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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】タイヤ状態判定システム
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/02 20060101AFI20230829BHJP
   B60C 19/00 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
G01M17/02
B60C19/00 H
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019098822
(22)【出願日】2019-05-27
(65)【公開番号】P2020193849
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】掛樋 聡美
【審査官】亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-230690(JP,A)
【文献】特開2004-151910(JP,A)
【文献】特開2005-138702(JP,A)
【文献】国際公開第01/098123(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0284006(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0166215(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 17/00 -17/10
B60C 19/00 -19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象車両が走行する路面の状況に影響を与える外乱要因に関する外部情報として、前記対象車両の現在位置に対応する気象情報、及び舗装道路か未舗装道路かを示す道路情報を取得する外部情報取得手段と、
前記対象車両の走行状態に関する走行情報に基づいて当該車両のタイヤと前記路面との摩擦係数を推定する摩擦係数推定手段と、
前記気象情報及び前記道路情報に応じた前記タイヤの滑りやすさを示す基準値と前記摩擦係数推定手段で推定された摩擦係数とに基づいて前記対象車両のタイヤの滑りやすさを判定するタイヤ状態判定手段と、を備えた、
タイヤ状態判定システム。
【請求項2】
前記タイヤ状態判定手段は、前記対象車両が走行する位置情報が示す位置を走行した複数の車両のタイヤと前記路面との摩擦係数に基づいてタイヤの状態を評価する、
請求項1に記載のタイヤ状態判定システム。
【請求項3】
前記タイヤ状態判定手段は、前記対象車両と同一車種である複数の車両のタイヤと前記路面との摩擦係数に基づいてタイヤの状態を評価する、
請求項1に記載のタイヤ状態判定システム。
【請求項4】
前記対象車両は、前記複数の車両から走行情報を収集する外部装置との通信が可能であり、
前記外部装置は、前記タイヤ状態判定手段を有し、前記タイヤ状態判定手段の判定結果を前記対象車両に送信する、
請求項1乃至3の何れか1項に記載のタイヤ状態判定システム。
【請求項5】
前記対象車両が前記タイヤ状態判定手段を有している、
請求項1乃至3の何れか1項に記載のタイヤ状態判定システム。
【請求項6】
前記タイヤ状態判定手段の判定結果を前記対象車両の運転者に知らせる報知手段を備えた、
請求項1乃至の何れか1項に記載のタイヤ状態判定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ状態判定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のタイヤの滑りやすさを判定するタイヤ状態判定システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載されたタイヤ状態判定システムは、走行距離を累積することによって走行距離を計測する距離計測手段と、タイヤが回転した回転数を累積することによってタイヤ毎の累積回転数を計測する累積回転数計測手段と、累積走行距離と累積回転数とからタイヤ毎の摩耗量を検出する摩耗量検出手段と、タイヤ毎の摩耗量に基づいてタイヤに必要なメンテナンスの有無を運転者に出力する出力手段と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-051704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のタイヤ状態判定システムでは、車両の走行距離とタイヤの累積回転数に基づいてタイヤの摩耗量を検出しているので、例えば雨や積雪等の外部要因によって路面の状況が変化した場合には、タイヤの滑りやすさを正確に把握することが難しい場合がある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、タイヤの滑りやすさを正確に把握することができるタイヤ状態判定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の目的を達成するため、対象車両が走行する路面の状況に影響を与える外乱要因に関する外部情報として、前記対象車両の現在位置に対応する気象情報、及び舗装道路か未舗装道路かを示す道路情報を取得する外部情報取得手段と、前記対象車両の走行状態に関する走行情報に基づいて当該車両のタイヤと前記路面との摩擦係数を推定する摩擦係数推定手段と、前記気象情報及び前記道路情報に応じた前記タイヤの滑りやすさを示す基準値と前記摩擦係数推定手段で推定された摩擦係数とに基づいて前記対象車両のタイヤの滑りやすさを判定するタイヤ状態判定手段と、を備えた、タイヤ状態判定システムを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るタイヤ状態判定システムによれば、タイヤの滑りやすさを正確に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施の形態に係るタイヤ状態判定システムの全体構成の一例を示す構成図である。
図2】本実施の形態に係る自車両の構成例を示すブロック図である。
図3】本実施の形態に係る情報収集サーバの構成例を示すブロック図である。
図4】(a)は、路面状況と摩擦係数との関係を示す基準マップの一例であり、(b)はタイヤ状況係数と摩擦係数との関係を示す統計マップの一例である。
図5】情報収集サーバが収集する収集データの一例である。
図6】自車両及び情報収集サーバの制御部の動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施の形態]
本発明の実施の形態について、図1乃至図6を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する上での好適な具体例として示すものであり、技術的に好ましい種々の技術的事項を具体的に例示している部分もあるが、本発明の技術的範囲は、この具体的態様に限定されるものではない。
【0011】
図1は、本発明の実施の形態に係るタイヤ状態判定システム全体の概略の構成例を示す構成図である。
【0012】
図1に示すように、タイヤ状態判定システム100は、タイヤ状態の判定対象となる自車両1と、複数の他車両5と、無線通信ネットワーク90を介して自車両1及び複数の他車両5と通信可能に接続された外部装置9と、で構成されている。
【0013】
なお本実施の形態では、説明の便宜上、車両について自車両1と複数の他車両5とを区別しているが、複数の他車両5がタイヤ状態の判定対象であってもよく、自車両1と複数の他車両5の車種、年式、型式等はそれぞれ任意であり特に限定されるものではない。自車両1並びに複数の他車両5が本発明における「対象車両」に相当する。
【0014】
外部装置9は、自車両1及び複数の他車両5が発信する車両情報を収集する情報収集サーバ6と、気象情報サーバ81と、道路情報サーバ82と、GPS83とで構成されている。
【0015】
気象情報サーバ81は、各地の気象台などから取得した日本全国の気象情報を提供するサーバである。道路情報サーバ82は、車両が走行する現在位置に応じた道路状態(例えば舗装道路等)を示す情報を提供するサーバである。気象情報サーバ81が提供する気象情報、及び道路情報サーバ82が提供する道路情報は、車両が走行する路面の状況に影響を与える外乱要因の一例である。
【0016】
図2は、自車両1の構成を示すブロック図である。図3は、外部装置9の情報収集サーバ6の構成を示すブロック図である。図2に示すように、自車両1は、複数の他車両5並びに外部装置9と情報の送受信を行う通信部21と、自車両1を制御する制御部3と、制御部3から出力された情報を表示する表示部22と、自車両1の走行状態に関する情報を検出する走行情報検出部23と、GPS83からの衛星信号に基づいて自車両1の現在位置を検出する位置検出部24と、ROMやRAM等の記憶素子からなる記憶部4と、を有している。なお、複数の他車両5の構成についても自車両1と同様である。
【0017】
通信部21は、自車両1以外の通信対象と無線通信ネットワーク90を介して通信することで情報の送受信を行う電子制御装置である。通信部21は、例えばDCM(Data Communication Module、)等の通信モジュールで構成される。
【0018】
表示部22は、制御部3から出力された情報を表示する。表示部22は、例えば、液晶、有機ELなどのディスプレイであり、カーナビゲーションシステムの表示部として機能してもよく、車両のコンソールパネルに設けられてもよい。
【0019】
走行情報検出部23は、車両速度を取得する車速センサ、操舵角センサ等の自車両1の走行状態に係るパラメータを取得する複数のセンサで構成されている。
【0020】
位置検出部24は、自車両1の現在位置を示す位置情報を取得するものであり、衛星測位システムを利用して自車両1の現在の位置情報(経度、緯度等)を取得するGPS受信器である。
【0021】
制御部3は、CPU(演算処理装置)やその周辺回路から構成されている。制御部3は、記憶部4に記憶されたプログラム41を実行することにより、後述する摩擦係数推定手段33等の各手段を機能させる。
【0022】
制御部3は、外部情報取得手段31と、位置情報取得手段32と、摩擦係数推定手段33と、タイヤ状況係数算出手段34と、送信手段35と、統計マップ取得手段36と、タイヤ状態評価手段37と、報知手段38と、を有している。
【0023】
外部情報取得手段31は、外部装置9の気象情報サーバ81が提供する気象情報に基づいて路面状況を推定する。例えば、気象情報が晴れの場合は、外部情報取得手段31は路面状況がドライであると推定し、気象情報が雨の場合は路面状況がウェットであると推定する。また外部情報取得手段31は、道路情報サーバ82が提供する道路情報に基づいて道路状態(舗装道路あるいは未舗装道路)を示す情報を取得する。位置情報取得手段32は、位置検出部24で生成された位置情報を取得する。
【0024】
摩擦係数推定手段33は、走行情報検出部23で検出された車両の走行状態に関する走行情報に基づいて当該車両のタイヤと路面との摩擦係数を推定する。この摩擦係数の推定は、例えば定常走行状態における左右前輪の平均回転速度と左右後輪の平均回転速度との差に基づいて行うことができる。
【0025】
タイヤ状況係数算出手段34は、摩擦係数推定手段33によって推定された推定摩擦係数と、路面状況に応じたタイヤの滑りやすさを示す基準摩擦係数との比較によってタイヤ状況係数を算出する。
【0026】
基準摩擦係数は、例えば予め記憶部4に記憶された基準マップ42(図4(a)に示す)を参照することによって得ることができる。基準マップ42の基準摩擦係数は、路面状況(ドライ、ウェット、スノウ)ごとに設定された摩擦係数であり、例えば工場出荷時の性能評価により定められる値である。タイヤ状況係数算出手段34は、外部情報取得手段31で決定した路面状況に基づいて基準マップ42から基準摩擦係数を取得する。なお、基準摩擦係数は、道路状態ごとに設定されていてもよい。これにより、より詳細な路面の状況に合わせて基準摩擦係数を得ることが可能である。
【0027】
ここで、タイヤ状況係数とは、タイヤの状態(タイヤの摩耗、空気圧等)が原因で車両の滑りやすさに影響を与える指標値であり、例えば推定摩擦係数に対する基準摩擦係数の比として得ることができる(タイヤ状況係数=推定摩擦係数/基準摩擦係数)。つまり、タイヤ状況係数の値が大きいほど、走行する車両のタイヤの状態が滑りにくい状態であることを意味する。
【0028】
送信手段35は、タイヤの滑りやすさを示す情報を通信部21によって情報収集サーバ6に送信する。本実施の形態では、送信手段35は、摩擦係数推定手段33で推定された摩擦係数、タイヤ状況係数算出手段34で算出されたタイヤ状況係数、自車両1に関する車両情報(車両ID、車種、車速等)、位置情報、道路状態、路面状況に基づいて送信データを生成し、当該送信データを外部装置9の情報収集サーバ6に送信する。この送信データは、情報収集サーバ6が収集する収集データ60の一部に相当する。
【0029】
情報収集サーバ6は、送信手段35によって送信された送信データと同様のデータを複数の他車両5からも受信し、この受信データを収集データ60として収集する。図5は、収集データ60の一例を示す表である。図5に示すように、収集データ60は、車両を識別するための車両IDと、車両の車種に関する情報と、車両が走行する現在位置を示す位置情報と、当該位置情報が示す位置における道路状態及び路面状況、車両ごとに算出された摩擦係数及びタイヤ状況係数と、を項目として有している。なお、収集データ60の項目はあくまで一例であり、これに限定されものではなく、例えば測定日時、走行距離等の情報が項目として設定されていてもよい。
【0030】
制御部3の統計マップ取得手段36は、後述する情報収集サーバ6の統計マップ生成手段623によって生成された統計マップ632を取得する。図4(b)は、統計マップ632の一例を示す表である。統計マップ632には、タイヤ状況係数と摩擦係数とが関連付けられた標準値Oと、第1及び第2閾値S,Sとが設定されている。なお、統計マップ632は、車両のタイヤの滑りやすさを評価できるものであればよいので、これに限定されるものではなく、例えばスリップ率とタイヤ状況係数とが関係付けられたものでもよく、車速とタイヤ状況係数とが関係付けられたデータでもよい。
【0031】
標準値Oは、例えば工場出荷時における車両の性能評価に基づいて予め定められた値である。第1及び第2閾値S,Sは、例えば収集データ60のタイヤ状況係数及び摩擦係数をマッピングし、マッピングされたデータに対して統計的手法を用いることにより決定される値である。第1及び第2閾値S,Sは、標準値Oから所定の値だけ乖離している。第1及び第2閾値S,Sは、タイヤ状況係数に対する摩擦係数の値が標準値Oよりも小さく、第2閾値Sの方が第1閾値Sよりも標準値Oから乖離している。
【0032】
ここで、統計マップ632において、摩擦係数が第2閾値Sよりも小さい領域を第1エリアAとし、第1閾値S及び第2閾値Sに囲まれる領域を第2エリアBとし、第1閾値S及び標準値Oに囲まれる領域を第3エリアCとし、摩擦係数が標準値Oよりも大きい領域を第4エリアDとする。例えば、タイヤ状況係数に対応する摩擦係数の値が第1エリアA内に存在する場合には、標準値Oに対して摩擦係数が小さいため車両が滑りやすい状態にあることを意味し、第4エリアD内に存在する場合には、標準値Oに対して摩擦係数が大きいため車両が滑りにくい状態にあることを意味する。
【0033】
タイヤ状態評価手段37は、取得した統計マップ632を参照することにより自車両1のタイヤの滑りやすさを示す評価指標であるランク情報を決定する。より詳細には、タイヤ状態評価手段37は、摩擦係数推定手段33で推定した推定摩擦係数、及びタイヤ状況係数算出手段34で算出したタイヤ状況係数を統計マップ632にマッピングし、マッピングされたデータが存在する統計マップ632上のエリアに基づいてランク情報を決定する。
【0034】
このランク情報は、例えば、マッピングされたデータが第1エリアAに存在する場合には、ランク情報にランクA(スリップレベル:大)が設定され、対象データが第2エリアBに存在している場合にはランク情報にランクB(スリップレベル:中)が設定され、対象データが第3エリアCに存在している場合にはランクC(スリップレベル:小)が設定される。このように、タイヤ状態評価手段37は、複数の他車両5に関する収集データ60によって生成された統計マップ632に基づいて自車両1の滑りやすさを判定するので、自車両1のタイヤの滑りやすさを客観的に評価することが可能である。
【0035】
なお、タイヤ状況係数算出手段34及びタイヤ状態評価手段37は、外部装置9の情報収集サーバ6で実行されてもよい。タイヤ状況係数算出手段34及びタイヤ状態評価手段37が、本発明における「タイヤ状態判定手段」に相当する。
【0036】
報知手段38は、タイヤ状態評価手段37で得られた判定結果としてのランク情報を運転者に対して報知する。報知手段38は、タイヤが滑りやすい旨の注意情報として例えばタイヤ交換や、車両の劣化等を示すメンテナンス情報を表示部22に表示することで運転者に報知する。これにより、運転者に安全な運転を促すことができる。
【0037】
図3に示すように、情報収集サーバ6は、自車両1及び複数の他車両5との間で情報の送受信を行う通信部61と、通信部61を介して収集された情報に基づいて演算処理を実行する制御部62と、制御部62が実行するプログラム631が記憶されている記憶部63と、有している。
【0038】
情報収集サーバ6の制御部62は、通信部61を介して収集データ60を受信する受信手段621と、収集データ60から所定の抽出条件でデータを抽出する収集データ抽出手段622と、収集データ抽出手段622によって抽出された抽出データに基づいて統計マップ632を生成する統計マップ生成手段623と、生成された統計マップ632を記憶部63に記憶する記憶手段624と、統計マップ632を車両に送信する送信手段625と、を有している。
【0039】
収集データ抽出手段622は、自車両1と車種及び位置情報が同一であり、かつ、路面状況が同一であるデータを収集データ60から抽出する。なお、抽出条件はこれに限定されず、例えば収集データ抽出手段622は、自車両1と同一車種のみのデータを抽出してもよく、自車両1と同一位置のみのデータを抽出してもよい。
【0040】
統計マップ生成手段623は、収集データ抽出手段622によって抽出された複数の抽出データのタイヤ状況係数及び当該タイヤ状況係数に基づいて統計マップ632を生成する。
【0041】
送信手段625は、統計マップ632を記憶部63から読み出して、読み出した統計マップ632に基づいて生成した送信データを通信部61によって自車両1へ送信する。
【0042】
次に、本実施の形態に係るタイヤ状態判定システム100の処理内容について図6を参照して説明する。図6は、自車両1の制御部3並びに情報収集サーバ6の制御部62の処理の一例を示すフローチャートである。
【0043】
自車両1の制御部3は、先ず、位置検出部24が生成した自車両1の現在位置を示す位置情報を取得し(ステップS10)、外部装置9の気象情報サーバ81から取得した気象情報に基づいて路面状況(ドライ、ウェット、スノウ)を推定すると共に、道路情報サーバ82から取得した道路情報(舗装、未舗装)に基づいて道路状態を推定する(ステップS11)。
【0044】
次に、自車両1の制御部3は走行情報検出部23から取得した自車両1の走行状態を示す走行情報に基づいてタイヤと路面との路面摩擦係数を推定し(ステップS12)、推定された推定摩擦係数と記憶部4に記憶された基準マップ42の基準摩擦係数とに基づいてタイヤ状況係数を算出する(ステップS13)。制御部3は、上記で算出された推定摩擦係数及びタイヤ状況係数並びに自車両1に関する車両情報(車両ID、車種、車速等)を外部装置9の情報収集サーバ6に送信する(ステップS14)。
【0045】
情報収集サーバ6の制御部62は、自車両1及び複数の他車両5から送信される収集データ60を受信して(ステップS19)、収集データ60に基づいて統計マップ632を生成する(ステップS20)。制御部62は、生成した統計マップ632を記憶部63に記憶して(ステップS21)、統計マップ632を車両側へ送信する(ステップS22)。これにより、情報収集サーバ6の処理を終了する。
【0046】
制御部3は、情報収集サーバ6から送信された統計マップ632を取得し(ステップS15)、取得した統計マップ632を参照して自車両1のタイヤの状態の滑りやすさの評価指標であるランク情報を得る(ステップS16)。ランク情報が前述したランクA又はランクBである場合には(ステップS17)、運転者にタイヤが滑りやすい状態である旨の注意情報を報知する(ステップS18)。なお、ステップS17の判定条件はこれに限定されず、例えばランク情報がAの場合にのみ注意情報を報知するようにしてもよく、ランクAの場合とランクBの場合で異なる内容の注意情報を報知するようにしてもよい。一方、ランク情報がランクA又はランクBではない場合は、そのまま処理を終了する。
【0047】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明した実施の形態によれば、路面状況に応じたタイヤの滑りやすさを示す基準摩擦係数と、摩擦係数推定手段で推定された摩擦係数との比較によって自車両1のタイヤの滑りやすさを示すタイヤ状況係数に基づいてタイヤの滑りやすさを判定するので、外部要因を考慮したタイヤの滑りやすさを把握することが可能である。これにより、タイヤの滑りやすさを正確に把握することができる。
【0048】
また本実施の形態によれば、自車両1と同一車種かつ同一位置を走行した複数の他車両5のタイヤ状況係数及び摩擦係数によって生成された統計マップ632に基づいてタイヤの滑りやすさをランク付けするランク情報を運転者に報知するので、タイヤの滑りやすさを示す客観的な情報を運転者に与えることができる。これにより、運転者に安全な運転を促すことができ、事故を未然に防止することが可能である。
【0049】
(付記)
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、これらの実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0050】
上記の実施の形態では、自車両1及び複数の他車両5のうち自車両1の制御部3についてのみ説明したが、複数の他車両5も同様の構成の制御部を備え、タイヤの状態を判定することが可能である。この場合に、複数の他車両5のうち何れかの車両の滑りやすさがランクAにランク付けされていた場合には、自車両1がこの情報を検知するように構成してもよい。これにより、周囲の滑りやすい危険な車両の存在を自車両1の運転者に報知することで、未然に事故を防止することが可能である。
【0051】
また上記実施の形態では、統計マップ632に設定された閾値が第1及び第2閾値S,Sの2つの閾値であったが、閾値の数についてはこれに限定されず、例えば閾値は3つでもよく6つでもよい。
【0052】
また上記の実施の形態では、自車両1の制御部3がタイヤ状態評価手段37によってランク情報を決定していたが、情報収集サーバ6の制御部62がランク情報を決定するようにしてもよい。この場合には、情報収集サーバ6の制御部62の送信手段625は、ランク情報のみを自車両1に送信し、自車両1の制御部3における報知手段38は、受信したランク情報に基づいて運転者に注意情報を報知する。
【0053】
また本発明においては外部装置9の情報収集サーバ6は必須の構成要素ではない。つまり、上記実施の形態では、外部装置9の情報収集サーバ6が収集データ60に基づいて統計マップ632を生成していたが、自車両1側で複数の他車両5から収集データ60を受信し、統計マップ632を生成するようにしてもよい。
【0054】
また上記の実施例では、制御部3は複数のセンサで構成される走行情報検出部23から走行情報を取得しているが、自車両1が有する図示しない他の制御装置から車載ネットワークを介して、走行状態に係るパラメータを取得するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1…自車両 3…制御部
4…記憶部 5…他車両
6…情報収集サーバ 9…外部装置
33…摩擦係数推定手段 34…タイヤ状況係数算出手段
37…タイヤ状態評価手段 38…報知手段
81…気象情報サーバ 82…道路情報サーバ
100…タイヤ状態判定システム 632…統計マップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6