IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ TDK株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-流動性付与粒子および磁性コア 図1
  • 特許-流動性付与粒子および磁性コア 図2
  • 特許-流動性付与粒子および磁性コア 図3
  • 特許-流動性付与粒子および磁性コア 図4
  • 特許-流動性付与粒子および磁性コア 図5
  • 特許-流動性付与粒子および磁性コア 図6
  • 特許-流動性付与粒子および磁性コア 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】流動性付与粒子および磁性コア
(51)【国際特許分類】
   H01F 1/20 20060101AFI20230829BHJP
   H01F 3/08 20060101ALI20230829BHJP
   H01F 27/255 20060101ALI20230829BHJP
   B22F 1/16 20220101ALI20230829BHJP
   B82Y 25/00 20110101ALI20230829BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20230829BHJP
【FI】
H01F1/20
H01F3/08
H01F27/255
B22F1/16 100
B82Y25/00
B22F1/00 Y
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020052767
(22)【出願日】2020-03-24
(65)【公開番号】P2021153106
(43)【公開日】2021-09-30
【審査請求日】2022-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】阿部 暁太朗
(72)【発明者】
【氏名】茂呂 英治
(72)【発明者】
【氏名】菊池 俊秋
【審査官】古河 雅輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-051329(JP,A)
【文献】特開2001-135515(JP,A)
【文献】国際公開第2018/163823(WO,A1)
【文献】特開2017-145494(JP,A)
【文献】特開2019-182951(JP,A)
【文献】特開2009-054709(JP,A)
【文献】特開2018-037635(JP,A)
【文献】特開昭63-105901(JP,A)
【文献】特開2006-179567(JP,A)
【文献】特開2012-212807(JP,A)
【文献】特開平07-082014(JP,A)
【文献】特開2009-228136(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00-12/90
B82Y 5/00-99/00
C22C 1/04- 1/05
C22C 33/02
H01F 1/00- 3/14
H01F 17/00-21/12
H01F 27/00
H01F 27/02
H01F 27/06
H01F 27/08
H01F 27/23-27/26
H01F 27/28-27/29
H01F 27/30
H01F 27/32
H01F 27/36
H01F 27/42
H01F 38/42-41/04
H01F 41/08
H01F 41/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性を有する粒子本体と、前記粒子本体を覆いケイ素化合物を含む被覆層とを有し、
粒径が10~40nmであり、
円形度が0.55以上であり、
かさ密度が0.6~1.4g/cm 3 である、流動性付与粒子。
【請求項2】
前記粒子本体が、Fe、Co、およびNiからなる群から選択される1以上の元素を含む、請求項1に記載の流動性付与粒子。
【請求項3】
請求項1または2に記載の流動性付与粒子と、前記流動性付与粒子よりも粒径の大きい磁性粒子とを含む、磁性コア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動性付与粒子および磁性コアに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子デバイスは、小型化に伴い、高周波での使用に対応できることが求められている。磁性コアのような、磁性粒子を用いた電子デバイスでは、磁性粒子の粒子サイズを小さくすることで高周波での使用に対応している。しかし、磁性粒子の粒子サイズが小さくなると、磁性粒子の流動性が悪くなる。
【0003】
磁性コアは、磁性粒子と樹脂等から構成される材料(以下、磁性材料とする)を混合、加圧して形成されるが、磁性粒子の流動性が悪いと、磁性粒子のパッキングが悪くなり、コア密度が低下して、透磁率が小さくなるという問題があった。
【0004】
磁性粒子の流動性を改善しようと、従来から、SiOのアエロジルが流動性付与材として用いられている。このような流動性付与材は、磁性材料に少量添加して用いられる。しかし、SiOのアエロジルは、かさ密度が0.05~0.15g/cmと小さいため、磁性材料中での分散性が悪く、磁性粒子の流動性を十分に改善できていない。
【0005】
特許文献1には、多孔質磁性体にリン酸およびステアリン酸を付着もしくは含浸させることにより、磁性および潤滑効果を有する塑性加工用潤滑剤が開示されている。しかし、多孔質磁性体の大きさが大き過ぎること、および多孔質のためかさ密度が小さいことから、磁性コア用の磁性粒子の流動性付与材としては適当ではない。
【0006】
したがって、かさ密度が大きく、磁性粒子の流動性を改善できる流動性付与材が求められている。さらに、磁性を有する流動性付与材であれば、流動性の改善のみならず、磁性コアの透磁率の向上も可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平6-172768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はかかる実情に鑑みてなされ、磁性コア用の磁性粒子の流動性を改善し、さらに、磁性コアの透磁率を向上する流動性付与粒子、およびそれを用いた磁性コアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明の要旨は以下のとおりである。
(1)磁性を有する粒子本体と、前記粒子本体を覆いケイ素化合物を含む被覆層とを有し、
粒径が10~40nmであり、
円形度が0.55以上である、流動性付与粒子。
【0010】
(2)前記粒子本体が、Fe、Co、およびNiからなる群から選択される1以上の元素を含む、(1)に記載の流動性付与粒子。
【0011】
(3)かさ密度が0.6~1.4g/cmである、(1)または(2)に記載の流動性付与粒子。
【0012】
(4)上記(1)~(3)のいずれかに記載の流動性付与粒子と、前記流動性付与粒子よりも粒径の大きい磁性粒子とを含む、磁性コア。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る流動性付与粒子の機能を説明する概略図である。
図2図1中の破線枠内を拡大した模式図である。
図3】円形度の低い粒子を用いた場合(比較例5~7)の模式図である。
図4図3中の破線枠内を拡大した模式図である。
図5】アエロジルを用いた場合(比較例8)の模式図である。
図6図5中の破線枠内を拡大した模式図である。
図7図5中の破線枠内を拡大した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を、具体的な実施形態に基づき説明するが、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変は許容される。
【0015】
(流動性付与粒子)
本実施形態に係る流動性付与粒子は、磁性材料に少量添加して用いられる。磁性コア用の磁性粒子を含む磁性材料に流動性付与粒子を添加することで、磁性コア用の磁性粒子の流動性が改善される。また、本実施形態に係る流動性付与粒子は磁性を有するため、本実施形態に係る流動性付与粒子を含む磁性コアは透磁率が向上する。
【0016】
本実施形態に係る流動性付与粒子は、磁性を有する粒子本体と、粒子本体を覆いケイ素化合物を含む被覆層を有す。
【0017】
粒子本体は、磁性を有する材料を含む。磁性を有する材料としては、軟磁性金属、軟磁性合金、または軟磁性非晶質材料として公知のものを用いることができる。
【0018】
具体的には、粒子本体は、Fe、Co、およびNiからなる群から選択される1以上の元素を含むことが好ましく、FeまたはCoを含むことがより好ましい。さらに好ましくは、粒子本体は、Fe、またはFeおよびCoからなる合金である。
【0019】
粒子本体が上記材料または上記元素を含むことで、流動性付与粒子のかさ密度を増大できる。また、流動性付与粒子に磁性を付与することができ、磁性コア用の磁性材料に添加する場合に、磁性コアの透磁率を向上できる。
【0020】
被覆層は、粒子本体の表面を覆うにように形成されている。被覆層は、所望の流動性が確保できる範囲で、粒子本体の表面の一部または全部を覆うように形成されることが好ましい。被覆層は粒子本体の表面を連続的に覆っていてもよいし、断続的に覆っていてもよい。すなわち、被覆層にピンホールがある場合や、粒子本体の一部が露出している場合でも、所望の流動性が確保できる範囲で許容される。なお、被覆層の厚さは、1~4nmとするのが好ましい。
【0021】
被覆層はケイ素化合物を含む。ケイ素化合物としては、特に限定されないが、例えばSiO、SiO、Si、MgSiO等が挙げられる。好ましくは、SiOである。被覆層は、所望の流動性が確保できれば、添加物としてケイ素化合物以外の物質も含有できるが、磁性コア用の磁性粒子に食い込むような非常に硬い添加物、例えばAl等は流動性を妨げる可能性があるため含まない方が好ましい。
【0022】
粒子本体がケイ素化合物を含む被覆層で覆われていることで、磁性コア用の磁性粒子の流動性を改善することができる。
【0023】
本実施形態に係る流動性付与粒子の粒径は、10~40nmであり、好ましくは15~40nmである。粒径には、被覆層の厚さも含まれる。粒径が上記範囲であることで、磁性コア用の磁性材料に混合する際に、流動性付与粒子が分散されやすくなる。その結果、磁性コア用磁性粒子の流動性が改善され、また、磁性コアの透磁率を向上できる。
【0024】
本実施形態に係る流動性付与粒子の円形度は、0.55以上であり、好ましくは0.60以上、より好ましくは0.69以上である。磁性コア用の磁性材料中に、円形度が上記範囲である流動性付与粒子が存在することで、磁性材料の混合時に磁性コア用磁性粒子の回転が促され、その結果、該磁性粒子の流動性が改善する。そして、磁性コアのコア密度が増加して透磁率を向上できる。
【0025】
粒径および円形度は次のように求める。流動性付与粒子の断面形状を観察し、粒子の断面を少なくともランダムに20個以上、好ましくは100個以上観察し、各粒子の粒径および円形度を求める。粒径の一例としてはHeywood径(粒子の投影面積と同面積の円の直径)を用いることができ、円形度の一例としてはWadellの円形度(粒子断面に外接する円の直径に対する粒子断面の投影面積に等しい円の直径の比)を用いることができる。観察にはTEMやSEMを用い、粒径および円形度の算出には画像解析を用いることができる。
【0026】
本実施形態に係る流動性付与粒子のかさ密度は、好ましくは0.6~1.4g/cmであり、より好ましくは0.6~1.3g/cmであり、さらに好ましくは0.7~1.3g/cmである。かさ密度が上記範囲であることで、流動性付与粒子が磁性材料中でよく分散し、磁性コア用磁性粒子の流動性を改善することができる。かさ密度は、JIS-Z-5101に基づいて測定する。
【0027】
本実施形態に係る流動性付与粒子を製造する方法は、流動性付与粒子が上記の粒径、円形度等を満たしていれば、特に限定されない。例えば、本実施形態に係る流動性付与粒子は、粒子本体を形成する工程と、粒子本体に被覆層を形成する工程により得られる。粒子本体を形成する工程と、被覆層を形成する工程とは、別個に実施されてもよく、連続的に実施されてもよい。
【0028】
粒子本体を形成する方法は、特に限定されず、例えば、湿式法、粉砕法、気相法、噴霧熱分解法、溶融法等の各種粉末化法により製造できる。本実施形態に係る流動性付与粒子は、その製造に湿式法を採用することが好ましい。湿式法において、粒子の合金となる金属イオンを含む溶液を用いることができ、構成される金属の化合物、例えば、塩化物、酸化物、水酸化物、窒化物、および炭化物、硝酸塩、硫酸塩、および炭酸塩等の各種塩類、および、それらの水和物および有機溶媒和物をその原料に用いることができる。また各金属化合物の量比を調整し、混合させた溶液を用いることにより所望の組成比で合金の粒子本体を形成することができる。本実施形態において、FeおよびCoからなる合金の粒子本体を形成する場合は、例えば塩化鉄水和物、および塩化コバルト水和物を用いて、その中に含まれるFeおよびCoの量比を基に秤量して混合溶液を作製することにより、合金組成のFe/Co比を調節することができる。Fe/Coの質量比は、好ましくは9/1~3/7である。また上記溶液の濃度、温度、pH等を調整することで粒子の析出過程を制御することができるため、粒径、円形度の異なる粒子を得ることができる。
【0029】
被覆層を形成する方法も、特に限定されない。粒子本体に対して湿式処理を行って被覆層を形成するのが好ましいが、乾式処理を行って被覆層を形成してもよい。被覆層に用いるケイ素化合物の原料としては、特に限定されないが、ケイ素の酸化物や水酸化物、その他ケイ素の塩やアルコキシド等の化合物やそれらの水和物を用いることができる。
【0030】
粒子本体を形成する工程と被覆層を形成する工程とを連続的に実施する場合には、湿式法を採用することが好ましい。湿式法において、形成された粒子本体は液中にあるために、別の粒子との間に液が介在することで凝集せず、分散した状態で被覆層を形成する工程が行える。また被覆層に用いるケイ素化合物の原料を、粒子が分散している液に混合または溶解させることにより、粒子が凝集した状態で被覆される事態を回避できる。このため流動性付与粒子の粒径、円形度等は、粒子本体のそれが反映されるために制御が可能となり、またケイ素化合物の濃度、溶液温度、pHなどを調整することで、異なる厚さの被覆層を得ることができる。溶媒としては、例えば水、有機溶媒、またはそれらの混合溶媒が挙げられる。粒子本体を形成する工程と被覆層を形成する工程とを連続的に実施する場合には、粒子原料の溶解性と粒子の分散性、ケイ素化合物原料の溶解性を考慮する必要がある。本実施形態において、有機溶媒は例えばメタノールやエタノール等の1価アルコール、エチレングリコールやプロピレングリコール等のポリオール等のアルコール化合物溶媒が好ましく、ケイ素化合物原料に例えばテトラエトキシシラン(TEOS)を用いることができる。
【0031】
(磁性コア)
本実施形態に係る磁性コアは、上記流動性付与粒子と、上記流動性付与粒子よりも粒径の大きい磁性コア用磁性粒子とを含む。
【0032】
磁性コア用磁性粒子の粒径は、好ましくは3~50μmであり、より好ましくは5~30μmである。
【0033】
磁性コア用磁性粒子は、磁性を有していれば特に限定されないが、Feを含むことが好ましい。磁性粒子は、Feに加えて、Ni、Si、およびCrからなる群から選択される1以上の元素を含んでもよい。したがって、磁性粒子としては、例えば、純鉄(Fe)、Fe-Si-Cr系合金、Fe-Ni系合金、およびFe-Ni-Si-Co系合金等を用いることができる。
【0034】
また、磁性コア用磁性粒子は、好ましくは表面に絶縁被膜を有する。絶縁皮膜を形成する方法は特に限定されず、樹脂または無機材料で形成してもよく、熱処理により粒子表面を酸化した酸化膜を形成してもよい。具体的には、例えば、SiOからなる絶縁皮膜や、リン酸処理により形成した絶縁皮膜を有する磁性粒子を用いることができる。
【0035】
本実施形態に係る磁性コアにおいて、流動性付与粒子の含有量は、磁性粒子100wt%に対して、好ましくは0.2~1.0wt%である。流動性付与粒子の含有量を上記範囲とすることで、磁性コア用磁性粒子の流動性が向上し、コア密度の高い磁性コアが得られる。
【0036】
本実施形態に係る磁性コアは、結合剤として樹脂を含んでもよい。磁性コア全体を100wt%とすると、結合剤の含有量は2wt%~10wt%とすることができる。磁性粒子および流動性付与粒子が樹脂を介して結合することにより、所望の形状に固定することができる。また、磁性コアは、その磁気特性が損なわれない範囲で、磁性粒子、流動性付与粒子、および結合剤以外の物質を含有していてもよい。
【0037】
本実施形態に係る磁性コアの製造方法は、上記磁性粒子と上記流動性付与粒子とを用いる製造方法であれば、特に限定されず、公知の方法を採用することができる。例えば、まず、磁性粒子および流動性付与粒子と、結合剤として公知の樹脂とを混合し、混合物を得る。必要に応じて、得られた混合物を造粒粉としてもよい。そして、混合物または造粒粉を金型内に充填して圧縮成形し、作製すべき磁性コアの形状を有する成形体を得る。得られた成形体に対して、たとえば50~200℃で熱処理を行うことにより、樹脂が硬化して、磁性粒子および流動性付与粒子が樹脂を介して固定された磁性コアが得られる。
【0038】
本実施形態に係る磁性コアは、インダクタ素子等のコイル型電子部品の磁芯として好適に用いられる。たとえば、所定形状の磁性コア内部に、ワイヤが巻回された空芯コイルが埋設されたコイル型電子部品であってもよいし、所定形状の磁性コアの表面にワイヤが所定の巻き数だけ巻回されてなるコイル型電子部品であってもよい。ワイヤが巻回される磁芯の形状としては、FT型、ET型、EI型、UU型、EE型、EER型、UI型、ドラム型、トロイダル型、ポット型、カップ型等を例示することができる。
【0039】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の範囲内において種々の態様で改変しても良い。
【実施例
【0040】
以下、実施例を用いて、発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0041】
流動性付与粒子の粒径、円形度およびかさ密度を以下のように測定した。結果を表1に示す。
【0042】
<粒径および円形度>
流動性付与粒子の粒径および円形度はTEM像の解析を用いて測定した。粒径はHeywood径、円形度はWadellの円形度を算出した。
【0043】
<かさ密度>
流動性付与粒子のかさ密度は、JIS-Z-5101に基づき、筒井理化学器械株式会社製カサ比重測定器(顔料用)を用いて測定した。
【0044】
磁性コア用磁性粒子と流動性付与粒子との混合物の流動度、磁性コアのコア密度、および磁性コアの透磁率を以下のように測定した。結果を表1に示す。
【0045】
<流動度>
磁性コア用磁性粒子と流動性付与粒子との混合物について、流動度を測定した。JIS-Z-2502に基づき、筒井理化学器械株式会社製粉末流動計(金属粉用)を用いて測定した。
【0046】
<コア密度>
コア密度は、磁性コアについて、上皿天秤により計測した重さとマイクロメータにより測定した体積から算出した。
【0047】
<透磁率>
LCRメータ(アジレント・テクノロジー社製4284A)および直流バイアス電源(アジレント・テクノロジー社製42841A)を用いて、周波数1MHzにおける磁性コアのインダクタンスを測定し、インダクタンスから磁性コアの透磁率を算出した。
【0048】
(実施例1)
本実施形態に係る記載の方法で、湿式法により、Fe-Co系合金からなる粒子本体と、SiOからなる被覆層とからなる流動性付与粒子を得た。得られた粒子本体中のFe/Coの質量比は4/1であった。被覆層の厚さは2nmであり、得られた流動性付与粒子の粒径は15nmであった。
【0049】
SiOからなる絶縁皮膜を有するFe-Si-Cr系合金の磁性コア用磁性粒子を用意した。該磁性粒子の粒径は25μmであった。該磁性粒子と上記流動性付与粒子とを混合し、流動度を測定した。流動性付与粒子の含有量は、磁性粒子100wt%に対して、0.5wt%とした。
【0050】
続いて、磁性コアを作製した。熱硬化樹脂であるエポキシ樹脂および硬化剤の総量が、磁性粒子および流動性付与粒子の合計100wt%に対して、3wt%となるように秤量し、アセトンに加えて溶液化し、その溶液を磁性粒子および流動性付与粒子と混合した。混合後、アセトンを揮発させて得られた顆粒を、355μmのメッシュで整粒した。これを外径11mm、内径6.5mmのトロイダル形状の金型に充填し、成形圧6.0t/cmで加圧し磁性コアの成形体を得た。得られた磁性コアの成形体を180℃で1時間加熱して樹脂を硬化させ磁性コアを得た。得られた磁性コアについて、コア密度および透磁率を測定した。
【0051】
(実施例2)
流動性付与粒子の粒径を25nmとした他は、実施例1と同様にして流動性付与粒子を得た。また、実施例1と同様にして磁性コアを得た。
【0052】
(実施例3)
流動性付与粒子の粒径を40nmとした他は、実施例1と同様にして流動性付与粒子を得た。また、実施例1と同様にして磁性コアを得た。
【0053】
(実施例4)
Feからなる粒子本体を用いた他は、実施例1と同様にして流動性付与粒子を得た。また、実施例1と同様にして磁性コアを得た。
【0054】
(実施例5)
流動性付与粒子の粒径を25nmとした他は、実施例4と同様にして流動性付与粒子を得た。また、実施例1と同様にして磁性コアを得た。
【0055】
(実施例6)
流動性付与粒子の粒径を40nmとした他は、実施例4と同様にして流動性付与粒子を得た。また、実施例1と同様にして磁性コアを得た。
【0056】
(実施例7)
実施例1と同様にして流動性付与粒子を得た。また、磁性コアにFe-Ni系合金の磁性粒子を用いた他は、実施例1と同様にして磁性コアを得た。
【0057】
(実施例8)
実施例2と同様にして流動性付与粒子を得た。また、磁性コアにFe-Ni系合金の磁性粒子を用いた他は、実施例1と同様にして磁性コアを得た。
【0058】
(実施例9)
実施例3と同様にして流動性付与粒子を得た。また、磁性コアにFe-Ni系合金の磁性粒子を用いた他は、実施例1と同様にして磁性コアを得た。
【0059】
(実施例10)
実施例4と同様にして流動性付与粒子を得た。また、磁性コアにFe-Ni系合金の磁性粒子を用いた他は、実施例1と同様にして磁性コアを得た。
【0060】
(実施例11)
実施例5と同様にして流動性付与粒子を得た。また、磁性コアにFe-Ni系合金の磁性粒子を用いた他は、実施例1と同様にして磁性コアを得た。
【0061】
(実施例12)
実施例6と同様にして流動性付与粒子を得た。また、磁性コアにFe-Ni系合金の磁性粒子を用いた他は、実施例1と同様にして磁性コアを得た。
【0062】
(比較例1)
湿式法により、Fe-Co系合金からなる粒子本体と、SiOからなる被覆層とからなる、粒径5nmの粒子を得た。流動性付与粒子の代わりに該粒子を用いた他は、実施例1と同様にして磁性コアを得た。
【0063】
(比較例2)
湿式法により、Fe-Co系合金からなる粒子本体と、SiOからなる被覆層とからなる、粒径60nmの粒子を得た。流動性付与粒子の代わりに該粒子を用いた他は、実施例1と同様にして磁性コアを得た。
【0064】
(比較例3)
湿式法により、Feからなる粒子本体と、SiOからなる被覆層とからなる、粒径5nmの粒子を得た。流動性付与粒子の代わりに該粒子を用いた他は、実施例4と同様にして磁性コアを得た。
【0065】
(比較例4)
湿式法により、Feからなる粒子本体と、SiOからなる被覆層とからなる、粒径60nmの粒子を得た。流動性付与粒子の代わりに該粒子を用いた他は、実施例4と同様にして磁性コアを得た。
【0066】
(比較例5~7)
湿式法により、Fe-Co系合金からなる粒子本体と、SiOからなる被覆層とからなる粒子を得た。粒径は40nmとし、円形度を調整した。流動性付与粒子の代わりに該粒子を用いた他は、実施例1と同様にして磁性コアを得た。
【0067】
(実施例13、14)
流動性付与粒子の円形度を調整した他は、実施例3と同様にして流動性付与粒子を得た。実施例1と同様にして磁性コアを得た。
【0068】
(比較例8)
流動性付与粒子の代わりに、粒径40nmのSiOアエロジルを用いた他は、実施例1と同様にして磁性コアを得た。
【0069】
(実施例15)
実施例3と同様にして流動性付与粒子を得た。流動性付与粒子の含有量を、磁性コア用磁性粒子100wt%に対して、0.2wt%とした他は、実施例1と同様にして磁性コアを得た。
【0070】
(実施例16)
実施例3と同様にして流動性付与粒子を得た。流動性付与粒子の含有量を、磁性コア用磁性粒子100wt%に対して、0.7wt%とした他は、実施例1と同様にして磁性コアを得た。
【0071】
(実施例17)
実施例3と同様にして流動性付与粒子を得た。流動性付与粒子の含有量を、磁性コア用磁性粒子100wt%に対して、1.0wt%とした他は、実施例1と同様にして磁性コアを得た。
【0072】
【表1】
【0073】
実施例1~17では、磁性コア用磁性粒子と流動性付与粒子との混合物は流動度に優れ、磁性コアのコア密度が上昇した。その結果、透磁率に優れる磁性コアが得られた。
【0074】
比較例1、3では、流動性付与粒子の代わりに用いた粒子の粒径が小さく、該粒子と磁性コア用磁性粒子との混合物は流動性に劣り、磁性コアのコア密度が低下した。その結果、磁性コアの透磁率が低下した。
【0075】
比較例2,4では、流動性付与粒子の代わりに用いた粒子の粒径が大きく、該粒子と磁性コア用磁性粒子との混合物は流動性に劣り、磁性コアのコア密度が低下した。その結果、磁性コアの透磁率が低下した。
【0076】
比較例5~7では、流動性付与粒子の代わりに用いた粒子の円形度が低く、該粒子と磁性コア用磁性粒子との混合物は流動性に劣り、磁性コアのコア密度が低下した。その結果、磁性コアの透磁率が低下した。
【0077】
比較例8では、流動性付与粒子の代わりにアエロジルを用いている。アエロジルは分散性に劣る。そのため、磁性コア用磁性粒子とアエロジルとの混合物は流動性に劣り、磁性コアのコア密度が低下した。その結果、磁性コアの透磁率が低下した。
【0078】
上記のように実施例1~17において、透磁率に優れる磁性コアが得られる理由は次のように説明できる。
実施例1~17では、図1、2に示すように、磁性コア用磁性粒子10と磁性コア用磁性粒子10との間に、円形度の高い流動性付与粒子11が介在している。そのため、磁性コア用磁性粒子10は、図2中の矢印が示すように、磁性粒子10の流動性が改善する方向に回転しやすくなる。その結果、コア密度が向上し、透磁率に優れる磁性コアが得られると考えられる。
【0079】
一方、比較例5~7では、図3、4に示すように、磁性コア用磁性粒子10と磁性コア用磁性粒子10との間に、円形度の低い粒子12が介在している。そのため、磁性コア用磁性粒子10の回転が阻害される。その結果、磁性コア用磁性粒子10の流動性が悪化し、コア密度が低下して、磁性コアの透磁率は低下したと考えられる。
【0080】
比較例8では、図5、6に示すように、磁性コア用磁性粒子10と磁性コア用磁性粒子10との間にアエロジル13が介在する箇所では、磁性粒子10は図6中の矢印が示すように流動性が改善する方向に回転しやすくなる。しかし、アエロジルは分散性に劣る。そのため、アエロジル13が介在しない箇所では、磁性コア用磁性粒子10は図7中に示すように回転が阻害されて流動性が低下する。その結果、全体として磁性コア用磁性粒子10の流動性が悪化し、コア密度が低下して、磁性コアの透磁率は低下したと考えられる。
【符号の説明】
【0081】
10 磁性コア用磁性粒子
11 流動性付与粒子
12 円形度の低い粒子
13 アエロジル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7