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特許7338384車両の演算処理装置、サーバコンピュータおよびプログラム
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  • 特許-車両の演算処理装置、サーバコンピュータおよびプログラム 図1
  • 特許-車両の演算処理装置、サーバコンピュータおよびプログラム 図2
  • 特許-車両の演算処理装置、サーバコンピュータおよびプログラム 図3
  • 特許-車両の演算処理装置、サーバコンピュータおよびプログラム 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】車両の演算処理装置、サーバコンピュータおよびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 9/50 20060101AFI20230829BHJP
【FI】
G06F9/50 150D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019182779
(22)【出願日】2019-10-03
(65)【公開番号】P2021060651
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2021-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西山 将弘
(72)【発明者】
【氏名】塚岸 健司
(72)【発明者】
【氏名】兼子 貴久
【審査官】田中 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-176452(JP,A)
【文献】特開2004-280815(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 9/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両外部との通信機能を有する車両に搭載される車両の演算処理装置であって、
演算課題について演算し演算結果を出力するとともに、
前記演算処理装置が演算する演算量が第一所定値以上の場合に演算課題を、前記通信機能を用いて車両外部に送信し
前記演算処理装置の演算する演算量が、前記第一所定値より小さい第二所定値以下の場合に演算課題を、前記通信機能を用いて車両外部から受信する
車両の演算処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の演算処理装置であって、
前記車両外部から受信する演算課題は、外部のサーバコンピュータを介して受信する、
車両の演算処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の車両の演算処理装置であって、
前記車両外部に送信する演算課題は、外部のサーバコンピュータを介して送信される、
車両の演算処理装置。
【請求項4】
請求項1に記載の車両の演算処理装置であって、
前記車両外部の通信機能は、所定範囲内に存在する他の車両の演算処理装置との通信機能を含む、
車両の演算処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の車両の演算処理装置であって、
前記演算処理装置が演算する演算量が第二所定値以上の場合に演算課題を、前記通信機能を用いて前記所定範囲内に存在する前記他の車両の演算処理装置に送信するように構成された、
車両の演算処理装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載の車両の演算処理装置であって、
演算課題を他の車両の演算装置に送信する場合に、通信ネットワークを介して自車を特定する自車のアドレスも他の車両に送信する、
車両の演算処理装置。
【請求項7】
車両外部との通信機能を有する車両に搭載される車両の演算処理装置により実行可能であり、前記演算処理装置に、
演算課題について演算し演算結果を出力することと、
演算する演算量が第一所定値以上の場合に演算課題を車両外部に送信し、演算する演算量が、前記第一所定値より小さい前記第二所定値以下の場合に、演算課題を車両外部から受信することと、
を含む動作を実行させるように構成された、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両外部との通信機能を有する車両に搭載される車両の演算処理に関する。
【背景技術】
【0002】
情報通信技術の進歩に伴い、車両においても多くの処理をコンピュータ(演算処理装置)が行っている。自動運転などは、周辺の状況なども考慮の上、操舵等を制御するためその演算量が大きく、またビーコン等の周辺インフラや、交通管理システムのサーバコンピュータとの通信などの外部との通信量も大きくなっている。
【0003】
このため、車両に搭載される演算処理装置の演算量は、その時の状態において大きく異なる。また、サーバコンピュータにおいても、その演算量は刻々と変化する。
【0004】
特許文献1では、車両に搭載される演算処理装置に大きい余剰演算力がある場合には、その演算処理装置で外部サーバコンピュータから提供された演算課題が演算されるようにプログラムされている。従って、車両の演算処理装置の演算能力を有効に活用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-079137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、自動運転など、車両の演算処理の負荷は増大しており、演算処理装置の有効利用がより求められるようになってきている。
【0007】
本発明は、車両における演算処理を平準化して、演算処理装置をさらに有効利用することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
車両外部との通信機能を有する車両に搭載される車両の演算処理装置であって、演算課題について演算し演算結果を出力するとともに、前記演算処理装置が演算する演算量が第一所定値以上の場合に演算課題を、前記通信機能を用いて車両外部に送信し、前記演算処理装置の演算する演算量が、前記第一所定値より小さい第二所定値以下の場合に演算課題を、前記通信機能を用いて車両外部から受信する
【0009】
前記車両外部から受信する演算課題は、外部のサーバコンピュータを介して受信するとよい。
【0010】
前記車両外部に送信する演算課題は、外部のサーバコンピュータを介して送信されるとよい。
【0011】
前記車両外部の通信機能は、所定範囲内に存在する他の車両の演算処理装置との通信機能を含むとよい。
【0012】
前記演算処理装置が演算する演算量が第二所定値以上の場合に演算課題を、前記通信機能を用いて前記所定範囲内に存在する前記他の車両の演算処理装置に送信するように構成されるとよい。
【0013】
演算課題を他の車両の演算装置に送信する場合に、通信ネットワークを介して自車を特定する自車のアドレスも他の車両に送信するとよい。
【0015】
また、本発明に係るプログラムは、車両外部との通信機能を有する車両に搭載される車両の演算処理装置により実行可能であり、前記演算処理装置に、演算課題について演算し演算結果を出力することと、演算する演算量が第一所定値以上の場合に演算課題を車両外部に送信し、演算する演算量が、前記第一所定値より小さい前記第二所定値以下の場合に、演算課題を車両外部から受信することと、を含む動作を実行させるように構成される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、演算処理装置の演算量に余裕があるか否かを判定して、演算課題を外部とやり取りするため、全体として演算を平準化して、演算処理資源を有効利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】車両を含む通信システムの全体構成を示す図である。
図2】車両における演算処理、通信処理を行う構成を示す図である。
図3】演算処理装置における外部と演算を分担する演算処理についてのフローチャートである。
図4】サーバコンピュータにおいて、演算課題を処理するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。なお、本発明は、ここに記載される実施形態に限定されるものではない。
【0019】
「全体構成」
図1は、車両100,102を含む通信システムの全体構成を示す図である。インターネットなどを含む通信ネットワーク10には、サーバコンピュータ12が接続されている。サーバコンピュータ12は、CPU,ROM,RAMなどを含むコンピュータであるが、機能ブロックとして通信ネットワーク10を介しての通信を行う通信部12aと、全体制御を行う制御部12bを有している。サーバコンピュータ12は、この例においては、交通管理センターなどの所定地域の車両の移動などを管理するシステムであり、車両100に対しても、経路探索や渋滞情報や自動運転支援情報の提供など各種のサービスを提供する。サーバコンピュータ12は、個別のサービスを提供するものや、これを統括するものや、気象などその他の情報を提供するものなど、その役割に応じて多数設けられる。
【0020】
通信ネットワーク10には、ビーコン14が接続されている。ビーコン14は、交差点等に設置され、サーバコンピュータ12から提供される、当該交差点において必要な情報を車両100に提供するとともに、交差点を通過する車両100の情報をサーバコンピュータ12に提供する。なお、ビーコン14が独自に所有する情報を車両100に提供することも好適である。ビーコン14は、多数の交差点に配置するなど、複数あることを前提としている。
【0021】
車両100,102は、通信機能を有し道路上を走行する車両であり、適宜、車両100を自車100、車両102を他車102と称する。
【0022】
車両100は、通信ネットワーク10の基地局と無線通信が可能であり、これによってサーバコンピュータ12とサーバ通信ができる。また、車両100は、ビーコン14との間でインフラ通信、他車102との間で、車々間通信ができる。
【0023】
「車両」
図2は、車両100,102に搭載される演算処理、通信処理を行う構成を示す図である。演算処理装置20は、演算処理を実行可能な電子回路を備え、各種の演算処理を行い、演算結果を出力する。演算処理装置20は、CPU,ROM,RAMなどを含むコンピュータであり、記憶しているプログラムを実行するとよい。
【0024】
演算処理装置20には、通信制御部22が接続されており、車両外部との通信(サーバ通信、インフラ通信、車々間通信)を制御する。通信制御部22には、アンテナ24が接続されており、アンテナ24により電波が送受信される。演算処理装置20には、経路案内などを行うナビゲーション装置26や、自動運転を制御する自動運転装置28が接続されている。なお、演算処理装置20は、オーディオのための処理など車両において必要な各種の処理を行うことができ、また物理的には複数の演算処理装置に分かれていてもよい。
【0025】
「処理フロー」
図3は、演算処理装置20における外部と演算を分担する演算処理についてのフローチャートである。まず、外部との通信が可能であるかを判定する(S11)。通常は、外部との通信が可能であるが、機器の故障や、ネットワークの障害などで通信ができない場合もある。S11の判定において、NOであり、外部との通信ができない場合には、演算を外部と分担することはできないため、処理を終了する。
【0026】
S11の判定において、YESの場合、演算処理装置20における演算量が一定値以上かを判定する(S12)。すなわち、演算処理装置20において余裕がないか、余裕があるかを判定する。S12の判定で、YESの場合には、演算処理装置20において余裕がなく、できれば外部の演算処理装置の助けを得ることが好ましい。そこで、通信によって、外部において演算を請け負ってもらえるか、すなわち受け入れ先があるかを問い合わせる(S13)。これは、サーバ通信で、サーバコンピュータ12に演算を請け負ってもらえるかを問い合わせることを含むが、車々間通信によって他車102において演算を請け負ってもらえるかの問い合わせ、さらにサーバコンピュータ12を介し、他車102において演算を請け負ってもらえるかの問い合わせも含む。すなわち、車々間通信は、直接通信が可能である所定範囲内に存在する他車102を対象とするが、サーバコンピュータ12を介した場合には、通信ネットワーク10に接続されている他車102もすべて対象となる。
【0027】
S13の問い合わせにおいて、NOの場合には、演算を請け負ってもらえる相手がいないため、処理を終了する。通常はサーバコンピュータ12を介して探せば、受け入れ先がいくつかは見つかり、複数見つかった場合にはサーバコンピュータ12において適切な受け入れ先を決定することができる。
【0028】
ここで、本実施形態においては、車々間通信での受け入れ先を優先する。これによって、サーバコンピュータ12や、通信ネットワーク10の負荷が問題にならず、より効果的な演算の分担が行える。なお、車々間通信の場合、所定範囲内に位置する他車102が対象となり、他車において、分担してもらった演算処理が終了した場合には、車々間通信が不能になっている場合もある。このような場合に対処するため、演算の依頼の際に、通信ネットワーク10を介しての自車のアドレスも提供しておくとよい。
【0029】
S13の判定でYESの場合には、該当する受け入れ先に対し、演算課題を送信する(S14)。これによって、演算課題が受け入れ先に送信され、受け入れ先において演算処理が行われる。そして、受け入れ先において演算結果が得られた場合には、そこから演算結果が送信されて、演算結果が受信される(S15)。
【0030】
このようにして、自車100における演算処理装置20において、余裕がない場合には、外部の演算機能を用いて演算課題について演算が行われ、演算結果を受信することができる。従って、自車100において演算処理を行う場合に比べ、早期に結果を得られる確率が増し、また自車100においてはより優先度が高い演算処理を行うことができる。特に、余裕のある演算処理装置を用いて、演算処理が行え、演算処理を平準化でき、演算処理能力を有効活用することができる。
【0031】
S12の判定において、NOの場合には、自車100の演算処理装置20において演算処理に余裕がある。この場合には、通信によって依頼元があるかを判定する(S16)。この依頼元があるかの判定も、サーバ通信だけでなく、車々間通信でも行う。
【0032】
この判定で、NOの場合、外部からの依頼がないものとして処理を終了する。一方S16の判定でYESの場合には、依頼元からの演算課題を受信する(S17)。ここで、依頼が複数あった場合には、救急車などの緊急車両など、緊急性の高い依頼を優先するとよい。搬送先の探索や、搬送先病院の受け入れ態勢についての情報の取得などの処理を緊急車両に代わって行うことができる。
【0033】
そして、受信した演算課題についての演算を行い(S18)、演算結果を依頼元に送信する(S19)。
【0034】
このように、自車100において演算処理能力に余裕がある場合には、他車102等からの依頼を受け付けて、演算処理を行う。従って、自車100の資源を有効利用することができる。
【0035】
ここで、S12では、演算量が一定値以上か否かを同一の閾値で判定したが、これを異なる閾値(第一所定値および第二所定値)とし、外部への依頼を行う(演算課題を外部に送信する)閾値(第一所定値)は高く、外部の依頼元を探す(外部からの演算課題を受け入れる)閾値(第二所定値)をより低い値としてもよい。これによって、ある範囲の演算量の場合には、自車100での演算のみを行い、余分な外部との通信を省略できる。また、S13、S16の処理は、S12の演算量の判定とは関係なく、常時行っておき、候補のリストを用意しておいてもよい。これによって、S13、S16の判定の際に、リストにある候補から相手先を選択して、コンタクトすることが可能になる。リストの順番を優先順位も考慮して決定しておけば、リストの上から相手先を決定することで、容易に適切な相手先を選択することができる。
【0036】
ここで、自動運転機能がある車両においては、通常演算処理装置20の演算能力が大きい。このため、自動運転を行っていない場合には、演算能力に余裕があり、S12においてNOの判定となる場合が多い。また、自動運転機能の有無にかかわらず、駐車中などは演算量に余裕がある。
【0037】
また、自動運転車両において、自車の自動運転のための演算は、即時性が高く、外部に依頼しにくい。そこで、他の即時性の低い、演算課題を外部に委託するとよい。例えば、経路探索や、その他の情報検索、オーディオについての処理などは優先度を低くするとよい。
【0038】
このように、本実施形態によれば、車々間通信も利用して、演算課題のやり取りが可能になっている。従って、サーバコンピュータ12を介しての通信だけの場合に比べ、より効率的な演算処理の平準化、資源の有効利用を図ることができる。
【0039】
また、ビーコン14などのインフラについても、車両100,102などと同様に、演算課題のやりとりを行ってもよい。
【0040】
「サーバコンピュータの処理」
図4は、サーバコンピュータ12において、演算課題を処理するフローチャートである。複数の車両のいずれかの車両(第1車両)100から、演算処理をしてもらいたい演算課題の送信があるかを監視することで、演算課題を受信したかを判定し(S21)、演算課題を受信した場合には、その演算課題の処理(演算)が可能な車両102を探索する(S22)。そして、探索結果によって得られた車両(第2車両)102に演算課題を送信する(S23)。演算課題を受信した車両(第2車両)102は演算課題についての演算を行い、演算結果をサーバコンピュータ12に送信する。サーバコンピュータ12は演算結果を受信した場合(S24でYES)、その演算結果を車両(第1車両)100に送信する(S25)。このようにして、車両(第1車両)において、演算が間に合わない場合に、演算課題をサーバコンピュータ12に送信することで、演算結果を得ることができる。特に、サーバコンピュータ12は演算を自己で行うことなく、演算能力に余裕のある車両(第2車両)102に演算を行わせることで、複数の車両100,102の演算能力を有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0041】
10 通信ネットワーク、12 サーバコンピュータ、14 ビーコン、20 演算処理装置、22 通信制御部、24 アンテナ、26 ナビゲーション装置、28 自動運転装置、100 車両(自車)、102 車両(他車)。
図1
図2
図3
図4