル12の操作状態を模式的に示す図である。図2の紙面左側が車両前方、紙面右側が車両後方となる。
加減速ペダル12は、棒状のアーム120と、アーム120の一端に取り付けられた踏み込み板122を備える。アーム120は、その他端(踏み込み板122が取り付けられていない方の端部)付近に位置する回転軸Oで電動車両本体に取り付けられている。
操作開始位置P1から運転者が足Fで踏み込み板122を踏み込む(車両前方に押す)と、アーム120が回転軸Oを中心として揺動する。アーム120の揺動は所定角度、すなわち図2の操作限界位置P2で停止し、それ以上の踏み込みはできなくなっている。なお、運転者が踏み込み板122から足を離す(踏む込みを解除する)と、図示しない付勢機構により加減速ペダル12が操作開始位置P1へと復帰される。
すなわち、加減速ペダル12は、所定の距離を有する操作開始位置P1(第1の位置)から操作限界位置P2(第2の位置)まで連続的に移動可能である。
本実施の形態では、加減速ペダル12が操作開始位置P1から操作限界位置P2に向かう方向を第1の方向D1、操作限界位置P2から操作開始位置P1に向かう方向を第2の方向D2とする。また、本実施の形態において、加減速ペダル12が所定方向へ移動する、とは、加減速ペダル12が所定方向に操作される、と同義であるものする。
なお、加減速ペダル12の操作量(踏み込み量)は、図示しないペダルセンサにより検知され、ECU14に出力される。
【0013】
図1の説明に戻り、ECU14は、CPU、制御プログラムなどを格納・記憶するROM、制御プログラムの作動領域としてのRAM、各種データを書き換え可能に保持するEEPROM、周辺回路等とのインターフェースをとるインターフェース部などを含んで構成されるマイクロコンピュータであり、電動車両全体の制御を行う。
ECU14は、上記CPUが上記制御プログラムを実行することにより、トルク制御部140として機能する。
【0014】
トルク制御部140は、加減速ペダル12の操作量に応じて駆動源である回転電機20が出力するトルクを増減させる。トルク制御部140は、加減速ペダル12が操作開始位置P1から操作限界位置P2に向かう第1の方向D1に移動する際には回転電機20が出力する正のトルクを増加させる。また、トルク制御部140は、加減速ペダル12が操作限界位置P2から操作開始位置P1に向かう第2の方向D2に移動する際には、回転電機20が出力する正のトルクを減少させる。正のトルクは駆動トルクに対応し、負のトルクは回生トルクに対応する。
ここで、トルク制御部140は、加減速ペダル12が第2の方向D2に操作される際(すなわち踏み戻される際)の操作量に応じたトルクの減少量を、加減速ペダル12が第1の方向D1に操作される際(すなわち踏み込まれる際)の操作量に応じたトルクの増加量よりも大きくする。すなわち、第1の方向への所定の操作量に対するトルクの変化量より、第2の方向への所定の操作量に対するトルクの変化量を大きくしている。
【0015】
図3は、本願発明におけるペダル操作量と回転電機20の発生トルクとの関係を示すグラフであり、縦軸にトルク量、横軸に加減速ペダル12の踏み込み量(操作量)を示す。横軸の踏み込み量0は加減速ペダル12が操作開始位置P1にあることを示し、横軸の踏み込み量MAXは加減速ペダル12が操作限界位置P2にあることを示す。
加減速ペダル12が第1の方向D1に操作される際のトルクはマップM1で示され、加減速ペダル12が第2の方向D2に操作される際のトルクはマップM2で示される。マップM2はマップM1と比較して傾きが大きくなっており、この結果マップM2の終点がマップM1の始点からマイナス方向にずれた位置となっている。
【0016】
より詳細には、マップM1では、加減速ペダル12が操作開始位置P1にある時は発生トルクは0(駆動トルクも回生トルクも発生しない)であり、操作開始位置P1から操作限界位置P2方向に踏み込まれるにつれ駆動トルクが増加し、操作限界位置P2に到達した時は最大駆動トルク+αとなる。
一方、マップM2では、加減速ペダル12が操作限界位置P2にある時は発生トルクは最大駆動トルク+αであり、操作限界位置P2から操作開始位置P1方向に踏み戻されるにつれ駆動トルクが減少する。途中踏み込み量がN0より小さくなると、駆動トルクは0となり、以降回生トルク(負のトルク)が発生する。加減速ペダル12が操作開始位置P1に到達した時は最大回生トルク-βとなる。そして、車速が0になると加減速ペダル12の操作開始位置P1における発生トルクは0に戻る。本実施の形態では、最大回生トルク-βは電動車両が停車できる程度の制動力であるものとする。
このように、踏み込み時のマップM1と踏み戻し時のマップM2を別個に設けることによって、踏み込み開始直後から駆動トルクを発生させつつ、踏み戻し時に十分な回生制動力を発生させることができる。
【0017】
なお、加減速ペダル12が操作開始位置P1から踏み込まれ(矢印S1)、操作限界位置P2に至る前に(踏み込み量N1で)踏み戻された場合は、例えば図4に示すように、踏み戻し位置に対応するトルクから最大回生トルク-βに至る新たなマップ(矢印S2)を生成し、これに沿って回転電機20の発生トルクを制御する。
また、他の方法として、例えば図5に示すように、踏み戻し位置に対応するトルクからマップM2に所定の点T1で合流する新たなマップ(矢印S3)を生成し、点T1以降はマップM2に沿って回転電機20の発生トルクを制御するようにしてもよい。
【0018】
また、加減速ペダル12が操作開始位置P1から踏み込まれ(矢印S5)、操作限界位置P2に至る前に(踏み込み量N2で)踏み戻され、操作開始位置P1に至る前に(踏み込み量N3で)再度踏み込まれた場合は、例えば図6に示すように、踏み戻し時に用いたマップ(矢印S6)を逆方向に戻り(矢印S7)、再度マップM1に沿って回転電機20の発生トルクを制御する(矢印S8)。
【0019】
なお、図6では加減速ペダル12が再度踏み込まれた際に、最初にマップM1に沿って制御を行っていた位置まで戻っているが、例えば加減速ペダル12の再踏み込み時における踏み込み速度に応じて、再踏み込み時のマップ(矢印S7)がマップM1に合流する戻り点を変更してもよい。
より詳細には、例えば再踏み込み時における踏み込み速度が速い場合には、マップM1上の戻り点をより踏み込み量が大きい側に変更する。
これは、再踏み込み時の踏み込み速度が速い場合、運転者が誤操作を行った可能性があるためである。すなわち、運転者が踏み込み中に誤って踏み戻しを行い、それに気づいて慌てて再度踏み込みを行ったことが予想されるためである。マップM1上の戻り点をより踏み込み量が大きい側に変更することによって、早く高トルクを得ることができるため、乗員の意思をより反映させることができる。
例えば踏み込み速度が比較的低速(例えば第1の所定速度以下)の場合には、図6のように最初にマップM1に沿って制御を行っていた位置まで戻り、再度マップM1に沿って発生トルクを制御する。また、例えば踏み込み速度が比較的高速(例えば第2の所定速度(>第1の所定速度)以上)の場合には、図7に示すように再度踏み込まれた位置(踏み込み量N3)から最大駆動トルク+αに至る新たなマップ(矢印S9)を生成し、これに沿って発生トルクを制御する、などである。
すなわち、トルク制御部140は、加減速ペダル12が第1の方向D1へ移動する際のトルクマップ(マップM1)を備え、加減速ペダル12が第2の方向D2へ移動する際にはマップM1より大きくトルクを減少させる。そして、第1の方向D1への再操作時には、当該再操作時の操作速度に応じて、マップM1への復帰時期を変更する。この時、トルク制御部140は、第1の方向D1への再操作時の操作速度が速いほどマップM1への復帰時期を遅らせるようにしてもよい。そして、例えば再踏み込み時における踏み込み速度が遅い場合には、マップM1上の戻り点をより踏み込み量が小さい側に変更し、マップM1上への復帰時期を早めるようにしてもよい。
また、例えば再踏み込み時における踏み込み速度が速い場合にはマップM1上の戻り点をより踏み込み量が小さい側にしてマップM1への復帰時期を早め、再踏み込み時における踏み込み速度が遅い場合にはマップM1上の戻り点をより踏み込み量が大きい側にしてマップM1への復帰時期を遅くしてもよい。
【0020】
また、踏み戻し時のマップM2について、バッテリ22の充電率に基づいて最大回生トルクを変更してもよい。すなわち、バッテリ22の充電率が高いほど、踏み戻し時のマップの傾きを緩くして最大回生トルクを小さくするようにしてもよい。これは、バッテリ22の充電率が高い場合、回生発電により発生した電力をバッテリ22に充電することができないためである。
具体的には、例えば図8に示すように、バッテリ22の充電率が所定値未満の場合には踏み戻し時にマップM2(最大回生トルク-β)を用い、バッテリ22の充電率が所定値以上の場合には踏み戻し時にマップM3(最大回生トルク-γ(|γ|<|β|))を用いるなどとすることができる。図8のように2段階のマップを設定するに限らず、3以上のマップを設けたり、充電率に基づいて連続的にマップ(最大回生トルク)を変更するようにしてもよい。
すなわち、トルク制御部140は、加減速ペダル12の第2の方向D2への移動時に、バッテリ50の充電率に基づいてトルクの変化量(マップM2の傾き)を変更するようにしてもよい。この時、トルク制御部140は、バッテリ22の充電率が高いほどトルクの減少量を小さくするようにしてもよい。
また、トルク制御部140は、バッテリ22の充電率と目標充電率との乖離が大きいほど(バッテリ22の実際の充電率が目標充電率よりも低いほど)、トルクの減少量を大きくして回生発電により得られる電力を大きくするようにしてもよい。
【0021】
なお、本実施の形態では操作部として加減速ペダル12を用いる場合を例にして説明したが、操作部としては所定の距離を有する操作開始位置から操作限界位置までを連続的に移動させることによって操作する機構であればよく、例えば基準位置から特定方向に移動可能なレバーなどであってもよい。
また、本実施の形態では、加減速制御装置10が搭載される電動車両として、走行用動力源として回転電機のみを有する電気自動車を例にして説明したが、回転電機に加えて内燃機関を備えたハイブリッド電気自動車にも、本発明にかかる加減速制御装置が適用可能なことは無論である。ハイブリッド電気自動車に適用する場合には、正のトルクを発生させる手段としてエンジンを用いても良く、エンジンと回転電機を併用するようにしても良い。
【0022】
以上説明したように、実施の形態にかかる車両の加減速制御装置10によれば、加減速ペダル12が第2の方向D2に操作される際のトルクの減少量を、加減速ペダル12が第1の方向D1に操作される際のトルクの増加量よりも大きくするので、第2の方向D2への操作時に大きな回生トルク(負のトルク)を発生させつつ、第1の方向D1への操作開始直後から駆動トルク(正のトルク)を発生させることができる。
また、加減速制御装置10において、バッテリ22の充電率に基づいて加減速ペダル12が第2の方向D2に操作される際のトルクの減少量の大きさを変更するようにすれば、回生トルク(負のトルク)を用いた発電量をバッテリ22の充電率に基づいて変更することができる。例えば、バッテリ22の充電率と目標充電率との乖離が大きいほど(バッテリ22の実際の充電率が目標充電率よりも低いほど)、トルクの減少量を大きくするようにすれば、回生発電量が大きくなり目標充電率を維持しやすくなる。また、バッテリ22の充電率が高いほどトルクの減少量を小さくする、すなわち回生トルクを小さくするようにすれば、バッテリ22が過充電されるのを防止することができる。
また、加減速制御装置10において、加減速ペダル12への操作方向が第1の方向D1から第2の方向D2に変化した後、再度第1の方向D1に変化した場合、第1の方向D1への操作速度に基づいてトルクの増加量を変更するようにすれば、運転者の意思をより反映した制御を行うことができる。特に、第1の方向D1への操作速度が速いほどトルクの増加量を大きくすれば、運転者の加速要求(正トルクの増加要求)に迅速に対応することができる。
【符号の説明】
【0023】
10 加減速制御装置
12 加減速ペダル
120 アーム
122 踏み込み板
14 ECU
140 トルク制御部
20 回転電機
22 バッテリ
D1 第1の方向
D2 第2の方向
P1 操作開始位置(第1の位置)
P2 操作限界位置(第2の位置)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8