(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20230829BHJP
B41J 2/18 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
B41J2/14 603
B41J2/18
B41J2/14
B41J2/14 605
(21)【出願番号】P 2019069634
(22)【出願日】2019-04-01
【審査請求日】2022-03-04
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岸上 利裕
(72)【発明者】
【氏名】神▲崎▼ 章太郎
【審査官】加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-230677(JP,A)
【文献】国際公開第2016/047553(WO,A1)
【文献】特開2016-179599(JP,A)
【文献】国際公開第2018/008397(WO,A1)
【文献】特開2016-159514(JP,A)
【文献】特開2019-014066(JP,A)
【文献】特開2018-103616(JP,A)
【文献】特開2011-056689(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0072692(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の吐出口をそれぞれ有する複数の個別流路と、
前記複数の個別流路に共通して設けられた第1マニホールドと、
前記第1マニホールド内に配置されたフィルターと、
前記複数の個別流路に共通して設けられた第2マニホールドと、
前記第1マニホールド内において前記複数の個別流路と前記フィルターとの間に配置されており、前記複数の個別流路を通らずに前記第1マニホールドと前記第2マニホールドとを連通させるためのバイパス流路と、を備え、
前記バイパス流路は、互いに積層された複数のプレートのそれぞれに形成された真円の貫通孔がつなぎ合わされてなることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
液体の吐出口をそれぞれ有する複数の個別流路と、
前記複数の個別流路に共通して設けられた第1マニホールドと、
前記第1マニホールド内に配置されたフィルターと、
前記複数の個別流路に共通して設けられた第2マニホールドと、
前記第1マニホールド内において前記複数の個別流路と前記フィルターとの間に配置されており、前記複数の個別流路を通らずに前記第1マニホールドと前記第2マニホールドとを連通させるためのバイパス流路と、を備え、
前記複数の個別流路と前記フィルターとの間の流路は、少なくとも第1面及び前記第1面と交わる第2面で画定されており、
前記バイパス流路は、前記第1面と前記第2面とが交わる角部に配置されていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項3】
液体の吐出口をそれぞれ有する複数の個別流路と、
前記複数の個別流路に共通して設けられた第1マニホールドと、
前記第1マニホールド内に配置されたフィルターと、
前記複数の個別流路に共通して設けられた第2マニホールドと、
前記第1マニホールド内において前記複数の個別流路と前記フィルターとの間に配置されており、前記複数の個別流路を通らずに前記第1マニホールドと前記第2マニホールドとを連通させるためのバイパス流路と、を備え、
前記バイパス流路は、第1バイパス流路と第2バイパス流路とを有しており、
前記第1バイパス流路は、前記第1マニホールド内の前記複数の個別流路と前記フィルターとの間において、前記フィルターよりも前記複数の個別流路寄りに配置されており、
前記第2バイパス流路は、前記第1マニホールド内の前記複数の個別流路と前記フィルターとの間において、前記複数の個別流路よりも前記フィルター寄りに配置されており、
前記第1バイパス流路の抵抗は、前記第2バイパス流路の抵抗よりも小さいことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項4】
液体の吐出口をそれぞれ有する複数の個別流路と、
前記複数の個別流路に共通して設けられた第1マニホールドと、
前記第1マニホールド内に配置されたフィルターと、
前記複数の個別流路に共通して設けられた第2マニホールドと、
前記第1マニホールド内において前記複数の個別流路と前記フィルターとの間に配置されており、前記複数の個別流路を通らずに前記第1マニホールドと前記第2マニホールドとを連通させるためのバイパス流路と、を備え、
前記個別流路を有する流路部材と、
前記第1マニホールドと前記第2マニホールドとを有するマニホールド部材と、
前記流路部材と前記マニホールド部材との間に配置されるプレートであって、前記フィルターを備えるフィルター部材と、を備え、
前記流路部材は、前記バイパス流路を有し、
前記流路部材は、一方向に沿って順に積層される第1プレート、第2プレート、第3プレート、第4プレートおよび第5プレートを含み、
前記第1プレートは、前記吐出口を有し、
前記第2プレートは、前記吐出口へ連通するディセンダの一部と、前記第2マニホールドの一部と、前記ディセンダの一部と前記第2マニホールドの一部とを連通する第1連通流路とを有し、
前記第3プレートは、前記ディセンダの一部と、前記第2マニホールドの一部と、前記第1連通流路の前記一方向と直交する直交面と平行な壁面を形成する第1壁部とを有し、
前記第4プレートは、前記ディセンダと連通する圧力室の一部と、前記第1マニホールドの一部と、前記第2マニホールドの一部と、前記圧力室の一部と前記第1マニホールドの一部とを連通する第2連通流路とを有し、
前記第5プレートは、前記圧力室の一部と、前記第2連通流路の前記直交面と平行な壁面を形成する第2壁部と、前記第1マニホールドの一部と、前記第2マニホールドの一部とを有し、
前記バイパス流路は、前記第3プレートに形成され、
前記第3プレートは、複数のプレートから構成され、
前記バイパス流路は、前記流路部材と、前記フィルター部材と、前記マニホールド部材との積層方向に延び、前記積層方向と直交する面での断面が真円の貫通孔であり、前記真円の貫通孔がつなぎ合わされてなることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項5】
液体の吐出口をそれぞれ有する複数の個別流路と、
前記複数の個別流路に共通して設けられた第1マニホールドと、
前記第1マニホールド内に配置されたフィルターと、
前記複数の個別流路に共通して設けられた第2マニホールドと、
前記第1マニホールド内において前記複数の個別流路と前記フィルターとの間に配置されており、前記複数の個別流路を通らずに前記第1マニホールドと前記第2マニホールドとを連通させるためのバイパス流路と、を備え、
前記個別流路を有する流路部材と、
前記第1マニホールドと前記第2マニホールドとを有するマニホールド部材と、
前記流路部材と前記マニホールド部材との間に配置されるプレートであって、前記フィルターを備えるフィルター部材と、を備え、
前記流路部材は、前記バイパス流路を有し、
前記流路部材は、一方向に沿って順に積層される第1プレート、第2プレート、第3プレート、第4プレートおよび第5プレートを含み、
前記第1プレートは、前記吐出口を有し、
前記第2プレートは、前記吐出口へ連通するディセンダの一部と、前記第2マニホールドの一部と、前記ディセンダの一部と前記第2マニホールドの一部とを連通する第1連通流路とを有し、
前記第3プレートは、前記ディセンダの一部と、前記第2マニホールドの一部と、前記第1連通流路の前記一方向と直交する直交面と平行な壁面を形成する第1壁部とを有し、
前記第4プレートは、前記ディセンダと連通する圧力室の一部と、前記第1マニホールドの一部と、前記第2マニホールドの一部と、前記圧力室の一部と前記第1マニホールドの一部とを連通する第2連通流路とを有し、
前記第5プレートは、前記圧力室の一部と、前記第2連通流路の前記直交面と平行な壁面を形成する第2壁部と、前記第1マニホールドの一部と、前記第2マニホールドの一部とを有し、
前記バイパス流路は、第1バイパス流路と、第2バイパス流路とを有し、
前記第1バイパス流路は、前記第3プレートに形成され、
前記第2バイパス流路は、前記第4プレートに形成され、
前記第1バイパス流路の抵抗は、前記第2バイパス流路の抵抗よりも小さいことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出口から液体を吐出する液体吐出ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
吐出口から液体を吐出する液体吐出ヘッドの一例として、特許文献1には、ノズルからインクを吐出するインク吐出ヘッドが記載されている。特許文献1のインク吐出ヘッドは、複数のノズルにそれぞれ通じる複数の個別液室(個別流路)と、複数の個別液室にインクを供給する共通液室(供給マニホールド)と、複数の個別液室からのインクが流れ込む循環共通液室(循環マニホールド)と、を備えている。また、共通液室の個別液室側の端部には、フィルターが配置されている。特許文献1のインク吐出ヘッドでは、個別液室を介して共通液室から循環共通液室にインクを送り、ヘッド内のインクを循環させることで、インクに含まれる粒子の沈降等の不具合を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように、個別流路を介してヘッド内の液体を循環させる構成とした場合、個別流路の流路抵抗が比較的高いことにより、液体の循環流量が少なくなる。したがって、粒子の沈降等の不具合を十分に防ぐことができない。よって、液体の循環流量を十分に確保する観点から、帰還マニホールドに液体を送る帰還流路を供給マニホールド内に設け、個別流路を介さずにヘッド内の液体を循環させる構成とすることが考えられる。
【0005】
しかしながら、供給マニホールドに設けられたフィルターよりも上流側に帰還流路を設けた場合には、液体に含まれる異物がフィルターで除去される前に帰還流路に流れ込むことになる。したがって、帰還流路内に異物が付着したり残留したりすることにより、帰還流路の流路抵抗が高くなり、液体の循環流量が不十分となる虞がある。
【0006】
本発明の目的は、液体の循環流量を十分に確保できる液体吐出ヘッドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の液体吐出ヘッドは、液体の吐出口をそれぞれ有する複数の個別流路と、前記複数の個別流路に共通して設けられた第1マニホールドと、前記第1マニホールド内に配置されたフィルターと、前記複数の個別流路に共通して設けられた第2マニホールドと、前記第1マニホールド内において前記複数の個別流路と前記フィルターとの間に配置されており、前記複数の個別流路を通らずに前記第1マニホールドと前記第2マニホールドとを連通させるためのバイパス流路と、を備えている。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、第1マニホールドと第2マニホールドとを連通するバイパス流路を、複数の個別流路とフィルターとの間に配置することで、比較的流路抵抗が高い個別流路を介することなく液体を循環させることができる。また、フィルターで異物が除去された後の液体がバイパス流路に流れ込む。つまり、異物が除去された液体が循環するので、液体が循環する流路に異物が付着したり残留したりすることで、流路の抵抗が高くなるのを抑制することができる。したがって、液体の循環流量を十分に確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係るインクジェットヘッドを備えたプリンタの平面図である。
【
図2】
図1に示すインクジェットヘッドの平面図である。
【
図3】
図2のIII-III線に沿ったインクジェットヘッドの断面図である。
【
図4】(a)~(e)は流路部材を構成する5枚のプレートの平面図をそれぞれ示す。
【
図5】
図2のV-V線に沿ったと流路部材の部分断面図である。
【
図6】第1変形例に係るインクジェットヘッドの断面図である。
【
図7】
図6に示す流路部材を構成するプレートの平面図である。
【
図8】第2変形例に係るインクジェットヘッドの断面図である。
【
図9】第3変形例に係るインクジェットヘッドの平面図である。
【
図10】第4変形例に係るインクジェットヘッドの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好適な一実施形態について説明する。
【0011】
<プリンタの全体構成>
図1に示すように、本実施形態にかかるプリンタ1は、キャリッジ2、ガイドレール11、12、インクジェットヘッド3(本発明の「液体吐出ヘッド」)、プラテン4、搬送ローラ5、6、インクタンク90、及びポンプ91~94を備えている。
【0012】
キャリッジ2は、走査方向(
図1中左右方向)に延びた2本のガイドレール11、12に支持され、ガイドレール11、12に沿って走査方向に移動する。インクジェットヘッド3は、キャリッジ2に搭載され、キャリッジ2とともに走査方向に移動する。インクジェットヘッド3には、ポンプ91、92により、インクを貯留するインクタンク90から図示しない管を介してインクが供給される。また、インクジェットヘッド3に供給されたインクの一部は、ポンプ93、94により、インクタンク90に戻る。そして、インクジェットヘッド3は、その下面に形成された複数の吐出口47からインクを吐出する。なお、インクジェットヘッド3については後ほど詳細に説明する。
【0013】
プラテン4は、インクジェットヘッド3の下面と対向して配置され、走査方向に記録用紙Pの全長にわたって延びている。プラテン4は、記録用紙Pを下方から支持する。搬送ローラ5、6は、それぞれ、走査方向と直交する搬送方向(
図2中下方から上方に向かう方向)において、キャリッジ2よりも上流側及び下流側に配置され、記録用紙Pを搬送方向に搬送する。
【0014】
プリンタ1では、搬送ローラ5、6によって、記録用紙Pを搬送方向に所定距離ずつ搬送させる搬送処理と、キャリッジ2を走査方向に移動させつつ、インクジェットヘッド3の複数の吐出口47からインクを吐出させる走査処理とを交互に行うことで、記録用紙Pに印刷を行う。すなわち、プリンタ1は、シリアル式である。なお、以下の説明においては、走査方向と搬送方向との両方に直交する方向を上下方向とする。
【0015】
<インクジェットヘッド3>
次に、
図2、3を参照しつつ、インクジェットヘッド3の詳細な構成について説明する。
図2に示すように、インクジェットヘッド3は、上面視で搬送方向に長尺な矩形形状を有している。インクジェットヘッド3は、
図3に示すように、流路部材21、振動板22、第1マニホールド部材23、第2マニホールド部材24、及び圧電素子25を構成する共通電極51、圧電体52、個別電極53などを備えている。
【0016】
インクジェットヘッド3には、
図2及び
図3に示すように、2つの供給マニホールド41a、41b、2つの帰還マニホールド42a、42b、複数の個別流路49、複数のダミー流路49X、バイパス流路48、連通流路44、46、供給ポート61、62、帰還ポート63、64、などが設けられている。以下の説明において、2つの供給マニホールド41a、41bを区別しない場合には、「供給マニホールド41」とする。また、2つの帰還マニホールド42a、42bを区別しない場合には、「帰還マニホールド42」とする。
【0017】
図2に示すように、2つの帰還マニホールド42a、42bは、いずれも搬送方向に延在しており、流路部材21における走査方向の両端部にそれぞれ位置している。帰還マニホールド42aは、流路部材21における走査方向の一方側(
図2中上側)に位置している。帰還マニホールド42bは、流路部材21における走査方向の他方側(
図2中下側)に位置している。
【0018】
図2に示すように、2つの供給マニホールド41a、41bは、いずれも搬送方向に延在しており、流路部材21における走査方向の両端部にそれぞれ位置している。供給マニホールド41の搬送方向に沿う長さは、帰還マニホールド42の搬送方向に沿う長さよりも短い。
【0019】
流路部材21における走査方向の一方側(
図2中上側)に位置する供給マニホールド41a及び帰還マニホールド42aは、上面視で搬送方向の下流側(
図2中右側)の端部の位置は同じである。帰還マニホールド42aは、供給マニホールド41aよりも搬送方向の上流側(
図2中左側)まで延びている。流路部材21における走査方向の他方側(
図2中下側)に位置する供給マニホールド41b及び帰還マニホールド42bは、上面視で搬送方向の上流側(
図2中左側)の端部の位置は同じである。帰還マニホールド42bは、供給マニホールド41bよりも搬送方向の下流側(
図2中右側)まで延びている。
【0020】
図3に示すように、2つの供給マニホールド41a、41bの搬送方向に直交する面における断面形状は、いずれもその上端が走査方向に関する外側に曲がった鉤形状である。供給マニホールド41aは、帰還マニホールド42aの走査方向に関する他方(
図3中右方)及び上方に跨って配置されている。供給マニホールド41bは、帰還マニホールド42bの走査方向に関する一方(
図3中左方)及び上方に跨って配置されている。供給マニホールド41と帰還マニホールド42とは、バイパス流路48によって複数の個別流路49及び複数のダミー流路49Xを通らずに連通されている。
【0021】
複数の個別流路49及び複数のダミー流路49Xは、上面視で供給マニホールド41及び帰還マニホールド42と重複しない位置に配置されている。複数の個別流路49及び複数のダミー流路49Xの走査方向の外側(
図2中上方及び下方)に供給マニホールド41及び帰還マニホールド42が配置されている。各個別流路49は、圧力室43、ディセンダ45、及び吐出口47をそれぞれ有している。各ダミー流路49Xは、個別流路49と同じ構造を有しており、圧力室43X、ディセンダ45X、及び吐出口47Xをそれぞれ有している。なお、ダミー流路49Xの吐出口47Xからは、インクの吐出は行われない。
【0022】
図2に示すように、複数の個別流路49に対応する複数の圧力室43及び複数のダミー流路49Xに対応する複数の圧力室43Xは、搬送方向に沿って2列の千鳥状に配列されている。つまり、搬送方向に等間隔で配列された複数の圧力室43、43Xで構成された2つの圧力室列43a、43bが、走査方向に並んで配置されている。
【0023】
ダミー流路49Xに対応する圧力室43Xは、各圧力室列43a、43bに2つずつ含まれている。
図2に示すように、走査方向の一方側(
図2中上側)に位置する圧力室列43aに属する2つの圧力室43Xは、搬送方向の上流側(
図2中左側)の端部に配置されている。走査方向の他方側(
図2中下側)に位置する圧力室列43bに属する2つの圧力室43Xは、搬送方向の下流側(
図2中右側)の端部に配置されている。
【0024】
ここで、各圧力室列43a、43bの端部にそれぞれ配置された2つの圧力室43Xに対応する2つのダミー流路49Xのうち、個別流路49と隣り合わない(すなわち、各圧力室列43a、43bの端に位置する圧力室43Xに対応する)ダミー流路49Xの流路抵抗は、個別流路49と隣り合うダミー流路49Xの流路抵抗よりも小さい。
【0025】
さらに、
図2に示すように、供給マニホールド41aと帰還マニホールド42aとを連通させるバイパス流路48の搬送方向に関する位置は、上面視で圧力室列43aの搬送方向の上流側(
図2中左側)に位置する2つの圧力室43Xに対応する2つのダミー流路49Xの間である。供給マニホールド41bと帰還マニホールド42bとを連通させるバイパス流路48の搬送方向に関する位置は、上面視で圧力室列43bの搬送方向の下流側(
図2中右側)に位置する2つの圧力室43Xに対応する2つのダミー流路49Xの間である。
【0026】
圧力室列43aに属する各圧力室43、43Xは、連通流路44(本発明の「第2連通流路」、「第1絞り」)を介して供給マニホールド41aにそれぞれ連通している。すなわち、供給マニホールド41aは、圧力室列43aに属する複数の圧力室43、43Xに共通して設けられている。かかる連通流路44は、圧力室列43aに属する圧力室43、43X毎に設けられており、圧力室43、43Xの走査方向に関する一方側(
図2中上側)の端部に繋がっている。つまり、かかる連通流路44は、複数の個別流路49及び2つのダミー流路49Xのそれぞれと供給マニホールド41aとを繋ぐ。
【0027】
圧力室列43bに属する各圧力室43、43Xは、連通流路44(本発明の「第2連通流路」、「第1絞り」)を介して供給マニホールド41bにそれぞれ連通している。すなわち、供給マニホールド41bは、圧力室列43bに属する複数の圧力室43、43Xに共通して設けられている。かかる連通流路44は、圧力室列43bに属する圧力室43、43X毎に設けられており、圧力室43、43Xの走査方向に関する他方側(
図2中下側)の端部に繋がっている。つまり、かかる連通流路44は、複数の個別流路49及び2つのダミー流路49Xのそれぞれと供給マニホールド41bとを繋ぐ。
【0028】
ディセンダ45、45Xは、
図3に示すように、上下方向に関して圧力室43、43Xと吐出口47、47Xとの間に配置されている。ディセンダ45、45Xは、圧力室43、43Xの走査方向に関する連通流路44が繋がっている側とは反対側の端部に繋がっている。すなわち、圧力室列43aに属する圧力室43、43Xについては、走査方向の他方側(
図2中下側)の端部にディセンダ45、45Xが繋がっている。圧力室列43bに属する圧力室43、43Xについては、走査方向の一方側(
図2中上側)の端部にディセンダ45、45Xが繋がっている。
【0029】
図3に示すように、圧力室列43aに属する各圧力室43、43Xに連通する複数のディセンダ45、45Xは、連通流路46(本発明の「第1連通流路」、「第2絞り」)を介して帰還マニホールド42aとそれぞれ連通している。すなわち、帰還マニホールド42aは、圧力室列43aに属する複数の圧力室43、43Xに共通して設けられている。かかる連通流路46は、圧力室列43aに属する各圧力室43、43X連通するディセンダ45、45X毎に設けられている。つまり、かかる連通流路46は、複数の個別流路49及び2つのダミー流路49Xのそれぞれと帰還マニホールド42aとを繋ぐ。
【0030】
同様に、圧力室列43bに属する各圧力室43、43Xに連通する複数のディセンダ45、45Xについても、連通流路46(本発明の「第1連通流路」、「第2絞り」)を介して帰還マニホールド42bとそれぞれ連通している。すなわち、帰還マニホールド42bは、圧力室列43bに属する複数の圧力室43、43Xに共通して設けられている。かかる連通流路46は、圧力室列43bに属する各圧力室43、43X連通するディセンダ45、45X毎に設けられている。つまり、かかる連通流路46は、複数の個別流路49及び2つのダミー流路49Xのそれぞれと帰還マニホールド42bとを繋ぐ。
【0031】
ここで、
図4をさらに参照しつつ、流路部材21の構成について説明する。
図3に示すように、流路部材21は、プレート31~35の5枚のプレートが、下方からこの順で積層されることで形成されている。プレート31~35の外形形状はいずれも同じであり、上面視で搬送方向に長尺な矩形形状を有している。
【0032】
図4(a)に示すように、プレート31は、走査方向の中央部において搬送方向に沿って2列の千鳥状に配列された複数の貫通孔31aを有している。かかる貫通孔31aのプレート31の下面における開口が、吐出口47、47Xに対応する。つまり、プレート31は、吐出口47、47Xを有する。
【0033】
図4(b)に示すように、プレート32は、走査方向の中央部において搬送方向に沿って2列の千鳥状に配列された複数の貫通孔32aを有している。貫通孔32aは、プレート31に形成された貫通孔31aと対向する領域を含む領域に位置しており、吐出口47、47Xに連通するディセンダ45、45Xの一部を構成する。また、プレート32は、走査方向に関して複数の貫通孔32aの両側にそれぞれ位置しており、搬送方向に延びる貫通孔32bを有している。貫通孔32bは、帰還マニホールド42の一部を構成する。さらに、プレート32は、各貫通孔32aから走査方向の外側(
図4(b)中上側又は下側)に向かって貫通孔32bまで延びる貫通孔32cを有している。貫通孔32cは、連通流路46を構成する。つまり、プレート32は、吐出口47、47Xに連通するディセンダ45、45Xの一部と、帰還マニホールド42の一部と、ディセンダ45、45Xの一部と帰還マニホールド42の一部とを連通する連通流路46とを有する。
【0034】
図4(c)に示すように、プレート33は、走査方向の中央部において搬送方向に沿って2列の千鳥状に配列された複数の貫通孔33aを有している。貫通孔33aは、プレート32に形成された貫通孔32aと対向する領域に位置しており、ディセンダ45、45Xの一部を構成する。また、プレート33は、走査方向の両端部にそれぞれ位置しており、搬送方向に延びる貫通孔33bを有している。貫通孔33bは、プレート32に形成された貫通孔32bの一部と対向する領域に位置しており、帰還マニホールド42の一部を構成する。さらに、プレート33における走査方向に関して貫通孔33aと貫通孔33bとの間の部分は、連通流路46の上面(上下方向と直交する面)を形成する壁部33c(本発明の「第1壁部」)を構成する。すなわち、プレート33は、ディセンダ45、45Xの一部と、帰還マニホールド42の一部と、連通流路46の上面を形成する壁部33cとを有している。
【0035】
図4(d)に示すように、プレート34は、プレート33が有する2列の千鳥状に配列された各貫通孔33aと対向する領域から走査方向の外側(
図4(d)中上側又は下側)にそれぞれ延びる複数の貫通孔34aを有している。貫通孔34aは、ディセンダ45、45Xと連通する圧力室43、43Xの一部を構成する。また、プレート34は、走査方向に関して貫通孔34aの両側にそれぞれ位置しており、搬送方向に延びる貫通孔34bを有している。貫通孔34bは、供給マニホールド41の一部を構成する。さらに、プレート34は、走査方向の両端部にそれぞれ位置する貫通孔34cを有している。貫通孔34cは、貫通孔34aと共に走査方向に関して貫通孔34bを挟んでいる。貫通孔34cは、プレート33に形成された貫通孔33bと対向する領域に位置しており、帰還マニホールド42の一部を構成する。
【0036】
加えて、プレート34は、各貫通孔34aから走査方向の外側(
図4(d)中上側又は下側)に向かって貫通孔34bまで延びる貫通孔34dを有している。つまり、搬送方向に沿って2列の千鳥状に配列された複数の貫通孔34aのうち、走査方向の一方側(
図4(d)中上側)に位置する貫通孔34aからは、貫通孔34dが走査方向の一方側に向かって延びている。同様に、走査方向の他方側(
図4(d)中下側)に位置する貫通孔34aからは、貫通孔34dが走査方向の他方側に向かって延びている。貫通孔34dは、連通流路44を構成する。
【0037】
さらに、プレート34は、走査方向の両側にそれぞれ位置する貫通孔34bと貫通孔34cとを繋ぐ貫通孔34eを有している。走査方向の一方側(
図4(d)中上側)に位置する貫通孔34b及び貫通孔34cは、貫通孔34eによって、搬送方向の上流側(
図4(d)中左側)の端部同士が繋がれている。走査方向の他方側(
図4(d)中下側)に位置する貫通孔34b及び貫通孔34cは、貫通孔34eによって、搬送方向の下流側(
図4(d)中右側)の端部同士が繋がれている。貫通孔34eは、バイパス流路48を構成する。バイパス流路48は、走査方向に延びる。なお、流路部材21の走査方向と直交する面における部分断面図である
図5に示すように、バイパス流路48のインクの流動方向(走査方向)と直交する面における断面の形状は矩形である。
【0038】
すなわち、プレート34は、ディセンダ45、45Xと連通する圧力室43、43Xの一部と、供給マニホールド41の一部と、帰還マニホールド42の一部と、圧力室43、43Xの一部と供給マニホールド41の一部とを連通する連通流路44と、バイパス流路48を有する。
【0039】
図4(e)に示すように、プレート35は、走査方向の中央部において搬送方向に沿って2列の千鳥状に配列された複数の貫通孔35aを有している。貫通孔35aは、プレート34に形成された貫通孔34aと対向する領域に位置しており、圧力室43、43Xの一部を構成する。また、プレート35は、走査方向に関して貫通孔35aの両側にそれぞれ位置しており、搬送方向に延びる貫通孔35bを有している。貫通孔35bは、プレート34に形成された貫通孔34bと対向する領域に位置しており、供給マニホールド41の一部を構成する。さらに、プレート34は、走査方向の両端部にそれぞれ位置する貫通孔35cを有している。貫通孔35cは、貫通孔35aと共に走査方向に関して貫通孔35bを挟んでいる。貫通孔35cは、プレート34に形成された貫通孔34cと対向する領域に位置しており、帰還マニホールド42の一部を構成する。
【0040】
さらに、プレート35における走査方向に関して貫通孔35aと貫通孔35bとの間の部分は、連通流路44の上面(上下方向と直交する面)を形成する壁部35d(本発明の「第2壁部」)を構成する。すなわち、プレート35は、圧力室43、43Xの一部と、連通流路44の上面を形成する壁部35dと、供給マニホールド41の一部と、帰還マニホールド42の一部とを有する。
【0041】
流路部材21内には、圧力室43、43Xがプレート34、35に亘って形成されており、ディセンダ45、45Xは、プレート32、33に亘って形成されている。さらに、供給マニホールド41の一部がプレート34、35に亘って形成されており、帰還マニホールド42の一部がプレート32~35に亘って形成されている。バイパス流路48は、プレート34に形成されている。
【0042】
振動板22(本発明の「フィルター部材」)は、上面視でプレート31~35と同じ外形形状を有しており、流路部材21の上面、すなわちプレート35の上面に積層されている。
図3に示すように、振動板22は、プレート35が有する供給マニホールド41の一部を構成する2つの貫通孔35bと対向する領域にそれぞれ設けられた2つのフィルター22aを有する。また、振動板22は、帰還マニホールド42の一部を構成する貫通孔22bを有する。貫通孔22bは、プレート35が有する帰還マニホールド42の一部を構成する2つの貫通孔35cと対向する領域にそれぞれ配置されている。
【0043】
図3に示すように、バイパス流路48は、供給マニホールド41内において複数の個別流路49及び2つのダミー流路49Xとフィルター22aとの間に配置されている。ここで、供給マニホールド41内における複数の個別流路49及び2つのダミー流路49Xとフィルター22aとの間の流路を流路70とする。また、流路70の底面を画定する面を第1面71、流路70の走査方向に関して外側(帰還マニホールド42側)の側面を画定する面を第2面72とする。第1面71は、プレート33の上面である。第2面72は、プレート34、35に形成された供給マニホールド41の一部を構成する貫通孔34b(
図4(d)参照)、貫通孔35b(
図4(e)参照)の側面であり、走査方向に直交する面である。
【0044】
流路70には、その底部における走査方向の外側(帰還マニホールド42側)端部に、第1面71と第2面72とが交わる角部が形成されている。バイパス流路48は、かかる角部に配置されている。より詳細には、バイパス流路48は、第2面72の下端部に開口している。また、バイパス流路48の底面は、第1面71と同じプレート33の上面である。すなわち、バイパス流路48の底面は、流路70の底面と同じ高さにある。
【0045】
振動板22の上面における複数の圧力室43と対向する領域には、下方から順に積層された共通電極51、圧電体52、及び個別電極53が配置されている。共通電極51及び圧電体52は、圧力室列43a、43b毎に設けられており、各圧力室列43a、43bに属する複数の圧力室43に跨って設けられている。個別電極53は、圧力室43毎に設けられており、上面視で各圧力室43と重複している。1つの個別電極53と共通電極51及び圧電体52における該個別電極53と対向する部分とが、1つの圧電素子25を構成する。すなわち、振動板22の上面には、圧力室43毎に圧電素子25が配置されている。なお、
図2に示すように、上面視でダミー流路49Xに対応する圧力室43Xと重複する領域には、圧電素子25は配置されていない。
【0046】
複数の個別電極53は、図示しない配線部材を介して図示しないドライバICに接続されている。ドライバICは、共通電極51の電位をグランド電位に維持する一方、個別電極53の電位を変化させる。これにより、振動板22及び圧電体52において個別電極53と圧力室43とで挟まれた部分が、圧力室43側に凸となるように変形する。この変形によって、圧力室43の容積が小さくなって圧力室43内のインクの圧力が上昇し、圧力室43に連通する吐出口47からインクが吐出される。
【0047】
図3に示すように、振動板22の上面における圧電素子25とは異なる位置には、第1マニホールド部材23が積層されている。さらに、第1マニホールド部材23の上面には、第2マニホールド部材24が積層されている。第1マニホールド部材23及び第2マニホールド部材24は、上面視でプレート31~35及び振動板22と同じ外形形状を有している。第1マニホールド部材23及び第2マニホールド部材24は、圧電素子25を露出する開口23a、24aをそれぞれ有している。
【0048】
第1マニホールド部材23は、上下方向に貫通する貫通孔23bと、下方に開口する溝23cとを有する。
図3に示すように、貫通孔23b及び溝23cは、第1マニホールド部材23において圧電素子25の配置空間を挟んで走査方向の両側に配置された部分にそれぞれ設けられている。貫通孔23bは、走査方向に関して溝23cよりも圧電素子25側に配置されている。
【0049】
貫通孔23bは、供給マニホールド41の一部を構成するものであり、振動板22に設けられた2つのフィルター22aと対向する領域にそれぞれ設けられている。溝23cは、帰還マニホールド42の一部を構成するものであり、振動板22に設けられた2つの貫通孔22bと対向する領域にそれぞれ設けられている。
【0050】
第2マニホールド部材24は、下方に開口する溝24bを有する。
図3に示すように、溝24bは、第2マニホールド部材24において圧電素子25の配置空間を挟んで走査方向の両側に配置された部分にそれぞれ設けられている。2つの溝24bは、第1マニホールド部材23における走査方向の両側にそれぞれ配置された貫通孔23b及び溝23cの上方に配置されている。より詳細には、溝24bは、貫通孔23bと対向する領域と溝23cに対向する領域とに跨って設けられている。
【0051】
すなわち、供給マニホールド41は、流路部材21のプレート34から第2マニホールド部材24に亘って形成されている。そして、振動板22に設けられたフィルター22aは、供給マニホールド41内に配置される。供給マニホールド41内のインクは上方から下方に向かってフィルター22aを通過する。また、帰還マニホールド42は、流路部材21のプレート32から第1マニホールド部材23に亘って形成されている。
【0052】
図2に示すように、第2マニホールド部材24の上壁における供給マニホールド41aの搬送方向の下流側(
図2中右側)端部と対向する部分には、供給ポート61が形成されている。また、第2マニホールド部材24の上壁における供給マニホールド41bの搬送方向の上流側(
図2中左側)端部と対向する部分には、供給ポート62が形成されている。供給マニホールド41a、41bは、供給ポート61、62に取り付けられた管(図示せず)を介して、インクタンク90とそれぞれ連通している。インクタンク90と供給ポート61、62との間の流路の途中には、インクタンク90内のインクを供給ポート61、62に向けて送るポンプ91、92がそれぞれ設けられている。
【0053】
第2マニホールド部材24の上壁における帰還マニホールド42aの搬送方向の上流側(
図2中左側)端部と対向する部分には、帰還ポート63が形成されている。また、第2マニホールド部材24の上壁における帰還マニホールド42bの搬送方向の下流側(
図2中右側)端部と対向する部分には、帰還ポート64が形成されている。帰還マニホールド42a、42bは、帰還ポート63、64に取り付けられた管(図示せず)を介して、インクタンク90とそれぞれ連通している。インクタンク90と帰還ポート63、64との間の流路の途中には、帰還ポート63、64からのインクをインクタンク90に送るポンプ93、94がそれぞれ設けられている。
【0054】
ここで、インクジェットヘッド3にインクを初期導入する場合について説明する。まず、ポンプ91、92を駆動することで、インクタンク90に貯留されたインクが供給ポート61、62を介して2つの供給マニホールド41a、41bにそれぞれ流入する。搬送方向の下流側(
図2中右側)の端部に供給ポート61が位置する供給マニホールド41aにおいては、供給ポート61から流入したインクが搬送方向の下流側から上流側(
図2中右側から左側)に向けて流れる。そして、連通流路44を介して搬送方向の下流側に位置する個別流路49から順にインクが流入する。また、個別流路49よりも搬送方向の上流側に位置するダミー流路49Xにも連通流路44を介してインクが流入する。
【0055】
搬送方向の上流側(
図2中左側)の端部に供給ポート62が位置する供給マニホールド41bにおいても同様に、搬送方向の上流側に位置する個別流路49から順にインクが流入する。そして、個別流路49よりも搬送方向の下流側に位置するダミー流路49Xにもインクが流入する。
【0056】
インクを初期導入する際、搬送方向に関して供給ポート61、62から最も離れた個別流路49に関して供給ポート61、62とは反対側に位置する2つのダミー流路49Xにまでインクが流入する。ここで、2つのダミー流路49Xのうち、バイパス流路48に関して個別流路49とは反対側に位置するダミー流路49Xの流路抵抗は、バイパス流路48に関して個別流路49と同じ側に位置するダミー流路49Xの流路抵抗よりも小さい。したがって、バイパス流路48に関して個別流路49とは反対側に位置するダミー流路49Xにまで、確実にインクを導入することができる。よって、インク導入時の廃液を減らすことができる。
【0057】
次に、インクジェットヘッド3とインクタンク90との間でのインクの循環について説明する。まず、ポンプ91を駆動することで、インクタンク90に貯留されたインクが供給ポート61を介して供給マニホールド41aに流入し、ポンプ92を駆動することで、インクタンク90に貯留されたインクが供給ポート62を介して供給マニホールド41bに流入する。供給マニホールド41a内に貯留されたインクの一部は、フィルター22aを通過した後に、複数の連通流路44を介して対応する個別流路49及びダミー流路49Xに供給され、供給マニホールド41b内に貯留されたインクの一部は、フィルター22aを通過した後に、複数の連通流路44を介して対応する個別流路49及びダミー流路49Xに供給される。個別流路49及びダミー流路49Xに供給されたインクの一部は、ディセンダ45、45Xに連通する連通流路46を介して帰還マニホールド42a又は帰還マニホールド42bに流入する。
【0058】
また、供給マニホールド41a内に貯留されたインクの一部は、フィルター22aを通過した後に、バイパス流路48を介して帰還マニホールド42aに流入し、供給マニホールド41b内に貯留されたインクの一部は、フィルター22aを通過した後に、バイパス流路48を介して帰還マニホールド42bに流入する。ポンプ93を駆動することで、帰還マニホールド42a内のインクは、帰還ポート63を介してインクタンク90に戻り、ポンプ94を駆動することで、帰還マニホールド42b内のインクは、帰還ポート64を介してインクタンク90に戻る。
【0059】
ここで、バイパス流路48の抵抗Rbは、供給マニホールド41内における複数の個別流路49とフィルター22aとの間の流路70から複数の連通流路44を介して複数の個別流路49及び複数のダミー流路49Xの各吐出口47、47Xに至る複数の流路の合成抵抗Raよりも小さい。
【0060】
また、連通流路44及び連通流路46のインクの流動方向である走査方向と直交する面における断面積は、個別流路49及びダミー流路49X内の平均圧力が負となる大きさを有する。
【0061】
ここで、供給用のポンプ91、92から供給マニホールド41を挟み、個別流路49又はダミー流路49Xまでの流路抵抗をRi、個別流路49又はダミー流路49Xから帰還マニホールド42を挟み、帰還用のポンプ93、94までの流路抵抗をRo、個別流路49、ダミー流路49Xの流路抵抗をRcとする。さらに、供給用のポンプ91、92の圧力をPi(≧0)、帰還用のポンプ93、94の圧力をPo(≦0)とする。このとき、以下の式1を満たすように、連通流路44及び連通流路46の断面積の大きさ及長さを設計する。
2(RoPi+RiPo)+Rc(Pi+Po)≦0・・・(式1)
【0062】
また、吐出口47、47Xのメニスカスが破壊される時の個別流路49、ダミー流路49X内の平均圧力をPm(≦0)としたとき、連通流路44及び連通流路46の断面積の大きさ及び長さは、上記の式1に加えて、以下の式2も満たすように設計する。
{2(RoPi+RiPo)+Rc(Pi+Po)}/(Ri+Rc+Ro)≧Pm・・・(式2)
【0063】
[第1実施形態の特徴]
以上のように、上述の実施形態のインクジェットヘッド3は、複数の吐出口47をそれぞれ有する複数の個別流路49と、複数の個別流路49に共通して設けられた供給マニホールド41と、供給マニホールド41内に配置されたフィルター22aと、複数の個別流路49に共通して設けられた帰還マニホールド42と、供給マニホールド41内において複数の個別流路49とフィルター22aとの間の流路70に配置されており、複数の個別流路49を通らずに供給マニホールド41と帰還マニホールド42とを連通するバイパス流路48とを備えている。このように、供給マニホールド41と帰還マニホールド42とを連通するバイパス流路48を、複数の個別流路49とフィルター22aとの間に配置することで、比較的流路抵抗が高い個別流路49を介することなくインクを循環させることができる。また、フィルター22aで異物が除去された後のインクがバイパス流路48に流れ込む。つまり、異物が除去されたインクが循環するので、インクを循環させる流路に異物が付着したり残留したりすることで、抵抗が高くなるのを抑制することができる。したがって、インクの循環流量を十分に確保できる。
【0064】
さらに、本実施形態においては、バイパス流路48の抵抗Rbは、供給マニホールド41内における複数の個別流路49とフィルター22aとの間の流路70から複数の連通流路44を介して複数の個別流路49及び複数のダミー流路49Xの各吐出口47、47Xに至る複数の流路の合成抵抗Raよりも小さい。したがって、複数の個別流路49及び複数のダミー流路49Xを介してインクを循環させる場合に比べて、バイパス流路48を介したインクの循環流量を確実に増やすことができる。
【0065】
また、本実施形態においては、バイパス流路48のインクの流動方向である走査方向と直交する面における断面の形状は矩形である。したがって、バイパス流路48の断面形状が円形である場合に比べて、バイパス流路48の減衰係数が大きくなるので、帰還マニホールド42内の共振を十分に低減することができる。よって、共振の影響により、吐出口47からのインクの吐出特性が低下するのを防ぐことができる。
【0066】
加えて、本実施形態においては、供給マニホールド41内における複数の個別流路49及び2つのダミー流路49Xとフィルター22aとの間の流路70は、第1面71及び第1面71と交わる第2面72で画定されており、バイパス流路48は、第1面71と第2面72とが交わる角部に配置されている。したがって、インクがよどみやすい角部にバイパス流路48を設けることで、インクのよどみを抑制することができる。
【0067】
さらに、本実施形態においては、複数の個別流路49のそれぞれと供給マニホールド41とを繋ぐ連通流路44と、複数の個別流路49のそれぞれと帰還マニホールド42とを繋ぐ連通流路46との、インクの流動方向と直交する面における断面の面積は、個別流路49及びダミー流路49X内の平均圧力が負となる大きさを有する。したがって、個別流路49及びダミー流路49X内を負圧にすることで、吐出口47、47Xからインクが漏れるのを防ぐことができる。
【0068】
加えて、本実施形態においては、供給マニホールド41に液体を供給する供給ポート61、62から、搬送方向に関して最も離れた個別流路49に関して供給ポート61、62とは反対側に2つのダミー流路49Xが配置されている。バイパス流路48は、2つのダミー流路49Xのうち個別流路49側に位置するダミー流路49Xに関して、供給ポート61、62とは反対側に配置されている。したがって、バイパス流路48よりも供給ポート61、62側に位置するダミー流路49Xに供給されるインクの流量を十分に確保できる。よって、かかるダミー流路49X内でインクに含まれる粒子の沈降等が生じるのを抑制することができる。よって、ダミー流路49Xの特性が変わることによってダミー流路49Xの近傍の個別流路49に繋がる吐出口47の吐出特性に影響が及ぶのを避けることができる。
【0069】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0070】
図6に示すように、上述の実施形態の第1変形例に係るインクジェットヘッド103は、バイパス流路148a、148bを有している。バイパス流路148a、148bは、いずれも供給マニホールド41と帰還マニホールド42とを連通させるものであり、供給マニホールド41内における複数の個別流路49及び2つのダミー流路49Xとフィルター22aとの間の流路70に配置されている。バイパス流路148a(本発明の「第1バイパス流路」)の流路抵抗は、バイパス流路148b(本発明の「第2バイパス流路」)の流路抵抗よりも低い。
【0071】
バイパス流路148aは、上下方向に延びており、流路70の底面を画定する第1面71における走査方向の内側(個別流路49側)端部に開口している。バイパス流路148aの上下方向と直交する面での断面は真円である。一方、バイパス流路148bは、実施形態のバイパス流路48と同様に、走査方向に延びており、流路70の走査方向に関して外側(個別流路49とは反対側)の側面を画定する第2面72の下端部に開口している。バイパス流路148bの走査方向と直交する面(上下方向に沿う面)での断面は、実施形態のバイパス流路48と同様に、矩形である。
【0072】
ここで、流路70の走査方向に関する長さd1は、高さ方向に関する長さd2に比べて長い。バイパス流路148aは、流路70においてフィルター22aよりも複数の個別流路49寄りに配置されている。バイパス流路148bは、流路70において複数の個別流路49よりもフィルター22a寄りに配置されている。すなわち、バイパス流路148a、148bが、フィルター22aからの距離が異なる。
【0073】
なお、本変形例においては、バイパス流路148aとバイパス流路148bとの搬送方向に関する位置は同じである。しかしながら、バイパス流路148aとバイパス流路148bとの搬送方向に関する位置は異なっていてもよい。
【0074】
本変形例に係る流路部材121は、プレート131、132、133a、133b、134、135の6枚のプレートが、下方からこの順で積層されることで形成されている。プレート131、132、134、135は、実施形態のプレート31、32、34、35と同じ構成を有している。プレート133a、133bは、実施形態のプレート33に対応する。プレート133a、133bは、同じ構成を有しているので、ここではプレート133aの構成について説明する。
【0075】
図7に示すように、プレート133aには、実施形態のプレート33と同様に、ディセンダ45、45Xの一部を構成する貫通孔33aと、帰還マニホールド42の一部を構成する貫通孔33bと、連通流路46の上面を形成する壁部33cとを有している。さらに、プレート133aは、バイパス流路148aの一部を構成する真円の貫通孔33dを有している。貫通孔33dは、上面視でプレート132に形成された帰還マニホールド42の一部を構成する貫通孔32bと重複している。さらに、貫通孔33dは、上面視でプレート134に形成された供給マニホールド41の一部を構成する貫通孔34bと重複している。バイパス流路148aは、プレート133a、133bにそれぞれ形成された真円の貫通孔33dがつなぎ合わされてなる。
【0076】
すなわち、バイパス流路148aは、プレート133a、133bに亘って形成されている。なお、バイパス流路148aは、実施形態のバイパス流路48と同様に、プレート134に形成されている。
【0077】
本変形例においては、供給マニホールド41と帰還マニホールド42とを連通するバイパス流路148a、148bが、複数の個別流路49とフィルター22aとの間に配置されているので、上述の実施形態と同様に、インクの循環流量を十分に確保できる。
【0078】
また、本変形例においては、バイパス流路148aは、流路70においてフィルター22aよりも複数の個別流路49寄りに配置されており、バイパス流路148bは、流路70において複数の個別流路49よりもフィルター22a寄りに配置されている。そして、バイパス流路148aの流路抵抗は、バイパス流路148bの流路抵抗よりも低い。したがって、バイパス流路148bよりも複数の個別流路49に近い位置に配置されているバイパス流路148aは、バイパス流路148bよりも多くのインクを循環させることができる。よって、沈殿などの不具合のないインクを個別流路49に引き込ませることができる。
【0079】
さらに、本変形例においては、バイパス流路148aは、互いに積層されたプレート133a、133bにそれぞれ形成された真円の貫通孔33dがつなぎ合わされてなる。貫通孔33dの形状が真円であるので、プレート133a、133bを積層する際に、積層方向と直交する面内の何れの方向に位置ずれした場合であっても、位置ずれ量が同じであれば、プレート133a、133bにそれぞれ形成された貫通孔33dが上面視で重なる領域の面積は一定である。よって、プレート133a、133bの積層位置ずれの影響を均一化できる。
【0080】
なお、本変形例においては、複数の個別流路49とフィルター22aとの間の流路70に、フィルター22aからの距離が互いに異なる2つのバイパス流路148a、148bが設けられているが、フィルター22aからの距離が互いに異なる3つ以上のバイパス流路を設けてもよい。
【0081】
図8に示すように、上述の実施形態の第2変形例に係るインクジェットヘッド203は、バイパス流路248を備えている。本変形例のバイパス流路248が、上述の実施形態のバイパス流路48と主に異なる点は、バイパス流路248は上下方向に延びており、流路70の底面を画定する第1面71における走査方向の内側(個別流路49側)端部に開口している点である。また、本変形例に係る流路部材221は、プレート231、232、233a、233b、234、235の6枚のプレートが、下方からこの順で積層されることで形成されている。そして、バイパス流路248は、2枚のプレート233a、233bにそれぞれ形成された真円の貫通孔がつなぎ合わされてなる。すなわち、バイパス流路248の上下方向と直交する面での断面は真円である。
【0082】
上述の第1変形例及び第2変形例においては、バイパス流路148a(248)がプレート133a、133b(233a、233b)に亘って形成されているが、これには限定されない。すなわち、流路部材121(221)がプレート133a、133b(233a、233b)のいずれかのみを備えており、バイパス流路148a(248)が1枚のプレートに形成されていてもよい。
【0083】
さらに、第1変形例及び第2変形例においては、バイパス流路148a(248)は、上下方向に延びており、流路70の底面を画定する第1面71における走査方向の内側(個別流路49側)端部に開口している場合について説明したが、これには限定されない。すなわち、例えば、バイパス流路148a(248)は、第1面71における走査方向の外側(個別流路49とは反対側)端部に開口していてもよい。
【0084】
図9に示すように、上述の実施形態の第3変形例に係るインクジェットヘッド303においては、供給マニホールド341及び帰還マニホールド342の走査方向に関する幅が一定ではない。すなわち、供給マニホールド341の走査方向に関する幅は、搬送方向に関して供給ポート361、362が設けられている側の端部が最も大きく、供給ポート361、362から遠くなるにつれて次第に小さくなっている。帰還マニホールド342の走査方向に関する幅は、搬送方向に関して帰還ポート363、364が設けられている側とは反対側の端部が最も大きく、帰還ポート363、364に近くなるにつれて次第に小さくなっている。
【0085】
供給マニホールド341及び帰還マニホールド342の高さは、搬送方向に関して一定である。したがって、供給マニホールド341は、インクの流れ方向と直交する断面(搬送方向に直交する断面)での断面積が、供給ポート361、362から遠くなるにつれて次第に小さくなる。帰還マニホールド342は、インクの流れ方向と直交する断面(搬送方向に直交する断面)での断面積が、帰還ポート363、364に近くなるにつれて次第に小さくなる。
【0086】
本変形例においては、供給マニホールド341及び帰還マニホールド342において、インクの流れ方向の下流側ほど、インクの流れと直交する面での断面積が小さくなっている。したがって、供給マニホールド341及び帰還マニホールド342においてインクのよどみが生じるのを抑制できる。
【0087】
本変形例においては、供給マニホールド341及び帰還マニホールド342は、搬送方向に関して、高さが一定であり且つ走査方向に関する幅が一定ではない。しかしながら、供給マニホールド341及び帰還マニホールド342は、搬送方向に関して、走査方向に関する幅が一定であり且つ高さが一定ではなくてもよい。この場合、供給マニホールド341の高さは、搬送方向に関して供給ポート361、362が設けられている側の端部が最も高く、供給ポート361、362から遠くなるにつれて次第に低くなる。帰還マニホールド342の高さは、搬送方向に関して帰還ポート363、364が設けられている側とは反対側の端部が最も高く、帰還ポート363、364に近くなるにつれて次第に低くなる。
【0088】
図10に示すように、上述の実施形態の第4変形例に係るインクジェットヘッド403においては、供給マニホールド441及び帰還マニホールド442の走査方向に関する幅が一定ではない。すなわち、供給マニホールド441の走査方向に関する幅は、搬送方向に関して供給ポート461、462が設けられている側の端部が最も大きく、供給ポート461、462から遠くなるにつれて段階的に小さくなっている。帰還マニホールド442の走査方向に関する幅は、搬送方向に関して帰還ポート463、464が設けられている側とは反対側の端部が最も大きく、帰還ポート463、464に近くなるにつれて段階的に小さくなっている。
【0089】
図10に示す例では、供給マニホールド441の搬送方向の中央から供給ポート461、462が配置されている側の端部までの部分の幅はL1であり、搬送方向の中央から供給ポート461、462が配置されている側とは反対側の端部までの部分の幅はL2(<L1)である。すなわち、供給マニホールド441は、比較的広い幅L1を有する部分と、比較的狭い幅L2を有する2つの部分からなる。帰還マニホールド442も同様に、搬送方向に関して帰還ポート463、464が配置されている側とは反対側の比較的広い幅L3を有する部分と、帰還ポート463、464が配置されている側の比較的狭い幅L4を有する部分とからなる。供給マニホールド441及び帰還マニホールド442は、3種類以上の幅の異なる部分で構成されていてもよい。
【0090】
供給マニホールド441及び帰還マニホールド442の高さは、搬送方向に関して一定である。したがって、供給マニホールド441は、インクの流れ方向と直交する断面(搬送方向に直交する断面)での断面積が、供給ポート461、462から遠くなるにつれて段階的に小さくなる。帰還マニホールド442は、インクの流れ方向と直交する断面(搬送方向に直交する断面)での断面積が、帰還ポート463、464に近くなるにつれて段階的に小さくなる。
【0091】
本変形例においても、第2変形例と同様に、供給マニホールド441及び帰還マニホールド442においてインクのよどみが生じるのを抑制できる。
【0092】
本変形例においては、供給マニホールド441及び帰還マニホールド442は、搬送方向に関して、高さが一定であり且つ走査方向に関する幅が一定ではない。しかしながら、供給マニホールド441及び帰還マニホールド442は、搬送方向に関して、走査方向に関する幅が一定であり且つ高さが一定ではなくてもよい。この場合、供給マニホールド441の高さは、搬送方向に関して供給ポート461、462が設けられている側の端部が最も高く、供給ポート461、462から遠くなるにつれて段階的に低くなる。帰還マニホールド442の高さは、搬送方向に関して帰還ポート463、464が設けられている側とは反対側の端部が最も高く、帰還ポート463、464に近くなるにつれて段階的に低くなる。
【0093】
また、上述の実施形態においては、バイパス流路48のインクの流動方向である走査方向と直交する面における断面の形状は矩形である場合について説明したが、これには限定されない。すなわち例えば、バイパス流路48の断面形状は、円形であってもよい。
【0094】
さらに、上述の実施形態においては、バイパス流路48が、流路70における底面を画定する第1面71と側面を画定する第2面72とが交わる角部に設けられている場合について説明したが、これには限定されない。バイパス流路48は、流路70の角部以外に設けられていてもよい。
【0095】
加えて、上述の実施形態においては、バイパス流路48の底面は、流路70の底面と同じ高さにある場合について説明したが、これには限定されない。流路70の底部にインクのよどみが生じないようにする観点から、バイパス流路48の底面の高さは、流路70の底面の高さ以下であることが好ましいが、流路70の底面の高さよりも高くてもよい。
【0096】
さらに、上述の実施形態では、複数の個別流路49のそれぞれと供給マニホールド41とを繋ぐ連通流路44と、複数の個別流路49のそれぞれと帰還マニホールド42とを繋ぐ連通流路46との断面積及び長さが、個別流路49及びダミー流路49X内の平均圧力が負となる大きさを有する場合について説明した。しかしながら、連通流路44及び連通流路46の断面積及び長さは、個別流路49及びダミー流路49X内の平均圧力が負となる大きさを有していなくてもよい。
【0097】
また、上述の実施形態においては、バイパス流路48は、供給マニホールド41a及び帰還マニホールド42aに1つ、供給マニホールド41b及び帰還マニホールド42bに1つ設けられている場合について説明したが、これには限定されない。すなわち、各供給マニホールド41及び帰還マニホールド42に複数のバイパス流路48が設けられていてもよい。
【0098】
加えて、上述の実施形態においては、供給ポート61、62から、搬送方向に関して最も離れた個別流路49に関して供給ポート61、62とは反対側に2つのダミー流路49Xが配置されている場合について説明したが、これには限定されない。すなわち、供給ポート61、62から最も離れた個別流路49に関して供給ポート61、62とは反対側に配置されるダミー流路49Xの数は、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。また、ダミー流路49Xは設けられていなくてもよい。
【0099】
さらに、上述の実施形態においては、バイパス流路48が、2つのダミー流路49Xのうち個別流路49側に位置するダミー流路49Xに関して、供給ポート61、62とは反対側に配置されている場合について説明したが、これには限定されない。搬送方向に関してバイパス流路48と個別流路49との間に、少なくとも1つのダミー流路49Xが配置されていることが好ましい。すなわち、バイパス流路48は、供給ポート61、62から搬送方向に関して最も離れたダミー流路49Xに関して供給ポート61、62とは反対側に配置されていてもよい。また、バイパス流路48は、個別流路49とダミー流路49Xとの間に配置されていてもよく、供給ポート61、62から搬送方向に関して最も離れた個別流路49に関して供給ポート61、62と同じ側に配置されていてもよい。
【0100】
また、上述の実施形態においては、上面視でダミー流路49Xに対応する圧力室43Xと重複する領域には、圧電素子25が配置されていない場合について説明したが、圧力室43Xと重複する領域に圧電素子25が配置されていてもよい。この場合、圧力室43Xと重複する領域に配置された圧電素子25の個別電極53の電位は常に一定としてもよいし、圧力室43Xと重複する領域に配置された圧電素子25に繋がる配線を断線させおいてもよい。
【0101】
さらに、上述の実施形態においては、ダミー流路49Xは、個別流路49と同じ構造を有しており、圧力室43X、ディセンダ45X、及び吐出口47Xを有している場合について説明したが、これには限定されない。すなわち、ダミー流路49Xは吐出口47Xを有していなくてもよい。
【0102】
加えて、上述の実施形態においては、個別流路49及びダミー流路49Xのディセンダ45、45Xが、連通路46を介して帰還マニホールド42とそれぞれ連通している場合について説明したが、これには限定されない。供給ポート61、62から搬送方向に関して最も離れたダミー流路49Xについては、流路内のインクを循環させる必要性が低いので、連通路46を介して帰還マニホールド42と連通していなくてもよい。また、全ての個別流路49及びダミー流路49Xが、連通路46を介して帰還マニホールド42と連通していなくてもよい。
【0103】
また、上述の実施形態においては、供給マニホールド41内にフィルター22aが配置されており、バイパス流路48が、供給マニホールド41内における複数の個別流路49とフィルター22aとの間に配置されている場合について説明したが、これには限定されない。すなわち、フィルター22aは、帰還マニホールド42内に配置されていてもよい。この場合、バイパス流路48は、帰還マニホールド42内における複数の個別流路49とフィルター22aとの間に配置される。
【0104】
アクチュエータは、圧電素子を用いたピエゾ方式のものに限定されず、その他の方式(例えば、発熱素子を用いたサーマル方式、静電力を用いた静電方式等)のものであってもよい。
【0105】
プリンタ1の記録形式は、シリアル式に限定されず、記録用紙Pの幅方向に長尺であり、且つ、位置が固定されたヘッドのノズルからインクを吐出するライン式であってもよい。
【0106】
ノズルから吐出される液体は、インクに限定されず、任意の液体(例えば、インク中の成分を凝集又は析出させる処理液等)であってよい。また、吐出対象は、記録用紙Pに限定されず、例えば布、基板等であってもよい。
【0107】
本発明は、プリンタに限定されず、ファクシミリ、コピー機、複合機等にも適用可能である。また、本発明は、画像の記録以外の用途で使用される液体吐出装置(例えば、基板に導電性の液体を吐出して導電パターンを形成する液体吐出装置)にも適用可能である。
【符号の説明】
【0108】
3 インクジェットヘッド(液体吐出ヘッド)
22a フィルター
41、41a、41b 供給マニホールド(第1マニホールド)
42、42a、42b 帰還マニホールド(第2マニホールド)
48 バイパス流路
49 個別流路