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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】電子写真感光体
(51)【国際特許分類】
   G03G 5/05 20060101AFI20230829BHJP
   G03G 5/06 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
G03G5/05 104B
G03G5/05 101
G03G5/06 313
G03G5/06 319
G03G5/06 312
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019197449
(22)【出願日】2019-10-30
(65)【公開番号】P2021071565
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】杉本 和隆
(72)【発明者】
【氏名】大川 賢輔
(72)【発明者】
【氏名】東 潤
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-206109(JP,A)
【文献】特開2007-163851(JP,A)
【文献】特開2018-141071(JP,A)
【文献】特開2006-030976(JP,A)
【文献】特開平09-059364(JP,A)
【文献】特開平09-062017(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 5/05
G03G 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基体と、感光層とを備え、
前記感光層は、電荷発生層と、電荷輸送層とを含み、
前記電荷発生層は、電荷発生剤を含有し、
前記電荷輸送層は、バインダー樹脂と、一般式(30)で表されるアゾ化合物と、正孔輸送剤とを含有し、
前記一般式(30)で表される前記アゾ化合物の含有量は、100質量部の前記バインダー樹脂に対して、2質量部以上5質量部以下であり、
前記バインダー樹脂は、少なくとも1種の第1繰り返し単位と、少なくとも1種の第2繰り返し単位と、末端基とを有するポリアリレート樹脂を含み、前記第1繰り返し単位は一般式(1)で表され、前記第2繰り返し単位は一般式(2)で表され、前記末端基は一般式(3)で表され、
前記正孔輸送剤は、一般式(10)で表される化合物を含む、電子写真感光体。
【化1】
(前記一般式(30)中、
11及びR12は、各々独立に、炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表し、
Ar1及びAr2は、各々独立に、少なくとも1つの置換基で置換されてもよい炭素原子数6以上14以下のアリーレン基を表し、前記置換基は、炭素原子数1以上3以下のアルキル基及び炭素原子数1以上3以下のアルコキシ基からなる群から選択され、
Qは、一般式(Q1)又は(Q2)で表される一価の基を表す。)
【化2】
(前記一般式(Q1)中、Ar3及びAr4は、各々独立に、炭素原子数1以上3以下のアルキル基で置換されてもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基を表し、*は、結合手を表し、
前記一般式(Q2)中、Zは、環構成原子として窒素原子を少なくとも有する6員以上18員以下の複素環を表し、*は、結合手を表す。)
【化3】
(前記一般式(1)中、
1、R2、R3、及びR4は、各々独立に、水素原子又はメチル基を表し、
5及びR6は、各々独立に、水素原子又は炭素原子数1以上4以下のアルキル基を表し、R5及びR6は互いに結合して一般式(X)で表される2価の基を表してもよく、
前記一般式(2)中、X1は、化学式(2A)、(2B)、(2C)、又は(2D)で表される2価の基を表し、
前記一般式(3)中、Rfは、1個以上のフッ素原子で置換された炭素原子数1以上20以下の鎖状脂肪族基を表す。)
【化4】
(前記一般式(X)中、
tは、1以上3以下の整数を表し、
*は、結合手を表す。)
【化5】
【化6】
(前記一般式(10)中、
101 、R 103 、R 104 、R 105 、R 106 、R 107 、及びR 108 は、各々独立に、水素原子、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、炭素原子数1以上8以下のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基、又は炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基を表し、R 103 、R 104 、R 105 、R 106 及びR 107 のうちの隣接する2つが結合して炭素原子数5以上7以下のシクロアルカンを表してもよく、
102 及びR 109 は、各々独立に、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、フェニル基、又は炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基を表し、
1 及びb 2 は、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。)
【請求項2】
少なくとも1種の前記第1繰り返し単位は、化学式(1-1)、(1-2)、(1-3)、及び(1-4)で表される繰り返し単位のうちの少なくとも1種の繰り返し単位である、請求項1に記載の電子写真感光体。
【化7】
【請求項3】
少なくとも1種の前記第2繰り返し単位は、化学式(2-1C)、(2-2A)、(2-2B)、及び(2-2D)で表される繰り返し単位のうちの少なくとも1種の繰り返し単位である、請求項1又は2に記載の電子写真感光体。
【化8】
【請求項4】
前記末端基は、一般式(3-1)で表される、請求項1~3の何れか一項に記載の電子写真感光体。
【化9】
(前記一般式(3-1)中、
31は、直鎖状又は分枝鎖状の炭素原子数1以上6以下のパーフルオロアルキル基を表し、
32は、直鎖状又は分枝鎖状の炭素原子数1以上6以下のパーフルオロアルキレン基を表し、
nは、0以上2以下の整数を表す。)
【請求項5】
前記末端基は、化学式(M1)、(M2)、(M3)、又は(M4)で表される、請求項1~4の何れか一項に記載の電子写真感光体。
【化10】
【請求項6】
前記アゾ化合物は、化学式(ADD-1)、(ADD-2)、(ADD-3)、(ADD-4)、(ADD-5)、(ADD-6)、(ADD-7)、又は(ADD-8)で表される、請求項1~5の何れか一項に記載の電子写真感光体。
【化11】
【化12】
【請求項7】
前記正孔輸送剤は、化学式(HTM-1)で表される化合物を含む、請求項1~6の何れか一項に記載の電子写真感光体。
【化13】
【請求項8】
前記電荷輸送層は、電子アクセプター化合物を更に含有し、
前記電子アクセプター化合物は、一般式(20)で表される化合物を含む、請求項1~7の何れか一項に記載の電子写真感光体。
【化14】
(前記一般式(20)中、R21、R22、R23、及びR24は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表す。)
【請求項9】
前記一般式(20)で表される化合物は、化学式(E-1)で表される化合物である、請求項8に記載の電子写真感光体。
【化15】
【請求項10】
前記電荷輸送層は、チタニルフタロシアニンを含有しない、請求項1~9の何れか一項に記載の電子写真感光体。
【請求項11】
前記電荷輸送層は、一層であり、且つ最表面層として備えられる、請求項1~10の何れか一項に記載の電子写真感光体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真感光体は、像担持体として電子写真方式の画像形成装置(例えば、プリンター又は複合機)において用いられる。電子写真感光体は、感光層を備える。電子写真感光体としては、例えば、単層型電子写真感光体及び積層型電子写真感光体が用いられる。単層型電子写真感光体は、電荷発生の機能と、電荷輸送の機能とを有する単層の感光層を備える。積層型電子写真感光体は、電荷発生の機能を有する電荷発生層と、電荷輸送の機能を有する電荷輸送層とを含む感光層を備える。
【0003】
特許文献1の実施例には、末端停止剤としてp-tert-ブチルフェノールを用いて、ポリカーボネート共重合体を製造することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-51983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載のポリカーボネート共重合体は、耐摩耗性の点で不十分である。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、耐摩耗性に優れ、更に、白色光に対する耐光性に優れる電子写真感光体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電子写真感光体は、導電性基体と、感光層とを備える。前記感光層は、電荷発生層と、電荷輸送層とを含む。前記電荷発生層は、電荷発生剤を含有する。前記電荷輸送層は、バインダー樹脂と、一般式(30)で表されるアゾ化合物と、正孔輸送剤とを含有する。前記一般式(30)で表される前記アゾ化合物の含有量は、100質量部の前記バインダー樹脂に対して、2質量部以上5質量部以下である。前記バインダー樹脂は、少なくとも1種の第1繰り返し単位と、少なくとも1種の第2繰り返し単位と、末端基とを有するポリアリレート樹脂を含む。前記第1繰り返し単位は一般式(1)で表される。前記第2繰り返し単位は一般式(2)で表される。前記末端基は一般式(3)で表される。
【0008】
【化1】
【0009】
前記一般式(30)中、R11及びR12は、各々独立に、炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表す。Ar1及びAr2は、各々独立に、少なくとも1つの置換基で置換されてもよい炭素原子数6以上14以下のアリーレン基を表し、前記置換基は、炭素原子数1以上3以下のアルキル基及び炭素原子数1以上3以下のアルコキシ基からなる群から選択される。Qは、一般式(Q1)又は(Q2)で表される一価の基を表す。
【0010】
【化2】
【0011】
前記一般式(Q1)中、Ar3及びAr4は、各々独立に、炭素原子数1以上3以下のアルキル基で置換されてもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基を表す。*は、結合手を表す。前記一般式(Q2)中、Zは、環構成原子として窒素原子を少なくとも有する6員以上18員以下の複素環を表す。*は、結合手を表す。
【0012】
【化3】
【0013】
前記一般式(1)中、R1、R2、R3、及びR4は、各々独立に、水素原子又はメチル基を表す。R5及びR6は、各々独立に、水素原子又は炭素原子数1以上4以下のアルキル基を表す。R5及びR6は互いに結合して一般式(X)で表される2価の基を表してもよい。前記一般式(2)中、X1は、化学式(2A)、(2B)、(2C)、又は(2D)で表される2価の基を表す。前記一般式(3)中、Rfは、1個以上のフッ素原子で置換された炭素原子数1以上20以下の鎖状脂肪族基を表す。
【0014】
【化4】
【0015】
前記一般式(X)中、tは、1以上3以下の整数を表す。*は、結合手を表す。
【0016】
【化5】
【発明の効果】
【0017】
本発明の電子写真感光体は、耐摩耗性、及び白色光に対する耐光性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る電子写真感光体の部分断面図である。
図2】本発明の実施形態に係る電子写真感光体の部分断面図である。
図3】本発明の実施形態に係る電子写真感光体の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されない。本発明は、本発明の目的の範囲内で、適宜変更を加えて実施できる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の要旨は限定されない。
【0020】
以下の説明において、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。また、化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰り返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。
【0021】
次に、本明細書で用いられる置換基について説明する。炭素原子数1以上8以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、炭素原子数1以上3以下のアルキル基、及び炭素原子数3以上5以下のアルキル基は、各々、特記なき限り、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上8以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、1-エチルプロピル基、2-エチルプロピル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、n-ヘキシル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、1,1-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、1,1,2-トリメチルプロピル基、1,2,2-トリメチルプロピル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基及び3-エチルブチル基、直鎖状及び分枝鎖状のヘプチル基、並びに直鎖状及び分枝鎖状のオクチル基が挙げられる。炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、炭素原子数1以上3以下のアルキル基、及び炭素原子数3以上5以下のアルキル基の例は、各々、炭素原子数1以上8以下のアルキル基の例として述べた基のうち、該当する炭素原子数を有する基である。
【0022】
炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基、炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基、及び炭素原子数1以上3以下のアルコキシ基は、各々、特記なき限り、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、n-ペントキシ基、1-メチルブトキシ基、2-メチルブトキシ基、3-メチルブトキシ基、1-エチルプロポキシ基、2-エチルプロポキシ基、1,1-ジメチルプロポキシ基、1,2-ジメチルプロポキシ基、2,2-ジメチルプロポキシ基、1,2-ジメチルプロポキシ基、n-ヘキシルオキシ基、1-メチルペンチルオキシ基、2-メチルペンチルオキシ基、3-メチルペンチルオキシ基、4-メチルペンチルオキシ基、1,1-ジメチルブトキシ基、1,2-ジメチルブトキシ基、1,3-ジメチルブトキシ基、2,2-ジメチルブトキシ基、2,3-ジメチルブトキシ基、3,3-ジメチルブトキシ基、1,1,2-トリメチルプロポキシ基、1,2,2-トリメチルプロポキシ基、1-エチルブトキシ基、2-エチルブトキシ基、3-エチルブトキシ基、直鎖状及び分枝鎖状のヘプチルオキシ基、並びに直鎖状及び分枝鎖状のオクチルオキシ基が挙げられる。炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基、及び炭素原子数1以上3以下のアルコキシ基の例は、各々、炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基の例として述べた基のうち、該当する炭素原子数を有する基である。
【0023】
炭素原子数5以上7以下のシクロアルカンは、特記なき限り、非置換である。炭素原子数5以上7以下のシクロアルカンとしては、例えば、シクロペンタン、シクロヘキサン、及びシクロヘプタンが挙げられる。
【0024】
炭素原子数6以上14以下のアリール基は、特記なき限り、非置換である。炭素原子数6以上14以下のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、インダセニル基、ビフェニレニル基、アセナフチレニル基、アントリル基、及びフェナントリル基が挙げられる。
【0025】
炭素原子数6以上14以下のアリーレン基、及び炭素原子数6以上10以下のアリーレン基は、各々、特記なき限り、非置換である。炭素原子数6以上14以下のアリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフタレンジイル基、インダセンジイル基、ビフェニレンジイル基、アセナフチレンジイル基、アントリレンジイル基、及びフェナントレンジイル基が挙げられる。炭素原子数6以上10以下のアリーレン基の例は、炭素原子数6以上14以下のアリーレン基の例として述べた基のうち、該当する炭素原子数を有する基である。
【0026】
6員以上18員以下の複素環、及び13員以上15員以下の複素環は、特記なき限り、非置換である。これらの複素環は、環構成原子として、窒素原子を少なくとも有し、酸素原子及び炭素原子を更に有してもよい。6員以上18員以下の複素環としては、例えば、カルバゾール、インドール、イソインドール、インダゾール、キノリン、イソキノリン、シンノリン、キナゾリン、キノキサリン、フタラジン、プリン、プテリジン、フェナントリジン、アクリジン、フェナジン、フェナントロリン、化学式(HC-1)で表される複素環、及び化学式(HC-2)で表される複素環が挙げられる。13員以上15員以下の複素環の例は、6員以上18員以下の複素環の例として述べた複素環のうち、該当する環員数を有する基である。以上、本明細書で用いられる置換基について説明した。
【0027】
【化6】
【0028】
<電子写真感光体>
本実施形態は、電子写真感光体(以下、感光体と記載することがある)に関する。以下、図1図3を参照して、本実施形態の感光体1の構造について説明する。図1図3は、各々、感光体1の部分断面図を示す。
【0029】
図1に示すように、感光体1は、導電性基体2と、感光層3とを備える。感光層3は、電荷発生層3aと、電荷輸送層3bとを含む。つまり、感光体1には、感光層3として、電荷発生層3aと電荷輸送層3bとが備えられる。感光体1は、積層型電子写真感光体である。
【0030】
図1に示すように、導電性基体2上に電荷発生層3aが設けられ、電荷発生層3a上に電荷輸送層3bが設けられてもよい。図2に示すように、感光体1は、導電性基体2上に電荷輸送層3bが設けられ、電荷輸送層3b上に電荷発生層3aが設けられてもよい。
【0031】
図3に示すように、感光体1は、導電性基体2と、感光層3と、中間層4(下引き層)とを備えていてもよい。中間層4は、導電性基体2と感光層3との間に備えられる。図1及び図2に示すように、感光層3は、導電性基体2上に直接備えられてもよい。或いは、図3に示すように、感光層3(例えば、電荷発生層3a又は電荷輸送層3b)は、導電性基体2上に、中間層4を介して備えられてもよい。
【0032】
感光体1は、導電性基体2と、感光層3と、保護層(不図示)とを備えてもよい。保護層は、感光層3上に設けられる。
【0033】
電荷発生層3aは、例えば、一層である。電荷発生層3aの厚さは、特に限定されないが、0.01μm以上5μm以下であることが好ましく、0.1μm以上3μm以下であることがより好ましい。
【0034】
電荷輸送層3bは、例えば、一層である。電荷輸送層3bの厚さは、特に限定されないが、2μm以上100μm以下であることが好ましく、5μm以上50μm以下であることがより好ましい。
【0035】
図1及び図3に示すように、電荷輸送層3bが、一層であり、且つ感光体1の最表面層として備えられることが好ましい。後述するポリアリレート樹脂(PA)と後述する一般式(30)で表されるアゾ化合物とを同一層に含有する電荷輸送層3bが最表面層として備えられることで、感光体1の耐摩耗性が更に向上する。なお、図2に示すように、電荷発生層3aが、感光体1の最表面層として備えられてもよい。また、保護層が、感光体1の最表面層として備えられてもよい。以上、図1図3を参照して、感光体1の構造について説明した。以下、感光体について、更に詳細に説明する。
【0036】
[電荷発生層]
電荷発生層は、電荷発生剤を含有する。電荷発生層は、必要に応じて、ベース樹脂を更に含有してもよい。電荷発生層は、必要に応じて、添加剤を更に含有してもよい。
【0037】
(電荷発生剤)
電荷発生剤としては、例えば、フタロシアニン系顔料、ペリレン系顔料、ビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、無金属ナフタロシアニン顔料、金属ナフタロシアニン顔料、スクアライン顔料、インジゴ顔料、アズレニウム顔料、シアニン顔料、無機光導電材料(例えば、セレン、セレン-テルル、セレン-ヒ素、硫化カドミウム、及びアモルファスシリコン)の粉末、ピリリウム顔料、アンサンスロン系顔料、トリフェニルメタン系顔料、スレン系顔料、トルイジン系顔料、ピラゾリン系顔料、及びキナクリドン系顔料が挙げられる。電荷発生層は、1種の電荷発生剤のみを含有してもよく、2種以上の電荷発生剤を含有してもよい。
【0038】
フタロシアニン系顔料は、フタロシアニン構造を有する顔料である。フタロシアニン系顔料としては、例えば、無金属フタロシアニン、及び金属フタロシアニンが挙げられる。金属フタロシアニンとしては、例えば、チタニルフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、及びクロロガリウムフタロシアニンが挙げられる。無金属フタロシアニンは、化学式(CGM-1)で表される。チタニルフタロシアニンは、化学式(CGM-2)で表される。
【0039】
【化7】
【0040】
フタロシアニン系顔料は、結晶であってもよく、非結晶であってもよい。無金属フタロシアニンの結晶としては、例えば、無金属フタロシアニンのX型結晶(以下、X型無金属フタロシアニンと記載することがある)が挙げられる。チタニルフタロシアニンの結晶としては、例えば、チタニルフタロシアニンのα型、β型、及びY型結晶(以下、それぞれをα型、β型、及びY型チタニルフタロシアニンと記載することがある)が挙げられる。
【0041】
例えば、デジタル光学式の画像形成装置(例えば、半導体レーザーのような光源を使用した、レーザービームプリンター又はファクシミリ)には、700nm以上の波長領域に感度を有する感光体を用いることが好ましい。700nm以上の波長領域で高い量子収率を有することから、電荷発生剤としては、フタロシアニン系顔料が好ましく、無金属フタロシアニン又はチタニルフタロシアニンがより好ましく、チタニルフタロシアニンが更に好ましく、Y型チタニルフタロシアニンが特に好ましい。
【0042】
Y型チタニルフタロシアニンは、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、例えば、ブラッグ角(2θ±0.2°)の27.2°に主ピークを有する。CuKα特性X線回折スペクトルにおける主ピークとは、ブラッグ角(2θ±0.2°)が3°以上40°以下である範囲において、1番目又は2番目に大きな強度を有するピークである。Y型チタニルフタロシアニンは、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、26.2℃にピークを有していない。
【0043】
CuKα特性X線回折スペクトルは、例えば、次の方法によって測定できる。まず、試料(チタニルフタロシアニン)をX線回折装置(例えば、株式会社リガク製「RINT(登録商標)1100」)のサンプルホルダーに充填して、X線管球Cu、管電圧40kV、管電流30mA、かつCuKα特性X線の波長1.542Åの条件で、X線回折スペクトルを測定する。測定範囲(2θ)は、例えば3°以上40°以下(スタート角3°、ストップ角40°)であり、走査速度は、例えば10°/分である。得られたX線回折スペクトルから主ピークを決定し、主ピークのブラッグ角を読み取る。
【0044】
電荷発生剤の含有量は、ベース樹脂100質量部に対して、10質量部以上300質量部以下であることが好ましく、100質量部以上200質量部以下であることがより好ましい。
【0045】
(ベース樹脂)
ベース樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂(より具体的には、ポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-アクリル酸共重合体、アクリル共重合体、ポリエチレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスルホン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、及びポリエーテル樹脂)、熱硬化性樹脂(より具体的には、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、及びこれら以外の架橋性熱硬化性樹脂)、及び光硬化性樹脂(より具体的には、エポキシ-アクリル酸系樹脂、及びウレタン-アクリル酸系共重合体)が挙げられる。
【0046】
(添加剤)
電荷発生層に含有される添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、1重項消光剤、軟化剤、表面改質剤、増量剤、増粘剤、分散安定剤、ワックス、ドナー、界面活性剤、可塑剤、増感剤、及びレベリング剤が挙げられる。
【0047】
[電荷輸送層]
電荷輸送層は、バインダー樹脂と、アゾ化合物と、正孔輸送剤とを含有する。電荷輸送層は、電子アクセプター化合物を更に含有することが好ましい。電荷輸送層は、必要に応じて、添加剤を更に含有してもよい。
【0048】
(バインダー樹脂)
バインダー樹脂は、少なくとも1種の第1繰り返し単位と、少なくとも1種の第2繰り返し単位と、末端基とを有するポリアリレート樹脂を含む。第1繰り返し単位は、一般式(1)で表される。第2繰り返し単位は、一般式(2)で表される。末端基は、一般式(3)で表される。以下、一般式(1)で表される少なくとも1種の第1繰り返し単位と、一般式(2)で表される少なくとも1種の第2繰り返し単位と、一般式(3)で表される末端基とを有するポリアリレート樹脂を、「ポリアリレート樹脂(PA)」と記載することがある。一般式(1)で表される第1繰り返し単位を、「繰り返し単位(1)」と記載することがある。一般式(2)で表される第2繰り返し単位を、「繰り返し単位(2)」と記載することがある。一般式(3)で表される末端基を、「末端基(3)」と記載することがある。
【0049】
【化8】
【0050】
一般式(1)中、R1、R2、R3、及びR4は、各々独立に、水素原子又はメチル基を表す。R5及びR6は、各々独立に、水素原子又は炭素原子数1以上4以下のアルキル基を表す。R5及びR6は互いに結合して一般式(X)で表される2価の基を表してもよい。一般式(2)中、X1は、化学式(2A)、(2B)、(2C)、又は(2D)で表される2価の基を表す。一般式(3)中、Rfは、1個以上のフッ素原子で置換された炭素原子数1以上20以下の鎖状脂肪族基を表す。
【0051】
【化9】
【0052】
一般式(X)中、tは、1以上3以下の整数を表す。*は、結合手を表す。詳しくは、*は、一般式(2)中のX1が結合している炭素原子に対する結合手を表す。
【0053】
【化10】
【0054】
ポリアリレート樹脂(PA)は、特定構造の繰り返し単位を有するため、強度に優れる。ポリアリレート樹脂(PA)は、末端基(3)がフッ素原子を有しかつ主鎖がハロゲン原子を有しないため、主鎖同士が絡み合い易く、強度に優れる。ポリアリレート樹脂(PA)は、フッ素原子で置換された鎖状脂肪族基を含む末端基を有するため、電荷輸送層の表面の摩擦抵抗が低減される。これらの理由から、ポリアリレート樹脂(PA)を電荷輸送層に含有させることで、感光体の耐摩耗性が向上する。
【0055】
更に、ポリアリレート樹脂(PA)は、末端基(3)がフッ素原子を有し且つ主鎖がハロゲン原子を有しないため、後述するアゾ化合物及び正孔輸送剤との相溶性に優れ、電荷輸送層の結晶化を抑制できる。
【0056】
ポリアリレート樹脂(PA)は、主鎖と末端基(3)とを有する。以下、ポリアリレート樹脂(PA)の主鎖と末端基(3)とについて説明する。
【0057】
ポリアリレート樹脂(PA)の主鎖は、少なくとも1種の繰り返し単位(1)と、少なくとも1種の繰り返し単位(2)とを含む。
【0058】
以下、繰り返し単位(1)について説明する。一般式(1)中のR5及びR6が表す炭素原子数1以上4以下のアルキル基としては、メチル基又はエチル基が好ましい。
【0059】
一般式(X)中のtとしては、1又は2が好ましく、2がより好ましい。
【0060】
一般式(1)中のR5及びR6が互いに結合して一般式(X)で表される2価の基を表す場合、R1及びR3は各々メチル基を表し、かつR2及びR4は各々水素原子を表すことが好ましい。
【0061】
少なくとも1種の繰り返し単位(1)は、化学式(1-1)、(1-2)、(1-3)、及び(1-4)で表される繰り返し単位のうちの少なくとも1種の繰り返し単位であることが好ましい。以下、化学式(1-1)、(1-2)、(1-3)、及び(1-4)で表される繰り返し単位を、各々、繰り返し単位(1-1)、(1-2)、(1-3)、及び(1-4)と記載することがある。
【0062】
【化11】
【0063】
ポリアリレート樹脂(PA)は、1種の繰り返し単位(1)のみを含んでいてもよく、2種以上(例えば、2種)の繰り返し単位(1)を含んでいてもよい。
【0064】
ポリアリレート樹脂(PA)が2種の繰り返し単位(1)を含む場合、2種の繰り返し単位(1)の総数に対する一方の繰り返し単位(1)の数の比率(以下、比率rと記載することがある)としては、0.10以上0.90以下が好ましい。
【0065】
次に、繰り返し単位(2)について説明する。繰り返し単位(2)としては、一般式(2-1)及び(2-2)で表される繰り返し単位(以下、それぞれを繰り返し単位(2-1)及び(2-2)と記載することがある)が好ましい。下記一般式(2-2)中、X2は、化学式(2A)、(2B)又は(2D)で表される2価の基を表す。
【0066】
【化12】
【0067】
少なくとも1種の繰り返し単位(2)は、化学式(2-1C)、(2-2A)、(2-2B)、及び(2-2D)で表される繰り返し単位のうちの少なくとも1種の繰り返し単位であることが好ましい。以下、化学式(2-1C)、(2-2A)、(2-2B)、及び(2-2D)で表される繰り返し単位を、各々、繰り返し単位(2-1C)、(2-2A)、(2-2B)、及び(2-2D)と記載することがある。
【0068】
【化13】
【0069】
ポリアリレート樹脂(PA)は、1種の繰り返し単位(2)のみを含んでいてもよく、2種以上(例えば、2種)の繰り返し単位(2)を含んでいてもよい。ポリアリレート樹脂(PA)が1種の繰り返し単位(2)を含む場合、繰り返し単位(2)は、繰り返し単位(2-2A)、(2-2B)、又は(2-2D)であることが好ましく、繰り返し単位(2-2A)であることがより好ましい。
【0070】
感光体の耐摩耗性をより向上させる観点から、ポリアリレート樹脂(PA)は、2種以上の繰り返し単位(2)を有することが好ましく、繰り返し単位(2-1)と繰り返し単位(2-2)とを有することがより好ましい。同じ観点から、ポリアリレート樹脂(PA)は、繰り返し単位(2)として、1種の繰り返し単位(2-1)と、1種の繰り返し単位(2-2)とを有することが特に好ましい。
【0071】
ポリアリレート樹脂(PA)が2種の繰り返し単位(2)を含む場合、2種の繰り返し単位(2)が、繰り返し単位(2-1C)と繰り返し単位(2-2A)であることが好ましい。また、2種の繰り返し単位(2)が、繰り返し単位(2-1C)と繰り返し単位(2-2B)であることも好ましい。また、2種の繰り返し単位(2)が、繰り返し単位(2-1C)と繰り返し単位(2-2D)であることも好ましい。
【0072】
感光体の耐摩耗性をより向上させる観点から、繰り返し単位(2)の総数に対する繰り返し単位(2-1)の数の比率(以下、比率pと記載することがある)としては、0.05以上1.00未満が好ましく、0.10以上0.70以下がより好ましく、0.30以上0.70以下が更に好ましく、0.50以上0.70以下が一層好ましく、0.60以上0.70以下が特に好ましい。
【0073】
なお、比率pと、既に述べた比率rとは、各々、1本の分子鎖から得られる値ではなく、電荷輸送層に含有されるポリアリレート樹脂(PA)の全体(複数の分子鎖)から得られる値の平均値である。各繰り返し単位の割合は、プロトン核磁気共鳴分光計を用いてポリアリレート樹脂(PA)の1H-NMRスペクトルを測定し、得られた1H-NMRスペクトルから算出することができる。
【0074】
次に、末端基(3)について説明する。一般式(3)中のRfが表わすフッ素原子で置換された鎖状脂肪族基は、直鎖状又は分枝鎖状である。鎖状脂肪族基を置換するフッ素原子の数は、1以上37以下であることが好ましく、1以上17以下であることがより好ましい。なお、末端基(3)は、非環状である。末端基(3)が環状の基ではなく鎖状の脂肪族基であることで、感光体の耐摩耗性を向上できる。ここで、「鎖状脂肪族基」は、例えば、1価の鎖状炭化水素基(特に、アルキル基)、又は鎖状炭化水素基の炭素-炭素結合間に-O-を挿入した基である。
【0075】
末端基(3)としては、下記一般式(3-1)で表される末端基(以下、末端基(3-1)と記載することがある)が好ましい。ポリアリレート樹脂(PA)が末端基(3-1)を有することで、電荷輸送層の表面の摩擦抵抗を更に低減でき、感光体の耐摩耗性を更に向上できる。
【0076】
【化14】
【0077】
一般式(3-1)中、R31は、直鎖状又は分枝鎖状の炭素原子数1以上6以下のパーフルオロアルキル基を表す。R32は、直鎖状又は分枝鎖状の炭素原子数1以上6以下のパーフルオロアルキレン基を表す。nは、0以上2以下の整数を表す。nが2を表す場合、2つのR32は互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。
【0078】
一般式(3-1)中のR31が表すパーフルオロアルキル基としては、直鎖状又は分枝鎖状の炭素原子数3以上6以下のパーフルオロアルキル基が好ましく、直鎖状の炭素原子数3以上6以下のパーフルオロアルキル基がより好ましく、ヘプタフルオロn-プロピル基又はトリデカフルオロn-ヘキシル基が更に好ましい。
【0079】
一般式(3-1)中のR32が表すパーフルオロアルキレン基としては、直鎖状又は分枝鎖状の炭素原子数2又は3のパーフルオロアルキレン基が好ましく、1-フルオロ-1-トリフルオロメチル-メチレン基又は1,1,2-トリフルオロ-2-トリフルオロメチル-エチレン基がより好ましい。
【0080】
感光体の耐摩耗性をより向上させる観点から、末端基(3)の好適な例としては、化学式(M1)、(M2)、(M3)、及び(M4)で表される末端基(以下、それぞれを末端基(M1)、(M2)、(M3)、及び(M4)と記載することがある)が好ましい。
【0081】
【化15】
【0082】
感光体の耐摩耗性を更に向上させる観点から、末端基(3)としては、末端基(M1)、(M3)、又は(M4)がより好ましい。また、末端基(3)は、その炭素鎖が長く、かつ多くのフッ素原子を有するほど電荷輸送層の表面の摩擦抵抗が低減する傾向がある。このような理由から、末端基(3)としては、末端基(M1)又は(M3)が更に好ましく、末端基(M3)が特に好ましい。
【0083】
ポリアリレート樹脂(PA)としては、下記表1に示すポリアリレート樹脂(j-1)~(j-11)が好ましい。
【0084】
なお、表1、並びに後述する表2及び表6で使用される用語の意味は次のとおりである。「単位(1)」及び「単位(2)」は、各々、繰り返し単位(1)及び(2)を示す。繰り返し単位(1)又は繰り返し単位(2)に2つの繰り返し単位が記載されている場合は、その両方を有することを示す。例えば、表1における「1-2/1-3」は、繰り返し単位(1-2)及び(1-3)の両方を有することを示す。「-」は、該当する値がないことを示す。
【0085】
【表1】
【0086】
ポリアリレート樹脂(PA)としては、下記表2に示すポリアリレート樹脂(R-1-M1)~(R-10-M1)及び(R-1-M2)~(R-1-M4)がより好ましい。
【0087】
【表2】
【0088】
ポリアリレート樹脂(PA)において、芳香族ジオール由来の繰り返し単位と、芳香族ジカルボン酸由来の繰り返し単位とは、隣接して互いに結合している。芳香族ジオール由来の繰り返し単位は、例えば、繰り返し単位(1)である。芳香族ジカルボン酸由来の繰り返し単位は、例えば、繰り返し単位(2)である。また、ポリアリレート樹脂(PA)において、末端基(3)は、芳香族ジカルボン酸由来の繰り返し単位と隣接して互いに結合している。ポリアリレート樹脂(PA)が共重合体である場合、ポリアリレート樹脂(PA)は、例えば、ランダム共重合体、交互共重合体、周期的共重合体、又はブロック共重合体であってもよい。
【0089】
ポリアリレート樹脂(PA)は、繰り返し単位として、繰り返し単位(1)及び(2)のみを有することが好ましい。但し、ポリアリレート樹脂(PA)は、繰り返し単位(1)以外の芳香族ジオール由来の繰り返し単位を更に有してもよく、繰り返し単位(2)以外の芳香族ジカルボン酸由来の繰り返し単位を更に有してもよい。
【0090】
ポリアリレート樹脂(PA)の粘度平均分子量としては、10,000以上が好ましく、20,000以上がより好ましく、30,000以上が更に好ましく、40,000以上が特に好ましい。ポリアリレート樹脂(PA)の粘度平均分子量が10,000以上であると、バインダー樹脂の耐摩耗性をより向上できる。一方、バインダー樹脂の粘度平均分子量としては、80,000以下が好ましく、70,000以下がより好ましい。バインダー樹脂の粘度平均分子量が80,000以下であると、ポリアリレート樹脂(PA)が電荷輸送層形成用の溶剤に溶解し易くなるため、電荷輸送層を好適に形成できる。
【0091】
ポリアリレート樹脂(PA)の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、主鎖を構成するための芳香族ジオール及び芳香族ジカルボン酸と、末端基(3)を構成するための末端停止剤とを縮重合させる方法が挙げられる。縮重合させる方法は、公知の合成方法(より具体的には、溶液重合、溶融重合又は界面重合等)を採用することができる。
【0092】
主鎖を構成するための芳香族ジオールは、例えば、下記一般式(BP-1)で表される。主鎖を構成するための芳香族ジカルボン酸は、例えば、下記一般式(DC-2)で表される。末端基(3)を構成するための末端停止剤は、例えば、下記一般式(T-3)で表される。下記一般式(BP-1)、(DC-2)及び(T-3)中のR1、R2、R3、R4、R5、R6、X1及びRfは、各々、一般式(1)、(2)及び(3)中のR1、R2、R3、R4、R5、R6、X1及びRfと同義である。以下、下記一般式(BP-1)、(DC-2)、及び(T-3)で表される化合物を、各々、化合物(BP-1)、(DC-2)、及び(T-3)と記載することがある。
【0093】
【化16】
【0094】
化合物(BP-1)としては、化学式(BP-1-1)~(BP-1-4)で表される化合物(以下、それぞれを化合物(BP-1-1)~(BP-1-4)と記載することがある)が好ましい。
【0095】
【化17】
【0096】
化合物(DC-2)としては、下記化学式(DC-2-1C)、(DC-2-2A)、(DC-2-2B)、及び(DC-2-2D)で表される化合物(以下、それぞれを化合物(DC-2-1C)、(DC-2-2A)、(DC-2-2B)、及び(DC-2-2D)と記載することがある)が挙げられる。
【0097】
【化18】
【0098】
化合物(T-3)としては、下記化学式(T-M1)~(T-M4)で表される化合物(以下、それぞれを化合物(T-M1)~(T-M4)と記載することがある)が好ましい。
【0099】
【化19】
【0100】
なお、主鎖を構成するための芳香族ジオールは、芳香族ジアセテートに変形して使用してもよい。主鎖を構成するための芳香族ジカルボン酸は、誘導体化して使用してもよい。芳香族ジカルボン酸の誘導体としては、例えば、芳香族ジカルボン酸ジクロライド、芳香族ジカルボン酸ジメチルエステル、芳香族ジカルボン酸ジエチルエステル及び芳香族ジカルボン酸無水物が挙げられる。芳香族ジカルボン酸ジクロライドは、芳香族ジカルボン酸の2個の「-C(=O)-OH」基が各々「-C(=O)-Cl」基で置換された化合物である。
【0101】
芳香族ジオールと芳香族ジカルボン酸との縮重合においては、塩基及び触媒の一方又は両方を添加してもよい。塩基及び触媒は、公知の塩基及び触媒から適宜選択することができる。塩基としては、例えば、水酸化ナトリウムが挙げられる。触媒としては、例えば、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド、アンモニウムクロライド、アンモニウムブロマイド、4級アンモニウム塩、トリエチルアミン、及びトリメチルアミンが挙げられる。
【0102】
電荷輸送層は、バインダー樹脂として、ポリアリレート樹脂(PA)のみを含むことが好ましい。なお、電荷輸送層は、バインダー樹脂として、ポリアリレート樹脂(PA)以外のバインダー樹脂(以下、その他のバインダー樹脂と記載することがある)を更に含んでもよい。その他のバインダー樹脂の例は、ベース樹脂の例と同じである。
【0103】
(アゾ化合物)
アゾ化合物は、一般式(30)で表される。以下、一般式(30)で表されるアゾ化合物を、アゾ化合物(30)と記載することがある。
【0104】
【化20】
【0105】
一般式(30)中、R11及びR12は、各々独立に、炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表す。Ar1及びAr2は、各々独立に、少なくとも1つの置換基で置換されてもよい炭素原子数6以上14以下のアリーレン基を表す。炭素原子数6以上14以下のアリーレン基を置換する置換基は、炭素原子数1以上3以下のアルキル基及び炭素原子数1以上3以下のアルコキシ基からなる群から選択される。Qは、一般式(Q1)又は(Q2)で表される一価の基を表す。
【0106】
【化21】
【0107】
一般式(Q1)中、Ar3及びAr4は、各々独立に、炭素原子数1以上3以下のアルキル基で置換されてもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基を表す。*は、結合手を表す。一般式(Q2)中、Zは、環構成原子として窒素原子を少なくとも有する6員以上18員以下の複素環を表す。*は、結合手を表す。
【0108】
電荷輸送層がアゾ化合物(30)を含有することにより、白色光に対する感光体の耐光性が向上する。詳しくは、画像形成装置をメンテナンスする際に、画像形成装置に備えられた感光体が、白色光(例えば、蛍光灯の白色光)に曝露されることがある。白色光に曝露された後に画像形成装置を用いて画像を形成すると、白色光に曝露された感光体の周面の領域の露光後電位が、所望の露光後電位よりも低下することがある。以下、白色光に曝露された感光体の周面の領域を「光曝露領域」と記載する。また、白色光に曝露されなかった感光体の周面の領域を、「非光曝露領域」と記載する。形成画像において、所望の露光後電位よりも露光後電位が低下した光曝露領域に対応する画像領域の画像濃度は、非光曝露領域に対応する画像領域の画像濃度よりも、濃くなる。ここで、アゾ化合物(30)は、感光体に曝露された白色光を吸収する。このため、アゾ化合物(30)を含有する電荷輸送層を備えた感光体は、光曝露領域の露光後電位が所望の値よりも低下することを抑制でき、白色光に曝露されたことに起因する画像不良の発生を抑制できる。このように、本実施形態の感光体は、白色光に対する耐光性に優れる。
【0109】
また、電荷輸送層にポリアリレート樹脂(PA)に加えてアゾ化合物(30)が含有されることにより、ポリアリレート樹脂(PA)によって向上した感光体の耐摩耗性が、更に向上する。
【0110】
以下、一般式(30)について、更に説明する。R11及びR12が表わす炭素原子数1以上3以下のアルキル基としては、メチル基又はエチル基が好ましい。
【0111】
Ar1及びAr2が表わす炭素原子数6以上14以下のアリーレン基としては、炭素原子数6以上10以下のアリーレン基が好ましく、フェニレン基がより好ましく、p-フェニレン基が更に好ましい。Ar1及びAr2が表わす炭素原子数6以上14以下のアリーレン基は、少なくとも1つの置換基で置換されてもよい。このような置換基は、炭素原子数1以上3以下のアルキル基及び炭素原子数1以上3以下のアルコキシ基からなる群から選択される1つ又は2つの置換基であることが好ましい。このような置換基は、メチル基、エチル基、及びメトキシ基からなる群から選択される1つ又は2つの置換基であることがより好ましい。Ar1及びAr2が表わす少なくとも1つの置換基で置換されてもよい炭素原子数6以上14以下のアリーレン基としては、フェニレン基、メチルフェニレン基、エチルフェニレン基、ジメチルフェニレン基、又はメトキシフェニレン基が好ましい。Ar1及びAr2が表わす、少なくとも1つの置換基で置換されてもよい炭素原子数6以上14以下のアリーレン基としては、p-フェニレン基、2-メチル-1,4-フェニレン基、3-メチル-1,4-フェニレン基、2-エチル-1,4-フェニレン基、2,5-ジメチル-1,4-フェニレン基、2,6-ジメチル-1,4-フェニレン基、又は3-メトキシ-1,4-フェニレン基がより好ましい。
【0112】
既に述べたように、一般式(Q1)及び(Q2)中の*は、結合手を表す。詳しくは、*は、一般式(30)においてQが結合している窒素原子に対する、結合手を表す。
【0113】
一般式(Q1)中のAr3及びAr4が表わす炭素原子数6以上14以下のアリール基としては、フェニル基、又はナフチル基が好ましい。ナフチル基としては、1-ナフチル基が好ましい。Ar3及びAr4が表わす炭素原子数6以上14以下のアリール基は、炭素原子数1以上3以下のアルキル基で置換されてもよい。
【0114】
既に述べたように、一般式(Q2)中のZは、環構成原子として窒素原子を少なくとも有する6員以上18員以下の複素環を表す。一般式(Q2)中のNは、環構成原子である窒素原子を示す。一般式(Q2)に示される環構成原子である窒素原子が、結合手を有している。詳しくは、一般式(Q2)に示される環構成原子である窒素原子が、一般式(30)中のQが結合した窒素原子と結合している。
【0115】
一般式(Q2)中のZが表わす6員以上18員以下の複素環としては、13員以上15員以下の複素環が好ましい。一般式(Q2)で表される一価の基は、下記一般式(Q2-1)又は化学式(Q2-2)で表される一価の基であることが好ましい。
【0116】
【化22】
【0117】
一般式(Q2-1)中、Wは、-CH2-又は-O-を表す。pは、0以上2以下の整数を表す。pが2を表す場合、2個のWは同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。一般式(Q2-1)及び化学式(Q2-2)中、*は結合手を表す。一般式(Q2-1)中、Wが酸素原子を表し、pが1を表すことが好ましい。また、一般式(Q2-1)中、pが0を表すことも好ましい。
【0118】
アゾ化合物(30)の例としては、化学式(ADD-1)~(ADD-8)で表される化合物(以下、それぞれを、アゾ化合物(ADD-1)~(ADD-8)と記載することがある)が挙げられる。
【0119】
【化23】
【0120】
【化24】
【0121】
アゾ化合物(30)の含有量は、100質量部のバインダー樹脂に対して、2質量部以上5質量部以下である。アゾ化合物(30)の含有量が100質量部のバインダー樹脂に対して2質量部未満であると、白色光に対する耐光性が低下する。一方、アゾ化合物(30)の含有量が100質量部のバインダー樹脂に対して5質量部超であると、感光体の耐摩耗性が低下する。感光体の耐摩耗性の向上と、白色光に対する耐光性の向上とをバランス良く達成するために、アゾ化合物(30)の含有量は、100質量部のバインダー樹脂に対して、3質量部以上5質量部以下であることが好ましく、3質量部以上4質量部以下であることがより好ましい。
【0122】
(正孔輸送剤)
正孔輸送剤としては、例えば、トリフェニルアミン誘導体、ジアミン誘導体(例えば、N,N,N’,N’-テトラフェニルベンジジン誘導体、N,N,N’,N’-テトラフェニルフェニレンジアミン誘導体、N,N,N’,N’-テトラフェニルナフチレンジアミン誘導体、N,N,N’,N’-テトラフェニルフェナントリレンジアミン誘導体、及びジ(アミノフェニルエテニル)ベンゼン誘導体)、オキサジアゾール系化合物(例えば、2,5-ジ(4-メチルアミノフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール)、スチリル系化合物(例えば、9-(4-ジエチルアミノスチリル)アントラセン)、カルバゾール系化合物(例えば、ポリビニルカルバゾール)、有機ポリシラン化合物、ピラゾリン系化合物(例えば、1-フェニル-3-(p-ジメチルアミノフェニル)ピラゾリン)、ヒドラゾン系化合物、インドール系化合物、オキサゾール系化合物、イソオキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物、及びトリアゾール系化合物が挙げられる。電荷輸送層は、1種の正孔輸送剤のみを含有してもよく、2種以上の正孔輸送剤を含有してもよい。
【0123】
正孔輸送剤は、下記一般式(10)で表される化合物(以下、正孔輸送剤(10)と記載することがある)を含むことが好ましい。電荷輸送層が正孔輸送剤(10)を含有することで、感光体の耐摩耗性、白色光に対する耐光性、帯電特性、及び感度特性をより向上できる。
【0124】
【化25】
【0125】
一般式(10)中、R101、R103、R104、R105、R106、R107、及びR108は、各々独立に、水素原子、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、炭素原子数1以上8以下のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基、又は炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基を表す。R103、R104、R105、R106及びR107のうちの隣接する2つが結合して炭素原子数5以上7以下のシクロアルカンを表してもよい。R102及びR109は、各々独立に、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、フェニル基又は炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基を表す。b1及びb2は、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。
【0126】
一般式(10)中、R101~R109が表す炭素原子数1以上8以下のアルキル基としては、炭素原子数1以上6以下のアルキル基が好ましく、炭素原子数1以上4以下のアルキル基がより好ましく、n-ブチル基が更に好ましい。
【0127】
一般式(10)中、R101~R109が表すフェニル基は、炭素原子数1以上8以下のアルキル基で置換されていてもよい。このような炭素原子数1以上8以下のアルキル基としては、炭素原子数1以上6以下のアルキル基が好ましく、炭素原子数1以上4以下のアルキル基がより好ましく、メチル基が更に好ましい。
【0128】
一般式(10)中、R101~R109が表す炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基としては、炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基又はエトキシ基がより好ましい。
【0129】
一般式(10)中、R103、R104、R105、R106及びR107のうちの隣接した二つが互いに結合して、炭素原子数5以上7以下のシクロアルカンを表してもよい。R103、R104、R105、R106及びR107のうちの隣接した二つが互いに結合して炭素原子数5以上7以下のシクロアルカンを形成する場合、このシクロアルカンはR103、R104、R105、R106及びR107が結合するフェニル基と縮合して二環縮合環基を形成する。この場合、シクロアルカンとフェニル基との縮合部位は、二重結合を含んでもよい。R103、R104、R105、R106及びR107のうちの隣接した二つが互いに結合して表されるシクロアルカンとしては、シクロヘキサンが好ましい。
【0130】
1が2以上5以下の整数を表す場合、複数のR102は互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。b2が2以上5以下の整数を表す場合、複数のR109は互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。b1及びb2は、各々独立に、0又は1を表すことが好ましい。
【0131】
一般式(10)中、R101及びR108は、水素原子を表すことが好ましい。R102及びR109は、炭素原子数1以上8以下のアルキル基を表すことが好ましい。R103、R104、R106及びR107は、各々、水素原子を表すことが好ましい。R105は、炭素原子数1以上8以下のアルキル基を表すことが好ましく、n-ブチル基を表すことがより好ましい。b1及びb2は、各々独立に、0を表すことが好ましい。
【0132】
正孔輸送剤(10)としては、下記化学式(HTM-1)で表される化合物(以下、正孔輸送剤(HTM-1)と記載することがある)が好ましい。
【0133】
【化26】
【0134】
電荷輸送層は、正孔輸送剤として、正孔輸送剤(10)のみを含有することが好ましいが、正孔輸送剤(10)以外の正孔輸送剤を更に含有してもよい。
【0135】
正孔輸送剤の含有量は、100質量部のバインダー樹脂に対して、10質量部以上200質量部以下であることが好ましく、20質量部以上100質量部以下であることがより好ましい。
【0136】
(電子アクセプター化合物)
電子アクセプター化合物としては、例えば、キノン系化合物、ジイミド系化合物、ヒドラゾン系化合物、マロノニトリル系化合物、チオピラン系化合物、トリニトロチオキサントン系化合物、3,4,5,7-テトラニトロ-9-フルオレノン系化合物、ジニトロアントラセン系化合物、ジニトロアクリジン系化合物、テトラシアノエチレン、2,4,8-トリニトロチオキサントン、ジニトロベンゼン、ジニトロアクリジン、無水コハク酸、無水マレイン酸、及びジブロモ無水マレイン酸が挙げられる。キノン系化合物としては、例えば、ジフェノキノン系化合物、アゾキノン系化合物、アントラキノン系化合物、ナフトキノン系化合物、ニトロアントラキノン系化合物、及びジニトロアントラキノン系化合物が挙げられる。
【0137】
電子アクセプター化合物としては、下記一般式(20)で表される化合物(以下、電子アクセプター化合物(20)と記載することがある)が好ましい。電荷輸送層が電子アクセプター化合物(20)を含有することで、感光体の耐摩耗性、白色光に対する耐光性、帯電特性、及び感度特性をより向上できる。
【0138】
【化27】
【0139】
一般式(20)中、R21、R22、R23、及びR24は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表す。R21、R22、R23、及びR24は、各々独立に、炭素原子数3以上5以下のアルキル基を表すことが好ましい。
【0140】
一般式(20)で表される化合物としては、下記化学式(E-1)で表される化合物(以下、電子アクセプター化合物(E-1)と記載することがある)が好ましい。
【0141】
【化28】
【0142】
電子アクセプター化合物の含有量は、100質量部のバインダー樹脂に対し、0.1質量部以上10質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上5質量部以下であることがより好ましい。
【0143】
電荷輸送層は、1種の電子アクセプター化合物のみを含有してもよく、2種以上の電子アクセプター化合物を含有してもよい。電荷輸送層は、電子アクセプター化合物として、電子アクセプター化合物(20)のみを含有してもよく、電子アクセプター化合物(20)以外の電子アクセプター化合物を更に含有してもよい。
【0144】
(添加剤)
電荷輸送層は、正孔輸送剤、バインダー樹脂、電子アクセプター化合物、及びアゾ化合物(30)のみを含有してもよいし、これら以外の添加剤を更に含有してもよい。電荷輸送層に含有される添加剤の例は、既に述べた電荷発生層に含有される添加剤の例と同じである。また、電荷発生層に露光光を好適に到達させるために、電荷輸送層は、フタロシアニン顔料を含有しないことが好ましく、チタニルフタロシアニン及び無金属フタロシアニンのうちの一方又は両方を含有しないことがより好ましい。
【0145】
(材料の組み合わせ)
耐摩耗性、及び白色光に対する耐光性を向上させるために、ポリアリレート樹脂とアゾ化合物との組み合わせが、表3~表5に示す組み合わせNo.1~192の各々であることが好ましい。表3~表5中、「No.」は組み合わせNo.を示し、「樹脂」はポリアリレート樹脂を示し、「アゾ」はアゾ化合物を示す。
【0146】
【表3】
【0147】
【表4】
【0148】
【表5】
【0149】
耐摩耗性、及び白色光に対する耐光性を向上させるために、ポリアリレート樹脂とアゾ化合物との組み合わせが上記組み合わせNo.1~192の各々であり、正孔輸送剤が正孔輸送剤(HTM-1)であることが好ましい。同じ理由から、ポリアリレート樹脂とアゾ化合物との組み合わせが組み合わせNo.1~192の各々であり、電子アクセプター化合物が電子アクセプター化合物(E-1)であることが好ましい。同じ理由から、ポリアリレート樹脂とアゾ化合物との組み合わせが組み合わせNo.1~192の各々であり、正孔輸送剤が正孔輸送剤(HTM-1)であり、電子アクセプター化合物が電子アクセプター化合物(E-1)であることが好ましい。
【0150】
耐摩耗性、及び白色光に対する耐光性を向上させるために、ポリアリレート樹脂とアゾ化合物との組み合わせが上記組み合わせNo.1~192の各々であり、正孔輸送剤が正孔輸送剤(HTM-1)であり、電荷発生剤がY型チタニルフタロシアニンであることが好ましい。同じ理由から、ポリアリレート樹脂とアゾ化合物との組み合わせが組み合わせNo.1~192の各々であり、電子アクセプター化合物が電子アクセプター化合物(E-1)であり、電荷発生剤がY型チタニルフタロシアニンであることが好ましい。同じ理由から、ポリアリレート樹脂とアゾ化合物との組み合わせが組み合わせNo.1~192の各々であり、正孔輸送剤が正孔輸送剤(HTM-1)であり、電子アクセプター化合物が電子アクセプター化合物(E-1)であり、電荷発生剤がY型チタニルフタロシアニンであることが好ましい。
【0151】
[導電性基体]
導電性基体は、感光体の導電性基体として用いることができる限り、特に限定されない。導電性基体は、少なくとも表面部が導電性を有する材料で構成されていればよい。導電性基体の一例としては、導電性を有する材料で構成される導電性基体が挙げられる。導電性基体の別の例としては、導電性を有する材料で被覆される導電性基体が挙げられる。導電性を有する材料としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、錫、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼、及び真鍮が挙げられる。これらの導電性を有する材料を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて(例えば、合金として)用いてもよい。これらの導電性を有する材料のなかでも、電荷発生層から導電性基体への電荷の移動が良好であることから、アルミニウム及びアルミニウム合金が好ましい。
【0152】
導電性基体の形状は、画像形成装置の構造に合わせて適宜選択される。導電性基体の形状としては、例えば、シート状及びドラム状が挙げられる。また、導電性基体の厚さは、導電性基体の形状に応じて適宜選択される。
【0153】
[中間層]
中間層(下引き層)は、例えば、無機粒子及び中間層に用いられる樹脂(中間層用樹脂)を含有する。中間層が存在することにより、リーク発生を抑制し得る程度の絶縁状態を維持しつつ、感光体を露光した時に発生する電流の流れを円滑にして、抵抗の上昇を抑制できる。
【0154】
無機粒子としては、例えば、金属(例えば、アルミニウム、鉄、及び銅)の粒子、金属酸化物(例えば、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、及び酸化亜鉛)の粒子、及び非金属酸化物(例えば、シリカ)の粒子が挙げられる。これらの無機粒子は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0155】
中間層用樹脂の例は、既に述べたその他のバインダー樹脂の例と同じである。中間層及び感光層を良好に形成するためには、中間層用樹脂は、感光層に含有されるバインダー樹脂及びベース樹脂と異なることが好ましい。中間層は、添加剤を含有してもよい。中間層に含有される添加剤の例は、既に述べたその他の添加剤の例と同じである。
【0156】
[感光体の製造方法]
次に、感光体の製造方法の一例を説明する。感光体の製造方法は、電荷発生層形成工程と、電荷輸送層形成工程とを含む。
【0157】
電荷発生層形成工程では、電荷発生層を形成するための塗布液(以下、電荷発生層形成用塗布液と記載することがある)を調製する。電荷発生層形成用塗布液を導電性基体上に塗布する。次いで、塗布した電荷発生層形成用塗布液に含まれる溶剤の少なくとも一部を除去して、電荷発生層を形成する。電荷発生層形成用塗布液は、例えば、電荷発生剤と、ベース樹脂と、溶剤とを含有する。このような電荷発生層形成用塗布液は、電荷発生剤及びベース樹脂を溶剤に溶解又は分散させることにより調製される。電荷発生層形成用塗布液は、必要に応じて、その他の添加剤を含有してもよい。
【0158】
電荷輸送層形成工程では、電荷輸送層を形成するための塗布液(以下、電荷輸送層形成用塗布液と記載することがある)を調製する。電荷輸送層形成用塗布液を電荷発生層上に塗布する。次いで、塗布した電荷輸送層形成用塗布液に含まれる溶剤の少なくとも一部を除去して、電荷輸送層を形成する。電荷輸送層形成用塗布液は、正孔輸送剤と、バインダー樹脂と、アゾ化合物(30)と、溶剤とを含有する。電荷輸送層形成用塗布液は、正孔輸送剤と、バインダー樹脂と、アゾ化合物(30)とを、溶剤に溶解又は分散させることにより調製することができる。電荷輸送層形成用塗布液は、必要に応じて、電子アクセプター化合物、及び添加剤を更に含有してもよい。
【0159】
電荷発生層形成用塗布液及び電荷輸送層形成用塗布液(以下、包括的に塗布液と記載することがある)に含有される溶剤は、特に限定されない。溶剤の例としては、アルコール(より具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、及びブタノール等)、脂肪族炭化水素(より具体的には、n-ヘキサン、オクタン、及びシクロヘキサン等)、芳香族炭化水素(より具体的には、ベンゼン、トルエン、及びキシレン等)、ハロゲン化炭化水素(より具体的には、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素、及びクロロベンゼン等)、エーテル(より具体的には、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、及びジエチレングリコールジメチルエーテル等)、ケトン(より具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、及びシクロヘキサノン等)、エステル(より具体的には、酢酸エチル、及び酢酸メチル等)、ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド、及びジメチルスルホキシドが挙げられる。これらの溶剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0160】
電荷輸送層形成用塗布液に含有される溶剤は、電荷発生層形成用塗布液に含有される溶剤と、異なることが好ましい。また、電荷輸送層に含有されるバインダー樹脂は、電荷発生層に含有されるベース樹脂と、異なることが好ましい。電荷発生層上に電荷輸送層形成用塗布液を塗布する場合に、電荷発生層が電荷輸送層形成用塗布液の溶剤に溶解しないことが好ましいからである。
【0161】
塗布液は、それぞれ各成分を混合し、溶剤に分散することにより調製される。混合又は分散には、例えば、ビーズミル、ロールミル、ボールミル、アトライター、ペイントシェーカー、又は超音波分散器を用いることができる。
【0162】
各成分の分散性又は形成される各々の層の表面平滑性を向上させるために、塗布液は、例えば、界面活性剤又はレベリング剤を含有してもよい。
【0163】
塗布液を塗布する方法としては、塗布液を均一に塗布できる方法であれば、特に限定されない。塗布方法としては、例えば、ディップコート法、スプレーコート法、スピンコート法、及びバーコート法が挙げられる。
【0164】
塗布液に含まれる溶剤の少なくとも一部を除去する方法としては、塗布液中の溶剤を蒸発させ得る方法であれば、特に限定されない。除去する方法としては、例えば、加熱、減圧、及び加熱と減圧との併用が挙げられる。より具体的には、高温乾燥機、又は減圧乾燥機を用いて、熱処理(熱風乾燥)する方法が挙げられる。熱処理の温度は、例えば、40℃以上150℃以下である。熱処理の時間は、例えば、3分間以上120分間以下の時間である。
【0165】
なお、感光体の製造方法は、必要に応じて中間層を形成する工程を更に含んでいてもよい。中間層を形成する工程は、公知の方法を適宜選択することができる。
【実施例
【0166】
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。しかし、本発明は実施例の範囲に何ら限定されない。
【0167】
(電荷発生剤、正孔輸送剤、及び電子アクセプター化合物)
電荷発生層に含有させる電荷発生剤として、実施形態で述べたY型チタニルフタロシアニンを準備した。電荷輸送層に含有させる正孔輸送剤として、実施形態で述べた正孔輸送剤(HTM-1)を準備した。電荷輸送層に含有させる電子アクセプター化合物として、実施形態で述べた電子アクセプター化合物(E-1)を準備した。
【0168】
(アゾ化合物(30))
アゾ化合物(30)として、実施形態で述べたアゾ化合物(ADD-1)~(ADD-8)を準備した。
【0169】
(比較例で使用するその他の化合物)
比較例で使用するその他の化合物として、下記化学式(ADD-E1)~(ADD-E11)で表される化合物(以下、それぞれを、その他の化合物(ADD-E1)~(ADD-E11)と記載することがある)を準備した。その他の化合物(ADD-E1)~(ADD-E11)は、何れも一般式(30)に包含されず、比較例においてアゾ化合物(30)の代わりに使用された。なお、電子アクセプター化合物(E-1)とその他の化合物(ADD-E1)とは同じ化合物であるが、説明の便宜上、電子アクセプター化合物として使用される場合には「電子アクセプター化合物(E-1)」と、その他の化合物として使用される場合には「その他の化合物(ADD-E1)」と記載する。
【0170】
【化29】
【0171】
【化30】
【0172】
(バインダー樹脂)
バインダー樹脂として、ポリアリレート樹脂(R-1-M1)~(R-1-M4)、(R-2-M1)~(R-10-M1)、(R-1-MA)、(R-3-MA)、及び(R-6-MA)の各々を合成した。各ポリアリレート樹脂のうち、ポリアリレート樹脂(R-1-M1)~(R-1-M4)及び(R-2-M1)~(R-10-M1)は、実施形態で述べたポリアリレート樹脂(PA)に包含されるポリアリレート樹脂である。ポリアリレート樹脂(R-1-M1)~(R-1-M4)及び(R-2-M1)~(R-10-M1)の各々が有する繰り返し単位(1)、繰り返し単位(2)、及び末端基と、比率pとは、上記表2に示した。また、比較例で使用するポリアリレート樹脂(R-1-MA)、(R-3-MA)、及び(R-6-MA)の各々が有する繰り返し単位(1)、繰り返し単位(2)、及び末端基と、比率pとを、下記表6に示す。表6中の末端基の「MA」は、下記化学式(MA)で表される基を示す。以下の説明における各ポリアリレート樹脂の収率は、モル比換算値である。
【0173】
【化31】
【0174】
【表6】
【0175】
(ポリアリレート樹脂(R-1-M1)の合成)
ポリアリレート樹脂(R-1-M1)の合成では、反応容器として、温度計及び三方コックを備える容量2Lの三口フラスコを用いた。反応容器に、化合物(BP-1-1)20.01g(82.56ミリモル)、化合物(T-M1)0.281g(0.826ミリモル)、水酸化ナトリウム7.84g(196ミリモル)、及びベンジルトリブチルアンモニウムクロライド0.240g(0.768ミリモル)を入れた。反応容器内の空気をアルゴンガスで置換した。反応容器の内容物に水600mLを更に加えた。反応容器の内容物を20℃で1時間攪拌した。次いで、反応容器の内容物の温度が10℃になるまで反応容器の内容物を冷却して、アルカリ性水溶液Aを得た。
【0176】
一方、2,6-ナフタレンジカルボン酸ジクロライド(化合物(DC-2-1C)のジクロライド)9.84g(38.9ミリモル)、及び4,4’-オキシビス安息香酸ジクロライド(化合物(DC-2-2A)のジクロライド)11.47g(38.9ミリモル)を、クロロホルム300gに溶解させた。これにより、クロロホルム溶液Bを得た。
【0177】
反応容器内のアルカリ性水溶液Aを10℃で攪拌しながら、アルカリ性水溶液Aにクロロホルム溶液Bを投入した。これにより、重合反応を開始させた。反応容器の内容物の温度(液温)を13±3℃に調節しながら、反応容器の内容物を3時間攪拌して重合反応を進行させた。次いで、反応容器の内容物における上層(水層)をデカントで除去し、有機層を得た。次いで、容量2Lの三角フラスコに、イオン交換水500mLを入れた。このフラスコに、得られた有機層を更に加えた。このフラスコに、クロロホルム300g及び酢酸6mLを更に加えた。次いで、フラスコ内容物を、室温で30分間攪拌した。その後、フラスコ内容物における上層(水層)をデカントで除去し、有機層を得た。分液ロートを用いて、得られた有機層をイオン交換水500mLで洗浄した。イオン交換水による洗浄を8回繰り返し、水洗された有機層を得た。
【0178】
次に、水洗された有機層をろ過し、ろ液を得た。容量3Lのビーカーに1.5Lのメタノールを入れた。ビーカー内のメタノールに、得られたろ液をゆっくりと滴下し、沈殿物を得た。沈殿物をろ過により取り出した。取り出した沈殿物を温度70℃で12時間真空乾燥させた。その結果、ポリアリレート樹脂(R-1-M1)が得られた(収量28.6g、収率82.9%)。ポリアリレート樹脂(R-1-M1)の粘度平均分子量は、50,500であった。
【0179】
ポリアリレート樹脂(R-1-M2)~(R-1-M4)、(R-2-M1)~(R-10-M1)、(R-1-MA)、(R-3-MA)、及び(R-6-MA)については、以下に示す点を変更した以外はポリアリレート樹脂(R-1-M1)の合成と同じ方法により合成した。
【0180】
(ポリアリレート樹脂(R-2-M1)の合成)
ポリアリレート樹脂(R-2-M1)の合成では、化合物(DC-2-2A)のジクロライドを、化合物(DC-2-2B)のジクロライド38.9ミリモルに変更した。得られたポリアリレート樹脂(R-2-M1)の収量が27.8gであり、収率が82.1%であり、粘度平均分子量が52,200であった。
【0181】
(ポリアリレート樹脂(R-3-M1)の合成)
ポリアリレート樹脂(R-3-M1)の合成では、化合物(BP-1-1)を、化合物(BP-1-2)82.56ミリモルに変更した。得られたポリアリレート樹脂(R-3-M1)の収量が31.0gであり、収率が80.1%であり、粘度平均分子量が48,100であった。
【0182】
(ポリアリレート樹脂(R-4-M1)の合成)
ポリアリレート樹脂(R-4-M1)の合成では、化合物(BP-1-1)を、化合物(BP-1-2)82.56ミリモルに変更した。また、ポリアリレート樹脂(R-4-M1)の合成では、化合物(DC-2-1C)のジクロライドの使用量を23.3ミリモルに変更し、化合物(DC-2-2A)のジクロライドの使用量を54.5ミリモルに変更した。得られたポリアリレート樹脂(R-4-M1)の収量が31.3gであり、収率が79.6%であり、粘度平均分子量が47,600であった。
【0183】
(ポリアリレート樹脂(R-5-M1)の合成)
ポリアリレート樹脂(R-5-M1)の合成では、化合物(BP-1-1)を、化合物(BP-1-2)8.26ミリモル及び化合物(BP-1-3)74.30ミリモルに変更した。また、ポリアリレート樹脂(R-5-M1)の合成では、化合物(DC-2-1C)のジクロライドの使用量を7.8ミリモルに変更し、化合物(DC-2-2A)のジクロライドの使用量を70.0ミリモルに変更した。得られたポリアリレート樹脂(R-5-M1)の収量が31.2gであり、収率が80.0%であり、粘度平均分子量が49,500であった。また、得られたポリアリレート樹脂(R-5-M1)は、繰り返し単位(1)として、繰り返し単位(1-2)及び(1-3)の2種を有し、そのモル比(繰り返し単位(1-2):繰り返し単位(1-3))が1:9であった。
【0184】
(ポリアリレート樹脂(R-6-M1)の合成)
ポリアリレート樹脂(R-6-M1)の合成では、化合物(BP-1-1)を、化合物(BP-1-2)82.56ミリモルに変更した。また、ポリアリレート樹脂(R-6-M1)の合成では、化合物(DC-2-2A)のジクロライドを、化合物(DC-2-2B)のジクロライド38.9ミリモルに変更した。得られたポリアリレート樹脂(R-6-M1)の収量が30.5gであり、収率が76.8%であり、粘度平均分子量が48,900であった。
【0185】
(ポリアリレート樹脂(R-7-M1)の合成)
ポリアリレート樹脂(R-7-M1)の合成では、化合物(BP-1-1)を、化合物(BP-1-2)82.56ミリモルに変更した。また、ポリアリレート樹脂(R-7-M1)の合成では、化合物(DC-2-2A)のジクロライドを、化合物(DC-2-2D)のジクロライド38.9ミリモルに変更した。得られたポリアリレート樹脂(R-7-M1)の収量が28.9gであり、収率が78.6%であり、粘度平均分子量が47,600であった。
【0186】
(ポリアリレート樹脂(R-8-M1)の合成)
ポリアリレート樹脂(R-8-M1)の合成では、化合物(BP-1-1)を、化合物(BP-1-4)82.56ミリモルに変更した。得られたポリアリレート樹脂(R-8-M1)の収量が27.8gであり、収率が80.6%であり、粘度平均分子量が55,100であった。
【0187】
(ポリアリレート樹脂(R-9-M1)の合成)
ポリアリレート樹脂(R-9-M1)の合成では、化合物(DC-2-1C)のジクロライドを用いなかった。また、ポリアリレート樹脂(R-9-M1)の合成では、化合物(DC-2-2A)のジクロライドの使用量を77.8ミリモルに変更した。得られたポリアリレート樹脂(R-9-M1)の収量が28.8gであり、収率が79.7%であり、粘度平均分子量が60,000であった。
【0188】
(ポリアリレート樹脂(R-10-M1)の合成)
ポリアリレート樹脂(R-10-M1)の合成では、化合物(BP-1-1)を、化合物(BP-1-2)82.56ミリモルに変更した。また、ポリアリレート樹脂(R-10-M1)の合成では、化合物(DC-2-1C)のジクロライドの使用量を54.5ミリモルに変更し、化合物(DC-2-2A)のジクロライドの使用量を23.3ミリモルに変更した。得られたポリアリレート樹脂(R-10-M1)の収量が30.0gであり、収率が78.9%であり、粘度平均分子量が49,700であった。
【0189】
(ポリアリレート樹脂(R-1-M2)の合成)
ポリアリレート樹脂(R-1-M2)の合成では、化合物(T-M1)を、化合物(T-M2)0.826ミリモルに変更した。得られたポリアリレート樹脂(R-1-M2)の収量が27.5gであり、収率が79.7%であり、粘度平均分子量が53,500であった。
【0190】
(ポリアリレート樹脂(R-1-M3)の合成)
ポリアリレート樹脂(R-1-M3)の合成では、化合物(T-M1)を、化合物(T-M3)0.826ミリモルに変更した。得られたポリアリレート樹脂(R-1-M3)の収量が28.6gであり、収率が82.9%であり、粘度平均分子量が56,100であった。
【0191】
(ポリアリレート樹脂(R-1-M4)の合成)
ポリアリレート樹脂(R-1-M4)の合成では、化合物(T-M1)を、化合物(T-M4)0.826ミリモルに変更した。得られたポリアリレート樹脂(R-1-M4)の収量が28.4gであり、収率が82.4%であり、粘度平均分子量が54,200であった。
【0192】
(ポリアリレート樹脂(R-1-MA)の合成)
ポリアリレート樹脂(R-1-MA)の合成では、化合物(T-M1)を、下記化学式(T-MA)で表される化合物(p-tert-ブチルフェノール、以下、化合物(T-MA)と記載することがある)0.826ミリモルに変更した。ポリアリレート樹脂(R-1-MA)の粘度平均分子量は、58,100であった。
【0193】
【化32】
【0194】
(ポリアリレート樹脂(R-3-MA)の合成)
ポリアリレート樹脂(R-3-MA)の合成では、化合物(BP-1-1)を、化合物(BP-1-2)82.56ミリモルに変更した。また、ポリアリレート樹脂(R-3-MA)の合成では、化合物(T-M1)を、化合物(T-MA)0.826ミリモルに変更した。ポリアリレート樹脂(R-3-MA)の粘度平均分子量は、55,100であった。
【0195】
(ポリアリレート樹脂(R-6-MA)の合成)
ポリアリレート樹脂(R-6-MA)の合成では、化合物(BP-1-1)を、化合物(BP-1-2)82.56ミリモルに変更した。また、ポリアリレート樹脂(R-6-MA)の合成では、化合物(DC-2-2A)のジクロライドを、化合物(DC-2-2B)のジクロライド38.9ミリモルに変更した。また、ポリアリレート樹脂(R-6-MA)の合成では、化合物(T-M1)を、化合物(T-MA)0.826ミリモルに変更した。ポリアリレート樹脂(R-6-MA)の粘度平均分子量は、57,700であった。
【0196】
<感光体の製造>
上記の通り準備した電荷発生剤と、正孔輸送剤と、電子アクセプター化合物と、バインダー樹脂と、アゾ化合物(30)又はその他の化合物とを用いて、感光体(A-1)~(A-22)及び(B-1)~(B-17)を製造した。
【0197】
(感光体(A-1)の製造)
まず、中間層を形成した。表面処理された酸化チタン(テイカ株式会社製「試作品SMT-A」、数平均一次粒径10nm)を準備した。SMT-Aは、アルミナとシリカとを用いて第1コア(酸化チタンコア)を表面処理することにより第2コアを得、湿式分散させながらメチルハイドロジェンポリシロキサンを用いて第2コアを更に表面処理することにより得られた。次いで、SMT-Aの2質量部と、ポリアミド樹脂(東レ株式会社製「アミラン(登録商標)CM8000」、ポリアミド6、ポリアミド12、ポリアミド66及びポリアミド610の四元共重合ポリアミド樹脂)1質量部と、メタノール10質量部と、ブタノール1質量部と、トルエン1質量部とを、ビーズミルを用いて5時間混合して、中間層形成用塗布液を得た。中間層形成用塗布液を、目開き5μmのフィルターを用いてろ過した。その後、ディップコート法により、導電性基体の表面に中間層形成用塗布液を塗布した。導電性基体としては、アルミニウム製のドラム状支持体を用いた。続いて、塗布した中間層形成用塗布液を130℃で30分間乾燥させて、導電性基体上に中間層(膜厚1.5μm)を形成した。
【0198】
次に、電荷発生層を形成した。詳しくは、電荷発生剤であるY型チタニルフタロシアニン1.5質量部と、ベース樹脂であるポリビニルアセタール樹脂(積水化学工業株式会社製「エスレックBX-5」)1.0質量部と、プロピレングリコールモノメチルエーテル40.0質量部と、テトラヒドロフラン40.0質量部とを、ビーズミルを用いて12時間混合して、電荷発生層形成用塗布液を得た。電荷発生層形成用塗布液を、目開き3μmのフィルターを用いてろ過した。ディップコート法により、得られた電荷発生層形成用塗布液を中間層上に塗布し、50℃で5分間乾燥させた。このようにして、中間層上に電荷発生層(膜厚0.3μm)を形成した。
【0199】
次に、電荷輸送層を形成した。詳しくは、正孔輸送剤(HTM-1)45質量部と、バインダー樹脂であるポリアリレート樹脂(R-1-M1)100質量部と、アゾ化合物(ADD-1)4質量部と、電子アクセプター化合物(E-1)2質量部と、テトラヒドロフラン550質量部と、トルエン150質量部とを混合して、電荷輸送層形成用塗布液を得た。ディップコート法により、電荷輸送層形成用塗布液を電荷発生層上に塗布し、120℃で40分間乾燥させた。このようにして、電荷発生層上に電荷輸送層(膜厚30μm)を形成し、感光体(A-1)を得た。感光体(A-1)において、導電性基体上に中間層が、中間層上に電荷発生層が、電荷発生層上に電荷輸送層が備えられていた。
【0200】
(感光体(A-2)~(A-22)及び(B-2)~(B-17)の製造)
表7及び表8に示すポリアリレート樹脂を使用したこと、表7及び表8に示す種類のアゾ化合物又はその他の化合物を使用したこと、並びに表7及び表8に示す量でアゾ化合物又はその他の化合物を添加したこと以外は、感光体(A-1)の製造と同じ方法で、感光体(A-2)~(A-22)及び(B-2)~(B-17)の各々を製造した。
【0201】
既に述べたように、電子アクセプター化合物(E-1)と、その他の化合物(ADD-E1)とは同じ化合物である。感光体(B-4)の製造においては、電子アクセプター化合物(E-1)2質量部とその他の化合物(ADD-E1)4質量部とが使用されたため、同じ化合物が計6質量部使用されたこととなる。
【0202】
(感光体(B-1)の製造)
アゾ化合物(ADD-1)を添加しなかったこと以外は、感光体(A-1)の製造と同じ方法で、感光体(B-1)を製造した。
【0203】
<評価>
評価対象である感光体(A-1)~(A-22)及び(B-1)~(B-17)の各々に対して、以下に示す評価を行った。
【0204】
[感度特性の評価]
感光体の感度特性の評価環境は、温度23℃及び相対湿度50%RHの環境であった。ドラム感度試験機(ジェンテック株式会社製)を用いて、感光体の表面を-550Vに帯電させた。次いで、単色光(波長:780nm、露光量:1.0μJ/cm2)をハロゲンランプの光からバンドパスフィルターを用いて取り出し、感光体の表面に照射した。単色光の照射から50ミリ秒が経過した時点の感光体の表面電位を測定した。測定した表面電位を、感光体の露光後電位VL(単位:-V)とした。各感光体の露光後電位VLを、表7及び表8に示す。露光後電位VLの絶対値が小さい程、感光体の感度特性が優れていることを示す。
【0205】
[帯電特性の評価]
感光体の帯電特性の評価環境は、温度23℃及び相対湿度50%RHの環境であった。以下に示す測定条件で、ドラム感度試験機(ジェンテック株式会社製)を用いて、感光体の表面を帯電させた。帯電条件は、ドラム感度試験機が備える帯電装置がコロトロン帯電器であり、コロトロン帯電器に流れる帯電電流が-5μAであり、感光体の周速が125rpmであり、帯電後に除電が実施される条件であった。帯電させながら感光体を10回転させた時点での感光体の表面電位を測定した。測定した表面電位を、感光体の帯電電位V0(単位:-V)とした。各感光体の帯電電位V0を、表7及び表8に示す。
【0206】
[耐摩耗性の評価]
耐摩耗性の評価に使用した評価機は、カラープリンター(株式会社沖データ製「C711dn」)であった。評価機のトナーカートリッジに、シアントナーを充填した。まず、感光体の電荷輸送層の膜厚T1を測定した。次いで、感光体を評価機に搭載した。次いで、常温常湿環境(温度23℃及び相対湿度50%RH)下で、評価機を用いて、10,000枚の用紙に画像I(印字率1%のパターン画像)を印刷した。高温高湿環境(温度32℃及び相対湿度85%RH)下で、評価機を用いて、10,000枚の用紙に画像Iを印刷した。低温低湿環境(温度10℃及び相対湿度15%RH:以下、LL環境と記載することがある)下で、評価機を用いて、10,000枚の用紙に画像Iを印刷した。LL環境下で印刷した後に、評価機を2時間静置した。次いで、LL環境下にてソリッド画像(画像濃度100%の画像)を1枚の用紙に印刷した。その後、感光体の電荷輸送層の膜厚T2を測定した。そして、印刷前後の電荷輸送層の膜厚変化量である摩耗量(T1-T2、単位:μm)を求めた。求めた摩耗量を、下記表7及び表8に示す。なお、摩耗量が少ないほど、感光体の耐摩耗性が優れていることを示す。摩耗量が2.1μm以下の場合を耐摩耗性が良好と、摩耗量が2.1μm超の場合を耐摩耗性が不良と評価した。
【0207】
[白色光に対する耐光性の評価]
白色蛍光灯(NECライティング株式会社製「FL40SW」)を光源とする強度1000luxmの光を、感光体の周面の一部の領域(縦10mm且つ横10mmの領域)に、1時間曝露した。光を曝露した感光体の周面の領域を、光曝露領域とした。また、光を曝露しなかった感光体の周面の領域を、非光曝露領域とした。1時間光を曝露した直後に、感光体を評価機に搭載し、評価機(レーザープリンター、Samsung社製「MultiXpress SL-K4350LX」)を用いて1枚の用紙に画像II(印字率30%のハーフトーン画像)を印刷した。印刷された画像IIを観察し、下記基準に従って、白色光に対する耐光性を評価した。評価結果を、表7及び表8に示す。評価がA及びBである場合を白色光に対する耐光性が良好と、評価がCである場合を白色光に対する耐光性が不良と評価した。
【0208】
(白色光に対する耐光性の評価基準)
評価A:光曝露領域に対応する画像領域と、非光曝露領域に対応する画像領域との間に、画像濃度差が確認されない。
評価B:光曝露領域に対応する画像領域と、非光曝露領域に対応する画像領域との間に、画像濃度差が若干確認される。
評価C:光曝露領域に対応する画像領域と、非光曝露領域に対応する画像領域との間に、画像濃度差が明確に確認される。
【0209】
表7及び表8中の各用語の意味は、次のとおりである。「樹脂」は、ポリアリレート樹脂を示す。「アゾ等」は、アゾ化合物又はその他の化合物を示す。「感度」は、感度特性の評価を示す。「帯電」は、帯電特性の評価を示す。「耐光性」は、白色光に対する耐光性の評価を示す。「部」は、質量部を示す。
【0210】
【表7】
【0211】
【表8】
【0212】
表7に示すように、感光体(A-1)~(A-22)の各々は、次に示す構成を有していた。詳しくは、電荷発生層は、電荷発生剤を含有し、電荷輸送層は、正孔輸送剤とバインダー樹脂とアゾ化合物(30)(より具体的には、アゾ化合物(ADD-1)~(ADD-8)のうちの1種)とを含有していた。アゾ化合物(30)の含有量は、100質量部のバインダー樹脂に対して、2質量部以上5質量部以下であった。電荷輸送層は、バインダー樹脂として、ポリアリレート樹脂(PA)(より具体的には、ポリアリレート樹脂(R-1-M1)~(R-1-M4)及び(R-2-M1)~(R-10-M1)のうちの1種)を含有していた。
【0213】
このため、感光体(A-1)~(A-22)の摩耗量は2.1μm以下であり、これらの感光体の耐摩耗性は良好であった。また、感光体(A-1)~(A-22)の白色光に対する耐光性の評価結果は「A」又は「B」であり、これらの感光体の白色光に対する耐光性は良好であった。
【0214】
更に、感光体(A-1)~(A-22)は、耐摩耗性及び白色光に対する耐光性に優れていただけでなく、感度特性及び帯電特性が損なわれることなく、実使用可能な程度に維持できていた。
【0215】
以上のことから、本発明に係る感光体は、耐摩耗性、及び白色光に対する耐光性に優れることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0216】
本発明に係る感光体は、画像形成装置に利用できる。
【符号の説明】
【0217】
1 :感光体(電子写真感光体)
2 :導電性基体
3 :感光層
3a:電荷発生層
3b:電荷輸送層
図1
図2
図3