IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社大林組の特許一覧

特許7338266耐火被覆材吹付方法及び耐火被覆材吹付システム
<>
  • 特許-耐火被覆材吹付方法及び耐火被覆材吹付システム 図1
  • 特許-耐火被覆材吹付方法及び耐火被覆材吹付システム 図2
  • 特許-耐火被覆材吹付方法及び耐火被覆材吹付システム 図3
  • 特許-耐火被覆材吹付方法及び耐火被覆材吹付システム 図4
  • 特許-耐火被覆材吹付方法及び耐火被覆材吹付システム 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】耐火被覆材吹付方法及び耐火被覆材吹付システム
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/94 20060101AFI20230829BHJP
   E04G 21/02 20060101ALI20230829BHJP
   E21D 11/38 20060101ALI20230829BHJP
   E21D 11/10 20060101ALI20230829BHJP
   B05B 7/24 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
E04B1/94 E
E04G21/02 103B
E21D11/38 B
E21D11/10 D
B05B7/24
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019119704
(22)【出願日】2019-06-27
(65)【公開番号】P2021004525
(43)【公開日】2021-01-14
【審査請求日】2022-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】瀬川 紘史
(72)【発明者】
【氏名】池田 雄一
(72)【発明者】
【氏名】中村 允哉
(72)【発明者】
【氏名】高橋 晃一郎
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-141143(JP,A)
【文献】特開2001-159239(JP,A)
【文献】実開平06-070849(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62 - 1/99
E21D 11/00 - 19/06
E21D 23/00 - 23/26
E04G 21/00 - 21/10
B05B 1/00 - 3/18
B05B 7/00 - 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐火被覆綿材と、前記耐火被覆綿材を結合する結合材と、前記結合材を急結する急結剤とを含む耐火被覆材を供給管を介して耐火被覆対象物に向かって吹き付ける耐火被覆材吹付方法であって、
前記急結剤と前記耐火被覆綿材とを、前記供給管の前方で混合して前方混合物とし、前記前方混合物を前記供給管の内部に圧送し、前記前方混合物と前記結合材とを前記供給管の後方で混合して後方混合物として、前記耐火被覆対象物に向かって前記耐火被覆材を吹き付ける
耐火被覆材吹付方法。
【請求項2】
前記後方混合物及び霧状の水を前記耐火被覆対象物に向かって吹き付ける
請求項1に記載の耐火被覆材吹付方法。
【請求項3】
粉状の前記急結剤と前記耐火被覆綿材とを混合して、前記前方混合物とする
請求項1又は2に記載の耐火被覆材吹付方法。
【請求項4】
液状の前記急結剤と前記耐火被覆綿材とを混合して、前記前方混合物とする
請求項1又は2に記載の耐火被覆材吹付方法。
【請求項5】
耐火被覆綿材と、前記耐火被覆綿材を結合する結合材と、前記結合材を急結する急結剤とを含む耐火被覆材を耐火被覆対象物に向かって吹き付ける耐火被覆材吹付システムであって、
前記急結剤と前記耐火被覆綿材とを混合して前方混合物とする前方混合部と、
前記前方混合物を圧送する圧送部と、
前記前方混合物を前記耐火被覆対象物に向かって供給する供給管と、
前記前方混合物と前記結合材とを前記供給管の後方で混合して後方混合物とする後方混合部と、を有する
耐火被覆材吹付システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐火被覆材吹付方法及び耐火被覆材吹付システムに関する。
【背景技術】
【0002】
柱、梁及び壁等の構造部材に対する耐火被覆として、ロックウール等の耐火被覆材を吹き付ける吹付工法が行われている。この吹付工法には、乾式工法や半乾式工法がある。乾式工法では、ロックウールとセメントとを混合した混合物を、吹付ノズルに空気搬送し、ノズル先で、混合物と別途搬送した水とを混合して柱等の耐火被覆対象物に吹き付ける。また、半乾式工法では、セメントと水とが予め混合されたセメントスラリーを吹付ノズルに搬送し、ノズル先で、セメントスラリーと別途搬送したロックウールを混合して耐火被覆対象物に吹き付ける。
【0003】
また、耐火被覆材吹付工法において、耐火被覆材に急結剤を混合する工法も提案されている(例えば、特許文献1参照)。急結剤は、コンクリートの凝結時間を短くし、早期強度を高めるためのものである。この工法では、ロックウール、セメントスラリー、及び急結剤を含む水をそれぞれ異なるノズルから耐火被覆対象物に向かって吹き付ける。吹き付けは、特殊スプレガンを用いて行われる。特殊スプレガンは、セメントスラリーを吹き付けるノズルとロックウールを吐出するノズルとが同心円状に配置されている。また、特殊スプレガンの出口周辺に空気水ノズルを備えている。急結剤を含む水は、空気水ノズルに形成されたノズルから吹き付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭53-69402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記工法では、耐火被覆対象物に吹き付ける段階で、ロックウール、セメントスラリー及び急結剤を混合するため、急結剤の分布にムラが生じる可能性がある。このため、急結剤による急結効果を均等に発揮できないおそれがある。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、耐火被覆材において急結剤による急結効果を均等に発揮する耐火被覆材吹付方法及び耐火被覆材吹付システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する耐火被覆材吹付方法は、耐火被覆綿材と、前記耐火被覆綿材を結合する結合材と、前記結合材を急結する急結剤とを含む耐火被覆材を供給管を介して耐火被覆対象物に向かって吹き付ける耐火被覆材吹付方法であって、前記急結剤と、前記耐火被覆綿材及び前記結合材の一方とを、前記供給管の前方で混合して前方混合物とし、前記前方混合物を前記供給管の内部に圧送し、前記前方混合物と、前記耐火被覆綿材及び前記結合材の他方とを前記供給管の後方で混合して後方混合物として、前記耐火被覆対象物に向かって前記耐火被覆材を吹き付ける。
【0008】
上記課題を解決する耐火被覆材吹付システムは、耐火被覆綿材と、前記耐火被覆綿材を結合する結合材と、前記結合材を急結する急結剤とを含む耐火被覆材を耐火被覆対象物に向かって吹き付ける耐火被覆材吹付システムであって、前記急結剤と、前記耐火被覆綿材及び前記結合材の一方とを混合して前方混合物とする前方混合部と、前記前方混合物を圧送する圧送部と、前記前方混合物を前記耐火被覆対象物に向かって供給する供給管と、前記前方混合物と、前記耐火被覆綿材及び前記結合材の他方とを前記供給管の後方で混合して後方混合物とする後方混合部と、を有する。
【0009】
上記方法及び構成によれば、急結剤と、耐火被覆綿材及び結合材の一方とを前方混合物として予め混合した後、前方混合物と耐火被覆綿材及び結合材の一方とを混合して後方混合物とするため、耐火被覆材において急結剤が大きな偏りなく混合される。このため、耐火被覆材の急結効果を均等に発揮させることができる。
【0010】
上記耐火被覆材吹付方法について、前記後方混合物及び霧状の水を前記耐火被覆対象物に向かって吹き付けることが好ましい。
上記構成によれば、耐火被覆対象物に吹き付けられる際に後方混合物に霧状の水を加えるので、吹き付け時における粉塵の飛散を抑制することができる。
【0011】
上記耐火被覆材吹付方法について、粉状の前記急結剤と前記耐火被覆綿材とを混合して、前方混合物とすることが好ましい。
粉状の急結剤及び耐火被覆綿材を含む前方混合物は軽量であるため、前方混合物を圧送するポンプやブロア等において、大きな動力を必要としない。このため、比較的簡単な設備で前方混合物を供給管に供給することができる。
【0012】
上記耐火被覆材吹付方法について、液状の前記急結剤と前記耐火被覆綿材とを混合して、前方混合物とすることが好ましい。
液状の急結剤は耐火被覆綿材に浸透するため、供給管から前方混合物を吐出した際に、周囲への前方混合物の飛散を抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、耐火被覆材において急結剤による急結効果を均等に発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態における耐火被覆材吹付システムの概略構成図。
図2】第2実施形態における耐火被覆材吹付システムの概略構成図。
図3】同実施形態における耐火被覆材吹付システムを構成するノズル本体を説明する図であって、(a)はノズル本体の要部の斜視図、(b)は吐出方向側からみた側面図。
図4】第3実施形態における耐火被覆材吹付システムの概略構成図。
図5】第4実施形態における耐火被覆材吹付システムの概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
耐火被覆材吹付方法及び耐火被覆材吹付システムの第1実施形態について説明する。
図1は、耐火被覆材吹付システム11の構成図である。耐火被覆材吹付システム11は、ノズル本体31と、ノズル本体31にセメントスラリーを供給するセメントスラリー供給機構12と、ノズル本体31にロックウールを供給するロックウール供給機構13とを備える。なお、セメントスラリーは結合材に対応し、ロックウールは耐火被覆綿材に対応する。ノズル本体31は、供給管に対応する。
【0016】
セメントスラリー供給機構12は、スラリー槽23及びスラリー用ポンプ24を備える。スラリー槽23は、投入されたセメント及び水等を撹拌機23A等により混合して、セメントスラリーを生成する。例えば、スラリー槽23として2槽式のミキサーを用いることができる。スラリー槽23は、スラリー搬送管23Eを介して、セメントスラリーをスラリー用ポンプ24に送出する。スラリー用ポンプ24は、スラリー管16を介して、スラリー槽23から供給されたセメントスラリーをノズル本体31に圧送する。
【0017】
セメントスラリーの組成は特に限定されないが、例えばセメントの濃度が33.3%のものを好適に用いることができる。スラリー用ポンプ24の性能も特に限定されないが、最高圧力3.5Mpaで、給水量3.5リットル/分のポンプを好適に用いることができる。
【0018】
ロックウール供給機構13は、解綿装置21を備えている。解綿装置21は、エアーブロア21Aと、解綿機21Bとを備えている。解綿機21Bは、解綿クシ部材21C、スクリューコンベア21D等を備えている。なお、解綿クシ部材21C及びスクリューコンベア21Dは複数備えられていてもよい。この解綿機21Bには、ロックウールと急結剤とが投入される。エアーブロア21Aは、解綿装置21が解繊及び破砕したロックウールを、ロックウール供給管18を介して、ノズル本体31に供給する。なお、解綿装置21は、前方混合部に対応し、エアーブロア21Aは圧送部に対応する。
【0019】
ロックウールは、玄武岩、溶融スラグ等を高温で溶融し繊維化した人造鉱物繊維である。
急結剤は、セメントの含有物質との反応等により、耐火被覆対象物100に吹き付けられたセメントスラリーの凝結を促進し、吹き付けられた後の初期の強度を高めるためのものである。急結剤は、セメント鉱物系急結剤と、無機塩系急結剤とのいずれも用いることができる。セメント鉱物系急結剤は、自己硬化性を有し、それ自身の水和反応及びセメントとの初期反応により初期強度を発現させる。また、無機塩系急結剤は、セメントとの反応のみで初期強度を発現させる。セメント鉱物系急結剤としては、カルシウムアルミネート系、カルシウムサルホアルミネート系、カルシウムナトリウムアルミネート系等が挙げられる。無機塩系急結剤としては、アルミン酸ナトリウム等のアルミン酸アルカリ塩、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム等が挙げられる。また、粉状の急結剤及び液状の急結剤のいずれも用いることができる。
【0020】
ノズル本体31は、急結剤が付着したロックウールRを空気とともに吹き付ける。また、ノズル本体31は、スラリー管16に接続するスラリー用ノズル16Aと、スラリー用ノズル16Aとスラリー管16との間に設けられたバルブ16Cとを備えている。スラリー用ノズル16Aは、屈曲されており、ノズル本体31の中心軸及びスラリー用ノズル16Aの中心軸が一致するように、ノズル本体31の出口31A側からみて同心円状に配置されている。バルブ16Cは、ハンドル等の操作部(図示略)の操作により開閉して、セメントスラリーをスラリー管16からスラリー用ノズル16Aに供給したり、セメントスラリーの供給を停止したりする。また、スラリー用ノズル16Aの噴出口16Bは、ノズル本体31の出口31Aよりも上流側に配置される。噴出口16Bは、後方混合部に対応する。
【0021】
(作用)
次に、本実施形態における耐火被覆材吹付方法の作用について説明する。まず、解綿装置21を稼動させ、解綿装置21にロックウール及び急結剤を投入する。解綿機21Bは、ロックウールを解綿クシ部材21Cによって解繊及び破砕するとともに、ロックウールと急結剤とを予め混合(プレミックス)し、急結剤及びロックウールをスクリューコンベア21Dによって混合及び輸送する。急結剤が粉状である場合には、ロックウール及び急結剤は、乾燥状態で、ムラのないようにプレミックスされる。急結剤が液状である場合には、急結剤はロックウールに浸透する。急結剤が浸透したロックウールが解され混合されることにより、急結剤はロックウール全体に分散される。つまり、本実施形態では、前方混合物110は、急結剤及びロックウールを混合したものであり、ノズル本体31の前方で混合される。なお「ノズル本体31の前方」とは、解綿装置21からノズル本体31に向かって流れる方向においてノズル本体31の上流側である。この前方混合物110は、エアーブロア21Aにより、ロックウール搬送管21Eを介して、ノズル本体31に圧送される。
【0022】
一方、スラリー槽23及びスラリー用ポンプ24を稼動させ、スラリー槽23にセメント及び水を投入して、スラリー槽23にてセメントスラリーCを生成し、スラリー用ポンプ24によってセメントスラリーCをスラリー用ノズル16Aに圧送する。
【0023】
このとき、エアーブロア21Aの風量及びスラリー用ポンプ24の回転数等のパラメータを、ロックウールとセメントスラリーとの配合比率が、ロックウール工業会の認定範囲内の配合比率(標準配合比)となるように調整することが好ましい。この標準配合比として、ロックウール及びセメントの重量比が、ロックウール:セメント=60%:40%を好適に用いることができる。なお、それぞれの許容範囲は、±5%であることが好ましい。
【0024】
その結果、ノズル本体31から、前方混合物110及びセメントスラリーCが噴出する。セメントスラリーC及び前方混合物は、ノズル本体31内では混合されることなく、同じ方向に吐出される。ノズル本体31から吐出された前方混合物110の粒子及びセメントスラリーCの粒子は、ノズル本体31の後方で、耐火被覆対象物100に到達する前に混ざり合って後方混合物111となり、耐火被覆材101として耐火被覆対象物100に吹き付けられる。耐火被覆対象物100を覆った耐火被覆材101には急結剤が含有されているので、耐火被覆材101は急速に初期強度を発現する。なお、「ノズル本体31の後方」とは、解綿装置21及びスラリー槽23から耐火被覆対象物100に向かって流れる方向においてノズル本体31の下流側である。
【0025】
次に、第1実施形態の効果について説明する。
(1)急結剤とロックウールとを前方混合物110としてノズル本体31の前方(上流側)で予め混合した後、ノズル本体31の後方(下流側)で前方混合物110にセメントスラリーCを混合して後方混合物111とするため、耐火被覆材101において急結剤を大きな偏りなく分散させることができる。このため、耐火被覆材の急結効果を均等に発揮させることができる。
【0026】
(2)粉状の急結剤及びロックウールを混合した前方混合物110は軽量となるため、エアーブロア21A等に対し大きな動力を必要としない。このため、比較的簡単な設備で前方混合物110を供給管に供給することができる。
【0027】
(3)液状の急結剤及びロックウールを前方混合物110として混合する場合、液状の急結剤はロックウールに浸透するため、ノズル本体31から前方混合物110を吐出した際に、周囲への前方混合物110の飛散を抑制できる。
【0028】
(第2実施形態)
次に、耐火被覆材吹付方法及び耐火被覆材吹付システムの第2実施形態を説明する。なお、ノズル本体31に水を噴霧する噴霧部35を設けた点のみが第1実施形態と相違する。以下、第1実施形態と同様の部分については同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0029】
図2に示すように、耐火被覆材吹付システム11は、セメントスラリー供給機構12及びロックウール供給機構13に加え、ミスト供給機構15を備えている。ミスト供給機構15は、ミスト用の水を貯留する貯留タンク25、水用ポンプ26及びコンプレッサ28を備えている。貯留タンク25に貯留された水は、水用ポンプ26により、ノズル本体31に接続する水供給管17側に送られる。また、コンプレッサ28から圧送された圧縮空気は、ノズル本体31に接続する圧縮空気供給管19に送られる。
【0030】
ノズル本体31には、水供給管17及び圧縮空気供給管19に接続する噴霧部35が設けられている。噴霧部35は、ノズル本体31の出口31A側の端部であって、ノズル本体31の外周面に設けられている。これにより、水用ポンプ26により貯留タンク25から供給される水と、コンプレッサ28から送出された圧縮空気とを、噴霧部35に供給し、噴霧部35の噴霧口37から高圧で噴霧して、霧状の水であるミストMを発生させる。
【0031】
図3を参照して、噴霧部35について詳述する。図3(a)に示すように、噴霧部35には、水供給管17及び圧縮空気供給管19が接続されている。また、スラリー管16には、バルブ16Cを開閉するためのハンドルH1が設けられている。
【0032】
図3(b)に示すように、噴霧部35には、ミストを噴出する複数の噴霧口37が、噴霧部35の周方向において等間隔に形成されている。噴霧部35の内部には、各噴霧口37に対応してミスト発生部がそれぞれ区画され、各ミスト発生部には、水供給管17及び圧縮空気供給管19(図3(a)参照)が接続されている。なお、水供給管17及び圧縮空気供給管19には、水の供給及びその停止を制御する供給制御部が設けられている。
【0033】
(作用)
次に図2を参照して、本実施形態における耐火被覆材吹付方法の作用について説明する。第1実施形態と同様に、解綿装置21を稼動させ、解綿装置21にロックウール及び急結剤を投入する。また、スラリー槽23及びスラリー用ポンプ24を稼動させ、セメント及び水をスラリー槽23に投入し、ハンドルH1を操作して、ノズル本体31から吐出させる。そして、セメントスラリー及びロックウールが標準配合比で安定して吐出されるようになった場合に、水用ポンプ26及びコンプレッサ28を稼動させ、水供給管17及び圧縮空気供給管19の供給制御部を操作して、噴霧部35からミストMを噴霧する。このとき、前方混合物110及びセメントスラリーCが混ざり合って後方混合物111となるとともに、後方混合物111がミストMと混ざり合い、この混合物が耐火被覆材101として耐火被覆対象物100に吹き付けられる。つまり、本実施形態では、耐火被覆材101は、後方混合物111及びミストM(水)の混合物である。
【0034】
以上説明したように、第2実施形態によれば、第1実施形態の(1)~(3)に記載の効果に加えて以下の効果が得られる。
(4)後方混合物111とともに霧状の水をノズル本体31によって吹き付けるので、吹き付け時における粉塵の飛散を抑制することができる。
【0035】
(第3実施形態)
次に、耐火被覆材吹付方法及び耐火被覆材吹付システムの第3実施形態を説明する。なお、第3実施形態では、急結剤をノズル本体31の前方で他の材料と混合する点で第1実施形態と共通しているが、急結剤及びセメントスラリーを混合したものを前方混合物とする点で第1実施形態と相違する。以下、第1実施形態と同様の部分については同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0036】
図4に示すように、セメントスラリー供給機構12のスラリー槽23には、急結剤、セメント及び水が投入される。例えば、スラリー槽23は、第1槽23Cに投入された急結剤、セメント、及び水を撹拌機23Aによって混合して、混合物を第2槽23Dに送出する。第2槽23Dは、第1槽23Cから送出された混合物を撹拌機23Aによって撹拌しながら、急結剤を含むセメントスラリーを前方混合物110としてスラリー用ポンプ24´に供給する。スラリー用ポンプ24´は、前方混合物110をノズル本体31に供給する。なお、セメントスラリー及び急結剤が混合されてから、セメントスラリーが凝固を開始するまでには、時間を要するため、スラリー用ポンプ24´の吐出性能は、ノズル本体31までの距離や配管の径等のほか、凝固を開始するまでの時間を考慮して決定する。なお、本実施形態において、スラリー槽23は前方混合部、スラリー用ポンプ24´は圧送部に対応する。
【0037】
一方、ロックウール供給機構13の解綿装置21´には、ロックウールが投入される。解綿装置21´は、エアーブロア21A´により解繊及び破砕したロックウールをノズル本体31に供給する。なお、解綿装置21´及びスラリー用ポンプ24´の構成は、第1実施形態の解綿装置21及びスラリー用ポンプ24の構成と同様である。
【0038】
(作用)
次に、本実施形態における耐火被覆材吹付方法の作用について説明する。まず、解綿装置21´を稼動させて、解綿装置21´にロックウールを投入する。また、スラリー槽23及びスラリー用ポンプ24´を稼動させ、急結剤、セメント及び水を投入して前方混合物110を作製する。そして、ハンドルH1を操作してセメントスラリーをスラリー用ノズル16Aに供給する。前方混合物110としてのセメントスラリーC及びロックウールRは、耐火被覆対象物100に到達する前に混ざり合って後方混合物111となり、耐火被覆対象物100に耐火被覆材101として吹き付けられる。
【0039】
次に、第3実施形態の効果について説明する。
(5)急結剤とセメントスラリーとを前方混合物110としてノズル本体31の前方(上流側)で予め混合した後、ノズル本体31の後方(下流側)で前方混合物110に混合して後方混合物111とするため、耐火被覆材101において急結剤を大きな偏りなく分散させることができる。このため、耐火被覆材の急結効果を均等に発揮させることができる。
【0040】
(第4実施形態)
次に、耐火被覆材吹付方法及び耐火被覆材吹付システムの第4実施形態を説明する。なお、第4実施形態では、ノズル本体31にミストを噴霧する噴霧部35を設けた点のみが第3実施形態と相違する。以下、第3実施形態と同様の部分については同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0041】
図5に示すように、耐火被覆材吹付システム11は、第3実施形態のセメントスラリー供給機構12及びロックウール供給機構13に加え、ミスト供給機構15を備えている。ミスト供給機構の構成は、第2実施形態と同様である。また、ノズル本体31には、第2実施形態と同様な構成の噴霧部35が設けられている。
【0042】
(作用)
次に、本実施形態における耐火被覆材吹付方法について説明する。ノズル本体31から前方混合物110及びロックウールが安定して吐出されるようになった場合に、水用ポンプ26及びコンプレッサ28を稼動させ、水供給管17及び圧縮空気供給管19の供給制御部を操作して、噴霧部35からミストMを噴霧する。これにより、ロックウールR及び急結剤を含むセメントスラリーCからなる前方混合物110が混ざり合って後方混合物111となり、ミストMとともに耐火被覆材101として耐火被覆対象物100に吹き付けられる。
【0043】
以上説明したように、第4実施形態によれば、第2実施形態の(4)、第3実施形態の(5)と同様な効果を得ることができる。
上記各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0044】
・上記各実施形態では、解綿装置21,21´は、解綿クシ部材21C及びスクリューコンベア21Dを備える構成としたが、それ以外の構成であってもよい。
・上記各実施形態では、スラリー槽23として2槽式のミキサーを用いたが、これに代えて、1槽式のミキサー等、他のタイプのスラリー槽を用いてもよい。
【0045】
・上記各実施形態では、耐火材料として、ロックウールを用いた。これに代えて若しくは加えて、ガラス繊維等、他の耐火性を有する繊維材料を用いてもよい。
・上記各実施形態では、ノズル本体31にバルブ16Cを設けたが、セメントスラリーの供給及び供給停止を制御する機構あれば、バルブ16Cを省略してもよい。
【0046】
・上記各実施形態では、ノズル本体31内にスラリー用ノズル16Aを挿入した。これに代えて、スラリー用ノズル16Aをノズル本体31の外側に設けてもよい。そして、スラリー用ノズル16A及びノズル本体31を、出口を同じ側になるように配置するとともに、それらの中心軸が同じになるように配設するか又は中心軸が交差するように配設する。この態様においても、スラリー用ノズル16Aの出口及びノズル本体31の出口と耐火被覆対象物100との間で、後方混合物111を生成することができる。
【符号の説明】
【0047】
11…耐火被覆材吹付システム、12…セメントスラリー供給機構、13…ロックウール供給機構、15…ミスト供給機構、16…スラリー管、16A…スラリー用ノズル、16B…噴出口(後方混合部)、17…水供給管、18…ロックウール供給管、19…圧縮空気供給管、21…解綿装置(前方混合部)、21´…解綿装置、21A…エアーブロア(圧送部)、21A´…エアーブロア、21B…解綿機、21C…解綿クシ部材、21D…スクリューコンベア、21E…ロックウール搬送管、23…スラリー槽(前方混合部)、24…スラリー用ポンプ、24´…スラリー用ポンプ(圧送部)、25…貯留タンク、26…水用ポンプ、28…コンプレッサ、31…ノズル本体(供給管)、31A…出口、35…噴霧部、37…噴霧口、100…耐火被覆対象物、101…耐火被覆材、110…前方混合物、111…後方混合物、C…セメントスラリー(結合材)、H1…ハンドル、M…ミスト、R…ロックウール(耐火被覆綿材)。
図1
図2
図3
図4
図5