(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】制御装置
(51)【国際特許分類】
B60L 58/13 20190101AFI20230829BHJP
B60L 55/00 20190101ALI20230829BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20230829BHJP
H02J 7/34 20060101ALI20230829BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20230829BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20230829BHJP
B60L 50/75 20190101ALI20230829BHJP
B60L 58/40 20190101ALI20230829BHJP
G01C 21/26 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
B60L58/13
B60L55/00
H02J7/00 P
H02J7/00 302A
H02J7/00 X
H02J7/34 D
H02J7/00 B
B60L50/60
B60L15/20 J
B60L50/75
B60L58/40
G01C21/26 A
(21)【出願番号】P 2019131005
(22)【出願日】2019-07-16
【審査請求日】2022-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100183689
【氏名又は名称】諏訪 華子
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】平光 雄介
【審査官】井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-088147(JP,A)
【文献】特開2015-211482(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 58/13
B60L 55/00
H02J 7/00
H02J 7/34
B60L 50/60
B60L 15/20
B60L 50/75
B60L 58/40
G01C 21/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電装置で発電された電力を蓄電可能且つ蓄電された電力を外部の放電器に供給可能に構成された蓄電装置を具備する車両の制御装置であって、
前記車両の現在位置の情報を取得する位置情報取得部と、
前記車両の目的地の情報を取得する目的地情報取得部と、
前記目的地の電力を管理する管理システムから、前記外部の放電器であって前記目的地に設けられた放電器に前記車両が放電すべき目的地放電量と前記放電器
が前記車両から受け入れ可能な電力の値である受電能力とを取得する通信部と、
前記目的地放電量と前記受電能力とに基づいて前記目的地放電量の放電に要する放電時間を算出するとともに、前記放電時間の間に前記発電装置により発電される目的地発電量を算出する算出部と、
前記目的地放電量と前記目的地発電量とに基づいて前記蓄電装置の目標充電率を設定する設定部と、
前記車両が前記目的地に到着する際に前記蓄電装置の充電率が前記目標充電率に到達するように前記発電装置の動作を制御する制御部と、を備える
ことを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記車両が前記目的地に到着する際に前記蓄電装置の充電率が前記目標充電率に到達するために前記発電装置が出力すべき必要出力が、前記発電装置を最高効率で作動させた場合に出力される最適燃費出力以下であるか否かを判定する判定部を備え、
前記制御部は、前記判定部により前記必要出力が前記最適燃費出力以下であると判定された場合に、前記発電装置を最高効率で前記目標充電率に到達するまで作動させたあと、前記目標充電率を維持するように前記発電装置を作動させる
ことを特徴とする請求項1記載の制御装置。
【請求項3】
前記算出部は、前記判定部により前記必要出力が前記最適燃費出力を上回ると判定された場合に、前記車両が前記目的地に到着するまでに要する走行時間と前記放電時間との間に前記目的地放電量を確保するために前記発電装置が出力すべき略最適燃費出力を算出し、前記放電時間の間に前記発電装置を前記略最適燃費出力で作動させて得られる目的地略最適発電量を算出し、
前記設定部は、前記判定部により前記必要出力が前記最適燃費出力を上回ると判定された場合に、前記目的地放電量と前記目的地略最適発電量とに基づいて前記目標充電率を再設定し、
前記制御部は、前記判定部により前記必要出力が前記最適燃費出力を上回ると判定された場合には、前記車両が前記目的地に到着する際に前記蓄電装置の充電率が前記再設定された目標充電率に到達するように、前記発電装置を前記略最適燃費出力で作動させる
ことを特徴とする請求項2記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電装置で発電された電力を蓄電し、その電力を外部の放電器に供給しうる蓄電装置を具備する車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載された発電装置や蓄電装置を車外の電力エネルギーマネージメントに活用する技術が提案されている。例えば、施設や地域の電力の需給調整を目的として、当該施設や地域を目的地とする車両の蓄電装置の目標蓄電残量を設定する管理システム(電力需給システム)が知られている。また、特許文献1には、車両の予測入庫時刻を受信して、予測入庫時刻を越える期間の最適運用計画を作成するとともに、予測入庫時刻での目標蓄電残量を車両に送信する電力需給システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の電力需給システムでは、目標蓄電残量を導出する際に車両側の発電効率が考慮されていない。このため、車両の制御装置は、目標蓄電残量を確保するために車載発電装置を発電効率の悪い状態で作動させるおそれがある。これにより、車両側の発電コストが高騰する可能性がある。従って、車両の制御装置には、電力需給システムから受信した目標蓄電残量を確保するとともに車両側の発電コストの高騰化を抑制するように車載発電装置を制御することが求められる。
【0005】
本件の制御装置は、このような課題に鑑み案出されたもので、車両の目的地の電力を管理する管理システムから要求された電力量を確保しつつ車両側の発電コストの高騰化を抑制することを目的の一つとする。なお、この目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)ここで開示する制御装置は、発電装置で発電された電力を蓄電可能且つ蓄電された電力を外部の放電器に供給可能に構成された蓄電装置を具備する車両の制御装置であって、前記車両の現在位置の情報を取得する位置情報取得部と、前記車両の目的地の情報を取得する目的地情報取得部と、前記目的地の電力を管理する管理システムから、前記外部の放電器であって前記目的地に設けられた放電器に前記車両が放電すべき目的地放電量と前記放電器が前記車両から受け入れ可能な電力の値である受電能力とを取得する通信部と、前記目的地放電量と前記受電能力とに基づいて前記目的地放電量の放電に要する放電時間を算出するとともに、前記放電時間の間に前記発電装置により発電される目的地発電量を算出する算出部と、前記目的地放電量と前記目的地発電量とに基づいて前記蓄電装置の目標充電率を設定する設定部と、前記車両が前記目的地に到着する際に前記蓄電装置の充電率が前記目標充電率に到達するように前記発電装置の動作を制御する制御部と、を備える。
【0007】
(2)前記制御装置は、前記車両が前記目的地に到着する際に前記蓄電装置の充電率が前記目標充電率に到達するために前記発電装置が出力すべき必要出力が、前記発電装置を最高効率で作動させた場合に出力される最適燃費出力以下であるか否かを判定する判定部を備えることが好ましい。この場合、前記制御部は、前記判定部により前記必要出力が前記最適燃費出力以下であると判定された場合に、前記発電装置を最高効率で前記目標充電率に到達するまで作動させたあと、前記目標充電率を維持するように前記発電装置を作動させることが好ましい。
【0008】
(3)前記算出部は、前記判定部により前記必要出力が前記最適燃費出力を上回ると判定された場合に、前記車両が前記目的地に到着するまでに要する走行時間と前記放電時間との間に前記目的地放電量を確保するために前記発電装置が出力すべき略最適燃費出力を算出し、前記放電時間の間に前記発電装置を前記略最適燃費出力で作動させて得られる目的地略最適発電量を算出することが好ましい。この場合、前記設定部は、前記判定部により前記必要出力が前記最適燃費出力を上回ると判定された場合に、前記目的地放電量と前記目的地略最適発電量とに基づいて前記目標充電率を再設定することが好ましい。また、この場合、前記制御部は、前記判定部により前記必要出力が前記最適燃費出力を上回ると判定された場合には、前記車両が前記目的地に到着する際に前記蓄電装置の充電率が前記再設定された目標充電率に到達するように、前記発電装置を前記略最適燃費出力で作動させることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
開示の制御装置によれば、目的地に設けられた放電器に車両が放電すべき目的地放電量と放電時間の間に発電装置により発電される目的地発電量とに基づいて目標充電率を設定し、蓄電装置の充電率が設定された目標充電率に到達するように発電装置の動作を制御することで、目的地の電力の需給調整に貢献することができるとともに、車両側の発電コストの高騰化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係る制御装置が設けられた車両と管理システムの構成とを併せて示す図である。
【
図2】
図1の車両が備える発電装置の発電出力と発電効率との関係を示す図である。
【
図3】
図1の制御装置で実施される制御の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図5】
図1の制御装置の制御部で実施される制御の一例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面を参照して、制御装置について説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0012】
[1.全体構成]
実施形態の制御装置2は、
図1に示すように、発電装置6と発電装置6で発電された電力を蓄電可能なバッテリ3(蓄電装置)とを具備する車両1に搭載される。制御装置2は、車両1の目的地Xが設定された場合に、目的地Xの電力を管理する電力管理システム20(管理システム)と通信して、目的地Xの電力の需給調整に貢献するものである。制御装置2は、目的地Xにおいて車両1が放電すべき電力量WDb(以下「目的地放電量」という)を電力管理システム20から取得して、取得した目的地放電量WDbを目的地Xで放電できるように、発電装置6の発電効率を考慮しつつ発電装置6の動作を制御する。
【0013】
[1-1.電力管理システムの構成]
電力管理システム20は、施設や複数の施設の集合からなる地域の電力を管理する電子制御装置である。本実施形態の電力管理システム20は、ネットワークNを介して、車両1と通信可能に構成される。
【0014】
電力管理システム20には、発電器21,負荷装置22,蓄電器23,充放電器24などが接続される。発電器21は、電気を発電する機器であって、太陽光発電装置や風力発電装置などが挙げられる。また、電力管理システム20が地域の電力を管理するものである場合には、発電器21は火力発電施設であってもよい。負荷装置22は、電力を消費する電気機器であって、建物内の電化製品や工場内の製造機器などが挙げられる。充放電器24は、車両1に接続してバッテリ3の充放電を行う機器であって、建物内に設置された充放電ステーションや家庭用コンセントなどが挙げられる。
【0015】
電力管理システム20は、充放電器24が設けられた場所が車両1の目的地Xとして設定された場合に、車両1が目的地Xに到着する予定の時刻t1(以下、「目的地到着時刻」という)を車両1から受信して、目的地Xにおいて車両1が放電すべき目的地放電量WDbを算出して、算出した目的地放電量WDbを車両1に送信する。
【0016】
具体的には、電力管理システム20は、目的地到着時刻t1における電力不足の有無を判定し、目的地到着時刻t1において電力が不足すると判定した場合に、電力管理システム20が管理する施設や地域の電力需給を予測して目的地放電量WDbの算出に必要な値を算出する。目的地放電量WDbの算出に必要な値としては、目的地到着時刻t1に発生している電力不足が解消する時刻txや目的地到着時刻t1から時刻txまでの間に予測される電力需要と発電電力との差ΔW(不足電力)の総量が挙げられる。
【0017】
電力需給は、例えば、負荷装置22による電力需要や発電器21による発電電力の予測値に基づき予測される。負荷装置22による電力需要は、負荷装置22の過去の消費電力の履歴から予測することができる。また、発電器21による発電電力は、発電器21が太陽光発電装置である場合、気象情報サーバから取得した日射量や日の出日の入りの予測情報に基づいて予測することができる。
【0018】
電力管理システム20は、算出した目的地到着時刻t1から時刻txまでの間に予測される電力需要と発電電力との差ΔW(不足電力)の総量を需給調整に貢献しうる車両の台数NVで除して、以下の式1のように、目的地放電量WDbを算出する。
【0019】
【0020】
ここで、需給調整に貢献しうる車両の台数NVは、目的地到着時刻t1の時点で充放電器24に接続されていて、且つ、需給調整に貢献できる程度に十分な電力量が蓄電されている車両の台数である。需給調整に貢献しうる車両の台数NVは、統計的に算出された固定値であってもよいし、車両1から目的地到着時刻t1を受信する前に電力管理システム20と通信した車両の台数から推定されてもよい。
【0021】
なお、本実施形態の電力管理システム20は、目的地到着時刻t1において電力が不足しないと判定した場合には、車両1からの放電が不要であると判断して、目的地放電量WDbを0に設定して車両1に送信する。
【0022】
また、電力管理システム20は、充放電器24の受電能力Psを記憶しており、算出した目的地放電量WDbを車両1に送信する際に充放電器24の受電能力Psも併せて送信する。受電能力Psとは、充放電器24が車両から受け入れ可能な電力の値であって、充放電器24ごとに値が設定されている。
【0023】
[1-2.車両の構成]
本実施形態の制御装置2が設けられた車両1は、バッテリ3を動力源とする駆動用モータ4が搭載された電動車両(電気自動車,プラグインハイブリッド自動車など)である。
【0024】
バッテリ3は、リチウムイオン二次電池,ニッケル水素電池などの二次電池であり、発電装置6の発電電力を蓄電可能、且つ、駆動用モータ4に電力を放電可能に構成される。また、バッテリ3は、車両1の外部の充放電器24から供給される電力を蓄電可能、且つ、蓄電された電力を充放電器24に放電(供給)可能に構成される。バッテリ3と駆動用モータ4とを接続する電気回路上には電圧変換用のインバータ5(INV)が介装される。
【0025】
発電装置6は、車両の走行に必要な電力を発電可能な装置である。本実施形態の発電装置6は、車載燃料を消費して発電するもので、車両1の走行状態に関係なく発電可能に構成される。本実施形態では、発電装置6として、水素や一酸化炭素の酸化反応に伴う自由エネルギーの変化を電気エネルギーに変換する燃料電池(FC)を例示する。燃料電池の具体例としては、固体酸化物型燃料電池(SOFC),溶融炭酸塩型燃料電池(MCFC),固体高分子型燃料電池(PEFC;Polymer Electrolyte Fuel Cell),リン酸型燃料電池(PAFC;Phosphoric Acid Fuel Cell),アルカリ電解質型燃料電池(AFC;Alkaline Fuel Cell)などが挙げられる。
【0026】
発電装置6とバッテリ3とを接続する電気回路上には、電圧変換用のコンバータ7(DC-DCコンバータ,CNV)が介装される。また、バッテリ3と発電装置6との間の電気回路上には、バッテリ3の電圧Vを検出する電圧センサ8と、バッテリ3の入出力電流Iを検出する電流センサ9とが設けられる。電圧センサ8及び電流センサ9で検出された情報は、制御装置2に送られる。
【0027】
車両1には、さらに、外部充放電装置10と入力装置11と測位装置12と通信装置13とが設けられる。外部充放電装置10(車載充放電器,OBC;On Board Charger)は、充放電器24から供給される電力によるバッテリ3の充電や充放電器24へのバッテリ3の放電が実施される際に、電力変換を担当する変換器であって、充放電器24と接続可能に構成される。
【0028】
入力装置11は、例えばタッチパネルや各種ボタン等であり、車両1の目的地Xの情報(緯度,経度,高さの情報)を入力可能に構成される。入力装置11に入力された目的地Xの情報は、制御装置2に送られる。
【0029】
測位装置12は、GNSS(Global Navigation Satellite System,全球測位衛星システム)や車速センサ,舵角センサ,ヨーレイトセンサ(いずれも図示せず)などの検出情報に基づいて、車両1の現在位置を計測するための電子制御装置である。ここでは世界測地系を基準として、車両1の現在位置の情報(緯度,経度,高さの情報)が計測されるとともに、車両1の現在位置における時刻や曜日の情報が取得される。測位装置12で計測,取得された情報は、制御装置2に送られる。
【0030】
通信装置13は、ネットワークNを介して電力管理システム20と通信を行うための電子制御装置である。通信装置13は、制御装置2で算出された目的地到着時刻t1を取得して電力管理システム20に送信するとともに、電力管理システム20から目的地放電量WDb及び充放電器24の受電能力Psを受信して制御装置2に伝達する。
【0031】
制御装置2は、例えばマイクロプロセッサやROM,RAM等を集積したLSIデバイスや組み込み電子デバイスとして構成された電子制御装置(Electronic Control Unit)であり、車両1に設けられた車載ネットワーク網の通信ラインに接続される。本実施形態の制御装置2は、詳細な地図データを内蔵するナビゲーションシステムと一体に構成されており、地図データを使って車両1の現在位置及び目的地Xの検知(認識)や目的地Xへの経路探索が可能に構成される。なお、制御装置2が、入力装置11や測位装置12や通信装置13の機能を備えていてもよい。
【0032】
[2.制御概要]
制御装置2は、電力管理システム20から取得した目的地放電量WDbを目的地Xで放電するために、車両1の現在位置から目的地Xまでの移動中(以下、「車両移動中」という)に発電装置6の動作を発電装置6の発電効率を考慮して制御するものである。
【0033】
図2に燃料電池の発電出力Pgと発電効率との関係を示すグラフを例示する。ここで、発電効率とは、消費される燃料量に対して得られる電力量の比である。
図2に示すように、発電装置6には、発電効率が最も高くなる特定の出力がある。以下、このときの発電出力を最適燃費出力Pghという。発電装置6は、発電出力Pgが最適燃費出力Pghよりも高いほど発電効率が低くなり、最適燃費出力Pghよりも低いほど発電効率が低くなるという性質をもつ。
図2には、燃料電池の場合を例示したが、燃料電池以外の発電装置も同様の特性を有する。
【0034】
このため、発電装置6を作動させる際には、できるかぎり発電装置6に最適燃費出力Pghを出力させるように制御することが好ましい。しかしながら、車両移動中には、車両1の走行に必要な電力も発電する必要があるため、発電装置6に最適燃費出力Pghを出力させるように制御していては車両移動中に十分な電力量を確保できない可能性がある。
【0035】
そこで、本実施形態の制御装置2は、目的地Xでの放電中にも発電装置6で発電できることを鑑みることで、車両移動中に発電装置6を最高効率で、すなわち、最適燃費出力Pghで作動させられる機会を多く確保する。これにより、制御装置2は、発電装置6の発電効率を考慮しつつ目的地Xの電力需給の調整に貢献する。
【0036】
詳述すると、制御装置2は、電力管理システム20から取得した目的地放電量WDbと受電能力Psとから、目的地Xでの放電にかかる時間である放電時間Tb(=WDb÷Ps)を算出する。さらに、放電時間Tbの間に発電装置6により発電される目的地発電量WCbを算出し、算出した目的地発電量WCbを目的地放電量WDbから減じた放電時必要電力量W1b(=WDb-WCb)に相当する放電時必要充電率SOC1bを目標充電率SOC1として設定する。その後、制御装置2は、車両1が目的地Xに到着する際に、バッテリ3の充電率SOCが目標充電率SOC1に到達するように発電装置6の動作を制御する。なお、本実施形態では、バッテリ3の最大充電容量に対する電力残量(蓄電量)の割合を百分率で表したものをバッテリ3の充電率SOCとする。
【0037】
さらに、本実施形態の制御装置2は、車両1が目的地Xに到着する際に、蓄電装置3の充電率SOCが目標充電率SOC1に到達するために発電装置6が出力すべき必要出力Pgrが最適燃費出力Pgh以下であるか否かを判定する。制御装置2は、この判定結果に応じて車両移動中の発電装置6の動作を制御することで、発電コストの高騰化の抑制を図る。
【0038】
制御装置2は、必要出力Pgrが最適燃費出力Pgh以下であると判定した場合には、車両移動中の発電装置6を目標充電率SOC1に到達するまで最高効率で作動させることで、発電に消費される燃料量を抑制する。また、目標充電率SOC1到達後は、目標充電率SOC1を維持するように発電装置6の動作を制御する。
【0039】
一方で、制御装置2は、必要出力Pgrが最適燃費出力Pghを上回ると判定した場合には、最適燃費出力Pghになるべく近い出力であって、車両移動中と放電中との間に目的地放電量WDbを確保可能な発電装置6の出力(以下、「略最適燃費出力Pgh′」という)を算出する。そして、目標充電率SOC1を再設定するとともに、移動中の発電装置6を略最適燃費出力Pgh′で作動させることで、発電に消費される燃料量を抑制する。
【0040】
本実施形態の制御装置2は、車両1の目的地Xが設定された場合であって、設定された目的地Xに充放電器24が設けられているとともに、目的地Xの電力を管理する電力管理システム20との通信が可能な場合に、上記の制御を実施する。言い換えれば、本実施形態の制御装置2は、以下の3つの条件が成立した場合に上記の制御を実施する。
<条件1>車両1の目的地Xが設定されること
<条件2>目的地Xに充放電器24が設けられていること
<条件3>電力管理システム20との通信が可能であること
【0041】
[3.制御構成]
図1に示すように、制御装置2には、上述の制御を実施するための要素として、位置情報取得部2A,目的地情報取得部2B,第一算出部2C,通信部2D,第二算出部2E,設定部2F,判定部2G,制御部2Hが設けられる。これらの各要素は電子回路(ハードウェア)によって実現してもよく、ソフトウェアとしてプログラミングされたものとしてもよいし、あるいはこれらの機能のうちの一部をハードウェアとして設け、他部をソフトウェアとしたものであってもよい。
【0042】
位置情報取得部2Aは、測位装置12で計測,取得された車両1の現在位置の情報とその位置での時刻とを取得して、取得した情報を第一算出部2Cに伝達するものである。また、目的地情報取得部2Bは、入力装置11に入力された車両1の目的地Xの情報を取得して、取得した情報を第一算出部2Cに伝達するものである。
【0043】
第一算出部2Cは、電力管理システム20との通信前に算出可能な各種値を算出し、算出した値を各要素2D~2Gに伝達するものである。具体的には、第一算出部2Cは、位置情報取得部2Aから取得した時刻を目的地Xが設定された現在時刻t0として、以下の値を算出する。
・目的地Xに到着すると予測される目的地到着時刻t1
・車両1の現在位置から目的地Xに到着するまでの走行時間Ta(=t1-t0)
・現在地から目的地Xまでの走行距離La
・目的地Xまでの移動に必要な走行中放電量WDa
・現在時刻t0におけるバッテリ3の現在地充電率SOC0
・現在地充電率SOC0に相当する現在地蓄電量W0
【0044】
ここで、目的地到着時刻t1,走行時間Ta,走行距離Laは、ナビゲーションシステムに内蔵された地図データと位置情報取得部2A及び目的地情報取得部2Bから取得した情報とに基づき探索された経路から算出される。また、走行中放電量WDaは、駆動用モータ4の電費ECに走行時間Taと走行距離Laとを乗じた値として算出される。
【0045】
現在地充電率SOC0は、例えば電圧センサ8で検出されたバッテリ3の電圧Vに基づき算出される。あるいは、現在地充電率SOC0は、電流センサ9で検出されたバッテリ3の入出力電流Iを積算して電池容量の増減変化を追跡することで算出されてもよい。現在地蓄電量W0は、バッテリ3の最大充電容量と現在地充電率SOC0とに基づいて算出される。
【0046】
通信部2Dは、第一算出部2Cから取得した目的地到着時刻t1を電力管理システム20に送信し、車両1が目的地Xで放電すべき目的地放電量WDbと目的地Xに設けられた充放電器24の受電能力Psとを電力管理システム20から受信するものである。通信部2Dが受信した情報は、第二算出部2E,設定部2F,判定部2Gに伝達される。
【0047】
第二算出部2Eは、通信部2Dから取得した目的地放電量WDbと受電能力Psとに基づいて、目的地放電量WDbの放電にかかる放電時間Tb(=WDb÷Ps)を算出するとともに、放電時間Tbの間に発電装置6を作動させて得られる目的地発電量WCbを算出するものである。本実施形態の第二算出部2Eは、目的地発電量WCbとして、放電時間Tbの間に最適燃費出力Pghで発電装置6を作動させて得られる目的地最適発電量WCbh(=Pgh×Tb)を算出する。第二算出部2Eは、算出した値を設定部2F及び判定部2Gに伝達する。
【0048】
本実施形態の第二算出部2Eは、通信部2Dから取得した目的地放電量WDbが0を上回るか否かを判定する。第二算出部2Eは、目的地放電量WDbが0を上回る場合に、目的地Xにおいて車両1が放電する必要があると判断して、放電時間Tb及び目的地発電量WCbを算出する。なお、第二算出部2Eは、目的地Xにおいて車両1が放電する必要がないと判断した場合には、その旨を設定部2Fに伝達する。
【0049】
また、本実施形態の第二算出部2Eは、必要出力Pgrが最適燃費出力Pghを上回る旨の判定結果を判定部2Gから取得した場合に、略最適燃費出力Pgh′を算出し、放電時間Tbの間に略最適燃費出力Pgh′で発電装置6を作動させて得られる目的地略最適発電量WCbh′(=Pgh′×Tb)を算出する。
【0050】
第二算出部2Eは、現在位置から目的地Xまで走行して目的地Xで目的地放電量WDbを放電するために発電すべき電力である合計発電量WCtotalを算出し、合計発電量WCtotalから走行時間Taと放電時間Tbとの和を除した値〔=WCtotal÷(Ta+Tb)〕を略最適燃費出力Pgh′として算出する。合計発電量WCtotalは、走行中放電量WDaと目的地放電量WDbとの和から現在地蓄電量W0を減じた値(=WDa+WDb-W0)として算出される。
【0051】
設定部2Fは、通信部2Dから取得した目的地放電量WDbと、第二算出部から取得した目的地発電量WCbとに基づいて、目標充電率SOC1を設定するものである。具体的には、設定部2Fは、目的地放電量WDbから目的地発電量WCbを減じた放電時必要電力量W1b(=WDb-WCb)に相当する放電時必要充電率SOC1bを目標充電率SOC1として設定する。
【0052】
また、設定部2Fは、設定した目標充電率SOC1に到達するために、車両移動中に発電装置6が出力すべき必要出力Pgrを算出し、算出した値を判定部2Gに伝達する。設定部2Fは、車両移動中に発電装置6が発電すべき電力量を走行中発電量WCaとして、現在地蓄電量W0から走行中放電量WDaを減じた値を目標充電率SOC1として設定した放電時必要充電率SOC1bに相当する放電時必要電力量W1bから減じた値〔=W1b-(W0-WDa)〕を算出する。さらに、設定部2Fは、算出した走行中発電力WCaを走行時間Taで除すことで必要出力Pgr(=WCa÷Ta)を算出する。
【0053】
上述の通り、本実施形態では、目的地最適発電量WCbhが目的地発電量WCbとして算出されている。このため、設定部2Fは、目的地放電量WDbから目的地最適発電量WCbhを減じた最適放電時必要電力量W1bh(=WDb-WCbh)を放電時必要電力量W1bとして算出する。そして、最適放電時必要電力量W1bhに相当するバッテリ3の充電率である最適放電時必要充電率SOC1bhを目標充電率SOC1として設定する。また、設定部2Fは、最適放電時必要電力量W1bhから算出された走行中発電量WCa〔=W1bh-(W0-WDa)〕を走行時間Taで除して必要出力Pgrを算出する。
【0054】
本実施形態の設定部2Fは、必要出力Pgrが最適燃費出力Pgh以下である旨の判定結果を判定部2Gから取得した場合に、発電装置6の発電出力Pgを最適燃費出力Pghに設定する。一方で、本実施形態の設定部2Fは、必要出力Pgrが最適燃費出力Pghを上回る旨の判定結果を判定部2Gから取得した場合に、目標充電率SOC1を再設定するとともに、発電装置6の発電出力Pgを略最適燃費出力Pgh′に設定する。
【0055】
設定部2Fは、通信部2Dから取得した目的地放電量WDbと、第二算出部2Eから取得した目的地略最適発電量WCbh′とに基づき目標充電率SOC1を再設定する。設定部2Fは、目的地放電量WDbから目的地略最適発電量WCbh′を減じた略最適放電時必要電力量W1bh′(=WDb-WCbh′)を算出し、略最適放電時必要電力量W1b′に相当するバッテリ3の充電率を略最適放電時必要充電率SOC1bh′として算出する。そして、算出した略最適放電時必要充電率SOC1bh′を目標充電率SOC1として再設定する。
【0056】
なお、設定部2Fは、目的地Xにおいて車両1が放電する必要がない旨の判定結果を第二算出部2Eから取得した場合には、目標充電率SOC1として通常目標充電率SOC1nを設定する。ここで、通常目標充電率SOC1nとは、目的地Xにおいて車両1が放電する必要がない場合に設定される目標充電率であって、例えば、車両1を走行させることが可能な充電率SOCの最小値に設定される。
【0057】
判定部2Gは、必要出力Pgrが最適燃費出力Pgh以下であるか否かを判定するものである。判定部2Gは、必要出力Pgrが最適燃費出力Pgh以下であると判定した場合には、判定結果を制御部2Hに伝達する。一方で、判定部2Gは、必要出力Pgrが最適燃費出力Pghを上回ると判定した場合には、判定結果を第二算出部2E,設定部2F,制御部2Hに伝達する。
【0058】
制御部2Hは、車両1が目的地Xに到着する際に、バッテリ3の充電率SOCが設定部2Fで設定された目標充電率SOC1に到達するように車両移動中の発電装置6の動作を制御するものである。
【0059】
制御部2Hは、必要出力Pgrが最適燃費出力Pgh以下である旨の判定結果を判定部2Gから取得した場合に、設定された目標充電率SOC1、すなわち、最適放電時必要充電率SOC1bhにバッテリ3の充電率SOCが到達するように、発電装置6を最高効率で作動させる。また、制御部2Hは、車両移動中に目標充電率SOC1に至った後は、最適放電時必要充電率SOC1bhを維持するように発電装置6を作動させる。
【0060】
また、制御部2Hは、必要出力Pgrが最適燃費出力Pghを上回る旨の判定結果を判定部2Gから取得した場合に、設定された目標充電率SOC1、すなわち、略最適放電時必要充電率SOC1bh′にバッテリ3の充電率SOCが到達するように、発電装置6を略最適燃費出力Pgh′で作動させる。
【0061】
なお、制御部2Hは、目標充電率SOC1が通常目標充電率SOC1nに設定されている場合には、通常目標充電率SOC1nを維持するように発電装置6を作動させる。
【0062】
[4.フローチャート]
図3は、上述した制御装置の要素2A~2Gにおいて実施される制御の内容を説明するためのフローチャート例である。このフローチャートは、車両1の目的地Xが設定された場合に実施される。すなわち、上記の条件1~条件3の全てが成立した場合に実施される。
【0063】
ステップS1では、目的地Xが設定された時刻を現在時刻t0として、各種値(目的地到着時刻t1,走行時間Ta,走行距離La,走行中放電量WDa,現在地充電率SOC0,現在地蓄電量W0)が算出される。次にステップS2では、目的地Xの電力を管理する電力管理システム20から目的地放電量WDb及び受電能力Psが取得され、ステップS3において、取得した目的地放電量WDbが0を上回るか否かが判定される。
【0064】
ステップS3において、取得した目的地放電量WDbが0を上回らないと判定された場合には、目的地Xにおいて車両1が放電する必要がないと判断されて、目標充電率SOC1が通常目標充電率SOC1nに設定されて(ステップS4)、このフローを終了する。
【0065】
一方、ステップS3において、取得した目的地放電量WDbが0を上回ると判定された場合には、ステップS5に進み、放電時間Tbが算出される。続くステップS6では、放電時間Tbから目的地最適発電量WCbhが算出される。さらに、ステップS7において目的地放電量WDbと目的地最適発電量WCbhとから最適放電時必要電力量W1bhが算出されて、ステップS8において最適放電時必要電力量W1bhに相当する最適放電時必要充電率SOC1bhが算出される。その後、ステップS9において、目標充電率SOC1が最適放電時必要充電率SOC1bhに設定されて、ステップS10に進む。
【0066】
ステップS10では、必要出力Pgrが算出されて、ステップS11において、算出した必要出力Pgrが最適燃費出力Pgh以下であるか否かが判定される。ステップS10において、必要出力Pgrが最適燃費出力Pgh以下であると判定された場合には、ステップS12において発電装置6の発電電力Pgが最適燃費出力Pghに設定されて、このフローを終了する。
【0067】
一方で、ステップS10において、必要出力Pgrが最適燃費出力Pghを上回ると判定された場合には、ステップS20に進み、
図4に示すサブフローチャートを実施して、このフローを終了する。
図4は、最適燃費出力Pghになるべく近い出力で発電装置6を作動させて目的地放電量WDbを放電できるように目標充電率SOC1を再設定する「再設定処理」を説明するフローチャートである。
【0068】
図4に示すように、ステップS21では、合計発電量WCtotalが算出される。さらに、続くステップS22では、合計発電量WCtotalに基づき略最適燃費出力Pgh′が算出される。続くステップS23では、放電時間Tbの間に発電装置6を略最適燃費出力Pgh′で作動させて得られる目的地略最適発電量WCbh′を目的地放電量WDbから減じた略最適放電時必要電力量W1bh′が算出される。その後、ステップS24において、略最適放電時必要電力量W1bh′に相当する略最適放電時必要充電率SOC1bh′が算出されて、ステップS25に進む。ステップS25では、目標充電率SOC1として略最適放電時必要充電率SOC1bh′が設定されるとともに発電装置6の発電出力Pgが略最適燃費出力Pgh′に設定されて、このフローを終了する。
【0069】
図5は、上述した制御装置2の制御部2Hにおいて実施される制御の内容を説明するためのフローチャート例である。本フローチャートは、車両移動中、すなわち、車両1が現在位置から目的地Xへ向かっている間に所定の演算周期で実施される。言い換えれば、本フローチャートは、
図3のフローチャートが実施された後から車両1が目的地Xに到着するまでの間に所定の演算周期で実施される。
【0070】
なお、本フローチャート中で使用されるフラグFは、車両1が目的地Xに到着するまでの間に、バッテリ3の充電率SOCが目標充電率SOC1に到達したか否かを表す変数である。フラグFは、車両1の目的地Xが設定された時点では0に設定されており、バッテリ3の充電率SOCが目標充電率SOC1に到達した後は1に設定される。
【0071】
ステップU1では、バッテリ3の充電率SOCが算出されて、ステップU2においてバッテリ3の充電率SOCが設定された目標充電率SOC1以上であるか否かが判定される。ステップU2において、充電率SOCが目標充電率SOC1以上ではないと判定された場合には、ステップU3に進み、フラグFが1であるか否かが判定される。
【0072】
ステップU3において、フラグFが1ではない、すなわち、バッテリ3の充電率SOCが目標充電率SOC1に到達していないと判定された場合には、ステップU4に進み、設定された出力で発電装置6が作動させられて、このフローをリターンする。このとき、必要出力Pgrが最適燃費出力Pgh以下である場合には、最適燃費出力Pghを出力するように発電装置6が作動させられる。一方で、必要出力Pgrが最適燃費出力Pghを上回る場合には、略最適燃費出力Pgh′を出力するように発電装置6が作動させられる。
【0073】
このフローをリターンした後、充電率SOCが目標充電率SOC1以上となった場合には(ステップU2のYesルート)、ステップU5に進み、フラグFが1に設定される。その後、発電装置6が停止させられて(ステップU6)、このフローをリターンする。
【0074】
さらに、このフローをリターンした後、走行することで再び充電率SOCが目標充電率SOC1未満となった場合には(ステップU2のNoルート)、再度ステップU3に進む。このときフラグFは1となっているため、ステップU7において発電装置6が最適燃費出力Pghを出力するように作動させられて、このフローがリターンする。その後の演算周期では、発電装置6が最適燃費出力Pghで作動させられる処理(ステップU7)と発電装置6が停止させられる処理(ステップU6)とが繰り返し実施されることで、設定された目標充電率SOC1に充電率SOCが維持される。
【0075】
[5.作用,効果]
(1)上述した制御装置2は、車両1が放電すべき目的地放電量WDbと放電時間Tbの間に発電装置6により発電される目的地発電量WCbとに基づいて目標充電率SOC1を設定し、設定した目標充電率SOC1になるように発電装置6の動作を制御する。このように、放電中に発電可能な電力量(目的地発電量WCb)を踏まえることで、目的地放電量WDbよりも低い電力量を確保するように車両移動中の発電装置6の動作を制御すればよくなるため、車両移動中に発電装置6を最高効率で作動させられる機会を増やすことができる。これにより、目的地Xの電力の需給調整に貢献しつつ車両側の発電コストの高騰化を抑制することができる。
【0076】
また、上述した制御装置2は、目的地放電量WDbと充放電器24の受電能力Psとに基づき放電時間Tbを算出する。充放電器24の受電能力Psが低いほど放電時間Tbは長くなるため、充放電器24の受電能力Psを鑑みることで、放電中に発電可能な電力量(目的地発電量WCb)をより適切に算出することができる。
【0077】
(2)上述した制御装置2では、必要出力Pgrが最適燃費出力Pgh以下である場合に、発電装置6を最高効率で目標充電率SOC1に到達するまで作動させる。発電装置6には、上述の通り、発電出力Pgが最適燃費出力Pghよりも高いほど、或いは、低いほど発電効率が低くなるという性質がある。このため、車両移動中に発電装置6を最高効率で作動させて目的地放電量WDbを放電できる場合には、発電装置6を最高効率で作動させることで、発電コストの高騰化を抑制することができる。また、発電装置6を目標充電率SOC1に到達するまで作動させた後、充電率SOCを維持するように制御することで、より確実に目的地X到着時に目標充電率SOC1に到達することができる。
【0078】
特に、上述した制御装置2では、放電時間Tbの間に最適燃費出力Pghで発電装置6を作動させて得られる目的地最適発電量WCbhが目的地発電量WCbとして算出されている。このため、必要出力Pgrが最適燃費出力Pgh以下である場合には、車両移動中だけでなく放電中にも発電装置6を最高効率で作動させることができるため、発電コストの高騰化をより抑制することができる。
【0079】
(3)上述した制御装置2では、必要出力Pgrが最適燃費出力Pghを上回る場合に、目標充電率SOC1を再設定するとともに、発電装置6を略最適燃費出力Pgh′で作動させる。すなわち、上述した制御装置2では、車両移動中に最適燃費出力Pghを上回る出力で発電しなければならないと判定した場合には、できるだけ最適燃費出力Pghに近い出力で発電するように発電装置6を作動させることで、発電コストの高騰化を抑制することができる。
【0080】
[6.その他]
上述した制御装置2や車両1や電力管理システム20の構成は一例であって上述した構成に限られない。制御装置2の制御開始条件には、上記の条件1~条件3に加えて、目的地Xの電力需給に貢献する意思が車両の運転者にあることが含まれていてもよい。
【0081】
目的地放電量WDbの算出方法は上述の方法に限らない。本実施形態では、目的地到着時刻t1に電力が不足すると判定した場合に目的地放電量WDbを算出するものとしたが、目的地到着時刻t1から所定時間が経過するまでの間に電力不足が発生する場合にも、目的地放電量WDbを算出してもよい。所定時間は、例えば、車両の再出発時刻が決まっている場合には再出発時刻までとすればよい。この場合、制御装置は、目的地到着後から電力不足が発生するまでの間の待機中にも発電できることを踏まえて、目標充電率を設定してもよい。
【0082】
本実施形態では、発電装置6として燃料電池を例示したが、燃料電池に加えて、又は、代えて、エンジンやタービンが用いられてもよい。また、制御装置は、駆動用モータ4で発電される回生電力を踏まえて、目標充電率の設定や発電装置の動作を制御してもよい。
【0083】
本実施形態の制御装置2では、車両移動中の発電装置6を最高効率で目標充電率SOC1に到達するまで作動させた後、充電率SOCを維持するように制御するものとして説明したが、車両移動中の発電装置6を断続的に最高効率で作動させてもよい。駆動用モータ4の回生電力を考慮する場合には、発電装置6を断続的に作動させることで、車両移動中にバッテリ3が過充電となることを防ぐことができる。
【0084】
本実施形態の制御装置2では、目的地発電量WCbは放電時間Tbの間に最適燃費出力Pghで発電装置6を作動させて得られる発電量(目的地最適発電量WCbh)としたが、目的地発電量WCbは放電時間Tbの間に得られる発電量であれば目的地最適発電量WCbhでなくてもよい。また、本実施形態では、放電時間Tbは目的地放電量WDbと受電能力Psとから算出されるものとして説明したが、放電時間Tbは外部充放電装置10の放電能力にも基づいて算出されてもよい。
【0085】
本実施形態では、目標充電率SOC1が、目的地放電量WDbから目的地発電量WCbを減じた放電時必要電力量W1bに相当する放電時必要充電率SOC1bに設定されるものとして説明したが、目標充電率SOC1の設定方法はこれに限らない。例えば、目標充電率SOC1は、目的地Xでの放電完了後にバッテリ3が空充電とならないようにするために、放電時必要充電率SOC1bよりも高い値に設定されてもよい。また、放電時必要充電率SOC1bがバッテリ3の満充電を示す充電率を超える場合、目標充電率SOC1は満充電を示す充電率に設定されてもよい。駆動用モータ4による回生発電を考慮する場合には、満充電を示す充電率よりも低い充電率を目標充電率SOC1として設定してもよい。
【符号の説明】
【0086】
1 車両
2 制御装置
2A 位置情報取得部
2B 目的地情報取得部
2C 第一算出部
2D 通信部
2E 第二算出部
2F 設定部
2G 判定部
2H 制御部
3 バッテリ(蓄電装置)
4 駆動用モータ
5 インバータ
6 発電装置
7 コンバータ
8 電圧センサ
9 電流センサ
10 外部充放電装置
11 入力装置
12 測位装置
13 通信装置
20 電力管理システム(管理システム)
21 発電器
22 負荷装置
23 蓄電器
24 充放電器
t0 現在時刻
t1 目的地到着時刻
Ta 走行時間
Tb 放電時間
La 走行距離
SOC 充電率
SOC0 現在地充電率
SOC1 目標充電率
SOC1b 放電時必要充電率
SOC1bh 最適放電時必要充電率
SOC1bh′ 略最適放電時必要充電率
SOC1n 通常目標充電率
W0 現在地蓄電量
W1b 放電時必要電力量
W1bh 最適放電時必要電力量
W1bh′ 略最適放電時必要電力量
WDa 走行中放電量
WDb 目的地放電量
WCa 走行中発電量
WCb 目的地発電量
WCbh 目的地最適発電量
WCbh′ 目的地略最適発電量
WCtotal 合計発電量
Pg 発電装置の発電出力
Pgh 最適燃費出力
Pgh′ 略最適燃費出力
Ps 受電能力
EC モータの電費