(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】開放式流体液滴吐出カートリッジ、デジタル流体分注システム、基板上に流体をデジタル的に分注する方法
(51)【国際特許分類】
G01N 35/10 20060101AFI20230829BHJP
【FI】
G01N35/10 A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019238065
(22)【出願日】2019-12-27
【審査請求日】2022-09-22
(32)【優先日】2019-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】723005698
【氏名又は名称】船井電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148460
【氏名又は名称】小俣 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100168125
【氏名又は名称】三藤 誠司
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン ジュニア.・ジェームス ディー.
(72)【発明者】
【氏名】エデレン・ジョン グレン
(72)【発明者】
【氏名】マーラ サード・マイケル エー.
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0336100(US,A1)
【文献】特開2004-074680(JP,A)
【文献】特開2006-145224(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0033692(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタル流体分注システムにより分注される1以上の流体を含む開放式流体液滴吐出カートリッジであって、
1以上の開口を有するカバーと、
前記カバーの前記1以上の開口から垂れた流体漏斗と、
流体を1以上の流体チャンバへ導くため前記流体漏斗に取り付けられたチャンバセパレータと、
前記1以上の流体チャンバからあふれた流体のための流体オーバフローチャンバと、
各前記1以上の流体チャンバに関連付く流体ビアと、
前記流体ビアと流体連通された単一の半導体基板上の前記流体ビアに隣接する複数の流体吐出装置と
を含む、開放式流体液滴吐出カートリッジ。
【請求項2】
流体チャンバ充填の間に前記1以上の流体チャンバから空気を排出するため、前記チャンバセパレータと前記流体漏斗との間にエアギャップが設けられた、
請求項1に記載の開放式流体液滴吐出カートリッジ。
【請求項3】
前記デジタル流体分注システムにより分注される3つの異なる流体のための3つの流体チャンバを含む、
請求項1に記載の開放式流体液滴吐出カートリッジ。
【請求項4】
前記デジタル流体分注システムにより分注される4つの異なる流体のための4つの流体チャンバを含む、
請求項1に記載の開放式流体液滴吐出カートリッジ。
【請求項5】
前記単一の半導体基板が、前記単一の半導体基板上の2次元マトリックスに設けられた前記流体ビアを含む、
請求項1に記載の開放式流体液滴吐出カートリッジ。
【請求項6】
前記単一の半導体基板が、前記単一の半導体基板上の1次元マトリックスに設けられた3つの流体ビアを含む、
請求項1に記載の開放式流体液滴吐出カートリッジ。
【請求項7】
コンパクト筐体ユニットと、
請求項1に記載の開放式流体液滴吐出カートリッジと、
前記開放式流体液滴吐出カートリッジをx方向に基板上を進退させるための流体カートリッジ並進機構と、
前記基板をx方向と直交するy方向に前記開放式流体液滴吐出カートリッジの下で進退させるための基板並進機構と
を含む、
デジタル流体分注システム。
【請求項8】
前記開放式流体液滴吐出カートリッジと共に前記流体カートリッジ並進機構に設けられた、1以上の密封式流体液滴吐出カートリッジを更に含む、
請求項7に記載のデジタル流体分注システム。
【請求項9】
基板上に流体をデジタル的に分注する方法であって、
コンパクト筐体ユニットに収容された流体液滴吐出システムを提供するステップであって、前記流体液滴吐出システムが、
前記流体液滴吐出システムにより分注される1以上の流体を含む開放式流体液滴吐出カートリッジと、
前記
開放式流体液滴吐出カートリッジをx方向に基板上を進退させるための流体カートリッジ並進機構と
前記基板をx方向と直交するy方向に前記
開放式流体
液滴吐出カートリッジの下を進退させるための基板並進機構と
を含み、
前記開放式流体液滴吐出カートリッジが、1以上の開口を有するカバーと、前記カバーの前記1以上の開口から垂れた流体漏斗と、1以上の流体チャンバに流体を導くため前記流体漏斗に取り付けられたチャンバセパレータと、前記1以上の流体チャンバからあふれた流体のための流体オーバーフローチャンバと、各前記1以上の流体チャンバに関連付く流体ビアと、前記流体ビアと流体連通している単一の半導体基板上の前記流体ビアに隣接する複数の流体吐出装置とを含む、ステップと、
前記開放式流体液滴吐出カートリッジの前記1以上の流体チャンバ内に1以上の流体をピペット分注するステップと、
前記流体液滴吐出システムを起動するステップと、
前記基板上に
前記1以上の流体をデジタル的に分注するステップと
を含む、方法。
【請求項10】
前記基板並進機構が、前記基板を保持するための1以上のアダプタを含む、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記
開放式流体液滴吐出カートリッジが、複数の
前記流体ビアを含む単一の半導体基板を含む、
請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記単一の半導体基板が、前記単一の半導体基板上の2次元マトリックスに設けられた前記流体ビアを含む、
請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記開放式流体液滴吐出カートリッジが、流体チャンバ充填の間に前記1以上の流体チャンバから空気を排出するため、前記チャンバセパレータと前記流体漏斗との間に設けられたエアギャップを含む、
請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記
流体液滴吐出システムが、前記
流体液滴吐出システムにより分注される1以上の異なる流体を含む密封式流体液滴吐出カートリッジを含む、
請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記密封式流体液滴吐出カートリッジが、複数の流体ビアを含む単一の半導体基板を含む、
請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記開放式流体液滴吐出カートリッジが、前記
流体液滴吐出システムにより分注される3又は4つの異なる流体を含む、
請求項9に記載の方法。
【請求項17】
前記開放式流体液滴吐出カートリッジのカバーが、前記開放式流体液滴吐出カートリッジの前記3又は4つの流体チャンバに対応する3又は4つの開口を含む、
請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願]
本願は、現在係属中である、2019年1月4日付で出願された米国仮出願番号62/788,290に関連する。
【0002】
本開示は、基板の正確な領域に封じられた試料の分析を行うため、又は基板の所定の領域に材料の層を構築するため、基板の正確な領域上又は正確な領域内に1以上の流体を正確に分注するために用いられる装置と方法に関する。
【背景技術】
【0003】
特に、医療分野において、自動化された試料調製と分析の必要性がある。分析は、比色分析、又は顕微鏡下で試料をより好ましく観察するため、試料の着色を要する可能性がある。そのような分析は、薬剤試料分析、血液試料分析、等を含む。例えば、血液の分析において、血液は個人の健康を判定するために用いられるいくつかの異なる要因を提供するため分析される。血液試料分析を要する多くの患者がいる場合、手順は非常に時間がかかるものとなる。また、結果が信頼できるものであるよう、試料の正確な調製の必要がある。複数の試料の微量滴定といった、正確で再現可能な結果を提供する分析機器の使用の恩恵を受けることのできる医療分野やその他の分野において、試料分析を要するその他の多くの状況がある。
【0004】
多くの実験と検査手順にて、典型的にウェルプレート、スライドおよび他の基材が使用される。ウェルを充填する手順またはスポッティングの手順は、手作業又は高価な検査機器を用いて行われることが多い。場合によっては、ウェルは手動ピペットで充填される。その他の場合では、ウェルプレートの充填はピペット技術に基づいた高性能自動装置が使用される。そのような自動装置は開放式ウェル分注ヘッドを収容するのみである。開放式ウェル分注ヘッドは、使用前に分注ヘッドの開口内に少量の流体が堆積されなければならない分注ヘッドである。流体は、典型的にピペット又は類似の手段で手動で堆積される。分注ヘッドは、マイクロプレートをXとY方向両方に動かす間、静止して保持される。これら高性能装置は非常に高価である。
【0005】
マイクロ回路製造の分野において、基板上に回路装置を提供するため、流体は正確な位置に分注される必要がある。単位面積毎に分注される流体のボリュームは、典型的に、従来のインクジェット印刷技術により提供されるものよりも大きい。場合によっては、流体に化学的又は物理的変化を与えるため、異なる流体が基板上で共に組み合わされ、結果として生じる材料が所望の回路機能を果たすようにする。
【0006】
マイクロ製造の他の分野も、基板内又は基板上の流体の正確な堆積を必要としうる。このため、基板上に所定のボリュームの1以上の流体を分注するために用いることができる方法と装置の必要性がある。また、システム内で容易に交換できる多目的な流体吐出カートリッジを用いて正確な位置に複数の流体を分注することのできる低コストなシステムの必要性もある。
【発明の概要】
【0007】
上記を鑑み、本開示の1つの実施形態は、デジタル流体分注システム(digital fluid dispense system)により分注される1以上の流体を含む開放式流体分注吐出カートリッジと、流体をデジタル的に分注する方法を提供する。開放式流体分注吐出カートリッジは、1以上の開口を有するカバーと、カバーの各1以上の開口から垂れた流体漏斗と、流体を1以上の流体チャンバに導くための流体漏斗に取り付けられたチャンバセパレータと、1以上の流体チャンバからあふれた流体のための流体オーバフローチャンバと、各1以上の流体チャンバに関連付く流体ビアと、流体ビアと流体連通している単一の半導体基板上の、流体ビアに隣接した複数の流体吐出装置とを含む。
【0008】
別の実施形態において、デジタル的に流体を分注する方法が提供される。この方法は、コンパクト筐体ユニットに収容された流体液滴吐出システムを提供するステップを含み、
流体液滴吐出システムが、
流体液滴吐出システムにより分注される1以上の流体を含む、開放式流体液滴吐出カートリッジと、
開放式流体液滴吐出カートリッジをx方向に基板上を進退させるための、流体カートリッジ並進機構と、
基板をx方向と直交するy方向に開放式流体液滴吐出カートリッジの下を進退させるための、基板並進機構と
を含み、
開放式流体液滴吐出カートリッジが、流体液滴吐出カートリッジから分注される1以上の異なる流体のための1以上の流体チャンバと、各1以上の流体チャンバのための流体オーバフローチャンバとを含む。
1以上の流体は、開放式流体液滴吐出カートリッジの1以上の流体チャンバ内に分注される。流体液滴吐出システムは、基板上に1以上の流体をデジタル的に分注するため作動される。
【0009】
いくつかの実施形態において、流体液滴吐出システムのための基板並進機構は、基板を保持するための1以上のアダプタを含む。
【0010】
他の実施形態において、開放式流体液滴吐出カートリッジは、複数の流体ビアと、複数の流体ビアに関連付く吐出装置とを含む、単一の半導体基板を含む。他の実施形態において、単一の半導体基板は、単一の半導体基板上の2次元マトリックスに設けられた、4つの流体ビアを含む。
【0011】
いくつかの実施形態において、流体チャンバ充填の間、1以上の流体チャンバから空気を排出するため、エアギャップ(air gap)がチャンバセパレータと流体漏斗との間に設けられる。
【0012】
いくつかの実施形態において、開放式流体液滴吐出カートリッジは、デジタル分注システムにより分注される3又は4つの流体のための、3又は4つの流体チャンバを含む。他の実施形態において、開放式流体液滴吐出カートリッジは、3又は4つの流体チャンバに対応する3又は4つの開口を有する、カバーを含む。
【0013】
いくつかの実施形態において、開放式流体液滴吐出カートリッジは、単一の半導体基板上の1次元マトリックスに設けられた3つの流体ビアを含む、単一の半導体基板を含む。
【0014】
いくつかの実施形態は、デジタル流体分注システムを提供し、デジタル流体分注システムは、コンパクト筐体ユニットと、開放式流体液滴吐出カートリッジと、開放式流体液滴吐出カートリッジをx方向に基板上で進退させるための流体カートリッジ並進機構と、基板を開放式流体液滴吐出カートリッジの下でx方向と直交するy方向に進退させるための基板並進機構とを含む。
【0015】
いくつかの実施形態において、デジタル分注システム(デジタル流体分注システムである)は、1以上の開放式流体液滴吐出カートリッジと組み合わせて流体カートリッジ並進機構上に設けられた、1以上の密封式流体液滴吐出カートリッジを含む。
【0016】
開示された実施形態の利点は、様々な流体分注の応用に用いることができ、分注される多様な流体に適合できる、流体をデジタル的に分注するための独特な低コストカートリッジを提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本開示の1つの実施形態によるデジタル分注システムの、縮尺通りではない、斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1のデジタル分注システムの背面の、縮尺通りではない、立面図である。
【
図3】
図3は、
図1のデジタル分注システムの、縮尺通りではない、破断斜視図である。
【
図4】
図4は、
図1のデジタル分注システムと共に用いられる基板を保持するためのトレイの、縮尺通りではない、斜視図である。
【
図5】
図5は、
図4のトレイと共に用いられるスライドとマイクロウェルプレートのためのアダプタの、縮尺通りではない、斜視図である。
【
図6】
図6は、
図1の分注システムのためのマイクロウェルプレートを保持する
図4のトレイの、縮尺通りではない、斜視図である。
【
図7】
図7は、
図1の分注システムのためのスライドアダプタとスライドを保持する
図4のトレイの、縮尺通りではない、斜視図である。
【
図8】
図8は、本開示の1つの実施形態による、開放式流体液滴吐出カートリッジの、縮尺通りではない、斜視図である。
【
図9】
図9は、
図8の開放式流体液滴吐出カートリッジの、縮尺通りではない、分解図である。
【
図10】
図10は、
図8の開放式流体液滴吐出カートリッジ内の流体チャンバの、縮尺通りではない、上面図である。
【
図11】
図11は、
図8の開放式流体液滴吐出カートリッジ内に設けられたチャンバセパレータの、縮尺通りではない、上面図である。
【
図12】
図12は、
図8の開放式流体液滴吐出カートリッジのための流体セパレータの、縮尺通りではない、上面斜視図である。
【
図13】
図13は、
図8の開放式流体液滴吐出カートリッジのための流体セパレータの、縮尺通りではない、底面斜視図である。
【
図14】
図14は、
図8の開放式流体液滴吐出カートリッジの、縮尺通りではない、破断斜視図である。
【
図15】
図15は、
図8の開放式流体液滴吐出カートリッジの、縮尺通りではない、部分破断斜視図である。
【
図16】
図16は、
図8の開放式流体液滴吐出カートリッジのための代替的なカバーの、縮尺通りではない、斜視図である。
【
図17】
図17は、
図8の開放式流体液滴吐出カートリッジのための代替的なカバーの、縮尺通りではない、斜視図である。
【
図20】
図20は、本開示の別の実施形態による開放式流体液滴吐出カートリッジの、縮尺通りではない、斜視図である。
【
図21】
図21は、
図20の開放式流体液滴吐出カートリッジの、縮尺通りではない、分解図である。
【
図22】
図22は、
図20の開放式流体液滴吐出カートリッジの流体チャンバの、縮尺通りではない、上面図である。
【
図24】
図24は、
図20の開放式流体液滴吐出カートリッジに設けられたチャンバセパレータの、縮尺通りではない、上面図である。
【
図25】
図25は、単一の半導体基板上の吐出装置のための流体ビアの2次元マトリックスの平面図である。
【
図26】
図26は、単一の半導体基板上の吐出装置のための流体ビアの代替的な2次元マトリックスである。
【
図27】
図27は、第1のサイズの流体吐出器のための、流体ビアの2次元マトリックスの、流体ビアに隣接する流体吐出器のアドレス体系である。
【
図28】
図28は、第2のサイズの流体吐出器のための、流体ビアの2次元マトリックスの、流体ビアに隣接する流体吐出器のアドレス体系である。
【
図29】
図29は、第3のサイズの流体吐出器のための、流体ビアの2次元マトリックスの、流体ビアに隣接する流体吐出器のアドレス体系である。
【
図30】
図30は、開放式及び密閉流体液滴吐出カートリッジ両方を含む、本開示によるデジタル分注システムの、破断斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1~
図7を参照し、基板上に1以上の流体のある量を正確に分注するためのデジタル分注装置10が示される。高性能デジタル分注装置とは異なり、本発明の装置10は、以下に詳細に説明されるように、第1の方向に進退する吐出ヘッドと、第1の方向と直交する第2の方向に進退する基板を移動させるためのトレイ14とに基づく。開示される装置10は、開放式分注ヘッドだけでなく、開放式及び密封式分注ヘッドを許容する。トレイ14は、マイクロウェルプレート、ガラススライド、電子回路板等を含むがこれらに限定されない多様な基板に適合可能である。
【0019】
分注ヘッドカートリッジ12とヘッド移動機構16(
図3)が、長方形のプリズム状のボックス18に含まれる。起動スイッチ20が、装置10を起動するためボックス18上に含まれる。ボックス18(
図2)の背面側22は、基板上に流体を分注するためトレイ14をボックス18を通って第2の方向に移動させるための開口24を含む。USBポート26が、デジタル分注システム10をコンピュータ又はデジタル表示装置に接続するため、ボックス18の背面側22に提供される。電力はボックス18の背面側22上の電力入力ポート28を通じてシステム10に提供される。
【0020】
トレイ14と、トレイのためのアダプタ32、34が、
図4と
図5に表される。アダプタ32はガラススライド36を保持する大きさにされており、ウェルプレートアダプタ34はマイクロウェルプレート38を保持する大きさにされている。トレイ14は、アダプタ32と34、又はその上に流体を分注する基板を保持するための凹部領域40を有する。
図6は、トレイ14の凹部領域40に設けられたウェル42を含むウェルプレート38を表す。
図7は、トレイ14のスライドアダプタ32上のスライド36を表す。
【0021】
図1のデジタル分注装置10と共に用いられる流体カートリッジとその部品が、
図8~
図24に表される。
図8は、本開示の1つの実施形態による、開放式流体液滴吐出カートリッジ50の、縮尺通りではない、斜視図である。開放式流体液滴吐出カートリッジ50は、カートリッジ本体52とカバー54とを含む。
図9は、
図8の開放流体液滴吐出カートリッジ50の分解図であり、カバー54から垂れた流体漏斗56と、流体を吐出ヘッド基板60へ導くチャンバセパレータ58とを示す。吐出ヘッド基板60は、吐出ヘッド基板60上の吐出装置を起動するため、フレキシブル回路62に取り付けられる。吐出ヘッド基板60上の吐出装置は、以下の
図10に表されるような流体ビア66の1次元アレイに隣接して設けられる。
【0022】
図10と
図11は、1以上の流体チャンバ64(
図10)と、カートリッジ本体52に設けられたチャンバセパレータ58とを示す、カバー54が取り外された開放式流体液滴吐出カートリッジ50の上面図である。チャンバセパレータ58の更なる詳細は、
図12(
上面斜視図)と
図13(底面斜視図)に表される。チャンバセパレータ58は、流体ビア66に隣接する複数の吐出ヘッドによる流体吐出のため、流体を流体漏斗56から吐出ヘッド基板60の並列ビア66(
図10)へ向け導く。吐出装置は、従来の抵抗加熱式吐出装置、バブルポンプ射出装置、圧電吐出装置であってよい。チャンバセパレータ58の特徴は、あふれた流体を流体漏斗56からカートリッジ本体52のオーバーフロー領域70(
図10)へ導くチャンバーセパレータの間隙68を設けることである。
図14は、流体漏斗56が領域72においてチャンバセパレータ58よりも僅かに大きいことを示しており、もし流体チャンバ64があふれても、流体はチャンバセパレータ58の頂部を超えて間隙68内に流れ、そこで他のあふれた流体と混合され、このように流体間の汚染の可能性を避ける。オーバーフロー領域70はカートリッジ本体52の未使用領域である。
【0023】
図15は、開放式流体液滴吐出カートリッジ50の更なる例示を提供する。
図15において、漏斗56はチャンバセパレータ58に隣接する周囲74を有し、チャンバセパレータ58の周囲76よりも僅かに大きい。従って、もし過度の流体が流体チャンバ64に加えれても、
流体は間隙68内にあふれる。チャンバセパレータ58の周囲よりも小さい漏斗56の周囲74も、流体チャンバ64が充填されるとき流体からの空気の放出を促進する。漏斗56とチャンバセパレータ58の周囲のサイズの差異は、流体チャンバ64内に設けられる流体の粘度と表面張力に調整することができる。
【0024】
図16~
図19は、開放式流体液滴吐出カートリッジ50のカバーの代替的な開口を表す。
図16において、開口80はカバー54に2次元アレイにて設けられる。
図17において、カバー82は、それぞれがカバー54の開口80よりも大きい平行な長方形の開口84を含む。従って、
図18と
図19に示されるように、カバー54から垂れた漏斗56は、カバー82から垂れた漏斗86よりも実質的に小さい、両実施形態は比較的大きく、深い流体漏斗56と86を伴うカバー設計を提供し、開放式流体液滴吐出カートリッジ50をピペットで手動で充填するときの失敗を効果的に減少させることができる。
【0025】
図20~
図29を参照し、代替的な開放式流体液滴吐出カートリッジ90が表される。前記の実施形態のように、開放式流体液滴吐出カートリッジ90は、カートリッジ本体92とカバー94とを含む。ただし、開放式流体液滴吐出カートリッジ50とは異なり、開放式流体液滴吐出カートリッジ90は、カバー94に4つの開口96を含む。従って、カバー94から垂れた4つの流体漏斗98が存在する。同様に、カートリッジ本体92に設けられたチャンバセパレータ100は、4つの流体を半導体基板102の流体ビアに流すよう設計される。上述したように、フレキシブル回路104が、半導体基板102上のビアに隣接する吐出装置を作動させるための、半導体基板102への電気接続を提供する。
【0026】
図22~
図24は、開放式流体液滴吐出カートリッジ90の他の様態を表す。
図22において、流体チャンバ108を互いに分離するため、共通のチャンバ壁106が提供される。
図23は、漏斗98が如何にして流体を流体チャンバ108内に導くかを示す。
図24は、カートリッジ本体92のチャンバセパレータ100の向きを示す。従って、第2の実施形態は、デジタル分注システム10を用いて基板上に4つの異なる流体までを吐出するために用いることができる開放式流体液滴吐出カートリッジ90を提供する。
【0027】
上述したカバーと開放式流体液滴吐出カートリッジの実施形態の全ては、大きく深い漏斗56、86、98と組み合わせた比較的大きい開口80、84、96を伴うカバー設定を提供し、これはピペットで開放式流体液滴吐出カートリッジ50と90を手動で充填するときの失敗を効果的に減少させることができる。
【0028】
いくつかの実施形態において、デジタル分注システム10は、マイクロウェルプレート38(
図6)に流体を堆積するために用いられることができる。実験のためのマイクロウェルプレートの充填は、時間を要する手動のタスクである。マイクロウェルプレート38の準備に要する時間を削減するため、複数のウェル42内に同時に流体を堆積できることが望ましい。しかし、従来のデジタル分注システムには、単一の軸に沿って直線状に配置された分注ヘッドを有するものが存在する。流体吐出器を含む分注ヘッドチップは、そのような分注ヘッド上に個別に配置される。本開示は、単一の半導体基板102上の複数の流体ビアを組み合わせることにより、改善した流体分注システム10を提供し、流体ビアは二次元マトリックスに配置される。そのような2次元マトリックスは、マイクロウェルプレート38のウェル42を充填する時間を大幅に減少することができる。2次元マトリックスは、半導体基板上の個々の吐出ヘッドを機械的に配置するのではなく、流体ビアがフォトリソグラフィ技術を通じて形成されることから、流体ビアとマイクロウェルプレート38との間の位置合わせも改善する。2×2マトリックス、4×2マトリックス、4×4マトリックスといった、8×2マトリックス又は8×4マトリックスまでを含むがこれに限定されない、流体ビアの様々な2次元マトリックスが用いられてよい。
【0029】
図25は、半導体基板102上の2×2マトリックスで設けられた4つの流体ビア110A~110Dを含む、半導体基板102の平面図である。吐出装置は、従来の方法で流体ビアの両側に設けられる。流体ビア110Aと110Bは、マイクロウェルプレート38上のウェル42の間隔に対応する、中心間距離D1の間隔で離れている。いくつかの実施形態において、流体ビア110Aと110Bとの間の中心間距離D1は、約2~約9ミリメートル(mm)の範囲である。いくつかの実施形態において、流体ビア110Aと110Bとの間の中心間距離D1は、約4.5mmである。円112A~112Dは、マイクロウェルプレート38のウェル42の底部を表し、直径約2000ミクロンである。流体ビア110Aと流体ビア110Cとの間の中心間距離D2も、約4.5mmといった、約2~約9mmの範囲である。流体ビア110Aと110C、又は110Bと110Dの間の距離D3は、約2
.5mm
~約3.2mmといった、約1~約5mmの範囲である。いくつかの実施形態において、基板は約7~約10mmの長さLと、約5~約7mmの幅Wを有する。
【0030】
流体ビアの代替的な実施形態である114A~114Dが
図26に示される。基板116上の流体ビア114A~114Bは、流体ビア110A~110Bとは異なる距離D4の間隔で離れている。1つの実施形態において、流体ビア114Aと114Bは、約3.5mmといった約2~約4mmの中心間距離D4の間隔で離れており、流体ビア114Bと114Dは、約4.2mmといった約3.5~約5mmの中心間距離D5の間隔で離れている。流体ビア114Aと114C、又は114Bと114Dの間の距離D6は、約1.7mmといった約1~約2mmの範囲である。流体ビア110A~110Dがウェル42の底部の直径112A~112Dよりも僅かに小さい長さLを有するのに対し、流体ビア114A~114Dはウェル42の底部の直径112A~112Dよりも大きい長さLを有する。
【0031】
図27~
図29は、2次元マトリックスを含む半導体基板102又は116のためのアドレス指定構造を表し、P1~P8は流体ビアの両側に設けられた吐出装置の発射をシーケンスするためのプリミティブ型アドレスである。流体ビア114A~114Cの周囲の数字は、各吐出ヘッドの流体吐出器を表す。
図27において、各流体吐出器は例えば12pLの流体を分注する。応用によっては、
流体ビア114A又は114Cの流体吐出器の配列に沿った小さな液滴重量の流体吐出器を有することが望ましい。
図27において、流体吐出器のサイズが小さいため、プリミティブ型アドレスP1、P2、P7、P8に関連付く40の流体吐出器があり、プリミティブ型アドレスP3、P4、P5、P6に関連付く20の流体吐出器がある。
図28において、流体吐出器はより大きく、24pLの液滴を吐出する。従って、やはりプリミティブ型アドレスP1、P2、P7、P8に関連付く40の流体吐出器を有するが、プリミティブ型アドレスP3、P4、P5、P6に関連付くのは6つの流体吐出器のみである。別の代替的な実施形態において、
図29に示されるように、48pLの流体を分注する流体吐出器が、ビア118Aと118Cに沿って設けられる。この実施形態において、30の流体吐出器が各プリミティブ型アドレスP1、P2、P7、P8に関連付く。吐出器のサイズに関わりなく全ての流体吐出器の間で共通のアドレス指定体系を共有することは、システム統合の複雑さを軽減する。
【0032】
従って、本開示によるデジタル分注システム10は、吐出ヘッドの2次元マトリックスに設けられた
図25と
図26に表された流体吐出器ヘッドを用いて、マイクロウェルプレート38のウェル40内、スライド36上、回路板基板上、又はその他の基板上に流体を堆積するために用いることができる。吐出ヘッドの2次元マトリックスは、吐出ヘッド間の改善された位置合わせ精度を提供し、より正確な、マイクロウェルプレートの充填、ガラススライド上の液滴の配置、又は回路板基板上の流体の堆積を可能とする。共通の電子アドレス指定構造により、
図27と
図28を参照して上述したように、複数の吐出器流体ボリュームが、同一の分注システムにおいてデジタル的にサポートされることができる。
【0033】
上述したデジタル分注システム10は、1以上の開放式流体液滴吐出カートリッジ50又は90を含むことができ、又は代替的な実施形態において、デジタル分注システム120(
図30)は、開放式流体液滴吐出カートリッジ122と予め充填された流体液滴吐出カートリッジ124の両方を含むことができる。予め充填されたカートリッジ124は、密封式流体液滴吐出カートリッジとも言及される。開放式流体液滴吐出カートリッジ122は、使用時にユーザが流体の少量をカートリッジ122に加えることを可能とする。開放式流体液滴吐出カートリッジ122はピペットカートリッジとして言及され、血液学といった生物学的分析分野で用いられうる。
【0034】
前述の実施形態は3又は4の流体のための流体液滴吐出カートリッジを特に説明したが、各流体液滴吐出カートリッジは単一の流体又は2つの異なる流体を分注するために構成されてよい。
【0035】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いられる単数形「a」、「an」、「the」は、明示的かつ明確に1つの指示物に限定されない限り、複数の指示物を含むことに留意されたい。本明細書で用いられる「include」という用語およびその文法上の変形は、リスト内の項目の列挙が、リストされた項目を置換または追加できる他の同様の項目を除外しないよう、非限定的であることを意図している。
【0036】
本明細書および添付の特許請求の範囲では、特に明記しない限り、量、比率又は割合を表す全ての数字及び本明細書及び特許請求の範囲で使用されるその他の数値は、全ての場合に用語「約」によって改変されると理解されるべきである。従って、そうでないと示されない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本開示により得ることが求められる所望の特性に応じて変わり得る近似値である。少なくとも、そして請求項の範囲に対する均等論の適用を制限する試みとしてではなく、各数値パラメーターは、少なくとも、述べられた有効数字の数を考慮し、そして通常の丸め手法を適用することにより、解釈されるべきである。
【0037】
特定の実施形態について説明したが、出願人または他の当業者には、現在予測しない、又は予測できない、代替、修正、変形、改善、及び実質的な均等物が生じうる。従って、添付の提出された特許請求の範囲と修正された特許請求の範囲は、そのようなすべての代替、修正、変形、改善、及び実質的な均等物を包含することを意図している。
【符号の説明】
【0038】
10、120:デジタル分注システム
12:分注ヘッドカートリッジ
14:トレイ
18:ボックス
20:起動スイッチ
22:背面側
24:開口
26:USBポート
28:電力入力ポート
32:スライドアダプタ
34:ウェルプレートアダプタ
36:ガラススライド
38:マイクロウェルプレート
40:凹部領域
42:ウェル
50、90、122:開放式流体液滴吐出カートリッジ
52、92:カートリッジ本体
54、82、94:カバー
56、86、98:流体漏斗
58、100:チャンバセパレータ
60:基板
62:フレキシブル回路
64、108:流体チャンバ
66:流体ビア
68:ギャップ
70:オーバーフロー領域
72:領域
74、76:周囲
80、96:開口
102:半導体基板
106:共通するチャンバ壁
110A~D、114A~114D、116A、116C、118A、118C:流体ビア
112A~D:丸
124:密封式流体液滴吐出カートリッジ
D1、D2、D4、D5:中心間距離
D3、D6:距離
L、L1、L2:長さ
W:幅
P1~8:プリミティブ型アドレス