(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】産業車両のエンジン制御装置
(51)【国際特許分類】
F02D 29/04 20060101AFI20230829BHJP
B60K 28/04 20060101ALI20230829BHJP
F02D 17/00 20060101ALI20230829BHJP
F02D 29/00 20060101ALI20230829BHJP
F02D 29/02 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
F02D29/04 G
B60K28/04
F02D17/00 Q
F02D29/00 B
F02D29/02 321B
F02D29/02 321C
(21)【出願番号】P 2019161525
(22)【出願日】2019-09-04
【審査請求日】2021-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】多喜 康博
【審査官】戸田 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-017272(JP,A)
【文献】特開平01-155037(JP,A)
【文献】特開昭63-251329(JP,A)
【文献】特開2004-190636(JP,A)
【文献】特開平09-158753(JP,A)
【文献】特開昭53-026026(JP,A)
【文献】特開2001-182572(JP,A)
【文献】特開2005-325843(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 29/04
B60K 28/04
F02D 17/00
F02D 29/00
F02D 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンにより駆動される油圧ポンプからの作動油によってパワーステアリング用アクチュエータが動作する産業車両のエンジン制御装置であって、
前記エンジンに燃料を供給する燃料供給部と、
前記産業車両の運転席に対する運転者の離着席状態を検出する離着席検出部と、
前記産業車両のディレクション操作具がニュートラル位置にあるかどうかを検出するニュートラル検出部と、
前記離着席検出部により前記運転席からの運転者の離席が検出されると、
前記エンジンへの燃料の供給を停止させるように前記燃料供給部を制御することにより、前記エンジンからの駆動力の出力を停止させる第1制御部と、
前記第1制御部により前記エンジンからの駆動力の出力を停止させた後、
前記エンジンの惰性での回転が完全に停止する前に、前記離着席検出部により前記運転席への運転者の着席が検出されると共に前記ニュートラル検出部により前記ディレクション操作具が前記ニュートラル位置にあることが検出されると、
前記エンジンへの燃料の供給を再開させるように前記燃料供給部を制御することにより、前記エンジンからの駆動力の出力を再開させる第2制御部とを備える産業車両のエンジン制御装置。
【請求項2】
前記燃料供給部とバッテリとの間に配置されたリレーを更に備え、
前記第1制御部は、前記離着席検出部により前記運転席からの運転者の離席が検出されると、前記エンジンへの燃料の供給を停止させるように前記リレーを介して前記燃料供給部を制御し、
前記第2制御部は、前記離着席検出部により前記運転席への運転者の着席が検出されると共に前記ニュートラル検出部により前記ディレクション操作具が前記ニュートラル位置にあることが検出されると、前記エンジンへの燃料の供給を再開させるように前記リレーを介して前記燃料供給部を制御する請求項
1記載の産業車両のエンジン制御装置。
【請求項3】
前記第2制御部は、
前記第1制御部により前記エンジンからの駆動力の出力を停止させた後、前記離着席検出部により前記運転席への運転者の着席が検出されると共に前記ニュートラル検出部により前記ディレクション操作具が前記ニュートラル以外の位置にあることが検出されたときは、警告を行う請求項1
または2記載の産業車両のエンジン制御装置。
【請求項4】
エンジンにより駆動される油圧ポンプからの作動油によってパワーステアリング用アクチュエータが動作する産業車両のエンジン制御装置であって、
前記エンジンに燃料を供給する燃料供給部と、
前記産業車両の運転席に対する運転者の離着席状態を検出する離着席検出部と、
前記産業車両のディレクション操作具がニュートラル位置にあるかどうかを検出するニュートラル検出部と、
前記離着席検出部により前記運転席からの運転者の離席状態が規定時間継続したことが検出されると、
前記エンジンへの燃料の供給を停止させるように前記燃料供給部を制御することにより、前記エンジンからの駆動力の出力を停止させる
第1制御部と、
前記第1制御部により前記エンジンからの駆動力の出力を停止させた後、前記エンジンの惰性での回転が完全に停止する前に、前記離着席検出部により前記運転席への運転者の着席が検出されると共に前記ニュートラル検出部により前記ディレクション操作具が前記ニュートラル位置にあることが検出されると、前記エンジンへの燃料の供給を再開させるように前記燃料供給部を制御することにより、前記エンジンからの駆動力の出力を再開させる第2制御部とを備える産業車両のエンジン制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業車両のエンジン制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
産業車両のエンジン制御装置としては、例えば特許文献1に記載されている技術が知られている。特許文献1に記載のエンジン制御装置は、作業用車両の運転席への運転者の着座の有無を検出するシートスイッチと、作業用車両の主電源スイッチであるキースイッチと、ECUとを備えている。ECUは、シートスイッチにより作業用車両の走行中に運転者が運転席から存在しなくなったと判定されたときは、エンジンを停止させ、その後運転者によりキースイッチがOFFされると、エンジンを起動できる状態とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、エンジンにより駆動される油圧ポンプからの作動油によってパワーステアリング用アクチュエータを動作させることにより、パワーステアリングアシストを実施することが可能な産業車両がある。そのような産業車両では、運転者が運転席から一度離席すると、キースイッチがOFFからONに切り換えられるまでの間はエンジンが停止した状態となるため、パワーステアリングアシストを行うことができなくなる。
【0005】
本発明の目的は、運転者が一時的に運転席から離席しても、パワーステアリングアシストを継続的に行うことができる産業車両のエンジン制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、エンジンにより駆動される油圧ポンプからの作動油によってパワーステアリング用アクチュエータが動作する産業車両のエンジン制御装置であって、エンジンに燃料を供給する燃料供給部と、産業車両の運転席に対する運転者の離着席状態を検出する離着席検出部と、産業車両のディレクション操作具がニュートラル位置にあるかどうかを検出するニュートラル検出部と、離着席検出部により運転席からの運転者の離席が検出されると、エンジンへの燃料の供給を停止させるように燃料供給部を制御することにより、エンジンからの駆動力の出力を停止させる第1制御部と、第1制御部によりエンジンからの駆動力の出力を停止させた後、エンジンの惰性での回転が完全に停止する前に、離着席検出部により運転席への運転者の着席が検出されると共にニュートラル検出部によりディレクション操作具がニュートラル位置にあることが検出されると、エンジンへの燃料の供給を再開させるように燃料供給部を制御することにより、エンジンからの駆動力の出力を再開させる第2制御部とを備える。
【0007】
このようなエンジン制御装置においては、運転席からの運転者の離席が検出されると、エンジンからの駆動力の出力が停止する。すると、エンジンが惰性で回転し、エンジンの回転速度が徐々に下がっていく。その後、運転席への運転者の着席が検出されると共にディレクション操作具がニュートラル位置にあることが検出されると、エンジンからの駆動力の出力が再開する。従って、運転者が運転席から離席することで、エンジンからの駆動力の出力が停止しても、エンジンの回転が完全に停止する前に、運転者が運転席に着席すると共にディレクション操作具をニュートラル位置にすることで、エンジンからの駆動力の出力が再開する。このため、油圧ポンプからパワーステアリング用アクチュエータへの作動油の供給が継続されることとなる。これにより、運転者が一時的に運転席から離席しても、パワーステアリングアシストを継続的に行うことができる。
【0008】
また、燃料供給部によるエンジンへの燃料の供給を停止または再開させることにより、エンジンからの駆動力の出力を容易に且つ確実に停止または再開させることができる。
【0009】
エンジン制御装置は、燃料供給部とバッテリとの間に配置されたリレーを更に備え、第1制御部は、離着席検出部により運転席からの運転者の離席が検出されると、エンジンへの燃料の供給を停止させるようにリレーを介して燃料供給部を制御し、第2制御部は、離着席検出部により運転席への運転者の着席が検出されると共にニュートラル検出部によりディレクション操作具がニュートラル位置にあることが検出されると、エンジンへの燃料の供給を再開させるようにリレーを介して燃料供給部を制御してもよい。このような構成では、電流が流れると開くリレーを使用した場合には、第1制御部及び第2制御部を構成するコントローラが故障したときでも、リレーが開状態となり、燃料供給部が通電状態となるため、燃料供給部によるエンジンへの燃料の供給を行うことが可能となる。この場合には、エンジンの停止が抑制されるため、産業車両を安全な場所へ退避走行させることができる。
【0011】
第2制御部は、第1制御部によりエンジンからの駆動力の出力を停止させた後、離着席検出部により運転席への運転者の着席が検出されると共にニュートラル検出部によりディレクション操作具がニュートラル以外の位置にあることが検出されたときは、警告を行ってもよい。このような構成では、エンジンからの駆動力の出力が停止した後、運転者が運転席に着席したときに、ディレクション操作具がニュートラル以外の位置にある場合には、警告が行われることになる。従って、エンジンからの駆動力の出力が停止した状態が継続していることを運転者に通知することができる。
また、本発明の他の態様は、エンジンにより駆動される油圧ポンプからの作動油によってパワーステアリング用アクチュエータが動作する産業車両のエンジン制御装置であって、エンジンに燃料を供給する燃料供給部と、産業車両の運転席に対する運転者の離着席状態を検出する離着席検出部と、産業車両のディレクション操作具がニュートラル位置にあるかどうかを検出するニュートラル検出部と、離着席検出部により運転席からの運転者の離席状態が規定時間継続したことが検出されると、エンジンへの燃料の供給を停止させるように燃料供給部を制御することにより、エンジンからの駆動力の出力を停止させる第1制御部と、第1制御部によりエンジンからの駆動力の出力を停止させた後、エンジンの惰性での回転が完全に停止する前に、離着席検出部により運転席への運転者の着席が検出されると共にニュートラル検出部によりディレクション操作具がニュートラル位置にあることが検出されると、エンジンへの燃料の供給を再開させるように燃料供給部を制御することにより、エンジンからの駆動力の出力を再開させる第2制御部とを備える。
このようなエンジン制御装置においては、運転席からの運転者の離席状態が規定時間継続したことが検出されると、エンジンからの駆動力の出力が停止する。すると、エンジンが惰性で回転し、エンジンの回転速度が徐々に下がっていく。その後、運転席への運転者の着席が検出されると共にディレクション操作具がニュートラル位置にあることが検出されると、エンジンからの駆動力の出力が再開する。従って、運転者が運転席から離席することで、エンジンからの駆動力の出力が停止しても、エンジンの回転が完全に停止する前に、運転者が運転席に着席すると共にディレクション操作具をニュートラル位置にすることで、エンジンからの駆動力の出力が再開する。このため、油圧ポンプからパワーステアリング用アクチュエータへの作動油の供給が継続されることとなる。これにより、運転者が一時的に運転席から離席しても、パワーステアリングアシストを継続的に行うことができる。
また、運転者が極めて短い時間だけ運転席から離席した場合には、エンジンからの駆動力の出力が停止しないため、作業性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、運転者が一時的に運転席から離席しても、パワーステアリングアシストを継続的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るエンジン制御装置を備えた産業車両を示す概略構成図である。
【
図2】
図1に示されたエンジン制御装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図2に示されたエンジン停止制御部により実行されるエンジン停止制御処理手順の詳細を示すフローチャートである。
【
図4】
図2に示されたエンジン再始動制御部により実行されるエンジン再始動制御処理手順の詳細を示すフローチャートである。
【
図5】本発明の第2実施形態に係るエンジン制御装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【
図6】
図5に示されたエンジン再始動制御部により実行されるエンジン再始動制御処理手順の詳細を示すフローチャートである。
【
図7】本発明の第3実施形態に係るエンジン制御装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、図面において、同一または同等の要素には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
図1は、本発明の第1実施形態に係るエンジン制御装置を備えた産業車両を示す概略構成図である。
図1において、本実施形態のエンジン制御装置1は、産業車両であるエンジン式のフォークリフト2に搭載されている。
【0016】
フォークリフト2は、エンジン3と、このエンジン3の出力軸にトルクコンバータ4を介して連結されたトランスミッション5と、このトランスミッション5に減速機6及びアクスルシャフト7を介して連結された左右1対の駆動輪8とを備えている。
【0017】
エンジン3は、ガソリンエンジンでもよいし、ディーゼルエンジンでもよい。エンジン3は、燃料を燃焼させることで、駆動力を発生させる。エンジン3で発生した駆動力は、トルクコンバータ4、トランスミッション5、減速機6及びアクスルシャフト7を介して駆動輪8に機械的に伝達され、駆動輪8が回転する。これにより、フォークリフト2が走行する。
【0018】
また、フォークリフト2は、作動油を貯留するタンク9と、このタンク9内に貯留された作動油を吐出する油圧ポンプ10と、この油圧ポンプ10から吐出される作動油により動作するパワーステアリングシリンダ11(パワーステアリング用アクチュエータ)、リフトシリンダ12及びティルトシリンダ13と、コントロールバルブユニット14とを備えている。
【0019】
油圧ポンプ10は、エンジン3から出力された駆動力により回転駆動される。パワーステアリングシリンダ11は、ステアリングホイール(図示せず)の操舵アシスト(以下、パワーステアリングアシストという)を行う油圧シリンダである。リフトシリンダ12は、マスト(図示せず)に取り付けられた1対のフォーク(図示せず)を昇降させる油圧シリンダである。ティルトシリンダ13は、マストを傾動させる油圧シリンダである。コントロールバルブユニット14は、油圧ポンプ10からパワーステアリングシリンダ11、リフトシリンダ12及びティルトシリンダ13に供給される作動油の流れを制御する。
【0020】
また、フォークリフト2は、車速センサ15と、ディレクションレバー16(ディレクション操作具)とを備えている。車速センサ15は、フォークリフト2の車速を検出するセンサである。
【0021】
ディレクションレバー16は、トランスミッション5を前進、後進及びニュートラルの何れかの状態に切換操作する操作レバーである。ディレクションレバー16がニュートラル位置にあるときは、トランスミッション5によってエンジン3から出力された走行駆動力が駆動輪8に機械的に伝達されていない状態となる。ディレクションレバー16が前進位置または後進位置にあるときは、トランスミッション5によってエンジン3から出力された走行駆動力が駆動輪8に機械的に伝達されている状態となる。
【0022】
エンジン制御装置1は、エンジン3を制御する装置である。エンジン制御装置1は、インジェクタ17と、シートスイッチ18と、ニュートラルスイッチ19と、車両制御コントローラ20とを備えている。
【0023】
インジェクタ17は、エンジン3内の燃焼室(図示せず)に向けて燃料を噴射させる燃料噴射弁である。インジェクタ17は、エンジン3のシリンダヘッドに取り付けられている。インジェクタ17は、車両制御コントローラ20からの電気信号が入力される制御用ソレノイド17aを有している(
図2参照)。インジェクタ17は、エンジン3に燃料を供給する燃料供給部を構成している。
【0024】
シートスイッチ18は、フォークリフト2の運転席21に対する運転者(オペレータ)の離着席状態を検出する離着席検出部である。なお、ここでいう離席とは、運転席21のシートに座っている運転者が短時間(例えば数秒)だけ立ち上がって運転席21のシートから離れる程度のことである。ニュートラルスイッチ19は、ディレクションレバー16がニュートラル位置にあるかどうかを検出するニュートラル検出部である。
【0025】
車両制御コントローラ20は、CPU、RAM、ROM及び入出力インターフェース等を有するマイコンから構成されている。車両制御コントローラ20は、車速センサ15、シートスイッチ18及びニュートラルスイッチ19の検出信号を入力し、規定の処理を行い、インジェクタ17を制御する。
【0026】
図2は、エンジン制御装置1の制御系の構成を示すブロック図である。
図2において、車両制御コントローラ20は、エンジン停止制御部22と、エンジン再始動制御部23とを有している。
【0027】
エンジン停止制御部22は、シートスイッチ18により運転席21からの運転者の離席が検出されると、インジェクタ17からの燃料の噴射を停止させるようにインジェクタ17の制御用ソレノイド17aを制御することにより、エンジン3からの駆動力の出力を停止させる第1制御部を構成する。
【0028】
エンジン再始動制御部23は、エンジン停止制御部22によりエンジン3からの駆動力の出力を停止させた後、シートスイッチ18により運転席21への運転者の着席が検出されると共にニュートラルスイッチ19によりディレクションレバー16がニュートラル位置にあることが検出されると、インジェクタ17からの燃料の噴射を再開させるように制御用ソレノイド17aを制御することにより、エンジン3からの駆動力の出力を再開させる第2制御部を構成する。
【0029】
図3は、エンジン停止制御部22により実行されるエンジン停止制御処理手順の詳細を示すフローチャートである。
【0030】
図3において、エンジン停止制御部22は、まずニュートラルスイッチ19の検出信号に基づいて、ディレクションレバー16がニュートラル以外の位置(前進位置または後進位置)にあるかどうかを判断する(手順S101)。
【0031】
エンジン停止制御部22は、ディレクションレバー16がニュートラル以外の位置にあると判断したときは、シートスイッチ18の検出信号に基づいて、運転席21からの運転者の離席状態が規定時間継続しているかどうかを判断する(手順S102)。規定時間は、例えば2秒程度である。
【0032】
エンジン停止制御部22は、運転席21からの運転者の離席状態が規定時間継続していると判断したときは、インジェクタ17を閉じるように制御用ソレノイド17aを制御する(手順S103)。このとき、エンジン停止制御部22から制御用ソレノイド17aに、制御信号としてOFF信号が出力される。
【0033】
エンジン停止制御部22は、手順S101でディレクションレバー16がニュートラル位置にあると判断したとき、または手順S102で運転席21からの運転者の離席状態が規定時間継続していないと判断したときは、インジェクタ17を開くように制御用ソレノイド17aを制御する(手順S104)。このとき、エンジン停止制御部22から制御用ソレノイド17aに、制御信号としてON信号が出力される。
【0034】
図4は、エンジン再始動制御部23により実行されるエンジン再始動制御処理手順の詳細を示すフローチャートである。
【0035】
図4において、エンジン再始動制御部23は、まずシートスイッチ18の検出信号に基づいて、運転者が運転席21に着席したかどうかを判断する(手順S111)。エンジン再始動制御部23は、運転者が運転席21に着席したと判断したときは、ニュートラルスイッチ19の検出信号に基づいて、ディレクションレバー16がニュートラル位置にあるかどうかを判断する(手順S112)。
【0036】
エンジン再始動制御部23は、ディレクションレバー16がニュートラル位置にあると判断したときは、インジェクタ17を開くように制御用ソレノイド17aを制御する(手順S113)。このとき、エンジン停止制御部22から制御用ソレノイド17aに、制御信号としてON信号が出力される。
【0037】
エンジン再始動制御部23は、手順S111で運転者が運転席21に着席していないと判断したとき、または手順S112でディレクションレバー16がニュートラル位置にないと判断したときは、インジェクタ17を閉じるように制御用ソレノイド17aを制御する(手順S114)。このとき、エンジン停止制御部22から制御用ソレノイド17aに、制御信号としてOFF信号が出力される。
【0038】
以上において、例えばディレクションレバー16がニュートラル以外の位置にある状態でフォークリフト2が走行している際に、運転者が規定時間連続して運転席21から離席すると、インジェクタ17が閉弁する。従って、インジェクタ17からエンジン3内への燃料の噴射が停止するため、エンジン3が停止し、エンジン3からの駆動力の出力が停止する。これにより、フォークリフト2の無人走行を防止することができる。
【0039】
このとき、インジェクタ17からの燃料の噴射が停止した直後は、エンジン3が惰性で回転し、エンジン3の回転速度が徐々に下がっていく。このため、フォークリフト2の走行速度が徐々に低下する。
【0040】
そして、エンジン3の回転が完全に停止する前、つまりフォークリフト2の走行が完全に停止する前に、運転者が運転席21に着席し、ディレクションレバー16をニュートラル位置に切換操作すると、インジェクタ17が開弁する。従って、インジェクタ17からエンジン3内への燃料の噴射が再開するため、エンジン3が再始動され、エンジン3からの駆動力の出力が再開する。これにより、フォークリフト2の走行が継続される。
【0041】
以上のように本実施形態にあっては、運転席21からの運転者の離席が検出されると、エンジン3からの駆動力の出力が停止する。すると、エンジン3が惰性で回転し、エンジン3の回転速度が徐々に下がっていく。その後、運転席21への運転者の着席が検出されると共にディレクションレバー16がニュートラル位置にあることが検出されると、エンジン3からの駆動力の出力が再開する。従って、運転者が運転席21から離席することで、エンジン3からの駆動力の出力が停止しても、エンジン3の回転が完全に停止する前に、運転者が運転席21に着席すると共にディレクションレバー16をニュートラル位置にすることで、エンジン3からの駆動力の出力が再開する。このため、油圧ポンプ10からパワーステアリングシリンダ11への作動油の供給が継続されることとなる。これにより、運転者が一時的に運転席21から離席しても、パワーステアリングアシストを継続的に行うことができる。その結果、フォークリフト2の操作性を向上させることが可能となる。
【0042】
また、本実施形態では、インジェクタ17によるエンジン3への燃料の供給を停止または再開させることにより、エンジン3からの駆動力の出力を容易に且つ確実に停止または再開させることができる。
【0043】
また、本実施形態では、運転席21への運転者の離席状態が規定時間継続したことが検出されると、エンジン3からの駆動力の出力が停止する。従って、例えば運転席21のシートへの座り直しやフォーク(前述)に積載された荷物の覗き込み等のように、運転者が極めて短い時間だけ運転席21から離席した場合には、エンジン3からの駆動力の出力が停止しないため、作業性を向上させることができる。
【0044】
また、本実施形態では、ディレクションレバー16がニュートラル位置にあることで、エンジン3からの駆動力が駆動輪8に機械的に伝達されない場合には、運転席21からの運転者の離席が検出されても、エンジン3からの駆動力の出力が不要に停止することがない。
【0045】
図5は、本発明の第2実施形態に係るエンジン制御装置の制御系の構成を示すブロック図である。
図5は、
図2に対応する図である。
図5において、本実施形態のエンジン制御装置1は、上記の第1実施形態の構成に加え、警告器30を備えている。警告器30は、ブザー等の警告音を発してよいし、ランプ等で警告表示を行ってもよい。
【0046】
また、エンジン制御装置1の車両制御コントローラ20は、上記の第1実施形態におけるエンジン再始動制御部23に代えて、エンジン再始動制御部23Aを有している。
【0047】
エンジン再始動制御部23Aは、エンジン停止制御部22によりエンジン3からの駆動力の出力を停止させた後、シートスイッチ18により運転席21への運転者の着席が検出されると共にニュートラルスイッチ19によりディレクションレバー16がニュートラル位置にあることが検出されると、インジェクタ17からの燃料の噴射を再開させるように制御用ソレノイド17aを制御する。
【0048】
また、エンジン再始動制御部23Aは、シートスイッチ18により運転席21への運転者の着席が検出されると共にニュートラルスイッチ19によりディレクションレバー16がニュートラル以外の位置にあることが検出されたときは、警告を行う。
【0049】
図6は、エンジン再始動制御部23Aにより実行されるエンジン再始動制御処理手順の詳細を示すフローチャートである。
図6は、
図4に対応する図である。
【0050】
図6において、エンジン再始動制御部23Aは、上記の第1実施形態におけるエンジン再始動制御部23と同様に、手順S111~S113を順次実行する。エンジン再始動制御部23Aは、手順S112でディレクションレバー16がニュートラル位置にないと判断したときは、警告器30により警告を行うように警告器30を制御する(手順S120)。
【0051】
エンジン再始動制御部23Aは、手順S111で運転者が運転席21に着席していないと判断したとき、または手順S120を実行した後、インジェクタ17を閉じるように制御用ソレノイド17aを制御する(手順S114)。
【0052】
このように本実施形態においては、エンジン3からの駆動力の出力が停止した後、運転者が運転席21に着席したときに、ディレクションレバー16がニュートラル以外の位置にある場合には、警告が行われることになる。従って、エンジン3からの駆動力の出力が停止した状態が継続していることを運転者に通知することができる。この場合には、運転者がディレクションレバー16をニュートラル位置に切換操作することで、エンジン3からの駆動力の出力を再開させることが可能となる。
【0053】
図7は、本発明の第3実施形態に係るエンジン制御装置の制御系の構成を示すブロック図である。
図7は、
図2に対応する図である。
図7において、本実施形態のエンジン制御装置1は、インジェクタ17の制御用ソレノイド17aとフォークリフト2に搭載されたバッテリ40との間に配置されたリレー41を備えている。
【0054】
リレー41としては、1次側に電流を流すと、2次側が開くb接点リレーが使用される。リレー41は、車両制御コントローラ20からの制御信号に応じて開閉状態が切り換えられる。具体的は、車両制御コントローラ20からリレー41にOFF信号が出力されると、リレー41が閉状態となり、バッテリ40と制御用ソレノイド17aとが導通する。車両制御コントローラ20からリレー41にON信号が出力されると、リレー41が開状態となり、バッテリ40と制御用ソレノイド17aとの導通が遮断される。
【0055】
エンジン制御装置1の車両制御コントローラ20は、上記の第1実施形態と同様に、エンジン停止制御部22と、エンジン再始動制御部23とを有している。
【0056】
エンジン停止制御部22は、ディレクションレバー16がニュートラル以外の位置にあると判断すると共に、運転席からの運転者の離席状態が規定時間継続していると判断したときは、インジェクタ17を閉じるようにリレー41を制御する(
図3の手順S101~S103参照)。
【0057】
このとき、エンジン停止制御部22からリレー41に、制御信号としてON信号が出力される。従って、リレー41が開状態となるため、インジェクタ17の制御用ソレノイド17aがOFF状態(非通電状態)となる。これにより、インジェクタ17が閉弁するため、インジェクタ17からの燃料の噴射が停止する。
【0058】
エンジン再始動制御部23は、運転者が運転席に着席したと判断すると共に、ディレクションレバー16がニュートラル位置にあると判断したときは、インジェクタ17を開くようにリレー41を制御する(
図4の手順S111~S113参照)。
【0059】
このとき、エンジン再始動制御部23からリレー41に、制御信号としてOFF信号が出力される。従って、リレー41が閉状態(
図7の状態)となるため、インジェクタ17の制御用ソレノイド17aがON状態(通電状態)となる。これにより、インジェクタ17が開弁するため、インジェクタ17からの燃料の噴射が再開する。
【0060】
このように本実施形態においては、車両制御コントローラ20が故障したときでも、リレー41が開状態となり、インジェクタ17の制御用ソレノイド17aが通電状態となるため、インジェクタ17によるエンジン3への燃料の供給を行うことが可能となる。この場合には、エンジン3の停止が抑制されるため、フォークリフト2を安全な場所へ退避走行させることができる。
【0061】
なお、本発明は、上記実施形態には限定されない。例えば上記実施形態では、フォークリフト2の走行時に、運転席21からの運転者の離席が検出されると、エンジン3からの駆動力の出力が停止しているが、フォークリフト2の走行が停止中でも、運転席21からの運転者の離席が検出されると、エンジン3からの駆動力の出力が停止する。
【0062】
また、上記実施形態では、運転席21からの運転者の離席状態が規定時間継続していることが検出されたときに、インジェクタ17が閉じるように制御されているが、特にその形態には限られず、運転席21からの運転者の離席が検出された時点で、インジェクタ17を閉じるように制御してもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、ディレクションレバー16がニュートラル以外の位置にある状態で、運転席21からの運転者の離席状態が規定時間継続していることが検出されたときに、インジェクタ17が閉じるように制御されているが、特にその形態には限られず、ディレクションレバー16がニュートラル位置にある状態でも、運転席21からの運転者の離席が検出されたときは、インジェクタ17を閉じるように制御してもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、インジェクタ17を制御することにより、エンジン3からの駆動力の出力を停止または再開させているが、特にその形態には限られず、例えばエンジン3において燃料と空気との混合気に点火する点火プラグを制御したり、エンジン3への吸入空気量を調整するスロットルバルブを制御することにより、エンジン3からの駆動力の出力を停止または再開させてもよい。
【0065】
また、上記実施形態のエンジン制御装置1は、フォークリフト2に搭載されているが、本発明は、パワーステアリング用アクチュエータを備えていれば、例えばトーイングトラクタ等の産業車両にも適用可能である。
【符号の説明】
【0066】
1…エンジン制御装置、2…フォークリフト(産業車両)、3…エンジン、10…油圧ポンプ、11…パワーステアリングシリンダ(パワーステアリング用アクチュエータ)、16…ディレクションレバー(ディレクション操作具)、17…インジェクタ(燃料供給部)、18…シートスイッチ(離着席検出部)、19…ニュートラルスイッチ(ニュートラル検出部)、21…運転席、22…エンジン停止制御部(第1制御部)、23,23A…エンジン再始動制御部(第2制御部)、30…警告器、40…バッテリ、41…リレー。