(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/534 20060101AFI20230829BHJP
A61F 13/535 20060101ALI20230829BHJP
A61F 13/475 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
A61F13/534 110
A61F13/535 100
A61F13/535 200
A61F13/475 111
(21)【出願番号】P 2019135485
(22)【出願日】2019-07-23
【審査請求日】2022-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金田 悠太郎
【審査官】山尾 宗弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-017531(JP,A)
【文献】特開2017-189243(JP,A)
【文献】特開2016-129529(JP,A)
【文献】特開2011-55960(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/534
A61F 13/535
A61F 13/475
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着時において装着者の腹部側に位置する前身頃領域、股下に位置する股下領域、及び背部側に位置する後身頃領域を備え、平面視が瓢箪型であり、前記瓢箪型の最幅狭の領域が前記股下領域内に位置している吸収性物品であって、
前記装着時の肌対向面側に配置された液透過性のトップシートと、
前記肌対向面の反対側に配置された液不透過性のバックシートと、
前記トップシートと前記バックシートとの間に配置された吸収体と、
前記吸収体の長手方向に沿って延在し、前記トップシートに接続された一対の立体ギャザーと、
を備え、
前記立体ギャザーは、一端が起立線となる固定端であって、他端が自由端であり、
前記吸収体は、前記股下領域において少なくとも前記トップシート側に配置された上層吸収体と前記バックシート側に配置された下層吸収体と、を有し、
平面視において、前記股下領域よりも外側に膨らみ、前記起立線よりも外側に位置する耳部が前記後身頃領域に形成されており、
前記耳部は前記股下領域における前記上層吸収体と一体的であり、
前記上層吸収体と前記下層吸収体との間に配置され、高吸収性重合体の粒子を複数含むSAP層
と、
前記上層吸収体、前記SAP層及び前記下層吸収体からなる吸収層の積層構造と、
を備え、
前記SAP層は、前記吸収体の長手方向に沿って延在し、前記吸収体の幅方向中心から前記吸収体の幅方向端部に向かって15mm以上27.5mm以下に内側端部が位置し、
前記SAP層は、前記吸収体の幅方向中心から前記吸収体の幅方向端部に向かって60mm以上72.5mm以下に外側端部が位置し、
且つ、一対の前記立体ギャザーの前記起立線よりも内側に前記SAP層の前記外側端部が配置されており、
前記SAP層の幅は、35mm以上55mm以下であり、
前記SAP層における液体の総吸収量は、180ml以上600ml以下であり、
前記上層吸収体は、SAPとパルプと、を有し、
前記上層吸収体において、SAP量は16g以上26g以下であり、パルプ量は27g以上42g以下であり、
平面視において、前記下層吸収体は前記耳部とは重ならず、
前記下層吸収体は、パルプを有し、
前記下層吸収体において、前記パルプ量は7g以上28g以下である、
吸収性物品。
【請求項2】
前記SAP層において、SAPの坪量は100g/m
2以上200g/m
2以下であり、SAP量は4.2g以上9.5g以下である、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記耳部は、パルプを有し、
前記耳部において、パルプの坪量は250g/m
2以上310g/m
2以下である、
請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
平面視において、前記下層吸収体は矩形状を有する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつ、吸収性パッド(尿パッド)、生理用品等の吸収性物品が知られている。吸収性物品は、パルプや高吸収性重合体(Super Absorbent Polymer:SAP)により形成され、尿や体液等の液体を吸収する吸収体を備えている。特許文献1には、上層吸収体及び下層吸収体と、上層吸収体と下層吸収体の間に配置され、複数の高吸収性重合体(Super Absorbent Polymer:SAP)を含むSAP層と、を備えた吸収性物品が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、吸収性物品には幅方向外側に尿等の液体が漏れる横漏れを抑制するために立体ギャザーが備えられている。立体ギャザーは、液不透過性を有し、液体の横漏れを抑制し得る。しかしながら、立体ギャザーよりも吸収性物品の幅方向外側にSAP層が存在すると、SAP層の幅方向外側から液体が漏出した場合には、立体ギャザーで液体の横漏れを抑制することができない。特許文献1には立体ギャザーとSAP層との位置関係が記載されておらず、従来の吸収性物品では、液体の横漏れを抑制することができない虞がある。
【0005】
そこで、本発明は、液体の横漏れを抑制し得る吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、一対の立体ギャザーの起立線よりも内側に配置されたSAP層を備えている。
【0007】
詳細には、本発明は、吸収性物品であって、装着時において装着者の腹部側に位置する前身頃領域、股下に位置する股下領域、及び背部側に位置する後身頃領域を備え、平面視が瓢箪型であり、前記瓢箪型の最幅狭の領域が前記股下領域内に位置している吸収性物品であって、前記装着時の肌対向面側に配置された液透過性のトップシートと、前記肌対向面の反対側に配置された液不透過性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に配置された吸収体と、前記吸収体の長手方向に沿って延在し、前記トップシートに接続された一対の立体ギャザーと、を備え、前記立体ギャザーは、一端が起立線となる固定端であって、他端が自由端であり、前記起立線は、前記吸収体の幅方向中心から150mm以上220mm以下の位置に存在し、前記吸収体は、前記股下領域において少なくとも前記トップシート側に配置された上層吸収体と前記バックシート側に配置された下層吸収体と、を有し、平面視において、前記股下領域よりも外側に膨らみ、前記起立線よりも外側に位置する耳部が前記後身頃領域に形成されており、前記耳部は前記股下領域における前記上層吸収体と一体的であり、前記上層吸収体と前記下層吸収体との間に配置され、高吸収性重合体の粒子を複数含むSAP層を備え、前記SAP層は、前記吸収体の長手方向に沿って延在し、前記吸収体の幅方向中心から前記吸収体の幅方向端部に向かっ
て15mm以上27.5mm以下に内側端部が位置し、前記SAP層は、前記吸収体の幅方向中心から前記吸収体の幅方向端部に向かって60mm以上72.5mm以下に外側端部が位置し、前記SAP層の幅は、35mm以上55mm以下であり、前記SAP層における液体の総吸収量は、180ml以上600ml以下であり、前記上層吸収体は、SAPとパルプと、を有し、前記上層吸収体において、SAP量は16g以上26g以下であり、パルプ量は27g以上42g以下であり、平面視において、前記下層吸収体は前記耳部とは重ならず、前記下層吸収体は、パルプを有し、前記下層吸収体において、前記パルプ量は7g以上28g以下である。
【0008】
上記の吸収性物品では、前記SAP層において、SAPの坪量は100g/m2以上200g/m2以下であり、SAP量は4.2g以上9.5g以下であってもよい。
【0009】
上記の吸収性物品では、前記耳部は、パルプを有し、前記耳部において、パルプの坪量は250g/m2以上310g/m2以下であってもよい。
【0010】
上記の吸収性物品では、平面視において、前記下層吸収体は矩形状を有していてもよい。
【発明の効果】
【0011】
上記の吸収性物品であれば、液体の横漏れを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】
図3は、吸収性パッドについての官能試験の結果を示す表である。
【
図4】
図4は、吸収性パッドについての官能試験の結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態は、本発明の実施形態の一例であり、本発明の技術的範囲を以下の態様に限定するものではない。
【0014】
<実施形態1>
図1は、実施形態1に係る吸収性パッド1(本願でいう「吸収性物品」の一例である)を肌対向面側から見た平面図である。吸収性パッド1は、尿等の液体を吸収して保持するために用いられ、単独でも使用することができるし、使い捨ておむつの内側に重ねて使用することもできる。吸収性パッド1は、装着時において装着者の腹部側に位置する前身頃領域3、股下に位置する股下領域5、及び背部側に位置する後身頃領域7を備えている。吸収性パッド1は、長手方向に見て、前身頃領域3、股下領域5及び後身頃領域7に区分される。なお、長手方向に直交する方向が吸収性パッド1の幅方向(短手方向)となる。吸収性パッド1は、平面視において、股下領域5がくびれた瓢箪形状を有している。このように、吸収性パッド1は、瓢箪型の最幅狭の領域が股下領域5内に位置している。
【0015】
なお、以下では、吸収性パッド1を長手方向に見た場合に、相対的に前身頃領域3側を「前」や「前側」や「前方」や「腹部側」と称し、相対的に後身頃領域7側を「後」や「後側」や「後方」や「背部側」と称し、後側から前側に向かって相対的に左側を「左」や「左側」や「左方」と称し、後側から前側に向かって相対的に右側を「右」や「右側」や「右方」と称する。なお、吸収性パッド1の前後方向は長手方向となり、吸収性パッド1の左右方向は幅方向となる。また、前後左右方向に直交する方向が吸収性パッド1の厚さ
方向(高さ方向)となる。
【0016】
図1に示すように、吸収性パッド1は、装着時(装着状態)における肌対向面側に配置されたトップシート11を備えている。トップシート11は、吸収性パッド1の装着時において装着者の肌に接する部分(肌対向面)であり、尿等の液体を透過する液透過性の材料で形成されている。トップシート11には、具体的には、織布、不織布、多孔性フィルム等が用いられる。なお、不織布には、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ナイロン等の熱可塑性樹脂の繊維を親水化処理したものを用いてもよいし、エアスルー不織布、ポイントボンド不織布、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布等を用いてもよい。
【0017】
また、吸収性パッド1は、装着時における肌対向面の反対側に配置されたバックシート13を備えている。バックシート13は、肌対向面と反対の肌非対向面(外表面)となる部分であり、尿等の液体を透過しない液不透過性の材料で形成されている。バックシート13には、具体的には、ポリエチレン樹脂で形成された液不透過性のフィルムが用いられる。なお、バックシート13には、液不透過性を維持しつつ装着状態での蒸れを防ぐための通気性を得るために、0.1~4μmの微細な孔が複数形成された微多孔性ポリエチレンフィルムを用いることが好ましい。
【0018】
トップシート11とバックシート13とは、夫々の周縁部が互いに接合されている。また、吸収性パッド1は、トップシート11とバックシート13との間に配置され、尿等の液体を吸収する吸収体14を備えている。吸収体14は、トップシート11側に配置された上層吸収体15と、バックシート13側に配置された下層吸収体17とを有している。上層吸収体15は、平面視において、吸収性パッド1と概ね同じ瓢箪形状を有している。下層吸収体17は、トップシート11側から見て上層吸収体15の下方に配置されており、平面視において、吸収性パッド1の長手方向が長辺となる矩形状(長方形状)を有している。また、平面視において、上層吸収体15は、下層吸収体17よりも大きく形成されている。吸収性パッド1は、尿等の液体が排泄されたときに相対的に大きく、トップシート11側に配置された上層吸収体15により尿を迅速に吸収することができる。なお、吸収体14の長手方向は、上層吸収体15及び下層吸収体17の長手方向であって、吸収性パッド1の長手方向と一致している。また、吸収体14の幅方向は、上層吸収体15及び下層吸収体17の幅方向であって、吸収性パッド1の幅方向と一致している。
【0019】
上層吸収体15及び下層吸収体17には、針葉樹等の繊維材料を解砕して得られるフラッフパルプ(以下、「パルプ」と称する)や、高吸収性重合体(Super Absorbent Polymer:SAP)、親水性シート等やこれらを組み合わせたものが用いられる。また、SAPは、自重の10~100倍程度(本実施形態では、60倍)の液体を吸収する。SAPには、例えば、液体吸収前の状態において0.1~0.5mm程度の直径を有する粒状のものが用いられる。また、本実施形態において、上層吸収体15は、パルプを有している。
【0020】
また、吸収性パッド1は、上層吸収体15を厚さ方向に貫通して形成された上層肉抜き溝21を備えている。上層肉抜き溝21は、上層吸収体15の長手方向に延びるように形成されている。また、上層肉抜き溝21は、上層吸収体15の幅方向略中央に形成されている。平面視において、上層肉抜き溝21は、前後の両端が円弧状に形成された長方形状を有している。上層肉抜き溝21の前側の端部は、前身頃領域3の中程に位置し、上層肉抜き溝21の後側の端部は、後身頃領域7の前部に位置している。また、上層肉抜き溝21は、一定の幅を有している。例えば、当該幅は、20mm以上、35mm以下である。また、上層肉抜き溝21の長さは、245mm以上、355mm以下に形成されている。このサイズの上層肉抜き溝21を備えた吸収性パッド1は大人用尿パッドに適している。
【0021】
また、吸収性パッド1において、
図1に示す円で囲んだ領域37を装着者の尿道口が当接する尿道口当接位置に規定する。領域37は、股下領域5内であって且つ吸収性パッド1の幅方向中央部であり、トップシート11上に規定される。また、吸収性パッド1を厚さ方向に見て、領域37と重なる部分が尿道口に対応する部位である。言い換えると、尿道口に対応する部位は、排尿位置である。上層肉抜き溝21は、装着者が排泄した尿が流入し易いように、尿道口に対応する部位を含んで形成されている。吸収性パッド1を平面視した場合、尿道口当接位置及び尿道口に対応する部位は同じ位置であって、上層吸収体15の後側端部から前方に上層吸収体15の長手方向の長さの60%の位置に規定される。例えば、上層吸収体15の長手方向の長さが500mmである場合、上層吸収体15の後側端部から前方に300mmの位置が尿道口当接位置及び尿道口に対応する部位に規定される。なお、股下領域5の左右両端部に円弧状に切り抜いたRカットが形成されており、Rカット形成部の前後方向の長さが30mm以内であって、上層吸収体15の幅方向の最狭部が当該Rカットの形成された部分である場合には、当該最狭部の左端と右端とを結ぶ直線と上層吸収体15の幅方向中央部を通る直線との交点を尿道口当接位置及び尿道口に対応する部位に規定してもよい。なお、本実施形態においては、尿道口に対応する部位は、装着者の陰部を覆う股下領域5内に配置されている。
【0022】
なお、上層肉抜き溝21は、平面視において、長方形状ではなく、その他の多角形状や楕円形状に形成されていてもよい。
【0023】
装着者によって排泄された尿等の液体は、上層肉抜き溝21内を流れて拡散される。また、上層吸収体15上に排泄された尿等の液体を、上層肉抜き溝21を介して下層吸収体17に導くことができる。このように、本実施形態に係る吸収性パッド1は、上層吸収体15及び下層吸収体17を有する吸収体14によって、液体を吸収することができる。
【0024】
また、吸収性パッド1は、上層吸収体15と下層吸収体17との間に配置されたSAP層23L、23Rを有している。SAP層23L、23Rは、高吸収性重合体(SAP)の粒子が複数集まって形成されている。SAP層23L、23Rは、SAPの粒子を複数含み、上層吸収体15と下層吸収体17との間に導かれた液体を吸収して保持することができる。
図1に示すように、上層肉抜き溝21の左方にはSAP層23Lが配置され、上層肉抜き溝21の右方にはSAP層23Rが配置されている。このように、SAP層23L、23Rは、吸収体14の長手方向に沿って延在し、上層肉抜き溝21の両側に配置されている。また、平面視において、SAP層23L、23Rは、長方形状に形成されている。なお、SAP層23L、23Rは、平面視において、長方形状ではなく、その他の多角形状や楕円形状に形成されていてもよい。吸収性パッド1は、SAP層23L、23Rを設けることにより、全体として液体の吸収量を増加させることができる。
【0025】
SAP層23L、23Rは、吸収体14の長手方向に沿って延在している。
図1中、仮想直線cは、吸収性パッド1及び吸収体14の幅方向中心を表している。なお、吸収性パッド1と吸収体14の各幅方向中心は一致している。SAP層23L、23Rは、吸収体14の幅方向中心から吸収体14の幅方向端部に向かって15mm以上27.5mm以下に内側端部が位置する。
図1中、距離d1は、吸収体14の幅方向中心からSAP層23L、23Rの内側端部までの距離を示しており、15mm以上27.5mm以下である。
【0026】
また、SAP層23L、23Rは、吸収体14の幅方向中心から吸収体14の幅方向端部に向かって60mm以上72.5mm以下に外側端部が位置する。
図1中、距離d2は、吸収体14の幅方向中心からSAP層23L、23Rの外側端部までの距離を示しており、60mm以上72.5mm以下である。
【0027】
また、SAP層23L、23Rは、上層肉抜き溝21よりも長く、SAP層23L、23Rの長手方向における長さ内に上層肉抜き溝21の長手方向における長さが含まれている。また、吸収性パッド1が大人用の尿取りパッドである場合、SAP層23L、23Rの各幅は35mm~55mmであり、SAP層23L、23Rの各長さは470mm~555mmである。
【0028】
このように、本実施形態に係る吸収性パッド1は、上層吸収体15、下層吸収体17、上層肉抜き溝21、SAP層23L、23Rを備えている。上層吸収体15、下層吸収体17、上層肉抜き溝21及びSAP層23L、23Rの長手方向は一致している。また、上層肉抜き溝21とSAP層23L、23Rとは、互いに略平行に配置されている。
【0029】
また、吸収性パッド1は、トップシート11の肌対向面側であって幅方向両端部に接合された一対の液不透過性のサイドシート40を備えている。サイドシート40は、吸収体14(吸収性パッド1)の長手方向に延び、前後方向の端部がトップシート11の前後方向の端部と一致している。また、サイドシート40は、トップシート11の幅方向両側縁に沿って形成され、一点鎖線42から装着時において装着者の肌対向面側に起立する立体ギャザー40a(
図2参照)を有している。一点鎖線42は、立体ギャザー40aの起立線を示している。以下、一点鎖線42を「起立線42」と称する。サイドシート40は、起立線42から内側がトップシート11に接合されておらず、起立線42よりも内側であってトップシート11から起立した部分が立体ギャザー40aとなる。なお、サイドシート40及び立体ギャザー40aの詳細については後述する。
【0030】
起立線42は、吸収体14の幅方向中心から150mm以上220mm以下の位置に存在する。
図1中、距離d3は、吸収体14の幅方向中心から起立線42までの距離を示しており、150mm以上220mm以下である。また、上記の通り、SAP層23L、23Rは、吸収体14の幅方向中心から吸収体14の幅方向端部に向かって60mm以上72.5mm以下に外側端部が位置しているので、本実施形態に係る吸収性パッド1においては、幅方向に見て、一対の立体ギャザー40aの起立線42の内側にSAP層23L、23Rが配置されている。
【0031】
また、平面視において、股下領域5よりも外側に膨らみ、起立線42よりも外側に位置する耳部44が後身頃領域7に形成されている。耳部44は、股下領域5における上層吸収体15と一体的である。言い換えると、耳部44は、股下領域5内で起立線42よりも外側に存在する上層吸収体15の一部である。なお、耳部44は、上層吸収体15と一体的になるように接続されたものであってもよい。この場合、耳部44は、上層吸収体15と同じ材料で形成されている。
【0032】
また、本実施形態において、SAP層23L、23Rにおける液体の総吸収量は、180ml以上600ml以下である。本実施形態では、SAPは、自重の60倍の液体を吸収する。また、上層吸収体15は、SAPとパルプと、を有し、上層吸収体15において、SAP量は16g以上26g以下であり、パルプ量は27g以上42g以下である。また、平面視において、下層吸収体17は耳部44とは重ならない。また、下層吸収体17は、パルプを有する。下層吸収体17において、パルプ量は7g以上28g以下である。
【0033】
SAP層23L、23Rにおいて、SAPの坪量は100g/m2以上200g/m2以下であり、SAP量は4.2g以上9.5g以下である。
【0034】
また、耳部44は、パルプを有する。耳部44において、パルプの坪量は250g/m2以上310g/m2以下である。
【0035】
図2は、
図1に示す吸収性パッド1をA-A線で切断した断面図である。なお、
図2において、吸収性パッド1の各構成要素を分かりやすくするために、各構成要素間に隙間を設けて図示しているが、実際には各構成要素間には隙間はほとんど形成されない。
【0036】
図2に示すように、本実施形態に係る吸収性パッド1は、吸収体14の全体を包むコアラップシート30(
図1において不図示)を備えている。コアラップシート30は、上層吸収体15側に配置された上層シート31と、下層吸収体17側に配置された下層シート33と、を有している。上層シート31は、トップシート11と上層吸収体15との間に配置されており、下層シート33は、バックシート13と下層吸収体17との間に配置されている。また、下層シート33は、上層吸収体15及び下層吸収体17の側面部を被覆する部分を有して、トップシート11と上層吸収体15との間まで引き回されており、トップシート11と上層吸収体15との間において上層シート31に接合されている。このように、上層シート31と下層シート33は互いに接合されて一体的となっており、上層吸収体15及び下層吸収体17の全体を包んでいる。上層シート31、下層シート33には、例えば、ティッシュペーパーのような薄葉紙や不織布等が用いられる。なお、上層シート31と下層シート33は、一体的に形成されていてもよいし、上層吸収体15や下層吸収体17の側面や、バックシート13と下層吸収体17との間で接合されていてもよい。本実施形態に係る吸収性パッド1は、吸収体14の全体をコアラップシート30で包むことにより、尿等の液体を吸収体14の表面全体に拡散して吸収体14全体で吸収することができる。
【0037】
SAP層23L、23Rは、下層吸収体17上にSAPの粒子を散布することにより形成される。また、SAP層23L、23Rは、上層吸収体15と下層吸収体17との間に挟持されている。このため、装着者の動作に伴って吸収性パッド1が動かされた場合であってもSAP層23L、23Rに含まれるSAPの粒子が上層肉抜き溝21の下方に移動したり、下層吸収体17外に落ちたりするのを防ぐことができる。
【0038】
このように、本実施形態に係る吸収性パッド1は、肌対向面側から厚さ方向に見て、トップシート11、上層シート31、下層シート33の一部、上層吸収体15、SAP層23L、23R、下層吸収体17、下層シート33の一部、バックシート13の順に積層された構造を有している。また、トップシート11及びバックシート13の各周縁部が互いに接合されることにより、上層シート31、下層シート33、上層吸収体15、SAP層23L、23R及び下層吸収体17がトップシート11及びバックシート13により周囲が囲まれて封止されている。
【0039】
また、上述したように、トップシート11の肌対向面側であって幅方向両端部には、一対のサイドシート40が接合されている。サイドシート40には、液不透過性のシートが用いられる。例えば、サイドシート40には、カードエンボスやスパンボンド等の製法により製造された不織布シートや、織布や不織布に撥水加工を施したシート等が用いられる。サイドシート40は、装着者時において装着者の肌面側に起立する立体ギャザー40aを有している。立体ギャザー40aの先端部には糸ゴム等の弾性部材(不図示)が取り付けられており、装着時において吸収性パッド1が長手方向に折り曲げられると、この弾性部材が収縮して立体ギャザー40aが装着者の肌側に起立線42を起点として立ち上がる。立体ギャザー40aは、一端が起立線42となる固定端であって、他端がいずれの部位にも固定されていない自由端である。このように、装着時において、立体ギャザー40aは、起立線42を起点として装着者の肌側に起立しており、尿等の液体の横漏れを抑制する。
【0040】
吸収性パッド1の幅方向に見て、一対の立体ギャザー40aの起立線42の内側にSAP層23L、23Rが配置されている。SAP層23L、23Rは、尿等の液体を吸収し
て保持するために設けられている。吸収性パッド1を装着した装着者が、例えば、仰向けでベッド上に臥床した状態となると、後身頃領域7におけるSAP層23L、23Rは、装着とベッドの間に挟まれ、吸収体14やSAP層23L、23Rが吸収した液体が絞り出される虞がある。しかしながら、本実施の形態に係る吸収性パッド1は、一対の立体ギャザー40aの起立線42の内側にSAP層23L、23Rが配置されているため、SAP層23L、23Rから水分が絞り出されたとしても、一対の立体ギャザー40aによって当該水分が幅方向外側に漏れることを抑制できる。これにより、本実施形態に係る吸収性パッド1は、液体の横漏れを抑制できる。
【0041】
ところで、上記特許文献1に記載された吸収性パッドにおいては、立体ギャザーとSAP層との位置関係が規定されておらず、液体の横漏れを抑制することができない虞がある。一方、本実施形態に係る吸収性パッド1は、一対の立体ギャザー40aの起立線42の内側にSAP層23L、23Rが配置されているため、液体の横漏れを抑制できる。
【0042】
次に、本実施形態に係る吸収性パッド1について側臥位吸収試験を行い横漏れ抑制の性能を評価した。本実施形態では、ダミー人形に吸収性パッドを装着し、当該ダミー人形を側臥位状態にして側臥位吸収試験を行った。側臥位吸収試験における準備物は、ダミー人形、送液ポンプ、チューブ、チューブジョイント、200ml用ポリカップ、電子天秤、ストップウォッチ、人工尿、定規、分度器、重り、位置ずれ防止用のゴムシート、吸収性パッド、吸収性パッド固定用のアウターパンツ、高さ調整用の治具である。人工尿は、蒸留水1000mLに対して、尿素20g、塩化ナトリウム8g、硫酸マグネシウム7水和物0.8g、塩化カルシウム2水和物0.3gを溶解させて調製した。
【0043】
また、ダミー人形の寸法は、お腹まわりが760mmであり、お尻まわりが850mmであり、足のつけ根まわりが460mmであり、股のつけ根まわりが390mmであり、太ももまわりが350mmであり、おへそから股を通って背中までの長さが650mmでである。なお、本実施形態では、女性のダミー人形を用いた。
【0044】
まず、送液ポンプにチューブを取りつけ、チューブジョイントを介してダミー人形と当該チューブを接続する。送液ポンプの回転数を調整して、人工尿が10ml/秒で排出されるように設定する。この際、正確な試験結果を得るために、チューブやチューブジョイント内に液体が残留していないことを確認しておく。また、準備段階において、吸収性パッドの重さを電子天秤で計測しておく。
【0045】
次いで、吸収性パッドにおける尿道口当接位置に油性ペン等で印を記入する。尿道口当接位置の詳細は上述の通りである。
【0046】
次いで、ダミー人形の尿道口と吸収性パッドの尿道口当接位置とを位置合わせをして、ダミー人形に吸収性パッドを装着し、吸収性パッドの上からアウターパンツをダミー人形に履かせて吸収性パッドをダミー人形に固定する。
【0047】
次いで、ダミー人形を平面に設置した後、ダミー人形を平面から30度傾けた状態で固定する。この際、例えば、ダミー人形を壁等に立て掛けて30度傾けた状態に調整する。
【0048】
次いで、高さ調整用の治具を用いて、ダミー人形において最も横幅の広い箇所(臀部に相当)の高さを上記平面から232mmに合わせ、ダミー人形の上部の高さを上記平面から210mmに合わせる。なお、これらの高さは準備した定規で計測されて調整される。
【0049】
次いで、位置ずれ防止用のゴムシートと当該ゴムシート上に重りを設置して、ダミー人形の側部(脇腹に相当)に重りの側面を当接させて、試験中にダミー人形の位置や角度ず
れがない様にダミー人形を固定する。この際、分度器で、ダミー人形と上記平面との角度が30度に調整されているかを確認する。これで、側臥位吸収試験の準備は完了である。
【0050】
次いで、人工尿150mlをポリカップ内に準備し、送液ポンプを用いて10m/秒の速度でダミー人形の尿道口から吸収性パッドに注入する。なお、一般的に介護が必要な成人の1回の排尿量は150mlであって、排尿速度は、10ml/秒である。本実施形態では、この排尿量及び排尿速度を再現して横漏れ試験を行う。本試験では、1回での人工尿の注入量は150mlであり、人工尿を4回に分けて注入する。1回の注入にかかる時間は15秒であり、この時間をストップウォッチで計測する。
【0051】
側臥位吸収試験の結果、本実施形態に係る吸収性パッド1は、人工尿の横漏れを抑制することができた。本実施形態に係る吸収性パッド1は、一対の立体ギャザー40aの起立線42の内側にSAP層23L、23Rが配置されているため、SAP層23L、23Rから水分が絞り出されたとしても、一対の立体ギャザー40aによって当該水分が幅方向外側に漏れることを抑制できる。
【0052】
また、本実施形態に係る吸収性パッド1は、耳部44の内側に一対の立体ギャザー40aが配置されているので、トップシート11側から耳部44へ尿等の液体が流れるのを防ぎ、耳部44に当該液体が到達してしまうのを抑制できる。これにより吸収性パッド1は、装着者が側臥位の状態になって耳部44に装着者の体重がかかったとしても、耳部44から尿が横漏れしてしまうのを抑制できる。なお、被介護者は側臥位の体位を取ることが相対的に多いので、吸収性パッド1は被介護者に装着された場合にも好適に尿の横漏れを抑制できる。このように、本実施形態に係る吸収性パッド1は、介護用に好適である。
【0053】
また、本実施形態に係る吸収性パッド1は、SAP層23L、23Rにおける液体の総吸収量が180ml以上600ml以下であるので、少なくとも装着者が150m1の尿を1回排尿した後にSAP層23L、23Rよりも外側に尿が流れるのを抑制できる。なお吸収性パッド1は、SAP層23L、23Rにおける液体の総吸収量が600mlである場合には、装着者が150m1の尿を4回排尿した後(合計600mlの尿を排尿した後)にSAP層23L、23Rよりも外側に尿が流れるのを抑制できる。
【0054】
次に、吸収性パッドについて2種類の官能試験を行った。1つ目の官能試験(以下、「官能試験1」と称する)では、SAP層(
図1及び
図2のSAP層23L、23Rに相当)におけるSAPの坪量が異なる各吸収性パッドの装着感について評価した。官能試験1において、成人30人を被験者とし、各被験者が衣服を身に着けない状態で吸収性パッドを装着してアウターパンツで吸収性パッドを固定し、次いで各被験者はSAP層を臀部で押し潰すようにして仰向けに寝た状態になり、各被験者によるSAP層の違和感の有無を評価する。30人の被験者のうち25人以上がSAP層に違和感なしと判定した場合には官能試験1の結果を違和感なしとする。一方、30人の被験者のうち25人以上がSAP層に違和感ありと判定した場合には官能試験1の結果を違和感ありとする。
【0055】
図3は、官能試験1の結果を示す表である。官能試験1では、7つの吸収性パッドを作製し、各吸収性パッドに「1」~「7」の番号を付した。
図3の表中の「No.」の列は、各吸収性パッドに付した番号を示している。
図3の表に示すように、「1」の吸収性パッドは、SAP層のSAP量に6gにし、SAP層のSAP坪量を142g/m
2にした。「2」の吸収性パッドは、SAP層のSAP量を7gにし、SAP層のSAP坪量を203g/m
2にした。「3」の吸収性パッドは、SAP層のSAP量を8gにし、SAP層のSAP坪量を189g/m
2にした。「4」の吸収性パッドは、SAP層のSAP量を9.5gにし、SAP層のSAP坪量を200g/m
2にした。「5」の吸収性パッドは、SAP層のSAP量を9.5gにし、SAP層のSAP坪量を225g/m
2にした
。「6」の吸収性パッドは、SAP層のSAP量を9.8gにし、SAP層のSAP坪量を198g/m
2にした。「7」の吸収性パッドは、SAP層のSAP量を10gにし、SAP層のSAP坪量を236g/m
2にした。
【0056】
図3の表中の「官能試験結果」の列は、官能試験1の結果を示している。官能試験1の結果が違和感なしである場合には当該列に「〇」が表記され、官能試験1の結果が違和感ありである場合には当該列に「×」が表記されている。
図3の表に示すように、「1」、「3」及び「4」の吸収性パッドの官能試験1の結果が違和感なしであり、「2」、「5」~「7」の吸収性パッドの官能試験1の結果が違和感ありである。
【0057】
SAP層においてSAPの量が多いほど装着者にとって違和感ありとなりやすい。官能試験1の結果から分かるように、SAP量を9.5g以下にすると違和感をなしとできる。なおSAP層における液体の吸収量を考慮して、SAP層のSAP量は4.2g以上にする。
【0058】
また、SAP層においてSAP坪量が大きいほど装着者にとって違和感ありとなりやすい。官能試験1の結果から分かるように、SAP坪量を200g/m2以下にすると違和感をなしとできる。なおSAP層における液体の吸収量を考慮して、SAP層のSAP坪量は100g/m2以上にする。
【0059】
本実施形態に係る吸収性パッド1は、SAP層23L、23Rにおいて、SAPの坪量は100g/m2以上200g/m2以下であり、SAP量は4.2g以上9.5g以下である。このような構成を備えた吸収性パッド1によれば、装着時の違和感を低減しつつ、液体の横漏れを抑制できる。
【0060】
次に、2つ目の官能試験(以下、「官能試験2」と称する)では、耳部(
図1における耳部44に相当)におけるパルプの坪量が異なる各吸収性パッドの装着感について評価した。官能試験2において、成人30人を被験者とし、各被験者が衣服を身に着けない状態で吸収性パッドを装着してアウターパンツで吸収性パッドを固定し、次いで各被験者は耳部を臀部で押し潰すようにして横向きに寝た状態(側臥位の状態)になり、各被験者による耳部の違和感の有無を評価する。30人の被験者のうち25人以上が耳部に違和感なしと判定した場合には官能試験2の結果を違和感なしとする。一方、30人の被験者のうち25人以上がSAP層23L、23Rに違和感ありと判定した場合には官能試験2の結果を違和感ありとする。
【0061】
図4は、官能試験2の結果を示す表である。官能試験2では、7つの吸収性パッドを作製し、各吸収性パッドに「1」~「7」の番号を付した。
図5の表中の「No.」の列は、各吸収性パッドに付した番号を示している。
図5の表に示すように、「1」の吸収性パッドは、耳部のパルプ坪量を253g/m
2にした。「2」の吸収性パッドは、耳部のパルプ坪量を299g/m
2にした。「3」の吸収性パッドは、耳部のパルプ坪量を308g/m
2にした。「4」の吸収性パッドは、耳部のパルプ坪量を313g/m
2にした。「5」の吸収性パッドは、耳部のパルプ坪量を316g/m
2にした。「6」の吸収性パッドは、耳部のパルプ坪量を320g/m
2にした。「7」の吸収性パッドは、耳部のパルプ坪量を336g/m
2にした。
【0062】
図4の表中の「官能試験結果」の列は、官能試験2の結果を示している。官能試験2の結果が違和感なしである場合には当該列に「〇」が表記され、官能試験2の結果が違和感ありである場合には当該列に「×」が表記されている。
図4の表に示すように、「1」~「3」の吸収性パッドの官能試験2の結果が違和感なしであり、「4」~「7」の吸収性パッドの官能試験2の結果が違和感ありである。
【0063】
官能試験2の結果から、概ね、耳部においてパルプ坪量は250g/m2以上310g/m2以下である場合に吸収性パッドは装着者の違和感を低減できることが分かる。本実施形態に係る吸収性パッド1において、耳部44は、パルプを有し、耳部44において、パルプの坪量は250g/m2以上310g/m2以下である。このような構成を備えた吸収性パッド1によれば、装着時の側臥位状態での違和感を低減できる。
【0064】
<実施形態2>
図5は、実施形態2に係る吸収性パッド1を肌対向面側から見た平面図である。本実施形態に係る吸収性パッド1は、下層吸収体17を厚さ方向に貫通して形成された下層肉抜き溝22を備えている。なお、
図1及び
図2に示した上記実施形態1に係る吸収性パッド1の構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付してその説明は省略する。本実施形態に係る吸収性物品は、下層吸収体17に下層肉抜き溝22が形成されている。
【0065】
下層肉抜き溝22は、下層吸収体17を厚さ方向に貫通して形成され、上層肉抜き溝21と重なって吸収体14の長手方向に延びている。下層肉抜き溝22は、下層吸収体17の幅方向略中央に形成されている。また、下層肉抜き溝22は、上層肉抜き溝21と同様に、装着者が排泄した尿が流入し易いように、尿道口に対応する部位を含んで形成されている。
図5に示すように、平面視において、下層肉抜き溝22は、長手方向の各端部が円弧状に形成された長方形状を有している。下層肉抜き溝22の幅方向の中心は、上層肉抜き溝21の幅方向の中心と略一致している。また、下層肉抜き溝22の前側の端部は、前身頃領域3の中程に位置し、下層肉抜き溝22の後側の端部は、後身頃領域7の前部に位置している。また、下層肉抜き溝22は、一定の幅を有している。下層肉抜き溝22の当該幅は、上層肉抜き溝21の幅よりも狭く、例えば、20mmである。このように下層肉抜き溝22は、上層肉抜き溝21よりも幅が狭く形成されている。また、下層肉抜き溝22の長さは、例えば、225mm以上315mm以下である。下層肉抜き溝22は、上層肉抜き溝21よりも短く、長手方向に見て、上層肉抜き溝21に含まれている。また、上記のような大きさの上層肉抜き溝21及び下層肉抜き溝22を備えた吸収性パッド1は大人用尿パッドに適している。
【0066】
本実施形態に係る吸収性パッド1は、肌対向面側から見て、上層肉抜き溝21と下層肉抜き溝22とが重なっており、上層肉抜き溝21と下層肉抜き溝22とで吸収体14を厚さ方向に貫通する貫通型の肉抜き溝が形成されている。なお、上層肉抜き溝21及び下層肉抜き溝22は、平面視において、長方形状ではなく、その他の多角形状や楕円形状に形成されていてもよい。
【0067】
装着者によって排泄された尿等の液体は、上層肉抜き溝21及び下層肉抜き溝22内を流れて吸収体14の全体に拡散される。このように、本実施形態に係る吸収性パッド1は、上層肉抜き溝21及び下層肉抜き溝22により液体を吸収体14の全体に拡散し、吸収体14によって液体をすることができる。
【0068】
また、
図5に示すように、上層吸収体15、下層吸収体17、上層肉抜き溝21、下層肉抜き溝22及びSAP層23L、23Rの長手方向は一致している。また、上層肉抜き溝21と下層肉抜き溝22とSAP層23L、23Rとは、互いに略平行に配置されている。
【0069】
図6は、
図5に示す吸収性パッド1をB-B線で切断した断面図である。なお、
図6において、吸収性パッド1の各構成要素を分かりやすくするために、各構成要素間に隙間を設けて図示しているが、実際には各構成要素間には隙間はほとんど形成されない。
【0070】
図6に示すように、本実施形態に係る吸収性パッド1は、肌対向面側から厚さ方向に見て、トップシート11、上層シート31、下層シート33の一部、上層吸収体15、SAP層23L、23R、下層吸収体17、下層シート33の一部、バックシート13の順に積層された構造を有している。また、トップシート11及びバックシート13の各周縁部が互いに接合されることにより、上層シート31、下層シート33、上層吸収体15、SAP層23L、23R及び下層吸収体17がトップシート11及びバックシート13により周囲が囲まれて封止されている。
【0071】
本実施の形態に係る吸収性パッド1は、上記実施形態1に係る吸収性パッド1と同様に、一対の立体ギャザー40aの起立線42の内側にSAP層23L、23Rが配置されているため、液体の横漏れを抑制できる。
【0072】
また、上記実施形態1と同様に、本実施形態に係る吸収性パッド1は、SAP層23L、23Rにおいて、SAPの坪量は100g/m2以上200g/m2以下であり、SAP量は4.2g以上9.5g以下である。このような構成を備えた吸収性パッド1によれば、装着時の違和感を低減しつつ、液体の横漏れを抑制できる。
【0073】
また、上記実施形態に係る吸収性パッド1において、耳部44は、パルプを有し、耳部44において、パルプの坪量は250g/m2以上310g/m2以下である。このような構成を備えた吸収性パッド1によれば、装着時の側臥位状態での違和感を低減できる。
【0074】
なお、上記実施形態及び実施例では、吸収性パッド1が例示されていたが、その他の形態の吸収性物品においても上記構成を適用可能である。上記構成を適用可能な吸収性物品としては、例えば、パンツ型の使い捨ておむつ、テープ型の使い捨ておむつ、尿パッド、軽失禁パッドといったギャザー付きの各種形態の吸収性物品や、ギャザーの無いフラットな吸収性物品を挙げることができる。
【符号の説明】
【0075】
1・・吸収性パッド:3・・前身頃領域:5・・股下領域:7・・後身頃領域:11・・トップシート:13・・バックシート:14・・吸収体:15・・上層吸収体:17・・下層吸収体:21・・上層肉抜き溝:22・・下層肉抜き溝:23L・・SAP層:23R・・SAP層:30・・コアラップシート:31・・上層シート:33・・下層シート:37・・領域