(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】バッテリパック
(51)【国際特許分類】
B60K 1/04 20190101AFI20230829BHJP
B62D 25/20 20060101ALI20230829BHJP
H01M 50/20 20210101ALI20230829BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
B62D25/20 G
H01M50/20
(21)【出願番号】P 2020041903
(22)【出願日】2020-03-11
【審査請求日】2023-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼市 皓太
(72)【発明者】
【氏名】堀山 和政
【審査官】三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-344026(JP,A)
【文献】特開2011-6052(JP,A)
【文献】特開2009-83597(JP,A)
【文献】国際公開第2014/38346(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/04
B62D 25/20
H01M 50/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のバッテリモジュールと、
車体のフロアパネルの下方に配置され、前記バッテリモジュールを収納するバッテリケースと、を備え、
前記バッテリケースは前記バッテリモジュールを上方から覆うアッパケースを有し、
車両前後方向に延びる配管が前記フロアパネルと前記アッパケースとで挟まれるように配索され、
前記アッパケースの上面に前記配管を保持するクランプ部材が設けられたバッテリパックであって、
前記アッパケースの上面に、上方に突出し、かつ、車両前後方向に延びる主ビードが設けられ、
前記主ビードは、その車両前方側の部位を構成する第1ビード部と、前記第1ビード部の車両後方側に配置された第2ビード部と、前記第1ビード部と前記第2ビード部とを分断するように下方に凹む凹部と、を有し、
前記第1ビード部の後端部に、車両後方に延びる一対の延長部を設け、一対の前記延長部の間に前記第2ビード部の前端部が配置され、
前記配管は、前記バッテリケースの上方であって、前記配管の少なくとも一部が前記第1ビード部と一対の前記延長部と前記第2ビード部とで囲まれるように配置されていることを特徴とするバッテリパック。
【請求項2】
前記第1ビード部は、その後端部に車両幅方向の寸法が拡張された拡張部を有し、
前記拡張部の車両幅方向の両端部に一対の前記延長部が接続されていることを特徴とする請求項1に記載のバッテリパック。
【請求項3】
一対の前記延長部は、前記第2ビード部の前端部と車両幅方向で対向するように形成され、
一対の前記延長部と前記第2ビード部の前端部との間に、前記凹部から前記アッパケースの上面に連通する溝状の水排出路が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のバッテリパック。
【請求項4】
前記アッパケースの上面であって、一対の前記延長部の車両幅方向の外側に、上方に突出し、かつ、車両前後方向に延びる一対の副ビードが設けられ、
一対の前記延長部の車両幅方向の寸法は、前記第1ビード部の車両幅方向の寸法より小さく設定され、
一対の前記延長部は、車両幅方向で一対の前記副ビードと前記第2ビード部の前端部との間に配置されていることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載のバッテリパック。
【請求項5】
前記アッパケースの車両幅方向の寸法は、車両前後方向の位置によって異なり、
前記アッパケースにおける車両幅方向の寸法が最も大きい部位よりも小さい部位に、一対の前記延長部が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項に記載のバッテリパック。
【請求項6】
前記アッパケースの上面に、複数対の前記副ビードが設けられ、
隣り合う前記副ビードの間の距離が、車両幅方向の外側から内側に近づくほど小さくなり、
前記延長部に最も近い前記副ビードと前記延長部との車両幅方向の距離は、隣り合う前記副ビードの間の距離のいずれよりも小さいことを特徴とする請求項4に記載のバッテリパック。
【請求項7】
前記アッパケースの後端であって前記第2ビード部の車両後方の位置に、車両上方に突出し、かつ、車両幅方向に延びる凸部が設けられ、
前記第2ビード部の後端部が前記凸部に接続され、
前記第2ビード部の後端部は、車両前後方向から車両幅方向に向きを変えるように湾曲する湾曲部を有することを特徴とする請求項1から請求項6の何れか1項に記載のバッテリパック。
【請求項8】
前記湾曲部が前記凸部と接する当接部は、車両幅方向で、一対の前記延長部の車両幅方向の内側の部位よりも外側に位置していることを特徴とする請求項7に記載のバッテリパック。
【請求項9】
前記バッテリケースの車両幅方向端部に、前記バッテリケースを車両に取り付けるための車体マウント部が設けられ、
前記車体マウント部は、一対の前記延長部と車両幅方向で対向していること特徴とする請求項1から請求項8の何れか1項に記載のバッテリパック。
【請求項10】
前記アッパケースの上面に、電装部品を取り付けられ、車両上方に突出する台座部が設けられ、
前記台座部は、前記延長部と車両幅方向で対向していることを特徴とする請求項1から請求項9の何れか1項に記載のバッテリパック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリパックに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両にあっては、走行用のモータに電力を供給するバッテリをフロアパネルの下面側に搭載することがある。従来のこの種のバッテリパックとして特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1に記載のバッテリパックにおいて、バッテリケースの車両幅方向中央の上面には、上方に突出する凸部が形成されている。特許文献1に記載のバッテリパックは、バッテリケースの上面の凸部を補強用のビードとして機能させることにより、バッテリケースの剛性を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、車体のフロアパネルの下面には、後輪のブレーキに作動油を供給するブレーキ配管等が配置されることがある。したがって、フロアパネルの下面側にブレーキ配管の設置スペースを確保した上で、バッテリパックの形状や設置位置を検討することが重要となる。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の従来の技術にあっては、ブレーキ配管等の配管をフロアパネルとバッテリパックとの間に設置することを考慮していないので、配管を設置するためにバッテリパックの搭載位置がより下方に変更され、これにより車両の走行に必要な地面から車両下部までの高さ(最低地上高)を確保できなくなるおそれがあった。
【0006】
また、特許文献1に記載の技術において、バッテリケースの上面の凸部の突出量を小さくして配管の設置スペースを確保するようにした場合、バッテリケースの剛性が低下するおそれがあった。
【0007】
本発明は、上記のような事情に着目してなされたものであり、車両の最低地上高を確保でき、かつ、バッテリケースの剛性低下を抑制できるバッテリパックを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、複数のバッテリモジュールと、車体のフロアパネルの下方に配置され、前記バッテリモジュールを収納するバッテリケースと、を備え、前記バッテリケースは前記バッテリモジュールを上方から覆うアッパケースを有し、車両前後方向に延びる配管が前記フロアパネルと前記アッパケースとで挟まれるように配索され、前記アッパケースの上面に前記配管を保持するクランプ部材が設けられたバッテリパックであって、前記アッパケースの上面に、上方に突出し、かつ、車両前後方向に延びる主ビードが設けられ、前記主ビードは、その車両前方側の部位を構成する第1ビード部と、前記第1ビード部の車両後方側に配置された第2ビード部と、前記第1ビード部と前記第2ビード部とを分断するように下方に凹む凹部と、を有し、前記第1ビード部の後端部に、車両後方に延びる一対の延長部を設け、一対の前記延長部の間に前記第2ビード部の前端部が配置され、前記配管は、前記バッテリケースの上方であって、前記配管の少なくとも一部が前記第1ビード部と一対の前記延長部と前記第2ビード部とで囲まれるように配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
このように上記の本発明によれば、車両の最低地上高を確保でき、かつ、バッテリケースの剛性低下を抑制できるバッテリパックを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例に係るバッテリパックを備える車両のフロアパネルおよびバッテリパックの平面図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施例に係るバッテリパックの平面図である。
【
図3】
図3は、
図2に示すバッテリパックのIII-III方向矢視断面図である。
【
図4】
図4は、
図2に示すバッテリパックのIV-IV方向矢視断面図である。
【
図5】
図5は、
図2に示すバッテリパックのV-V方向矢視断面図である。
【
図6】
図6は、
図2に示すバッテリパックのVI-VI方向矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施の形態に係るバッテリパックは、複数のバッテリモジュールと、車体のフロアパネルの下方に配置され、バッテリモジュールを収納するバッテリケースと、を備え、バッテリケースはバッテリモジュールを上方から覆うアッパケースを有し、車両前後方向に延びる配管がフロアパネルとアッパケースとで挟まれるように配索され、アッパケースの上面に配管を保持するクランプ部材が設けられたバッテリパックであって、アッパケースの上面に、上方に突出し、かつ、車両前後方向に延びる主ビードが設けられ、主ビードは、その車両前方側の部位を構成する第1ビード部と、第1ビード部の車両後方側に配置された第2ビード部と、第1ビード部と第2ビード部とを分断するように下方に凹む凹部と、を有し、第1ビード部の後端部に、車両後方に延びる一対の延長部を設け、一対の延長部の間に第2ビード部の前端部が配置され、配管は、バッテリケースの上方であって、配管の少なくとも一部が第1ビード部と一対の延長部と第2ビード部とで囲まれるように配置されていることを特徴とする。これにより、本発明の一実施の形態に係るバッテリパックは、車両の最低地上高を確保でき、かつ、バッテリケースの剛性低下を抑制できる。
【実施例】
【0012】
以下、本発明の実施例に係るバッテリパックについて、図面を用いて説明する。
図1から
図6において、上下前後左右方向は、車両に設置された状態のバッテリパックの上下前後左右方向とし、車両の前後方向に対して直交する方向が左右方向、バッテリパックの高さ方向が上下方向である。
【0013】
図1から
図6は、本発明の一実施例に係るバッテリパックを示す図である。
【0014】
まず、構成を説明する。
図1において、車両1は、車体2を備えている。車体2は、その下部にフロアパネル2Aを有している。フロアパネル2Aの後部には凹部2Bが設けられており、この凹部2Bは、下方に窪んでいる。凹部2Bには図示しないスペアタイヤが収容されている。フロアパネル2Aには、車両前後方向に延びる左右で一対のサイドメンバ11が設けられている。サイドメンバ11には、車両幅方向に延びるクロスメンバ13、14が接続されている。
【0015】
フロアパネル2Aの下側にはバッテリパック20が設けられている。バッテリパック20は車両1の図示しないモータに電力を供給する。バッテリパック20は、一対のサイドメンバ11の間に配置されている。クロスメンバ13は、バッテリパック20の前端部の上部の近傍を車両幅方向に横切るように配置されている。クロスメンバ14は、バッテリパック20の車両前後方向の中間部の後方寄りの部位の上部を車両幅方向に横切るように配置されている。なお、
図1は、バッテリパック20の上部においてフロアパネル2Aの一部を透過してバッテリパック20を見た状態を表わしている。
【0016】
図3において、バッテリパック20は、複数のバッテリモジュール61と、複数のバッテリモジュール61を収容するバッテリケース21と、を有している。バッテリケース21は、平面視において全体として四角形に形成されている。
【0017】
バッテリケース21はロアケース40とアッパケース30とからなる。アッパケース30はバッテリケース21の上部を構成しており、バッテリモジュール61を上方から覆っている。ロアケース40はバッテリケース21の下部を構成しており、バッテリモジュール61を保持している。ロアケース40は、バッテリモジュール61の下面および側面を覆っている。
【0018】
図1、
図2において、フロアパネル2Aの車両幅方向の中央部の上面には、ブレーキ用の配管51、52が配置されている。配管51、52がフロアパネル2Aとアッパケース30とで挟まれるように、車両前後方向に延びている。アッパケース30の上面にはクランプ部材53が設けられており、クランプ部材53は配管51、52を保持している。
【0019】
図2において、アッパケース30の上面には、車両前後方向に延びる主ビード35が設けられている。主ビード35は、アッパケース30の基準面32から上方に突出している。ここで、基準面32とは、アッパケース30の上面における何らの凸形状も形成されていない平坦な部分の面である。
【0020】
主ビード35は、その車両前方側の部位を構成する第1ビード部36と、第1ビード部36の車両後方側に配置された第2ビード部37と、第1ビード部36と第2ビード部37とを分断するように下方に凹む凹部35Aと、を有している。
【0021】
第1ビード部36の後端部には、車両後方に延びる一対の延長部36Bを設けられている。一対の延長部36Bの間には第2ビード部37の前端部が配置されている。
【0022】
配管51、52の一部は凹部35Aに配置されている。したがって、凹部35Aにおいて、配管51、52の一部は、第1ビード部36と一対の延長部36Bと第2ビード部37とで囲まれている。
【0023】
図2、
図4において、第1ビード部36は、その後端部に車両幅方向の寸法が拡張された拡張部36Aを有している。拡張部36Aの車両幅方向の両端部には、一対の延長部36Bが接続されている。このように、一対の延長部36Bは、第1ビード部36の後端部に対して直接設けられるのではなく、車両幅方向の寸法が拡張された拡張部36Aを介して設けられている。
【0024】
図2、
図5において、一対の延長部36Bは、第2ビード部37の前端部37Aと車両幅方向で対向するように形成されている。また、一対の延長部36Bと第2ビード部37の前端部との間に、凹部35Aからアッパケース30の上面に連通する溝状の水排出路35Bが設けられている。
【0025】
図2において、アッパケース30の上面であって、一対の延長部36Bの車両幅方向の外側には、上方に突出し、かつ、車両前後方向に延びる一対の副ビード32Aが設けられている。一対の延長部36Bの車両幅方向の寸法は、第1ビード部36の車両幅方向の寸法より小さく設定されている。一対の延長部36Bは、車両幅方向で一対の副ビード32Aと第2ビード部37の前端部37Aとの間に配置されている。
【0026】
図2において、アッパケース30の車両幅方向の寸法は、車両前後方向の位置によって異なっている。詳しくは、アッパケース30の車両幅方向の寸法は、アッパケース30の後端部において最も大きく、アッパケース30の前端部において最も小さい。また、アッパケース30における車両幅方向の寸法が最も大きい部位(後端部)よりも小さい部位に、一対の延長部36Bが設けられている。
【0027】
図3において、アッパケース30の上面には、複数対の副ビード32A、32B、32Cが設けられている。隣り合う副ビード32C、32Bの間の距離をL1とし、隣り合う副ビード32A、32Bの間の距離をL2とし、副ビード32Aと延長部36Bとの車両幅方向の距離をL3としたとき、隣り合う副ビードの間の距離L1、L2は、車両幅方向の外側から内側に近づくほど小さくなっている。また、延長部36Bに最も近い副ビード32Aと延長部36Bとの車両幅方向の距離L3は、隣り合う副ビードの間の距離L1、L2のいずれよりも小さくされている。
【0028】
図2、
図6において、アッパケース30の後端であって第2ビード部37の車両後方の位置には、車両上方に突出する凸部33が設けられている。凸部33は、車両幅方向に延びている。
【0029】
図2、
図6において、第2ビード部37の後端部は凸部33に接続されている。第2ビード部37の後端部は湾曲部37Bを有しており、湾曲部37Bは、車両前後方向から車両幅方向に向きを変えるように湾曲している。
【0030】
湾曲部37Bはその車両幅方向端部で凸部33と接している。湾曲部37Bが凸部33と接する当接部37Cは、車両幅方向で、一対の延長部36Bの車両幅方向の内側の部位36Cよりも外側に位置している。
【0031】
図2において、バッテリケース21の車両幅方向端部には、バッテリケース21を車両に取り付けるための車体マウント部27が設けられている。また、車体マウント部27は、一対の延長部36Bと車両幅方向で対向している。言い換えれば、車体マウント部27は、車両幅方向から見た場合に延長部36Bと重なる位置に設けられている。
【0032】
図2、
図4において、アッパケース30の上面には、車両上方に突出する台座部34が設けられている。この台座部34には、電装部品としての図示しないサービスプラグが設けられている。サービスプラグは、図示しないプラグを引き抜く遮断操作を行うことにより通電を遮断する遮断装置である。
【0033】
台座部34は、延長部36Bと車両幅方向で対向して配置されている。言い換えれば、台座部34は、車両幅方向から見た場合に延長部36Bと重なる位置に設けられている。
【0034】
以上説明したように、本実施例のバッテリパック20において、アッパケース30の上面に、上方に突出し、かつ、車両前後方向に延びる主ビード35が設けられ、主ビード35は、その車両前方側の部位を構成する第1ビード部36と、第1ビード部36の車両後方側に配置された第2ビード部37と、第1ビード部36と第2ビード部37とを分断するように下方に凹む凹部35Aと、を有している。
【0035】
また、第1ビード部36の後端部に、車両後方に延びる一対の延長部36Bを設け、一対の延長部36Bの間に第2ビード部37の前端部37Aが配置されている。
【0036】
そして、配管51、52は、バッテリケース21の上方であって、配管51、52の少なくとも一部が第1ビード部36と一対の延長部36Bと第2ビード部37とで囲まれるように配置されている。
【0037】
この構成により、第1ビード部36と第2ビード部37の間に設けられた凹部35Aの車両幅方向の両外側を一対の延長部36Bによって補強でき、第1ビード部36と第2ビード部37とを延長部36Bによって構造的に結合することができる。また、一対の延長部36Bは、第1ビード部36および第2ビード部37よりも車両幅方向外側に位置するので、アッパケース30の車両幅方向の捻れ振動の発生を抑制できる。このため、凹部35Aを設けたことによるアッパケース30の剛性低下を抑制できる。
【0038】
また、配管51、52を保持するクランプ部材53を、アッパケース30の上面の低い部位である凹部35Aに配置したので、車両1の最低地上高を確保することができる。
【0039】
この結果、車両1の最低地上高を確保でき、かつ、バッテリケース21の剛性低下を抑制できる。
【0040】
本実施例のバッテリパック20において、第1ビード部36は、その後端部に車両幅方向の寸法が拡張された拡張部36Aを有している。また、拡張部36Aの車両幅方向の両端部に一対の延長部36Bが接続されている。
【0041】
この構成により、第1ビード部36の後端部に直接一対の延長部36Bを設ける場合と比較して、一対の延長部36Bの相互の距離を拡大でき、アッパケース30の広い範囲で剛性を向上でき振動を抑制できる。
【0042】
本実施例のバッテリパック20において、一対の延長部36Bは、第2ビード部37の前端部37Aと車両幅方向で対向するように形成されている。また、一対の延長部36Bと第2ビード部37の前端部37Aとの間に、凹部35Aからアッパケース30の上面に連通する溝状の水排出路35Bが設けられている。
【0043】
この構成により、第1ビード部36と第2ビード部37とを一対の延長部36Bによって構造的に接続できるので、アッパケース30の剛性をより向上でき、アッパケース30の振動を抑制できる。
【0044】
一対の延長部36Bと第2ビード部37との間に形成された水排出路35Bにより、凹部35Aに溜まった水をアッパケース30の上面に排出することができる。このため、凹部35Aに水が溜まることを防止でき、水によるアッパケース30の腐食を防止できる。
【0045】
本実施例のバッテリパック20において、アッパケース30の上面であって、一対の延長部36Bの車両幅方向の外側に、上方に突出し、かつ、車両前後方向に延びる一対の副ビード32Aが設けられている。一対の延長部36Bの車両幅方向の寸法は、第1ビード部36の車両幅方向の寸法より小さく設定されている。一対の延長部36Bは、車両幅方向で一対の副ビード32Aと第2ビード部37の前端部37Aとの間に配置されている。
【0046】
この構成により、一対の延長部36Bの車両幅方向の寸法は、第1ビード部36の車両幅方向の寸法より小さく設定されているので、一対の副ビード32Aを一対の延長部36Bに近づけて配置することができ、第1ビード部36および第2ビード部37にも一対の副ビード32Aを近づけて配置できる。したがって、第1ビード部36、一対の延長部36B、第2ビード部37および一対の副ビード32Aを互いに近づけて配置でき、アッパケース30の剛性を向上させることができる。
【0047】
また、幅寸法が小さい一対の延長部36Bが一対の副ビード32Aと第2ビード部37の前端部37Aとの間に配置されるので、アッパケース30の上面の面積を減らすことができ、アッパケース30の剛性を向上させ、振動を抑制できる。
【0048】
本実施例のバッテリパック20において、アッパケース30の車両幅方向の寸法は、車両前後方向の位置によって異なっている。アッパケース30における車両幅方向の寸法が最も大きい部位よりも小さい部位に、一対の延長部36Bが設けられている。
【0049】
この構成により、一対の延長部36Bが設けられている部位において、一対の延長部36Bとアッパケース30の車両幅方向端部との距離は、車両幅方向の寸法が最も大きい部位よりも短くなる。このため、アッパケース30の剛性を向上させることができ、アッパケース30の振動を防止できる。
【0050】
本実施例のバッテリパック20において、アッパケース30の上面に、複数対の副ビード32A、32B、32Cが設けられている。隣り合う副ビードの間の距離L1、L2が、車両幅方向の外側から内側に近づくほど小さくなっている。延長部36Bに最も近い副ビード32Aと延長部36Bとの車両幅方向の距離L3は、隣り合う副ビードの間の距離L1、L2のいずれよりも小さくされている。
【0051】
この構成により、アッパケース30の車両幅方向の内側ほど、副ビード32A、32B、32Cの間の距離が小さくなるので、アッパケース30の車両幅方向の内側ほど剛性を向上させることができる。
【0052】
本実施例のバッテリパック20において、アッパケース30の後端であって第2ビード部37の車両後方の位置に、車両上方に突出し、かつ、車両幅方向に延びる凸部33が設けられている。第2ビード部37の後端部が凸部33に接続されている。第2ビード部37の後端部は、車両前後方向から車両幅方向に向きを変えるように湾曲する湾曲部37Bを有している。
【0053】
この構成により、上方に突出することで剛性が高められた凸部33に第2ビード部37を接続しているので、アッパケース30の剛性をさらに向上させることができ、アッパケース30の振動を抑制できる。
【0054】
凹部35Aから水排出路35Bを通して後方に排出された水を、凸部33と湾曲部37Bとによって車両幅方向の外側に向かうように案内でき、水が再び凹部35Aに戻ることを抑制できる。
【0055】
アッパケース30の後端に凸部33が設けられていることにより、主ビード35の車両前後方向の長さを短くすることができ、主ビード35の剛性を高めることができる。このため、アッパケース30の剛性を向上させることができ、アッパケース30の振動を抑制できる。
【0056】
本実施例のバッテリパック20において、湾曲部37Bが凸部33と接する当接部37Cは、車両幅方向で、一対の延長部36Bの車両幅方向の内側の部位36Cよりも外側に位置している。
【0057】
この構成により、湾曲部37Bにおける凸部33との当接部37Cの位置が、一対の延長部36Bの内側の部位36Cよりも車両幅方向で外側に配置されているので、凹部35Aから水排出路35Bを通して後方に排出された水を、湾曲部37Bを通って車両幅方向の外側に向かうように案内して、水が再び凹部35Aに戻ることをより抑制できる。また、延長部36Bと第2ビード部37との距離を短くでき、かつ、凸部33と湾曲部37Bとの接合面積を拡大して凸部33と第2ビード部37とをより強固に結合でき、アッパケース30の剛性をより向上させることができる。
【0058】
本実施例のバッテリパック20において、バッテリケース21の車両幅方向端部に、バッテリケース21を車両に取り付けるための車体マウント部27が設けられている。車体マウント部27は、一対の延長部36Bと車両幅方向で対向している。
【0059】
この構成により、車体マウント部27が一対の延長部36Bに車両幅方向で対向して重なるように配置されているので、バッテリケース21における車体マウント部27材が配置された部位は、剛性が高くなる一方で車体の振動によるバッテリケース21の振動の起点となる部位である。このマウント部材に対して最も近い位置に延長部36Bが設けられているので、バッテリケース21の振動を抑制できる。
【0060】
本実施例のバッテリパック20において、アッパケース30の上面に、電装部品を取り付けられ、車両上方に突出する台座部34が設けられている。台座部34は、延長部36Bと車両幅方向で対向している。
【0061】
この構成により、アッパケース30における車両幅方向の端部と延長部36Bとの間の平坦な部分の面積を少なくでき、アッパケース30の剛性を向上させることができる。
【0062】
台座部34は、取り付けられた電装部品を支持するための剛性を有しているので、その上面に台座部34を設けることによりアッパケース30の剛性を向上させることができる。
【0063】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0064】
1...車両、2...車体、2A...フロアパネル、20...バッテリパック、21...バッテリケース、27...車体マウント部、30...アッパケース、32A,32B,32C...副ビード、33...凸部、34...台座部、35...主ビード、35A...凹部、35B...水排出路、36...第1ビード部、36A...拡張部、36B...延長部、36C...部位、37...第2ビード部、37A...前端部、37B...湾曲部、37C...当接部、51,52...配管、53...クランプ部材、61...バッテリモジュール、L1,L2...距離