(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】画像診断装置
(51)【国際特許分類】
G01T 1/161 20060101AFI20230829BHJP
A61B 6/04 20060101ALN20230829BHJP
【FI】
G01T1/161 E
A61B6/04 332P
(21)【出願番号】P 2020097418
(22)【出願日】2020-06-04
【審査請求日】2022-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100155608
【氏名又は名称】大日方 崇
(72)【発明者】
【氏名】北本 博之
(72)【発明者】
【氏名】宇田川 晴英
(72)【発明者】
【氏名】水田 哲郎
【審査官】亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-031656(JP,A)
【文献】特開2002-165788(JP,A)
【文献】特開2006-346327(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0187379(US,A1)
【文献】特開2016-034344(JP,A)
【文献】実開平04-111311(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/161 - 1/166
A61B 6/00 - 6/14
A61B 5/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者が載置される寝台と、
開口を有し、前記寝台に載置された前記被験者の診断対象部位が前記開口内に配置された状態で前記診断対象部位から放出された放射線を検出することによって、前記被験者の前記診断対象部位を撮像する撮像部と、
前記被験者の頭足方向である第1方向、および、前記第1方向とは異なる方向である第2方向に対して前記撮像部および前記寝台のうち少なくともどちらかを移動させることによって前記撮像部および前記寝台を相対移動させることにより、前記開口を前記第1方向に向けた状態で前記撮像部によって前記被験者の第1の前記診断対象部位を撮像するための撮像位置である第1撮像位置と、前記撮像部によって前記被験者の第2の前記診断対象部位を撮像するための撮像位置である第2撮像位置との間において前記撮像部と前記寝台とを相対移動させるように構成された移動機構と、
通電時において、前記第1方向および前記第2方向への前記撮像部および前記寝台の相対移動を可能にし、通電が停止した場合において、前記第2方向への前記撮像部および前記寝台の相対移動を規制するとともに、前記第1方向への前記撮像部および前記寝台の相対移動を可能にする移動制御機構と、を備える、画像診断装置。
【請求項2】
前記移動制御機構は、前記第1方向への前記撮像部および前記寝台の相対移動を制御する第1方向移動制御部と、前記第2方向への前記撮像部および前記寝台の相対移動を規制する第2方向移動制御部と、を含み、
前記第2方向移動制御部は、通電が停止した場合に、前記移動機構による前記第2方向への前記撮像部および前記寝台の相対移動を規制するように構成されており、
前記第1方向移動制御部は、通電が停止した場合に、前記第1方向への前記撮像部および前記寝台の相対移動を可能にするように構成されている、請求項1に記載の画像診断装置。
【請求項3】
前記第1方向移動制御部は、前記第1方向への前記撮像部および前記寝台の相対移動を規制する第1方向移動規制部と、前記第1方向への前記撮像部および前記寝台の相対移動の規制を解除する第1方向移動規制解除部と、を含み、
前記第1方向移動規制部は、通電が停止した場合に、前記移動機構による前記第1方向への前記撮像部および前記寝台の相対移動を規制するように構成されており、
前記第1方向移動規制解除部は、通電が停止した場合に、前記移動機構による前記第1方向への前記撮像部および前記寝台の相対移動が前記第1方向移動規制部によって規制された状態のままで、前記移動機構を介さずに、前記第1方向への前記撮像部および前記寝台の相対移動を可能にするように構成されている、請求項2に記載の画像診断装置。
【請求項4】
前記移動機構は、前記撮像部を前記第1方向に移動させる第1方向移動機構を含み、
前記第1方向移動規制解除部は、通電が停止した場合に、前記第1方向移動機構による前記撮像部の移動が前記第1方向移動規制部によって規制された状態で、前記第1方向移動機構を介さずに、前記撮像部の前記第1方向への移動を可能にするように構成されている、請求項3に記載の画像診断装置。
【請求項5】
前記第1方向移動機構は、駆動部と、前記駆動部と接続され前記駆動部からの駆動力を伝達する第1駆動力伝達部材と、前記第1駆動力伝達部材を介して前記駆動部からの駆動力を前記撮像部に伝達する第2駆動力伝達部材と、前記第2駆動力伝達部材を前記第1駆動力伝達部材に対して空転可能に保持する保持部材と、を含み、
前記第1方向移動規制部は、通電が停止した場合に、前記第1駆動力伝達部材の動作を規制するように構成されており、
前記第1方向移動規制解除部は、通電時において、前記第2駆動力伝達部材を前記第1駆動力伝達部材に対して空転しない状態とし、通電が停止した場合に、前記第2駆動力伝達部材を前記第1駆動力伝達部材に対して空転する状態とするように構成されている、請求項4に記載の画像診断装置。
【請求項6】
前記移動機構は、前記撮像部を前記第2方向に移動させる第2方向移動機構を含み、
前記第2方向移動制御部は、通電時には、前記第2方向移動機構による前記撮像部の移動を可能にし、通電が停止した場合に、前記第2方向移動機構による前記撮像部の移動を規制するように構成されている、請求項3~5のいずれか1項に記載の画像診断装置。
【請求項7】
前記撮像部の位置を検出する位置検出部をさらに備え、
前記移動機構は、通電が再開した場合に、前記位置検出部が設けられている位置に前記撮像部を移動させるように構成されている、請求項1~6のいずれか1項に記載の画像診断装置。
【請求項8】
前記被験者の第1の前記診断対象部位は、前記被験者の頭部であり、
前記被験者の第2の前記診断対象部位は、前記被験者の乳房であり、
前記第2方向は上下方向であり、
前記第2撮像位置は、前記開口を前記第2方向に向けた状態で前記被験者の乳房を撮像する位置であり、
前記移動機構は、前記撮像部を前記第1方向と前記第2方向とに移動させることにより、前記撮像部による撮像位置を前記第1撮像位置と前記第2撮像位置とに切り替えるように構成されている、請求項7に記載の画像診断装置。
【請求項9】
前記移動機構は、前記撮像部を回転させる回転機構を含み、
前記回転機構は、前記撮像部の姿勢を切り替える切替位置において、前記撮像部を回転させるように構成されている、請求項8に記載の画像診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人体の内部の画像を撮影する画像診断装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1に記載の画像診断装置(PET装置:positron emission tomography装置)は、陽電子放出核種により標識された薬剤を用いて、電子と陽電子との対消滅によって生じる一対のガンマ線(放射線)を検出することによって、人体の内部の画像を撮影する。そして、撮影された画像は、がん細胞の有無などの画像診断に用いられる。このPET装置は、開口を有しガンマ線を検出する検出部を含む撮影ユニットと、撮影対象としての人体が臥位で配置される寝台と、撮影ユニットを回動させるための回動機構部とを備える。そして、上記特許文献1に記載のPET装置は、撮影ユニットを回動させることによって、仰臥位の人体の頭部を撮影する頭部撮影状態と、伏臥位の人体の乳房を撮影する乳房撮影状態とを切換えることが可能なように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記特許文献1に開示されているPET装置(画像診断装置)では、頭部を撮影する際には、撮影ユニット(撮影部)の開口を被験者の頭足方向に向けた状態で撮影部が頭部の周囲を囲んだ状態となる。また、上記特許文献1には明記されていないが、画像診断装置(PET装置)で撮影する場合には、撮影中に被験者が動かないように、被験者の体を固定した状態で撮影が行われる。したがって、被験者の頭部を撮影する場合には、撮像部が被験者の頭部の周囲を取り囲んだ状態で、かつ、被験者の身体を固定した状態で撮影しているため、停電などによって装置に対する通電が停止した場合には、被験者を画像診断装置から退避させることができないという不都合がある。そのため、撮像部の開口が被験者の頭足方向に向いた状態で撮影している際に画像診断装置に対する通電が停止した場合でも、被験者を退避させることが可能な画像診断装置が望まれている。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、撮像部の開口が被験者の頭足方向に向いた状態で撮影している際に画像診断装置に対する通電が停止した場合でも、被験者を退避させることが可能な画像診断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面における画像診断装置は、被験者が載置される寝台と、開口を有し、寝台に載置された被験者の診断対象部位が開口内に配置された状態で診断対象部位から放出された放射線を検出することによって、被験者の診断対象部位を撮像する撮像部と、被験者の頭足方向である第1方向、および、第1方向とは異なる方向である第2方向に対して撮像部および寝台のうち少なくともどちらかを移動させることによって撮像部および寝台を相対移動させることにより、開口を第1方向に向けた状態で撮像部によって被験者の第1の診断対象部位を撮像するための撮像位置である第1撮像位置と、撮像部によって第1の診断対象部位とは異なる部位である被験者の第2の診断対象部位を撮像するための撮像位置である第2撮像位置との間において撮像部と寝台とを相対移動させるように構成された移動機構と、通電時において、第1方向および第2方向への撮像部および寝台の相対移動を可能にし、通電が停止した場合において、第2方向への撮像部および寝台の相対移動を規制するとともに、第1方向への撮像部および寝台の相対移動を可能にする移動制御機構と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
上記一の局面における画像診断装置では、通電時においては、第1方向および第2方向へ撮像部および寝台の相対移動が可能であるため、第1の撮像位置と第2の撮像位置とを切り替えて撮像することができる。また、通電が停止した場合には、第1方向とは異なる第2方向への撮影部および寝台の相対移動が規制されるとともに、頭足方向である第1方向への撮像部および寝台の相対移動が可能なように構成されているので、操作者が手動で第1方向へ撮像部および寝台を相対移動させることにより、被験者を撮像部の開口から退避させることができる。その結果、撮像部の開口が被験者の頭足方向に向いた状態で撮影している際に画像診断装置に対する通電が停止した場合でも、被験者を退避させることができる。また、通電が停止した場合において、頭足方向(第1方向)とは異なる第2方向への撮影部および寝台の相対移動が規制されるので、操作者が撮像部および寝台を相対移動させる際の移動方向を第1方向に限定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態による画像診断装置の構成を説明するための図である。
【
図2】一実施形態による画像診断装置の構成を説明するためのブロック図である。
【
図3】一実施形態による被験者の撮像について説明するための図であって、(A)は、被験者の頭部の撮像について説明するための図であり、(B)は、被験者の乳房の撮像について説明するための図である。
【
図4】一実施形態による移動機構による撮像部の移動について説明するための図である。
【
図5】一実施形態による第1方向移動機構、第1方向移動規制部、および、第1方向移動規制解除部の通電時の動作を説明するための図である。
【
図6】一実施形態による第1方向移動機構、第1方向移動規制部、および、第1方向移動規制解除部の通電時停止時の動作を説明するための図である。
【
図7】一実施形態による第2方向移動機構、および、第2方向移動制御機構の通電時の動作を説明するための図である。
【
図8】一実施形態による第2方向移動機構、および、第2方向移動制御機構の通電時停止の動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
(画像診断装置の全体構成)
図1~
図8を参照して、本発明の一実施形態による画像診断装置100について説明する。
【0012】
図1に示すように、画像診断装置100は、被験者101(
図2参照)の診断対象部位における疾患(たとえば、がん)について診断を行うための装置である。
【0013】
画像診断装置100は、被験者101に予め投与された放射性薬剤に起因して被験者101の診断対象部位において発生した放射線(ガンマ線)を検出することによって、被験者101の診断対象部位を撮像するPET装置である。放射線(ガンマ線)は、被験者101の体内において、放射性薬剤から発生した陽電子と、この陽電子の近傍に位置する原子が有する電子との対消滅によって発生する。画像診断装置100は、被験者101の診断対象部位において検出された放射線(ガンマ線)に基づいて、撮像画像を生成する。そして、生成された撮像画像に基づいて、医師は、被験者101の診断対象部位の疾患に対して診断を行う。被験者101の診断対象部位は、第1の診断対象部位と、第2の診断対象部位とを含む。被験者101の第1の診断対象部位は、被験者101の頭部101a(
図3(A)参照)である。また、被験者101の第2の診断対象部位は、被験者101の乳房101b(
図3(A)参照)である。
【0014】
図2に示すように、本実施形態による画像診断装置100は、寝台1と、撮像部2と、移動機構3と、移動制御機構4と、位置検出部5と、操作パネル6と、ヘッドレスト7と、制御部8とを備える。
【0015】
寝台1は、被験者101(
図3(A)参照)が載置されるように構成されている。寝台1は、天板11と、基台12とを含む。天板11は、診断対象部位を撮像するために、被験者101を仰臥位または伏臥位に載置可能に構成されている。また、天板11は、乳房101b(
図3(A)参照)を撮像するために、乳房101bが挿入される孔部11a(
図1参照)が設けられている。天板11は、水平面内において、頭足方向であるX方向に長手方向を有し、水平面内においてX方向に直交する方向であるY方向に短手方向を有する。また、被験者101は、頭部101aを撮像される場合には、天板11に仰臥位に載置される。そして、被験者101は、乳房101bを撮像される場合には、伏臥位に載置される。そして、被験者101は、仰臥位および伏臥位のいずれにおいても、X1方向側に頭部101aが位置するとともに、X2方向側に足部が位置するように、天板11に載置される。基台12は、天板11を下方向(Z2方向)から支持する。
【0016】
本実施形態では、撮像部2は、筐体部21と、複数の放射線検出器22とを含む。撮像部2の詳細な構成については、後述する。
【0017】
放射線検出器22は、たとえば、シンチレータとシリコンフォトマルチプライヤ(Silicon photomultiplier:SiPM)とを含むシンチレータ検出器である。放射線検出器22は、放射線(ガンマ線)を検出する。そして、放射線検出器22は、検出した放射線(ガンマ線)に応じた検出信号を出力する。複数の放射線検出器22は、撮像部2において、筐体部21内に、開口21a(
図3(A)参照)を取り囲むように円環状に配置されている。すなわち、複数の放射線検出器22は、被験者101の診断対象部位(頭部101aまたは乳房101b)を取り囲むように配置されて放射線(ガンマ線)を検出するように構成されている。なお、放射線検出器22は、シリコンフォトマルチプライヤ以外の光電子増倍管を含むように構成されていてもよい。撮像部2が被験者101の診断対象部位(頭部101aまたは乳房101b)を撮像する構成の詳細については、後述する。
【0018】
移動機構3は、撮像部2および寝台1を相対移動させる。移動機構3は、被験者101の第1の診断対象部位(被験者101の頭部101a)を撮像するための撮像位置である第1撮像位置10a(
図3(A)参照)と、被験者101の第2の診断対象部位(被験者101の乳房101b)を撮像するための撮像位置である第2撮像位置10b(
図3(B)参照)とに、撮像部2による撮像位置を切り替えるように構成されている。移動機構3が撮像部2による撮像位置を第1撮像位置10aと第2撮像位置10bとに切り替える構成の詳細については、後述する。
【0019】
本実施形態では、
図2に示すように、移動機構3は、第1方向移動機構31、第2方向移動機構32、および、回転機構33を含む。第1方向移動機構31は、撮像部2を頭足方向(X方向)に移動させる。具体的には、
図4の経路30cおよび経路30dにおいて、撮像部2を頭足方向(X方向)に移動させる。第1方向移動機構31は、たとえば、ボールねじ機構を含む。第2方向移動機構32は、撮像部2を第2方向に移動させる。具体的には、第2方向移動機構32は、
図4の経路30aおよび経路30bにおいて、撮像部2を第2方向に移動させる。第2方向移動機構32は、たとえば、ボールねじ機構を含む。回転機構33は、撮像部2の姿勢を切り替える切替位置10cにおいて、撮像部2を回転させるように構成されている。そして、回転機構33は、撮像部2を回転させることによって、頭部撮像姿勢と乳房撮像姿勢とを切り替える。なお、本実施形態では、第2方向は、上下方向(Z方向)である。回転機構33は、たとえば、モータなどを含む。
【0020】
また、移動制御機構4は、通電時において、第1方向および第2方向への撮像部2および寝台1の相対移動を可能にし、通電が停止した場合において、第2方向への撮像部2および寝台1の相対移動を規制するとともに、第1方向への撮像部2および寝台1の相対移動を可能にするように構成されている。具体的には、移動制御機構4は、第1方向への撮像部2および寝台1の相対移動を制御する第1方向移動制御部41と、第2方向への撮像部2および寝台1の相対移動を規制する第2方向移動制御部42と、を含む。
【0021】
第1方向移動制御部41は、通電が停止した場合に、第1方向への撮像部2および寝台1の相対移動を可能にするように構成されている。第2方向移動制御部42は、通電が停止した場合に、移動機構3による第2方向への撮像部2および寝台1の相対移動を規制するように構成されている。第1方向移動制御部41の構成の詳細および第2方向移動制御部42の構成の詳細については、後述する。
【0022】
位置検出部5は、撮像部2の位置を検出するように構成されている。位置検出部5は、たとえば、光学式のセンサを含む。位置検出部5の配置については、後述する。
【0023】
操作パネル6は、寝台1と撮像部2とを相対移動させるための操作を受け付ける。本実施形態では、寝台1と撮像部2との相対位置を移動(変更)させるために、操作パネル6は、撮像部2を移動させる操作を受け付ける。操作パネル6は、頭部移動スイッチ61、乳房移動スイッチ62、および、微調整スイッチ63を含む。頭部移動スイッチ61、乳房移動スイッチ62、および、微調整スイッチ63は、たとえば、押下されることによって操作を受け付けるシートスイッチである。
【0024】
頭部移動スイッチ61は、頭部101aを撮像するために、撮像部2を第1撮像位置10a(
図3(A)参照)に移動させる操作を受け付ける。また、乳房移動スイッチ62は、乳房101bを撮像するために、撮像部2を第2撮像位置10b(
図3(B)参照)に移動させる操作を受け付ける。具体的には、撮像部2は、経路30(
図4参照)のどの位置にあっても、頭部移動スイッチ61に対する操作を受け付けることによって、第1撮像位置10aに向かって移動を開始する。同様に、撮像部2は、経路30のどの位置にあっても、乳房移動スイッチ62に対する操作を受け付けることによって、第2撮像位置10bに向かって移動を開始する。移動機構3は、制御部8による制御によって、頭部移動スイッチ61が操作されている(押下されている)期間、撮像部2を第1撮像位置10aに向かって移動させる。同様に、移動機構3は、制御部8による制御によって、乳房移動スイッチ62が操作されている(押下されている)期間、撮像部2を、第2撮像位置10bに向かって移動させる。
【0025】
微調整スイッチ63は、撮像部2を第1方向(頭足方向)に移動させることによって、被験者101の頭部101aの撮像される位置を微調整する操作を受け付けるように構成されている。すなわち、微調整スイッチ63に対する操作に基づいて、制御部8は、撮像部2の位置を、第1撮像位置10a(
図3(A)参照)と第1移動方向切替位置10d(
図4参照)との間(
図4の経路30d)において、微調整するために移動させる。
【0026】
ヘッドレスト7は、被験者101の頭部101a(
図3参照)を支持する。ヘッドレスト7は、取り外し可能に構成されている。ヘッドレスト7は、寝台1の所定の位置に設置される。
【0027】
制御部8は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、および、GPU(Graphics Processing Unit)などを含んで構成されたコンピュータである。また、制御部8は、画像診断装置100の各部を制御する。制御部8は、操作パネル6の頭部移動スイッチ61、乳房移動スイッチ62、および、微調整スイッチ63に対する操作に基づいて、移動機構3の動作を制御する。また、制御部8は、撮像部2によって出力された検出信号に基づいて、撮像画像を生成する。
【0028】
(撮像部および寝台の相対移動)
図3に示すように、本実施形態では、移動機構3は、被験者101の頭足方向である第1方向(X方向)、および、第1方向とは異なる方向である第2方向(Z方向)に対して撮像部2および寝台1のうち少なくともどちらかを移動させるように構成されている。また、移動機構3は、撮像部2および寝台1を相対移動させることにより、開口21aを第1方向に向けた状態で撮像部2によって被験者101の第1の診断対象部位を撮像するための撮像位置である第1撮像位置10aと、撮像部2によって第1の診断対象部位とは異なる部位である被験者101の第2の診断対象部位を撮像するための撮像位置である第2撮像位置10bとの間において撮像部2と寝台1とを相対移動させるように構成されている。なお、本実施形態では、移動機構3は、撮像部2を移動させることによって、寝台1と撮像部2とを相対移動させるように構成されている。
【0029】
(撮像部の構成)
図3(A)に示すように、撮像部2は、寝台1に載置された被験者101の診断対象部位が開口21a内に配置された状態で診断対象部位から放出された放射線を検出することによって、被験者101の診断対象部位を撮像するように構成されている。筐体部21は、円環形状を有している。円環形状の筐体部21は、開口21aを有している。開口21aは、円環の中心を円環の軸方向に貫通する。撮像部2による撮像を行う際、被験者101の診断対象部位(頭部101aまたは乳房101b)は、筐体部21の開口21a内に配置される。
【0030】
(撮像位置)
撮像部2は、
図3に示すように、寝台1に載置された被験者101の診断対象部位(頭部101aまたは乳房101b)から放出された放射線(ガンマ線)を検出することによって、被験者101の診断対象部位(頭部101aまたは乳房101b)を撮像する。本実施形態では、撮像部2は、
図3の(A)に示すように、被験者101の頭部101aを撮像する。また、撮像部2は、
図3の(B)に示すように、被験者101の乳房101bを撮像する。すなわち、撮像部2は、移動機構3によって移動可能に構成されており、頭部101aの撮像に用いられるとともに、乳房101bの撮像に用いられる。また、撮像部2は、頭部101aを撮影するための頭部撮像姿勢と、乳房101bを撮像するための乳房撮像姿勢とを変更可能に構成されている。頭部撮像姿勢において、撮像部2は、開口21aが伸びる方向(開口21aの軸方向)を頭足方向(
図3のX方向、天板11の長手方向)に一致させるように配置される。また、乳房撮像姿勢において、撮像部2は、開口21aが伸びる方向(開口21aの軸方向)を上下方向(
図3のZ方向)に一致させるように配置される。
【0031】
ヘッドレスト7は、
図3の(A)に示すように、頭部101aを撮像する場合において、被験者101の頭部101aを支持する。ヘッドレスト7は、取り外し可能に構成されている。ヘッドレスト7は、寝台1の所定の位置に設置される。また、
図3の(B)に示すように、画像診断装置100は、乳房101bを撮像する場合において、ヘッドレスト7が取り外された状態で撮像を行うように構成されている。
【0032】
本実施形態では、
図4に示すように、移動機構3は、経路30に沿って、第1撮像位置10aと、第2撮像位置10bとの間において撮像部2を移動させる。また、経路30には、切替位置10cが含まれている。切替位置10cは、撮像部2の姿勢が切り替えられる位置である。本実施形態では、回転機構33は、撮像部2の姿勢を切り替える切替位置10cにおいて、撮像部2を回転させるように構成されている。回転機構33によって撮像部2が回転させられることにより、撮像部2の姿勢が第1撮像位置10aを撮像する姿勢と、第2撮像位置10bを撮像する姿勢とに切り替えられる。
【0033】
被験者101の頭部101aを撮像する場合には、撮像部2は、切替位置10cにおいて、開口21aが第1方向(X方向)を向く姿勢に切り替えられた後、第1移動方向切替位置10dまで第2方向に移動され、その後、第1撮像位置10aまで第1方向に移動させられる。
【0034】
また、被験者101の乳房101bを撮像する場合には、撮像部2は、切替位置10cにおいて、開口21aが第2方向(Z方向)を向く姿勢に切り替えられた後、第2移動方向切替位置10eまで第1方向に移動され、その後、第2撮像位置10bまで第2方向に移動される。
【0035】
位置検出部5は、切替位置10cの近傍に設けられている。本実施形態では、制御部8は、移動機構3を制御することにより、通電が再開した場合に、位置検出部5が設けられている位置に撮像部2を移動させるように構成されている。言い換えると、制御部8は、移動機構3を制御することにより、通電が再開した場合に、撮像部2を切替位置10cに移動させるように構成されている。すなわち、切替位置10cは、撮像部2の初期位置である。
【0036】
(第1方向移動機構および第1方向移制御部の構成)
図5に示すように、第1方向移動機構31は、駆動部31aと、第1駆動力伝達部材31bと、第2駆動力伝達部材31cと、保持部材31dとを含む。駆動部31aは、撮像部2を移動させる駆動力を第1駆動力伝達部材31bに伝達する。第1駆動力伝達部材31bは、駆動部31aと接続され駆動部31aからの駆動力を伝達する。第2駆動力伝達部材31cは、第1駆動力伝達部材31bを介して駆動部31aからの駆動力を撮像部2に伝達する。すなわち、第1方向移動機構31は、駆動部31aからの駆動力を、第1駆動力伝達部材31bおよび第2駆動力伝達部材31cを介して撮像部2に伝達することにより、撮像部2を第1方向に移動させる。保持部材31dは、第2駆動力伝達部材31cを第1駆動力伝達部材31bに対して空転可能に保持するように構成されている。第1駆動力伝達部材31bは、たとえば、ボールねじを含む。また、第2駆動力伝達部材31cは、たとえば、ボールねじナットを含む。また、保持部材31dは、ボールベアリングを含む。すなわち、第1方向移動機構31は、いわゆる、ボールねじ機構である。
【0037】
第1方向移動制御部41は、第1方向移動規制部41aと、第1方向移動規制解除部41bとを含む。第1方向移動規制部41aは、第1方向移動機構31の駆動部31aに設けられている。第1方向移動規制部41aは、たとえば、電磁ブレーキを含む。第1方向移動規制部41aは、通電時においては、移動機構3による第1方向への撮像部2および寝台1の相対移動を規制しないように構成されている。具体的には、第1方向移動規制部41aは、通電時においては、駆動部31aを駆動可能な状態に維持される。
【0038】
また、第1方向移動規制解除部41bは、第1方向への撮像部2および寝台1の相対移動の規制を解除するように構成されている。第1方向移動規制解除部41bは、第1当接部材140と、第2当接部材141と、付勢部材142と、コイル143と、保持部材31dを保持する第1ハウジング144と、第2当接部材141およびコイル143を保持する第2ハウジング145と、第1ハウジング144および第2ハウジング145を保持する基台146とを含む。第1当接部材140は、付勢部材142を介して第2駆動力伝達部材31cと接続されている。付勢部材142は、第1当接部材140を第2駆動力伝達部材31c側(X1方向側)に付勢している。付勢部材142は、たとえば、板バネを含む。第1当接部材140と第2当接部材141とが当接していない状態では、第1当接部材140および付勢部材142は、第2駆動力伝達部材31cとともに回転する。
【0039】
また、保持部材31dは、第2駆動力伝達部材31cを空転可能に保持している。したがって、第1当接部材140と第2当接部材141とが当接していない状態では、第2駆動力伝達部材31cは、第1駆動力伝達部材31bに対して空転する。
【0040】
第2当接部材141は、コイル143を介して第2ハウジング145に保持されている。第2当接部材141は、第2ハウジング145のうち、第1当接部材140側(X1方向側)に設けられている。
【0041】
第1ハウジング144および第2ハウジング145は、基台146に接続されている。第1ハウジング144および第2ハウジング145は、第1駆動力伝達部材31bとともには回転しない。基台146には、撮像部2が設けられており、駆動部31aの駆動に伴い、第1方向(X方向)に移動する。
【0042】
第1方向移動規制解除部41bは、通電時においては、移動機構3による第1方向への撮像部2および寝台1の相対移動を可能にする。具体的には、
図5に示すように、第1方向移動規制解除部41bは、通電時において、第2駆動力伝達部材31cを第1駆動力伝達部材31bに対して空転しない状態とするように構成されている。より具体的には、画像診断装置100に通電されると、コイル143に電力が印加される。電力が印加されると、コイル143は、電磁石として機能し、第1当接部材140を第2当接部材141側に引き寄せ、第1当接部材140と第2当接部材141とを接続させる。これにより、第1方向移動規制解除部41bは、通電時において、第2駆動力伝達部材31cが第1駆動力伝達部材31bに対して空転しない状態とする。したがって、駆動部31aの駆動力が、第1駆動力伝達部材31bを介して第2駆動力伝達部材31cに伝達するため、移動機構3によって撮像部2および寝台1が相対移動される。
【0043】
また、
図6に示すように、第1方向移動規制部41aは、通電が停止した場合に、移動機構3による第1方向への撮像部2および寝台1の相対移動を規制するように構成されている。本実施形態では、第1方向移動規制部41aは、通電が停止した場合に、第1駆動力伝達部材31bの動作を規制するように構成されている。具体的には、第1方向移動規制部41aは、通電が停止した場合には、駆動部31aの駆動軸の駆動(回転)を規制することにより、第1駆動力伝達部材31bの動作が抑制される。
【0044】
また、第1方向移動規制解除部41bは、通電が停止した場合に、移動機構3による第1方向への撮像部2および寝台1の相対移動が第1方向移動規制部41aによって規制された状態のままで、移動機構3を介さずに、第1方向への撮像部2および寝台1の相対移動を可能にするように構成されている。本実施形態では、第1方向移動規制解除部41bは、通電が停止した場合に、第1方向移動機構31による撮像部2の移動が第1方向移動規制部41aによって規制された状態で、第1方向移動機構31を介さずに、撮像部2の第1方向への移動を可能にするように構成されている。具体的には、
図6に示すように、通電が停止した場合には、コイル143への通電も停止するため、第1当接部材140が付勢部材142によって第2当接部材141から離れる方向(X1方向側)へ移動される。これにより、第1方向移動規制解除部41bは、第2駆動力伝達部材31cを第1駆動力伝達部材31bに対して空転可能な状態とするように構成されている。第2駆動力伝達部材31cが第1駆動力伝達部材31bに対して空転する状態となるので、操作者は、手動によって撮像部2を移動させることができる。
【0045】
(第2方向移動機構および第2方向移動制御部の構成)
第2方向移動機構32は、
図7に示すように、駆動部32aと、ピニオン32bと、駆動部32aとピニオン32bとを接続する駆動軸32cと、ピニオン32bとかみ合う溝が形成されたラック32dと、ラック32dに設けられた基台32eとを含む。第2方向移動機構32は、駆動部32aによってピニオン32bが動作(回転)されることにより、ラック32dを第2方向に移動させ、撮像部2を第2方向に移動させるように構成されている。第2方向移動機構32は、いわゆる、ラックアンドピニオン機構である。
【0046】
本実施形態では、第2方向移動制御部42(
図2参照)は、第2方向移動機構32の駆動部32aに設けられている。第2方向移動制御部42は、通電時には、第2方向移動機構32による撮像部2および寝台1の相対移動を可能にするように構成されている。具体的には、
図7に示すように、第2方向移動機構32は、通電時には、駆動軸32cを回転可能な状態とする。これにより、ピニオン32bの回転に伴い、ラック32dが第2方向に移動されるので、第2方向移動機構32による撮像部2および寝台1の相対移動が可能になる。本実施形態では、第2方向移動制御部42は、通電時には、第2方向移動機構32による撮像部2の移動を可能にするように構成されている。
【0047】
また、第2方向移動制御部42は、通電が停止した場合に、第2方向移動機構32による撮像部2の移動を規制するように構成されている。具体的には、
図8に示すように、通電が停止した場合には、第2方向移動制御部42は、駆動軸32cの回転を規制するように構成されている。これにより、ピニオン32bの動作(回転)が規制されるため、ラック32dの第2方向における移動が規制され、第2方向移動機構32による撮像部2および寝台1の相対移動が規制される。第2方向移動制御部42は、いわゆる、電磁ブレーキ機構である。
【0048】
本実施形態では、通電時においては、第1方向移動規制部41aおよび第2方向移動制御部42によって撮像部2の移動が規制されないので、移動機構3による撮像部2の第1方向への移動および第2方向への移動が可能となる。また、通電が停止した場合には、第1方向移動規制部41aおよび第2方向移動制御部42によって撮像部2の移動が規制されるため、移動機構3による撮像部2の移動が制限される。しかしながら、第1方向移動規制解除部41bによって、第1駆動力伝達部材31bに対して第2駆動力伝達部材31cが空転可能な状態となり、撮像部2の第1方向への手動による移動のみが可能な状態となる。したがって、通電が停止した場合には、操作者が手動で撮像部2を第1方向(頭足方向)へ移動させることができる。
【0049】
また、制御部8は、通電時において、移動機構3によって撮像部2を移動させている際には、移動方向と異なる方向への撮像部2の移動を規制するように構成されている。具体的には、制御部8は、通電時において、移動機構3によって撮像部2を第1方向に移動させている場合には、第2方向移動制御部42によって、撮像部2の第2方向への移動を規制する。また、制御部8は、通電時において、移動機構3によって撮像部2を第2方向へ移動させている場合には、第1方向移動規制部41aによって、撮像部2の第1方向への移動を規制する。
【0050】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0051】
本発明の画像診断装置100では、上記のように、被験者101が載置される寝台1と、開口21aを有し、寝台1に載置された被験者101の診断対象部位が開口21a内に配置された状態で診断対象部位から放出された放射線を検出することによって、被験者101の診断対象部位を撮像する撮像部2と、被験者101の頭足方向である第1方向、および、第1方向とは異なる方向である第2方向に対して撮像部2および寝台1のうち少なくともどちらかを移動させることによって撮像部2および寝台1を相対移動させることにより、開口21aを第1方向に向けた状態で撮像部2によって被験者101の第1の診断対象部位を撮像するための撮像位置である第1撮像位置10aと、撮像部2によって第1の診断対象部位とは異なる部位である被験者101の第2の診断対象部位を撮像するための撮像位置である第2撮像位置10bとの間において撮像部2と寝台1とを相対移動させるように構成された移動機構3と、通電時において、第1方向および第2方向への撮像部2および寝台1の相対移動を可能にし、通電が停止した場合において、第2方向への撮像部2および寝台1の相対移動を規制するとともに、第1方向への撮像部2および寝台1の相対移動を可能にする移動制御機構4と、を備える。
【0052】
これにより、通電時においては、第1方向および第2方向へ撮像部2および寝台1の相対移動が可能であるため、第1の撮像位置と第2の撮像位置とを切り替えて撮像することができる。また、通電が停止した場合には、第1方向とは異なる第2方向への撮像部2および寝台1の相対移動が規制されるとともに、頭足方向である第1方向への撮像部2および寝台1の相対移動が可能なように構成されているので、操作者が手動で第1方向へ撮像部2および寝台1を相対移動させることにより、被験者101を撮像部2の開口21aから退避させることができる。その結果、撮像部2の開口21aが被験者101の頭足方向に向いた状態で撮影している際に画像診断装置100に対する通電が停止した場合でも、被験者101を退避させることができる。また、通電が停止した場合において、頭足方向(第1方向)とは異なる第2方向への撮像部2および寝台1の相対移動が規制されるので、操作者が撮像部2および寝台1を相対移動させる際の移動方向を第1方向に限定することができる。
【0053】
また、上記実施形態では、以下のように構成したことによって、下記のような更なる効果が得られる。
【0054】
すなわち、本実施形態では、上記のように、移動制御機構4は、第1方向への撮像部2および寝台1の相対移動を制御する第1方向移動制御部41と、第2方向への撮像部2および寝台1の相対移動を規制する第2方向移動制御部42と、を含み、第2方向移動制御部42は、通電が停止した場合に、移動機構3による第2方向への撮像部2および寝台1の相対移動を規制するように構成されており、第1方向移動制御部41は、通電が停止した場合に、第1方向への撮像部2および寝台1の相対移動を可能にするように構成されている。これにより、通電が停止した場合には、撮像部2および寝台1の第2方向への相対移動が規制された状態で、かつ、第1方向への撮像部2および寝台1の相対移動が可能であるため、操作者が撮像部2および寝台1を手動で相対移動させる際に、撮像部2および寝台1の相対移動の方向を第1方向(頭足方向)に限定することができる。
【0055】
また、本実施形態では、上記のように、第1方向移動制御部41は、第1方向への撮像部2および寝台1の相対移動を規制する第1方向移動規制部41aと、第1方向への撮像部2および寝台1の相対移動の規制を解除する第1方向移動規制解除部41bと、を含み、第1方向移動規制部41aは、通電が停止した場合に、移動機構3による第1方向への撮像部2および寝台1の相対移動を規制するように構成されており、第1方向移動規制解除部41bは、通電が停止した場合に、移動機構3による第1方向への撮像部2および寝台1の相対移動が第1方向移動規制部41aによって規制された状態のままで、移動機構3を介さずに、第1方向への撮像部2および寝台1の相対移動を可能にするように構成されている。これにより、第1方向移動規制部41aによって移動機構3の移動が規制されている場合でも、第1方向移動規制解除部41bによって第1方向への撮像部2および寝台1の相対移動が可能な状態になるため、操作者が撮像部2および寝台1を第1方向へ手動で相対移動させることができる。その結果、通電が停止した場合でも、操作者が撮像部2および寝台1を第1方向へ手動で相対移動させることが可能であるため、被験者101を撮像部2の開口21aから退避させることができる。
【0056】
また、本実施形態では、上記のように、移動機構3は、撮像部2を第1方向に移動させる第1方向移動機構31を含み、第1方向移動規制解除部41bは、通電が停止した場合に、第1方向移動機構31による撮像部2の移動が第1方向移動規制部41aによって規制された状態で、第1方向移動機構31を介さずに、撮像部2の第1方向への移動を可能にするように構成されている。これにより、通電が停止した場合でも、撮像部2の第1方向(頭足方向)への移動が可能であるため、操作者によって撮像部2を手動で第1方向へ移動させることにより、被験者101を容易に退避させることができる。
【0057】
また、本実施形態では、上記のように、第1方向移動機構31は、駆動部31aと、駆動部31aと接続され駆動部31aからの駆動力を伝達する第1駆動力伝達部材31bと、第1駆動力伝達部材31bを介して駆動部31aからの駆動力を撮像部2に伝達する第2駆動力伝達部材31cと、第2駆動力伝達部材31cを第1駆動力伝達部材31bに対して空転可能に保持する保持部材31dとを含み、第1方向移動規制部41aは、通電が停止した場合に、第1駆動力伝達部材31bの動作を規制するように構成されており、第1方向移動規制解除部41bは、通電時において、第2駆動力伝達部材31cを第1駆動力伝達部材31bに対して空転しない状態とし、通電が停止した場合に、第2駆動力伝達部材31cを第1駆動力伝達部材31bに対して空転する状態とするように構成されている。これにより、通電が停止した状態において、第2駆動力伝達部材31cが第1駆動力伝達部材31bに対して空転する状態となるので、第1方向移動規制部41aによって第1駆動力伝達部材31bの動作が規制されている場合でも、第2駆動力伝達部材31cを動作させることができる。その結果、通電が停止した場合でも、第2駆動力伝達部材31cが動作可能であるため、操作者によって撮像部2を手動で第1方向(頭足方向)に移動させることができる。
【0058】
また、本実施形態では、上記のように、移動機構3は、撮像部2を第2方向に移動させる第2方向移動機構32を含み、第2方向移動制御部42は、通電時には、第2方向移動機構32による撮像部2の移動を可能にし、通電が停止した場合に、第2方向移動機構32による撮像部2の移動を規制するように構成されている。これにより、通電時においては、第2方向移動機構32によって撮像部2を第2方向に移動させることができる。また、通電が停止した場合には、第2方向移動制御部42によって、第2方向における撮像部2の移動が規制されるため、通電が停止した場合には、撮像部2が第2方向(頭足方向とは異なる方向)へ移動することを防止することができる。
【0059】
また、本実施形態では、上記のように、撮像部2の位置を検出する位置検出部5をさらに備え、移動機構3は、通電が再開した場合に、位置検出部5が設けられている位置に撮像部2を移動させるように構成されている。これにより、通電が再開した場合に、撮像部2が、位置検出部5が設けられている位置に移動されるので、位置検出部5が設けられている位置を初期位置(原点位置)とすることができる。したがって、通電が停止した場合において、操作者が撮像部2を第1方向に移動させる場合に、第1方向における撮像部2の位置がどのような位置であっても、通電が再開した場合に、毎回初期位置に撮像部2を移動させることができる。その結果、通電が停止した場合に被験者101を退避させるために、操作者が第1方向へ撮像部2を移動させる際に、撮像部2の移動位置の自由度を向上させることが可能となるので、操作者の利便性を向上させることができる。
【0060】
また、本実施形態では、上記のように、被験者101の第1の診断対象部位は、被験者101の頭部101aであり、被験者101の第2の診断対象部位は、被験者101の乳房101bであり、第2方向は上下方向であり、第2撮像位置10bは、開口21aを第2方向に向けた状態で被験者101の乳房101bを撮像する位置であり、移動機構3は、撮像部2を第1方向と第2方向とに移動させることにより、撮像部2による撮像位置を第1撮像位置10aと第2撮像位置10bとに切り替えるように構成されている。これにより、撮像部2による撮像位置を第1撮像位置10aと第2撮像位置10bとに切り替えて、被験者101の頭部101aと乳房101bとを撮像する構成において、被験者101の頭部101aを撮像している際に通電が停止した場合に、撮像部2を第1方向に移動させることにより、被験者101を撮像部2から退避させることができる。また、撮像部2が上下方向に移動することが防止されるので、撮像部2が自重によって移動することを防止することができる。その結果、操作者が手動で撮像部2を第1方向へ移動させる際に、撮像部2が自重で第2方向へ移動し、被験者101が撮像部2によって挟まれることを防止することができる。
【0061】
また、本実施形態では、上記のように、移動機構3は、撮像部2を回転させる回転機構33を含み、回転機構33は、撮像部2の姿勢を切り替える切替位置10cにおいて、撮像部2を回転させるように構成されている。これにより、被験者101の頭部101aを撮像する場合には、切替位置10cにおいて回転機構33によって撮像部2を回転させることにより、開口21aを第1方向に向けた状態で、撮像部2を第1方向および第2方向に移動させることにより、被験者101の頭部101aを容易に撮像することができる。また、被験者101の乳房101bを撮像する場合には、切替位置10cにおいて回転機構33によって撮像部2を回転させることにより、開口21aを第2方向に向けた状態で、撮像部2を第1方向および第2方向に移動させることにより、被験者101の乳房101bを容易に撮像することができる。
【0062】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0063】
たとえば、上記実施形態では、寝台と撮像部との相対位置を移動させるために、移動機構によって、撮像部を移動させることによって、寝台と撮像部とを相対移動させる例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、寝台を移動させることによって、寝台と撮像部とを相対移動するように構成されていてもよい。また、寝台と撮像部との両方を移動させることによって、相対移動するように構成されていてもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、通電が停止した場合において、第2駆動力伝達部材を第1駆動力伝達部材に対して空転する状態とする際に、第1方向移動規制部が、第1駆動力伝達部材の動作を規制する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、第1移動方向移動規制部は、通電が停止した場合において、第1方向移動規制解除部が、第2駆動力伝達部材を第1駆動力伝達部材に対して空転する状態とする際に、第1駆動力伝達部材の動作を規制しなくてもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、通電が停止した場合において、移動制御機構が、第1方向における撮像部の移動を可能にする構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、移動制御機構は、通電が停止した場合において、第1方向における寝台の移動を可能にするように構成されていてもよい。
【0066】
[態様]
上記した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0067】
(項目1)
被験者が載置される寝台と、
開口を有し、前記寝台に載置された前記被験者の診断対象部位が前記開口内に配置された状態で前記診断対象部位から放出された放射線を検出することによって、前記被験者の前記診断対象部位を撮像する撮像部と、
前記被験者の頭足方向である第1方向、および、前記第1方向とは異なる方向である第2方向に対して前記撮像部および前記寝台のうち少なくともどちらかを移動させることによって前記撮像部および前記寝台を相対移動させることにより、前記開口を前記第1方向に向けた状態で前記撮像部によって前記被験者の第1の前記診断対象部位を撮像するための撮像位置である第1撮像位置と、前記撮像部によって前記被験者の第2の前記診断対象部位を撮像するための撮像位置である第2撮像位置との間において前記撮像部と前記寝台とを相対移動させるように構成された移動機構と、
通電時において、前記第1方向および前記第2方向への前記撮像部および前記寝台の相対移動を可能にし、通電が停止した場合において、前記第2方向への前記撮像部および前記寝台の相対移動を規制するとともに、前記第1方向への前記撮像部および前記寝台の相対移動を可能にする移動制御機構と、を備える、画像診断装置。
【0068】
(項目2)
前記移動制御機構は、前記第1方向への前記撮像部および前記寝台の相対移動を制御する第1方向移動制御部と、前記第2方向への前記撮像部および前記寝台の相対移動を規制する第2方向移動制御部と、を含み、
前記第2方向移動制御部は、通電が停止した場合に、前記移動機構による前記第2方向への前記撮像部および前記寝台の相対移動を規制するように構成されており、
前記第1方向移動制御部は、通電が停止した場合に、前記第1方向への前記撮像部および前記寝台の相対移動を可能にするように構成されている、項目1に記載の画像診断装置。
【0069】
(項目3)
前記第1方向移動制御部は、前記第1方向への前記撮像部および前記寝台の相対移動を規制する第1方向移動規制部と、前記第1方向への前記撮像部および前記寝台の相対移動の規制を解除する第1方向移動規制解除部と、を含み、
前記第1方向移動規制部は、通電が停止した場合に、前記移動機構による前記第1方向への前記撮像部および前記寝台の相対移動を規制するように構成されており、
前記第1方向移動規制解除部は、通電が停止した場合に、前記移動機構による前記第1方向への前記撮像部および前記寝台の相対移動が前記第1方向移動規制部によって規制された状態のままで、前記移動機構を介さずに、前記第1方向への前記撮像部および前記寝台の相対移動を可能にするように構成されている、項目2に記載の画像診断装置。
【0070】
(項目4)
前記移動機構は、前記撮像部を前記第1方向に移動させる第1方向移動機構を含み、
前記第1方向移動規制解除部は、通電が停止した場合に、前記第1方向移動機構による前記撮像部の移動が前記第1方向移動規制部によって規制された状態で、前記第1方向移動機構を介さずに、前記撮像部の前記第1方向への移動を可能にするように構成されている、項目3に記載の画像診断装置。
【0071】
(項目5)
前記第1方向移動機構は、駆動部と、前記駆動部と接続され前記駆動部からの駆動力を伝達する第1駆動力伝達部材と、前記第1駆動力伝達部材を介して前記駆動部からの駆動力を前記撮像部に伝達する第2駆動力伝達部材と、前記第2駆動力伝達部材を前記第1駆動力伝達部材に対して空転可能に保持する保持部材と、を含み、
前記第1方向移動規制部は、通電が停止した場合に、前記第1駆動力伝達部材の動作を規制するように構成されており、
前記第1方向移動規制解除部は、通電時において、前記第2駆動力伝達部材を前記第1駆動力伝達部材に対して空転しない状態とし、通電が停止した場合に、前記第2駆動力伝達部材を前記第1駆動力伝達部材に対して空転する状態とするように構成されている、項目4に記載の画像診断装置。
【0072】
(項目6)
前記移動機構は、前記撮像部を前記第2方向に移動させる第2方向移動機構を含み、
前記第2方向移動制御部は、通電時には、前記第2方向移動機構による前記撮像部の移動を可能にし、通電が停止した場合に、前記第2方向移動機構による前記撮像部の移動を規制するように構成されている、項目3~5のいずれか1項に記載の画像診断装置。
【0073】
(項目7)
前記撮像部の位置を検出する位置検出部をさらに備え、
前記移動機構は、通電が再開した場合に、前記位置検出部が設けられている位置に前記撮像部を移動させるように構成されている、項目1~6のいずれか1項に記載の画像診断装置。
【0074】
(項目8)
前記被験者の第1の前記診断対象部位は、前記被験者の頭部であり、
前記被験者の第2の前記診断対象部位は、前記被験者の乳房であり、
前記第2方向は上下方向であり、
前記第2撮像位置は、前記開口を前記第2方向に向けた状態で前記被験者の乳房を撮像する位置であり、
前記移動機構は、前記撮像部を前記第1方向と前記第2方向とに移動させることにより、前記撮像部による撮像位置を前記第1撮像位置と前記第2撮像位置とに切り替えるように構成されている、項目7に記載の画像診断装置。
【0075】
(項目9)
前記移動機構は、前記撮像部を回転させる回転機構を含み、
前記回転機構は、前記撮像部の姿勢を切り替える切替位置において、前記撮像部を回転させるように構成されている、項目8に記載の画像診断装置。
【符号の説明】
【0076】
1 寝台
2 撮像部
3 移動機構
4 移動制御機構
5 位置検出部
10a 第1撮像位置
10b 第2撮像位置
20d 切替位置
21a 開口
31 第1方向移動機構
31a 駆動部
31b 第1駆動力伝達部材
31c 第2駆動力伝達部材
31d 保持部材
32 第2方向移動機構
33 回転機構
41 第1方向移動制御部
41a 第1方向移動規制部
41b 第1方向移動規制解除部
42 第2方向移動制御部
100 画像診断装置
101 被験者
101a 頭部(第1の診断対象部位)
101b 乳房(第2の診断対象部位)