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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/03 20060101AFI20230829BHJP
   B60C 5/00 20060101ALI20230829BHJP
   B60C 11/13 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
B60C11/03 300B
B60C5/00 H
B60C11/03 B
B60C11/13 B
B60C11/13 C
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019211486
(22)【出願日】2019-11-22
(65)【公開番号】P2021079913
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】小林 裕佳子
(72)【発明者】
【氏名】河越 義史
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-224245(JP,A)
【文献】国際公開第2012/133559(WO,A1)
【文献】特開2001-39122(JP,A)
【文献】特開2003-159910(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0095387(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 5/00、11/00-11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、第1陸部を含み、
前記第1陸部は、第1縦エッジと、第2縦エッジと、前記第1縦エッジと前記第2縦エッジとの間の踏面とを含み、
前記踏面には、
前記第2縦エッジから前記第1縦エッジ側に延びる第1傾斜溝と、
前記第2縦エッジから前記第1縦エッジ側に、前記第1傾斜溝と逆向きの傾斜で延びる第2傾斜溝と、
前記第1傾斜溝及び前記第2傾斜溝並びに前記第2縦エッジで区分された三角形状ブロックとが形成され、
前記三角形状ブロックには、前記第2縦エッジ側に凸で湾曲する曲線溝が形成されている、
タイヤ。
【請求項2】
前記三角形状ブロックは、タイヤ赤道上に配置されている、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記第1傾斜溝と前記第2傾斜溝とは、互いに連通している、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記曲線溝は、前記第1傾斜溝及び前記第2傾斜溝に連通している、請求項1ないし3のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項5】
前記曲線溝は、前記第1陸部のタイヤ軸方向の中心位置よりも前記第2縦エッジ側で前記第1傾斜溝及び前記第2傾斜溝に連通している、請求項1ないし4のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項6】
前記三角形状ブロックは、前記第1傾斜溝、前記第2傾斜溝及び前記曲線溝に区分された先端部を含み、
前記先端部のタイヤ軸方向の長さは、前記三角形状ブロックのタイヤ軸方向の長さの30%~70%である、請求項1ないし5のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項7】
前記第1傾斜溝は、前記第1縦エッジに連通している、請求項1ないし6のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項8】
前記第2傾斜溝は、前記第1陸部内で途切れている、請求項1ないし7のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項9】
前記曲線溝は、15~30mmの曲率半径で湾曲している、請求項1ないし8のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項10】
前記曲線溝の溝幅は、2~5mmである、請求項1ないし9のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項11】
車両への装着の向きが指定され、
前記トレッド部は、車両装着時に車両外側となる第1トレッド端と、車両装着時に車両内側となる第2トレッド端と、前記第1トレッド端とタイヤ赤道との間でタイヤ周方向に連続して延びる第1ショルダー主溝と、前記第1ショルダー主溝の前記第2トレッド端側に隣接するクラウン主溝とを含み、
前記第1陸部は、前記第1ショルダー主溝と前記クラウン主溝との間に区分されている、請求項1ないし10のいずれかに記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、溝及びサイプの配置を改善することにより、ドライ路面及びウェット路面での操縦安定性を向上させたタイヤが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-140047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、車両の高性能化に伴い、より優れたウェット性能がタイヤに要求されている。一方、溝の配置によっては、ウェット性能の向上に伴ってドライ路面での操縦安定性が損なわれる場合がある。
【0005】
本発明は、以上のような問題点に鑑み案出なされたもので、ドライ路面での操縦安定性を維持しつつ優れたウェット性能を発揮し得るタイヤを提供することを主たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、トレッド部を有するタイヤであって、前記トレッド部は、第1陸部を含み、
前記第1陸部は、第1縦エッジと、第2縦エッジと、前記第1縦エッジと前記第2縦エッジとの間の踏面とを含み、前記踏面には、前記第2縦エッジから前記第1縦エッジ側に延びる第1傾斜溝と、前記第2縦エッジから前記第1縦エッジ側に、前記第1傾斜溝と逆向きの傾斜で延びる第2傾斜溝と、前記第1傾斜溝及び前記第2傾斜溝並びに前記第2縦エッジで区分された三角形状ブロックとが形成され、前記三角形状ブロックには、前記第2縦エッジ側に凸で湾曲する曲線溝が形成されている。
【0007】
本発明のタイヤにおいて、前記三角形状ブロックは、タイヤ赤道上に配置されているのが望ましい。
【0008】
本発明のタイヤにおいて、前記第1傾斜溝と前記第2傾斜溝とは、互いに連通しているのが望ましい。
【0009】
本発明のタイヤにおいて、前記曲線溝は、前記第1傾斜溝及び前記第2傾斜溝に連通しているのが望ましい。
【0010】
本発明のタイヤにおいて、前記曲線溝は、前記第1陸部のタイヤ軸方向の中心位置よりも前記第2縦エッジ側で前記第1傾斜溝及び前記第2傾斜溝に連通しているのが望ましい。
【0011】
本発明のタイヤにおいて、前記三角形状ブロックは、前記第1傾斜溝、前記第2傾斜溝及び前記曲線溝に区分された先端部を含み、前記先端部のタイヤ軸方向の長さは、前記三角形状ブロックのタイヤ軸方向の長さの30%~70%であるのが望ましい。
【0012】
本発明のタイヤにおいて、前記第1傾斜溝は、前記第1縦エッジに連通しているのが望ましい。
【0013】
本発明のタイヤにおいて、前記第2傾斜溝は、前記第1陸部内で途切れているのが望ましい。
【0014】
本発明のタイヤにおいて、前記曲線溝は、15~30mmの曲率半径で湾曲しているのが望ましい。
【0015】
本発明のタイヤにおいて、前記曲線溝の溝幅は、2~5mmであるのが望ましい。
【0016】
本発明のタイヤにおいて、車両への装着の向きが指定され、前記トレッド部は、車両装着時に車両外側となる第1トレッド端と、車両装着時に車両内側となる第2トレッド端と、前記第1トレッド端とタイヤ赤道との間でタイヤ周方向に連続して延びる第1ショルダー主溝と、前記第1ショルダー主溝の前記第2トレッド端側に隣接するクラウン主溝とを含み、前記第1陸部は、前記第1ショルダー主溝と前記クラウン主溝との間に区分されているのが望ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明のタイヤの第1陸部の踏面には、前記第1陸部の第2縦エッジから第1縦エッジ側に延びる第1傾斜溝と、前記第2縦エッジから前記第1縦エッジ側に、前記第1傾斜溝と逆向きの傾斜で延びる第2傾斜溝と、前記第1傾斜溝及び前記第2傾斜溝で区分された三角形状ブロックとが形成されている。また、前記三角形状ブロックは、前記第2縦エッジ側に凸で湾曲する曲線溝が形成されている。
【0018】
本発明のタイヤは、ウェット走行時、傾斜の向きが異なる前記第1傾斜溝及び前記第2傾斜溝並びに曲線溝が優れた排水性を発揮する一方、前記三角形状ブロックのエッジが多方向に摩擦力を提供する。したがって、本発明のタイヤは、優れたウェット性能を発揮できる。
【0019】
また、前記曲線溝は、前記三角形状ブロックの第1傾斜溝及び第2傾斜溝で挟まれたテーパー状部分の過度な剛性低下を抑制する。したがって、本発明のタイヤは、ドライ路面での操縦安定性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態のタイヤのトレッド部の展開図である。
図2図1の第1陸部の拡大図である。
図3図2のA-A線断面図である。
図4図2のB-B線断面図である。
図5】曲線溝の輪郭の拡大図である。
図6図5のC-C線断面図である。
図7図5のD-D線断面図である。
図8図7の第4タイバーの横断面図である。
図9図5のE-E線断面図である。
図10図2の三角形状ブロックの拡大図である。
図11】第2陸部及び第4陸部の拡大図である。
図12】第3陸部の拡大図である。
図13】比較例のタイヤの第1陸部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。図1は、本発明の一実施形態を示すタイヤ1のトレッド部2の展開図である。本実施形態のタイヤ1は、例えば、乗用車用の空気入りタイヤとして好適に使用される。但し、本発明は、このような態様に限定されるものではなく、重荷重用の空気入りタイヤや、タイヤの内部に加圧された空気が充填されない非空気式タイヤに用いられても良い。
【0022】
図1に示されるように、本実施形態のタイヤ1は、車両への装着の向きが指定されたトレッド部2を有する。トレッド部2は、タイヤ1の車両装着時に車両外側に位置する第1トレッド端Te1と、車両装着時に車両内側に位置する第2トレッド端Te2とを有する。車両への装着の向きは、例えば、サイドウォール部(図示省略)に、文字又は記号で表示される。
【0023】
第1トレッド端Te1及び第2トレッド端Te2は、空気入りタイヤの場合、正規状態のタイヤ1に正規荷重が負荷されキャンバー角0°で平面に接地したときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置である。正規状態とは、タイヤが正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも、無負荷の状態である。本明細書において、特に断りがない場合、タイヤ各部の寸法等は、前記正規状態で測定された値である。
【0024】
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば"Measuring Rim" である。
【0025】
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0026】
「正規荷重」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。
【0027】
トレッド部2は、第1トレッド端Te1と第2トレッド端Te2との間でタイヤ周方向に連続して延びる複数の主溝3と、これらの主溝3に区分された複数の陸部4とで構成されている。本実施形態のトレッド部2は、3本の主溝3と、4つの陸部4とで構成されている。但し、本発明のタイヤは、このような態様に限定されるものではない。
【0028】
主溝3は、第1トレッド端Te1とタイヤ赤道Cとの間に配された第1ショルダー主溝5と、第2トレッド端Te2とタイヤ赤道Cとの間に配された第2ショルダー主溝6と、第1ショルダー主溝5と第2ショルダー主溝6との間に配されたクラウン主溝7とを含む。
【0029】
タイヤ赤道Cから第1ショルダー主溝5又は第2ショルダー主溝6の溝中心線までのタイヤ軸方向の距離Laは、例えば、トレッド幅TWの0.20~0.35倍であるのが望ましい。タイヤ赤道Cからクラウン主溝7の溝中心線までのタイヤ軸方向の距離Lbは、例えば、トレッド幅TWの0.15倍以下であるのが望ましい。トレッド幅TWは、前記正規状態での第1トレッド端Te1から第2トレッド端Te2までのタイヤ軸方向の距離である。
【0030】
本実施形態のクラウン主溝7は、例えば、タイヤ赤道Cよりも第2トレッド端Te2側に設けられている。但し、クラウン主溝7の位置は、このような態様に限定されるものではない。
【0031】
本実施形態の各主溝3は、例えば、タイヤ周方向に平行に直線状に延びている。各主溝3は、例えば、波状に延びるものでも良い。
【0032】
各主溝3の溝幅Waは、例えば、トレッド幅TWの5.0%~8.0%であるのが望ましい。なお、本明細書において、溝幅とは、溝中心線と直交する方向の溝縁間の距離である。望ましい態様では、第2ショルダー主溝6の溝幅は、第1ショルダー主溝5の溝幅よりも大きく、クラウン主溝7の溝幅は、第2ショルダー主溝6の溝幅よりも大きい。各主溝3の深さは、乗用車用の空気入りタイヤの場合、例えば、5~10mmであるのが望ましい。
【0033】
陸部4は、第1陸部11と、第2陸部12と、第3陸部13と、第4陸部14とで構成されている。第1陸部11は、第1ショルダー主溝5とクラウン主溝7との間に区分されている。第2陸部12は、第2ショルダー主溝6とクラウン主溝7との間に区分されている。第3陸部13は、第1ショルダー主溝5と第1トレッド端Te1との間に区分されている。第4陸部14は、第2ショルダー主溝6と第2トレッド端Te2との間に区分されている。
【0034】
図2には、第1陸部11の拡大図が示されている。図2に示されているように、本実施形態の第1陸部11は、4つの陸部4の中で最も大きいタイヤ軸方向の幅W1を有している。4つの陸部で構成されたトレッド部2は、直進時及び旋回時において第1陸部11に大きな接地圧が作用するが、本実施形態では、第1陸部11が4つの陸部の中で最も大きいタイヤ軸方向の幅を有し、高い剛性を持つ。したがって、ドライ路面での操縦安定性が向上する。第1陸部11の前記幅W1は、例えば、トレッド幅TW(図1に示され、以下、同様である。)の0.25~0.40倍であるのが望ましい。
【0035】
第1陸部11は、第1縦エッジ11a、第2縦エッジ11b、及び、第1縦エッジ11aと第2縦エッジ11bとの間の踏面11cを含む。第1縦エッジ11aは、第1陸部11の第1ショルダー主溝5側の縦エッジであり、第2縦エッジ11bは、第1陸部11のクラウン主溝7側の縦エッジである。
【0036】
第1陸部11の踏面11cには、例えば、複数の第1傾斜溝21及び複数の第2傾斜溝22が設けられている。
【0037】
第1傾斜溝21は、例えば、タイヤ軸方向に対して第1方向(図2では右上がりである。)に傾斜して延びている。第1傾斜溝21は、第2縦エッジ11bから第1縦エッジ11a側に延びている。本実施形態の第1傾斜溝21は、第2縦エッジ11bから第1縦エッジ11aまで延び、第1陸部11を横断している。第1傾斜溝21は、例えば、タイヤ軸方向に対して10~60°の角度θ1で傾斜している。第1傾斜溝21のタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、第2縦エッジ11b側に向かって漸増しているのが望ましい。本実施形態の第1傾斜溝21は、例えば、50~150mmの曲率半径で円弧状に湾曲している。このような第1傾斜溝21は、ウェット走行時、多方向に摩擦力を提供できる。
【0038】
第2傾斜溝22は、第2縦エッジ11bから第1縦エッジ11a側に、前記第1方向とは逆向きの第2方向(図2では右下がりである。)に傾斜し、第1陸部11内で途切れている。第2傾斜溝22は、例えば、タイヤ軸方向に対して10~60°の角度θ2で傾斜している。第2傾斜溝22のタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、第1縦エッジ11a側に向かって漸増しているのが望ましい。本実施形態の第2傾斜溝22は、例えば、50~150mmの曲率半径で円弧状に湾曲している。
【0039】
第1陸部11の踏面11cには、第1傾斜溝21及び第2傾斜溝22並びに第2縦エッジ11bで区分された三角形状ブロック35が形成されている。三角形状ブロック35は、三角形状の踏面を有している。三角形状ブロック35は、例えば、タイヤ赤道C上に配置されている。本実施形態では、三角形状ブロック35が第1陸部11のタイヤ軸方向の中心位置20上にも配置されている。三角形状ブロック35は、その踏面の面積の50%以上が前記中心位置20よりも第2トレッド端Te2側に配されているのが望ましい。
【0040】
三角形状ブロック35には、前記第2縦エッジ側に凸で湾曲する曲線溝15が形成されている。本実施形態の曲線溝15は、第1縦エッジ11a側の第1端15aから延び、かつ第1陸部11内の第2端15bで途切れており、三角形状ブロック35を横切る部分において、第2縦エッジ側に凸で湾曲している。
【0041】
本発明のタイヤは、ウェット走行時、傾斜の向きが異なる第1傾斜溝21及び第2傾斜溝22並びに曲線溝15が優れた排水性を発揮する一方、三角形状ブロック35のエッジが多方向に摩擦力を提供する。したがって、本発明のタイヤは、優れたウェット性能を発揮できる。
【0042】
また、曲線溝15は、三角形状ブロック35の第1傾斜溝21及び第2傾斜溝22で挟まれたテーパー状部分の過度な剛性低下を抑制する。したがって、本発明のタイヤは、ドライ路面での操縦安定性を維持することができる。
【0043】
以下、本実施形態のタイヤの具体的な構成が説明される。図3には、図2の第1傾斜溝21のA-A線断面図が示されている。図3に示されるように、第1傾斜溝21は、第1縦エッジ11a(図2に示され、以下、同様である。)側で溝底が隆起した第1タイバー23を含んでいる。本実施形態の第1タイバー23は、例えば、第1傾斜溝21の第1縦エッジ11a側の端部に設けられている。第1タイバー23は、例えば、第1傾斜溝21の長さ方向に一定の深さを有している。第1タイバー23の深さd2は、第1傾斜溝21の最大の深さd1の45%~60%である。このような第1タイバー23を含む第1傾斜溝21は、第1陸部11の剛性低下を抑制しつつ、ウェット性能を高めることができる。
【0044】
図2に示されるように、第2傾斜溝22は、例えば、第1傾斜溝21と連通しており、望ましくは第1傾斜溝21と交差している。本実施形態の第2傾斜溝22は、第1陸部11のタイヤ軸方向の中心位置20よりも第1縦エッジ11a側で第1傾斜溝21と交差している。より望ましい態様では、第2傾斜溝22は、第1傾斜溝21の第1タイバー23(図3に示す)よりも第2縦エッジ11b側で第1傾斜溝21と交差している。このような第2傾斜溝22は、第1傾斜溝21と共に優れた排水性を発揮し得る。
【0045】
図4には、図2の第2傾斜溝22のB-B線断面図が示されている。図4に示されるように、第2傾斜溝22は、第1縦エッジ11aの端部で溝底が隆起した第2タイバー24を含んでいる。本実施形態の第2タイバー24は、例えば、傾斜した底面を有し、その深さが第1縦エッジ11a側に漸減している。第2タイバー24の最大の深さd4は、第2傾斜溝22の最大の深さd3の60%~75%であり、望ましくは第1タイバー23の深さd2(図3に示す)よりも大きい。第2タイバー24の最小の深さd5は、第2傾斜溝22の最大の深さd3の35%~45%であり、望ましくは第1タイバー23の深さd2よりも小さい。このような第2タイバー24を含む第2傾斜溝22は、ドライ路面での操縦安定性とウェット性能とをバランス良く高めるのに役立つ。
【0046】
図2に示されるように、第1陸部11には、曲線溝15がタイヤ周方向に複数配置されている。曲線溝15は、例えば、第1端15a側の第1曲線部16と、第2端15b側の第2曲線部17とを含む。第1曲線部16は、曲線溝15の第1縦エッジ11a側に中心を有する曲率半径の円弧曲線である。第2曲線部17は、曲線溝15の第2縦エッジ11b側に中心を有する曲率半径の円弧曲線である。このような曲線溝15は、第1曲線部16及び第2曲線部17のエッジが多方向に摩擦力を提供し、ウェット性能を高めることができる。
【0047】
曲線溝15は、曲線溝15は、タイヤ周方向で隣り合う曲線溝15に交差している。本実施形態の曲線溝15は、第1端15aから延びて第2傾斜溝22と交差している。また、曲線溝15は、前記第2傾斜溝22から第2端15b側に延び、前記第2傾斜溝22と交差する第1傾斜溝21と交差している。また、曲線溝15は、前記第1傾斜溝21から第2端15b側に延び、タイヤ周方向で隣り合う曲線溝15と交差している。また、曲線溝15の第2端15bは、第1縦エッジ11aと第1陸部11のタイヤ軸方向の中心位置20との間に位置している。望ましい態様では、曲線溝15の第2端15bは、第2傾斜溝22の途切れ端よりも第2縦エッジ11b側に位置している。
【0048】
曲線溝15の溝幅は、第1端15aから第2端15bに向かって漸減しているのが望ましい。曲線溝15の溝幅は、例えば、2~mmである。
【0049】
図5には、曲線溝15の輪郭の拡大図が示されている。図5では、曲線溝15の構成を理解し易いように、他の溝は曲線溝15と交差する部分を除いて省略されている。図5に示されるように、曲線溝15の第1曲線部16は、例えば、第1陸部11のタイヤ軸方向の中心位置20を横切っている。第1曲線部16は、例えば、第1端15aと前記第1傾斜溝21との間に構成され、前記第2傾斜溝22と交差している。第1曲線部16の曲率半径は、例えば、10~30mmである。
【0050】
第1曲線部16は、第1端15aから前記第2傾斜溝22まで延びる第1部分26と前記第2傾斜溝22から前記第1傾斜溝21まで延びる第2部分27とを含んでいる。第1部分26及び第2部分27は、それぞれ、湾曲している。本実施形態では、第1部分26は、例えば、第1方向に傾斜して延び、1傾斜溝21に沿って延びている。第2部分27は、上述の三角形状ブロック35を横断し、第2縦エッジ11b側に凸で湾曲している。
【0051】
第2部分27の溝幅は、例えば、2~5mmである。第2部分27は、例えば、15~30mmの曲率半径で湾曲している。第2部分27の曲率半径は、第1部分26の曲率半径よりも小さいのが望ましい。このような第2部分27を含む曲線溝15は、ウェット性能をさらに高めるのに役立つ。
【0052】
第1曲線部16のタイヤ周方向の長さL2は、曲線溝15のタイヤ周方向の長さL1の望ましくは30%以上、より望ましくは40%以上であり、望ましくは70%以下、より望ましくは60%以下である。なお、曲線溝15の各長さは、例えば、溝中心線で測定されるものとする。
【0053】
図6には、図5の第1部分26のC-C線断面図が示されている。図6に示されるように、第1部分26は、例えば、曲線溝15の第1端15a側で溝底が隆起した第3タイバー28が設けられているのが望ましい。第1部分26の第3タイバー28には、第1傾斜溝21の第1タイバー23の構成を適用することができる。このような第1部分26は、、ドライ路面での操縦安定性を維持しつつ、ウェット性能を高めることができる。
【0054】
図7には、図5の第2部分27のD-D線断面図が示されている。図7に示されるように、第2部分27には、その長さ方向の中央部で溝底が隆起した第4タイバー29が設けられている。第4タイバー29の深さd7は、第2部分27の最大の深さd6の50%~70%である。
【0055】
図8には、第2部分27の長さ方向と直交する第4タイバー29の横断面図が示されている。図8に示されるように、第4タイバー29には、溝底で開口して第2部分27の長さ方向に延びる溝底サイプ31が設けられているのが望ましい。このような溝底サイプ31は、第2部分27の排水性を維持しつつ、第1陸部11の剛性を高めることができる。なお、本明細書において、「サイプ」とは、幅が1.5mm以下の切れ込みを意味する。
【0056】
図5に示されるように、曲線溝15の第2曲線部17は、例えば、第2方向に傾斜して延び、本実施形態では第2傾斜溝22に沿って延びている。第2曲線部17は、例えば、第1陸部11のタイヤ軸方向の中心位置20を横切っている。第2曲線部17は、例えば、前記第1傾斜溝21と第2端15bとの間に構成され、タイヤ周方向で隣り合う曲線溝15と交差している。
【0057】
第2曲線部17の曲率半径は、第1曲線部16の曲率半径よりも大きいのが望ましい。第2曲線部17の曲率半径は、例えば、30~60mmである。これにより、ウェット走行時、第2曲線部17内において水が移動し易くなり、ウェット性能がさらに向上する。
【0058】
第2曲線部17のタイヤ周方向の長さL3は、第1曲線部16のタイヤ周方向の長さL2よりも小さい。第2曲線部17の前記長さL3は、曲線溝15のタイヤ周方向の長さL1の望ましくは20%以上、より望ましくは30%以上であり、望ましくは50%以下、より望ましくは40%以下である。
【0059】
図9には、第2曲線部17のE-E線断面図が示されている。図に示されるように、第2曲線部17は、例えば、第1傾斜溝21側の端部に溝底が隆起した第5タイバー30が設けられている。第5タイバー30の深さd9は、例えば、第2曲線部17の最大の深さd8の50%~70%である。このような第5タイバー30を有する第2曲線部17は、ドライ路面での操縦安定性とウェット性能とをバランス良く高めるのに役立つ。
【0060】
本実施形態の第2曲線部17の第2端15b側の先端部32は、第2端15b側に向かって深さが漸減している。これにより、先端部32は、円弧状に湾曲した底面を有している。これにより、先端部32周辺での偏摩耗が抑制される。
【0061】
図2に示されるように、上述の第1傾斜溝21、第2傾斜溝22及び曲線溝15が設けられることにより、第1陸部11は、複数のブロックに区分されている。本実施形態の第1陸部11は、2本の第1傾斜溝21に間に区分された複数のブロック要素33を含んでいる。
【0062】
ブロック要素33は、例えば、踏面が略四角形状である四角形状ブロック34と、上述の三角形状ブロック35とで構成されている。四角形状ブロック34は、第1縦エッジ11aの一部を含み、2本の第1傾斜溝21及び第2傾斜溝22に区分されている。
【0063】
四角形状ブロック34には、例えば、第1方向に傾斜した複数のサイプ40が設けられている。各サイプ40は、例えば、第1傾斜溝21に沿って延びている。四角形状ブロック34に設けられたサイプ40は、例えば、第1サイプ41、第2サイプ42及び第3サイプ43を含んでいる。第1サイプ41は、第1縦エッジ11aから第2傾斜溝22まで延びている。第2サイプ42は、第1縦エッジ11aから曲線溝15の第2曲線部17まで延びている。第3サイプ43は、第2曲線部17から第2傾斜溝22まで延びている。このような各サイプ40は、第1陸部11の偏摩耗を抑制しつつ、ウェット走行時に摩擦力を提供することができる。
【0064】
図10には、三角形状ブロック35の拡大図が示されている。三角形状ブロック35のタイヤ軸方向の長さL4は、例えば、第1陸部11のタイヤ軸方向の幅W1(図2に示す)の0.50~0.80倍である。
【0065】
三角形状ブロック35は、例えば、曲線溝15の第1曲線部16の第2部分27が横断している。望ましい態様では、曲線溝15は、第1陸部11のタイヤ軸方向の中心位置20(図2に示す)よりも第2縦エッジ11b側で第1傾斜溝21及び第2傾斜溝22に連通し、三角形状ブロック35を横断している。これにより、三角形状ブロック35は、第1傾斜溝21、第2傾斜溝22及び前記第2部分27によって区分された先端部36を含んでいる。先端部36のタイヤ軸方向の長さL5は、例えば、三角形状ブロック35のタイヤ軸方向の長さL4の望ましくは30%以上、より望ましくは40%以上であり、望ましくは70%以下、より望ましくは60%以下である。このような三角形状ブロック35は、タイヤ軸方向の剛性が確保され、ドライ路面での操縦安定性を維持することができる。
【0066】
先端部36において、第1傾斜溝21側のエッジ36aと第2傾斜溝22側のエッジ36bとの間の角度θ3は、例えば、40~80°である。このような先端部36は、走行時の三角形状ブロック35のチッピングを抑制しつつ、ウェット性能を高めることができる。なお、前記角度θ3は、先端部36の頂点36cにおける前記エッジ36aの接線と、前記頂点36cにおける前記エッジ36bの接線との間の角度に相当する。
【0067】
三角形状ブロック35には、第2方向に傾斜した第4サイプ44及び第5サイプ45が設けられているのが望ましい。第4サイプ44及び第5サイプ45は、第2縦エッジ11bから延び、第1曲線部16の第2部分27の手前で途切れている。第5サイプ45のタイヤ軸方向の長さは、第4サイプ44のタイヤ軸方向の長さよりも大きい。
【0068】
図11には、第2陸部12及び第4陸部14の拡大図が示されている。図11に示されるように、第2陸部12のタイヤ軸方向の幅W2、及び、第4陸部14のタイヤ軸方向の幅W4は、それぞれ、トレッド幅TWの0.10~0.20倍であるのが望ましい。
【0069】
第2陸部12には、複数の第1横溝46及び途切れ溝47が設けられている。第1横溝46は、例えば、第2陸部12を完全に横断している。途切れ溝47は、例えば、第2ショルダー主溝6から延び第2陸部12内で途切れている。このような第1横溝46及び途切れ溝47は、ドライ路面での操縦安定性とウェット性能とをバランス良く高めるのに役立つ。
【0070】
望ましい態様では、第1横溝46のクラウン主溝7側の端部は、第1傾斜溝21の第2縦エッジ11b側の端部をタイヤ軸方向に平行に延長した領域と重複するのが望ましい。また、第1横溝46は、第2傾斜溝22をその傾斜の向き及び曲率を保ったまま延長した領域と重複しているのが望ましい。これにより、第1横溝46が第1傾斜溝21や第2傾斜溝22と共に優れた排水性を発揮し、ウェット性能がさらに高められる。
【0071】
本実施形態の第2陸部12には、途切れ溝47からクラウン主溝7まで延びる接続サイプ48と、第2ショルダー主溝6から延び第2陸部12内で途切れる途切れサイプ49と、このような接続サイプ48及び途切れサイプ49は、第2陸部12の偏摩耗を抑制しつつ、ウェット走行時に摩擦力を提供できる。
【0072】
第4陸部14には、複数の第2横溝50及び複数の第1横断サイプ51が設けられている。第2横溝50及び第1横断サイプ51は、それぞれ、第4陸部14を横断している。
【0073】
第2横溝50の第2ショルダー主溝6側の端部は、第2陸部12に設けられた第1横溝46又は途切れ溝47の第2ショルダー主溝6側の端部をタイヤ軸方向に平行に延長した領域と重複するのが望ましい。これにより、ウェット走行時、第2横溝50と第1横溝46又は途切れ溝47とが一体となって優れた排水性を発揮する。
【0074】
図12には、第3陸部13の拡大図が示されている。図12に示されるように、第3陸部13のタイヤ軸方向の幅W3は、例えば、トレッド幅TWの0.10~0.25倍である。望ましい態様では、第3陸部13の前記幅W3は、第2陸部12のタイヤ軸方向の幅W2及び第4陸部14のタイヤ軸方向の幅W4(図11に示す。)よりも大きい。
【0075】
第3陸部13には、複数の第3横溝53及び第2横断サイプ54が設けられている。第3横溝53及び第2横断サイプ54は、それぞれ、第3陸部13を横断している。
【0076】
第3横溝53の第1ショルダー主溝5側の端部は、第1陸部11に設けられた第1傾斜溝21又は曲線溝15の第1ショルダー主溝5側の端部をタイヤ軸方向に平行に延長した領域と重複するのが望ましい。これにより、ウェット走行時、第3横溝53と第1傾斜溝21又は曲線溝15とが一体となって優れた排水性を発揮する。
【0077】
以上、本発明の一実施形態のタイヤが詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
【実施例
【0078】
図1の基本パターンを有するサイズ215/60R16のタイヤが試作された。比較例として、図13に示される第1陸部aを有するタイヤが試作された。比較例のタイヤは、三角形状ブロックbに直線状に延びる溝cが形成されている。なお、比較例のタイヤは、上記の事項を除き、図1に示されるものと実質的に同じパターンを具えている。各テストタイヤのドライ路面での操縦安定性及びウェット性能がテストされた。各テストタイヤの共通仕様やテスト方法は、以下の通りである。
装着リム:16×6.5
タイヤ内圧:240kPa
テスト車両:排気量2500cc、前輪駆動車
タイヤ装着位置:全輪
【0079】
<ドライ路面での操縦安定性>
上記テスト車両でドライ路面を走行したときの操縦安定性が、運転者の官能により評価された。結果は、比較例を100とする評点であり、数値が大きい程、ドライ路面での操縦安定性が優れていることを示す。前記評点は、95点以上が許容範囲であり、98点以上がより望ましい。
【0080】
<ウェット性能>
上記テスト車両でウェット路面を走行したときの性能が、運転者の官能により評価された。結果は、比較例を100とする評点であり、数値が大きい程、ウェット性能が優れていることを示す。前記評点は、95点以上が許容範囲であり、98点以上がより望ましい。
テスト結果が表1に示される。
【0081】
【表1】
【0082】
テストの結果、実施例のタイヤは、ドライ路面での操縦安定性が望ましい範囲に維持されつつ、優れたウェット性能を発揮しており、タイヤの総合性能が向上していることが確認できた。
【符号の説明】
【0083】
2 トレッド部
11 第1陸部
11a 第1縦エッジ
11b 第2縦エッジ
15 曲線溝
21 第1傾斜溝
22 第2傾斜溝
35 三角形状ブロック
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13