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特許7338465繊維機械システム及びホストコンピュータ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】繊維機械システム及びホストコンピュータ
(51)【国際特許分類】
   D03D 51/00 20060101AFI20230829BHJP
【FI】
D03D51/00 G
D03D51/00 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019238325
(22)【出願日】2019-12-27
(65)【公開番号】P2021107586
(43)【公開日】2021-07-29
【審査請求日】2022-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100212657
【弁理士】
【氏名又は名称】塚原 一久
(72)【発明者】
【氏名】藤田 悠矢
(72)【発明者】
【氏名】戸田 浩文
(72)【発明者】
【氏名】松村 英樹
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-175141(JP,A)
【文献】特開平05-342222(JP,A)
【文献】特開2017-228218(JP,A)
【文献】特開昭54-042456(JP,A)
【文献】特開昭62-141133(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D 51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維機械と、前記繊維機械の稼働状況を管理するホストコンピュータとが通信可能に構成された繊維機械システムであって、
前記ホストコンピュータは、
修復する前記繊維機械を決定する際の判定基準として、複数の判定項目、前記複数の判定項目それぞれの判定条件、及び前記複数の判定項目による判定を実行する判定順位が定められた判定テーブルを備え、
前記複数の判定項目、前記複数の判定項目それぞれの判定条件、及び、前記複数の判定項目による判定を実行する判定順位を、任意に定めることができ、
前記判定順位のうち、最も優先される第1判定順位を前記複数の判定項目に対して任意に定めることができ、
2台以上の前記繊維機械が停止した場合、前記判定テーブルに基づいて、修復する前記繊維機械を決定する
繊維機械システム。
【請求項2】
前記ホストコンピュータは、前記判定テーブルとして、生産物の品種についての判定項目を少なくとも備える
請求項1に記載の繊維機械システム。
【請求項3】
前記ホストコンピュータは、前記判定テーブルとして、前記繊維機械についての判定項目を少なくとも備える
請求項1または請求項2に記載の繊維機械システム。
【請求項4】
前記ホストコンピュータは、前記判定テーブルに含まれるいずれかの前記判定順位の前記判定項目に基づく判定によって、修復する前記繊維機械を決定できない場合、判定に用いた前記判定項目の前記判定順位の次の順位の前記判定項目に基づいて判定を行う
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の繊維機械システム。
【請求項5】
前記ホストコンピュータは、修復する前記繊維機械を決定する際に、修復を担当する作業者を決定する
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の繊維機械システム。
【請求項6】
前記ホストコンピュータは、修復を担当することが可能な前記作業者が存在する場合に、修復する前記繊維機械を決定する
請求項5に記載の繊維機械システム。
【請求項7】
複数の繊維機械と通信可能に構成され、繊維機械システムにおいて前記複数の繊維機械の稼働状況を管理するホストコンピュータであって、
前記ホストコンピュータは、
修復する前記繊維機械を決定する際の判定基準として、複数の判定項目、前記複数の判定項目それぞれの判定条件、及び前記複数の判定項目による判定を実行する判定順位が定められた判定テーブルを備え、
前記複数の判定項目、前記複数の判定項目それぞれの判定条件、及び、前記複数の判定項目による判定を実行する判定順位を、任意に定めることができ、
前記判定順位のうち、最も優先される第1判定順位を前記複数の判定項目に対して任意に定めることができ、
2台以上の前記繊維機械が停止した場合、前記判定テーブルに基づいて、修復する前記繊維機械を決定する
ホストコンピュータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維機械システム及びホストコンピュータに関し、特に、複数の繊維機械が停止した場合に、修復する繊維機械を決定する繊維機械システム及びホストコンピュータに関する。
【背景技術】
【0002】
織機または紡機といった繊維機械が複数台設置された繊維工場において、2台以上の繊維機械が停止した場合、繊維工場全体の生産性を考慮し、作業者の移動時間が短い繊維機械、稼働率の高い繊維機械、故障原因に基づいて修復時間の短い繊維機械、または一定時間以上停止している繊維機械を優先的に修復することが一般的に行われていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭63-175141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に提案された手法によれば、一律の基準に基づいて優先的に修復する繊維機械を決定するため、繊維工場の生産性を向上させることが可能になる。しかし、繊維工場全体の生産性の改善に主眼を置いているため、特定の布品種または繊維機械の稼働率を改善したいといった細かな要望、あるいは一時的な要望に応えることはできなかった。
【0005】
このため、一律の基準に基づいた繊維工場全体の生産性に配慮しつつ、一律の基準には含まれない特定の布品種または繊維機械の稼働率を改善したいといった細かな要望に応えることが望まれている。
【0006】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、2台以上の繊維機械が停止し、修復する繊維機械を決定する際に、細かな要望に応じることが可能な繊維機械システム及びホストコンピュータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明における繊維機械システムは、繊維機械と、繊維機械の稼働状況を管理するホストコンピュータとが通信可能に構成された繊維機械システムであって、ホストコンピュータは、修復する繊維機械を決定する際の判定基準として、複数の判定項目、複数の判定項目それぞれの判定条件、及び複数の判定項目による判定を実行する判定順位が定められた判定テーブルを備え、複数の判定項目、複数の判定項目それぞれの判定条件、及び、複数の判定項目による判定を実行する判定順位を、任意に定めることができ、判定順位のうち、最も優先される第1判定順位を複数の判定項目に対して任意に定めることができ、2台以上の繊維機械が停止した場合、判定テーブルに基づいて、修復する繊維機械を決定する。
【0008】
本発明における繊維機械システムのホストコンピュータは、複数の繊維機械と通信可能に構成され、繊維機械システムにおいて複数の繊維機械の稼働状況を管理するホストコンピュータであって、ホストコンピュータは、修復する繊維機械を決定する際の判定基準として、複数の判定項目、複数の判定項目それぞれの判定条件、及び複数の判定項目による判定を実行する判定順位が定められた判定テーブルを備え、複数の判定項目、複数の判定項目それぞれの判定条件、及び、複数の判定項目による判定を実行する判定順位を、任意に定めることができ、判定順位のうち、最も優先される第1判定順位を複数の判定項目に対して任意に定めることができ、2台以上の繊維機械が停止した場合、判定テーブルに基づいて、修復する繊維機械を決定する。
【0009】
ホストコンピュータは、判定テーブルとして、生産物の品種についての判定項目を少なくとも備える。
【0010】
ホストコンピュータは、判定テーブルとして、繊維機械についての判定項目を少なくとも備える。
【0011】
ホストコンピュータは、判定テーブルに含まれるいずれかの判定順位の判定項目に基づく判定によって、修復する繊維機械を決定できない場合、判定に用いた判定項目の判定順位の次の順位の判定項目に基づいて判定を行う。
【0012】
ホストコンピュータは、修復する繊維機械を決定する際に、修復を担当する作業者を決定する。
【0013】
ホストコンピュータは、修復を担当することが可能な作業者が存在する場合に、修復する繊維機械を決定する。
【発明の効果】
【0014】
この発明に係る繊維機械システム及びホストコンピュータによれば、2台以上の繊維機械が停止し、修復する繊維機械を決定する際に、細かな要望に応じることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態1における繊維機械システムの構成を示す構成図である。
図2】本発明の実施の形態1における繊維機械システムの構成を示すブロック図である。
図3】本発明の実施の形態1における繊維機械システムの状態を示す状態遷移図である。
図4】本発明の実施の形態1における繊維機械システムに含まれる各装置の状態を示す状態テーブルである。
図5】本発明の実施の形態1における判定テーブルの設定例を説明する説明図である。
図6】本発明の実施の形態1における判定テーブルの設定例を説明する説明図である。
図7】本発明の実施の形態1における繊維機械システムでの作業者の移動を説明する説明図である。
図8】本発明の実施の形態1における繊維機械システムの信号授受を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明による繊維機械システム及びホストコンピュータの実施の形態につき、図面を用いて説明する。なお、各図において、同一部分には同一符号を付している。
【0017】
実施の形態1.
はじめに、本発明の実施の形態1における繊維機械システム1の構成について、図1及び図2を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態1における繊維機械システム1の構成を示す構成図である。図2は、本発明の実施の形態1における繊維機械システム1の構成を示すブロック図である。
【0018】
ここで、繊維機械システム1を構成する繊維機械として、織機を具体例にして説明する。また、停止した織機を修復する作業者を織工として説明する。
【0019】
[繊維機械システム1の構成]
図1及び図2に示される繊維機械システム1は、ネットワーク100、ホストコンピュータ200、及び複数の織機300を備えている。
【0020】
ネットワーク100は、繊維工場に設置された有線または無線によるローカルエリアネットワーク(Local Area Network)であり、ホストコンピュータ200及び複数の織機300の間で情報の伝達ができるよう、通信可能に構成されている。
【0021】
ホストコンピュータ200は、複数の織機300それぞれの稼働状況を管理するもので、制御部201と、通信部202と、記憶部210と、操作部220とを備えている。制御部201は、制御プログラムにより織機300の稼働状況を管理し、2台以上停止した織機300について優先的に修復するものを決定する。
【0022】
通信部202は、ネットワーク100を通して、ホストコンピュータ200と各織機300との通信を実現する。記憶部210は、各種パラメータ、織機300の稼働状況を制御する制御プログラム、織機300の状態と修復担当を示す状態テーブル、及び、修復実行を判定する際の判定基準となる判定テーブルを記憶する。操作部220は、表示部及び入力部を有し、制御部201からの各種情報を表示部に画像表示し、入力部から入力された情報を制御部201に伝達する。
【0023】
織機300は、設定された品種の布を生産するもので、制御部301と、通信部302と、記憶部310と、操作部320と、機械部330とを備えている。制御部301は、機械部330による布の生産動作を制御する。通信部302は、ネットワーク100を通して、織機300とホストコンピュータ200との通信を実現する。記憶部210は、号機番号を含む各種パラメータ、及び織機300の動作を制御する制御プログラムを記憶する。操作部320は、表示部及び入力部を有し、制御部301からの各種情報を表示部に画像表示し、入力部に入力された情報を制御部301に伝達する。機械部330は、制御部301の制御に従い、定められた品種の布を生産する。制御部301は、機械部330の異常を検知して、織機300を停止させる。
【0024】
図1及び図2の繊維機械システム1において、繊維工場あるいは繊維工場内の特定のエリアに複数の織機300が配置された様子を示しているが、織機300は2台以上であればよい。
【0025】
[ホストコンピュータ200が管理する情報]
ホストコンピュータ200は、織機300それぞれについて、以下の情報を保持し、管理する。
・「号機」:織機300それぞれを一意に識別可能な番号。
・「状態」:織機300それぞれの稼働状況を表す以下の4種の状態が入る。
-「運転」:織機300が運転中を示す状態。
-「停止」:織機300が停止中を示す状態。
-「修復完了」:織機300が修復完了であり、運転再開待ちの状態。
-「修復担当」:修復対象になっている織機300を修復する、または、修復する予定の担当の情報。修復担当は、作業者としての織工の名称である織工名、または、自動修復機能を有する装置名のいずれかである。
なお、ホストコンピュータ200は、織機300の号機または状態の情報に、生産物の品種の情報を加えて、管理する。
【0026】
以上の情報について、ホストコンピュータ200は、号機の情報に関しては、事前に入力された情報を使用する。状態や修復担当の情報は、周期的もしくは織機300での何らかのイベント発生ごとに更新する。
【0027】
[ホストコンピュータ200での情報の処理]
織機300からの送信情報に対するホストコンピュータ200の処理は、以下の通りである。
【0028】
修復を行う織工は、以下の情報を、織機300経由、あるいは所持する端末経由で、ホストコンピュータ200に送信する。
・「織工名」:織工が自分の名称または識別信号を送信する。情報を送信した織工の識別に使用される。
・「状態信号」:織工が自身の作業状態に応じて以下の3種の信号のいずれかを送信する。
-「修復開始」:織工が修復作業を開始する際に、修復対象の織機300から送信する。これに対し、ホストコンピュータ200からの応答はなし。
-「修復完了」:織工が修復作業を完了した際に、修復完了した織機300から送信する。これに対し、ホストコンピュータ200からの応答として、次に修復すべき対象の織機300の号機番号についての指示が返る。なお、ホストコンピュータ200からの応答は、次に修復すべき対象の織機300の号機番号のほかに、その機台の品種や停台時間などの情報を含めることができる。
-「指示要求」:織工が、停止中の織機300のうちで優先して修復する対象となるものを知りたい際に、任意の織機300から送信する。これに対し、ホストコンピュータ200からの応答として、次に修復すべき対象の織機300の号機番号についての指示が返る。
【0029】
該当するイベントが発生した織機300は、自らの号機番号と共に、以下の情報をホストコンピュータ200に送信する。
・「運転停止」:異常または故障により運転を停止した織機300が送信する。
・「運転開始」:運転を開始した織機300が送信する。
・「自動修復対象外」:自動修復機能を有するものの、自動修復対象外の状態で停止した織機300が送信する。
【0030】
[織機300の状態]
次に、ホストコンピュータ200から見た織機300の状態を、状態遷移図と状態テーブルにより説明する。図3は、本発明の実施の形態1における繊維機械システム1の状態を示す状態遷移図である。図4は、本発明の実施の形態1における繊維機械システム1に含まれる各織機300の状態を示す状態テーブルである。
【0031】
図3の状態遷移図において、それぞれの状態は以下の通りである。なお、図3において、「「-」を受信」とあるのは、織機300が「-」を送信し、ホストコンピュータ200が「-」を受信したことを意味する。
・ホストコンピュータ200は、起動時から正常に動作している織機300について、「状態:運転/修復担当:-」の状態とする。
・ホストコンピュータ200は、停止後に修復された織機300から「運転開始」を受信した場合、「状態:運転/修復担当:-」の状態とする。
・ホストコンピュータ200は、「状態:停止/修復担当:[織工名]」の織機300から「運転開始」を受信した場合、「状態:運転/修復担当:-」の状態とする。
・ホストコンピュータ200は、織機300から「運転停止」の情報を受信した場合、その情報を送信した織機300が自動修復機能を有しない場合、「状態:運転/修復担当:-」から「状態:停止/修復担当:-」に遷移させる。
・ホストコンピュータ200は、織機300から「運転停止」の情報を受信した場合、その情報を送信した織機300が自動修復機能を有する場合、「状態:運転/修復担当:-」から「状態:停止/修復担当:装置」に遷移させる。
・ホストコンピュータ200は、「状態:停止/修復担当:-」になっている織機300について、修復することを決定し、織工を割り当てる場合、「状態:停止/修復担当:[織工名]」に遷移させる。
・ホストコンピュータ200は、「状態:停止/修復担当:-」になっている織機300について、織工から「修復開始」を受信した場合、「状態:停止/修復担当:[織工名]」に遷移させる。
・ホストコンピュータ200は、自動修復機能を有し、「状態:停止/修復担当:装置」の状態にある織機300から「運転開始」を受信すると、「状態:運転/修復担当:-」に遷移させる。
・ホストコンピュータ200は、修復担当として割り当てていた織工が割り当て以外の織機300の修復を開始した情報を受信した場合、「状態:停止/修復担当:[織工名]」の状態にある織機300を「状態:停止/修復担当:-」に遷移させる。
・ホストコンピュータ200は、自動修復機能を有する織機300から[自動修復対象外]を受信すると、「状態:停止/修復担当:装置」から「状態:停止/修復担当:-」に遷移させる。
【0032】
ホストコンピュータ200は、図3の状態遷移図に従って変化するそれぞれの織機300ごとに、それぞれの状態とそれぞれの修復担当について、図4に示す状態テーブルとして管理している。
図4に示す具体例では、号機番号001の織機300は、状態:停止、修復担当:A、である。号機番号002の織機300は、状態:運転、修復担当:-、である。号機番号003の織機300は、状態:停止、修復担当:-、である。号機番号004の織機300は、状態:停止、修復担当:-、である。号機番号005の織機300は、状態:停止、修復担当:B、である。号機番号006の織機300は、状態:停止、修復担当:装置、を示している。
【0033】
[判定テーブルの設定]
次に、2台以上の織機300が停止した場合、修復を優先的に実行するいずれか1台の織機300を決定する際に、ホストコンピュータ200において制御部201が判定基準として参照する判定テーブルについて、図5を参照して説明する。
【0034】
図5は、本発明の実施の形態1における判定テーブルの設定例を説明する説明図である。判定テーブルには、2台以上の織機300が故障した場合に修復するいずれか1台を決定する際の判定基準として、複数の判定項目、複数の判定項目それぞれの判定条件、及び、複数の判定項目による判定を実行する判定順位、が定められている。
【0035】
図5に例示する判定テーブルにおいて、複数の判定項目、複数の判定項目それぞれの判定条件、及び、複数の判定項目による判定を実行する判定順位は、それぞれ以下の通りである。
【0036】
判定項目としては、例えば、品種、号機番号、移動時間、原因別修復時間、総修復時間、停台時間閾値、停台時間長、を定めることができる。
【0037】
図5の判定テーブルの具体例では、以下の通りである。
・第1判定順位に、判定項目:品種として、生産物の品種Aを優先に設定している。
・第2判定順位に、判定項目:号機番号として、3001号機、3206号機、3303号機を優先に設定している。
・第3判定順位に、判定項目:移動時間として、織工が修復先に移動する時間について、より短いものを優先に設定している。なお、移動時間は、複数の織機300内での移動時間の相対値であり、絶対的な時分秒に限定されない。
・第4判定順位に、判定項目:原因別修復時間として、(タテ,ヨコ,手動,捨耳,その他)=(10,3,5,7,1)として、修復時間が短い原因で停止しているものを優先に設定している。なお、修復時間は原因毎の相対値であり、絶対的な時分秒に限定されない。
・第5判定順位に、判定項目:総修復時間=移動時間+原因別修復時間として時間が短いものを優先に設定している。
・第6判定順位に、判定項目:閾値20分とし、閾値20分より長いもの優先に設定している。
・第7判定順位に、判定項目:停止時間がより長いもの優先に設定している。
【0038】
判定テーブルの他の設定例について、図6を参照して説明する。図6は、本発明の実施の形態1における判定テーブルの設定例を説明する説明図である。図6に示す判定テーブルの具体例では、以下のように設定されている。
・第1判定順位に、判定項目:号機番号として、3001号機を第1優先、3206号機と3303号機を第2優先に設定している。
・第2判定順位に、判定項目:品種として、生産物の品種Aと品種Cを第1優先、品種Dを第2優先に設定している。
・第3判定順位に、判定項目:総修復時間=移動時間+原因別修復時間として時間が短いものを優先に設定している。
【0039】
以上の図5図6に示すように、判定テーブルにおける、複数の判定項目、複数の判定項目それぞれの判定条件、及び、複数の判定項目による判定を実行する判定順位を、繊維機械システム1の管理者または責任者が任意に定めることができる。
【0040】
[移動時間の算出]
次に、作業者としての織工10が修復先に移動する移動時間の算出について、図7を参照して説明する。図7は、本発明の実施の形態1における繊維機械システム1での作業者の移動を説明する説明図である。
【0041】
ここでは、織機300について、X方向に0~5の6台分、Y方向に0~5の6台分が配置され、号機番号:3001~3006、3101~3106、3201~3206、3301~3306、3401~3406、3501~3506の合計36台が配置された様子を示している。
【0042】
織工10の位置は、織工10が修復完了を送信した織機300の位置、織工10が指示要求を送信した織機300の位置、織工10が所持する端末またはRFIDにより求められる位置、のいずれか、またはこれらの組み合わせにより、ホストコンピュータ200が決定する。
【0043】
図7では、織工10は座標(Xs,Ys)=(0,0)に存在しているとする。織工10が座標(Xs,Ys)から、織機300それぞれの座標(Xm,Ym)まで移動する移動時間Tmは、以下のように算出できる。なお、織工10の移動速度が一定であれば、移動時間は移動距離に比例するため、通路の移動距離として算出する。
【0044】
また、図7の織機300は、Y方向に対してX方向が3倍の大きさであるため、係数ωxとωyについて、(ωx,ωy)=(3,1)と設定する。
従って、移動時間Tmは、
Tm=ωx|Xm-Xs|+ωy|Ym-Ys|
と算出することができる。なお、ここでは通路幅を考慮していない。
【0045】
座標(0,0)に位置している織工10が、各位置の織機300まで移動する移動時間Tmは以下の通りである。なお、移動時間Tmの計算は、判定のための相対値を用いればよく、絶対的な時分秒に限定されるものではない。
号機番号:3103まで移動する時間Tm(3103)は、
Tm(3103)=3|1-0|+1|2-0|=5である。
号機番号:3206まで移動する時間Tm(3206)は、
Tm(3206)=3|1-0|+1|5-0|=8である。
なお、3103と3206とは、同じ通路であり、Xmは同一である。
号機番号:3302まで移動する時間Tm(3302)は、
Tm(3302)=3|3-0|+1|1-0|=10である。
号機番号:3405まで移動する時間Tm(3405)は、
Tm(3405)=3|3-0|+1|4-0|=13である。
なお、3302と3405とは、同じ通路であり、Xmは同一である。
この結果、判定項目:移動時間で判定した場合、優先順位は、3103>3306>3202>3405、となる。なお、通路の幅、高低差、及び織機300の向きを考慮して、細かく計算することも可能である。
【0046】
[原因別修復時間による判定例]
ここで、図5に示す原因別修復時間の算出と判定の具体例を示す。なお、原因別修復時間は原因毎に必要な修復時間の相対値であり、絶対的な時分秒に限定されない。
号機番号:3103と号機番号:3206の停止原因が「タテ」、号機番号:3302と号機番号:3405の停止原因が「ヨコ」、であるとする。この場合、号機番号:3103の原因別修復時間=10、号機番号:3206の原因別修復時間=10、号機番号:3302の原因別修復時間=3、号機番号:3405の原因別修復時間=3、である。
この結果、判定項目:原因別修復時間で判定した場合、優先順位は、3302=3405>3103=3206、となる。
【0047】
[総修復時間による判定例]
ここで、総修復時間の算出と判定の具体例を示す。号機番号:3103の総修復時間=5+10=15、号機番号:3206の総修復時間=11+10=21、号機番号:3302の総修復時間=10+3=13、号機番号:3405の総修復時間=16+3=19、である。
この結果、判定項目:総修復時間で判定した場合、優先順位は、3302>3103>3405>3206、となる。
【0048】
[動作]
以下、ホストコンピュータ200による織機300の稼働状況の管理の処理について説明する。なお、以下の説明では、ホストコンピュータ200の制御部201による処理を、ホストコンピュータ200の処理として説明する。同様に、織機300の制御部301による処理を、織機300の処理として説明する。
【0049】
ホストコンピュータ200は、織機300または織工から何らかの情報を受信した場合は、図3の状態遷移図に従って織機300の状態を遷移させ、その遷移した状態により図4に示した状態テーブルのデータを更新する。
【0050】
ホストコンピュータ200は、図4の状態テーブルを参照し、織機300として停止中であって、修復担当の織工が割り当てられていないものが存在するかを確認する。
【0051】
ホストコンピュータ200は、図4の状態テーブルを参照し、織機300として停止中であって、織工が割り当てられていないものが1台だけ存在する場合、1台のみの停止している織機300の修復を、修復作業に着手可能な織工に通知する。
【0052】
ホストコンピュータ200は、以上の通知を、織工が直前まで修復を担当していた織機300の操作部320、または、織工が所持する端末に対して行う。
【0053】
ホストコンピュータ200は、以上の通知の際に織工の位置が不明であれば、全ての織機300の操作部320を用いて一斉通知を行ってよいし、構内放送のような他の報知手段を用いてもよい。
【0054】
また、織機300として、停止中で織工が割り当てられていないものが2台以上存在する場合、ホストコンピュータ200は、図5及び図6により一例として示した判定テーブルを参照し、優先して修復する1台の織機300を決定する。
【0055】
ホストコンピュータ200は、図5または図6に一例として示す判定テーブルを参照し、判定テーブルの第1判定順位の判定項目に基づいて判定し、優先して修復する1台の織機300を決定する。
【0056】
ホストコンピュータ200は、第1判定順位の判定項目に基づく判定で1台に決定できない場合、判定テーブルの第2判定順位以下の判定項目に基づいて判定し、優先して修復する1台の織機300を決定する。
【0057】
図5に例示した判定テーブルでは、品種、号機番号、移動時間、原因別修復時間、総修復時間、停台時間閾値、停台時間長、の判定順位に従って、ホストコンピュータ200が判定を行う。
【0058】
図6に例示した判定テーブルでは、号機番号、品種、総修復時間、の判定順位で、ホストコンピュータ200が判定を行う。
【0059】
なお、判定テーブルにおいて、同じ判定項目について、別の判定条件を定めて、別の判定順位に存在するように設定することも可能である。例えば、図6の判定テーブルにおいて、判定順位2に判定項目:品種が存在しているが、更に、「判定順位:4、判定項目:品種、判定条件:品種B、品種C」を設定することが可能である。
【0060】
ホストコンピュータ200は、判定テーブルの判定順位が最下位の判定項目まで判定を続けても判定が終了しない場合、あらかじめ定めておいた基準に従って、優先して修復する1台の織機300を決定する。なお、あらかじめ定めておいた基準とは、例えば、2台以上の停止した織機300のうち、号機番号の最も若いものに決定する、などである。
【0061】
ホストコンピュータ200は、決定した優先して修復する1台の織機300の修復を、修復作業に着手可能な織工に通知する。ホストコンピュータ200は、この通知を、織工が直前まで修復を担当していた織機300の操作部320、または、織工が所持する端末に対して行う。また、ホストコンピュータ200は、この通知の際に織工の位置が不明であれば、全ての織機300の操作部320を用いて一斉通知を行ってよいし、構内放送のような他の報知手段を用いてもよい。
【0062】
ホストコンピュータ200は、修復開始の通知を受信した場合、修復が開始された織機300について、図3の状態遷移図に従って織機300の状態を遷移させ、その遷移した状態により、図4に示した状態テーブルのデータを更新する。
【0063】
なお、ホストコンピュータ200は、以上の説明において、情報の受信、データの更新、判定、決定、及び通知のいずれかの処理を実行しつつ、別の処理を実行することが可能である。
【0064】
ホストコンピュータ200は、織機300の稼働状況の管理を引き続き実行する場合は、以上の各処理を繰り返し実行する。また、ホストコンピュータ200は、管理する織機300の全体を停止させる場合には、必要な停止処理をすると共に、以上の処理を終了する。
【0065】
以下、ホストコンピュータ200と織機300との間の情報の送受信の手順を図8のシーケンス図により説明する。図8は、本発明の実施の形態1における繊維機械システム1の信号授受を示すシーケンス図である。
【0066】
前提状態として、図8の(a)の状態テーブルに示す段階において、織機300の002号機が運転中であり、001号機、003号機、004号機、005号機及び006号機が停止中である。また、001号機を織工Aが修復し、005号機を織工Bが修復し、006号機が自動修復しており、003号機と004号機は修復担当の織工が未定である。
【0067】
図8の(b)の状態テーブルに示す段階において、織工Bによる005号機の修復が完了し、織工Bが[修復完了]を005号機からホストコンピュータ200に送信する。ここで、織工Bが新たな修復作業に着手可能な状態になる。
【0068】
これに対応して、ホストコンピュータ200は、状態テーブルの005号機を修復完了/担当:-、と設定する。
また、ホストコンピュータ200は、判定テーブルを参照し、003号機及び004号機のうち、優先して修復する1台として004号機を決定し、織工Bに通知する。ホストコンピュータ200は、織工Bへの通知を、織工Bが直前まで修復を担当していた005号機に行う。
【0069】
図8の(c)の状態テーブルに示す段階において、今までは存在していなかった織工Cが新たな修復作業に着手可能な状態になり、004号機からホストコンピュータ200に[指示要求]を送信する。これは、織工Cが出勤してきた、休憩から戻った、応援に呼ばれた、などの場合である。
【0070】
これに対応して、ホストコンピュータ200は、停止中であり修復担当の織工が未定である003号機を織工Cに通知する。ホストコンピュータ200は、織工Cへの通知を、織工Cが指示要求を送信した004号機に行う。また、ホストコンピュータ200は、状態テーブルの003号機を停止/担当:織工C、と設定する。
【0071】
図8の(d)の状態テーブルに示す段階において、自動修復機能で修復を開始していた006号機が、自動修復対象外の状態であることが判明し、[自動修復対象外]をホストコンピュータ200に送信する。これに対応して、ホストコンピュータ200は、状態テーブルの006号機の修復担当を未定として、停止/担当:-と設定する。
【0072】
図8の(e)の状態テーブルに示す段階において、織工Bが004号機の修復を開始し、[修復開始]を004号機からホストコンピュータ200に送信する。ホストコンピュータ200は、情報テーブルにおいて織工Bを004号機の修復担当として既に設定しているため、情報テーブルに対する設定はおこなわない。
【0073】
図8の(f)の状態テーブルに示す段階において、織工Aが006号機の修復を開始し、[修復開始]を006号機からホストコンピュータ200に送信する。織工Aは001号機の修復を担当していたが、001号機の修復を中断し、指示されていない006号機の修復を開始した場合である。これに対応して、ホストコンピュータ200は、状態テーブルにおいて、001号機を停止/担当:-と設定し、006号機を停止/担当:織工A-と設定する。
【0074】
[実施の形態により得られる効果]
以上説明したように、本発明の実施の形態1によれば、以下に示す効果を得ることができる。
【0075】
本実施の形態1における繊維機械システム1とホストコンピュータ200によれば、修復する織機300を決定する際の判定基準として、複数の判定項目、複数の判定項目それぞれの判定条件、及び複数の判定項目による判定を実行する判定順位が定められた判定テーブルを備えておき、2台以上の織機300が停止した場合、ホストコンピュータ200が判定テーブルに基づいて修復する織機300を決定する。このため、停止した織機300が2台以上の場合、修復する織機300を決定する際に、生産性の観点だけでなく、特定の品種または特定の号機番号などの判定条件に基づいて、ユーザ毎の細かな要望に応じることが可能になる。
【0076】
この結果、優先して出荷したい品種を仕掛かっている織機300、生産物を早急に出したい織機300、修復時間が短くなる織機300など、任意の設定に柔軟に対応して、修復する織機300を決定することができる。また、判定テーブルを一時的に書き替えることで、一時的な細かな要望に対しても柔軟に対処し、修復する織機300を決定することができる。
【0077】
本実施の形態1における繊維機械システム1とホストコンピュータ200によれば、修復する織機300を決定する際に、停止している織機300それぞれに対し運転または停止状態と、修復担当の割り当てを明確にしているため、同じエリア内に複数の織工が存在する場合であっても、割り当てが重複する事態を避けることができる。
【0078】
本実施の形態1における繊維機械システム1とホストコンピュータ200によれば、修復する織機300を決定する際に、停止している織機300それぞれに対して修復担当を割り当てる際に、自動修復機能を有する織機300の場合には、その装置自身を修復担当として割り当てて管理しているため、自動修復機能を有する織機300に対して修復担当として織工を割り当てる事態を回避することができる。
【0079】
[その他の実施の形態]
本発明の実施の形態1における変形例を以下に説明する。
以上の説明において、繊維機械として織機300を具体例にしているが、これに限定されるものではない。例えば、織機300に代えて、リング精紡機のような紡機に対して、本発明の実施の形態1を適用してもよい。以上の実施の形態1を紡機に対して適用するのであれば、繊維機械についての判定項目として、紡機の場合は号機番号だけでなく、錘毎にしてもよい。
【0080】
以上の説明において、修復する対象を決定する判定テーブルには、優先すべき条件を設定しているが、これに限定されるものではない。例えば、判定項目の中に、優先しない条件を設定してもよい。具体的には、判定項目:品種として、品種Aは優先して修復、品種Fは全ての品種の中で最後に修復、のように設定することが可能である。また、移動時間と修復時間についても、時間が長いものを優先と設定することが可能である。
【0081】
織工が織工名または識別信号を織機300から送信する作業は、織機300の操作部320から入力するほかに、指紋、虹彩、及び静脈などを用いた生体認証、IDカードまたはRFIDなどを用いたID認証などの各種の認証技術によりホストコンピュータ200が行ってもよい。また、織機300の修復パターンなどから修復を担当した織工をホストコンピュータ200が認識するようにしてもよい。
【0082】
また、ホストコンピュータ200は、繊維機械システム1が存在する構内を監視する監視カメラの映像を解析し、織工個人について、顔画像を用いた顔認証、服装や体型などを用いた外観認証、歩き方などの個性を特定する歩容認証などの個人を認識する各種の映像解析認証などの各種技術により織工を認識するようにしてもよい。以上の生体認証、ID認証、修復パターン認識、及び映像解析認証などについては、以上の具体例以外の各種の技術を採用してもよいし、また、複数の技術を併用してもよい。
【符号の説明】
【0083】
1 繊維機械システム、10 織工、100 ネットワーク、200 ホストコンピュータ、201 制御部、202 通信部、210 記憶部、220 操作部、300 織機、301 制御部、302 通信部、310 記憶部、320 操作部、330 機械部。
図1
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図8