(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】車両の車体構造
(51)【国際特許分類】
B60R 19/04 20060101AFI20230829BHJP
【FI】
B60R19/04 M
(21)【出願番号】P 2019237948
(22)【出願日】2019-12-27
【審査請求日】2022-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】嶋中 常規
(72)【発明者】
【氏名】河村 力
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-166873(JP,A)
【文献】特開2003-312401(JP,A)
【文献】国際公開第2009/110461(WO,A1)
【文献】特開2019-104333(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 19/00- 19/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バンパレインフォースメントを支持する衝撃吸収部材を備えた車両の車体構造であって、
上記バンパレインフォースメントの基端壁と上記衝撃吸収部材の先端部とは、荷重伝達部材を介して接合され、
上記バンパレインフォースメントの上記
基端壁の上下方向長さが、上記衝撃吸収部材の上記
先端部の上下方向長さよりも小さく形成されており、
上記荷重伝達部材は、上記バンパレインフォースメントの上記基端壁の側かつ上下方向の両側に押圧部が設けられ、
上記押圧部は、車両側面視において略三角形状に形成され、上記バンパレインフォースメントの上下各面に当接するバンパレインフォースメント側辺部と、上記衝撃吸収部材の上記先端部の上下端部とオーバラップする衝撃吸収部材側辺部と、を有した
車両の車体構造。
【請求項2】
上記バンパレインフォースメントの
上記基端壁の側の上部には、当該バンパレインフォースメントの基端側に向けて下方に傾斜する上部傾斜面部が形成され、
上記バンパレインフォースメントの
上記基端壁の側の下部には、当該バンパレインフォースメントの基端側に向けて上方に傾斜する下部傾斜面部が形成され、
上記荷重伝達部材の上下の各押圧部における
上記バンパレインフォースメント側辺部は、上記各傾斜面部に沿って形成された
請求項1に記載の車両の車体構造。
【請求項3】
上記荷重伝達部材は、上記上下の押圧部を上下方向に連結する連結部を備え
、
上記連結部は、上記基端壁と上記先端部との間に介設された
請求項1または2に記載の車両の車体構造。
【請求項4】
上記バンパレインフォースメントはアルミ押出し材にて構成された
請求項1~3の何れか一項に記載の車両の車体構造。
【請求項5】
上記荷重伝達部材はアルミ押出し材にて構成された
請求項1~4の何れか一項に記載の車両の車体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、バンパレインフォースメントを支持する衝撃吸収部材を備えた車両の車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、バンパレインフォースメントを支持する衝撃吸収部材としてのクラッシュボックスを設け、衝突荷重の入力時に当該クラッシュボックスを変形させることで、衝突荷重を吸収するように構成した車両の車体構造が知られている。
【0003】
このような車両の車体構造において、上述のクラッシュボックスが逐次破壊機能(特開2017-2998号公報参照)をもって構成される場合、並びに、車幅方向において形状変更が自由に行なえない押出し材により上述のバンパレインフォースメントが構成される場合には、クラッシュボックスおよびバンパレインフォースメントのそれぞれの機能面からの形状を検討すると、クラッシュボックス先端に対してバンパレインフォースメント基端の上下方向長さが小さくなることがある。
この場合には、衝突荷重の入力時に、クラッシュボックス先端に対して適切な荷重伝達ができず、所期のエネルギ吸収を行なうことができなかった。
【0004】
ところで、特許文献1には、バンパレインフォースメントを支持するクラッシュボックスを備えた車両の車体構造が開示されている。この特許文献1で開示された従来構造において、クラッシュボックス先端に対してバンパレインフォースメントの基端の上下方向長さが小さい場合には、上述同様の課題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、この発明は、バンパレインフォースメントおよび衝撃吸収部材のそれぞれの性能要求から、その上下方向長さに差異が生じた場合においても、衝撃吸収部材に対して衝突荷重を確実に伝達することができる車両の車体構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明による車両の車体構造は、バンパレインフォースメントを支持する衝撃吸収部材を備えた車両の車体構造であって、上記バンパレインフォースメントの基端壁と上記衝撃吸収部材の先端部とは、荷重伝達部材を介して接合され、上記バンパレインフォースメントの上記基端壁の上下方向長さが、上記衝撃吸収部材の上記先端部の上下方向長さよりも小さく形成されており、上記荷重伝達部材は、上記バンパレインフォースメントの上記基端壁の側かつ上下方向の両側に押圧部が設けられ、上記押圧部は、車両側面視において略三角形状に形成され、上記バンパレインフォースメントの上下各面に当接するバンパレインフォースメント側辺部と、上記衝撃吸収部材の上記先端部の上下端部とオーバラップする衝撃吸収部材側辺部と、を有するものである。
【0008】
上述の略三角形状は、略三角枠形状(中空形状)であってもよく、または、中実構造であってもよい。
上記構成によれば、バンパレインフォースメントおよび衝撃吸収部材のそれぞれの性能要求から、これらの上下方向長さに差異が生じた場合においても、衝突荷重は、バンパレインフォースメントから上記上下の押圧部を有する荷重伝達部材を介して衝撃吸収部材に確実に伝達される。この結果、所期のエネルギ吸収を行なうことができる。
しかも、上下の各押圧部は略三角形状、すなわち、トラス構造であるから、衝突荷重をより一層確実に衝撃吸収部材に伝達することができる。
【0009】
この発明の一実施態様においては、上記バンパレインフォースメントの上記基端壁の側の上部には、当該バンパレインフォースメントの基端側に向けて下方に傾斜する上部傾斜面部が形成され、上記バンパレインフォースメントの上記基端壁の側の下部には、当該バンパレインフォースメントの基端側に向けて上方に傾斜する下部傾斜面部が形成され、上記荷重伝達部材の上下の各押圧部における上記バンパレインフォースメント側辺部は、上記各傾斜面部に沿って形成されたものである。
【0010】
上記構成によれば、上下の傾斜面部を有することで、バンパレインフォースメントの性能要求を満たしつつ、衝突荷重の入力時には、当該衝突荷重をバンパレインフォースメントから荷重伝達部材を介して衝撃吸収部材に確実に伝達することができる。
【0011】
この発明の一実施態様においては、上記荷重伝達部材は、上記上下の押圧部を上下方向に連結する連結部を備え、上記連結部は、上記基端壁と上記先端部との間に介設されたものである。
上記構成によれば、衝突荷重の衝撃吸収部材に対する伝達性能の向上を図ることができる。
【0012】
この発明の一実施態様においては、上記バンパレインフォースメントはアルミ押出し材にて構成されたものである。
上記構成によれば、次のような効果がある。
【0013】
すなわち、アルミ押出し材によるバンパレインフォースメントは、鋼鉄製のものに対して軽量であり、車両中心から離れた位置に上記バンパレインフォースメント(軽量部材)が配置されるので、ヨー慣性モーメント(車両の重心点を通る鉛直軸まわりの車両全体の慣性モーメント)の低減を図ることができる。
【0014】
この発明の一実施態様においては、上記荷重伝達部材はアルミ押出し材にて構成されたものである。
上記構成によれば、次のような効果がある。
【0015】
すなわち、アルミ押出し材による荷重伝達部材は、鋼鉄製のものに対して軽量であり、車両中心から離れた位置に上記荷重伝達部材(軽量部材)が配設されるので、ヨー慣性モーメントの低減を図ることができる。
【0016】
ここで、上述のアルミ押出し材とは、塑性状態のアルミニウムまたはアルミニウム合金の材料を、ダイスを通して押出し、ダイス穴断面形状の長物として製作されるものである。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、バンパレインフォースメントおよび衝撃吸収部材のそれぞれの性能要求から、その上下方向長さに差異が生じた場合においても、衝撃吸収部材に対して衝突荷重を確実に伝達することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図4】車両の車体構造を車両左側上方から見た状態で示す斜視図
【
図6】実施例1のバンパレインフォースメント、クラッシュボックス、荷重伝達部材の関連構造を示す断面図
【
図7】実施例2のバンパレインフォースメント、クラッシュボックス、荷重伝達部材の関連構造を示す断面図
【
図8】実施例3のバンパレインフォースメント、クラッシュボックス、荷重伝達部材の関連構造を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
バンパレインフォースメントおよび衝撃吸収部材のそれぞれの性能要求から、その上下方向長さに差異が生じた場合においても、衝撃吸収部材に対して衝突荷重を確実に伝達するという目的を、バンパレインフォースメントを支持する衝撃吸収部材を備えた車両の車体構造であって、上記バンパレインフォースメントの基端壁と上記衝撃吸収部材の先端部とは、荷重伝達部材を介して接合され、上記バンパレインフォースメントの上記基端壁の上下方向長さが、上記衝撃吸収部材の上記先端部の上下方向長さよりも小さく形成されており、上記荷重伝達部材は、上記バンパレインフォースメントの上記基端壁の側かつ上下方向の両側に押圧部が設けられ、上記押圧部は、車両側面視において略三角形状に形成され、上記バンパレインフォースメントの上下各面に当接するバンパレインフォースメント側辺部と、上記衝撃吸収部材の上記先端部の上下端部とオーバラップする衝撃吸収部材側辺部と、を有するという構成にて実現した。
【実施例1】
【0020】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は車両の車体構造を示し、
図1は当該車両の車体構造を示す斜視図、
図2は後部荷室構造を示す斜視図、
図3は
図1の要部拡大斜視図、
図4は車両の車体構造を車両左側上方から見た状態で示す斜視図、
図5は
図4の左側面図、
図6は実施例1のバンパレインフォースメント、クラッシュボックス、荷重伝達部材の関連構造を示す断面図である。
なお、図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印Rは車両後方を示し、矢印UPは車両上方を示す。
【0021】
また、以下の実施例においては、車両の車体構造を後部車体構造に採用した場合について説明するので、矢印Fで示す車両前方側が基端側となり、矢印Rで示す車両後方側が先端側となる。
図2に示すように、車体後部において、車幅方向に延びる閉断面部材1と、この閉断面部材1の車幅方向外方および後方に位置するパネル部材2と、閉断面部材1の後部で、かつ、パネル部材2の車幅方向内側に位置するリヤフロア3と、の複数部材にて荷室フロア4を形成している。
【0022】
上述の荷室フロア4の後部には荷室凹部5を一体的に凹設形成している。
この荷室凹部5は、前壁6と、左右の側壁7,7と、後壁8と、下壁(つまり底壁)とを備えており、左右の側壁7,7の上端部には、当該上端部から車幅方向外方に延びるフロアサイドパネル9を一体または一体的に形成している。
【0023】
図2に示すように、上述の荷室フロア4およびフロアサイドパネル9の側部、すなわち、荷室側部を覆う左右一対のリヤサイドパネル10,10を設けている。このリヤサイドパネル10はアルミニウム板またはアルミニウム合金板により形成されている。
【0024】
図1に示すように、荷室の上方部は樹脂製の荷室構成部材本体20で覆われている。この荷室構成部材本体20を樹脂製とすることで、車両の軽量化を図るものである。
上述の荷室構成部材本体20は、上部において車幅方向に延びるリヤヘッダ21と、側部においてリヤヘッダ21の車幅方向端部から後方、かつ、下方に延びる左右一対のリヤピラー22,22と、これら左右一対のリヤピラー22,22の下端部を車幅方向に連結するリヤエンドアウタパネル23と、を備えている。
【0025】
上述のリヤヘッダ21と、左右一対のリヤピラー22,22と、リヤエンドアウタパネル23と、は車両平面視で方形枠状に連結されており、方形枠部の内側にはリヤウインドガラス配設用の開口部24が形成されている。
上述の開口部24には、図示しないリヤウインドガラスがその上端を枢支部として開閉するように取付けられている。
【0026】
図1に示すように、荷室構成部材本体20のリヤエンドアウタパネル23は、リヤエンドレインフォースメント28およびリヤエンドインナパネル(図示せず)を介して荷室後部を覆っている。
図1に示すように、荷室構成部材本体20のリヤヘッダ21は、車両デザインの関係と、その車幅方向両サイドが下方に位置するように湾曲形成されている。
【0027】
また、荷室構成部材本体20の左右一対のリヤピラー22,22は前部が高く、後部が低くなるように前高後低状に傾斜しており、車両前後方向に延びるリヤピラー22,22の後半部は、その前半部に対して幅広の幅広部22a,22aが一体形成されている。
そして、この幅広部22aには、車幅方向に延びる複数のビード部22bが、車両前後方向に離間して凹設形成されており、当該幅広部22aの剛性向上を図るように構成している。
【0028】
図1に示すように、上述のリヤエンドアウタパネル23とリヤエンドレインフォースメント28との車幅方向左右両サイドには、これら両者23,28において車幅方向に連続するように、リヤコンビネーションランプ配置用の凹部25,25が形成されている。
【0029】
また、
図1に示すように、上述のリヤエンドアウタパネル23とリヤエンドレインフォースメント28との車幅方向左右両サイドで、かつ上記凹部25の車幅方向内部側とオーバラップする位置には、これら両者23,28において上下方向に連続するように、左右の凹部26,27が形成されている。
【0030】
そして、車両左側の凹部26におけるリヤエンドレインフォースメント28の前部には、アルミ押出し材から成る角パイプ形状の支柱(図示せず)を立設固定して、この支柱に牽引フック取付け部材29を取付けている。
【0031】
図2に示す荷室凹部5の左右一対の側壁7,7における車幅方向外方を、車両の前後方向に延びるリヤサイドフレーム(図示せず)を設けている。そして、このリヤサイドフレームの後端には、取付けフランジ部31が一体形成された衝撃吸収部材としてのクラッシュボックス30と、アルミ押出し材から成る荷重伝達部材40と、を介して車幅方向に延びるバンパレインフォースメント50を取付けている。上述のクラッシュボックス30はバンパレインフォースメント50を支持する衝突荷重吸収部材であって、該クラッシュボックス30は繊維強化プラスチックまたは金属により構成することができる。
【0032】
図1~
図4に示すように、上述のバンパレインフォースメント50は、左右一対のクラッシュボックス30,30の先端部相互間を車幅方向に連結するものである。このバンパレインフォースメント50は、アルミ押出し成形品の押出し成形後に、当該アルミ押出し成形品を曲げ加工して、湾曲形状に形成したものである。
【0033】
図5、
図6に示すように、上述のバンパレインフォースメント50は、基端壁51と、先端壁52と、上壁53と、下壁54と、当該バンパレインフォースメント50の上下方向の中間において基端壁51と先端壁52とを車両前後方向に連結する横棧55と、をアルミ押出し材にて一体形成したものである。
【0034】
上述の上壁53と横棧55との間、並びに、横棧55と下壁54との間において、荷重伝達部材40を介してクラッシュボックス30の先端部32と対向する基端壁51および先端壁52には、作業用の孔部として車幅方向に長い長孔56,56がそれぞれ貫通形成されている。
【0035】
また、
図5、
図6に示すように、バンパレインフォースメント50のクラッシュボックス30との接合部側の上部、すなわち、上壁53のクラッシュボックス30寄りの位置には、当該バンパレインフォースメント50の基端側に向けて下方に傾斜する上部傾斜面部57が形成されている。
【0036】
同様に、
図5、
図6に示すように、バンパレインフォースメント50のクラッシュボックス30との接合部側の下部、すなわち、下壁54のクラッシュボックス30寄りの位置には、当該バンパレインフォースメント50の基端側に向けて上方に傾斜する下部傾斜面部58が形成されている。
【0037】
図6に示すように、バンパレインフォースメント50のクラッシュボックス30の先端部32に対する接合部、すなわち、基端壁51の上下方向長さL1は、クラッシュボックス30のバンパレインフォースメント50に対する接合部、すなわち、その先端部32の上下方向長さL2よりも小さく形成されており、L1<L2の関係式が成立するように構成されている。
【0038】
上述のバンパレインフォースメント50の基端壁51の上下方向長さL1がクラッシュボックス30の先端部32の上下方向長さL2に対して小さいので、衝突荷重を確実にクラッシュボックス30に伝達するために荷重伝達部材40を設けている。
【0039】
図5、
図6に示すように、当該荷重伝達部材40は、上下の押圧部41,42と、バンパレインフォースメント50の基端壁51とクラッシュボックス30の先端部32との間に介設されて上記上下の押圧部41,42を上下方向に一体連結する連結部43と、を備えている。
【0040】
図5、
図6に示すように、上述の各押圧部41,42は、バンパレインフォースメント50のクラッシュボックス30における先端部32との接合部側の上下両部に設けられており、車両側面視で略三角形状の一例として略三角枠形状に形成されている。
【0041】
図5、
図6に示すように、上側の押圧部41は、底辺部41aと一辺部41bと他辺部41cとを備えており、接合部側(クラッシュボックス30の先端部32側)に位置する上記一辺部41bが少なくともクラッシュボックス30の先端部32の上端部とオーバラップするものである。
そして、上記底辺部41aは、バンパレインフォースメント50の上部傾斜面部57に沿って形成されており、この底辺部41aの下面が上記上部傾斜面部57の上面に当接している。
【0042】
また、上述の底辺部41aと他辺部41cとが交差する頂点から、バンパレインフォースメント50の先端壁52方向に向けて突片41dを一体形成しており、この突片41dの車幅方向の略全幅をバンパレインフォースメント50の上壁53とミグ溶接(MIG welding)手段にて接合している。
ミグ溶接は、周知のように、イナートガスアーク溶接法の一種で、不活性なアルゴンやヘリウムなどのイナートガスをシールドガスとして使用し、ワイヤ状の消耗電極を用いる溶極式の溶接である。
【0043】
図5、
図6に示すように、下側の押圧部42は、底辺部42aと一辺部42bと他辺部42cとを備えており、接合部側(クラッシュボックス30の先端部32側)に位置する上記一辺部42bが少なくともクラッシュボックス30の先端部32の下端部とオーバラップするものである。
そして、上記底辺部42aは、バンパレインフォースメント50の下部傾斜面部58に沿って形成されており、この底辺部42aの上面が上記下部傾斜面部58の下面に当接している。
【0044】
また、上述の底辺部42aと他辺部42cとが交差する頂点から、バンパレインフォースメント50の先端壁52方向に向けて突片42dを一体形成しており、この突片42dの車幅方向の略全幅をバンパレインフォースメント50の下壁54とミグ溶接(MIG welding)手段にて接合している。
さらに、この実施例では、上側の押圧部41の一辺部41bと、連結部43と、下側の押圧部42の一辺部42bと、を上下方向に一直線状となるように構成している。
【0045】
ここで、
図6に示すように、上述の荷重伝達部材40の連結部43には、バンパレインフォースメント50の長孔56と対応する位置にボルト挿通孔44,44が形成されている。また、クラッシュボックス30の先端部32において上記ボルト挿通孔44,44と対向する位置にもボルト挿通孔33,33が形成されている。
【0046】
そして、予めナットプレートに溶接したナットを、クラッシュボックス30の先端部32内面に配置し、車外側から上記長孔56,56およびボルト挿通孔44,33を介して挿通されたボルトを、上記ナットに螺合することで、クラッシュボックス30先端に対して荷重伝達部材40およびバンパレインフォースメント50を締結固定するものである。
【0047】
図4、
図5に示すように、上述のクラッシュボックス30はシンメトリ(symmetry、左右対称)な多角筒形状に形成されており、その基端部には上述の取付けフランジ部31が一体形成されている。
図3に示すように、当該取付けフランジ部31は、この実施例においては方形状に形成されており、該取付けフランジ部31の四隅部には、クラッシュボックス30を車体に取付けるための取付け孔34が開口形成されている。
【0048】
このように、
図1~
図6で示した実施例1の車両の車体構造は、バンパレインフォースメント50を支持するクラッシュボックス30を備えた車両の車体構造であって、上記バンパレインフォースメント50の上記クラッシュボックス30に対する接合部(基端壁51参照)の上下方向長さL1が、上記クラッシュボックス30の上記バンパレインフォースメント50に対する接合部(先端部32参照)の上下方向長さL2よりも小さく形成(L1<L2)されており、上記バンパレインフォースメント50の上記クラッシュボックス30との接合部側の上下両部には、車両側面視において略三角枠形状で、かつ、その接合部側の一辺部41b,42bが少なくとも上記クラッシュボックス30先端の上下端部とオーバラップする上下の押圧部41,42を有する荷重伝達部材40が設けられたものである(
図5、
図6参照)。
【0049】
この構成によれば、バンパレインフォースメント50およびクラッシュボックス30のそれぞれの性能要求から、これらの上下方向長さL1,L2に差異が生じた場合においても、衝突荷重は、バンパレインフォースメント50から上記上下の押圧部41,42を有する荷重伝達部材40を介してクラッシュボックス30に確実に伝達される。この結果、所期のエネルギ吸収を行なうことができる。
しかも、上下の各押圧部41,42は略三角枠形状(この実施例1では、不等辺三角形の枠状)、すなわち、トラス構造であるから、衝突荷重をより一層確実にクラッシュボックス30に伝達することができる。
【0050】
また、この発明の一実施形態においては、上記バンパレインフォースメント50の上記クラッシュボックス30との接合部側の上部には、当該バンパレインフォースメント50の基端側に向けて下方に傾斜する上部傾斜面部57が形成され、上記バンパレインフォースメント50の上記クラッシュボックス30との接合部側の下部には、当該バンパレインフォースメント50の基端側に向けて上方に傾斜する下部傾斜面部58が形成され、上記荷重伝達部材40の上下の各押圧部41,42における底辺部41a,42aは、上記各傾斜面部57,58に沿って形成されたものである(
図5,
図6参照)。
【0051】
この構成によれば、上下の傾斜面部57,58を有することで、バンパレインフォースメント50の性能要求を満たしつつ、衝突荷重の入力時には、当該衝突荷重をバンパレインフォースメント50から荷重伝達部材40を介してクラッシュボックス30に確実に伝達することができる。
さらに、この発明の一実施形態においては、上記荷重伝達部材40は、上記上下の押圧部41,42を上下方向に連結する連結部43を備えたものである(
図5、
図6参照)。
【0052】
この構成によれば、衝突荷重のクラッシュボックス30に対する伝達性能の向上を図ることができる。
さらにまた、この発明の一実施形態においては、上記バンパレインフォースメント50はアルミ押出し材にて構成されたものである(
図6参照)。
【0053】
この構成によれば、次のような効果がある。
すなわち、アルミ押出し材によるバンパレインフォースメント50は、鋼鉄製のものに対して軽量であり、車両中心から離れた位置に上記バンパレインフォースメント50(軽量部材)が配置されるので、ヨー慣性モーメント(車両の重心点を通る鉛直軸まわりの車両全体の慣性モーメント)の低減を図ることができる。
加えて、この発明の一実施形態においては、上記荷重伝達部材40はアルミ押出し材にて構成されたものである(
図6参照)。
【0054】
この構成によれば、次のような効果がある。
すなわち、アルミ押出し材による荷重伝達部材40は、鋼鉄製のものに対して軽量であり、車両中心から離れた位置に上記荷重伝達部材40(軽量部材)が配設されるので、ヨー慣性モーメントの低減を図ることができる。
【実施例2】
【0055】
図7は実施例2のバンパレインフォースメント、クラッシュボックス、荷重伝達部材の関連構造を示す断面図である。
図7に示す実施例2においては、バンパレインフォースメント50が上下の傾斜面部57,58を有しておらず、当該バンパレインフォースメント50の基端壁51と先端壁52との上下方向長さが同等に形成されている。
【0056】
また、荷重伝達部材40は、底辺部41aと対辺部41eと斜辺部41fから成る直角三角形枠状の上側の押圧部41と、底辺部42aと対辺部42eと斜辺部42fから成る直角三角形枠状の下側の押圧部42とを備えている。
さらに、上記対辺部41eと連結部43と対辺部42eとを、上下方向に一直線状に一体連結している。
【0057】
そして、この実施例2においても、バンパレインフォースメント50のクラッシュボックス30に対する接合部の上下方向長さL3が、クラッシュボックス30のバンパレインフォースメント50に対する接合部の上下方向長さL4よりも小さく形成(L3<L4)されている。
【0058】
このように、
図7で示した実施例2の車両の車体構造は、バンパレインフォースメント50を支持するクラッシュボックス30を備えた車両の車体構造であって、上記バンパレインフォースメント50の上記クラッシュボックス30に対する接合部(基端壁51参照)の上下方向長さL3が、上記クラッシュボックス30の上記バンパレインフォースメント50に対する接合部(先端部32参照)の上下方向長さL4よりも小さく形成(L3<L4)されており、上記バンパレインフォースメント50の上記クラッシュボックス30との接合部側の上下両部には、車両側面視において略三角枠形状で、かつ、その接合部側の一辺部(対辺部41e,42e参照)が少なくとも上記クラッシュボックス30先端の上下端部とオーバラップする上下の押圧部41,42を有する荷重伝達部材40が設けられたものである(
図7参照)。
【0059】
この構成によれば、バンパレインフォースメント50およびクラッシュボックス30のそれぞれの性能要求から、これらの上下方向長さL3,L4に差異が生じた場合においても、衝突荷重は、バンパレインフォースメント50から上記上下の押圧部41,42を有する荷重伝達部材40を介してクラッシュボックス30に確実に伝達される。この結果、所期のエネルギ吸収を行なうことができる。
【0060】
しかも、上下の各押圧部41,42は略三角枠形状(この実施例2では、直角三角形の枠状)、すなわち、トラス構造であるから、衝突荷重をより一層確実にクラッシュボックス30に伝達することができる。
【0061】
図7で示した実施例2においても、その他の構成、作用、効果については、
図6で示した実施例1とほぼ同様であるから、
図7において
図6と同一の部分には、同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【実施例3】
【0062】
図8は実施例3のバンパレインフォースメント、クラッシュボックス、荷重伝達部材の関連構造を示す断面図である。
図8に示す実施例3においては、バンパレインフォースメント50の上壁53および下壁54における前後方向中間部に、当該バンパレインフォースメント50の基端側に向けて下方および上方に傾斜する上部傾斜面部57および下部傾斜面部58が形成されている。
【0063】
荷重伝達部材40における上側の押圧部41の底辺部41aは、上記上壁53と上部傾斜面部57とに沿う形状に形成されている。同様に、下側の押圧部42の底辺部42aも、上記下壁54と下部傾斜面部58とに沿う形状に形成されている。
【0064】
また、この実施例3においても、バンパレインフォースメント50のクラッシュボックス30に対する接合部(基端壁51参照)の上下方向長さL5が、クラッシュボックス30のバンパレインフォースメント50に対する接合部(先端部32参照)の上下方向長さL6よりも小さく形成(L5<L6)されている。
さらに、上側の一辺部41bと連結部43と下側の一辺部42bとを、上下方向に一直線状に一体連結している。
【0065】
このように、
図8で示した実施例3の車両の車体構造は、バンパレインフォースメント50を支持するクラッシュボックス30を備えた車両の車体構造であって、上記バンパレインフォースメント50の上記クラッシュボックス30に対する接合部(基端壁51参照)の上下方向長さL5が、上記クラッシュボックス30の上記バンパレインフォースメント50に対する接合部(先端部32参照)の上下方向長さL6よりも小さく形成(L5<L6)されており、上記バンパレインフォースメント50の上記クラッシュボックス30との接合部側の上下両部には、車両側面視において略三角枠形状で、かつ、その接合部側の一辺部41b,42bが少なくとも上記クラッシュボックス30先端の上下端部とオーバラップする上下の押圧部41,42を有する荷重伝達部材40が設けられたものである(
図8参照)。
【0066】
この構成によれば、バンパレインフォースメント50およびクラッシュボックス30のそれぞれの性能要求から、これらの上下方向長さL5,L6に差異が生じた場合においても、衝突荷重は、バンパレインフォースメント50から上記上下の押圧部41,42を有する荷重伝達部材40を介してクラッシュボックス30に確実に伝達される。この結果、所期のエネルギ吸収を行なうことができる。
しかも、上下の各押圧部41,42は略三角枠形状、すなわち、トラス構造であるから、衝突荷重をより一層確実にクラッシュボックス30に伝達することができる。
【0067】
図8で示した実施例3においても、その他の構成、作用、効果については、
図6で示した実施例1とほぼ同様であるから、
図8において
図6と同一の部分には、同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0068】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明の衝撃吸収部材は、実施例のクラッシュボックス30に対応し、
以下同様に、
バンパレインフォースメント側辺部は、底辺部41a,42aに対応し、
衝撃吸収部材側辺部は、一辺部41b,42b、対辺部41e,42eに対応するも、この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
【0069】
例えば、上記実施例においては、車両の車体構造を後部車体構造に適用した場合について例示したが、本発明は前部車体構造にも適用することができ、この場合には、矢印Fで示す車両前方側が先端側となり、矢印Rで示す車両後方側が基端側となる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
以上説明したように、本発明は、バンパレインフォースメントを支持する衝撃吸収部材を備えた車両の車体構造について有用である。
【符号の説明】
【0071】
30…クラッシュボックス(衝撃吸収部材)
32…先端部
40…荷重伝達部材
41、42…押圧部
41a、42a…底辺部(バンパレインフォースメント側辺部)
41b、42b…一辺部(衝撃吸収部材側辺部)
41e、42e…対辺部(衝撃吸収部材側辺部)
43…連結部
50…バンパレインフォースメント
51…基端壁
57…上部傾斜面部
58…下部傾斜面部