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特許7338385媒体収容装置及びこれを用いた処理装置並びに制動部品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】媒体収容装置及びこれを用いた処理装置並びに制動部品
(51)【国際特許分類】
   B65H 1/26 20060101AFI20230829BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
B65H1/26 312E
G03G15/00 401
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019183183
(22)【出願日】2019-10-03
(65)【公開番号】P2021059397
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137752
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 岳行
(74)【代理人】
【識別番号】100085040
【弁理士】
【氏名又は名称】小泉 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100108925
【弁理士】
【氏名又は名称】青谷 一雄
(74)【代理人】
【識別番号】100087343
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 智廣
(72)【発明者】
【氏名】小堀 周平
【審査官】松林 芳輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-301993(JP,A)
【文献】特開2017-48009(JP,A)
【文献】特開2015-101431(JP,A)
【文献】特開2013-43739(JP,A)
【文献】特開平08-259007(JP,A)
【文献】実開昭61-31231(JP,U)
【文献】特開2002-293192(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 1/00-3/68
G03G 15/00
A47B 67/04
A47B 88/00-88/994
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理装置筐体に対して引き出し位置と挿入位置との間で出し入れ可能に支持されて媒体を収容する収容手段と、
前記収容手段の引き出し方向に交差する幅方向の両側に前記収容手段の引き出し方向に沿って延びるレール部材を有し、前記収容手段の両側部を出し入れ可能に案内する案内手段と、
前記収容手段の引き出し方向奥側の両側に設けられ、前記引き出し位置に前記収容手段を引き出すときに前記案内手段の前記レール部材に摺動して前記収容手段の引き出し動作を制動する制動部品と、
を備え、
前記制動部品は、前記収容手段に対して揺動支点を中心とし且つ前記収容手段の引き出し方向に対し上方から下方に向かう方向に揺動可能に支持される部品本体と、
前記部品本体の上面部に突出して設けられ、前記収容手段の引き出し方向に沿う前記揺動支点を挟んだ二箇所で前記案内手段に接触する突部と、
を有することを特徴とする媒体収容装置。
【請求項2】
請求項1に記載の媒体収容装置において、
前記突部は前記案内手段の前記レール部材と接触する部位が曲面状に形成されていることを特徴とする媒体収容装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の媒体収容装置において、
前記突部は断面円弧状の同一断面形状に形成されていることを特徴とする媒体収容装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の媒体収容装置において、
前記突部は前記揺動支点を挟んで対称的な位置に配置されていることを特徴とする媒体収容装置。
【請求項5】
請求項4に記載の媒体収容装置において、
前記突部が設けられた前記部品本体の上面部は前記突部の突出方向に対して弾性変形可能であることを特徴とする媒体収容装置。
【請求項6】
請求項1に記載の媒体収容装置において、
前記部品本体は、前記揺動支点となる軸部と、前記軸部と前記突部との間に設けられて前記突部を支持する支持部と、前記軸部に対して前記突部とは反対側に設けられ、前記収容手段の一部に設けられた回り止め部に突き当たり揺動可能な方向と逆の方向に対する前記部品本体の揺動を規制する規制部と、を備えていることを特徴とする媒体収容装置。
【請求項7】
請求項6に記載の媒体収容装置において、
前記支持部は、前記突部と前記軸部との間に肉抜き部を形成し、前記突部と前記肉抜き部との間に弾性変形可能な腕部を形成したことを特徴とする媒体収容装置。
【請求項8】
請求項7に記載の媒体収容装置において、
前記支持部を構成する腕部は、前記軸部の位置から延びる支柱部に対し断面略T字状に形成されていることを特徴とする媒体収容装置。
【請求項9】
請求項7に記載の媒体収容装置において、
前記突部は、前記腕部の先端寄りに設けられることを特徴とする媒体収容装置。
【請求項10】
請求項6に記載の媒体収容装置において、
前記回り止め部は少なくとも隣接する壁部が交差する隅角部を有し、前記規制部は前記隅角部に対向する対向壁部を有することを特徴とする媒体収容装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかに記載の媒体収容装置と、
前記媒体収容装置に収容された媒体を搬送して予め決められた処理を施す処理手段と、を備えたことを特徴とする処理装置。
【請求項12】
処理装置筐体に対して引き出し位置と挿入位置との間で出し入れ可能に支持されて媒体を収容する収容手段と、前記収容手段の引き出し方向に交差する幅方向の両側に前記収容手段の引き出し方向に沿って延びるレール部材を有し、前記収容手段の両側部を出し入れ可能に案内する案内手段と、を備えた媒体収容装置に用いられ、
前記収容手段の引き出し方向奥側の両側に設けられ、前記引き出し位置に前記収容手段を引き出すときに前記案内手段の前記レール部材に摺動して前記収容手段の引き出し動作を制動する制動部品であって、
前記収容手段に対して揺動支点を中心とし且つ前記収容手段の引き出し方向に対し上方から下方に向かう方向に揺動可能に支持される部品本体と、
前記部品本体の上面部に突出して設けられ、前記収容手段の引き出し方向に沿う前記揺動支点を挟んだ二箇所で前記案内手段に接触する突部と、
を有することを特徴とする制動部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体収容装置及びこれを用いた処理装置並びに制動部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来における媒体収容装置としては例えば特許文献1~3に記載のものが知られている。
特許文献1には、引出し本体に緩衝ユニットを備え、緩衝ユニットとしては、引出し本体に固定された第1部材と、第1部材に連結された第3部材と、緩衝作動モードにおいて引出し収納部側の係合部に係合する第2部材と、緩衝作動モードにおいて第2部材に対する第3部材の相対移動を制動するダンパーと、緩衝作動モードにおいて第2部材に対する第1部材の相対移動を制動するブレーキ機構とを備えた引出しの緩衝装置が開示されている。
特許文献2には、給紙トレイに一定以上の加速度で装置本体内にセットする時のみ、給紙トレイにブレーキがかかる制動機構を備えた給紙装置が開示されている。
特許文献3には、カセット又は本体に回転可能な回転体を有し、回転体に対向して凸形状の斜面を設け、回転体と斜面にカセットの荷重による当接圧が作用する給紙装置において、カセット挿入時の初期に、当接圧の分力が抵抗力となるように凸形状の一方の斜面を構成し、カセット挿入完了間際に、当接圧の分力が引込力を発生させるように凸形状の他方の斜面を構成する態様が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-204790号公報
【文献】特開平9-255169号公報
【文献】特開2007-15835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする技術的課題は、急速に収容手段を引き出した際に生ずるストッパ機構による異音あるいは破損を抑制する上で、緩衝手段を装備する場合に比べて、少ない部品点数で収容手段の引き出し動作に対して安定的な制動作用を与えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、処理装置筐体に対して引き出し位置と挿入位置との間で出し入れ可能に支持されて媒体を収容する収容手段と、前記収容手段の引き出し方向に交差する幅方向の両側に前記収容手段の引き出し方向に沿って延びるレール部材を有し、前記収容手段の両側部を出し入れ可能に案内する案内手段と、前記収容手段の引き出し方向奥側の両側に設けられ、前記引き出し位置に前記収容手段を引き出すときに前記案内手段の前記レール部材に摺動して前記収容手段の引き出し動作を制動する制動部品と、を備え、前記制動部品は、前記収容手段に対して揺動支点を中心とし且つ前記収容手段の引き出し方向に対し上方から下方に向かう方向に揺動可能に支持される部品本体と、前記部品本体の上面部に突出して設けられ、前記収容手段の引き出し方向に沿う前記揺動支点を挟んだ二箇所で前記案内手段に接触する突部と、を有することを特徴とする媒体収容装置である。
【0006】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る媒体収容装置において、前記突部は前記案内手段の前記レール部材と接触する部位が曲面状に形成されていることを特徴とする媒体収容装置である。
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る媒体収容装置において、前記突部は断面円弧状の同一断面形状に形成されていることを特徴とする媒体収容装置である。
請求項4に係る発明は、請求項1乃至3のいずれかに係る媒体収容装置において、前記突部は前記揺動支点を挟んで対称的な位置に配置されていることを特徴とする媒体収容装置である。
請求項5に係る発明は、請求項4に係る媒体収容装置において、前記突部が設けられた前記部品本体の上面部は前記突部の突出方向に対して弾性変形可能であることを特徴とする媒体収容装置である。
請求項6に係る発明は、請求項1に係る媒体収容装置において、前記部品本体は、前記揺動支点となる軸部と、前記軸部と前記突部との間に設けられて前記突部を支持する支持部と、前記軸部に対して前記突部とは反対側に設けられ、前記収容手段の一部に設けられた回り止め部に突き当たり揺動可能な方向と逆の方向に対する前記部品本体の揺動を規制する規制部と、を備えていることを特徴とする媒体収容装置である。
請求項7に係る発明は、請求項6に係る媒体収容装置において、前記支持部は、前記突部と前記軸部との間に肉抜き部を形成し、前記突部と前記肉抜き部との間に弾性変形可能な腕部を形成したことを特徴とする媒体収容装置である。
請求項8に係る発明は、請求項7に係る媒体収容装置において、前記支持部を構成する腕部は、前記軸部の位置から延びる支柱部に対し断面略T字状に形成されていることを特徴とする媒体収容装置である。
請求項9に係る発明は、請求項7に係る媒体収容装置において、前記突部は、前記腕部の先端寄りに設けられることを特徴とする媒体収容装置である。
請求項10に係る発明は、請求項6に係る媒体収容装置において、前記回り止め部は少なくとも隣接する壁部が交差する隅角部を有し、前記規制部は前記隅角部に対向する対向壁部を有することを特徴とする媒体収容装置である。
【0007】
請求項11に係る発明は、請求項1乃至10のいずれかに係る媒体収容装置と、前記媒体収容装置に収容された媒体を搬送して予め決められた処理を施す処理手段と、を備えたことを特徴とする処理装置である。
【0008】
請求項12に係る発明は、処理装置筐体に対して引き出し位置と挿入位置との間で出し入れ可能に支持されて媒体を収容する収容手段と、前記収容手段の引き出し方向に交差する幅方向の両側に前記収容手段の引き出し方向に沿って延びるレール部材を有し、前記収容手段の両側部を出し入れ可能に案内する案内手段と、を備えた媒体収容装置に用いられ、前記収容手段の引き出し方向奥側の両側に設けられ、前記引き出し位置に前記収容手段を引き出すときに前記案内手段の前記レール部材に摺動して前記収容手段の引き出し動作を制動する制動部品であって、前記収容手段に対して揺動支点を中心とし且つ前記収容手段の引き出し方向に対し上方から下方に向かう方向に揺動可能に支持される部品本体と、前記部品本体の上面部に突出して設けられ、前記収容手段の引き出し方向に沿う前記揺動支点を挟んだ二箇所で前記案内手段に接触する突部と、を有することを特徴とする制動部品である。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によれば、急速に収容手段を引き出した際に生ずるストッパ機構による異音あるいは破損を抑制する上で、緩衝手段を装備する場合に比べて、少ない部品点数で収容手段の引き出し動作に対して安定的な制動作用を与えることができる。
請求項2に係る発明によれば、突部が曲面状でない態様に比べて、突部と案内手段のレール部材との接触状態を作り易くすることができる。
請求項3に係る発明によれば、二箇所の突部と案内手段のレール部材との間の接触状態を略同等にすることができる。
請求項4に係る発明によれば、揺動支点を挟んだ二箇所の突部と案内手段のレール部材との間の接触部での制動作用を略均等にすることができる。
請求項5に係る発明によれば、収容手段の傾斜姿勢が変化しても、揺動支点を挟んだ二箇所の突部と案内手段のレール部材との間の接触部での制動作用を略均等にすることができる。
請求項6に係る発明によれば、揺動支点を挟んだ位置に二つの突部を支持し、かつ、一方向に揺動可能な制動部品を簡単に構築することができる。
請求項7又は8に係る発明によれば、揺動支点を挟んだ二つの突部を弾性変形可能に支持する制動部品を提供することができる。
請求項9に係る発明によれば、突部が腕部の中央寄りに設けられる場合に比べて、突部の弾性変形量を大きく確保することができる。
請求項10に係る発明によれば、一方向の揺動可能な制動部品について他方向への回り止め構造を簡単に構築することができる。
請求項11に係る発明によれば、急速に収容手段を引き出した際に生ずるストッパ機構による異音あるいは破損を抑制する上で、緩衝手段を装備する場合に比べて、少ない部品点数で収容手段の引き出し動作に対して安定的な制動作用を与えることが可能な媒体収容装置を含む処理装置を構築することができる。
請求項12に係る発明によれば、急速に収容手段を引き出した際に生ずるストッパ機構による異音あるいは破損を抑制する上で、緩衝手段を装備する場合に比べて、少ない部品点数で収容手段の引き出し動作に対して安定的な制動作用を与えることが可能な媒体収容装置に用いられる制動部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】(a)は本発明が適用された媒体収容装置の実施の形態の概要を示す説明図、(b)は(a)に示す収容手段を案内手段から引き出した状態を模式的に示す説明図、(c)は(b)中Cで示す制動部品の要部を示す説明図である。
図2】実施の形態1に係る処理装置としての画像形成装置の全体構成を示す説明図である。
図3】実施の形態1に係る画像形成装置で用いられる媒体収容装置の基本構成を示す説明図である。
図4】(a)は実施の形態1で用いられる媒体収容装置の収容容器を案内する案内構造の一例を示す説明図、(b)は(a)中B方向から見た矢視図である。
図5】実施の形態1に係る媒体収容装置の全体構成を示す平面説明図である。
図6図5中VI部分の詳細を示す斜視説明図である。
図7図6の正面説明図である。
図8】(a)は実施の形態1で用いられる制動部品を示す斜視説明図、(b)は(a)中B方向から見た矢視図である。
図9】実施の形態1で用いられる制動部品の構成上の特徴を示す説明図である。
図10】実施の形態1で用いられる制動部品が取り付けられる取付受部の一例を示す斜視説明図である。
図11図10中XI方向から見た矢視図である。
図12図10に示す取付受部に制動部品が取り付けられた状態を示す図11と同様な説明図である。
図13】本実施の形態において、媒体収容装置から収容カセットを引き出した際の制動部品周辺の挙動を示す説明図である。
図14】(a)は収容カセット引出時の案内レールに対する収容カセットの挙動を示す説明図、(b)は制動部品による制動作用を示す説明図である。
図15】(a)は実施の形態2に係る制動部品を示す斜視説明図、(b)は(a)中B方向から見た矢視図、(c)は(a)中C方向から見た矢視図である。
図16】比較の形態1に係る制動部品の取付状態を示す説明図である。
図17】比較の形態1に係る制動部品の制動作用を示す説明図である。
図18】(a)は比較の形態2に係る制動部品を示す斜視説明図、(b)は(a)中B方向から見た矢視図、(c)は(a)中C方向から見た矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
◎実施の形態の概要
図1(a)は本発明が適用された媒体収容装置の実施の形態の概要を示す平面説明図、同図(b)は(a)に示す案内手段と収容手段との相対関係を示す説明図である。
図1(a)(b)において、媒体収容装置10は、処理装置筐体11に対して引き出し位置と挿入位置との間で出し入れ可能に支持されて媒体Sを収容する収容手段1と、収容手段1の引き出し方向に交差する幅方向の両側に収容手段1の引き出し方向Aに沿って延びるレール部材2aを有し、収容手段1の両側部を出し入れ可能に案内する案内手段2と、収容手段1の引き出し方向奥側の両側に設けられ、引き出し位置に収容手段1を引き出すときに案内手段2のレール部材2aに摺動して収容手段1の引き出し動作を制動する制動部品3と、を備え、制動部品3は、図1(c)に示すように、収容手段1に対して揺動支点5aを中心とし且つ収容手段1の引き出し方向Aに対し上方から下方に向かう方向に揺動可能に支持される部品本体5と、部品本体5の上面部に突出して設けられ、収容手段1の引き出し方向Aに沿う揺動支点5aを挟んだ二箇所で案内手段2に接触する突部6(具体的には6a,6b)と、を有するものである。
【0012】
このような技術的手段において、収容手段1は媒体Sを収容するトレイ、容器を広く含む。
また、案内手段2は少なくともレール部材2aを有するものを広く含み、レール部材2aに沿って収容手段1をロール、円筒状又は円柱状コロ等の回転部品あるいはスライドシュー等の摺動(本例では摺り移動に相当)可能な摺動部品からなる被案内部を介して移動可能に案内するものであればよい。
更に、制動部品3は、収容手段1の引き出し方向奥側の両側に設けられ、収容手段1が引き出し位置に引き出された際に案内手段2に接触して収容手段1の引き出し動作を制動するものを対象とする。
尚、収容手段1は引き出し位置に引き出された際には図示外のストッパ機構にてせき止められる構造が通常採用されている。
【0013】
また、制動部品3としては、収容手段1が引き出し位置に引き出される際に、図1(b)に示すように、収容手段1のうち処理装置筐体11から露呈した部分の自重により収容手段1が前傾し、これに伴って、制動部品3が案内手段2のレール部材2aに接触し、制動部品3とレール部材2aとの間に生ずる接触に伴う摩擦力で制動作用を与えるものが代表的である。
本例において、制動部品3としては、一方向に揺動可能な部品本体5と、この部品本体5の上面部において揺動支点5aを挟んだ二箇所に設けられた突部6(6a,6b)とを有する態様を広く含む。
ここで、部品本体5が一方向に揺動可能であることは、収容手段1が前傾したときに制動部品3が案内手段2のレール部材2aに接触する上で必要である。尚、制動部品3の取付構造としては、従前から採用されている制動部品と同様に、例えば揺動支点5aとなる軸部7をスナップフィット構造の軸受部で保持するようにすればよい。
また、突部6(6a,6b)が揺動支点5aを挟んで二箇所設けられているのは、案内手段2のレール部材2aと揺動支点5aを挟んで二箇所で接触することで二箇所において突部6による押圧力が分散した形で働き、二箇所において安定的な制動作用を得ることが可能である。
【0014】
次に、本実施の形態に係る媒体収容装置の代表的態様又は好ましい態様について説明する。
先ず、突部6(6a,6b)の好ましい態様としては、案内手段2のレール部材2aと接触する部位が曲面状に形成されている態様が挙げられる。本例は、レール部材2aと突部6との間の接触抵抗を低減させる上で有効である。
更に、突部6(6a,6b)としては異なる形状であっても差し支えないが、断面円弧状の同一断面形状に形成されている態様が好ましい。本例は、レール部材2aと突部6(6a,6b)との間の接触状態を略同等にする上で有効である。
更にまた、突部6(6a,6b)の配設位置についても適宜選定して差し支えないが、揺動支点5aを挟んで対称的な位置に配置されていることが好ましい。本例は、レール部材2aと突部6(6a,6b)との接触する部位が揺動支点5aから略等しい距離だけ離れた位置にあることから、両者の接触圧を略同等にし易い点で好ましい。
また、突部6(6a,6b)の好ましい態様としては、突部6が設けられた部品本体5の上面部は突部6の突出方向に対して弾性変形可能である態様が挙げられる。本例は、収容手段1の引き出し時に収容手段1が前傾(引き出し方向Aが垂れる傾斜姿勢に相当)するが、収容手段1が前傾したとしても、レール部材2aと突部6との接触状態を略同等に保つ上で有効である。
【0015】
また、部品本体5の形状については適宜選定して差し支えないが、好ましい態様としては、図1(c)に示すように、揺動支点5aとなる軸部7と、軸部7と突部6(6a,6b)との間に設けられて突部6を支持する支持部8と、軸部7に対して突部6とは反対側に設けられ、収容手段1の一部に設けられた回り止め部1aに突き当たり揺動可能な方向と逆の方向に対する部品本体5の揺動を規制する規制部9と、を備えている態様が挙げられる。本例は、収容手段1の前傾に伴って案内手段2のレール部材2aに突部6(6a,6b)二箇所が接触する構造を得る上で有効である。
【0016】
本例において、支持部8の好ましい態様としては、突部6と軸部7との間に肉抜き部8cを形成し、突部6と肉抜き部8cとの間に弾性変形可能な腕部8aを形成する態様が挙げられる。
更に、本例において、支持部8を構成する腕部8aは、軸部7位置から延びる支柱部8bに対し断面略T字状に形成されている態様が好ましい。ここで、突部6と支持部8との好ましいレイアウトとしては、突部6は腕部8aの先端寄りに設けられる態様が挙げられる。
更にまた、収容手段1の一部に設けられた回り止め部1aとしては、少なくとも隣接する壁部が交差する隅角部を有し、規制部9が隅角部に対向する対向壁部を有する態様が好ましい。
【0017】
以上説明した媒体収容装置10は処理装置の一つの構成要素として利用される。
ここでいう処理装置としては、媒体収容装置10に収容された媒体Sを搬送して予め決められた処理を施す図示外の処理手段を含んでいればよい。本例において、処理装置の代表例としては画像形成装置が挙げられるが、画像形成を伴わずに媒体Sを処理する装置(折り装置や裁断装置など)をも広く含む。このため、処理手段には媒体Sに対して処理するものを広く含み、処理手段が例えば画像を作製する作像部と、作像部で作製した画像を媒体Sに転写する転写部とを含むものであれば、処理装置は画像形成装置として構築される。
【0018】
また、上述した媒体収容装置に用いられる制動部品3についてはそのものが新規な構成を備えている。
本例では、処理装置筐体11に対して引き出し位置と挿入位置との間で出し入れ可能に支持されて媒体Sを収容する収容手段1と、収容手段1の引き出し方向Aに交差する幅方向の両側に収容手段1の引き出し方向Aに沿って延びるレール部材2aを有し、収容手段1の両側部を出し入れ可能に案内する案内手段2と、を備えた媒体収容装置10に用いられ、収容手段1の引き出し方向A奥側の両側に設けられ、引き出し位置に収容手段1を引き出すときに案内手段2のレール部材2aに摺動して収容手段1の引き出し動作を制動する制動部品3であって、収容手段1に対して揺動支点5aを中心とし且つ収容手段1の引き出し方向Aに対し上方から下方に向かう方向に揺動可能に支持される部品本体5と、部品本体5の上面部に突出して設けられ、収容手段1の引き出し方向Aに沿う揺動支点5aを挟んだ二箇所で案内手段2に接触する突部6(6a,6b)と、を有するものが対象である。
【0019】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいて本発明をより詳細に説明する。
◎実施の形態1
-画像形成装置の全体構成-
図2は実施の形態1に係る処理装置としての画像形成装置の全体構成を示す。
同図において、画像形成装置20は、画像形成装置筐体21内に例えば複数の色成分画像を作製するための作像エンジン22を搭載し、この作像エンジン22の下方に媒体としての用紙を供給可能に収容する用紙収容装置23(本例では2段構成:23a,23b)を配設し、用紙収容装置23から供給された媒体を略鉛直方向に沿って延びる用紙搬送路24を通じて搬送し、作像エンジン22にて作製された画像を一括転写装置25にて転写した後、用紙上に転写された画像を定着装置26にて定着し、例えば画像形成装置筐体21の上部に設けられた用紙排出受け27に画像定着済みの用紙を排出するようにしたものである。尚、本実施の形態では、媒体の一例として用紙を挙げて説明しているが、用紙以外の媒体、例えばシート状フィルム等をも収容可能であり、広く媒体収容装置として用いられることは勿論である。
【0020】
<作像エンジン>
本例において、作像エンジン22は、電子写真方式を採用した複数の色成分(本例ではY(イエロ)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック))トナーによる複数の画像形成部30(具体的には30a~30d)を有し、各画像形成部30で作製した各色成分画像を中間転写体40に一次転写した後に、一括転写装置(二次転写装置に相当)25にて中間転写体40上の画像を用紙に一括転写するようにしたものである。
本例において、画像形成部30(30a~30d)は、例えばドラム状の感光体31を有し、当該感光体31の周囲には、当該感光体31を帯電する帯電装置32、帯電された感光体31上に静電潜像を形成する潜像書込装置33、感光体31上に形成された静電潜像を各色成分トナーにて現像する現像装置34、感光体31に対向する中間転写体40の裏面に設けられて感光体31上の画像を中間転写体40に一次転写する一次転写装置35、及び、一次転写後に感光体31上に残留するトナーを清掃する清掃装置36を順次配設したものである。
尚、本例では、潜像書込装置33としてはLEDアレイが用いられているが、これに限られるものではなく、各色成分の静電潜像を対応するレーザ光で書き込む共用または個別のレーザ走査装置を用いるようにしてもよいことは勿論である。また、符号38(具体的には38a~38d)は各画像形成部30(30a~30d)の各現像装置34に対して各色成分トナーを補給するトナーカートリッジである。
【0021】
更に、本例では、中間転写体40は例えば複数の張架ロール41~44に掛け渡されたベルト状部材からなり、例えば張架ロール41を駆動ロールとして所定方向に循環回転可能に駆動され、また、張架ロール43は中間転写体40に所望の張力を付与する張力付与ロールとして機能するようになっている。尚、符号45は中間転写体40上の残留物(トナーや紙粉等)を清掃する中間転写体用清掃装置である。
更にまた、本例では、一括転写装置25は中間転写体40の表面に従動回転可能に接触する転写ロール25aを有しており、中間転写体40の張架ロール42を対向電極とし、転写ロール25aと対向電極との間に所望の転写電界を形成することで、中間転写体40上に保持された画像を用紙へと一括転写するようになっている。
また、用紙搬送路24のうち一括転写装置25の入口側には一括転写装置25に送り込む用紙の位置を整合する位置整合ロール28が設けられ、また、用紙搬送路24の用紙排出受け27の直前には排出ロール29が設けられている。
【0022】
-画像形成装置筐体の構造-
本実施の形態では、画像形成装置筐体21は、例えば図3に示すように、複数の筐体枠材にて枠組みされて作像エンジン22を搭載する作像筐体枠51と、作像筐体枠51の下方に設けられ、複数の筐体枠材にて枠組みされて用紙収容装置23を収納する収容筐体枠52とを図示外の連結部品を介して連結固定したものである。
<用紙収容装置の出し入れ構造>
本例において、用紙収容装置23(23a,23b)は用紙が収容可能な収容手段としての収容カセット(収容容器に相当)70を夫々有しており、収容筐体枠52には図3中の矢印方向に沿って収容カセット70を出し入れ可能に保持する構造を備えている。
具体的には、収容筐体枠52のうち収容カセット70の出し入れ方向に交差する幅方向両側には一対の案内レール55,56が設けられている。本例では、図3及び図4(a)(b)に示すように、一対の案内レール55,56は溝形チャネル状のレール部材57からなり、当該レール部材57の開口部が互いに対向するように配置され、案内レール55,56の開口部内に収容カセット70の幅方向両側部を保持し、引出方向に移動可能に案内するものである。そして、収容カセット70は、収容筐体枠52内に収納される収納位置P1と、収納位置P1から引き出される引き出し位置P2との間で案内レール55,56に沿って出し入れ可能に移動するようになっている。
特に、本例では、各案内レール55,56のレール部材57のうち開口部内の入口付近には収容カセット70の両側部の案内動作をスムーズにするための案内プーリ58が回転可能に設けられている。
【0023】
<ストッパ機構>
更に、収容カセット70が引き出し位置P2に引き出された際に収容カセット70が案内レール55,56から抜けないようにストッパ機構60が設けられている。本例では、ストッパ機構60は、案内レール55,56のレール部材57の入口付近のうち、案内プーリ58よりも少し奥側に位置する跨がった箇所にストッパ壁61を形成し、このストッパ壁61に収容カセット70側に設けられたストッパ片65を突き当てることで収容カセット70の移動をせき止めるものである。
本例において、ストッパ壁61は、収容カセット70側のストッパ片65を突き当ててせき止める機能を有するものであれば適宜選定して差し支えないが、本例では、図3及び図4(a)(b)に示すように、案内レール55,56のレール部材57の底壁57a及び側壁57bの跨がった箇所には一部切り込まれた開口に対して絞り加工による張出部62が形成され、この張出部62の切り込み開口端面をストッパ面63として利用するようにしたものである。
尚、ストッパ片65の構造の詳細については後述する。
【0024】
-用紙収容装置の構成例-
本実施の形態において、用紙収容装置23(23a,23b)は、図5に示すように、収容カセット70には各種サイズの用紙が収容可能な凹部71を有しており、凹部71内には用紙Sの供給方向に交差する幅方向の収容位置を規制する一対の側方位置規制部材としてのサイドガイド72,73を移動可能に装備すると共に、用紙Sの供給方向の後端側の収容位置を規制する後方位置規制部材としてのエンドガイド74を移動可能に装備し、凹部71の底部に装備されたボトムプレート75を斜め上方に向けて付勢することで、ボトムプレート75上の用紙束上面を図示外の用紙繰出しロールに押し当てるようにしたものである。
そして、収容カセット70の引き出し方向側に位置する前壁部には出し入れ操作用の把手部76が形成され、また、収容カセット70の引き出し方向とは反対側に位置する後壁部の幅方向両側には後方に向かって延びる後方突出部77が一体的に形成されている。
【0025】
-収容カセットの被案内部構造及びストッパ構造-
本例では、収容カセット70の後方突出部77の下面には、図5乃至図7に示すように、案内レール55,56のレール部材57に沿って転動可能な案内コロ80が設けられている。ここで、案内コロ80は合成樹脂製又は金属製の円柱状のコロ本体81の中心部両側に回転軸部82を有し、後方突出部77に予め形成された軸受部83に回転可能に保持されている。
また、本例では、後方突出部77の下面のうち案内コロ80の設置箇所よりも後方にストッパ機構60のストッパ片65が取り付けられている。ここで、ストッパ片65は、断面L字状に折曲された金属片66を用いて構成されるものであって、後方突出部77の下面にストッパ片65の取付部67(例えば上方に向かうねじ孔)を予め形成しておき、金属片66の一方の折曲片を取付部67にねじ等の止め具68を用いて固定し、金属片66の他方の折曲片を下方に向けて突出させ、ストッパ機構60のストッパ壁61(図4参照)に突き当てるようになっている。
【0026】
-制動部品-
<制動部品の必要性>
上述したように、用紙収容装置23(23a,23b)は、収納位置P1に位置する収容カセット70を引き出し位置P2に勢いよく引き出すと、ストッパ機構60のストッパ片65がストッパ壁61に強く衝突することから、その際に生ずる衝撃音が耳障りになる懸念があるほか、ストッパ機構60の構成要素が破損する懸念がある。
特に、収容カセット70の出し入れ時における操作力を低減させるためには、案内レール55,56に対する収容カセット70の摺動抵抗を低減することが有効であり、そのために、収容カセット70の案内コロ80として、樹脂製コロではなく、例えばボールベアリングを用いた金属製コロを採用したところ、収容カセット70の出し入れ時の操作力を軽くすることは可能になるものの、前述したストッパ機構60による衝撃がより強いものになり、その分、衝撃音や衝撃に伴うストッパ機構60の破損という問題がより顕著なものになった。
このような衝撃を緩和する手法として、ダンパや制動パッドを使用した対策があるが、衝撃緩和部品としてのコストが嵩むばかりか、収容カセット70の摺動抵抗の低減との両立が難しい。
そこで、本実施の形態では、収容カセット70の出し入れの操作時にはほとんど収容カセット70の摺動抵抗を損なう要因にはならず、ストッパ機構60による収容カセット70の引き出し位置P2での停止時に至る付近の箇所で局所的に収容カセット70の引き出し動作を抑制する制動部品100を収容カセット70に組み込むようにしたものである。
【0027】
<制動部品の構成例>
本例において、制動部品100は、図5図8及び図9に示すように、例えば合成樹脂にて一体的に成形されており、収容カセット70の後方突出部77の上面部に予め形成された部品受部90に搭載されている。そして、制動部品100は、部品受部90に対して揺動支点POを中心とし且つ収容カセット70の引き出し方向に対し上方から下方に向かう方向に揺動可能に支持される部品本体101と、部品本体101の上面部に突出して設けられ、収容カセット70の引き出し方向に沿う揺動支点POを挟んだ二箇所で案内レール55(又は56)に接触する突部120(具体的には121,122)と、を備えている。
【0028】
そして、本例では、部品本体101は、揺動支点POとなる軸部102と、軸部102と突部120(121,122)との間に設けられて突部120(121,122)を支持する支持部105と、軸部102に対して突部120(121,122)とは反対側に設けられ、部品受部90の一部に設けられた回り止め部97に突き当たり揺動可能な方向と逆の方向に対する部品本体101の揺動を規制する規制部115と、を備えている。
本例では、軸部102は、大径軸部103の両側に小径軸部104を有しており、大径軸部103の周面上部に面して支持部105が一体的に形成され、また、大径軸部103の周面下半部に面して規制部115が一体的に形成されている。
更に、本例では、支持部105は、突部120(121,122)と軸部102との間に肉抜き部106を形成し、突部120(121,122)と肉抜き部106との間に弾性変形可能な腕部107を形成するものである。
【0029】
特に、本例では、腕部107は、大径軸部103位置から上方に延びる支柱部108に対し断面略T字状に形成されている。ここで、支柱部108は、大径軸部103の軸方向長よりも少し短い長さをもち、かつ、その長さ方向に交差する肉厚が大径軸部103の直径の1/4~1/3程度に選定された細長い矩形断面を有しており、また、腕部107も支柱部108と略同程度の矩形状断面を有し、支柱部108を境として支柱部108の肉厚方向両側に向かって長尺に延びている。そして、支柱部108の肉厚方向両側面から腕部107の下面にかけて逆L字状の補強用リブ109が支柱部108の長さ方向の略中央の位置に一体的に形成されている。
【0030】
更に、本例では、腕部107は支柱部108を境として略対称的に延び、腕部107の先端寄りに突部120(121,122)が一体的に設けられている。
本例において、突部120の形状については、案内レール55,56のレール部材57と接触する部位が少なくとも曲面状に形成されていることが好ましく、本例においては断面半円弧状の断面形状に形成されている。
ここで、図9に示すように、支柱部108の軸部102の中心から上方に向けての長さ寸法をh、腕部107の支柱部108の中心位置からの突部120(121,122)の中心位置までの長さをd1、d2、突部120(121,122)の円弧断面の半径をr1、r2とすると、本例では、d1=d2、r1=r2に選定されており、突部120(121,122)は揺動支点POを挟んで対称的に配置され、かつ、同一の断面形状を有している。また、制動部品100の突部120(121,122)が案内レール55,56のレール部材57に接触するときに、腕部107が弾性変形することになるが、寸法hは腕部107に必要な弾性変形量を考慮して適宜選定するようにすればよい。
【0031】
また、本例において、規制部115は、軸部102を中心に略対称的な形状に形成されており、略直方体状の本体部116の底部に本体部116よりも幅狭の台座部117を下方に突出させるように形成したもので、本体部116下面と台座部117側面との間に切欠部118を形成したものである。尚、本例では、本体部116及び台座部117は周囲に比べて内側を薄肉に形成したものになっている。
本例において、規制部115の形状としては、前述したものに限られるものではなく、部品受部90の回り止め部97に突き当たる壁部を有する形状であればよく、適宜選定して差し支えない。尚、規制部115と回り止め部97との相対関係については後述する。
【0032】
-部品受部-
また、本実施の形態では、部品受部90は、図10及び図11に示すように、制動部品100のうち小径軸部104以外の部分を収納する略直方体状の収納凹部91を有し、この収納凹部91の両側を区画する凹部側壁92には略U字状の軸受用溝93を形成すると共に、この軸受用溝93の一部には制動部品100の小径軸部104の直径よりも僅かに短い溝幅の段付き部94を形成し、軸受用溝93に隣接した箇所のうち段付き部94のある側を弾性変形可能な弾性保持片95として形成すると共に、この弾性保持片95に隣接した箇所には弾性保持片95の軸受用溝93に対して拡がる方向への弾性変形を可能とする逃げ溝96を形成したものである。
そして、本例では、収納凹部91には制動部品100が揺動支点POを中心に一方向のみの揺動回転を許容するように、他方向への揺動回転を阻止する回り止め部97が形成されている。この回り止め部97は、収納凹部91のうち収容カセット70の引き出し方向側の凹部区画壁と凹部底壁との間の隅角部で構成されており、制動部品100の規制部115は回り止め部97を構成する隅角部に対向する対向壁部を有していればよい。
ここで、凹部区画壁としては、上下方向に伸びる平面状に形成されていてもよいし、あるいは、制動部品100の規制部115の形状に合わせて壁面の一部がせり出すような形状に形成されていてもよい。
更に、収納凹部91の深さは、後述するように、部品受部90に制動部品100を搭載した場合に、少なくとも突部120(121,122)が収納凹部91の開口面よりも上方に突出して配置されるように選定されていればよい。
【0033】
-制動部品の取付構造-
次に、収容カセット70の部品受部90に制動部品100を取り付ける場合について説明する。
本例においては、図10乃至図12に示すように、部品受部90の収納凹部91に制動部品100の小径軸部104以外の部分を収納し、小径軸部104を軸受用溝93に嵌め込む。このとき、軸受用溝93に小径軸部104を嵌め込んでいくと、小径軸部104が段付き部94を乗り越えるときに、弾性保持片95が逃げ溝96側に弾性変形し、段付き部94を乗り越えて軸受用溝93の終端位置に嵌まると、弾性保持片95が弾性復帰して小径軸部104を弾性的に保持する。つまり、弾性保持片95のスナップフィット作用により小径軸部104が軸受用溝93に揺動可能に弾性保持される。
このとき、収納凹部91では、制動部品100の規制部115の交差する二面の対向壁部が回り止め部97に近接若しくは接触して配置されている。
更に、制動部品100の突部120(121,122)は、部品受部90の収納凹部91の開口面より上方に突出して配置されている。特に、本例では、腕部107より上方に突出する突部120(121,122)全体が部品受部90の収納凹部91の開口面よりも上方に配置されている。
【0034】
-用紙収容装置の引き出し動作-
次に、用紙収容装置の引き出し動作時の挙動について説明する。
今、図3に示すように、収納位置P1から引き出し位置P2に向けて収容カセット70を引き出すと、収容カセット70の幅方向両側部が案内レール55,56に沿って移動することになる。このとき、収容カセット70の幅方向両側部に位置する底壁が案内レール55,56の入口付近に設けられた案内プーリ58を接触転動させながら、また、収容カセット70の後方突出部77に設けられた案内コロ80が案内レール55,56に沿って接触転動しながら、収容カセット70が引き出されていく。
そして、収容カセット70が引き出し位置P2(図3参照)に到達すると、図13に示すように、ストッパ機構60(ストッパ壁61、ストッパ片65)が働く。つまり、収容カセット70側のストッパ片65は、図13に矢印に示すように、収容カセット70の引き出し動作に追従して引き出し方向へと移動し、収容カセット70が引き出し位置P2に到達すると、案内レール55,56の入口付近にあるストッパ壁61に突き当たってせき止められ、収容カセット70の引き出し動作が停止する。
【0035】
また、収容カセット70を引き出し方向に引き出すと、図14(a)に示すように、案内レール55,56のレール部材57から収容カセット70が引き出され、収容カセット70のレール部材57から引き出された部分の自重により収容カセット70が引き出し方向に垂れ下がり、収容カセット70が前傾した姿勢になる。このとき、収容カセット70が前傾した姿勢に変化することに伴って収容カセット70の後方突出部77が後方に向かって斜め上方に傾斜した状態で持ち上げられる。
この状態において、収容カセット70に搭載した制動部品100は、図14(b)に示すように、案内レール55,56のレール部材57の上壁部57cと接触し、制動部品100の揺動支点POを挟んだ二つの突部120(121,122)がレール部材57の上壁部57cに接触する。
【0036】
これは、突部120(121,122)を支持する腕部107が、揺動支点POとなる軸部102から延びる支柱部108と一体的に形成されており、揺動支点POを中心に支柱部108が揺動方向に弾性変形し、また、腕部107も支柱部108との結合部を中心に揺動方向に弾性変形することから、収容カセット70が前傾した姿勢になると、これに伴って、制動部品100が前傾し、揺動支点POを挟んだ二箇所にある突部120(121,122)がレール部材57の上壁部57cに突き当たる。すると、制動部品100の規制部115は収納凹部91内の回り止め部97にて回り止めされることから、突部120(121,122)を支持する支持部105(腕部107、支柱部108)が弾性変形し、揺動支点POを挟んだ二箇所の突部120(121,122)がレール部材57に対して略同等に接触する。
本例では、突部120(121,122)を支持する支持部105が弾性変形し易い構成を有していることから、突部120(121,122)とレール部材57との接触状態に追従して突部120(121,122)は上下方向に対してバランスを持って変位し、その弾性変形による押圧力F1,F2が作用する。このため、収容カセット70の前傾姿勢の変化量がばらついたとしても、一方の突部120(例えば121)の上下方向の変位量が増加すると、他方の突部120(例えば122)の上下方向の変位量が減少することになり、揺動支点POを挟んだ二箇所にある突部120(121,122)はレール部材57に対してバランスを持って変位し、略同等の接触圧でレール部材57に接触する。このため、制動部品100による制動力(ブレーキ力)は、収容カセット70の傾斜姿勢のばらつきに影響されることなく、略同等のものが安定的に得られる。
【0037】
特に、本例では、突部120(121,122)は、揺動支点POを挟んで対称的に配置され、かつ、断面半円弧状の同一断面形状に構成されているため、突部120(121,122)とレール部材57との接触による制動力は略同等であり、制動部品100とレール部材57とは揺動支点POを挟んだ二箇所で充分な摺動抵抗が働き、ストッパ機構60による衝撃力が抑制される。このため、ストッパ機構60による衝突が発生したとしても、異常な衝突音の発生や、ストッパ機構60が破損するという懸念はほとんどない。
【0038】
◎実施の形態2
図15(a)は実施の形態2に係る用紙収容装置で用いられる制動部品の斜視説明図であり、同図(b)は(a)中B方向から見た矢視図、同図(c)は(a)中C方向から見た矢視図である。
本実施の形態において、制動部品100の基本的構成は、実施の形態1と略同様に、部品本体101と、突部120(121,122)とを備えているが、部品本体101の支持部105の構成が実施の形態1とは異なっている。尚、実施の形態1と同様な構成要素については実施の形態1と同様な符号を付してここではその詳細な説明を省略する。
本例において、支持部105は、実施の形態1のように、肉抜き部106によって支柱部108及び腕部107を形成せずに、略直方体状のブロック体110として構成したものである。
このため、本実施の形態では、支持部105は、実施の形態1のように、弾性変形し易い構造ではないものの、ブロック体110及び突部120(121,122)を構成する
合成樹脂そのものの弾性を利用したものである。
【0039】
よって、本実施の形態にあっても、収容カセット70を引き出した際に、収容カセット70が引き出し方向に向かって前傾姿勢になると、これに伴って、収容カセット70の制動部品100も前傾した姿勢に至り、この結果、制動部品100の突部120(121,122)が案内レール55,56のレール部材57の上壁部に接触する。このとき、制動部品100の突部120(121,122)及び支持部105(ブロック体110)は弾性変形可能な合成樹脂にて成形されているため、突部120(121,122)は上下方向に対して弾性変形可能である。このため、本例においても、揺動支点POを挟んだ二箇所にある突部120(121,122)はレール部材57に対して略同等な接触圧で接触し、二つの突部120(121,122)とレール部材57との間で充分な制動力を得ることが可能である。よって、実施の形態1と同様に、ストッパ機構60による衝撃力が抑制され、ストッパ機構60による衝撃音の発生や破損を防止する上で有効である。
【0040】
◎比較の形態1
図16は比較の形態1に係る用紙収容装置で用いられる制動部品の斜視説明図である。
同図において、制動部品150は、実施の形態1,2とは異なり、収容カセット70を案内する案内コロ80と同様な構成の制動コロ160を利用し、収容カセット70の後方突出部77の部品受部90に制動コロ160を搭載し、収容カセット70を引き出した際に収容カセット70が前傾姿勢に至ったとき、案内レール55,56のレール部材57(図4参照)に制動コロ160を接触させ、かつ、制動コロ160と部品受部90との間に摩擦抵抗シート170を介在させるようにしたものである。
本例において、制動コロ160は、合成樹脂製の円柱状のコロ本体161の中心部両側に回転軸部162を有し、後方突出部77の部品受部90に予め形成された収納凹部163にコロ本体161を収納すると共に、この収納凹部163の両側を区画する凹部側壁164には軸受部165を形成し、この軸受部165にコロ本体161の回転軸部162を回転可能に保持するものである。
【0041】
更に、本比較の形態では、制動部品150は、図16及び図17に示すように、収納凹部163の底部には摩擦係数の高い摩擦抵抗シート170を設置し、制動コロ160がレール部材57に接触したときに、制動コロ160を摩擦抵抗シート170に押し付け、制動コロ160と摩擦抵抗シート170との間で摺動抵抗を生じさせ、収容カセット70の引き出し動作に対して制動力を与えるものである。
本例においては、制動部品150として、既存の案内コロを利用した制動コロ160を用い、収容カセット70引き出し時に制動コロ160をレール部材57に接触させ、この接触に伴って制動コロ160と摩擦抵抗シート170との間で摺動抵抗を生じさせ、制動力を得るものであるが、本例にあっては、制動コロ160に加えて摩擦抵抗シート170が必要部品となり、その分、部品点数が増加するばかりか、制動コロ160と摩擦抵抗シート170の相対位置関係については極めて精度良く設置することが必要であり、両者間の位置精度が低いと、制動コロ160と摩擦抵抗シート170との間で充分な摺動抵抗を得ることが困難になるという懸念がある。
【0042】
ここで、実施の形態1に係る制動部品100について、仮に、二つの突部120(121,122)のうち、いずれか一方の突部121又は122のみを具備する制動部品を想定する場合には、収容カセット70が前傾すると、これに伴って、制動部品の突部121又は122はレール部材57の上壁部に接触することになるが、揺動支点POを挟んで二箇所でバランスを持って接触する実施の形態1に比べて、一つの突部121又は122とレール部材57との間の接触圧は弱く、充分な制動力が得られない。
このように、突部120(121又は122)が一箇所の態様では比較の形態1に係る制動コロ160の態様と実質的に変わりが無く、更に、比較の形態1に係る摩擦抵抗シート170をも用いないのであるから、充分な制動作用が得られないことは明らかである。
【0043】
◎比較の形態2
図18(a)は比較の形態2に係る用紙収容装置で用いられる制動部品の斜視説明図であり、同図(b)は(a)中B方向から見た矢視図、同図(c)は(a)中C方向から見た矢視図である。
同図において、制動部品150の基本的構成は、合成樹脂製の変形六角柱形状の部品本体180を有し、この部品本体180の略中央両側には揺動支点POとなる軸部181を突出させ、更に、部品本体180の厚さ方向両側周縁には外方に突出する二つの突条182,183を設けるようにしたものである。
そして、この制動部品150は、収容カセット70の後方突出部77の部品受部90に予め形成された収納凹部190に部品本体180を収納し、収納凹部190の両側側壁には形成された軸受部(図示せず)に軸部181を揺動可能に保持したものである。
尚、収納凹部190には部品本体180を許容する揺動方向とは反対側の方向に対して回り止めする回り止め部191が設けられている。
【0044】
本例においては、制動部品150は、部品本体180の上面部に揺動支点POを挟まずに連続的に延びる二つの突条182,183を備えている。このため、収容カセット70を引き出す際に、収容カセット70が引き出し方向に前傾した姿勢になると、これに伴って、制動部品150も前傾した姿勢に変化し、部品本体180の上面部に形成された二つの突条182,183が案内レール55,56のレール部材57に接触する。
このとき、二つの突条182,183は合成樹脂製ではあるものの、実施の形態1に示すように、揺動支点POを挟んだ二箇所ではなく、揺動支点POを挟まずに連続的に延びる態様であるため、二つの突条182,183は弾性変形し難く、レール部材57に対して二つの突条182,183が接触すると、これらの突条182,183がレール部材57の長手方向に沿って強く接触し過ぎることになり、二つの突条182,183とレール部材57との間の接触圧が大きくなり、これに伴う制動作用が強すぎるという懸念がある。
尚、本例では、二つの突条182,183がレール部材57に接触する態様であるが、いずれか一方の突条を具備する態様であったとしても、制動作用が強すぎるという懸念は避けられない。
【符号の説明】
【0045】
1…収容手段,1a…回り止め部,2…案内手段,2a…レール部材,3…制動部品,5…部品本体,5a…揺動支点,6(6a,6b)…突部,7…軸部,8…支持部,8a…腕部,8b…支柱部,8c…肉抜き部,9…規制部 ,S…媒体
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