(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】人工芝
(51)【国際特許分類】
E01C 13/08 20060101AFI20230829BHJP
A47G 27/02 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
E01C13/08
A47G27/02 101D
(21)【出願番号】P 2020024034
(22)【出願日】2020-02-17
【審査請求日】2022-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100179213
【氏名又は名称】山下 未知子
(74)【代理人】
【識別番号】100170542
【氏名又は名称】桝田 剛
(72)【発明者】
【氏名】山口 聡
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-233596(JP,A)
【文献】特開昭58-25939(JP,A)
【文献】特開平11-107208(JP,A)
【文献】特開平10-114905(JP,A)
【文献】特開2014-163075(JP,A)
【文献】特開平8-291506(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第3647493(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 13/08
A47G 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面及び裏面を有する基材と、
前記基材の前記表面上に配置された芝葉を模した多数のパイルと、
前記基材の前記表面から引き離すことが可能な態様で、前記多数のパイル間の隙間を縫うように前記基材の前記表面に張り巡らされた多数本の紐状部材と
を備え、
前記多数本の紐状部材は、前記基材の前記表面から引き離されたときに、前記基材の前記表面上において前記パイルを起立させるように構成されている、
人工芝。
【請求項2】
前記多数本の紐状部材は、前記基材の前記表面上において網目状に張り巡らされている、
請求項1に記載の人工芝。
【請求項3】
前記多数本の紐状部材の網目の間隔は、前記パイルの芝長さ以下である、
請求項2に記載の人工芝。
【請求項4】
前記多数本の紐状部材の網目の間隔は、前記パイルの芝長さの1/20以上である、
請求項2又は3に記載の人工芝。
【請求項5】
前記多数本の紐状部材は、ネットシートを構成する、
請求項1から4のいずれかに記載の人工芝。
【請求項6】
前記基材の前記表面上において前記多数のパイル間に充填材層を形成すべく充填される充填材
をさらに備える、
請求項1から5のいずれかに記載の人工芝。
【請求項7】
人工芝に含まれる芝葉を模した多数のパイルを植設するためのカーペット材であって、
表面及び裏面を有する基材と、
前記基材の前記表面から引き離すことが可能な態様で、前記基材の前記表面に張り巡らされた多数本の紐状部材と
を備え、
前記多数本の紐状部材は、前記基材の前記表面上に前記多数のパイルが植設された後、前記基材の前記表面から引き離されたときに、前記基材の前記表面上において前記パイルを起立させるように構成されている、
カーペット材。
【請求項8】
人工芝フィールドの製造方法であって、
請求項1から5のいずれかに記載の人工芝を設置面上に設置する工程と、
前記多数のパイル間に充填材を散布する工程と、
前記多数本の紐状部材を前記基材の前記表面から引き離すことにより、前記基材の前記表面上において前記充填材に埋もれて倒れている前記パイルを起立させる工程と
を含む、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工芝、これに含まれるカーペット材、及び人工芝フィールドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、サッカー場やラグビー場、野球場等の様々な運動競技施設において、人工芝が普及している。人工芝は、多くの場合、基材上に芝葉を模した多数のパイルを植設することにより製造される。また、しばしば、パイル間には、パイルを保護するための充填材が充填される。充填材は、人工芝上での競技のプレー性能を向上させることもでき、具体的には、競技に使用されるボールの弾み具合を調整したり、選手の走り易さをコントロールしたり、プレーヤーがプレー中に怪我をしないようにするためのクッション材として機能する。この種の充填材としては、典型的には、砂やゴムチップ等が用いられる。
【0003】
充填材を使用する人工芝の設置時には、まず、パイルが植設された基材をフィールドに敷き広げ、その後、パイル間に充填材が散布される。このとき、特許文献1でも指摘されているように、パイルが充填材に埋もれ、倒れてしまうことがしばしば起きる。従って、従来、熊手や櫛目状の器具や専用の施工機械等を使用してパイルを起立させる作業が実施される。特許文献1は、トラクターに牽引され、人工芝の表面を敷き均すブラシを有する施工機械を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、パイルを起立させるために、熊手や櫛目状の器具や専用の施工機械等を使用する従来の作業は、多大な労力と時間を要する。また、屋外に人工芝を設置する場合、降雨や降雪の影響により充填材が濡れることが多々あり、特にこのような場合には、充填材どうしが水分により固着したり、濡れた充填材が付着して掻き出されるヤーンの重量が増したりするため、パイルを起立させる作業効率が低下する。なお、このような作業効率の低下は、ヤーンの長さが長い程、顕著になる。
【0006】
本発明は、充填材に埋もれたパイルを簡便に起立させることが可能な人工芝、これに含まれるカーペット材、及び人工芝フィールドの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1観点に係る人工芝は、表面及び裏面を有する基材と、前記基材の前記表面上に配置された芝葉を模した多数のパイルと、前記基材の前記表面から引き離すことが可能な態様で、前記多数のパイル間の隙間を縫うように前記基材の前記表面に張り巡らされた多数本の紐状部材とを備える。前記多数本の紐状部材は、前記基材の前記表面から引き離されたときに、前記基材の前記表面上において前記パイルを起立させるように構成されている。
【0008】
第2観点に係る人工芝は、第1観点に係る人工芝であって、前記多数本の紐状部材は、前記基材の前記表面上において網目状に張り巡らされている。
【0009】
第3観点に係る人工芝は、第2観点に係る人工芝であって、前記多数本の紐状部材の網目の間隔は、前記パイルの芝長さ以下である。
【0010】
第4観点に係る人工芝は、第2観点又は第3観点に係る人工芝であって、前記多数本の紐状部材の網目の間隔は、前記パイルの芝長さの1/20以上である。
【0011】
第5観点に係る人工芝は、第1観点から第4観点のいずれかに係る人工芝であって、前記多数本の紐状部材は、ネットシートを構成する。
【0012】
第6観点に係る人工芝は、第1観点から第5観点のいずれかに係る人工芝であって、前記基材の前記表面上において前記多数のパイル間に充填材層を形成すべく充填される充填材をさらに備える。
【0013】
第7観点に係るカーペット材は、人工芝に含まれる芝葉を模した多数のパイルを植設するためのカーペット材であって、表面及び裏面を有する基材と、前記基材の前記表面から引き離すことが可能な態様で、前記基材の前記表面に張り巡らされた多数本の紐状部材とを備える。前記多数本の紐状部材は、前記基材の前記表面上に前記多数のパイルが植設された後、前記基材の前記表面から引き離されたときに、前記基材の前記表面上において前記パイルを起立させるように構成されている。
【0014】
第8観点に係る人工芝フィールドの製造方法は、第1観点から第5観点のいずれかに係る人工芝を設置面上に設置する工程と、前記多数のパイル間に充填材を散布する工程と、前記多数本の紐状部材を前記基材の前記表面から引き離すことにより、前記基材の前記表面上において前記充填材に埋もれて倒れている前記パイルを起立させる工程とを含む。
【発明の効果】
【0015】
以上の観点によれば、芝葉を模した多数のパイルが配置された基材の表面上に、基材の表面から引き離すことが可能な態様で、多数本の紐状部材が張り巡らされる。これにより、人工芝の設置時に基材の表面上に充填材が散布され、パイルが充填材に埋もれて倒れてしまった場合でも、基材の表面から多数本の紐状部材を引き離すことにより、パイルを起立させることができる。よって、充填材に埋もれたパイルを簡便に起立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】基材にパイルを植設する前のカーペット材の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る人工芝、これに含まれるカーペット材、及び人工芝フィールドの製造方法について説明する。
【0018】
<1.人工芝の全体構成>
本実施形態に係る人工芝1は、サッカー場やラグビー場、野球場等の各種運動競技施設の他、遊歩道や公園、庭等の様々な設置面上に設置される。設置面は、典型的には、アスファルトや地面、砂利等から構成される。
【0019】
図1に示すように、人工芝1は、基材2と、基材2の表面2a上に起立する芝葉を模した多数のパイル3とを有する。基材2は、シート状に形成されており、パイル3は、基材2の表面2a上に所定の間隔をあけて植設されている。また、基材2の裏面2b上には、基材2からパイル3が抜け落ちるのを防止するためのバッキング剤が塗布され、バッキング層4が形成されている。
【0020】
基材2の材質及び形状は、特に限定されないが、例えば、基材2は、樹脂材料からなる平織布として形成することができる。樹脂材料としては、典型的には、ポリプロピレンやポリエチレン等の熱可塑性樹脂を選択することができる。
【0021】
パイル3の材質及び形状も、芝葉の外観を実現することができる限り、特に限定されない。例えば、パイル3は、樹脂材料からなるヤーンを用いて形成することができる。樹脂材料としては、典型的には、ポリエチレンやポリプロピレン等の熱可塑性樹脂を選択することができる。
【0022】
本実施形態のパイル3は、タフティングマシンを用いてパイル3となるヤーンを基材2に縫い込むことにより、基材2に対して固定されており、
図1の例では、基材2上の各植設点P1において複数本ずつ植設されている。1つの植設点P1におけるパイル3の本数は、
図1の例では8本であるが、適宜変更することができ、勿論1本であってもよい。パイル3は、例えば、ストレートヤーンとすることもできるし、捲縮ヤーンとすることもできる。また、パイル3は、例えば、モノフィラメントヤーンとすることもできるし、マルチフィラメントヤーンとすることもできるし、スプリットヤーンとすることもできる。
図1の例では、モノフィラメントストレートヤーンが用いられている。
【0023】
パイル3の芝長さW1は、20mm≦W1<50mmと比較的短くすることもできるし(一般にショートパイルと呼ばれる)、50mm≦W1と比較的長くすることもできる(一般にロングパイルと呼ばれる)。人工芝1が投てきが行われる競技場に設置される場合には、後述される充填材5からなる充填材層の厚みを、槍が突き刺さっても倒れない程度に十分に確保する必要がある。この観点からは、60mm≦W1であることが好ましく、90mm≦W1であることがより好ましく、120mm≦W1であることがさらに好ましい。なお、パイル3は、基材2上で自重や踏みつけ等により大なり小なり傾くが、ここでいう芝長さW1とは、パイル3を直線状に伸ばしたときの長さであり、基材2の表面2aからパイル3の先端までの長さ(平均)である。
【0024】
バッキング層4の材質も、特に限定されないが、例えば、バッキング層4は、SBRラテックスから構成することができる。なお、バッキング層4は、省略することもできる。
【0025】
基材2の表面2a上において多数のパイル3間には、充填材5が充填され、充填材層が形成される。充填材5は、芝葉を保護する他、プレーヤーがプレー中に怪我をしないようにするためのクッション材としての役割を果たすこともできる。また、充填材5は、競技に使用されるボールの弾み具合を調整したり、選手の走り易さをコントロールすることも可能であり、人工芝1上での競技のプレー性能を向上させることもできる。
【0026】
充填材5としては、弾性充填材5a及び硬質充填材5bの少なくとも一方を用いることができる。弾性充填材5aとしては、ゴムや熱可塑性エラストマー等から構成される比較的軟らかく軽い粒状物を好ましく用いることができ、例えば、廃タイヤの破砕品等からなるゴムチップを用いることができる。硬質充填材5bとしては、珪砂等の砂やセラミック等から構成される比較的硬く重い粒状物を好ましく用いることができる。
図1の例では、パイル3間に、硬質充填材5b及び弾性充填材5aの両方が充填されており、特に弾性充填材5a及び硬質充填材5bの層が上下方向に交互に繰り返し形成されており、最上段が硬質充填材5bの層である。
【0027】
基材2の表面2aには、多数本の紐状部材6が多数のパイル3間の隙間を縫うように張り巡らされている。基材2と紐状部材6とは、全体として、パイル3を植設するためのカーペット材7を構成する。
図2は、基材2にパイル3を植設する前のカーペット材7の平面図である。同図に示す通り、本実施形態では、紐状部材6は、基材2の表面2a上において網目状に張り巡らされている。同図の例では、網目は、正方形状であり、紐状部材6は、全体として格子状である。ただし、網目は、長方形や菱形等、正方形以外の矩形状とすることもできるし、三角形や五角形、円形等の矩形以外の様々な形状とすることもできる。本実施形態では、多数本の紐状部材6は、防鳥ネットのようなネットシートから構成される。
【0028】
紐状部材6は、基材2の表面2aから引き離すことが可能な態様で、基材2の表面2a上に配置される。紐状部材6は、基材2の表面2a上に何ら固定されることなく単に重ねて置かれているだけであってもよいし、仮留めされていてもよい。仮留めの態様としては、例えば、接着剤が使用されてもよいし、縫製されてもよい。
【0029】
基材2の表面2a上においてパイル3間に充填されるべき充填材5が散布されると、パイル3が充填材5に埋もれ、倒れてしまうことがしばしば起きる。以上の紐状部材6は、基材2の表面2aから引き離されたときに、基材2の表面2a上においてパイル3を起立させることができる。紐状部材6の網目の間隔をI1とするとき、この機能を効率的に発揮する観点からは、I1≦W1であることが好ましく、I1≦4/5W1であることがより好ましく、I1≦3/4W1であることがさらに好ましく、I1≦2/3W1であることがより好ましく、I1≦1/2W1であることがさらに好ましい。一方、間隔I1が狭すぎると、人工芝1から紐状部材6を引き離す作業が困難になり得る。従って、このような作業性の観点からは、I1≧1/20W1であることが好ましく、I1≧1/15W1であることがより好ましく、I1≧1/10W1であることがさらに好ましく、I1≧1/5W1であることがより好ましく、I1≧1/3W1であることがさらに好ましい。なお、ここでいう網目の間隔I1とは、網目により形成される開口の最大径(平均)であり、網目が四角形であれば、開口の対角線の長さである。また、網目により形成される開口は、紐状部材6を基材2から引き離す際に扁平に歪むことがあるが、ここでいう最大径(平均)は、紐状部材6を基材2から引き離す前の開口の形状を基準とする。
【0030】
紐状部材6の材質は、基材2から引き離す際のパイル3の抵抗や充填材5の重さに耐え得る程度の強度及び可撓性がある限り、特に限定されない。例えば、紐状部材6は、樹脂材料から構成することができる。樹脂材料としては、ポリエチレンやナイロン(ポリアミド)等を好ましく選択することができる。また、紐状部材6は、金属や綿、ガラス繊維製とすることもできる。
【0031】
<2.人工芝の製造方法>
次に、人工芝1の製造方法の一例について説明する。まず、パイル3を構成するための材料(以下、パイル材料という)として、緑色の着色剤が混合された直鎖状ポリエチレンを用意し、パイル材料からパイル3を構成するためのヤーンを製造する。具体的には、以上のパイル材料を押出機に投入し、所定の温度条件下で溶融押出し成形を行う。これにより、押出機の開口から、糸状のパイル材料が押し出される。このときの温度条件は、パイル材料の融点よりも高い温度、例えば、180℃とすることができる。続いて、押出機から押し出された糸状のパイル材料を水槽内で冷却固化し、この糸を一軸延伸加工する。さらにその後、熱水槽内で弛緩熱処理を行うことで、ヤーンが製造される。このとき、例えば、冷却固化を行う水槽の温度は、30℃とすることができる。また、一軸延伸の態様としては、ロール延伸により、90℃~100℃の温水槽内で一軸延伸を行うことができる。弛緩熱処理を行う熱水槽の温度は、90℃~100℃とすることができる。弛緩熱処理後、ヤーンはボビンに巻き取られる。
【0032】
続いて、基材2と、紐状部材6としてのネットシートとを用意し、基材2の表面2a上に紐状部材6を重ね合わせることにより、カーペット材7を用意する。このとき、基材2と紐状部材6とが容易に分離しないように、適宜、両者を仮留めすることができる。
【0033】
次に、以上のボビンから繰出されるヤーンを、タフティングマシンを用いてカーペット材7に含まれる基材2の表面2a上に植設する。本実施形態では、ヤーンが巻き取られた複数個のボビンを用意し、各々から繰出される複数本のヤーンを一束に撚り合わせた後、この撚り合わされたヤーンをタフティングマシンにより基材2に縫い付ける。
【0034】
より具体的には、紐状部材6が下側、基材2が上側を向くように、カーペット材7を敷き広げる。一方で、タフティングマシンに含まれるタフト針を、カーペット材7の上方において針先が下を向くように配置する。タフト針の針先の開口には、撚り合わされたヤーンの束が挿入される。タフティング時には、タフト針が下方へ移動し、基材2に突き刺さり、針先が基材2の表面2a(製造ラインにおいて、下面)から突出する。このとき、ヤーンの束もタフト針に運ばれて、基材2の表面2aからループ状に突出し、その後、タフト針が上方へ移動し、基材2から引き抜かれる。基材2の表面2aから下方へ突出したヤーンの束のループは、基材2の下方に配置されているカッターにより、その中央でカットされる。その結果、基材2上の同じ箇所(植設点P1)からは、複数本ずつ、より正確には、撚り合わされたヤーンの本数の2倍の本数のパイル3が起立することになる。タフト針は、以上のような上下の移動を繰り返し、これに追従して、カッターも、順次ループ状のヤーンの束をカットしてゆく。その結果、基材2の表面2aに多数のパイル3が連続的に植設される。
【0035】
なお、以上のタフティング時において、基材2を突き抜けたタフト針の針先が、基材2の表面2a(製造ラインにおいて、下面)に配置される紐状部材6に当たることがある。しかし、このとき、タフト針の針先は、紐状部材6を適宜変形させる等して、その進路から押しのける。従って、紐状部材6により、タフティングが阻害されることはない。
【0036】
その後、パイル3を固定するべく、基材2の裏面2bにバッキング剤を塗布する。その後、この状態の人工芝1を高温環境下に置き、バッキング剤を乾燥させ、硬化したバッキング層4を有する最終的な人工芝1を得る。この乾燥工程における温度条件T1は、例えば、110℃≦T1≦130℃(雰囲気温度)とすることができる。なお、この乾燥工程で、紐状部材6に過度に収縮等の変形が生じることのないよう、紐状部材6の熱収縮温度T2は、T2≧T1であることが好ましく、T2≧T1+20℃であることがより好ましい。なお、ここでいう熱収縮温度は、JIS(日本工業規格)L1013の熱収縮温度である。
【0037】
<3.人工芝フィールドの製造方法>
次に、人工芝1を所望のフィールドに設置し、人工芝フィールドを製造する方法の一例について説明する。なお、ここでいうフィールドとは、運動競技施設のような開けた広い空間のみならず、遊歩道や公園、庭等の比較的狭い空間であってもよく、任意の場所を意味し得る。
【0038】
まず、上記の態様で製造された人工芝1を、パイル3が上側を向くようにして所望のフィールドの設置面上に敷き広げるようにして設置する。このとき、フィールドの設置面の面積によっては、複数の人工芝1のユニットを当該設置面上に敷き並べ、これらをテープ等を使用して適宜連結する。
【0039】
続いて、人工芝1の基材2の表面2a上において多数のパイル3間に、充填材層を形成するべく、パイル3の上から充填材5を散布する。パイル3間に充填材5が散布されると、天然芝のような感触を有するパイル3は、自立性に乏しいため、充填材5に覆われ、倒れ込み、容易に充填材5の層に埋没した状態となる。従って、充填材5の散布後に、パイル3を起立させる作業が行われる。
【0040】
具体的には、例えば、充填材5の最終的な散布量の全部、又は一部(例えば、半分、1/3等)を散布した後、充填材5に埋もれている多数本の紐状部材6を、基材2の表面2aから引き離すようにして、人工芝1から除去する。これにより、基材2の表面2a上において同じく埋もれて倒れているパイル3は、紐状部材6に下方から引っ張り上げられ、起立させられる。すなわち、パイル3は、多数本の紐状部材6により形成される網目の開口内に配置されているため、紐状部材6を基材2の表面2aから引き離そうとすると、パイル3は網目の開口を通り抜けなければならず、この間に、強制的に起立させられることになる。以上により、充填材5に埋もれたパイル3を簡便に起立させることができる。なお、このとき、紐状部材6に水平方向に長い棒を差し込み、この長い棒を持ち上げるようにしてもよい。この場合、紐状部材6を持ち上げようとする動作に対する抵抗となり得る充填材5の重量を、紐状部材6の広範囲に分散させることができるため、好ましい。
【0041】
その後、さらに散布すべき充填材5が存在する場合には、これを追加でパイル3間に散布する。なお、この段階では、パイル3の根元は、既に散布された充填材5により支持されているため、追加で散布される充填材5により、パイル3が埋もれて倒れる事態は起こり難く、倒れても掻き起こしの作業で容易に起立する。以上の作業の終了後、適宜充填材5の表面を均し、これにより、人工芝フィールドが完成する。
【0042】
<4.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。例えば、以下の変更が可能である。
【0043】
<4-1>
上記実施形態では、基材2の上に、紐状部材6として1枚のネットシートが配置されたが、多数枚のネットシートを重ねて配置してもよい。この場合、施工時に充填材5の散布が進むにつれて、パイル3を繰り返し起立させることができる。例えば、充填材5を最終的な散布量の1/2だけ充填した後に、1枚目のネットシートを除去してパイル3を起立させ、さらに残りの充填材5を充填した後に、2枚目のネットシートを除去してパイル3を起立させるようにしてもよい。
【0044】
また、紐状部材6が1枚しか配置されてない場合において、充填材5を少量散布した後、紐状部材6を少し引き上げる動作を繰り返しながら、パイル3を徐々に起立させるようにしてもよい。あるいは、紐状部材6を少し引き上げた後、充填材5を少量散布する動作を繰り返しながら、パイル3を徐々に起立させるようにしてもよい。これらの場合、パイル3を根元側から少しずつ起立させることができる。
【0045】
<4-2>
上記実施形態では、紐状部材6は、ネットシートとして実現されたが、例えば、第1の方向に延びる多数本の紐601を両端で連結した第1部材61と、第1部材61とは分離され、第1の方向と交差(好ましくは、直交)する第2の方向に延びる多数本の紐602を両端で連結した第2部材62とを重ね合わせてもよい(
図3参照)。
【符号の説明】
【0046】
1 人工芝
2 基材
3 パイル
5 充填材
5a 弾性充填材
5b 硬質充填材
6 紐状部材
7 カーペット材