(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/12 20060101AFI20230829BHJP
B60C 11/01 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
B60C11/12 A
B60C11/01 B
B60C11/12 C
(21)【出願番号】P 2019177182
(22)【出願日】2019-09-27
【審査請求日】2022-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 伸吾
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-347468(JP,A)
【文献】特開平11-165507(JP,A)
【文献】特開2015-178337(JP,A)
【文献】特開平08-324211(JP,A)
【文献】特表2010-540314(JP,A)
【文献】特表2012-510922(JP,A)
【文献】特開2016-037083(JP,A)
【文献】特開2012-006559(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00664230(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/00-11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向溝によって区画された複数の陸部を有するトレッドを備え、
少なくとも一つの陸部にサイプが刻まれることにより、前記サイプで囲まれた複数のロッドが構成され、
前記ロッドの断面形状が少なくとも三つの辺を有する多角形であり、
前記ロッドを囲うサイプが管状サイプであり、
隣接する2つのロッドにおいて、一のロッドを囲う管状サイプと、他のロッドを囲う管状サイプとは、互いの一部を共有し、
前記ロッドが、その外面と根元との間に曲部を有し、
前記曲部において、前記ロッド
全体が弓形に曲がる、又は、前記ロッド
全体が角を形成するように曲がる、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記曲部において前記ロッドの中心が曲がる、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記ロッドの断面形状に含まれる少なくとも一つの辺が軸方向に延びる、請求項
1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記ロッドの断面形状が六角形である、請求項
1から3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記ロッドが軸方向及び周方向に並列する、請求項1から4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記曲部の頂部分が、前記ロッドの外面部分から周方向にずれる、請求項1から5のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記ロッドが、前記曲部において、角を形成するように曲がる、請求項1から6のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記陸部が、軸方向において外側に位置し、周方向に延びるショルダー陸部である、請求項1から7のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
前記ショルダー陸部に、前記ショルダー陸部を横切る軸方向溝が刻まれることにより、周方向に間隔をあけて配置される、複数のショルダーブロックが構成され、
前記複数のショルダーブロックのうち、少なくとも一部の前記ショルダーブロックに、前記ロッドが構成される、請求項8に記載の空気入りタイヤ。
【請求項10】
前記サイプが前記周方向溝及び前記軸方向溝から独立している、請求項9に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、トラック、バス等の車両に装着されるタイヤ、すなわち、重荷重用空気入りタイヤのトレッドは、大きなボリュームを有する。大きなボリュームを有するトレッドには熱が伝わりにくい。このタイヤの製造では、サイドウォール等の部材を過剰に加硫することがないよう、加熱状態がコントロールされる(例えば、下記の特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、トレッドを効果的に加熱することで生産性の向上を図るとともに、耐摩耗性の向上と、転がり抵抗の低減とが達成される、空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る空気入りタイヤは周方向溝によって区画された複数の陸部を有するトレッドを備え、少なくとも一つの陸部にサイプが刻まれることにより、前記サイプで囲まれた複数のロッドが構成され、前記ロッドはその外面と根元との間に曲部を有する。前記曲部において、前記ロッドは弓形に曲がる、又は、前記ロッドは角を形成するように曲がる。
【0006】
好ましくは、この空気入りタイヤでは、前記ロッドの断面形状は少なくとも三つの辺を有する多角形である。
【0007】
好ましくは、この空気入りタイヤでは、前記ロッドの断面形状に含まれる少なくとも一つの辺が軸方向に延びる。
【0008】
好ましくは、この空気入りタイヤでは、前記ロッドの断面形状は六角形である。
【0009】
好ましくは、この空気入りタイヤでは、前記ロッドは軸方向及び周方向に並列する。
【0010】
好ましくは、この空気入りタイヤでは、前記曲部の頂部分は前記ロッドの外面部分から周方向にずれる。
【0011】
好ましくは、この空気入りタイヤでは、前記ロッドは、前記曲部において、角を形成するように曲がる。
【0012】
好ましくは、この空気入りタイヤでは、前記陸部は、軸方向において外側に位置し、周方向に延びるショルダー陸部である。より好ましくは、前記ショルダー陸部に、前記ショルダー陸部を横切る軸方向溝が刻まれることにより、周方向に間隔をあけて配置される、複数のショルダーブロックが構成され、前記複数のショルダーブロックのうち、少なくとも一部の前記ショルダーブロックに、前記ロッドが構成される。
【0013】
好ましくは、この空気入りタイヤでは、前記サイプは前記周方向溝及び前記軸方向溝から独立している。
【発明の効果】
【0014】
本発明の空気入りタイヤでは、トレッドが効果的に加熱される。このタイヤでは、生産性の向上が図られるとともに、耐摩耗性の向上と、転がり抵抗の低減とが達成される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る重荷重用空気入りタイヤの一部が示された断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示されたタイヤのトレッド面の展開図である。
【
図3】
図3は、
図2のIII-III線に沿った断面図である。
【
図5】
図5は、サイプの変形例が示された断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて、本発明が詳細に説明される。
【0017】
本発明においては、タイヤを正規リムに組み込み、タイヤの内圧が正規内圧に調整され、このタイヤに荷重がかけられていない状態は、正規状態と称される。本発明では、特に言及がない限り、タイヤ各部の寸法及び角度は、正規状態で測定される。
【0018】
正規リムとは、タイヤが依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。
【0019】
正規内圧とは、タイヤが依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。乗用車用タイヤの場合、特に言及がない限り、正規内圧は180kPaである。
【0020】
正規荷重とは、タイヤが依拠する規格において定められた荷重を意味する。JATMA規格における「最大負荷能力」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「LOAD CAPACITY」は、正規荷重である。乗用車用タイヤの場合、特に言及がない限り、正規荷重は前記荷重の88%に相当する荷重である。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤ2(以下、単に「タイヤ2」と称することがある。)の一部を示す。このタイヤ2は、トラック、バス等の重荷重車両に装着される。このタイヤ2は、重荷重用空気入リタイヤである。
【0022】
図1は、タイヤ2の回転軸を含む平面に沿った、このタイヤ2の断面の一部を示す。この
図1において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の径方向である。この
図1の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の周方向である。
図1において、一点鎖線CLはタイヤ2の赤道面を表す。この
図1においてタイヤ2は、リムR(正規リム)に組み込まれている。
【0023】
このタイヤ2は、トレッド4、一対のサイドウォール6、一対のビード8、一対のチェーファー10、カーカス12、ベルト14、一対のクッション層16、インナーライナー18及び一対の補強層20を備える。
【0024】
トレッド4は、その外面22、すなわちトレッド面22において路面と接触する。符号PCはトレッド面22と赤道面との交点である。交点PCはタイヤ2の赤道である。
【0025】
図示されないが、このトレッド4は、ベース部と、このベース部の径方向外側に位置するキャップ部とを備える。ベース部は低発熱性の架橋ゴムからなる。キャップ部は、耐摩耗性及びグリップ性能が考慮された架橋ゴムからなる。
【0026】
このタイヤ2のトレッド4には、周方向に連続して延びる溝24、すなわち、周方向溝24が刻まれる。これにより、トレッド4に複数の陸部26が構成される。このトレッド4は、周方向溝24によって区画された複数の陸部26を有する。
【0027】
それぞれのサイドウォール6は、トレッド4の端に連なる。サイドウォール6は、トレッド4の端から径方向内向きに延びる。サイドウォール6は、架橋ゴムからなる。
【0028】
それぞれのビード8は、サイドウォール6よりも径方向内側に位置する。ビード8は、コア28と、エイペックス30とを備える。
【0029】
コア28は、周方向に延びる。コア28は、巻き回されたスチール製のワイヤを含む。エイペックス30は、コア28の径方向外側に位置する。エイペックス30は、コア28から径方向外向きに延びる。
【0030】
エイペックス30は、内側エイペックス30uと外側エイペックス30sとを備える。外側エイペックス30sは径方向において内側エイペックス30uの外側に位置する。内側エイペックス30u及び外側エイペックス30sは架橋ゴムからなる。外側エイペックス30sは内側エイペックス30uに比して軟質である。
【0031】
それぞれのチェーファー10は、ビード8の軸方向外側に位置する。このチェーファー10は、サイドウォール6よりも径方向内側に位置する。チェーファー10は、リムRと接触する。チェーファー10は、架橋ゴムからなる。
【0032】
カーカス12は、トレッド4、サイドウォール6及びチェーファー10の内側に位置する。カーカス12は、一方のビード8と他方のビード8とを架け渡す。このカーカス12は、ラジアル構造を有する。カーカス12は、少なくとも1枚のカーカスプライ32を備える。このタイヤ2のカーカス12は、1枚のカーカスプライ32からなる。
【0033】
このタイヤ2では、カーカスプライ32はそれぞれのビード8のコア28の周りにて軸方向内側から外側に向かって折り返される。このカーカスプライ32は、一方のコア28から他方のコア28に向かって延びるプライ本体32aと、このプライ本体32aに連なりそれぞれのコア28の周りにて軸方向内側から外側に向かって折り返される一対の折り返し部32bとを有する。
【0034】
図示されないが、カーカスプライ32は並列された多数のカーカスコードを含む。このタイヤ2では、カーカスコードの材質はスチールである。有機繊維からなるコードが、カーカスコードとして用いられてもよい。
【0035】
ベルト14は、トレッド4の径方向内側に位置する。このベルト14は、カーカス12の径方向外側に位置する。
【0036】
ベルト14は、径方向に積層された複数の層34で構成される。このタイヤ2のベルト14は、4枚の層34で構成される。このタイヤ2では、ベルト14を構成する層34の数に特に制限はない。ベルト14の構成は、タイヤ2の仕様が考慮され適宜決められる。
【0037】
図示されないが、それぞれの層34は並列された多数のベルトコードを含む。それぞれのベルトコードは赤道面に対して傾斜する。ベルトコードの材質はスチールである。
【0038】
このタイヤ2では、4枚の層34のうち、第一層34Aと第三層34Cとの間に位置する第二層34Bが最大の軸方向幅を有する。径方向において最も外側に位置する第四層34Dが、最小の軸方向幅を有する。
【0039】
それぞれのクッション層16は、ベルト14の端の部分、すなわち、ベルト14の端部において、このベルト14とカーカス12との間に位置する。クッション層16は、架橋ゴムからなる。
【0040】
インナーライナー18は、カーカス12の内側に位置する。インナーライナー18は、タイヤ2の内面を構成する。このインナーライナー18は、空気遮蔽性に優れた架橋ゴムからなる。
【0041】
それぞれの補強層20は、ビード8の部分に位置する。軸方向において、補強層20はビード8の外側に位置する。補強層20は、カーカスプライ32とチェーファー10との間に位置する。補強層20の内端は、コア28の径方向内側に位置する。補強層20の外端は、径方向において、折り返し部32bの端とコア28との間に位置する。
【0042】
図示されないが、補強層20は並列した多数のフィラーコードを含む。フィラーコードの材質はスチールである。
【0043】
図2は、トレッド面22の展開図を示す。この
図2において、左右方向はこのタイヤ2の軸方向であり、上下方向はこのタイヤ2の周方向である。この
図2の紙面に対して垂直な方向は、このタイヤ2の径方向である。
【0044】
図2において、符号PEはトレッド面22の端である。なお、タイヤ2において、外観上、トレッド面22の端PEの識別が不能な場合には、正規状態のタイヤ2に正規荷重を負荷して、キャンバー角を0゜としトレッド4を平面に接触させて得られる接地面の軸方向外側端がトレッド面22の端PEとして定められる。
【0045】
前述したように、このタイヤ2のトレッド4は周方向溝24によって区画された複数の陸部26を有する。このタイヤ2では、軸方向に並列した、少なくとも3本の周方向溝24がトレッド4に刻まれる。これにより、トレッド4には少なくとも4本の陸部26が構成される。
図1に示されたタイヤ2では、4本の周方向溝24がトレッド4に刻まれ、このトレッド4に5本の陸部26が構成される。
【0046】
4本の周方向溝24のうち、軸方向において内側に位置する周方向溝24c、すなわち赤道PCに近い周方向溝24cがセンター周方向溝である。軸方向において外側に位置する周方向溝24s、すなわち、トレッド面22の端PEに近い周方向溝24sがショルダー周方向溝である。なお、トレッド4に刻まれた周方向溝24に、赤道PC上に位置する周方向溝24が含まれる場合には、赤道PC上に位置する周方向溝24がセンター周方向溝である。さらにセンター周方向溝24cとショルダー周方向溝24sとの間に周方向溝24が存在する場合には、この周方向溝24はミドル周方向溝である。
【0047】
それぞれのセンター周方向溝24cは、周方向にジグザグ状に連続して延在する。このタイヤ2では、このセンター周方向溝24cが、周方向にストレートに延びる溝で構成されてもよい。
【0048】
それぞれのショルダー周方向溝24sは、周方向にジグザグ状に連続して延在する。このタイヤ2では、このショルダー周方向溝24sが、周方向にストレートに延びる溝で構成されてもよい。
【0049】
図2において、両矢印RTはトレッド面22の幅である。この幅RTは、一方のトレッド面22の端PEから他方のトレッド面22の端PEまでの最短距離で表される。この幅RTは、トレッド面22に沿って計測される。
【0050】
この
図2において、両矢印GCはセンター周方向溝24cの幅である。幅GCは、センター周方向溝24cの一方の縁から他方の縁までの最短距離により表される。両矢印GSは、ショルダー周方向溝24sの幅である。幅GSは、ショルダー周方向溝24sの一方の縁から他方の縁までの最短距離により表される。
【0051】
このタイヤ2では、排水性及びトラクション性能への貢献の観点から、センター周方向溝24cの幅GCはトレッド面22の幅RTの1~10%が好ましい。このセンター周方向溝24cの深さは、13~25mmが好ましい。
【0052】
このタイヤ2では、排水性及びトラクション性能への貢献の観点から、ショルダー周方向溝24sの幅GSはトレッド面22の幅RTの1~10%が好ましい。ショルダー周方向溝24sの深さは、13~25mmが好ましい。
【0053】
このタイヤ2では、ショルダー周方向溝24sの幅GSはセンター周方向溝24cの幅GCよりも広い。このショルダー周方向溝24sの幅GSがセンター周方向溝24cの幅GCよりも狭くてもよいし、このショルダー周方向溝24sの幅GSがセンター周方向溝24cの幅GCと同等であってもよい。この周方向溝24の幅は、タイヤ2の仕様に応じて適宜決められる。
【0054】
このタイヤ2では、ショルダー周方向溝24sの深さはセンター周方向溝24cの深さと同等である。このショルダー周方向溝24sがセンター周方向溝24cよりも深くてもよいし、このショルダー周方向溝24sがセンター周方向溝24cよりも浅くてもよい。この周方向溝24の深さは、タイヤ2の仕様に応じて適宜決められる。
【0055】
前述したように、このタイヤ2では、4本の周方向溝24がトレッド4に刻まれることにより、このトレッド4には5本の陸部26が構成される。これら陸部26は、軸方向に並列され、周方向に延びる。このタイヤ2の陸部26には、陸部26を横切る軸方向溝36が刻まれる。
【0056】
5本の陸部26のうち、軸方向において内側に位置する陸部26c、すなわち赤道PC上に位置する陸部26cがセンター陸部である。軸方向において外側に位置する陸部26s、すなわち、トレッド面22の端PEを含む陸部26sがショルダー陸部である。さらにセンター陸部26cとショルダー陸部26sとの間に位置する陸部26mが、ミドル陸部である。なお、トレッド4に構成された陸部26のうち、軸方向において内側に位置する陸部26が赤道PC上でなく、赤道PCの近くに位置する場合には、この赤道PCの近くに位置する陸部26、すなわち赤道PC側に位置する陸部26がセンター陸部である。
【0057】
このタイヤ2では、5本の陸部26は、センター陸部26cと、一対のミドル陸部26mと、一対のショルダー陸部26sとで構成される。センター陸部26cとミドル陸部26mとの間はセンター周方向溝24cである。ミドル陸部26mとショルダー陸部26sとの間は、ショルダー周方向溝24sである。
【0058】
センター陸部26cには、このセンター陸部26cを横切る軸方向溝36cが刻まれる。この軸方向溝36c(以下、センター軸方向溝とも称される。)は、一方のセンター周方向溝24cと他方のセンター周方向溝24cとを架け渡す。
【0059】
それぞれのミドル陸部26mには、このミドル陸部26mを横切る軸方向溝36mが刻まれる。この軸方向溝36m(以下、ミドル軸方向溝とも称される。)は、センター周方向溝24cとショルダー周方向溝24sとを架け渡す。
【0060】
それぞれのショルダー陸部26sには、このショルダー陸部26sを横切る軸方向溝36sが刻まれる。この軸方向溝36s(以下、ショルダー軸方向溝とも称される。)は、ショルダー周方向溝24sとトレッド面22の端PEとを架け渡す。
【0061】
このタイヤ2では、軸方向溝36の幅は、トレッド面22の幅RTの1~10%の範囲で適宜設定される。軸方向溝36の深さは13~25mmの範囲で適宜設定される。
【0062】
このタイヤ2では、軸方向溝36の幅は周方向溝24の幅と同等であってもよく、この軸方向溝36の幅が周方向溝24の幅よりも狭くてもよく、この軸方向溝36の幅が周方向溝24の幅よりも広くてもよい。この軸方向溝36の幅は、タイヤ2の仕様に応じて適宜決められる。
【0063】
このタイヤ2では、軸方向溝36の深さは周方向溝24の深さと同等であってもよく、この軸方向溝36の深さが周方向溝24よりも深くてもよいし、この軸方向溝36の深さが周方向溝24よりも浅くてもよい。この軸方向溝36の深さは、タイヤ2の仕様に応じて適宜決められる。
【0064】
センター陸部26cには、複数のセンター軸方向溝36cが刻まれる。これにより、周方向に間隔をあけて配置される、複数のセンターブロック38cがセンター陸部26cに構成される。なお、このタイヤ2では、センター陸部26cが周方向に連続する凸条で構成されてもよい。この場合、このセンター陸部26cには、前述のセンター軸方向溝36cは刻まれない。
【0065】
ミドル陸部26mには、複数のミドル軸方向溝36mが刻まれる。これにより、周方向に間隔をあけて配置される、複数のミドルブロック38mが構成される。なお、このタイヤ2では、ミドル陸部26mが周方向に連続する凸条で構成されてもよい。この場合、このミドル陸部26mには、前述のミドル軸方向溝36mは刻まれない。
【0066】
ショルダー陸部26sには、複数のショルダー軸方向溝36sが刻まれる。これにより、周方向に間隔をあけて配置される、複数のショルダーブロック38sが構成される。なお、このショルダー陸部26sが周方向に連続する凸条で構成されてもよい。この場合、このショルダー陸部26sには、前述のショルダー軸方向溝36sは刻まれない。
【0067】
このタイヤ2では、周方向溝24によって区画された複数の陸部26のうち、少なくとも一つの陸部26にサイプ40が刻まれる。サイプ40は、前述の周方向溝24及び軸方向溝36と同じ、溝である。特に、溝の壁間の距離で表される幅が1.5mm以下である、溝が、サイプ40と称される。
図2においては、サイプ40の幅が狭いため壁間の隙間は示されていない。
【0068】
このタイヤ2では、陸部26にサイプ40が刻まれることにより、サイプ40で囲まれた複数のロッド42が構成される。このタイヤ2では、ロッド42を囲うサイプ40は管状サイプ40tとも称される。
【0069】
このタイヤ2では、複数のロッド42において、一のロッド42と、この一のロッド42に近接する他のロッド42との間は、サイプ40である。隣接する2つのロッド42において、一のロッド42を囲う管状サイプ40tと、他のロッド42を囲う管状サイプ40tとは、互いの一部を共有する。このサイプ40は、複数の管状サイプ40tを組み合わせて構成された、ハチの巣状の形態を有する。
【0070】
図2に示されるように、このタイヤ2では、ショルダー陸部26sの一部をなすショルダーブロック38sに管状サイプ40tが刻まれる。この管状サイプ40tが、センター陸部26cの一部をなすセンターブロック38cに刻まれてもよく、ミドル陸部26mの一部をなすミドルブロック38mに刻まれてもよい。
【0071】
前述したように、このタイヤ2では、ショルダー陸部26sの一部をなすショルダーブロック38sに管状サイプ40tが刻まれる。このタイヤ2では、ショルダー陸部26sに含まれる複数のショルダーブロック38sのうち、少なくとも一部のショルダーブロック38sに、複数の管状サイプ40tが刻まれ複数のロッド42が構成されればよい。
図2に示されるように、このタイヤ2では、ショルダー陸部26sに含まれる複数のショルダーブロック38s全てに、複数の管状サイプ40tが刻まれ、複数のロッド42が構成される。なお、管状サイプ40tを刻む位置は、タイヤ2の仕様等も考慮し、適宜決められる。
【0072】
図2に示されるように、このタイヤ2では、ロッド42を囲うサイプ40、すなわち管状サイプ40tは、ショルダーブロック38sの外縁44の内側に位置する。管状サイプ40tは、周方向溝24とも、軸方向溝36とも、交わらない。この管状サイプ40tは、周方向溝24及び軸方向溝36から独立している。
【0073】
図3は、
図2のIII-III線に沿った、ショルダー陸部26sの断面図である。
図3において、左右方向はこのタイヤ2の周方向であり、上下方向はこのタイヤ2の径方向である。この
図3の紙面に対して垂直な方向は、このタイヤ2の軸方向である。
図2において、III-III線は周方向に並ぶロッド42の中心42cを含む平面に沿った直線である。
【0074】
このタイヤ2のロッド42は、その外面42gと根元42rとの間で曲がっている。言い換えれば、ロッド42は、その外面42gと根元42rとの間に曲部46を有する。
図3に示されるように、このタイヤ2のロッド42は、曲部46において、角を形成するように曲がっている。このロッド42が、曲部46において、弓形に曲がっていてもよい。
【0075】
このタイヤ2では、曲部46の頂46tの部分は、ロッド42の外面42gの部分から周方向にずれる。径方向において、ロッド42の根元42rの部分の位置は、このロッド42の外面42gの部分の位置と概ね一致する。このタイヤ2では、曲部46の頂46tの部分がロッド42の外面42gの部分から周方向にずれるように、ロッド42がその外面42gと根元42rとの間で曲がっている。なお、このタイヤ2では、曲部46の頂46tの部分がロッド42の外面42gの部分から軸方向にずれるように、このロッド42がその外面42gと根元42rとの間で曲がっていてもよく、周方向(又は軸方向)に対して斜めの方向に、曲部46の頂46tの部分がロッド42の外面42gの部分からずれるように、ロッド42がその外面42gと根元42rとの間で曲がっていてもよい。
【0076】
次に、このタイヤ2の製造方法について説明する。このタイヤ2の製造では、まず、成形機(図示されず)において、トレッド4、サイドウォール6等の部材を組み合わせて、未架橋状態のタイヤ2、すなわち、生タイヤ2rが準備される。後述する加硫機において、生タイヤ2rを加硫することでタイヤ2が得られる。このタイヤ2の製造方法は、生タイヤ2rを準備する工程、及び、この生タイヤ2rを加硫する工程を含む。
【0077】
このタイヤ2の製造では、
図4に示された加硫機48が用いられる。この加硫機48において、生タイヤ2rは加硫される。この加硫機48は、モールド50とブラダー52とを備える。
【0078】
モールド50は、その内面にキャビティ面54を備える。このキャビティ面54は、生タイヤ2rの外面に当接し、タイヤ2の外面を形づける。
【0079】
モールド50は、割モールドである。このモールド50は、構成部材として、トレッドリング56と、一対のサイドプレート58と、一対のビードリング60とを備える。このモールド50では、これら構成部材を組み合わせることにより、前述のキャビティ面54が構成される。
図4のモールド50は、これら構成部材が組み合わされた状態、言い換えれば、閉じられた状態にある。
【0080】
このモールド50では、トレッドリング56はタイヤ2のトレッド4の部分を形作る。このトレッドリング56は、多数のセグメント62で構成される。なお、サイドプレート58はタイヤ2のサイドウォール6の部分を形作り、ビードリング60はタイヤ2のビード8の部分を形作る。
【0081】
前述したように、このタイヤ2では、陸部26にサイプ40が刻まれる。このため、このタイヤ2のモールド50には、このサイプ40形成用のブレード64が設けられる。モールド50の構成部材のうち、セグメント62がタイヤ2のトレッド4の部分を形作る。このモールド50では、セグメント62の、陸部26を形作る部分に、ブレード64は設けられる。
【0082】
前述したように、陸部26に設けられるサイプ40は管状サイプ40tを含む。陸部26に構成される複数のロッド42においては、一のロッド42を囲う管状サイプ40tと、この一のロッド42に隣接する他のロッド42を囲う管状サイプ40tとは、互いの一部を共有する。このため、ブレード64は一枚のプレートではなく、三次元の構造体で構成される。具体的には、このブレード64は、複数の管状ブレードを組み合わせて構成された、ハチの巣状の形態を有する。詳述しないが、このブレード64は、付加製造技術としての三次元積層造形装置を用いて形成される。このブレード64の材質としては、ブレード64の剛性確保の観点から、ステンレス鋼が好ましい。このブレード64の厚さは0.2mm以上1.0mm以下が好ましい。
【0083】
前述したように、このタイヤ2の陸部26には、サイプ40に囲まれたロッド42が設けられる。このサイプ40で囲まれたロッド42の形成のために、モールド50のブレード64には管状ブレードが設けられる。このタイヤ2の製造では、この管状ブレードを生タイヤ2rに差し込むことでサイプ40に囲まれたロッド42が形成される。ところで、このタイヤ2の製造では、管状ブレード内へのエアの巻き込みは避けられない。エアが残存すると、ロッド42の外面42gにベアが発生することが懸念される。良好な外観品質を有するタイヤ2を製造する観点から、このモールド50のロッド42を形作る部分には、ベントホール等の排気手段が設けられるのが好ましい。
【0084】
このタイヤ2の製造では、タイヤ2をモールド50から取り出す際、生タイヤ2rに差し込まれたブレード64はタイヤ2から引き抜かれる。タイヤ2からブレード64を容易に引き抜くことができる観点から、トレッドリング56は多数のセグメント62で構成されるのが好ましい。具体的には、トレッドリング56を構成するセグメント62の数は12以上が好ましい。
【0085】
ブラダー52は、モールド50の内側に位置する。ブラダー52は、架橋ゴムからなる。このブラダー52の内部には、スチーム等の加熱媒体が充填される。これにより、ブラダー52は膨張する。
図4に示されたブラダー52は、加熱媒体が充填され膨張した状態にある。このブラダー52は、生タイヤ2rの内面に当接し、タイヤ2の内面を形づける。なお、このタイヤ2の製造では、ブラダー52に代えて金属製の剛性中子が用いられてもよい。
【0086】
このタイヤ2の製造では、所定の温度に設定されたモールド50に生タイヤ2rは投入される。投入後、モールド50は閉じられる。加熱媒体の充填により膨張したブラダー52が、キャビティ面54に生タイヤ2rを内側から押し付ける。生タイヤ2rは、モールド50内で所定時間加圧及び加熱される。これにより、生タイヤ2rのゴム組成物が架橋し、タイヤ2が得られる。なお、このタイヤ2の製造方法では、温度、圧力、時間等の加硫条件に特に制限はなく、一般的な加硫条件が採用される。
【0087】
このタイヤ2の製造では、生タイヤ2rには、モールド50及びブラダー52によって熱が伝えられる。生タイヤ2rには、サイドウォール6の部分のように小さなボリュームを有する部分と、トレッド4の部分のように大きなボリュームを有する部分とが混在する。小さなボリュームを有する部分には熱は伝わりやすいが、大きなボリュームを有する部分には熱は伝わりにくい。
【0088】
熱が伝わりやすい部分を基準に、生タイヤ2rを加圧及び加熱する時間、すなわち加硫時間を設定すると、熱が伝わりにくい部分における、加硫の進行が不十分になることが懸念される。一方、熱が伝わりにくい部分を基準に加硫時間を設定すると、熱が伝わりやすい部分において加硫が過剰に進むことが懸念される。
【0089】
ところで、環境への配慮から、車両に対しては燃費に関する規制が導入されている。この規制をクリアするために、タイヤ2においては転がり抵抗の低減が求められている。
【0090】
加硫温度を通常よりも低い温度に設定すると、過剰な加硫の進行を抑えることができ、転がり抵抗の低減を図ることができる。しかしこの場合、長い加硫時間が設定されるため、タイヤ2の生産性が低下することが懸念される。
【0091】
低発熱性のゴムを採用すれば、生産性を維持しながら、転がり抵抗の低減を図ることができる。しかしこの場合、低発熱性が考慮されていないゴムが採用されたタイヤに比べて、タイヤの耐摩耗性が低下することが懸念される。
【0092】
このタイヤ2の製造では、生タイヤ2rをモールド50内で加圧及び加熱するとき、生タイヤ2rの、熱が伝わりにくい、陸部26に対応する部分(以下、陸部対応部分66)に、前述のブレード64が差し込まれる。
【0093】
このタイヤ2の製造では、陸部対応部分66の深い位置まで、ブレード64が差し込まれる。これにより、この陸部対応部分66はその内部からも加熱される。このため、この陸部対応部分66が最適な加硫状態になるまでの時間が短縮される。このタイヤ2は、生産性の向上に貢献する。
【0094】
このタイヤ2では、トレッド4の形成に要する時間が短縮される。この時間の短縮は、熱が伝わりやすい、小さなボリュームを有する部分での、過剰な加硫の進行を抑える。過加硫による損失正接(tanδ)の増大が抑制されるので、このタイヤ2は、耐摩耗性に劣る低発熱性のゴムに依存せずとも、転がり抵抗の低減を図ることができる。
【0095】
タイヤにおいては、氷上性能や、ウェット性能の向上を図るために、例えば、波形構造又はミウラ折り構造を有するサイプが陸部に刻まれる。このサイプは陸部を略軸方向に横切るタイプであり、陸部に荷重が作用することでサイプが開き、サイプが十分に機能できない恐れがある。陸部の剛性が低下するため、十分な耐摩耗性が得られない恐れもある。
【0096】
このタイヤ2では、前述したように、陸部26にサイプ40が刻まれることにより、サイプ40で囲まれた複数のロッド42が構成される。サイプ40は管状に形成されるので、軸方向に延びる従来のサイプに比べて、サイプ40の開きが抑えられる。しかも、サイプ40に囲まれたロッド42はその外面42gと根元42rとの間に曲部46を有するので、荷重が作用し陸部が動いても、サイプ40は開きにくい。このタイヤ2では、サイプ40が十分に機能するとともに、このサイプ40を設けたことによる剛性の低下が効果的に抑えられる。このタイヤ2では、良好な氷上性能及びウェット性能が得られるとともに、耐摩耗性の向上が達成される。
【0097】
このタイヤ2では、トレッド4が効果的に加熱される。このタイヤ2では、生産性の向上が図られるとともに、耐摩耗性の向上と、転がり抵抗の低減とが達成される。サイプ40が十分に機能するので、このタイヤ2では、良好な氷上性能及びウェット性能が得られる。
【0098】
このタイヤ2の厚さは、
図1に示されたタイヤ2の断面において、カーカス12(詳細には、プライ本体32a)の外面の法線に沿って計測される。このタイヤ2は、トレッド面22の端PEにおいて最大の厚さを有する。このタイヤ2では、ショルダー陸部26sの部分が最も大きなボリュームを有する。
【0099】
このタイヤ2では、トレッド4が効果的に加熱される観点から、ショルダー陸部26sにサイプ40が刻まれ、このサイプ40で囲まれた複数のロッド42が構成されるのが好ましい。
【0100】
前述したように、このタイヤ2では、ショルダー陸部26sにショルダー軸方向溝36sが刻まれ、周方向に間隔をあけて配置される複数のショルダーブロック38sが構成される。トレッド4が効果的に加熱される観点から、複数のショルダーブロック38sのうち、少なくとも一部のショルダーブロック38sにサイプ40を刻み、複数のロッド42が構成されるのが好ましい。ショルダー陸部26sに構成された複数のショルダーブロック38s全てにサイプ40を刻み、複数のロッド42が構成されるのがより好ましい。なお、この場合、ショルダーブロック38sの剛性確保の観点から、サイプ40は、周方向溝24(具体的には、ショルダー周方向溝24s)及び軸方向溝36(具体的には、ショルダー軸方向溝36s)から独立しているのが好ましい。
【0101】
図1において、両矢印Gはショルダー周方向溝24sの深さである。両矢印Bは、ショルダーブロック38sに設けられたサイプ40の深さである。このショルダー周方向溝24sの深さG及びサイプ40の深さBは、このタイヤ2のためのモールド50に基づいて特定できる。
【0102】
このタイヤ2では、トレッド4が効果的に加熱される観点から、サイプ40の深さBは3mm以上が好ましい。ショルダーブロック38sの剛性が確保される観点から、このサイプ40の深さBは20mm以下が好ましい。
【0103】
このタイヤ2では、トレッド4が効果的に加熱される観点から、サイプ40の深さBはショルダー周方向溝24sの深さGの50%以上が好ましい。ショルダーブロック38sの剛性が確保される観点から、このサイプ40の深さBはショルダー周方向溝の深さGの100%以下が好ましい。
【0104】
図2において、両矢印AWはショルダーブロック38sの軸方向幅である。この軸方向幅AWは最大幅で表される。両矢印ASは、サイプ40から周方向溝24までの軸方向距離である。この軸方向距離ASは最短距離で表される。両矢印PLは、ショルダーブロック38sの周方向長さである。この周方向長さPLは最長の長さで表される。両矢印PSは、サイプ40から軸方向溝36までの周方向距離である。この周方向距離PSは最短長さで表される。
【0105】
このタイヤ2では、ショルダーブロック38sの剛性確保の観点から、サイプ40は周方向溝24から離して配置される。具体的には、サイプ40から周方向溝24までの軸方向距離ASの、ショルダーブロック38sの軸方向幅AWに対する比は、0.1以上が好ましい。ショルダーブロック38sの柔軟性確保の観点から、この比は0.3以下が好ましい。
【0106】
このタイヤ2では、ショルダーブロック38sの剛性確保の観点から、サイプ40は軸方向溝36から離して配置される。具体的には、サイプ40から軸方向溝36までの周方向距離PSの、ショルダーブロック38sの周方向長さPLに対する比は、0.1以上が好ましい。ショルダーブロック38sの柔軟性確保の観点から、この比は0.3以下が好ましい。
【0107】
このタイヤ2では、陸部26が十分な剛性を有し、良好な耐摩耗性が得られるとの観点から、ロッド42の断面形状は少なくとも三つの辺を有する多角形であるのが好ましい。このタイヤ2では、このロッド42の断面形状としては、例えば、三角形、四角形、五角形及び六角形が挙げられる。耐摩耗性の向上が図れるとの観点から、
図2に示されるように、このロッド42の断面形状は六角形であるのがより好ましい。この場合、このロッド42の断面形状は、全ての辺が同じ長さを有する正六角形であるのがさらに好ましい。なお、このタイヤ2では、ロッド42の断面形状はロッド42の外面42gの形状により表される。このロッド42の断面形状は、このタイヤ2のためのモールド50に基づいて特定できる。
【0108】
このタイヤ2では、ロッド42の断面形状が少なくとも三つの辺を有する多角形である場合、ロッド42が陸部26の剛性確保に効果的に貢献できるとの観点から、このロッド42の断面形状に含まれる少なくとも一つの辺は、軸方向に延びるのが好ましい。前述したように、
図2に示されたタイヤ2では、ロッド42の断面形状は正六角形である。このロッド42においては、この断面形状に含まれる二つの辺が軸方向に延びる。このロッド42は、陸部26の剛性確保に効果的に貢献できる。この観点から、断面形状が正六角形であり、この断面形状に含まれる二つの辺が軸方向に延びるように、ロッド42が構成されるのがより好ましい。
【0109】
図2において、両矢印Aはロッド42の断面形状が有する辺の長さを表す。この辺の長さAは、このタイヤ2のためのモールド50に基づいて特定できる。この長さAは、ロッド42の断面形状が軸方向に延びる辺を有する場合には、この軸方向に延びる辺の長さにより表される。断面形状に含まれる複数の辺に軸方向に延びる辺が含まれてなく、この断面形状に含まれる複数の辺が異なる長さを有する場合は、これら辺の平均値により、この辺の長さAが表される。
【0110】
このタイヤ2では、ロッド42の断面形状が有する辺の長さAは3mm以上が好ましく、8mm以下が好ましい。この辺の長さAが3mm以上に設定されることにより、エアの残存によるベアの発生が抑えられ、良好な外観品質を有するタイヤ2が得られる。この観点から、この辺の長さAは4mm以上がより好ましい。この辺の長さAが8mm以下に設定されることにより、剛性向上に貢献できる、サイプ40で囲まれた複数のロッド42が陸部26に構成される。この観点から、この辺の長さAは7mm以下がより好ましい。
【0111】
前述したように、このタイヤ2では、サイプ40で囲まれた複数のロッド42が陸部26に構成される。このタイヤ2では、この複数のロッド42の配置に特に制限はない。これらロッド42が陸部26の剛性向上に効果的に貢献できる観点から、陸部26に構成された複数のロッド42は、
図2に示されるように、軸方向及び周方向に並列するのが好ましい。この場合、周方向に並列したロッド42の数が軸方向に並列したロッド42の数よりも多いのがより好ましい。
【0112】
このタイヤ2の陸部26には、サイプ40で囲まれた複数のロッド42からなるロッド群68が構成される。陸部26が周方向に連続する凸条で構成される場合には、複数のロッド群68が周方向に所定の間隔をあけてこの陸部26に配置される。陸部26が複数のブロック38を含む場合には、
図2に示されるように、一のブロック38に一のロッド群68が構成される。
【0113】
このタイヤ2では、一のロッド群68に含まれるロッド42の数に特に制限はない。複数のロッド42で構成されるロッド群68が陸部26の剛性に効果的に貢献できる観点から、一のロッド群68に含まれるロッド42の数は2以上が好ましく、4以上がより好ましく、6以上がさらに好ましい。一のロッド群68に含まれるロッド42の数の上限は、ロッド群68が構成される陸部26の大きさによって決められるが、ベアの発生が抑えられ、良好な外観品質を有するタイヤ2が得られる観点から、一のロッド群68に含まれるロッド42の数は、20以下が好ましく、12以下がより好ましい。
【0114】
前述したように、このタイヤ2では、ロッド42は、その外面42gと根元42rとの間に曲部46を有する。タイヤ2は周方向に回転する。ロッド42の曲部46が陸部26の剛性向上に効果的に貢献できる観点から、
図3に示されるように、曲部46の頂46tの部分がロッド42の外面42gの部分から周方向にずれているのが好ましい。
【0115】
前述したように、このタイヤ2では、曲部46において、ロッド42は弓形に曲がる、又は、このロッド42は角を形成するように曲がる。ロッド42の動きが抑えられ、陸部26の剛性が高められる観点から、ロッド42は、曲部46において、角を形成するように曲がっているのが好ましい。
【0116】
図3において、角度θはロッド42の曲げ角度を表す。この曲げ角度θは、モールド50におけるサイプ40形成のためのブレード64の曲げ角度に基づいて特定できる。
【0117】
このタイヤ2では、ロッド42の曲げ角度θは100°以上が好ましい。これにより、タイヤ2の製造において、外観品質を損なうことなくモールド50からタイヤ2を取り出すことができる。この観点から、曲げ角度θは120°以上がより好ましい。陸部26の剛性向上に貢献できるロッド42が得られるとの観点から、曲げ角度θは160°以下が好ましい。
【0118】
図3に示されたロッド42には、1の曲部46が設けられる。
図5に示されるように、このロッド42に2つの曲部46が設けられてもよい。この場合においても、ロッド42の動きが効果的に抑えられ、陸部26の剛性が効果的に高められる。なお、ロッド42に設けられる曲部46の数を増やすと、タイヤ2の製造において、タイヤ2からブレード64が引き抜きにくくなる上に、管状ブレード内にエアが残存しやすくなる。陸部26の剛性を効果的に向上させることができ、良好な外観品質を有するタイヤ2が得られる観点から、ロッド42に設けられる曲部46の数は1以上が好ましく、2以下が好ましい。
【0119】
以上の説明から明らかなように、本発明の空気入りタイヤ2では、トレッド4が効果的に加熱される。このタイヤ2では、生産性の向上が図られるとともに、耐摩耗性の向上と、転がり抵抗の低減とが達成される。サイプ40が十分に機能するので、このタイヤ2では、良好な氷上性能及びウェット性能が得られる。
【0120】
今回開示した実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の技術的範囲は前述の実施形態に限定されるものではなく、この技術的範囲には特許請求の範囲に記載された構成と均等の範囲内でのすべての変更が含まれる。
【実施例】
【0121】
以下、実施例などにより、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0122】
[実施例1]
図1-3に示された構成を備え、下記の表1に示された仕様を備えた重荷重用空気入りタイヤ(タイヤサイズ=315/70R22.5)を得た。
【0123】
この実施例1では、ショルダーブロックにサイプを刻み、このサイプで囲まれた6つのロッドが構成された。ロッドの断面形状は正六角形であり、このことが表1の構造の欄に「H」で表されている。この正六角形の辺の長さAは5mmであった。一のロッドに設けられる曲部の数は1であり、曲げ角度θは160°であった。
【0124】
[比較例1]
ショルダーブロックにサイプで囲まれた6つのロッドを構成しなかった他は実施例1と同様にして、比較例1のタイヤを得た。比較例1は従来タイヤである。
【0125】
[比較例2]
ショルダーブロックに波形構造のサイプを刻み、サイプで囲まれた6つのロッドを構成しなかった他は実施例1と同様にして、比較例2のタイヤを得た。比較例2は従来タイヤである。サイプが波形構造を有することが、表1の構造の欄に「W」で表されている。
【0126】
[比較例3]
ショルダーブロックにミウラ折り構造のサイプを刻み、サイプで囲まれた6つのロッドを構成しなかった他は実施例1と同様にして、比較例3のタイヤを得た。比較例3は従来のタイヤである。サイプがミウラ折り構造を有することが、表1の構造の欄に「M」で表されている。
【0127】
[実施例2]
辺の長さAを下記の表1に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例2のタイヤを得た。
【0128】
[実施例3及び比較例4]
曲げ角度θを下記の表2に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例3及び比較例4のタイヤを得た。比較例4のロッドには曲部は設けられていないので、曲部の数は「0(ゼロ)」で表されている。
【0129】
[実施例4]
曲部の数を下記の表2に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例4のタイヤを得た。
【0130】
[実施例5及び比較例5]
ショルダーブロックに構成されるサイプで囲まれたロッドの数を下記の表2に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例5及び比較例5のタイヤを得た。
【0131】
[ウェット性能(WET性能)]
試作タイヤを正規リムに組み込み空気を充填しタイヤの内圧を850kPaに調整した。このタイヤを、試験車両(10t積みトラック)の全輪に装着した。この試験車両を、荷台前方に標準積載量の50%の荷物を積載した状態で、ウェット路面(5mmの水膜を有するウェットアスファルト路)において、2速-1500rpm固定で走行させ、クラッチを繋いだ瞬間から10m通過するまでの通過タイムが測定された。この結果が、指数で、下記の表1及び2に示されている。数値が大きいほど、通過タイムが短く、ウェット性能に優れる。
【0132】
[氷上性能]
試作タイヤを正規リムに組み込み空気を充填しタイヤの内圧を850kPaに調整した。このタイヤを、試験車両(10t積みトラック)の全輪に装着した。この試験車両を、荷台前方に標準積載量の50%の荷物を積載した状態で、氷板路において、速度40km/hから全輪ロックで急制動をかけ、停止するまでの制動距離を測定した。この結果が、指数で、下記の表1及び2に示されている。数値が大きいほど制動距離が短く、氷上性能に優れる。
【0133】
[耐摩耗性]
試作タイヤを正規リムに組み込み空気を充填しタイヤの内圧を850kPaに調整した。このタイヤを、試験車両(10t積みトラック)のフロント軸に装着した。荷台前方に標準積載量の50%の荷物を積載した状態で、一般道路を走行し、偏摩耗が発生する走行距離を測定した。この結果が、指数で下記の表1及び2に示されている。数値が大きいほど、偏摩耗が生じにくく耐摩耗性に優れる。
【0134】
[転がり抵抗(RRC)]
転がり抵抗試験機を用い、各試作タイヤが下記の条件でドラム上を速度80km/hで走行するときの転がり抵抗係数(RRC)を測定した。この結果が、指数で下記の表1及び2に示されている。数値が大きいほど、転がり抵抗が小さく優れる。
リム:正規リム
内圧:900kPa
縦荷重:33.35kN
【0135】
[生産性]
各試作タイヤについて、生タイヤの加硫に要した時間(すなわち、加硫時間)を測定した。この結果が、指数で下記の表1及び2に示されている。数値が大きいほど、加硫時間は短く生産性に優れる。
【0136】
[品質]
各試作タイヤの外面を観察し、ベアの発生、トレッドダメージの発生の有無が確認された。この結果が、以下の格付けで、下記の表1及び2に示されている。
B/T・・・・ベアが発生していた場合
DM/T・・・欠け等のトレッドダメージが発生していた場合
G・・・・・・ベア及びトレッドダメージが発生していなかった場合
【0137】
【0138】
【0139】
表1及び2に示されるように、実施例では、生産性の向上が図られるとともに、耐摩耗性の向上と、転がり抵抗の低減とが達成されている。この実施例では、良好な氷上性能及びウェット性能も確認されている。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0140】
以上説明された生産性の向上を図りつつ、耐摩耗性の向上と、転がり抵抗の低減とを達成させる技術は、種々のタイヤに適用されうる。
【符号の説明】
【0141】
2・・・タイヤ
2r・・・生タイヤ
4・・・トレッド
22・・・トレッド面
24、24c、24s・・・周方向溝
26、26c、26m、26s・・・陸部
36、36c、36m、36s・・・軸方向溝
38、38c、38m、38s・・・ブロック
40・・・サイプ
40t・・・管状サイプ
42・・・ロッド
46・・・ロッド42の曲部
48・・・加硫機
50・・・モールド
52・・・ブラダー
54・・・キャビティ面
64・・・ブレード