(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】リアクトル用ボビン、リアクトルおよびリアクトルの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01F 37/00 20060101AFI20230829BHJP
H01F 27/32 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
H01F37/00 E
H01F37/00 M
H01F27/32 150
(21)【出願番号】P 2019126435
(22)【出願日】2019-07-05
【審査請求日】2022-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000107804
【氏名又は名称】スミダコーポレーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097984
【氏名又は名称】川野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100125265
【氏名又は名称】貝塚 亮平
(72)【発明者】
【氏名】川嶋 浩
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-248904(JP,A)
【文献】特開2016-082047(JP,A)
【文献】特開2010-219226(JP,A)
【文献】実開平01-105214(JP,U)
【文献】実開昭57-044515(JP,U)
【文献】実開昭58-158408(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 37/00
H01F 27/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空筒状を呈し、外周部にコイルが巻回状態に配設可能な胴部と、該胴部の両端部にそれぞれ装着される一対の装着鍔部と、を備え
、
前記装着鍔部には、前記胴部側に係合する係合部を備え、
前記胴部の両端部には、前記係合部が係合する係合受部をそれぞれ備え、
前記係合部と前記係合受部とが互いの係合位置を選択して係合することにより、前記装着鍔部同士の間隔を調整可能としたことを特徴とするリアクトル用ボビン。
【請求項2】
前記係合部と前記係合受部とは、少なくとも一方が前記胴部の軸方向における位置を異ならせて複数形成されていることを特徴とする請求項
1に記載のリアクトル用ボビン。
【請求項3】
前記係合受部は、前記胴部の外周面に備えられていることを特徴とする請求項
1または2に記載のリアクトル用ボビン。
【請求項4】
前記係合部と前記係合受部との係合状態を維持可能な係合ストッパーを備えたことを特徴とする請求項
1~3のうちいずれか1項記載のリアクトル用ボビン。
【請求項5】
並列配置された一対の前記胴部を備え、各胴部の少なくとも一端部に装着する前記装着鍔部は隣接側から装着することを特徴とする請求項1~
4のうちいずれか1項記載のリアクトル用ボビン。
【請求項6】
並列配置された複数の前記胴部を備え、各胴部の一端部に装着する前記装着鍔部および各胴部の他端部に装着する前記装着鍔部の少なくとも一方を一体化したことを特徴とする請求項1~
4のうちいずれか1項記載のリアクトル用ボビン。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれかに記載のリアクトル用ボビンの前記胴部の周りにはコイルを巻回状態に配設し、該胴部の中空部には磁性コアの脚部を収納して該磁性コアを組み付けて構成されたことを特徴とするリアクトル。
【請求項8】
中空筒状を呈する胴部の両端部に鍔部を備えたリアクトル用ボビンの該胴部の周りにコイルを巻回状態に配設するとともに、該胴部の中空部に磁性コアの脚部を収納して該磁性コアを組み付けるリアクトルの製造方法であって、
前記胴部と、該胴部の両端部にそれぞれ装着される装着鍔部とを形成
し、
前記装着鍔部には、前記胴部側に係合する係合部を設け、
前記胴部の両端部には、前記係合部が係合する係合受部をそれぞれ設け、
前記係合部と前記係合受部とが互いの係合位置を選択して係合することにより、前記装着鍔部同士の間隔を調整可能とするボビン形成工程と、
電線を巻回してコイルを形成するコイル形成工程と、
前記胴部の一端部の所定位置に一方の前記装着鍔部を装着する第1鍔部装着工程と、
前記胴部を前記コイルの空芯部へ挿通して該胴部の周りに前記コイルを取り付けるコイル取付工程と、
前記コイルが取り付けられ、かつ前記一方の装着鍔部が前記一端部に装着された前記胴部の他端部の所定位置に他方の前記装着鍔部を装着する第2鍔部装着工程と、
前記コイルおよび前記装着鍔部を備えた前記胴部の中空部に前記磁性コアの脚部を収納して該磁性コアを組み付けるコア組付工程と、
を含むことを特徴とするリアクトルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種装置の電気回路に用いられるリアクトルを構成するリアクトル用ボビン、このリアクトル用ボビンを用いたリアクトル、およびこのリアクトルの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リアクトルは、電線を巻回して構成されたコイルと、このコイルの空芯部に挿通される中空筒状のリアクトル用ボビンと、リアクトル用ボビンの内側中空部に脚部が挿通される磁性コアとを備えて構成されており、リアクトル用ボビンを絶縁材料で構成してコイルと磁性コアとの間の絶縁をとるようにしている。リアクトル用ボビンとしては、筒体をその軸方向の所定の位置で2つに分割した形状に形成されたボビン構成部材の各々を、コイル巻回体の中空部に挿通した状態で組み合わせて筒構造を形成するものが提案されている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-198847号公報
【文献】特開2012-070001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献に記載のリアクトル用ボビンは、組立作業において、両端部に鍔部をそれぞれ設けた2つのボビン構成部材を連結する作業をコイルの空芯部内で行うことが必要である。このとき、連結部分がコイルの外側から殆ど見えないので、作業に困難性を伴う。また、各鍔部が各ボビン構成部材に固定されており、鍔部間の距離、言い換えるとコイルが巻回状態に配置される空間の大きさを変更することができない。このため、コイルの長さが設計上の公差の範囲内に収まっていたとしても、鍔部間の距離が狭すぎてコイルが配置できなかったり、あるいは、鍔部に過大な負荷が掛かったり、鍔部間の距離が広すぎてコイルがガタついてしまったりする虞がある。さらに、ターン数等の仕様変更のためにコイルの設計上の長さが変更になると、リアクトル用ボビンも併せて設計・製造し直すことが必要となる場合がある。また、鍔部が胴部に固定されていると、この鍔部によりコイルの胴部に対する位置、例えば、中心位置を正確に規制することができない。このため、コイルの位置が胴部の中央から一方に偏る不都合が生じ、所望の磁気特性が得られない性能上の問題を有することもある。
【0005】
特に、平角線を使用し巻回してなるエッジワイズコイルにおいては、巻線が1層であるため、このエッジワイズコイルを巻回状態に装着するリアクトル用ボビンのコイル装着部の長さは、電線の厚み公差(例:±0.13mm×巻数)を考慮して大きく作成することになる。この場合、上記ボビンとコイルの間は、ワニス等が充填されてコイルが固定されるが、エッジワイズコイルは空芯であるため、コイル長と上記コイル装着部の長さの差が大きい場合には、振動等によりコイルの固定が外れて製品上および性能上の種々の不具合が生起することになる。
【0006】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたもので、コイルの装着性を改善する一方、コイルが巻回状態に装着される空間をコイルの寸法に応じて調整し得るとともに、鍔部によりコイルの位置を規制可能なリアクトル用ボビン、このリアクトル用ボビンを適用したリアクトル、および、このリアクトルの製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係るリアクトル用ボビン、リアクトル、および、リアクトルの製造方法は、以下の特徴を備えている。
本発明に係るリアクトル用ボビンは、
中空筒状を呈し、外周部にコイルが巻回状態に配設可能な胴部と、該胴部の両端部にそれぞれ装着される一対の装着鍔部と、を備え、
前記装着鍔部には、前記胴部側に係合する係合部を備え、
前記胴部の両端部には、前記係合部が係合する係合受部をそれぞれ備え、
前記係合部と前記係合受部とが互いの係合位置を選択して係合することにより、前記装着鍔部同士の間隔を調整可能としたことを特徴とするものである。
【0009】
さらに、前記係合部と前記係合受部とは、少なくとも一方が前記胴部の軸方向における位置を異ならせて複数形成されるのが好ましい。
その場合、前記係合受部は、前記胴部の外周面に備えられていてもよい。
【0010】
さらに、前記係合部と前記係合受部との係合状態を維持可能な係合ストッパーを備えていてもよい。
【0011】
上記リアクトル用ボビンにおいて、並列配置された一対の前記胴部を備える際には、各胴部の少なくとも一方の端部に装着する前記装着鍔部は隣接側から装着するのが好適である。
また、並列配置された複数の前記胴部を備える際に、各胴部の一端部に装着する前記装着鍔部および各胴部の他端部に装着する前記装着鍔部の少なくとも一方を一体化してもよい。
【0012】
また、本発明に係るリアクトルは、前記したリアクトル用ボビンの前記胴部の周りにはコイルを巻回状態に配設し、該胴部の中空部には磁性コアの脚部を収納して該磁性コアを組み付けて構成されたことを特徴とするものである。
【0013】
そして、本発明に係るリアクトルの製造方法は、中空筒状を呈する胴部の両端部に鍔部を備えたリアクトル用ボビンの該胴部の周りにコイルを巻回状態に配設するとともに、該胴部の中空部に磁性コアの脚部を収納して該磁性コアを組み付けるリアクトルの製造方法であって、
前記胴部と、該胴部の両端部にそれぞれ装着される装着鍔部とを形成し、
前記装着鍔部には、前記胴部側に係合する係合部を設け、
前記胴部の両端部には、前記係合部が係合する係合受部をそれぞれ設け、
前記係合部と前記係合受部とが互いの係合位置を選択して係合することにより、前記装着鍔部同士の間隔を調整可能とするボビン形成工程と、
電線を巻回してコイルを形成するコイル形成工程と、
前記胴部の一端部の所定位置に一方の前記装着鍔部を装着する第1鍔部装着工程と、
前記胴部を前記コイルの空芯部へ挿通して該胴部の周りに前記コイルを取り付けるコイル取付工程と、
前記コイルが取り付けられ、かつ前記一方の装着鍔部が前記一端部に装着された前記胴部の他端部の所定位置に他方の前記装着鍔部を装着する第2鍔部装着工程と、
前記コイルおよび前記装着鍔部を備えた前記胴部の中空部に前記磁性コアの脚部を収納して該磁性コアを組み付けるコア組付工程と、
を含むことを特徴とするものである。
なお、上記「第1鍔部装着工程」、「コイル取付工程」および「第2鍔部装着工程」は、この順に行ってもよいし、「第1鍔部装着工程」と「コイル取付工程」の順番を互いに入れ替えて行った後に、「第2鍔部装着工程」を行うようにしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のリアクトル用ボビン、および、リアクトルによれば、中空筒状を呈し、外周部にコイルが巻回状態に配設可能な胴部と、該胴部の両端部にそれぞれ装着される一対の装着鍔部とを備え、少なくとも一方の装着鍔部が、前記胴部にコイルを配設してから該胴部に装着されることを特徴としたことにより、一端部に装着鍔部を装着した胴部または装着していない胴部をコイルの空芯部へ挿通してから、この胴部の他端部に他方の装着鍔部を装着すれば組み立てることができ、装着鍔部の装着も外部から見える状態で行うことができ、組立作業を簡易且つ確実に行うことができる。さらに、各装着鍔部の装着位置をコイル長に応じて所定位置に調整することにより、胴部を基準とするコイルの相対位置を所望の状態に設定することができ、リアクトルの設計の自由度を増すことができる。
【0015】
また、前記装着鍔部には、前記胴部に係合する係合部を備え、前記胴部の他端部には、前記係合部が係合する係合受部を備え、前記係合部と前記係合受部とが互いの係合位置を選択して係合することにより、前記装着鍔部同士の間隔を調整可能とすれば、コイルの配置空間をコイルの寸法に応じて調整することができる。したがって、鍔部間の距離が狭すぎてコイルが配置できない、あるいは、鍔部に過大な負荷が掛かる等の不都合や、鍔部間の距離が広すぎてコイルがガタついてしまう不都合を抑制することができる。このため、装着鍔部が不用意にずれたり脱落したりしてしまうことを抑えることができる。特に、両端部の装着鍔部の装着位置を調整して、コイルの中心位置を設計上の設定位置に配置することで、所望の磁気特性を確保することができる。
【0016】
そして、前記係合部と前記係合受部とは、少なくとも一方が前記胴部の軸方向における位置を異ならせて複数形成されていれば、係合部と係合受部との係合位置を容易に選択することができ、装着鍔部の位置決めを迅速に行うことができる。
また、前記係合受部を前記胴部の外周面に備えれば、装着鍔部の装着作業において、装着鍔部の係合部を係合させる箇所を容易に視認することができる。このため、装着作業を滞りなく行い易くなり、作業効率の向上を図ることができる。
【0017】
さらに、前記係合部と前記係合受部との係合状態を維持可能な係合ストッパーを備えれば、装着鍔部のずれや脱落を一層抑制することができる。
また、各胴部の少なくとも一方の端部に装着された各鍔部が他方の胴部によって横方向の移動を規制されるため、作製されたリアクトルにおいては、組み付けられた装着鍔部の脱落防止を図ることができる。
また、並列配置された複数の前記胴部を備え、各胴部の一端部に装着する前記装着鍔部および各胴部の他端部に装着する前記装着鍔部の少なくとも一方を一体化することにより、リアクトル用ボビンの構成部品数を減らすことができるとともに、複数の胴部への鍔装着作業を一度に行うことができ、製造効率の向上を図ることができる。
【0018】
また、本発明のリアクトルの製造方法によれば、胴部と、該胴部の両端部にそれぞれ装着される装着鍔部とを形成するボビン形成工程と、電線を巻回してコイルを形成するコイル形成工程と、前記胴部の一端部の所定位置に一方の前記装着鍔部を装着する第1鍔部装着工程と、前記装着鍔部が一端部に装着された前記胴部を前記コイルの空芯部へ挿通して該胴部の周りに前記コイルを取り付けるコイル取付工程と、前記コイルが取り付けられた前記胴部の他端部の所定位置に他方の前記装着鍔部を装着する第2鍔部装着工程と、前記コイルおよび前記装着鍔部を備えた前記胴部の中空部に磁性コアの脚部を収納して該磁性コアを組み付けるコア組付工程と、を含むので、装着鍔部が備えられたリアクトル用ボビンとコイルとを用いてリアクトルの組み立てを支障なく行うことができ、リアクトルの組立作業の容易化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るリアクトル用ボビンを備えたリアクトルの斜視図である。
【
図3】
図1のリアクトル用ボビンの斜視図であり、(a)は胴部に装着鍔部を装着した状態、(b)は胴部から装着鍔部を外した状態である。
【
図4】
図1のリアクトルの組み立て工程の説明図であり、(a)は第1鍔部装着工程の説明図、(b)はコイル取付工程の説明図、(c)は第2鍔部装着工程の説明図、(d)はコア組付工程の説明図である。
【
図5】本発明の第2の実施形態に係る、一対の胴部を備えたリアクトル用ボビンの説明図であり、(a)は各胴部の一端部同士の間には単一の装着鍔部を架設し、他端部には別個の装着鍔部をそれぞれ装着した態様の斜視図、(b)は各胴部の両端部同士の間に単一の装着鍔部をそれぞれ架設した態様の斜視図である。
【
図6】本発明の第3の実施形態に係る、3つの並設胴部を備えたリアクトル用ボビンの斜視図である。
【
図7】本発明の第4の実施形態に係る、断面V字状の溝で構成された係合受部と、断面尖形状の突条で構成された係合部とを備えたリアクトル用ボビンの説明図であり、(a)は斜視図、(b)は係合部と係合受部との係合状態の断面図である。
【
図8】本発明の第5の実施形態に係る、凹部と凸部とにより構成される係合ストッパーを備えたリアクトル用ボビンの一端部の説明図であり、(a)は斜視図、(b)は断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の第1の実施形態に係るリアクトル用ボビンを備えたコイル部品について
図1~
図4を参照しつつ説明する。
リアクトル100は、太陽光発電機器や風力発電機器、または電気自動車用の充電設備等の電気回路要素として使用されるものであり、
図1に示すように、並列する一対のコイル110と、各コイル110が取り付けられる一対の筒状リアクトル用ボビン120と、各リアクトル用ボビン120の中空部内に一部が通される環状の磁性コア130と、を備えて構成されている。そして、リアクトル用ボビン120を樹脂などの絶縁体で構成して、コイル110と磁性コア130との間を絶縁している。なお、本願明細書において、「リアクトル用ボビン」との用語を用いる場合は、いずれかの構成部材が一体化されていれば、例えば、2つの胴部(下記
121等)の一端に形成された鍔部(下記
装着鍔部122等)が互いに一体化されている場合は、「リアクトル用ボビン」全体としても1つの部材として表すものとする。
【0021】
コイル110は、1本の平角線材(電線)をエッジワイズ巻きして角筒状に形成されたエッジワイズコイルであり、内側にはコイル110の長手方向(巻軸方向)に沿って貫通した空芯部111を開設し、該空芯部111内にリアクトル用ボビン120の胴部121を挿通可能としている。また、磁性コア130は、一対のU型コアブロック131を互いに対称となる姿勢で連結して環状に構成されており、各コアブロック131のヨーク部の両端部に位置する脚部132をそれぞれ前記ボビン120の胴部121内に挿入可能としている(
図1および
図2参照)。
【0022】
次に、リアクトル用ボビン120について説明する。
リアクトル用ボビン120は、
図3に示すように、中空の矩形筒状を呈する胴部121と、胴部121の両端部にそれぞれ装着される一対の装着鍔部122とを備えて構成されている。そして、胴部121の周りにコイル110を巻回状態で配置可能とし、胴部121の中空部を胴部121の軸方向に沿って貫通する状態とし、胴部121の両端部から中空部へ一対のコアブロック131(磁性コア130)の脚部132を収納(挿入)できるように構成されている。
【0023】
装着鍔部122は、胴部121の一端部と他端部の両端部にそれぞれ装着される薄肉板状の鍔部材であり、胴部121の矩形断面よりもひと回り大きな略C字枠状を呈し、詳しくは、図中の縦方向に長尺な第1片1221の上端と下端から第1片1221と直交する同じ横方向の上下に第2片1222と第3片1223とを延出した形状である。そして、第1片1221、第2片1222、第3片1223に囲まれた中央部分には嵌合空部122Aが開口し、連続した第1片1221乃至第3片1223で構成された外周部分のうち、開放された箇所(第2片1222の先端と第3片1223の先端との間)を嵌合入口122Bとして嵌合空部122Aへ連通し、ボビン120の胴部121が嵌合入口122Bを通って嵌合空部122Aへ嵌合するように構成されている(
図3(b)参照)。また、嵌合空部122Aの開口縁部(第1片1221乃至第3片1223の内側縁で構成される装着鍔部122の内側縁部)を係合部122Cとし、嵌合空部122Aに胴部121を嵌合すると係合部122Cが胴部121側(詳しくは、胴部121の外周面)へ係合するように構成されている。さらに、胴部121へ装着された状態では、胴部121の軸方向とは直交する方向へ延在する姿勢となるように設定されている。
【0024】
前記胴部121の両端部(装着鍔部122がそれぞれ装着される両端部)の外周面には、係合部122Cが係合する係合受部121Cをそれぞれ備えている。具体的には、断面矩形状の溝で構成された係合受部121Cを胴部121の周方向(軸方向とは直交する方向)へ延在する態様で、かつ、複数条(本実施形態では4条)の係合受部121Cを等間隔で胴部121の軸方向へずらした状態で並べて形成されている。なお、本実施形態では、胴部121の外周面のうち丸み処理が施された隅角部分の一部には溝状の係合受部121Cを形成していないが、胴部121の外周面の全周に亘って係合受部121Cを連続して形成してもよい。
【0025】
さらに、リアクトル用ボビン120においては、係合部122Cと係合受部121Cとの係合状態を維持可能な係合ストッパー122Dを備えている。係合ストッパー122Dは、
図3(b)に示すように、嵌合入口122Bの両側方に一対の突起を嵌合入口122B側へ突設して構成されており、装着鍔部122と同じ板厚寸法、さらには、係合部122C(装着鍔部122の内側縁部)と同じ板厚寸法に設定されている。
【0026】
図1、
図2に示す一対のボビン120が並列に隣接配置された態様において、まず、それぞれの胴部121の一端部の所定位置に装着鍔部122が装着され、この胴部121の他端部からそれぞれコイル100を装着する。その後、このコイル100から突出している上記胴部121の他端部にそれぞれ他の装着鍔部122を取り付けるものであるが、その装着方向が隣接側から装着するように構成されている。つまり、
図2に示すように、両胴部121の両端部にそれぞれ隣接側で互いに反対側となる横方向から他の装着鍔部122を取り付けてから、磁性コア130の脚部132と組み付ける場合に、隣接するボビン120で装着鍔部122のそれぞれの縦方向の第1片1221の背部が近接するように装着する(
図1参照)。これにより、作製されたリアクトル100においては、組み付けられた装着鍔部122は取り外し不能となっている。
【0027】
次に、リアクトル100の製造方法について説明する。
リアクトル100の製造においては、リアクトル100の各構成部品を形成する工程と、各構成部品を用いてリアクトル100を組み立てる工程とを行う。リアクトル100の構成部品の形成工程においては、ボビン120の胴部121および装着鍔部122を射出成型等により別個に形成し(ボビン形成工程)、平角線材(電線)をエッジワイズ巻きしてコイル110を形成し(コイル形成工程)、圧粉成形、金属ブロックを切削する、あるいは、金属板を積層する等してコアブロック131を形成する(コアブロック形成工程)。
【0028】
リアクトル100の各構成部品を形成したならば、一対の胴部121、二対の装着鍔部122、一対のコイル110、一対のコアブロック131を用いてリアクトル100の組み立て工程を行う。まず、各胴部121の一端部に装着鍔部122をそれぞれ装着する(第1鍔部装着工程)。詳しくは、
図4(a)に示すように、胴部121に対して、装着鍔部122を嵌合入口122Bが胴部121に対向した姿勢であり、且つ胴部121の軸方向とは直交する延在姿勢に設定し、装着鍔部122を撓ませて嵌合入口122Bを広げる。そして、係合ストッパー122D同士の間隔が胴部121を嵌合し得る状態まで広がったならば、この状態で嵌合入口122Bを胴部121へ近づけて装着鍔部122を胴部121の一端部へ嵌合する。このとき、リアクトル100の設計や仕様などにおけるコイル110の配置寸法に基づいて、胴部121の一端部における複数の係合受部121Cの中から、装着鍔部122の係合部122Cを係合する予定の係合受部121Cを予め選択しておき、この選択した係合受部121Cに係合部122Cを近づける。そして、胴部121に装着鍔部122を十分に嵌合して胴部121が嵌合空部122A内に配置されると、係合ストッパー122Dが胴部121の外周面上を通過して外周面から外れて装着鍔部122の撓みが解除され、係合部122Cが係合受部121Cに係合し、係合ストッパー122Dが胴部121の隅部分に引っ掛かる。この結果、係合部122Cと係合受部121Cとが互いの係合位置を選択して係合したことにより、装着鍔部122が胴部121の一端部に装着される。
【0029】
次に、
図4(b)に示すように、各コイル110に対して、空芯部111に胴部121を該胴部121の他端部(装着鍔部122が未装着状態の他端部)からそれぞれ挿通して胴部121の周り、つまりコイル装着部にコイル110を取り付ける(コイル取付工程)。さらに、胴部121の一端部に装着済みの装着鍔部122の側面にコイル110の一端部を当て、コイル110の他端部から胴部121の他端部を突出させて係合受部121Cを外方へ露出させる。なお、上記コイル110を取り付けてから、胴部121の一端部の所定位置に装着鍔部122を装着するようにしてもよい。
【0030】
コイル110を胴部121へ取り付けたならば、各胴部121の他端部(係合受部121Cが備えられた端部)に残りの装着鍔部122をそれぞれ装着する(第2鍔部装着工程)。詳しくは、
図4(c)に示すように、胴部121に対して、装着前の装着鍔部122を嵌合入口122Bが胴部121に対向した姿勢であり、且つ装着済みの装着鍔部122と平行な姿勢に設定し、装着前の装着鍔部122を撓ませて嵌合入口122Bを広げる。そして、係合ストッパー122D同士の間隔が胴部121を嵌合し得る状態まで広がったならば、この状態で嵌合入口122Bを胴部121へ近づけて装着鍔部122を胴部121の他端部へ嵌合する。このとき、胴部121の他端部における複数の係合受部121Cのうち、装着前の装着鍔部122がコイル110の他端部に当接する位置、あるいは、コイル110の他端部に最も近づく位置で係合部122Cが係合可能となる係合受部121Cを選択し、この選択した係合受部121Cに装着前の装着鍔部122の係合部122Cを近づける。そして、胴部121に装着鍔部122を十分に嵌合して胴部121が嵌合空部122A内に配置されると、係合ストッパー122Dが胴部121の外周面上を通過して外周面から外れて装着鍔部122の撓みが解除され、係合部122Cが係合受部121Cに係合し、係合ストッパー122Dが胴部121の隅部分に引っ掛かる。この結果、一対のリアクトル用ボビン120の各胴部121の周りにコイル110をそれぞれ巻回した状態となり、さらには、係合部122Cと係合受部121Cとが互いの係合位置を選択して係合したことにより、装着鍔部122同士の間隔がコイル110の実際の寸法に合わせて調整された状態となる。
【0031】
次に、コイル110を取り付けた胴部121の中空部に、両側から一対の磁性コア130の各脚部132を挿入し収納する(コア組付工程)。詳しくは、
図4(d)に示すように、コイル110が取り付けられた一対のリアクトル用ボビン120を胴部121の軸方向とは直交する方向に並べ、各胴部121の中空部の一端部に一方のU型コアブロック131の脚部132をそれぞれ挿入し、胴部121の中空部の他端部には他方のU型コアブロック131の脚部132をそれぞれ挿入する。さらに、胴部121の中空部内で脚部132の先端同士を接着剤等を用いて接合すると、環状の磁性コア130が形成され、磁性コア130の一部が胴部121(リアクトル用ボビン120)の中空部に収納された状態となる。
【0032】
その後、各コイル110の表面にワニス等の液状絶縁材を塗布することによって、絶縁材を平角線材同士の隙間に含浸させたり、さらには、コイル110(平角線材)とリアクトル用ボビン120(胴部121、装着鍔部122)との間に充填させたりする。そして、絶縁材を固化させてコイル110の絶縁処理(表面処理)を行い、リアクトル100を完成させる。このとき、絶縁材が固化すると、コイル110とリアクトル用ボビン120とが絶縁材の介在により固着する。なお、コイル110の絶縁処理は、第2鍔部装着工程とコア組付工程との間に行ってもよい。
【0033】
このようにして、胴部121に装着鍔部122を装着してリアクトル用ボビン120を構成し、このリアクトル用ボビン120をリアクトル100の構成部品に採用すれば、コイル110が巻回状態に設置される空間長(装着鍔部122間の距離)をコイル110の寸法に応じて調整することができる。したがって、両端の装着鍔部122間の距離が狭くてコイル110が配置できない、あるいは、力を加えてコイル110を設置して両鍔部122に過大な負荷が掛かるという不都合や、逆に、コイル110が設置できたとしても両装着鍔部122間の距離がコイル長より広くてガタついてしまう不都合を抑制することができる。また、ワニス等の絶縁材によるコイル110と胴部121との固着がコイル110の振動等の外力を受けて解かれてしまったとしても、寸法差を小さくできることでコイル110が大きくガタつくことを両装着鍔部122によって防ぐことができる。
また、このように、両装着鍔部122の装着位置を調整して、コイル110の中心位置を設計上の設定位置に配置することが可能となるので、コイル110をリアクトルの磁気特性が良好となる状態に設定することができる。
【0034】
さらに、各装着鍔部122の装着位置を調整することにより、コイル110を胴部121と中心揃え状態で配置したりする等、胴部121を基準とするコイル110の相対位置を所望の設計位置に設定することができ、リアクトル100の設計の自由度を増すことができる。そして、仕様の違い等の理由で、リアクトル用ボビン120に巻回されるコイル110の太さが変更になる場合には、コイル110の太さに対して適切なサイズ(例えば、コイル110の端部を十分に被覆可能な広さ)の装着鍔部122を別個に作成して胴部121の両端部に装着すればよい。したがって、コイル110の形状変更に対応したリアクトル用ボビン120を実現することができる。
【0035】
また、胴部121の一端部および他端部には、胴部121の軸方向における位置を異ならせて複数の係合受部121Cを形成し、いずれかの係合受部121Cを選択して係合部122Cを係合すること(言い換えると、係合部122Cと係合受部121Cとが互いの係合位置を選択して係合すること)により、装着鍔部122同士の間隔を調整可能としたので、装着鍔部122が不用意にずれたり脱落したりしてしまうことを抑えることができる。さらに、係合部122Cと係合受部121Cとの係合位置を容易に選択することができ、装着鍔部122の位置決めを迅速に行うことができる。
【0036】
そして、各係合受部121Cを胴部121の外周面に備えたので、装着鍔部122の装着作業(第1鍔部装着工程,第2鍔部装着工程)において、装着鍔部122の係合部122Cを係合させる箇所を容易に視認することができる。このため、装着作業を滞りなく且つ確実に行い易くなり、作業効率の向上を図ることができる。また、係合部122Cと係合受部121Cとの係合状態を維持可能な係合ストッパー122Dを備えたので、装着鍔部122のずれや脱落を一層抑制することができる。さらに、上記した各工程(ボビン形成工程、コイル形成工程、第1鍔部装着工程、コイル取付工程、第2鍔部装着工程、コア組付工程)を含む製造方法によってリアクトル100を製造するので、装着鍔部122が備えられたリアクトル用ボビン120とコイル110とを用いてリアクトル100の組み立てを支障なく行うことができ、リアクトル100を滞りなく製造することができる。
【0037】
上記第1の実施形態におけるリアクトル用ボビン120は、隣接配置された一対の胴部121の両端部にそれぞれ別個の装着鍔部122を備えて構成されているが、本発明はこれに限定されない。例えば、
図5に示す第2の実施形態のリアクトル用ボビン220は、基本的には第1の実施形態と同じであるが、並設された一対の胴部221の一端部または両端部に装着される装着鍔部222が一体に繋がって構成されている点で異なる。
【0038】
具体的に説明すると、
図5(a),(b)に示す第2の実施形態におけるリアクトル用ボビン220は、一対の並設胴部221を備え、各胴部221の両端部には、溝で構成された係合受部221Cを胴部221の軸方向に沿って等間隔で複数条(本実施形態では4条)並べて備えている。また、一体化された装着鍔部222は、矩形状の平板に一対の嵌合空部222Aおよび一対の嵌合入口222Bを横並び状態で開設して構成され、各嵌合空部222Aに胴部221をそれぞれ嵌合すること(言い換えると、係合受部221Cと係合部222Cとを係合すること)により、各胴部221の一端部または両端部同士を装着鍔部222で連結した構成となっている。さらに、この一体化装着鍔部222の嵌合入口222Bには突起状の係合ストッパー222Dを備え、係合受部221Cと係合部222Cとの係合状態を維持可能としている。この態様では、構成部品数を減らすことができ、しかも、一対の胴部221への鍔装着作業を一度に行うことができ、製造効率の向上を図ることができる。
【0039】
また、
図5(a)に示す形態では、各胴部221の他端部に、胴部221毎に別個のC字状装着鍔部223を図の上方より装着して係合受部221Cと係合部223Cとを係合し、係合ストッパー223Dにより係合状態を維持可能としている。あるいは、
図5(b)に示す形態では、各胴部221の他端部にも前記と同様に一体化した装着鍔部222を装着している。
【0040】
図5(a)の胴部221毎に別個の装着鍔部222を装着する態様を採用すれば、コイル同士でターン数(巻き数)が互いに異なる設計、ひいては長さ寸法が異なる設計であったとしても、各コイルの長さ寸法に合わせて装着鍔部222の装着箇所を調整することができる。一方、
図5(b)の胴部221の他端部同士の間にも一体化装着鍔部222を架け渡す態様を採用すれば、リアクトルの構成部品数を減らすことができる。また、一対の胴部221の他端部への鍔装着作業を一度に行うことができ、製造効率の向上を図ることができる。
【0041】
図6に示す第3の実施形態は、三相交流に対応するリアクトル用ボビン320を示し、全体的には、
図5(b)の形態と類似し、3つのコイルを備える態様である。この形態のリアクトル用ボビン320は、3つの胴部321を並列状態(各胴部321の軸方向とは直交する方向に並べた状態)で配置して備えている。そして、各胴部321の両端部を一体化装着鍔部323,323で連結して構成している。
【0042】
この一体化装着鍔部323は、3つの嵌合空部323Aおよび3つの嵌合入口323Bが横並び状態で開口され、各胴部321の端部に架け渡す状態で装着して、係合受部321Cと係合部323Cとを係合し、係合ストッパー323Dにより係合状態を維持可能としている。なお、この形態においても
図5(a)と同様に各胴部321の両端部のいずれか一方にのみ一体化装着鍔部323を装着して各胴部321を連結し、他方の端部には胴部321毎に別個の装着鍔部(図示せず)を装着してもよい。
【0043】
ところで、上記各実施形態では、矩形筒状を呈する胴部121,221,321の外周面の4面に溝状の係合受部121C,221C,321Cを形成したが、本発明はこれに限定されない。要は、胴部の外周面で係合部を係合可能であれば、係合受部が形成される範囲は問わない。例えば、矩形筒状の胴部の外周面においては、装着鍔部の内側の縁部(係合部)が対向し得る3面のうち1面以上を選択して溝状の係合受部を形成してもよいし、あるいは、胴部の外周面の隅角部にも溝状の係合受部を形成してもよい。また、円筒状胴部を構成してもよく、それに応じて装着鍔部が円弧状を呈する場合には、胴部の外周面のうち装着鍔部の内側の縁部(係合部)が対向し得る部分に溝状の係合受部を形成すればよく、必ずしも胴部の外周面の全周に亘って係合受部を形成する必要はない。
【0044】
さらに、上記各実施形態では、係合受部121C,221C,321Cを断面矩形状の溝で構成し、係合部122C,222C,223C,323Cの断面を矩形状としたが、本発明はこれに限定されない。要は、互いに係合可能であれば、係合部および係合受部の態様は問わない。
【0045】
例えば、
図7の第4の実施形態に示すように、リアクトル用ボビン420において、係合受部421Cを断面V字状の溝で構成して胴部421に備え、係合部422Cを断面尖形状の突条で構成して装着鍔部422の嵌合空部422Aの開口縁部に備えてもよい。係合受部421Cを断面V字状の溝で構成すれば、断面矩形状の溝で構成する場合よりも係合受部421C同士のピッチを狭く設定し易くなり、装着鍔部422の装着位置の選択肢、ひいては胴部421の両端部にそれぞれ装着された装着鍔部422同士の離間距離の調整性が向上する。
【0046】
また、上記各実施形態では、胴部121,221,321に備えられた複数の係合受部121C,221C,321Cをそれぞれ溝構造とし、装着鍔部122,222,223,323に備えられた係合部122C,222C,223C,323Cを突条構造としたが、本発明はこれに限定されない。要は、互いの係合位置を選択して係合することにより、装着鍔部同士の間隔を調整可能とする構成であれば、どのような態様の係合部および係合受部の組み合わせを採用してもよい。例えば、胴部の外周面に備えられる複数の係合受部をそれぞれ突条、あるいはピン状の突起で構成し、装着鍔部の嵌合空部の開口縁部に備えられる係合部を溝で構成してもよい。
【0047】
さらに、上記各実施形態では、胴部121,221,321に備えられた係合受部121C,221C,321Cを胴部121,221,321の軸方向における位置を異ならせて複数形成したが、本発明はこれに限定されない。要は、係合部と係合受部とにおいて、少なくとも一方が胴部の軸方向における位置を異ならせて複数形成されていれば、その態様は問わない。例えば、装着鍔部の嵌合空部の開口縁部を装着鍔部の板厚方向(言い換えると、胴部の軸方向)に沿って拡張し、この拡張された縁部に溝状の係合受部を装着鍔部の板厚方向(胴部の軸方向)にずらして複数条備えてもよい。そして、係合受部が係合する胴部上の係合部を突条で構成するが、この突条の条数は1条でもよいし、あるいは、複数条の係合受部のピッチに合わせて胴部の軸方向にずらして並んだ複数条でもよい。しかしながら、胴部上の係合部を突条や突起等で構成して胴部の外周面から突出させると、コイル取付工程において、係合部(突条や突起等)がコイルの内周面に引っ掛かって組立作業を滞らせる虞がある。これに対し、胴部上の係合部を胴部の外周面から突出しない構成(外周面を凹ませて構成された溝や凹み等)にすれば、コイル取付工程において、胴部とコイルの内周面とが引っ掛かり難くなり、リアクトルの組立作業を滞りなく行い易くなるので、好適である。
【0048】
また、上記各実施形態では、本発明における係合ストッパーとして突起構造の係合ストッパー122D,222D,223D,323Dを例示したが、本発明はこれに限定されない。要は、係合部と係合受部との係合状態を維持可能であれば、どのような構成の係合ストッパーを採用してもよい。
【0049】
例えば、
図8の第5の実施形態に示すように、リアクトル用ボビン520において、胴部521の外周面に形成された凹部521Eと、装着鍔部522に突設された凸部522Eとにより係合ストッパーを構成し、凹部521Eと凸部522Eとの係合により係合受部521Cと係合部522Cとの係合状態(装着鍔部522の装着状態)を維持可能としてもよい。あるいは、装着鍔部の嵌合入口を閉成可能な短冊部材(図示せず)を係合ストッパーとして採用し、胴部に装着された装着鍔部の嵌合入口を係合ストッパー(短冊部材)で閉成することにより、係合部と係合受部との係合状態の維持、さらには装着鍔部の胴部からの脱落阻止を実現してもよい。
【0050】
さらに、上記各実施形態では、装着鍔部122,222,223,323を略C字状または略E字状等の単一部材で構成する旨を例示したが、本発明はこれに限定されない。要は、胴部の他端部に装着可能であれば、どのような構成の装着鍔部を採用してもよい。例えば、2つの略C字状の枠部材を向かい合わせて矩形枠状の装着鍔部を構成可能とし、鍔部装着工程においては、2つの枠部材の間に胴部を挟み、この状態で枠部材の端部同士を係合して胴部に装着鍔部を装着するように構成してもよい。
【0051】
また、上記各実施形態に記載のコイル110は、平角線材をエッジワイズ巻きで巻回して構成されているが、本発明はこれに限定されない。要は、電線を巻回して構成されるコイルであれば、その態様は問わない。例えば、丸線(断面円形状の電線)を巻回して構成されるコイルを本発明のリアクトルやリアクトルの製造方法に適用してもよい。
【符号の説明】
【0052】
100 リアクトル
110 コイル
111 空芯部
120,220,320,420,520 リアクトル用ボビン
121,221,321,421,521 胴部
121C,221C,321C,421C,521C 係合受部
122,222,223,323,422,522 装着鍔部
1221 第1片
1222 第2片
1223 第3片
122A,223A,323A,422A 嵌合空部
122B,223B,323B 嵌合入口
122C,222C,223C,323C,422C,522C 係合部
122D,222D,223D,323D 係合ストッパー
130 磁性コア
131 コアブロック
132 脚部
521E 凹部
522E 凸部